以下、本発明に係る種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1の画像形成装置1の主要な機構を概略的に示す図であり、図2は、図1に示した機構を側方から視たときの図である。図1及び図2に示されるX軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する。本実施の形態の画像形成装置1は、Z軸正方向の高さと、X軸方向の横幅と、Y軸正方向の奥行きとを有するものである。
図1及び図2に示されるように、画像形成装置1は、サイドフレーム13A,13Bと、主走査方向(X軸方向)において走査自在に配置されたスペースキャリッジ51と、このスペースキャリッジ51に搭載された印刷部としての印刷ヘッド(印刷記録ヘッド)52と、この印刷ヘッド52に対向して配置されたプラテン50と、シート状の被印刷媒体Spがセットされる媒体載置部としてのテーブル11と、このテーブル11上に被印刷媒体Spがセットされたか否かを検出する媒体供給センサ(テーブルセンサ)21〜25と、テーブル11上の被印刷媒体Spを副走査方向(Y軸正方向)に搬送して印刷ヘッド52とプラテン50との間の隙間に供給するフロントフィードローラ31〜35と、被印刷媒体Spの先端部または後端部を検出する媒体検出センサ41〜45と、被印刷媒体Spを搬送するリアフィードローラ61〜65とを備えている。ここで、フロントフィードローラ31〜35によって本発明の複数の媒体搬送部が構成され得る。
本実施の形態の画像形成装置1は、図2に示されるように、テーブル11上にセットされた被印刷媒体Spをほとんど曲げずに水平方向(Y軸正方向)に搬送することができる水平インサータ方式の印刷装置として構成されている。
オペレータ(ユーザ)は、サイドフレーム13A,13Bの間の印刷可能範囲57内であれば、テーブル11上の任意の位置に任意の横幅を有するシート状の被印刷媒体Spをセットすることができる。なお、被印刷媒体Spとしては、たとえば、複写伝票またはカット紙が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
テーブル11上のガイド部材12は、搬送中の被印刷媒体Spの横方向(X軸方向)への移動を規制する部材である。オペレータは、必要に応じて、ガイド部材12を横方向に移動させて被印刷媒体Spの側方端部に当接させることができる。このガイド部材12とテーブル11とによって媒体供給部10が構成される。なお、本実施の形態の画像形成装置1は、たとえば、特許文献1に開示されているように印刷実行前にスキューローラを使用してスキューを補正し得る機構を有していてもよい。
媒体供給センサ(テーブルセンサ)21〜25は、印刷可能範囲57の全体に亘って主走査方向に沿って一定間隔で配列されているため、テーブル11上のどの位置に被印刷媒体Spがセットされても、その被印刷媒体Spを検出することができる。媒体供給センサ21〜25の主走査方向における配置間隔は、仕様上の最小幅を有する被印刷媒体が印刷可能範囲57内のいずれの位置にセットされても、その被印刷媒体を検出できる間隔(その最小幅よりも狭い間隔)である。画像形成装置1は、被印刷媒体Spがセットされたことを媒体供給センサ21〜25のいずれかが検出すると、フロントフィードローラ31〜35を回転させて被印刷媒体Spの搬送を開始する。媒体供給センサ21〜25としては、接触型センサまたは非接触型センサのいずれを使用してもよい。非接触型センサが使用される場合、被印刷媒体Spからの反射光または透過光を検出する光学式センサを使用することができる。
媒体検出センサ41〜45は、媒体供給センサ21〜25に対して駆動軸30を挟んだ位置に配置されており、これら媒体検出センサ41〜45の位置は、主走査方向における上記媒体供給センサ21〜25の位置と同じである。媒体検出センサ41〜45も、印刷可能範囲57の全体に亘って主走査方向に沿って一定間隔で配列されているため、テーブル11上のどの位置に被印刷媒体Spがセットされても、その被印刷媒体Spの先端部または後端部を検出することができる。媒体検出センサ41〜45の各々は、媒体搬送路を通過する被印刷媒体Spの有無を検出し、その検出結果を示す電気信号を出力することができる。このため、媒体検出センサ41〜45の検出出力を監視することで、被印刷媒体Spの先端部または後端部を検知することが可能である。媒体検出センサ41〜45としては、光学式センサなどの非接触型センサを使用すればよい。
フロントフィードローラ31〜35は、主走査方向に延在する駆動軸30の周りに固定され、且つ、印刷可能範囲57の全体に亘って主走査方向に沿って一定間隔で配列されている。フロントフィードローラ31〜35は、ゴムなどの弾性材料からなり、円筒形状を有している。駆動軸30は、画像形成装置1のフレームに設けられた軸受け(図示せず)によって回動自在に支持され、後述する改行モータの回転駆動力を受けて回転する。フロントフィードローラ31〜35の個数及び配置間隔は、仕様上の最小幅を有する被印刷媒体Spの表面に圧接できるローラが少なくとも1個存在するように設定される。よって、フロントフィードローラ31〜35のうちの少なくとも1個のローラが、セットされた被印刷媒体Spの表面に必ず圧接し、駆動軸30の回転とともに回転して被印刷媒体Spを副走査方向へ搬送することができる。
一方、リアフィードローラ61〜65も、主走査方向に延在する駆動軸60の周りに固定され、且つ、印刷可能範囲57の全体に亘って主走査方向に沿って一定間隔で配列されている。また、リアフィードローラ61〜65は、フロントフィードローラ31〜35と同様の弾性材料からなり且つ円筒形状を有する。駆動軸60は、画像形成装置1のフレームに設けられた軸受け(図示せず)によって回動自在に支持され、後述する改行モータの回転駆動力を受けて回転する。リアフィードローラ61〜65の個数及び配置間隔は、フロントフィードローラ31〜35と同様に、仕様上の最小幅を有する被印刷媒体Spの表面に圧接できるローラが少なくとも1個存在するように設定される。よって、リアフィードローラ61〜65のうちの少なくとも1個のローラが、印刷ヘッド52から供給された被印刷媒体Spの表面に必ず圧接し、駆動軸60の回転とともに回転して被印刷媒体Spを搬送することができる。
スペースキャリッジ51は、主走査方向に沿って延在する動力伝達ベルト(図示せず)と接続されている。この動力伝達ベルトは、後述するスペースモータの回転駆動力を受けて主走査方向右方(X軸正方向)及び主走査方向左方(X軸負方向)のいずれか一方へ直線的に移動することにより、スペースキャリッジ51をキャリッジシャフト(案内軸)55に沿って往復動させることができる。なお、これらスペースキャリッジ51、キャリッジシャフト55、動力伝達ベルト及び後述するスペースモータによって、印刷ヘッド52を駆動するヘッド駆動部が構成され得る。
スペースキャリッジ51は、その前端部に設けられた光学式の媒体幅検出センサ53を有する。媒体幅検出センサ53は、スペースキャリッジ51の走査動作に合わせて被印刷媒体Spの横幅方向の配置を検出するために使用される媒体検出センサである。
スペースキャリッジ51に搭載された印刷ヘッド52の先端部は、プラテン50と対向して配置されている。印刷ヘッド52の先端部は、複数個の金属製のピンと、各ピンを電磁力で駆動する電磁回路とを有する。印刷ヘッド52の先端部とプラテン50との隙間に被印刷媒体Spが送り込まれると、印刷ヘッド52において電磁力で駆動されたピンがインクリボン(図示せず)越しにプラテン50上の被印刷媒体Spを打撃する。これにより、転写シートから被印刷媒体Sp上へ1文字単位またはドット単位でインクが転写される。プラテン50は、そのピンによる衝撃を受け止めて被印刷媒体Spへのインクの転写を促すものである。
リボンプロテクタ54は、たとえば、ステンレスなどの金属製の薄板からなり、インクリボン(図示せず)と被印刷媒体Spとの間に介在する。リボンプロテクタ54は、必要以上にインクリボンが被印刷媒体Spと擦れることで汚れが発生することを防止するために設けられている。
図3は、実施の形態1の画像形成装置1の制御機構を概略的に示すブロック図である。
図3に示されるように、画像形成装置1は、制御部70と、上記媒体供給センサ21〜25からなる媒体供給センサ群20と、上記媒体検出センサ41〜45からなる媒体検出センサ群40と、上記媒体幅検出センサ53と、上記印刷ヘッド52の動作を制御するヘッド制御回路83と、上記スペースキャリッジ51に駆動力を与えるスペースモータ85の動作を制御するスペースモータ制御回路84と、スペースモータ動作量センサ85Sと、上記フロントフィードローラ31〜35及びリアフィードローラ61〜65に駆動力を与える改行モータ87の動作を制御する改行モータ制御回路86と、報知部として機能する音響出力部(スピーカ)91及び表示部92と、ユーザによる操作入力を受け付ける操作入力部として機能する操作パネル93とを備えている。さらに、画像形成装置1は、画像形成装置1内の構成要素に対して必要な電力を供給する電源回路88を備えている。
制御部70は、図3に示されるように、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を含むプロセッサ71と、上位装置である外部のホスト機器との間で有線通信または無線通信を行う送受信回路72と、出力インタフェース(I/F)部73と、入力インタフェース(I/F)部74と、センサインタフェース(I/F)部75とを有する。送受信回路72、出力インタフェース部73、入力インタフェース部74及びセンサインタフェース部75と、プロセッサ71との間はバス80を介して相互に接続される。
ホスト機器としては、たとえば、PC(パーソナルコンピュータ)またはサーバ装置が挙げられる。送受信回路72は、ケーブル、有線LAN、無線LANもしくは短距離無線通信技術などの通信手段によりホスト機器から送信された印刷ジョブデータなどの通信データを受信することができる。
出力インタフェース部73は、音響出力部91及び表示部92と接続されている。プロセッサ71は、出力インタフェース部73を介して音響出力部91から音響信号を出力させ、もしくは、表示部92から画像を含む光学的な信号を出力させることができる。表示部92は、たとえば、液晶表示パネルまたは有機ELパネルなどの小型の表示画面とLED発光部とを有する。後述するように、プロセッサ71は、表示部92の表示画面に画像を表示させたりLED発光部を点灯させたりして、画像形成装置1の状態及び/またはメッセージを表す情報をユーザに報知することが可能である。
入力インタフェース部74は、操作パネル93と接続されている。プロセッサ71は、オペレータが操作パネル93に操作入力した情報を入力インタフェース部74を介して取得することができる。図4は、操作パネル93の一例を概略的に示す図である。図4に示されるように、操作パネル93は、オペレータが選択可能な複数の入力スイッチ93A〜93Hを有している。
センサインタフェース部75は、図3に示されるように、媒体供給センサ群20、媒体検出センサ群40及び媒体幅検出センサ53と接続されている。プロセッサ71は、これら媒体供給センサ群20、媒体検出センサ群40及び媒体幅検出センサ53のそれぞれの検出出力をセンサインタフェース部75を介して受け取ることができる。
図3に示されるように、制御部70は、さらに、入出力(I/O)制御回路76、CG(Charactor Generator)ROM77、RAM(Random Access Memory)78及び不揮発性メモリ79を有する。これらI/O制御回路76、CGROM77、RAM78及び不揮発性メモリ79とプロセッサ71との間は、バス81を介して相互に接続される。
I/O制御回路76は、ヘッド制御回路83、スペースモータ制御回路84及び改行モータ制御回路86と接続されている。プロセッサ71は、I/O制御回路76を介して、ヘッド制御回路83、スペースモータ制御回路84及び改行モータ制御回路86に個別に制御信号を与えることができる。
CGROM77は、印刷すべき符号(各種の文字、数字及び記号を含む。)のパターンを表す各種フォントデータセットが格納された不揮発性メモリである。プロセッサ71は、ホスト機器から受信した印刷ジョブデータに応じてCGROM77から必要なフォントデータを読み出し印刷データとして利用することができる。また、RAM78は、CGROM77から読み出されたフォントデータを一時的に展開したり、プロセッサ71で生成されたデータ(たとえば、被印刷媒体Spの検出位置を示すデータ)を一時的に保存したりする目的で使用される作業用メモリである。
プロセッサ71は、主制御部である印刷制御部71Aと、安定性判定部71B及び再セット制御部71Cとを有する。不揮発性メモリ79は、少なくとも3種類の制御用のコンピュータプログラム(ファームウェア)79a,79b,79cを格納している。画像形成装置1への電源投入後、プロセッサ71は、印刷制御プログラム79aをロードして実行することで印刷制御部71Aの機能を構成し、安定性判定プログラム79bをロードして実行することで安定性判定部71Bの機能を構成し、再セット制御プログラム79bをロードして実行することで再セット制御部71Cの機能を構成する。
なお、本実施の形態では、印刷制御部71A、安定性判定部71B及び再セット制御部71Cは、コンピュータプログラム79a,79b,79cで実現されるが、これに限定されるものではなく、他のハードウェア構成で実現されてもよい。
不揮発性メモリ79は、フロントフィードローラ31〜35のそれぞれの配置を示すデータをも格納している。図5は、フロントフィードローラ31〜35の配置を概略的に表す図である。図5に示されるように、フロントフィードローラ31,32,33,34,35の主走査方向における中心位置Rcの値Rc1,Rc2,Rc3,Rc4,Rc5を示すデータが不揮発性メモリ79に格納される。これらの値Rc1〜Rc5は、サイドフレーム13Aに対する印刷ヘッド52の左方突き当て位置を基準位置(以下「ヘッド原点位置」とも呼ぶ。)としたときに主走査方向における当該基準位置からの距離を表している。そのヘッド原点位置は、印刷ヘッド52が主走査方向における位置情報を生成するための原点となるものである。ここで、測定値の単位は、1ドットであり、1/360インチ=約0.0027インチ(=2.54/360cm)と等しい値に設定されている。
また、不揮発性メモリ79においては、フロントフィードローラ31,32,33,34,35のそれぞれの横幅(長さ)Rw1,Rw2,Rw3,Rw4,Rw5を示すデータと、フロントフィードローラ31〜35の間隔Rgを示すデータと、フロントフィードローラ31〜35のうち最も左側に配置されたフロントフィードローラ31の左端とヘッド原点位置との間の距離Rg0を示すデータとが格納されている。
図6は、フロントフィードローラ31〜35の配置を示すデータのうちフロントフィードローラ31〜35の中心位置Rcの値Rc1〜Rc5を示すデータと、フロントフィードローラ31〜35の横幅Rw1〜Rw5を示すデータとをテーブルに示した図である。図6のテーブル中の括弧書きの数値(単位:ドット)は、例示である。
なお、本実施の形態では、フロントフィードローラ31〜35の中心位置Rcの値Rc1〜Rc5を示すデータに代えて、他の位置情報を不揮発性メモリ79に格納してもよい。たとえば、フロントフィードローラ31〜35各々の左端位置または右端位置を示すデータを不揮発性メモリ79に格納しておくことができる。
図3を参照すると、印刷制御部71Aは、ホスト機器から受信した印刷ジョブデータに基づき、ヘッド制御回路83とスペースモータ制御回路84と改行モータ制御回路86とを制御して被印刷媒体Sp上に印刷画像を形成させる機能を有する。具体的には、印刷制御部71Aは、受信した印刷ジョブデータを解釈し、その解釈結果を基にCGROM77からフォントデータを読み出して印刷データ(ドットパターンデータ)を構成する。そして、印刷制御部71Aは、ヘッド制御回路83、スペースモータ制御回路84及び改行モータ制御回路86を制御して、印刷データで表されるドット画像を1文字単位またはドット単位で印刷媒体Sp上に形成させる。その他、印刷制御部71Aは、セットされた被印刷媒体Spの吸入及び被印刷媒体Spの排出をも制御することができる。
スペースモータ動作量センサ85Sは、たとえば、スペースモータ85の回転量を検出し、その検出結果をスペースモータ制御回路84及びI/O制御回路76を介して制御部70に与える。プロセッサ71の印刷制御部71Aは、その検出結果に基づいて、印刷ヘッド52がヘッド原点位置に到達したこと、及び、そのヘッド原点位置を基準とした印刷ヘッド52の位置をドット単位で検知することができる。安定性判定部71Bも、その検出結果に基づいて印刷ヘッド52の位置を検出し且つ制御することが可能である。ここで、安定性判定部71Bは、スペースモータ動作量センサ85Sの検出分解能に応じて1ドット未満の精度で印刷ヘッド52の位置を検出し且つ制御してもよい。スペースモータ動作量センサ85Sとしては、たとえば、スペースモータ85の回転に応じてパルス信号を発生するロータリエンコーダを使用すればよい。この種のロータリエンコーダは、スペースモータ85の回転軸に同軸状に取り付けられたディスクと、このディスクに形成されたスリットの透過光を検出する光学センサとで構成することができる。
安定性判定部71Bは、上記不揮発性メモリ79に格納されている位置データと媒体幅検出センサ53の検出出力とを用いて、フロントフィードローラ31〜35のうち被印刷媒体Spの搬送のために実際に使用される使用ローラを判別し、当該使用ローラに対する被印刷媒体Spの相対位置に基づいて被印刷媒体Spの搬送安定性の良否判定を行う。
具体的には、安定性判定部71Bは、セットされた被印刷媒体Spに対してスペースキャリッジ51を主走査方向に移動させつつ媒体幅検出センサ53の検出出力を取得する。このときの媒体幅検出センサ53の検出出力の変化に基づいて、安定性判定部71Bは、図7に例示されるように被印刷媒体Spの左端位置SwL及び右端位置SwRを検出することができる。左端位置SwL及び右端位置SwRの値は、ヘッド原点位置からの距離をドット単位で表す値である。そして、安定性判定部71Bは、これら左端位置SwLと右端位置SwRとから被印刷媒体Spの主走査方向の幅Swt(=|SwL−SwR|)と、被印刷媒体Spの中心位置SwC(=(SwL+SwR)/2)とを算出することができる。
なお、図7に示される「印字第1ドット位置」は、印刷可能範囲57の横方向一端(左端)の位置であり、図7に示される「印字最終ドット位置」は、印刷可能範囲57の横方向他端(右端)の位置である。
また、安定性判定部71Bは、被印刷媒体Spの左端位置SwLと右端位置SwRとから、被印刷媒体Spの表面に圧接する使用ローラとその個数とを判別することができる。安定性判定部71Bは、使用ローラの個数が1個または2個のときは、搬送安定性の良否判定を実行する。一方、使用ローラの個数が3個以上のとき、安定性判定部71Bは、これら使用ローラは被印刷媒体Spを安定姿勢で搬送するためスキューを発生させないと判断して搬送安定性が良好と判定する。図8は、使用ローラ33が1個となる被印刷媒体Spのセット位置の一例を示す図である。一方、図9は、使用ローラ32,33が2個となる被印刷媒体Spのセット位置の一例を示す図である。
図10は、媒体幅Swtと使用ローラの個数Nrとの関係の一例をテーブルに示した図である。図10に示されるように、媒体幅Swtがローラ間隔Rgとローラ幅Rwtとの合計値(=Rg+Rwt)未満となる場合は、使用ローラの個数Nrは1個と判別される。また、媒体幅Swtが当該合計値以上で且つ当該合計値の2倍未満となる場合は、使用ローラの個数Nrは2個と判別される。そして、媒体幅Swtが当該合計値の2倍以上の場合は、使用ローラの個数Nrは3個以上と判別される。なお、図10のテーブルは、一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
安定性判定部71Bは、使用ローラの全体の重心位置RwCと被印刷媒体Spの中心位置SwCとの間の主走査方向における距離L(=|RwC−SwC|)が閾値以下のときは、当該1個または2個の使用ローラが被印刷媒体Spを安定姿勢で搬送することができ、搬送安定性が良好であると判定する。たとえば、図8に示されるように1個の使用ローラ33の重心位置RwCと被印刷媒体Spの中心位置SwCとの間の距離Lが閾値α以下のとき、もしくは、図9に示されるように2個の使用ローラ32,33の重心位置RwCと被印刷媒体Spの中心位置SwCとの間の距離Lが閾値β(≠α)以下のときは、安定性判定部71Bは、被印刷媒体Spの搬送安定性が良好であると判定する。本実施の形態では、全てのフロントフィードローラ31〜35は、同一材料からなり、同一形状を有しているため、図9に示した2個の使用ローラ32,33の重心位置RwCは、一方の使用ローラ32の中心位置Rc2と他方の使用ローラ33の中心位置Rc2との平均値として算出され得る。
より具体的には、使用ローラが1個のときは、以下の2つの条件(C1)及び(C2)の双方が満たされる場合に搬送安定性が良好であると判定し、それ以外の場合に搬送安定性は良好ではないと判定することができる。
(C1)被印刷媒体Spの左端位置SwL及び右端位置SwRが共に図11に示される設定エリアA1〜A5のいずれか1つのエリア内にあること。
(C2)1個の使用ローラの重心位置RwCと被印刷媒体Spの中心位置SwCとの間の距離Lが閾値α以下であること。
図11は、使用ローラが1個のときの設定エリアA1〜A5の例を示す図であり、図12は、図11に示した設定エリアA1〜A5の各々の左端位置及び右端位置の値と、各設定エリアについて使用される判定式とをテーブルに示した図である。図12に示した判定式は、上記条件(C2)を満たすか否かの判定に使用される。上記の条件(C1),(C2)は、画像形成装置1を用いて実際に各種媒体の搬送テストを実行することによって定められる条件である。
なお、図12のテーブル中の括弧書きの数値(単位:ドット)は、例示である。また、閾値αは、たとえば、28ドット程度の数値に設定することができる。これらの数値は、媒体幅Swtが980ドット未満の場合に、媒体中心位置SwCが使用ローラの重心位置RwCに対して使用ローラの横幅の±10%の範囲内にあれば、搬送安定性が良好であると判定するために設定された値であるが、これに限定されるものではない。
一方、使用ローラが2個のときは、以下の2つの条件(C3)及び(C4)の双方が満たされる場合に搬送安定性が良好であると判定し、それ以外の場合に搬送安定性は良好ではないと判定することができる。
(C3)被印刷媒体Spの左端位置SwL及び右端位置SwRが共に図13に示される設定エリアB1〜B4のいずれか1つのエリア内にあること。
(C4)2個の使用ローラの重心位置RwCと被印刷媒体Spの中心位置SwCとの間の距離Lが閾値β以下であること。
図13は、使用ローラが2個のときの設定エリアB1〜B4の例を示す図であり、図14は、図13に示した設定エリアB1〜B4の各々の左端位置及び右端位置の値と、各設定エリアについて使用される判定式とをテーブルに示した図である。図14に示した判定式は、上記条件(C4)を満たすか否かの判定に使用される。上記条件(C3),(C4)は、画像形成装置1を用いて実際に各種媒体の搬送テストを実行することによって定められる条件である。
なお、図14のテーブル中の括弧書きの数値(単位:ドット)は、例示である。閾値βは、たとえば、56ドット程度の数値に設定することができる。これらの数値は、媒体幅Swtが980ドット以上で且つ1960ドット未満の場合に、媒体中心位置SwCが使用ローラの重心位置RwCに対してローラの横幅の±20%の範囲内にあれば、搬送安定性が良好であると判定するために設定された値であるが、これに限定されるものではない。
搬送安定性が良好である旨の判定結果があったとき、印刷制御部71Aは、ヘッド制御回路83、スペースモータ制御回路84及び改行モータ制御回路86を制御して被印刷媒体Sp上に印刷画像を形成させる。
一方、搬送安定性が良好ではない旨の判定結果があったとき、当該1個または2個の使用ローラは被印刷媒体Spを安定姿勢で搬送することが難しいと判断される。この場合は、被印刷媒体Spの表面領域のうち中心位置SwCよりも左側の領域と右側の領域とにそれぞれ作用する搬送力のモーメントのバランスが崩れて、スキューが発生する確率が高いと判断される。
このとき、再セット制御部71Cは、音響出力部91及び表示部92の少なくとも一方を制御して被印刷媒体Spの適正位置への再セットを促す音響的または光学的な信号を出力させる(報知する)。ここで、再セット制御部71Cは、音響出力部91から警告音やメッセージ音を出力させてもよいし、表示部92のLED発光部を点灯させてもよいし、あるいは、表示部92の表示画面にメッセージを表示させてもよい。これにより、オペレータは、信号出力を認識して被印刷媒体Spを適正位置にセットし直すことができる。
同時に、再セット制御部71Cは、被印刷媒体Spが再セットされるべき適正位置MLを演算により決定し、スペースモータ制御回路84を制御して当該適正位置と対応する位置に印刷ヘッド52を移動させることもできる。これにより、オペレータは、移動後の印刷ヘッド52の位置に基づいて被印刷媒体Spを適正位置に簡便にセットし直すことができる。
図15は、使用ローラが1個のときに被印刷媒体Spがセットされるべき適正位置MLを例示する図であり、図16は、使用ローラが2個のときに被印刷媒体Spがセットされるべき適正位置MLを例示する図である。図15及び図16に示されるように、被印刷媒体Spの中心位置SwCから媒体幅の半分(=Swt/2)だけヘッド原点位置側にずれた位置が適正位置MLとして算出される。
図17は、適正位置MLへ移動した後の印刷ヘッド52を表す図である。図17に示されるように、印刷ヘッド52の本体部には、オペレータにより視認可能な位置合わせマーク52Mが形成されている。再セット制御部71Cは、位置合わせマーク52Mの位置が適正位置MLと一致するように印刷ヘッド52を移動させることができる。これにより、オペレータは、位置合わせマーク52Mを目印にし、被印刷媒体Spの左端位置が位置合わせマーク52Mと一致するように被印刷媒体Spを簡便にセットし直すことができる。
なお、図15及び図16に示した適正位置MLは、被印刷媒体Spの左端が再セットされるべき位置を示しているが、これに限定されるものではない。たとえば、被印刷媒体Spの右端が再セットされるべき位置を適正位置MLとして算出してもよい。また、位置合わせマーク52Mを印刷ヘッド52の本体部に形成する代わりに、スペースキャリッジ51またはこれに付属する部品に位置合わせマークを形成することも可能である。
次に、図18を参照しつつ、上記構成を有する画像形成装置1で実行される画像形成制御方法について説明する。図18は、被印刷媒体Spをセットするための制御手順を概略的に示すフローチャートである。
画像形成装置1に電源が投入されると、プロセッサ71は、不揮発性メモリ79から制御用のコンピュータプログラム79a,79b,79cをロードして実行することにより、印刷制御部71A、安定性判定部71B及び再セット制御部71Cを構成する。
印刷制御部71Aは、媒体供給センサ21〜25の出力を監視してテーブル11上に被印刷媒体Spがセットされるまで待機している(ステップS10のNO)。テーブル11上に被印刷媒体Spがセットされると、印刷制御部71Aはその状態を検知し(ステップS10のYES)、改行モータ制御回路86を制御して被印刷媒体Spを所定の被検出位置まで副走査方向に搬送させる(ステップS11)。ここで、印刷制御部71Aは、媒体検出センサ41〜45の出力に基づいて被印刷媒体Spが所定の被検出位置まで搬送されたことを検知することができる。
その後、安定性判定部71Bは、スペースモータ制御回路84を制御してスペースキャリッジ51を主走査方向に移動させつつ、媒体幅検出センサ53の検出出力に基づいて被印刷媒体Spのセット位置とその媒体幅Swtとを検出する(ステップS12,S13)。具体的には、安定性判定部71Bは、媒体幅検出センサ53の検出出力に基づいて被印刷媒体Spの左端位置SwL及び右端位置SwR(図7)を検出し、これら左端位置SwL及び右端位置SwRから被印刷媒体Spの中心位置SwCと媒体幅Swtとを算出する。
その後、安定性判定部71Bは、搬送安定性の良否判定を実行する(ステップS20)。図19は、搬送安定性の良否判定(ステップS20)の手順の一例を概略的に示すフローチャートである。図19において、ステップS26は、結合子C1を介してステップS24と接続される。
図19に示されるように、安定性判定部71Bは、被印刷媒体Spの左端位置SwLと右端位置SwRとから、被印刷媒体Spの搬送に使用される使用ローラとその個数Nrとを判別する(ステップS21)。
個数Nrが1個のとき(ステップS22のYES)、安定性判定部71Bは、上記した条件(C1)が満たされるか否かを判定し(ステップS25)、条件(C1)が満たされないときは(ステップS25のNO)、搬送安定性が良好ではないと判定する(ステップS29)。一方、条件(C1)が満たされるとき(ステップS25のYES)、安定性判定部71Bは、さらに上記条件(C2)が満たされるか否かを判定する(ステップS26)。条件(C2)が満たされないとき(ステップS26のNO)、安定性判定部71Bは、搬送安定性が良好ではないと判定する(ステップS29)。他方、条件(C2)が満たされるとき(ステップS26のYES)、安定性判定部71Bは、搬送安定性が良好であると判定する(ステップS24)。
個数Nrが2個のときは(ステップS22のNO及びステップS23のYES)、安定性判定部71Bは、上記した条件(C3)が満たされるか否かを判定し(ステップS27)、条件(C3)が満たされないときは(ステップS27のNO)、搬送安定性が良好ではないと判定する(ステップS29)。一方、条件(C3)が満たされるとき(ステップS27のYES)、安定性判定部71Bは、さらに上記条件(C4)が満たされるか否かを判定する(ステップS28)。条件(C4)が満たされないとき(ステップS28のNO)、安定性判定部71Bは、搬送安定性が良好ではないと判定する(ステップS29)。他方、条件(C4)が満たされるとき(ステップS28のYES)、安定性判定部71Bは、搬送安定性が良好であると判定する(ステップS24)。
個数Nrが3個以上のときは(ステップS23のNO)、安定性判定部71Bは、搬送安定性は良好であると判定する(ステップS24)。
搬送安定性の良否判定(ステップS20)が完了した後、被印刷媒体Spの搬送安定性が良好であるとき(図18のステップS30のYES)、図18の制御手順は終了する。次いで、印刷制御部71Aは、印刷ジョブデータに基づき、ヘッド制御回路83、スペースモータ制御回路84及び改行モータ制御回路86を制御して被印刷媒体Sp上に印刷画像を形成させる。
一方、被印刷媒体Spの搬送安定性が良好ではないときは(ステップS30のNO)、再セット制御部71Cが再セット処理を実行する(ステップS31)。図20は、再セット処理(ステップS31)の手順の一例を概略的に示すフローチャートである。
図20に示されるように、再セット制御部71Cは、まず、上記の通り、被印刷媒体Spが再セットされるべき適正位置(再セット位置)MLを算出する(ステップS32)。次いで、再セット制御部71Cは、スペースモータ制御回路84を制御して印刷ヘッド52を再セット位置MLと対応する位置に移動させる(ステップS33)。
次に、再セット制御部71Cは、オペレータに被印刷媒体Spの再セットが可能である旨を知らせるための報知処理を行う(ステップS34)。具体的には、再セット制御部71Cは、表示部92の表示画面にメッセージを表示させることができる。図21は、このときの表示画面92Dの一例を示す図である。図21に示されるように、表示画面92Dには、「用紙位置の改善ができます」とのメッセージが表示されている。
その後、再セット制御部71Cは、オペレータによる操作入力があるまで待機する(ステップS35のNO)。このとき、オペレータは、操作パネル93を操作して「継続印刷」、「改頁」及び「無効」のいずれかの指示を入力することができる。この操作入力に応じてステップS36に処理が移行する。ここで、「継続印刷」は、被印刷媒体Spを再セットせずに現在セットされている被印刷媒体Spへの印刷を強行させる指示であり、「改頁」は、被印刷媒体Spの再セットのために被印刷媒体Spを排出させる指示である。「無効」は、「継続印刷」及び「改頁」以外の入力指示を意味する。
オペレータは、たとえば、図4に示した操作パネル93の入力スイッチ93Aを押下することで「継続印刷」指示を入力し、入力スイッチ93Bを押下することで「改頁」指示を入力することができる。その他の入力スイッチ93C〜93Hをオペレータが押下した場合は、「無効」指示が入力される。このとき、再セット制御部71Cは、図21に示されるように表示画面92Dにおいて、「継続印刷」及び「改頁」の指示入力が可能であることをそれぞれ示す「継続:印刷可SW」及び「改善:改頁SW」を表示することができるため、オペレータは、このメッセージに応じて、入力スイッチ93A,93Bのいずれかを押下することができる。
ステップS36で入力指示の種類が「無効」である場合は、再セット制御部71Cは、再度、オペレータによる操作入力があるまで待機する(ステップS35のNO)。一方、ステップS36で入力指示の種類が「継続印刷」である場合、再セット処理は終了する。このとき、印刷制御部71Aは、被印刷媒体Spの再供給を待たずに(図18のステップS40のNO)、印刷ジョブデータに基づき、ヘッド制御回路83、スペースモータ制御回路84及び改行モータ制御回路86を制御して被印刷媒体Sp上に印刷画像を形成させる。「継続印刷」は、たとえば、被印刷媒体Spの種類や厚みなどの特性から印刷を強行しても問題は生じ無いとオペレータが判断したときに有効な指示である。
他方、図20のステップS36で入力指示の種類が「改頁」である場合は、再セット制御部71Cは、改行モータ制御回路86を制御して被印刷媒体Spを画像形成装置1から排出させる(ステップS37)。その後、再セット制御部71Cは、被印刷媒体Spの再セットを促すための報知処理を行う(ステップS38)。具体的には、再セット制御部71Cは、表示部92の表示画面にメッセージを表示させることができる。図22(A)〜(F)は、表示画面92Dの上段に「用紙位置改善 再給紙待ち」とのメッセージが表示されるとともに、表示画面92Dの下段に「マーキングに用紙の左端を合わせてリセットしてください」とのメッセージを右端から左端に向けて流すように表示する様子を示す図である。
その後、印刷制御部71Aは、被印刷媒体Spの再供給待ちと判定し(ステップS40のYES)、ステップS10に処理手順を戻す。この段階で、オペレータは、表示されたメッセージに応じて、印刷ヘッド52の移動後の位置を目印にし、排出された被印刷媒体Spを再セット位置MLにセットし直すことができる。
オペレータが再セット位置MLに被印刷媒体Spを再セットした後は、ステップS11以後の手順が実行される。なお、このような手順の代わりに、スループット低下を防ぐため、再セット後は、無条件に印刷を実行することも可能である。
図20に示した再セット処理では、再セット制御部71Cが印刷ヘッド52を適正位置に移動させた(ステップS33)後に、ステップS34〜S38が実行されている。この代わりに、再セット制御部71Cは、第1の動作モード(継続印刷確認モード)では、上記図20に示した再セット処理を実行し、第2の動作モード(強制排出モード)では、ステップS34〜S36をスキップして被印刷媒体Spを強制的に排出させた後に、被印刷媒体Spの再セットを促すための報知処理を実行してもよい。不揮発性メモリ79には、これら第1及び第2の動作モードのうちいずれか一方の動作モードを指定する設定情報79s(図3)を書き換え可能に記憶することができる。ユーザは、操作パネル93を操作して設定情報79sの内容を変更することにより、当該設定情報79sで指定される動作モードを、第1の動作モードから第2の動作モードへもしくは第2の動作モードから第1の動作モードへ切り替えることが可能である。図23は、再セット処理の手順の他の例を概略的に示すフローチャートである。
図23に示されるように、再セット制御部71Cは、不揮発性メモリ79に記憶されている設定情報79sを参照して現在設定されている動作モードを確認する(ステップS31B)。次に、再セット制御部71Cは、上記ステップS32,S33を実行した後、現在設定されている動作モードが第1の動作モードであるときは(ステップS33B)、上記図20に示した再セット処理と同様に、ステップS34〜S38を実行する。
一方、現在設定されている動作モードが第2の動作モードであるとき(ステップS33B)、再セット制御部71Cは、改行モータ制御回路86を制御して被印刷媒体Spを強制的に画像形成装置1から排出させる(ステップS37F)。これにより、フロントフィードローラ31〜35とリアフィードローラ61〜65との一方または双方が回転して被印刷媒体Spを画像形成装置1から排出する。このとき、再セット制御部71Cは、フロントフィードローラ31〜35及びリアフィードローラ61〜65の回転方向を制御して被印刷媒体Spを後方(Y軸正方向すなわち通常の媒体搬送方向)に排出させてもよいし、もしくは、被印刷媒体Spを前方(Y軸負方向、すなわち通常の媒体搬送方向とは逆方向)に排出させてもよい。
次に、再セット制御部71Cは、被印刷媒体Spの再セットを促すための報知処理(ステップS38)を実行する。具体的には、再セット制御部71Cは、図22(A)〜(F)に示されるように表示部92の表示画面にメッセージを表示させることができる。被印刷媒体Spが前方のテーブル11上に排出された場合(ステップS37F)には、オペレータは、被印刷媒体Spを適正位置に再セットし易く、操作性が向上するという利点がある。
以上に説明したように、実施の形態1の画像形成装置1では、印刷制御部71Aが印刷を開始させる前に、安定性判定部71Bが被印刷媒体Spの搬送安定性の良否判定を実行する(図18のステップS20)。搬送安定性が良好ではないと判定されたときは、安定性判定部71Bは、オペレータに被印刷媒体の再セットを促す信号を出力し、もしくは、印刷ヘッド52を適正位置に移動させてオペレータに被印刷媒体Spの再セットを促すことができる。このため、被印刷媒体Spに対する印刷動作中にスキューが発生することを確実に防止することができる。
また、本実施の形態の画像形成装置1は、印刷可能範囲57内の任意のセット位置に対して高い印刷品位を確保することができる。従来技術の媒体セットフリー機能では、たとえば、中央の位置に被印刷媒体がセットされた場合と、その中央の位置から側方にずれた位置に被印刷媒体がセットされた場合とでは、印字位置の正確さなどの点で印刷品位に差が生じることがある。このように印刷品位に差が生じる原因は、印刷実行中に被印刷媒体Spのスキューが発生するためと考えられる。これに対し、本実施の形態の画像形成装置1は、印刷実行中のスキュー発生を未然に防止することができるため、高い印刷品位、具体的には、高い改行精度を実現することができる。ここで、改行精度とは、印刷行と次の印刷行との間で印字位置が一致する精度をいう。さらに、高価な被印刷媒体Spに対する印刷失敗を防ぐことも可能となる。
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図24は、実施の形態2の画像形成装置2の主要な機構を概略的に示す図であり、図25は、図24に示した機構を側方から視たときの図である。図24及び図25に示されるX軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する。
図24及び図25に示されるように、本実施の形態の画像形成装置2は、被印刷媒体Spの厚みに合わせて印刷ヘッド52とプラテン50との間のギャップ間隔を段階的に調整するためのギャップレバー(ギャップ調整機構)67と、そのギャップ間隔を光学的に検出するギャップ検出センサ68(たとえば、透過型センサ)とを有する。図24及び図25に示した機械的に動作する機構は、図1及び図2に示した機構と同様の機構を有し、さらにギャップレバー67及びギャップ検出センサ68を有するものである。
キャリッジシャフト55は、偏心形状の両端部(図示せず)を有し、画像形成装置2のフレームは、それら両端部をそれぞれ回動自在に支持する軸受け(図示せず)を有している。ギャップレバー67の回転角を変えることでキャリッジシャフト55の偏心形状の両端部が回転するため、キャリッジシャフト55の棒状部分は、水平状態を維持しつつ、それら両端部の回転に応じて高さ方向(Z軸方向)に上下動することができる。オペレータは、手動操作でギャップレバー67の回転角を変えることで、印刷ヘッド52とプラテン50との間のギャップ間隔を被印刷媒体Spの厚み(以下「媒体厚」とも呼ぶ。)に応じた間隔に調整することが可能である。また、オペレータは、ギャップレバー67の回転角を、レンジ値に応じた角度に変えることができる。図26は、ギャップレバー67のレンジ値に対応する媒体厚(想定値)の例をテーブルに示した図である。この種のテーブルは、不揮発性メモリ79に格納されている。
図27は、実施の形態2の画像形成装置2の制御機構を概略的に示すブロック図である。
図27に示されるように、本実施の形態の制御機構は、図3の制御部70に代えて制御部70Bを有する点を除いて、上記実施の形態1の制御機構と同じである。この制御部70Bは、図3のセンサインタフェース部75及びファームウェア79bに代えて、センサインタフェース部75B及びファームウェア79bbを有する点を除いて、上記実施の形態1の制御機構と同じである。
本実施の形態のセンサインタフェース部75Bは、媒体供給センサ群20、媒体検出センサ群40及び媒体幅検出センサ53に加えて、ギャップ検出センサ68とも接続されている。プロセッサ71は、これら媒体供給センサ群20、媒体検出センサ群40、媒体幅検出センサ53及びギャップ検出センサ68のそれぞれの検出出力をセンサインタフェース部75Bを介して受け取ることができる。
また、プロセッサ71は、不揮発性メモリ79から安定性判定プログラム79bbをロードし実行することで安定性判定部71Bbの機能を構成する。この安定性判定部71Bbは、上記実施の形態1の安定性判定部71Bと同様に搬送安定性の良否判定(図18のステップS20)を実行する機能を有し、さらに、被印刷媒体Spの媒体厚と媒体幅Swtとに応じて、その良否判定の要否を判定し、その良否判定が必要であると判定したときにのみ当該良否判定を実行する機能も有する。
一般に、媒体厚が小さくなるほど、被印刷媒体Spの搬送抵抗は低くなり、スキューの発生確率が低くなる。同時に、媒体幅Swtが小さくなるほど、被印刷媒体Spの搬送抵抗が低くなり、スキューの発生確率も低くなる。よって、媒体厚及び媒体幅Swtが所定の条件を満たすときは、被印刷媒体Spのセット位置に関わらず、使用ローラが被印刷媒体Spを安定姿勢で搬送することができる。
図28は、本実施の形態の画像形成装置2において搬送安定性の良否判定を実行しなかった場合に、選択可能なギャップレバー67のレンジ値に対応する被印刷媒体Spの厚み(媒体厚)と、媒体幅Swtと、印刷品位との間の関係の例をテーブルに示した図である。図28の例では、980ドット未満の媒体幅Swtに対しては、媒体厚が0.20mm以下の場合(レンジ値が3以下の場合)は、印刷品位の低下に至らない。また、980ドット以上で且つ1960ドット未満の媒体幅Swtに対しては、媒体厚が0.30mm以下の場合(レンジ値が5以下の場合)は、印刷品位の低下に至らないことも分かる。このような場合には、搬送安定性の良否判定を実行しなくても、所望の印刷品位を確保してスループットを向上させることができる。
不揮発性メモリ79には、搬送安定性の良否判定の要否条件を表すルックアップテーブルが格納されている。図29は、このルックアップテーブルの一例を示す図である。安定性判定部71Bbは、不揮発性メモリ79中のルックアップテーブルに従って、搬送安定性の良否判定の要否を決定することができる。
次に、図30を参照しつつ、上記構成を有する画像形成装置2で実行される画像形成制御方法について説明する。図30は、被印刷媒体Spをセットするための制御手順を概略的に示すフローチャートである。
画像形成装置1に電源が投入されると、プロセッサ71は、不揮発性メモリ79から制御用のコンピュータプログラム79a,79bb,79cをロードして実行することにより、印刷制御部71A、安定性判定部71Bb及び再セット制御部71Cを構成する。本実施の形態の印刷制御部71Aは、上記実施の形態1の場合の手順(図18)と同様にステップS10〜S13を実行する。
その後、安定性判定部71Bbは、ギャップ検出センサ68の検出出力に基づいてギャップレバー67のレンジ値を検知する(ステップS14)。そして、安定性判定部71Bbは、不揮発性メモリ79内のルックアップテーブル(図29)を参照して、ステップS20の搬送安定性の良否判定の要否を決定する(ステップS15)。
搬送安定性の良否判定が不要である旨の決定がなされたときは(ステップS16のNO)、図30の制御手順は終了する。このとき、印刷制御部71Aは、印刷ジョブデータに基づき、ヘッド制御回路83、スペースモータ制御回路84及び改行モータ制御回路86を制御して被印刷媒体Sp上に印刷画像を形成させる。
一方、搬送安定性の良否判定が必要である旨の決定がなされたときは(ステップS16のYES)、安定性判定部71Bbは、上記実施の形態1の場合(図18)と同様に搬送安定性の良否判定を実行する(ステップS20)。その後の処理手順は、上記実施の形態1の場合の手順(図18)と同様である。
以上に説明したように実施の形態2の画像形成装置2では、事前に、搬送安定性の良否判定の要否が決定され(図30のステップS15,S16)、その良否判定が不要であると決定された場合には、搬送安定性の良否判定(ステップS20)も、再セット処理(ステップS31)も実行されない。このため、所望の印刷品位を確保しつつスループットを向上させることができる。
なお、本実施の形態では、オペレータが被印刷媒体Spの厚みに応じてギャップレバー67のレンジ値を指定し、安定性判定部71Bbは、媒体幅Swtとレンジ値とに基づいて搬送安定性の良否判定の要否を決定しているが、これに限定されるものではない。たとえば、静電容量式センサなどの厚み検出センサを用いて被印刷媒体Spの厚みを検出してもよい。この場合に、媒体厚と媒体幅Swtと搬送安定性の良否判定の要否との間の関係を示すルックアップテーブルを不揮発性メモリ79に格納しておけば、安定性判定部71Bbは、そのルックアップテーブルを参照して搬送安定性の良否判定の要否を決定することができる。
実施の形態1,2の変形例.
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形態を採用することもできる。たとえば、上記実施の形態1,2の画像形成装置1,2は、水平インサータ方式の印刷装置として構成されているが、これに限定されるものではない。原稿から画像を光学的に読み取るスキャナに本件発明のスキュー防止用の構成を適用することも可能である。
また、上記実施の形態1,2では、図5,7〜9に示したように、使用ローラの重心位置RwC及び被印刷媒体Spの中心位置SwCは、それぞれ、ヘッド原点位置を基準として測定した値で表されるものであるが、これに限定されるものではない。たとえば、使用ローラの位置を基準とした被印刷媒体Spの相対位置を検出して中心位置SwCと重心位置RwCとの間の距離Lを算出してもよい。
また、上記実施の形態1,2のフロントフィードローラ31〜35及びリアフィードローラ61〜65の個数及び寸法については、これらに限定されるものではない。
また、上記実施の形態1,2では、使用ローラの個数が1個または2個の場合には被印刷媒体Spの搬送安定性の良否判定が実行され、使用ローラの個数が3個以上の場合には被印刷媒体Spの搬送安定性の良否判定が実行されないが(図19)、これに限定されるものでもない。
また、上記実施の形態2では、手動操作(マニュアル操作)されるギャップレバー67が使用されているが、これに限定されるものではない。たとえば、被印刷媒体Spの厚みに合わせて印刷ヘッド52とプラテン50との間のギャップ間隔を自動的に調整する機構が採用されてもよい。
さらに、実施の形態2の安定性判定部71Bbは、被印刷媒体Spの厚みを示すデータを上位装置であるホスト機器から受信し、搬送安定性の良否判定の要否(ステップS15)のためにそのデータを利用してもよい。