JP7397278B2 - チタン合金板及び自動車用排気系部品 - Google Patents

チタン合金板及び自動車用排気系部品 Download PDF

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本発明は、チタン合金板及び自動車用排気系部品に関する。
四輪自動車や二輪自動車(以下、自動車等という)の排気装置には、エキゾーストマニホールド及びエキゾーストパイプが備えられている。エンジンから排出され、エキゾーストマニホールドによって集約された排気ガスは、エキゾーストパイプを介して車体後方の排気口から外部に排出される。エキゾーストパイプの途中には、触媒装置やマフラー(消音器)が配置されており、排ガスの浄化及び排気音の消音がなされる。本明細書では、エキゾーストマニホールドからエキゾーストパイプ、排気口までの全体を通して、「排気装置」と称する。また、排気装置を構成するエキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒装置、マフラーなどの部品を「排気系部品」と称する。
従来、自動車等の排気装置の構成部材には、耐食性、高強度や加工性等に優れたステンレス鋼が使用されていたが、近年では、ステンレス鋼よりも軽量であり、高強度で耐食性にも優れるチタン材が使用されつつある。例えば、二輪自動車の排気装置には、JIS2種の工業用純チタン材が使われている。さらに、最近では、JIS2種の工業用純チタン材に代わって、より耐熱性が高いチタン合金が使用されつつある。
特に最近は、排ガス温度が上昇する傾向にある。そのため、エキゾーストパイプにおける排気ガス温度は、800℃程度に達する場合があり、この温度域においても十分な高温強度の確保が求められる。
特許文献1には、Siを0.15~2質量%含むとともに、Alを0.30質量%未満に規制し、残部チタンおよび不可避的不純物からなる耐高温酸化性に優れたチタン合金が記載されている。
また、特許文献2には、質量基準でAl:0.30~1.50%と、Si:0.10~1.0%を含有することを特徴とする耐高温酸化性および耐食性に優れたチタン合金が記載されている。
また、特許文献3には、質量%で、Cu:2.1%超~4.5%、酸素:0.04%以下、Fe:0.06%以下を含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなる、冷間加工性に優れる排気装置部材用耐熱チタン合金が記載されている。
また、特許文献4には、質量%で、Si:0.1~0.6%、Fe:0.04~0.2%、O:0.02~0.15%であり、FeとOの含有量の合計が、0.1%以上、0.3%以下、残部Tiおよび、単独の含有量が0.04%未満の不可避的不純物からなる、耐酸化性に優れた排気系部品用チタン合金材が記載されている。
しかし、特許文献1~特許文献4に記載されたチタン合金は、化学成分を限定することで、高温強度を確保しようとするものであり、800℃以上の高温域における強度は必ずしも十分ではなかった。
排気ガスの高温化に伴い、排気系部品にはより高い高温強度が求められている。そのため、従来技術では、合金への添加元素量が多くなっている。しかし、添加元素量が多くなると、強度が向上する一方で加工性が低下する問題がある。加工性の低下を抑制するためには、チタン板の製造時に高温で焼鈍すればよいが、高温で焼鈍するとチタン板の結晶粒径が粗大化し、このチタン板からなる排気系部品の使用環境において更に粗大な組織に変化し、使用中に特性劣化するおそれがある。そのため、製造時に比較的低温で粒成長させることで加工性を向上させ、一方、高温環境下では粒成長が抑制されるようなチタン合金が望まれる。
また、排気系部品では、高温酸化が抑制されることも望まれる。
特開2007-270199号公報 特開2005-290548号公報 特開2009-030140号公報 特開2013-142183号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、加工性に優れ、高温環境下で結晶粒の粗大化が抑制され、高温強度に優れ、更には高温での耐酸化性に優れたチタン合金板及び自動車用排気系部品を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 質量%で、
Cu:0.7%以上1.5%以下、
Sn:0.5%以上1.5%以下、
Si:0.15%以上0.35%以下、
Nb:0.25%以上1.0%以下、
Al:0%以上1.0%以下を含有し、
更に、Cr、Moの一方または両方を合計で0.05~0.30%含有し、
Feを0.06%以下、Oを0.07%以下にそれぞれ制限し、
Ni、V、Mn、Zr、Co、Ta、W、C、Nの1種または2種以上を各々0~0.05%かつ合計で0.3%以下含有し、
残部がTi及び不純物であり、
金属組織がα相と第二相からなり、
前記α相の平均結晶粒径が10~50μmであり、
断面において一辺が10μmの正方形の測定領域100ヶ所を任意に選定し、その100ヶ所の測定領域のうち、少なくとも1個以上の前記第二相が観察される測定領域の数が全測定領域の80%以上であることを特徴とするチタン合金板。
[2] 前記第二相の面積率が0.5%以上であることを特徴とする[1]に記載のチタン合金板。
[3] 上記[1]または[2]に記載のチタン合金板からなる、自動車用排気系部品。
本発明によれば、加工性に優れ、また、高温環境下で結晶粒の粗大化が抑制され、高温強度に優れ、更には高温での耐酸化性に優れたチタン合金板及び自動車用排気系部品を提供できる。
自動車用排気系部品は、チタン合金板を例えばプレス成形することによって得られ、また、自動車用排気系部品は高温環境下で使用される。そのため、自動車用排気系部品の素材となるチタン合金板には、優れた加工性、高温強度、高温での耐酸化性が求められる。また、高温環境下で使用された際に粗粒化しないことも求められる。
従来の排気系部品の素材としてのチタン合金には、Siが多く含まれている。Siを多く含むチタン合金にはSiを含む金属間化合物が多数析出している。Siを含む金属間化合物を多数析出させることで、高温加熱時に金属間化合物の一部を残存させ、この残存させた金属間化合物によってα相の粒成長を抑制することで高温強度の低下を抑制している。しかし、金属間化合物が多数析出すると、チタン合金の結晶粒径が小さくなり、加工性が低下する。
一方、Si量が比較的少ないチタン合金は、高温強度を確保するためにAlやSnが多く含有される必要があり、金属組織はほぼα相単相の組織となる。しかし、このようなチタン合金では、高温加熱時に金属間化合物が消失しやすく、高温領域においてα相が著しく粒成長する場合がある。
α相の結晶粒径が小さすぎるチタン合金板は、上述のように、排気系部品に加工する際の加工性が大幅に低下する。そのため、チタン合金板の製造時に、比較的低温の領域(以下、低温領域という場合がある。)において加熱して結晶粒の粒成長を促すことで、加工性及び高温強度を両立させる必要がある。
低温領域での加熱により粒成長を促進するためには、ソリュートドラッグ効果及び第二相によるピン止め効果を抑制する必要がある。ソリュートドラッグ効果はピン止め効果に比べて影響が小さく、高温強度を確保するためには合金元素を多く添加せざるを得ない。従って、ピン止め効果を抑制することで、加工性の向上に必要な結晶粒サイズを確保する必要がある。
低温領域でのピン止め効果は、主に金属間化合物によって得られる。ピン止め効果を抑制して粒成長を促すために、チタンとの間で金属間化合物を形成するCuやSiのような元素の添加量を抑制する必要がある。Cuは、Siよりも低温で金属間化合物を形成する上、高温強度への寄与が大きいので、Cuを含有させる一方でSi量を抑制することが望ましい。
さらに、低温領域よりも高い温度領域である高温領域での粒成長を抑制するためには、β相を形成しやすくする必要がある。しかしながら、β相が増えすぎると耐酸化性が劣化するため、緩やかにβ相が増加するとともにα相に固溶しても耐酸化性の劣化を抑制できることが望ましい。
以上の観点から、Cu、Sn、Si、Nbやその他のβ安定化元素を鋭意調査した結果、CrとMoがβ相の形成を促進させるために効果的であることが判明した。CrまたはMoの適量を含有させることによって、750℃以上の高温領域でも結晶粒の粗大化を抑制できることを見出した。
また、自動車用排気系部品の使用時の高温環境下において金属組織中にβ相が偏って析出すると、微細粒と粗大粒が混在した混粒組織となり、疲労特性に悪影響を生じることが懸念されるため、高温領域において均一にβ相が分散するように化学成分のばらつきを抑制することも好ましい。
また、チタン合金板を排気系部品に加工する際の加工性を十分に確保するために、α相の平均結晶粒径を一定以上に制御し、また、加工時の肌荒れ防止のために、平均結晶粒径を大きくしすぎないことも好ましい。
以上の観点から鋭意検討したところ、本実施形態のチタン合金板を完成させるに至った。
以下、本実施形態のチタン合金板及び自動車用排気系部品について説明する。
本実施形態のチタン合金板は、質量%で、Cu:0.7%以上1.5%以下、Sn:0.5%以上1.5%以下、Si:0.15%以上0.35%以下、Nb:0.25%以上1.0%以下、Al:0%以上1.0%以下を含有し、更に、Cr,Moの一方または両方を合計で0.05~0.30%含有し、Feを0.06%以下、Oを0.07%以下にそれぞれ制限し、Ni、V、Mn、Zr、Co、Ta、W、C、Nの1種または2種以上を各々0~0.05%かつ合計で0.3%以下含有し、残部がTi及び不純物であり、金属組織がα相と第二相からなり、α相の平均結晶粒径が10~50μmであり、断面において任意に選択した100箇所の測定領域毎に第二相の個数密度を求めた場合に、個数密度が0.01個/μm以上の測定領域の数が全測定領域の80%以上のチタン合金板である。
また、本実施形態のチタン合金板は、第二相の面積率が0.5%以上であることが好ましい。
次に、本実施形態の自動車用排気系部品は、上記のチタン合金板からなることが好ましい。
まず、本実施形態のチタン合金板の化学成分について説明する。なお、化学成分の含有量の単位である「%」は、「質量%」を意味する。
Cu:0.7~1.5%
十分な高温強度を確保するためにはCuを0.7%以上含有させる必要がある。一方、Cu量が1.5%を超えると、鋳塊製造時にCuが偏析する可能性が高くなる。そのため、Cu量の上限を1.5%以下とする。より好ましいCu量は0.8~1.3%の範囲である。
Sn:0.5~1.5%
十分な高温強度を確保するためには、Snを0.5%以上含有させる必要がある。一方、Snは金属間化合物を形成しがたいため、多量に含有させることもできるが、α相中のCu及びSi固溶限度が低下するため、Sn量は1.5%以下にしておく必要がある。また、Snは比重が大きな元素であり、多量に加えても原子数比率で比較するとさほど多くないため、固容強化への寄与が小さいことも、含有量の上限を制限する理由である。より好ましいSn量は0.8~1.3%の範囲である。
Si:0.15~0.35%
耐酸化性及び高温強度を確保するためには、Siを0.15%以上含有させる必要がある。一方、Si量が0.35%を超えるとシリサイドが形成され、粒成長を著しく阻害してしまう。よって、Si量を0.35%以下とする。より好ましいSi量は0.15~0.25%の範囲である。
Nb:0.25~1.0%
耐酸化性を確保するためには、Nbを0.25%以上含有させる必要がある。Nbを多く含有するほど耐酸化性は向上するが、原料コストが上昇することに加えて、耐酸化性の向上効果が頭打ちになってくるため、Nbの上限を1.0%以下とする。より好ましいNb量は0.3~0.5%の範囲である。
Al:0~1.0%
Alは任意選択元素であり、高温強度を確保するために含有させてもよいが、Al量が多くなると、α相を安定化させてβ相の形成を抑制してしまう。また、冷延性も大きく低下してしまう。そのため、Alを含有させる場合は最大で1.0%以下とする必要がある。Alは任意選択元素であるため下限を0%とするが、高温強度を確保するためにAl量を0.1%以上含有させてもよい。
Cr、Moの一方または両方を合計で0.05~0.30%
Cr及びMoを含有させることでβ相が形成され始める温度が低下する。そのため、高温環境下での使用によりβ相が析出しやすくなり、このβ相が、高温でのα相の粒成長を抑制するようになる。そのためにはCr及びMoの一方または両方の合計量を0.05%以上にする必要がある。一方、CrやMoが過剰に含有すると、チタン合金板の製造時のα相の平均結晶粒径の調整時に粒成長を阻害するようになる。また、CrやMoの過剰な含有によって室温での強度が高くなり、スプリングバックによる成形狙い形状とのずれが生じやすくなる。そのため、Cr及びMoの一方または両方の上限を0.30%以下とする。
Fe:0.06%以下
Fe量が多すぎると、低温域からβ相が生じやすくなるため、粒成長が阻害されるようになる。また、Cr及びMoの適正な含有量の範囲が狭くなることで、制御を難しくする。そのため、Feは少ないほどよく、多くても0.06%以下に制限する必要がある。
O:0.07%以下
Oは室温強度を増加させるが、高温強度はほとんど向上させない。そのため、スプリングバック量が大きくなるだけであり、少ないことに越したことはない。ただし、工業的に酸素(O)を低減させることは難しく、極端に低減すると原料コストが上昇するため、0.04%程度は含有され、ばらつきを考慮すると0.07%程度になることもある。そのため、Oの上限を0.07%以下に制限する。
Ni、V、Mn、Zr、Co、Ta、W、C、Nの1種または2種以上を各々0~0.05%かつ合計で0.3%以下
Ni,V,Mn,Zr,Co,Ta,Wはいずれもβ相を安定化する効果を少なからず有する。そのため、本実施形態のように、Nb、Cr、Moでα相およびβ相を制御するにあたっては、これらの元素は少ないほうがよい。また、N及びCが過剰に含有されると、α相を安定化するとともに、室温での強度を高めるために、加工性が劣化する。そのため、N及びCも少ないほうがよい。従って、これらの元素の上限をそれぞれ0.05%以下とするとともに、これらの元素の合計量を0.3%以下にする。
本実施形態のチタン合金板の残部は、Ti及び上記以外の他の不純物である。
次に、本実施形態のチタン合金板の組織について説明する。
本実施形態のチタン合金板は、組織中に、平均結晶粒径10μm以上50μm以下のα相と、第二相とが含有される。第二相はα相以外の組織であり、主に金属間化合物である。α相は金属組織の大部分を占める組織であり、金属組織の残部が第二相となる。
α相の平均結晶粒径:10~50μm
α相の平均結晶粒径が小さいと、耐力が増加してスプリングバック量が多くなるため、狙いの成形形状を得難くなる上、加工性(加工限界)も低下する。そのため、平均結晶粒径を10μm以上にする必要がある。一方、平均結晶粒径が大きすぎると成形加工時に表面にしわなどの模様が発生するため、外観上望ましくなく、加工性の向上も頭打ちになってくる。そのため、結晶粒径は50μm以下とする必要がある。なお、平均結晶粒径は切断法で求めた値とする。具体的には、α相の平均結晶粒径は、チタン合金板のL断面上に、一辺が100μm以上の正方形の領域を設け、この領域において圧延方向に平行な長さ100μm以上(上限は前記正方形領域の一辺の長さ)の線分を等間隔に5本以上引いて、その線分が切断する結晶粒の平均個数から算出する。α相の判別は、測定領域を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、反射電子像からα相を判別する。第二相は母相であるα相に比べて白色もしくは黒色であるため、これらを除いた領域をα相とする。
また、本実施形態のチタン合金板のα相は等軸粒であることが好ましい。具体的には、α相の結晶粒のアスペクト比(長軸径/短軸径)が3以下であることが好ましい。後述するように熱延板焼鈍または中間焼鈍においてβ変態点以上に加熱することで一旦針状結晶粒が形成されるが、その後の冷間圧延と最終焼鈍によって再結晶化が起こり、等軸の結晶粒が形成される。アスペクト比は、チタン合金板のL断面上においてα相の結晶粒の長軸径/短軸径の比であるアスペクト比を求め、10個の結晶粒のアスペクト比の平均値とする。
次に、第二相の分布状態について説明する。本実施形態のチタン合金板は、金属組織の大部分がα相からなり、残部が第二相からなる。第二相の主なものは、各種の金属間化合物である。これらの金属間化合物が含有されることによって、高温環境下でのα相の粒成長がピン止め効果により抑制されて高温強度が向上する。ただし、金属組織中に第二相が不均一に分布すると、高温環境下でのα相の粒成長の程度が局所的に異なり、混粒組織となり、疲労特性が劣化する。そのため、第二相が金属組織中に均一に分布している必要がある。
第二相の分布の均一性の指標として、第二相の個数密度に着目する。チタン合金板の断面の複数箇所において個数密度を測定し、一定以上の個数密度の箇所が多ければ、ピン止め効果が生じ、混粒組織が得られにくくなる。
そこで本実施形態では、チタン合金板の断面において任意に選択した100箇所の測定領域毎に第二相の個数密度を求めた場合に、個数密度が0.01個/μm以上の測定領域の数が全測定領域の80%以上であることが好ましい。すなわち、断面において一辺が10μmの正方形の測定領域100ヶ所を任意に選定し、その100ヶ所の測定領域のうち、少なくとも1個以上の第二相が観察される測定領域の数が全測定領域の80%以上であることが好ましい。第二相の分布状態がこの条件を満たす場合に、高温加熱時にα相の混粒組織が生じにくくなり、高温での粗粒化が抑制され、高温環境下での強度が向上し、また、疲労強度も向上する。
チタン合金板のL断面において、一辺が100μmの領域を10×10に等分割した各々の領域を測定領域(一辺が10μmの領域100個を測定領域として用いる)とし、各測定領域毎に、第二相の単位面積あたりの個数を求めることにより、個数密度を求める。このときの個数密度が0.01個/μm以上の測定領域の数が全測定領域の80%以上となることが好ましい。
一辺が100μmの領域の位置は、チタン合金の断面の任意の位置とする。測定領域を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、反射電子像からα相と第二相とを判別する。金属間化合物である第二相は、母相であるα相に比べて白色もしくは黒色であるとともに微細な析出物であるため、この特徴から第二相と識別できる。そして、測定領域内の第二相の個数を計数して、各測定領域毎の第二相の個数密度(個/μm)を求める。そして、第二相の個数密度が0.01個/μm以上の測定領域の数を計数し、その数を測定領域の全数で除することで、0.01個/μm以上の測定領域の割合を求める。
第二相の面積率が0.5%以上
金属組織における第二相の面積分率は、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上が更に好ましく、0.5%以上であることがより好ましい。第二相が0.01%以上の面積率で存在すると、α相の固溶元素量が減少することで固溶強化量が減少する。それによって0.2%耐力を大きく減少させることが可能となり、その結果、スプリングバックを抑制することが可能となる。特に、第二相の面積分率を0.5%以上とすることで、0.2%耐力を大きく減少させ、加工性を高めることができる。第二相の面積率の上限は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。
第二相の面積分率は、第二相の個数密度と同じ領域で測定を行う。上記の一辺が100μmの領域を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、反射電子像からα相と第二相とを判別する。金属間化合物である第二相は、母相であるα相に比べて白色もしくは黒色であるとともに微細な析出物であるため、この特徴から第二相と識別できる。そして、領域内の第二相の面積を測定し、第二相の面積率(%)を求める。
本実施形態のチタン合金板は、以下の特性を有することが好ましい。
全伸び:25%以上
成形加工後の部品形状にもよるが、少なくともチタン合金板を管形状に成形・溶接できることが必要である。また、その後は管の曲げ加工が必要になる。従って、本実施形態のチタン合金板は、加工性を向上するために、少なくとも全伸びが25%以上であることが好ましい。
0.2%耐力:380MPa以下
本実施形態のチタン合金板は、化学組成の違いによるヤング率の差が非常に小さいので、0.2%耐力がスプリングバック量に大きく影響する。ヤング率は100~110GPaであるため、0.2%耐力の10MPaの増加分が、スプリングバック量の約0.01%に対応する。0.2%耐力が低い場合は280MPa程度になるため、スプリングバック量が大きく異なることが無いように0.1%の差を許容するとし、本実施形態のチタン合金板の0.2%耐力は380MPa以下とすることが好ましい。これにより、加工性が向上する。
全伸び及び0.2%耐力は、室温引張試験を行うことにより測定する。室温での引張試験は、上記のチタン合金板から、長手方向が圧延方向に対して平行のASTMサブサイズ引張試験片を採取し、ひずみ速度を、0.2%耐力の測定では0.5%/minとし、伸びの測定では30%/minとして行う。試験温度は10~35℃の範囲内とする。
エリクセン値:10.0mm以上
エリクセン試験は深絞りと張出の要素を評価するため、管形状以外への成形では重要である。純チタン(ASTM Grade2)のエリクセン値が10~11mmであるため、本実施形態のチタン合金板は、エリクセン値が10.0mm以上であることが加工性向上のために好ましい。
エリクセン値は、JIS Z 2247(2006)に規定するエリクセン試験方法に準じて測定する。測定サンプルの板厚は0.1~2mmの範囲とし、幅は90mm以上とする。試験機はJIS B 7729に記載された通りとする。ジグ寸法は標準試験片による試験の寸法を用いる。ただし、潤滑剤には厚さ50μmのテフロンシートを用いる。
耐酸化性:大気中で800℃、100時間保持後の酸化増量が5.0mg/cm以下
排気系部品における酸化増量は5mg/cm以下がほとんどであり、これを達成することが望ましい。そのため、耐酸化性の指標として、本実施形態のチタン合金板の酸化増量は5.0mg/cm以下を満たすことが好ましい。
酸化増量は、上記のチタン合金板から、20mm×20mmの試験片を採取し、表面をエメリー紙#400で湿式研磨し、800℃で100時間、静止大気中に暴露し、暴露後の増加質量を測定し、増加質量を引張試験片の表面積で割った値((増加質量(mg)/試験片の表面積(cm))とする。なお、酸化試験によってスケール剥離が発生する場合は剥離したスケールもばく露後の重量に含める必要がある。
高温での結晶粒径:750℃で100時間保持後の平均結晶粒径が70μm以下
高温での結晶粒の粗大化を防止したとみなすには、おおむね70μm以下にしておく必要がある。これよりも高温である800℃ではさらにβ相が増加するため、必然と細粒となる。したがって、750℃での評価を行うことで、高温での粗粒化の指標とすることができる。
高温での結晶粒径は、チタン合金板をアルゴン雰囲気中で750℃で100時間保持する。その後、チタン合金板のL断面を露出させ、L断面上に一辺が100μm以上の正方形の領域を設け、この領域において圧延方向に平行な長さ100μm以上(上限は正方形領域の一辺の長さ)の線分を等間隔に5本以上引いて、その線分が切断する結晶粒の平均個数から平均結晶粒径を算出する。
高温強度(0.2%耐力):750℃で30MPa以上
材料として、高温強度が確保される必要がある。本実施形態においては、粗粒化を生じやすい温度域での高温強度が重要と考えており、700~750℃が粗粒化しやすい温度域となる。これ以上ではβ相が多量に生成することで粗粒化はむしろ抑制される方向である。そこで、本実施形態のチタン合金板は、組織変化が生じやすい750℃での0.2%耐力で比較評価を行う。その結果、0.2%耐力が30MPa以上であることが好ましい。
750℃で100h保持後、400℃での高温強度:250MPa以上
排気系部品の実環境では、室温から800℃近傍まで様々なパターンで温度変動しており、600℃以下で使用される時間が長い。600℃以下の温度域では、高温域に保持された場合の組織粗大化に伴って強度低下が著しくなる。高温強度の評価において、試験温度のばらつきを考慮すると、400℃で試験を行うことが望ましい。これは、500℃近傍では重要な変形機構要素であるすべり変形において、すべり系の変化がはじまることや、引張変形中の応力ひずみ曲線にセレーションが生じるなど組織因子以外の要素が関係してくるため、正しく評価するためには500℃よりも低温でかつ、温度が高い領域で試験する方がよい。したがって、400℃での試験で評価することとし、高温に曝された後でも250MPa以上の強度が得られることが好ましい。
750℃の高温強度(0.2%耐力)は、高温引張試験を行うことにより測定する。高温引張試験は、上記のチタン合金板から、長手方向が圧延方向に対して平行の引張試験片(平行部幅10mm、平行部長さ及び標点間距離35mm)を採取し、ひずみ速度を0.4%/minとして行う。試験雰囲気は750℃の大気中とし、試験片が十分に試験温度に達するように、試験雰囲気中に10分間保持した後、試験を行う。
750℃で100h保持後、400℃での高温引張強度は、アルゴン雰囲気中750℃で100時間保持した試験片を用いて高温引張試験を行うことで測定する。引張試験の試験片形状およびひずみ速度は750℃の高温強度(0.2%耐力)の場合と同様とする。試験雰囲気は400℃の大気中とし、試験片が十分に試験温度に達するように、試験雰囲気中に10分間保持した後、試験を行う。
本実施形態のチタン合金板は、自動車用排気系部品の素材として用いることができる。すなわち、本実施形態のチタン合金板を所定の形状に成形し、溶接することで、各種の自動車用排気系部品とすることができる。本実施形態の自動車用排気系部品としては、エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒装置、マフラーなどの部品を例示でき、これらの素材として、本実施形態のチタン合金板を用いることができる。これらの排気系部品は、四輪自動車に限らず、二輪自動車にも用いることができる。
次に、本実施形態のチタン合金板の製造方法について説明する。
一般に、等軸粒で構成された金属組織が強度と加工性のバランスに優れ、また、冷延性に優れるため、熱間圧延以降では焼鈍がβ変態点未満で行われている。しかし、β変態点未満で焼鈍したチタン合金は、α相と第二相が混在する状態であり、α相と第二相との間での元素分配が生じる。元素分配が生じると、第二相の分布が不均一となり、目的とする金属組織が得られなくなる。
チタン合金中の合金元素の分布は、凝固時((鋳塊製造時)に生じた分配状態が、分塊工程である程度均質化されていくが、分塊工程はβ単相域加熱されるものの、工程完了時にβ変態点未満になることがある。また、β変態点未満にならなくとも、冷却速度は非常に遅く、冷却中に分配が生じてしまう。冷却速度を高めるために、たとえば、分塊圧延後に水冷したとしても、内部と表層部の冷却速度差は大きく、冷却速度が小さな内部では必ずある程度の元素分配が生じてしまう。
また、元素分配を解消するために、熱間圧延前に鋳片をβ変態点以上に加熱したとしても、熱延中の温度低下によってβ変態点未満となって熱延中に元素分配が進んでしまう。また、鋳片の内部までβ変態点以上に昇温するためには長時間保持が必要になるため、酸化による表層硬化層の形成が生じることで、冷延性が低下する。
本実施形態では、従来ではβ変態点未満で行っていた熱延板の焼鈍と中間焼鈍の少なくとも一方をβ変態点以上で行うことで、それまでの元素分配を軽減するとともに、冷却速度5℃/秒以上で700℃まで冷却を行うことで元素分配を軽減した板を得ることができる。分塊工程とは異なり、板厚が薄くなった熱延板とした後にβ変態点以上に加熱することで表層及び内部の両方で元素分配を抑制することが可能となる。なお、熱延板の焼鈍と中間焼鈍の両方でβ変態点以上の焼鈍を行う方がより合金元素を均一に分布させることができる。
すなわち、本実施形態のチタン合金板の製造方法は、上述した化学成分を有するチタン合金からなるインゴットに熱間圧延を施して熱間圧延板とし、熱間圧延板に対して中間焼鈍を伴う冷間圧延を行う。また、最終冷間圧延の圧延率を40%以上とする。冷間圧延後に、670℃以上820℃の均熱温度で1分~24時間の最終焼鈍を行う。また、最終焼鈍後に、550~670℃の均熱温度で2時間以上保持する再焼鈍を行ってもよい。冷間圧延は、最終冷間圧延と最終焼鈍の前に、中間圧延と中間焼鈍を行ってもよい。
また、熱間圧延と冷間圧延との間で、熱延板焼鈍を行ってもよい。
最終冷間圧延前の中間焼鈍の条件は、焼鈍温度をβ変態点以上とし、焼鈍時間を1~5分間とし、焼鈍温度から700℃までの平均冷却速度を5℃/秒以上とすることが好ましい。なお、中間冷延の条件は特に限定しない。
熱延板焼鈍を行う場合は、熱延板焼鈍または最終中間焼鈍の焼鈍温度のいずれか一方をβ変態点以上の温度とすることが好ましい。この場合、より好ましくは、中間焼鈍の焼鈍温度をβ変態点以上とすることがより好ましい。また、熱延板焼鈍及び中間焼鈍の焼鈍温度の両方をβ変態点以上の温度としてもよい。
以下、製造条件について説明する。
熱延板焼鈍または最終中間焼鈍の焼鈍温度のいずれか一方をβ変態点以上の温度とすることで、元素分配を抑制し、合金元素をより均一に分布させ、第二相の分布を均一にすることができる。特に、少なくとも中間焼鈍の焼鈍温度をβ変態点以上の温度とすることにより、板厚がより薄くなった状態でβ変態点以上に加熱されることになり、板の表面及び内部での元素分配を抑制できる。更に、熱延板焼鈍と中間焼鈍の両方でβ変態点以上の焼鈍を行うことで、元素分配を抑制して合金元素をより均一に分布させることができる。
β変態点以上の温度に加熱した後は、元素分配を防止するために、焼鈍温度から700℃までの平均冷却速度を5℃/秒以上とする条件で冷却するとよい。
β変態点以上で焼鈍した場合、金属組織が針状組織となり、冷延性が低下する。そのため、冷間圧延の条件は、1パス目から2パス目までの圧下率を10%以下とし、それ以降は15%以下とすることで、割れを生じさせることなく安定して冷間圧延できる。圧延初期に割れが生じないように2パス目までは低圧下率で加工する。その後は加工発熱により温度が上昇するため圧下率を高めても割れにくくなる。
最終焼鈍後に加工性に優れる等軸粒を得る必要があるため、最終冷間圧延での冷延率(累積冷延率)は少なくとも40%以上とする。最終冷間圧延での累積冷延率の上限は、割れを防止するために90%以下とすればよい。
その後、十分にα相の結晶粒径を大きくし、かつ等軸粒とするための最終焼鈍をβ変態点未満で行う必要がある。最終焼鈍の焼鈍温度は670℃以上820℃以下とする必要がある。670℃未満では金属間化合物が多量に生成し、ピン止め効果によりα相の粒成長を阻害するため、長時間の焼鈍を行っても十分な結晶粒径を得ることはできず、加工性が不十分となる。820℃を超えると、β相が析出してしまうため、820℃以下とする必要がある。焼鈍時間は1分から24時間の範囲とする。670~820℃の比較的低温領域での最終焼鈍を行うことにより、α相の結晶粒を急激に粗大化させることなく、α相の平均結晶粒径を調整することができる。また、本実施形態では、自動車用排気系部品の使用温度として想定される温度域よりも低い温度域で最終焼鈍を行うことで、β相の析出を防止しつつα相の結晶粒径を調整できる。
なお、結晶粒成長を十分にさせた後に、550~670℃に2時間以上保持する再焼鈍を行ってもよい。これによって金属間化合物の面積率を0.5%以上にすることができ、0.2%耐力をより低下させることができる。
また、熱間圧延前の工程は特に制限はない。例えば、電子ビーム溶解もしくは真空アーク溶解などによって製造された所定の化学組成を有するインゴットに、凝固組織の破壊を目的とした分塊工程(鍛造もしくは圧延)がβ単相域で行われた後、熱間圧延によって熱間圧延板を製造すればよい。
表1に示す化学組成を有するチタン合金No.1~No.40を、真空アークボタン溶解によりインゴットとした。作製したインゴットを1000℃で熱間圧延し、10mm厚の熱延板とした。その後、860℃での熱間圧延を行うことで4mm厚の熱延板を得た。表1では、Ni、V、Mn、Zr、Co、Ta、W、C、Nのそれぞれの含有率の記載を省略し、これら元素の含有率の合計量を「others」の欄に記載した。これらの元素のそれぞれの含有率はいずれも0.05%以下だった。
その後、脱スケール工程もしくは、表2に記載の温度と時間で熱延板焼鈍を行った後に脱スケール工程を施し、その後、冷間圧延とともに必要に応じて中間焼鈍を行い、最終冷間圧延を行った。更に、最終焼鈍を行い、一部の合金については再焼鈍を行った。このようにして、No.1~40のチタン合金板を製造した。
得られたチタン合金板について、各種の評価を行った。
α相の平均結晶粒径は、チタン合金板のL断面上に、一辺が100μm以上の正方形の領域を設け、この領域において圧延方向に平行な長さ100μm以上(上限は正方形領域の一辺の長さ)の線分を等間隔に5本以上引いて、その線分が切断する結晶粒の平均個数から算出した。α相の判別は、測定領域を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、反射電子像からα相を判別した。第二相は母相であるα相に比べて白色もしくは黒色であるため、これらを除いた領域をα相とした。
第二相の分布状態は、チタン合金板のL断面において、一辺が100μmの領域を10×10に等分割した各々の領域を測定領域(一辺が10μmの領域100個を測定領域として用いる)とし、各測定領域毎に、第二相の単位面積あたりの個数を求めることにより、個数密度を求めた。
一辺が100μmの領域の位置は、チタン合金の断面の任意の位置とした。測定領域を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、反射電子像からα相と第二相とを判別した。金属間化合物である第二相は、母相であるα相に比べて白色もしくは黒色であるとともに微細な析出物であるため、この特徴から第二相と識別できた。そして、測定領域内の第二相の個数を計数して、各測定領域毎の第二相の個数密度(個/μm)を求めた。そして、第二相の個数密度が0.01個/μm以上の測定領域の数を計数し、その数を測定領域の全数で除することで、0.01個/μm以上の測定領域の割合を求めた。
第二相の面積分率は、第二相の個数密度と同じ領域で測定を行った。上記の一辺が100μmの領域を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、上記と同様にして反射電子像からα相と第二相とを判別した。そして、領域内の第二相の面積を測定し、第二相の面積率(%)を求めた。
全伸び及び0.2%耐力は、室温引張試験を行うことにより測定する。室温での引張試験は、上記のチタン合金板から、長手方向が圧延方向に対して平行のASTMサブサイズ引張試験片を採取し、ひずみ速度を、0.2%耐力の測定では0.5%/minとし、伸びの測定では30%/minとして行う。試験温度は10~35℃の範囲内とした。全伸びは25%以上、0.2%耐力は380MPa以下をそれぞれ合格とした。また、0.2%耐力の測定と同時に、室温の引張強度も測定した。
エリクセン値は、JIS Z 2247(2006)に規定するエリクセン試験方法に準じて測定した。測定サンプルの板幅は90mm以上とした。試験機はJIS B 7729に記載された通りとした。ただし、潤滑剤には厚さ50μmのテフロンシートを用いた。ジグ寸法は標準試験片による試験の寸法を用いた。エリクセン値が10.0mm以上を合格とした。
酸化増量は、チタン合金板から、20mm×20mmの試験片を採取し、表面をエメリー紙#400で湿式研磨し、800℃で100時間、静止大気中に暴露し、暴露後の増加質量を測定し、増加質量を引張試験片の表面積で割った値((増加質量(mg)/試験片の表面積(cm))とした。なお、酸化試験によってスケール剥離が発生した場合は、剥離したスケールもばく露後の重量に含めた。
高温での結晶粒径は、チタン合金板をアルゴン雰囲気中にて750℃で100時間保持した。その後、チタン合金板のL断面を露出させ、L断面上に一辺が100μm以上の正方形の領域を設け、この領域において圧延方向に平行な長さ100μm以上(上限は正方形領域の一辺の長さ)の線分を等間隔に5本以上引いて、その線分が切断する結晶粒の平均個数から平均結晶粒径を算出した。
750℃の高温強度(0.2%耐力)は、上記のチタン合金板から、長手方向が圧延方向に対して平行の引張試験片(平行部幅10mm、平行部長さ及び標点間距離35mm)を採取し、ひずみ速度を0.4%/minとして引張試験を行うことにより測定した。試験雰囲気は750℃の大気中とし、試験片が十分に試験温度に達するように、試験雰囲気中に10分間保持した後、試験を行った。高温強度(0.2%耐力)は750℃で30MPa以上を合格とした。
750℃で100h保持後、400℃での高温引張強度は、アルゴン雰囲気中750℃で100時間保持した試験片を用いて高温引張試験を行うことで測定した。引張試験の試験片形状およびひずみ速度は750℃の高温強度(0.2%耐力)の場合と同様とした。試験雰囲気は400℃の大気中とし、試験片が十分に試験温度に達するように、試験雰囲気中に10分間保持した後、試験を行った。750℃で100h保持後、400℃での高温強度は、250MPa以上を合格とした。
評価結果を表3に示す。
Figure 0007397278000001
Figure 0007397278000002
Figure 0007397278000003
表1に示すように、No.1、2、5~8、10、11、13~18、21~23、25、27、28、31~34、36~40は、本発明の範囲にあるチタン合金板であり、優れた特性を示した。なお、各チタン合金板のL断面上においてα結晶粒の長軸径/短軸径の比であるアスペクト比を求め、10個の結晶粒のアスペクト比の平均値を算出したところ、いずれもアスペクト比が3以下であり、等軸粒であった。
一方、No.3及び4は、MoとCrの合計量が少なく、750℃においてα相が粗粒化した。
No.9及び12は、MoとCrの合計量が過剰であり、細粒となったために0.2%耐力が高くなり、エリクセン値も低下し、加工性が低下した。
No.19は、Si量が少なく、酸化増量が増大し、耐酸化性が低下した。
No.20は、Si量が過剰であり、α相の平均結晶粒径が小さくなりすぎたため、0.2%耐力が高くなり、エリクセン値も低下し、加工性が低下した。
No.24は、Al量が過剰であり、エリクセン値が低下し、加工性が低下した。
No.26は、β変態点以上で焼鈍を行わなかったため、第二相の分散が不十分になり、750℃で粗粒化が起きた。
No.29は、熱延板焼鈍及び中間焼鈍の焼鈍温度がβ変態点未満であったため、元素分配が生じて750℃で粗粒化が起きた。
No.30は、熱延板焼鈍後の冷却速度が低く、元素分配が生じて第二相の分散が不十分になり、750℃で粗粒化が起きた。
No.35は、最終焼鈍温度が820℃を超えたため、元素分配が生じて第二相の分散が不十分になり、750℃で粗粒化が起きた。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    Cu:0.7%以上1.5%以下、
    Sn:0.5%以上1.5%以下、
    Si:0.15%以上0.35%以下、
    Nb:0.25%以上1.0%以下、
    Al:0%以上1.0%以下を含有し、
    更に、Cr,Moの一方または両方を合計で0.05~0.30%含有し、
    Feを0.06%以下、Oを0.07%以下にそれぞれ制限し、
    Ni、V、Mn、Zr、Co、Ta、W、C、Nの1種または2種以上を各々0~0.05%かつ合計で0.3%以下含有し、
    残部がTi及び不純物であり、
    金属組織がα相と第二相からなり、
    前記α相の平均結晶粒径が10~50μmであり、
    断面において一辺が10μmの正方形の測定領域100ヶ所を任意に選定し、その100ヶ所の測定領域のうち、少なくとも1個以上の前記第二相が観察される測定領域の数が全測定領域の80%以上であることを特徴とするチタン合金板。
  2. 前記第二相の面積率が0.5%以上であることを特徴とする請求項1に記載のチタン合金板。
  3. 請求項1または請求項2に記載のチタン合金板からなる、自動車用排気系部品。
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