JP6060755B2 - サファイア単結晶育成用坩堝およびその製造方法 - Google Patents

サファイア単結晶育成用坩堝およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、サファイア単結晶育成のために用いられるサファイア単結晶育成用坩堝に関する。
近年、省エネや省スペースなどの要求から、照明装置として白色LEDが広く用いられている。この白色LEDは、サファイア単結晶基板上にGaN系半導体を形成した青色LEDと、蛍光体とを組み合わせて構成される。このため、白色LEDの需要の増加に伴い、サファイア単結晶基板の需要も急激に増加している。また、白色LEDを一般照明用に用いるには、その低コスト化が必要とされるため、サファイア単結晶基板に対しても、低価格化が要望されている。
一般に、サファイア単結晶基板は、サファイア原料融液(アルミナ融液)から育成したサファイア単結晶インゴットから、円盤状のウェーハを切り出すことによって製造される。サファイア単結晶の育成方法には、チョクラルスキー法(回転引き上げ法)やEFG法(Edge-defined Film-fed Growth Method、リボン状結晶成長法)に代表される、融液から単結晶を引上げて固化させる引き上げ法と、ブリッジマン法(垂直温度勾配凝固法)やVGF法(Vertical Gradient Freeze Method、垂直式温度傾斜凝固法)に代表される、サファイア原料融液を坩堝中で固化させる方法とがある。
このうち、引き上げ法は、育成されたサファイア単結晶を引き上げるためのスペースとその装置が必要であり、結晶育成装置が大型化せざるを得ず、初期投資費用が大きくなる。これに対して、ブリッジマン法やVGF法は、育成されたサファイア単結晶を引き上げる必要がないため、結晶育成装置の小型化や簡略化が可能であり、初期投資費用を抑えることができる。また、引き上げ法の場合は、サファイア単結晶基板として必要とされるc軸方向の結晶育成が非効率で現実的ではない。このため、育成効率の高いa軸方向での育成を行っているが、この場合、得られるサファイア単結晶インゴットから、c軸方向の基板を切り出す際のロスが非常に多くなる。一方、ブリッジマン法やVGF法の場合には、育成する結晶方位の自由度が高く、c軸方向の結晶を効率よく育成することができるため、ロスの少ないc軸方向の基板の切り出しが可能である。
ブリッジマン法やVGF法によりサファイア単結晶を育成する場合、坩堝中でサファイア原料融液を固化させるため、固化後のサファイア単結晶を坩堝から取り出すことが必要となる。しかしながら、固化後のサファイア単結晶を坩堝から容易に取り出すことができず、坩堝を破壊することが必要となっており、このことが、ブリッジマン法やVGF法によるサファイア単結晶の育成の実用化を妨げる原因となっている。
一方、サファイア単結晶育成にあたっては、サファイアの原料であるアルミナ(Al23)の高い融点(2040℃)に起因して、アルミナを融解するための坩堝は、2000℃以上の高温に耐え得るものでなくてはならず、特開2008−239352号などに示されるように、その材質は、イリジウム(融点:2454℃)、レニウム(融点:3100℃)、タングステン(融点:3380℃)、モリブデン(融点;2620℃)などの高融点金属あるいはこれらの合金に限られている。
これらの高融点金属のうち、イリジウム(Ir)やレニウム(Re)などは、高融点耐久性や化学的安定性といった特性を有するものの、価格が非常に高いことに加えて、熱膨張係数がサファイアと比較的近いため、サファイア単結晶を、その坩堝から取り出すことが困難である。
イリジウムの特性を活用するため、特開2007−119297号公報では、イリジウム製の薄型坩堝の厚さを0.3mm以下とすることが提案されている。また、特開平7-034289号公報では、タングステン、モリブデン、タンタル、または、これらの合金製坩堝の表面にイリジウムめっき層を形成することが提案されている。これらの技術によれば、イリジウムの使用量を抑制することができるため、生産コストの低減を図ることは可能である。
しかしながら、特開2007−119297号公報に記載のイリジウム製の薄型坩堝では、サファイア単結晶を育成するごとに坩堝を破壊することに変わりはない。また、特開平7-034289号公報の技術では、サファイア単結晶の育成後に、イリジウムめっき層が剥離するため、坩堝の再利用が困難である。したがって、いずれの坩堝も繰り返して使用することはできず、坩堝が高コストであるという問題の根本的な解決を図るものではない。
このような事情から、ブリッジマン法やVGF法によるサファイア単結晶の育成に用いる坩堝材料としては、高融点金属のうち、比較的低価格であり、サファイア単結晶よりも熱膨張係数が小さい、タングステン(W)やモリブデン(Mo)が着目されている。たとえば、特開2011-42560号公報において、坩堝の線膨張係数とサファイア単結晶の成長軸(c軸)に垂直な方向の線膨張係数との相違に着目して、タングステン、モリブデン、あるいはこれらの合金からなる坩堝が提案されている。
これらの中で、モリブデンからなる坩堝は、固化後のサファイア単結晶の外周にクラックが発生するものの、坩堝を破壊することなく単結晶を取り出すことができる旨が記載されている。しかしながら、モリブデンは、サファイアとの熱膨張係数の差が十分ではないため、実際には、坩堝を破壊することなく、単結晶を取り出すことができない場合が多い。一方、タングステンあるいはタングステンとモリブデンの合金からなる坩堝は、熱膨張係数に関しては問題がなく、高品質なサファイア単結晶が得られる旨が記載されているが、実際には、単結晶が取り出せず、坩堝の破壊が必要とされる場合がある。
以上のように、タングステン、モリブデン、あるいはこれらの合金からなる坩堝を用いた場合であっても、ブリッジマン法やVGF法によるサファイア単結晶の育成を、工業的過程において実用化できてないのが実情である。
特開2008−239352号公報 特開2007−119297号公報 特開平7-034289号公報 特開2011-042560号公報
本発明は、上述のような問題点に鑑み、ブリッジマン法やVGF法によりサファイア単結晶を育成した場合でも、坩堝を破壊することなく、育成後のサファイア単結晶を容易に取り出すことを可能とするサファイア単結晶育成用坩堝を低コストで提供することを目的とする。
本発明のサファイア単結晶育成用坩堝は、融点が2400℃以上で、かつ、2040℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以下であるタングステンまたはタングステン合金からなり、該坩堝の内周面のうち、サファイア単結晶の育成中において、少なくともサファイア原料融液の上面と接触する部分に、前記タングステンまたは前記タングステン合金を構成する成分と、5質量%以上の金属元素M(Mは、Pt、Pd、Re、Rh、Irから選択される1種以上の元素)との合金からなる固着防止層が形成されており、該固着防止層の表面におけるタングステンの含有率が20質量%以上、かつ、金属元素Mの含有率が20質量%以上であって、その厚さが0.05μm〜50μmであることを特徴とする。なお、前記固着防止層は、前記坩堝の内面の全面に形成されていてもよい。
前記タングステン合金は、タングステンとモリブデンとの合金からなることが好ましい。
前記固着防止層の厚さは、0.1μm〜10μmであることが好ましい。
前記固着防止層の表面におけるタングステンの含有率は、20質量%〜50質量%であることが好ましい。
前記タングステンとモリブデンとの合金におけるタングステンの含有率は、30質量%以上であることが好ましい。
本発明によれば、ブリッジマン法やVGF法によるサファイア単結晶の育成において、坩堝を破壊することなく、育成後のサファイア単結晶を容易に取り出すことを可能とするサファイア単結晶育成用坩堝を低コストで提供することが可能となる。また、サファイア単結晶を取り出す際に、サファイア単結晶に割れなどが生じることを効果的に防止することができ、サファイア単結晶の生産性を向上させることができるため、その工業的意義はきわめて大きい。
図1は、本発明のサファイア単結晶育成用坩堝の実施態様の一例を示す概略断面図である。 図2は、図1のA部の拡大図である。 図3は、本発明のサファイア単結晶育成用坩堝の他の実施態様の一例を示す概略断面図である。 図4は、アルミナ(Al23)、タングステンおよびモリブデンの熱膨張係数の温度依存性を示すグラフである。
本発明者らは、特開2011-042560号公報に開示されたモリブデン(Mo)、タングステン(W)、または、これらの合金からなる坩堝を用いてサファイア単結晶の育成を行った場合でも、育成後のサファイア単結晶を坩堝から取り出せない原因について検討した。その結果、モリブデン製の坩堝では、サファイアとモリブデンの熱膨張係数の差が十分でないため、坩堝の収縮によるサファイア単結晶の締め付けを十分に解消できていないこと、一方、タングステン製の坩堝およびモリブデンとタングステンからなる合金製の坩堝については、熱膨張係数には問題がないが、育成後のサファイア単結晶のうち、その上面が坩堝の内周面に接触している部分において、坩堝へのサファイア単結晶の固着が生じてしまうことが、その原因となっているとの知見を得た。
本発明者は、この知見を出発点として、サファイア単結晶育成用坩堝について鋭意研究を重ねた結果、該坩堝の内周面のうち、少なくともサファイア原料融液の上面と接触する部分に、タングステン(W)またはタングステン合金を構成する成分と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などの金属元素Mとの合金からなる合金層(固着防止層)を形成することにより、坩堝の内周面とサファイア原料融液との固着を防止することができるとの知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。なお、タングステン合金を構成する成分は、タングステンのほか、これらには限定されないが、モリブデン、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)などがあげられる。
(1)サファイア単結晶育成用坩堝
以下、本発明のサファイア単結晶育成用坩堝について、坩堝本体と固着防止層に分けて、詳細に説明をする。
(1−1)坩堝本体
本発明のサファイア単結晶育成用坩堝の材質としては、その融点が、サファイアの融点(2040℃)よりも高い、具体的に、2400℃以上の融点を有する、高温耐久性を有するものであることが必要である。
また、サファイアは、図4に示すように、育成方向であるc軸に垂直な方向における熱膨張係数(線膨張係数)が、2040℃において8×10-6/℃程度である。このため、本発明のサファイア単結晶育成用坩堝の材質としては、2040℃におけるその熱膨張係数が、サファイア単結晶のc軸に垂直な方向における熱膨張係数よりも低い値、すなわち、8×10-6/℃以下であることが必要となる。
このような融点および熱膨張係数を有する材料としては、種々のものが考えられるが、コストや加工性などを考慮すると、タングステン(融点:3422℃、2050℃における熱膨張係数:7.0×10-6/℃)が最適である。また、30質量%以上のタングステンを含むタングステンーモリブデン系合金も、融点が十分に高く、かつ、サファイアよりも十分に低い熱膨張係数を有するため、本発明のサファイア単結晶育成用坩堝の材質として使用することができる。
一方、タンタル(融点:3017℃)、イリジウム(融点:2466℃)などの高融点金属やこれらの合金については、その熱膨張係数がサファイアよりも大きいため、これら坩堝本体の主たる材料とすることはできないが、坩堝の用途や大きさに応じて、これらの高融点金属を、坩堝本体の熱膨張係数が前記所定値を上回らない範囲で添加することは可能である。
坩堝本体の材料として、タングステンとモリブデンからなる合金を使用する場合には、タングステンの含有率を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上とする。タングステンの含有率が30質量%未満では、タングステンとモリブデンからなる合金と、サファイアとの熱膨張係数との差を十分に大きなものとすることができないため、坩堝の収縮に起因するサファイア単結晶の締め付けなどにより、育成したサファイア単結晶を坩堝から、容易に取り出せなくなる可能性がある。
本発明のサファイア単結晶育成用坩堝の形状は、特に限定されるものではないが、たとえば、育成後のサファイア単結晶を容易に取り出す観点から、図1に示すように、坩堝本体の内周面にテーパが形成された形状とすることができる。この場合、開口側の内径が、底面側の内径よりも1%〜20%程度広くなるように、前記テーパが坩堝本体の内周面に設けられていることがより好ましい。
また、坩堝の厚さは、育成するサファイア単結晶の大きさにより適宜選択されるものであるが、たとえば、外径100mmφ〜200mmφ、高さ100mm〜300mmのサファイア単結晶を育成する場合には、厚さを5mm〜30mmとすることが好ましく、10mm〜20mmとすることがより好ましい。厚さが、5mm未満では坩堝の強度を十分に保つことができない。一方、30mmを超えると、坩堝の重量増加により、育成後のサファイア単結晶を取り出す際の作業性が悪化するため好ましくない。
なお、この場合において、厚さ以外の坩堝各部の寸法については、特に限定されるべきものではなく、ヒータの配置や出力、溶解炉の形状などに応じて、適宜選択すればよい。
(1−2)固着防止層
本発明のサファイア単結晶育成用坩堝は、その内周面のうち、サファイア単結晶の育成中において、少なくともサファイア原料融液の上面と接触する部分に、固着防止層が形成されていることを特徴とする。この固着防止層は、タングステンまたはタングステン合金を構成する成分と、5質量%以上の金属元素M(Mは、Pt、Pd、Re、Rh、Irから選択される1種以上の元素)との合金からなる合金層により構成される。この固着防止層の表面におけるタングステンの含有率は20質量%以上であり、金属元素Mの含有率は20質量%以上であり、かつ、固着防止層の厚さは0.05μm〜50μmの範囲にある。
本発明では、後述するように、坩堝の内周面に、金属元素Mからなる被覆層を形成した後、この被覆層に対して熱処理を施し、母材である坩堝本体に金属元素Mを拡散させることにより、坩堝本体の成分と金属元素Mとを合金化して固着防止層を形成している。なお、本発明において、固着防止層の存在および厚さを特定する場合において、固着防止層は、固着防止層の表面から、金属元素Mの含有率が5質量%となる位置までの領域と定義される。
この領域において、金属元素Mが均一に拡散することにより、または、一定の濃度勾配をもって拡散することにより、合金層(固着防止層)が形成されていることが望ましいが、金属元素Mの濃度勾配にばらつきがある場合であっても、固着防止層の表面におけるタングステンの含有率が20質量%以上であり、かつ、金属元素Mの含有率が20質量%以上であれば、該固着防止層の融点をサファイアの融点(2040℃)以上の温度とすることができ、かつ、サファイア単結晶の上面が接触する部分において、サファイア単結晶が該坩堝の内周面に固着することを効果的に防止することが可能となる。
また、サファイア単結晶と坩堝の内周面との固着が生じる場所は、サファイア単結晶の育成中に、サファイア原料融液の上面と坩堝の内周面とが接触する部分およびその近傍に限られるため、固着防止層は、坩堝の内周面のうち、サファイア原料融液の上面と接触する可能性がある部分にのみ形成されていれば十分である。当該部分は、サファイア単結晶の坩堝内への仕込み量により決定されるが、坩堝の高さに関して、上端から90%〜95%程度の範囲になる。仕込み量の変動を考慮して、このサファイア原料融液の上面と接触する部分を中心として、坩堝の高さに関して10%〜30%の範囲に固着防止層を形成することが好ましい。ただし、局所的に固着防止層を形成する場合には、後述するようにマスキングなどの作業が必要となり、低コスト化の妨げとなる可能性もある。したがって、固着防止層は、サファイア原料融液を上面と接触する可能性がある部分を含み、坩堝の内周面の広い範囲に形成してもよく、さらには、図3に示すように、坩堝の内面の全面に形成してもよい。
前記固着防止層の表面におけるタングステンの含有率は20質量%以上、好ましくは20質量%〜80質量%、より好ましくは20質量%〜50質量%、さらに好ましくは20質量%〜30質量%とする。タングステンの含有率が20質量%未満では、固着防止層の融点がサファイアの融点以下となったり、坩堝本体と固着防止層との密着が不十分となって、該固着防止層が剥離したりする可能性がある。一方、タングステンの含有率の上限値は、金属元素Mの含有率との関係で80質量%程度となる。
また、金属元素Mの含有率は、20質量%以上、好ましくは20質量%〜80質量%、より好ましくは40質量%〜60質量%とする。金属元素Mの含有率が20質量%未満では、サファイア単結晶の固着を防止することができない。一方、金属元素Mの含有率の上限値は、タングステンの含有率との関係で80質量%程度とする。
なお、固着防止層の表面における各成分の含有率は、坩堝の内周面のうち、固着防止層が形成されている5か所位置において、電子線マイクロアナライザにより各成分の含有率を測定し、それらを算術平均することにより求めることができる。
金属元素Mとしては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)から選択される1種以上を使用することができる。
これらの中で、サファイア単結晶の育成温度よりも高い融点を有するレニウム(融点:3186℃)およびイリジウム(融点:2466℃)については、合金化せず、被覆層として使用することができるが、高温環境下におけるサファイア単結晶の育成中に、この被覆層が坩堝本体から剥離することを防止する観点から、合金化することが必要である。
一方、サファイア単結晶の育成温度よりも低い融点を有する白金(融点:1768℃)、パラジウム(融点:1555℃)、ロジウム(融点:1964℃)については、坩堝本体を構成するタングステンとの合金化が必須である。
固着防止層の厚さは、使用する貴金属の量を減らすとともに、固着防止層を形成時の負荷を低減し、コストの削減を図る観点から、サファイア単結晶の固着を防止することができる、最小の範囲に制御することが好ましい。具体的には、固着防止層の厚さを0.05μm〜50μm、好ましくは0.1μm〜10μm、より好ましくは0.1μm〜1μmとする。固着防止層の厚さが0.05μm未満では、サファイアの固着を防止する効果が得られない。一方、50μmを超えると、合金化工程の負荷が高くなるばかりでなく、坩堝の製造コストの高騰を招くこととなる。
なお、固着防止層の厚さは、上述の通り、固着防止層の表面から、金属元素Mの含有率が5質量%となる位置までの距離と定義される。この固着防止層の厚さは、電子線マイクロアナライザを用いて、坩堝断面における金属元素Mの含有率を線分析することにより求めることができる。ただし、固着防止層の厚さにばらつきが生じている場合は、観察断面の5箇所について、固着防止層の表面から、金属元素Mの含有率が5質量%となる位置を測定し、これらの算術平均値を固着防止層の厚さとする。
(2)サファイア単結晶育成用坩堝の製造方法
本発明のサファイア単結晶育成用坩堝の製造方法のうち、坩堝本体を製造するための手段については、特に限定されることなく、粉末治金法などの従来の技術によって製造することが可能である。このため、以下、坩堝本体の製造方法の説明は省略し、主として固着防止層を形成するための手段および手順について説明する。
初めに、坩堝の内面の全面または一部に、金属元素M(Mは、Pt、Pd、Re、Rh、Irから選択される1種以上の元素)からなる被覆層を形成する。ただし、固着防止層の形成後に、該固着防止層の表面におけるタングステンの含有率が20質量%未満となる場合には、金属元素Mとタングステンとからなる被覆層を形成する。この被覆層の形成は、特に限定されることなく、たとえば、無電解めっきや電気めっきなどの湿式成膜法、または、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式成膜法のいずれの方法も用いることができる。
被覆層の厚さは、基本的には、固着防止層の組成や目標とする厚さに応じて、適宜選定する。
なお、坩堝の内周面の局所的な部分、すなわち、坩堝の内周面とサファイア原料融液の上面とが接触する部分のみに被覆層を形成する場合には、予め、他の部分にマスキングをすることが必要となる。
被覆層を形成した後、この被覆層に対して、加熱温度を1100℃〜2300℃、加熱時間を1時間〜10時間として熱処理を施し、金属元素Mを、坩堝の表面近傍に拡散させることにより、固着防止層を形成する。加熱温度が1100℃未満の場合、または、加熱時間が1時間未満の場合には、坩堝本体の表面近傍に、金属元素Mを十分に拡散させることができない。一方、加熱温度が2300℃を超える場合、または、加熱時間が10時間を超える場合には、固着防止層中の金属元素Mの含有率が高くなり、該固着防止層と坩堝本体の熱膨張係数の差が大きくなるため好ましくない。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、本実施例で作製した坩堝については、以下の観点から評価を行った。
(a)固着防止層
後述する溶解試験実施後に、坩堝に形成した固着防止層を目視で観察することにより、該固着防止層の状態について評価した。具体的には、固着防止層が溶融していたり、剥離していたりしたものは「不良(×)」と評価し、溶融や剥離が生じなかったもの「良(○)」と評価した。
(b)サファイア単結晶
坩堝からサファイア単結晶を取り出した後に、該サファイア単結晶を目視で観察することにより、固着防止層の形成による効果について確認した。具体的には、サファイア単結晶が坩堝に固着したり、取り出す際に割れが生じたりした場合には「不良(×)」と評価し、固着や割れが生じなかった場合は「良(○)」と評価した。
(実施例1)
[サファイア単結晶育成用坩堝の作製]
図1に示すような形状を有する、サファイア単結晶育成用のタングステン坩堝(1)を用意した。この坩堝(1)は、開口側(2)の内径が153mm、底面側(3)の内径が150mm、厚さが5mm、高さが150mmであり、開口側(2)の内径が、底面側(3)の内径よりも2%広くなるようにテーパが付けられているものであった。なお、この坩堝(1)は、粉末治金法により製造されたものであった。
この坩堝の内周面の(4)のうち、サファイア原料融液(5)の上面と接触する部分(接触部;6)となる部分を含むように、具体的には、サファイア単結晶の育成中に、サファイア原料融液の上面と接触する可能性のある部分を基準として、その上下方向20mmの範囲にわたって、めっき法により、白金からなる厚さ0.014μmの被覆層を形成した。その後、坩堝(1)を、加熱温度を1600℃、加熱時間を2時間として熱処理をすることにより、白金を坩堝(1)の表面近傍に拡散させ、固着防止層(7)を形成した(図2参照)。
また、坩堝(1)と同一の素材および同一の厚さからなる試験片に、同一の条件で被覆層を形成し、これを同一の条件で加熱処理することにより固着防止層(7)を形成した。この試験片の断面を、電子線マイクロアナライザ(Electron Probe MicroAnalyser;EPMA)により観察した結果、白金を5質量%以上含む固着防止層(7)の厚さは、合金片の表面から0.06mmであった。また、該固着防止層の表面におけるタングステンの量および白金の量は、それぞれ77質量%、23質量%であった。
[溶解試験]
このようにして得られたサファイア単結晶育成用坩堝に、2kgのアルミナを入れて、カーボンヒータを用いた抵抗加熱式の溶解炉を用いて、約2100℃まで加熱することにより溶解した。その後、炉内で除冷することにより、サファイア単結晶を得た。
炉内温度が室温まで下がったことを確認した後、坩堝を取り出し、この坩堝を逆さまにして、軽く衝撃を与えることでサファイア単結晶を取り出した。サファイア単結晶は、坩堝表面に固着しておらず、割れなども生じていなかった。また、サファイア単結晶を取り出した後の固着防止層には、溶融も剥離も確認されなかった。
(実施例2〜18、比較例1〜9)
坩堝材料、被覆層を構成する金属、加熱処理の温度および時間を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして、サファイア単結晶育成用坩堝を、それぞれ製造した。
これらのサファイア単結晶育成用坩堝を使用して、実施例1と同様の溶解試験を行い、(a)固着防止層と、(b)サファイア単結晶の観点から評価を実施した。これらの結果を表1に示す。
Figure 0006060755
(総合評価)
実施例1〜18は、本発明の技術的範囲に属するサファイア単結晶育成用坩堝を使用した例である。実施例1〜18により得られたサファイア単結晶は、坩堝に固着していなかったため、容易に坩堝から取り出すことができた。また、取り出したサファイア単結晶には割れなども生じていなかった。さらに、サファイア単結晶を取り出した後、坩堝の内周面を観察した結果、固着防止層の溶融や剥離などは生じていないことが確認された。
比較例1は、固着防止層を形成しなかった例である。このため、育成後のサファイア単結晶の一部が坩堝と固着しており、坩堝を破壊することなしに、該サファイア単結晶を坩堝から取り出すことができなかった。
比較例2および3は、固着防止層の厚さが本発明に規定する範囲よりも薄い例であり、比較例4および5は固着防止層の表面における金属元素Mの含有率が本発明に規定する範囲よりも少ない例である。いずれの場合も、比較例1と同様に、育成後のサファイア単結晶の一部が坩堝と固着しており、該サファイア単結晶を坩堝から容易に取り出すことができなかった。また、取り出されたサファイア単結晶には割れが生じていた。
比較例6および7は、固着防止層の厚さが本発明に規定する範囲を超える例である。比較例6および7では、育成後のサファイア単結晶の固着や割れ、固着防止層の溶融や剥離などは生じていなかったが、白金またはパラジウムの使用量を十分に低減することができないため、坩堝の製造コストを十分に削減することができなかった。
比較例8および9は、固着防止層の表面におけるタングステンの含有率が本発明に規定する範囲よりも少ない例である。このため、いずれの比較例においても、タングステンと金属元素Mが十分に合金化されず、金属元素Mが融解し、その融解部分でサファイア単結晶の固着が生じてしまった。
1 サファイア単結晶育成用坩堝
2 開口側
3 底面側
4 内周面
5 サファイア原料融液
6 接触部
7 固着防止層

Claims (6)

  1. 融点が2400℃以上で、かつ、2040℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以下であるタングステンまたはタングステンを含む合金からなり、内周面のうち、サファイア単結晶の育成中において、少なくともサファイア原料融液の上面と接触する部分に、前記内周面と該サファイア原料融液との固着を防止するための固着防止層が形成されており、
    該固着防止層は、タングステンまたはタングステン合金を構成する成分と、5質量%以上の金属元素Mとの合金により構成されており、Mは、Pt、Pd、Re、Rh、Irから選択される1種以上の元素であり、
    該固着防止層の表面におけるタングステンの含有率が20質量%以上、かつ、金属元素Mの含有率が20質量%以上であって、
    該固着防止層の厚さが0.05μm〜50μmである、
    サファイア単結晶育成用坩堝。
  2. 前記坩堝本体は、タングステンを含む合金からなり、該タングステンを含む合金は、タングステンとモリブデンとの合金からなる、請求項1に記載のサファイア単結晶育成用坩堝。
  3. 前記固着防止層の厚さは0.1μm〜10μmである、請求項1に記載のサファイア単結晶育成用坩堝。
  4. 前記固着防止層の表面におけるタングステンの含有率は、20質量%〜50質量%である、請求項1に記載のサファイア単結晶育成用坩堝。
  5. 前記タングステンとモリブデンとの合金におけるタングステンの含有率は、30質量%以上である、請求項2に記載のサファイア単結晶育成用坩堝。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のサファイア単結晶育成用坩堝の製造方法であって前記坩堝本体の内面の全面または一部に、Pt、Pd、Re、Rh、Irから選択される1種以上の元素である金属元素M、または金属元素Mとタングステンとからなる被覆層を形成し、該被覆層に対して、加熱温度を1100℃〜2300℃、加熱時間を1時間〜10時間とした熱処理を施し、前記坩堝本体に金属元素Mを拡散させることにより、前記固着防止層を形成する、サファイア単結晶育成用坩堝の製造方法。
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