JP7095289B2 - イリジウム発熱体、イリジウム発熱体の表面処理方法およびイリジウム製アフターヒーターの製造方法 - Google Patents

イリジウム発熱体、イリジウム発熱体の表面処理方法およびイリジウム製アフターヒーターの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、イリジウム発熱体、イリジウム発熱体の表面処理方法およびイリジウム製アフターヒーターの製造方法に関する。
タンタル酸リチウム(以下、「LiTaO3」とする場合がある)単結晶の製造は、例えばLiTaO3の粉末や塊状物等を金属製るつぼに入れて、高周波で加熱して熔融させて融液とし、融点付近に保った融液に種結晶を回転させながら接触して、その後種結晶を回転させながら徐々に引上げて単結晶を引上げ成長させる、いわゆるチョクラルスキー法(以下、「CZ法」とする場合がある)による育成によって行なわれている。製造されたLiTaO3単結晶は、レーザー光の第2高調波発生材料やSAW素子の基板として有用である。
LiTaO3単結晶は割れやすい材料であり、育成中の単結晶に温度差が生じると熱応力で割れるおそれがある。そこで、例えば特許文献1の単結晶製造装置では、単結晶の温度差を小さくするために、るつぼの上部にアフターヒーターと呼ばれる加熱装置を用いて、単結晶を加温している。
育成中の単結晶は、LiTaO3の融点(1650℃)に近い温度であるため、アフターヒーターはより融点が高い耐熱金属材料が用いられ、イリジウム製アフターヒーターを用いることが一般的である。
一方、特許文献2に記載されているように不活性ガス雰囲気でLiTaO3単結晶を育成すると、単結晶に酸素欠損が生じて黒く着色する場合がある。そのため、LiTaO3単結晶を育成する際には、ガス雰囲気を0.5容量%以上2.5容量%以下の酸素を含む不活性ガス雰囲気とすることが提案されている。
イリジウムは融点が2443℃と高く、不活性ガス雰囲気では高温でも安定である。しかしながら、高温酸化雰囲気では、イリジウム酸化物が生成し、1096℃以上で生成したIrO2が主にIrO3となって揮発する場合がある(例えば、特許文献3)。
すなわち、イリジウム製アフターヒーターは、高温酸化雰囲気においてイリジウムが酸化されてさらに揮発してしまい、消耗してしまう場合がある。そのため、高温酸化雰囲気でイリジウムの消耗を抑制するためには、IrO2の生成を抑制することが重要である。
イリジウムの消耗を抑制する方法として、例えばイリジウムの表面を金属酸化物の膜で覆う方法が提案されている。例えば、特許文献3の記載によると、金属酸化物の中でもアルミニウムが効果的であるとされており、特許文献3によれば、アルミナイズ法(アルミニウム粉末とニッケル粉末の混合粉末に、さらにアルミナ粉末を混合し、真空または不活性ガス雰囲気下で600℃以上1300℃以下の温度範囲で1時間以上加熱する方法)により、酸化アルミニウム膜を形成することができる。
特開平7-187880 特開昭59-69490 特開2014-055325
しかしながら、アルミナイズ法では、部分的には酸化アルミニウム膜を形成することができるものの、例えばイリジウム製アフターヒーターの表面全体を酸化アルミニウム膜で完全に覆うことはできない。そのため、高温酸化雰囲気においてIrO2の生成を抑制することができず、イリジウムの消耗を抑制することは困難となる。
また、イリジウムの表面を直接、酸化アルミニウム膜で覆う方法が考えられるが、イリジウムと酸化アルミニウムとでは熱膨張率が違うため、熱による膨張と収縮を繰り返すことにより酸化アルミニウム膜が容易に脱離するおそれがある。酸化アルミニウム膜が脱離した後は、高温酸化雰囲気においてイリジウムが酸化されてしまい、IrO2の生成を抑制することができないため、イリジウムの消耗を抑制することは困難となる。また、脱離した酸化アルミニウムがるつぼ中の融液に混入するおそれがあり、この場合には酸化アルミニウムが不純物となって単結晶の育成が不良となる。
すなわち、イリジウム製のアフターヒーターやリフレクター等のイリジウム発熱体を用いて、酸素欠陥が無いLiTaO3単結晶を育成するため、不活性ガスに酸素を添加する雰囲気で単結晶の成長をさせると、イリジウムが酸化して蒸発することにより、イリジウム発熱体が消耗して薄くなるという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑み、高温酸素含有雰囲気下におけるイリジウムの消耗を抑制することができる、イリジウム発熱体、イリジウム発熱体の表面処理方法およびイリジウム製アフターヒーターの製造方法を提供することを目的とする。
高温酸素含有雰囲気下における酸化によるイリジウムの消耗を抑制するために、発明者らは、イリジウムの表面にまんべんなく緻密な酸化アルミニウム膜を形成することについて検討した。鋭意検討の結果、イリジウムの表面上に複数のアルミニウムとイリジウムの混合膜を形成し、それらの膜を熱処理により相制御して合金化し、更に表面にアルミニウム層を形成して、それを酸化させて最表面に酸化アルミニウム膜を形成することで、高温酸素含有雰囲気下におけるイリジウムの消耗を抑制することが可能となることを見出した。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明のイリジウム発熱体は、酸化アルミニウムからなる連続膜によって表面が被覆されたイリジウム発熱体であって、イリジウム表面を被覆し、アルミニウムを3.5原子%以上8原子%以下含むイリジウム相からなる第1合金膜と、前記第1合金膜を被覆し、IrAl2.75相からなる第2合金膜と、前記第2合金膜を被覆する前記酸化アルミニウムからなる連続膜を備える。
前記酸化アルミニウムからなる連続膜の膜厚が、0.15μm以上1μm以下であってもよい。
前記第1合金膜の膜厚が、0.1μm以上1μm以下であってもよい。
前記第2合金膜の膜厚が、0.1μm以上1μm以下であってもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明のイリジウム発熱体の表面処理方法は、イリジウム発熱体の表面に、膜厚が0.1μm以上1μm以下のイリジウム膜を成膜するイリジウム膜成膜工程と、前記イリジウム膜の表面に、膜厚が0.1μm以上1μm以下のアルミニウムを5原子%以上12原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第1混合膜を成膜する第1混合膜成膜工程と、前記第1混合膜の表面に、膜厚が0.4μm以上1μm以下のイリジウムを10原子%以上28原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第2混合膜を成膜する第2混合膜成膜工程と、前記第2混合膜が成膜されたイリジウム発熱体を400℃以上650℃以下に加熱して、アルミニウムとイリジウムとを合金化する第1熱処理工程と、前記第1熱処理工程後、イリジウム発熱体を1450℃以上1600℃以下に加熱して、IrAl2.75相からなる合金膜を形成するとともに、当該合金膜の表面にアルミニウム過剰膜とを形成する第2熱処理工程と、前記第2熱処理工程後、酸素含有雰囲気下にてイリジウム発熱体を660℃以上1000℃以下に加熱して、前記アルミニウム過剰膜を酸化させて酸化アルミニウムからなる連続膜を形成する第3熱処理工程を含む。
また、上記課題を解決するために、本発明のイリジウム製アフターヒーターの製造方法は、イリジウム発熱体の表面に、膜厚が0.1μm以上1μm以下のイリジウム膜を成膜するイリジウム膜成膜工程と、前記イリジウム膜の表面に、膜厚が0.1μm以上1μm以下のアルミニウムを5原子%以上12原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第1混合膜を成膜する第1混合膜成膜工程と、前記第1混合膜の表面に、膜厚が0.4μm以上1μm以下のイリジウムを10原子%以上28原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第2混合膜を成膜する第2混合膜成膜工程と、前記第2混合膜が成膜されたイリジウム発熱体を400℃以上650℃以下に加熱して、アルミニウムとイリジウムとを合金化する第1熱処理工程と、前記第1熱処理工程後、イリジウム発熱体を1450℃以上1600℃以下に加熱して、IrAl2.75相からなる合金膜を形成するとともに、当該合金膜の表面にアルミニウム過剰膜とを形成する第2熱処理工程と、前記第2熱処理工程後、イリジウム発熱体を円筒状に成形する成形工程と、前記成形工程後、酸素含有雰囲気下にてイリジウム発熱体を660℃以上1000℃以下に加熱して、前記アルミニウム過剰膜を酸化させて酸化アルミニウムからなる連続膜を形成する第3熱処理工程を含む。
本発明のイリジウム発熱体、イリジウム発熱体の表面処理方法およびイリジウム製アフターヒーターの製造方法によれば、高温酸素含有雰囲気下におけるイリジウムの消耗を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体の概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る表面処理方法における、第2混合膜成膜工程後のイリジウム発熱体の概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る表面処理方法における、第2熱処理工程後のイリジウム発熱体の概略断面図である。 アフターヒーター100およびリフレクター110を設置した単結晶育成装置1000を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の一実施形態にかかるイリジウム発熱体、イリジウム発熱体の表面処理方法およびイリジウム製アフターヒーターの製造方法について、適宜図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
[イリジウム発熱体]
本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体は、第1合金膜と、第2合金膜と、酸化アルミニウムからなる連続膜を備える。
(第1合金膜)
第1合金膜は、イリジウム表面を被覆し、アルミニウムを3.5原子%以上8原子%以下含むイリジウム相からなる合金膜である。すなわち、アルミニウムがイリジウムに固溶した状態の合金膜である。第1合金膜のイリジウム相は、例えばLiTaO3の融点(1650℃)に近い温度であっても安定な相であるため、高温酸素含有雰囲気下においてもイリジウム表面への酸素の接触を抑制することができる。また、熱膨張率の異なるイリジウム表面と酸化アルミニウムからなる連続層との間にあることで、これらの熱膨張率の違いを和らげる緩衝膜としてのはたらきがあり、酸化アルミニウムからなる連続膜の割れを防止することができる。これらの酸素接触の抑制効果や緩衝膜としての作用は、一様にまんべんなくイリジウム表面を被覆する連続膜であることにより、より発揮される。
第1合金膜の膜厚が、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。かかる範囲内の膜厚であれば、上記の酸素接触の抑制効果や緩衝膜としての作用を満足しつつ、イリジウム表面や第2合金膜との密着性が良好となるため、結果として酸化アルミニウムからなる連続膜の割れや剥離等をより抑制することができる。かかる膜厚が0.1μm未満の場合には、上記の酸素接触の抑制効果や緩衝膜としての作用が十分に得られないおそれがある。また、かかる膜厚が1μmより大きい厚膜の場合には、上記の抑制効果、緩衝膜としての効果および密着性に問題は生じないものの、厚膜とするためにコストがかかる場合がある。
(第2合金膜)
第2合金膜は、第1合金膜を被覆し、IrAl2.75相からなる合金膜である。第2合金膜のIrAl2.75相は、例えばLiTaO3の融点(1650℃)に近い温度であっても安定な相であるため、高温酸素含有雰囲気下においてもイリジウム表面への酸素の接触を抑制することができる。また、第1合金膜と共に、熱膨張率の異なるイリジウム表面と酸化アルミニウムからなる連続層との間にあることで、これらの熱膨張率の違いを和らげる緩衝膜としてのはたらきがあり、酸化アルミニウムからなる連続膜の割れを防止することができる。これらの酸素接触の抑制効果や緩衝膜としての作用は、一様にまんべんなく第1合金膜の表面を被覆する連続膜であることにより、より発揮される。
前記第2合金膜の膜厚が、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。かかる範囲内の膜厚であれば、上記の酸素接触の抑制効果や緩衝膜としての作用を満足しつつ、第1合金膜や酸化アルミニウムからなる連続膜との密着性が良好となるため、酸化アルミニウムからなる連続膜の割れや剥離等をより抑制することができる。かかる膜厚が0.1μm未満の場合には、上記の酸素接触の抑制効果や緩衝膜としての作用が十分に得られないおそれがある。また、かかる膜厚が1μmより大きい厚膜の場合には、上記の抑制効果、緩衝膜としての効果および密着性に問題は生じないものの、厚膜とするためにコストがかかる場合がある。
(酸化アルミニウムからなる連続膜)
酸化アルミニウムからなる連続膜は、前記第2合金膜を被覆することにより、イリジウム発熱体の表面を被覆する。酸化アルミニウムは融点が2072℃であり、例えばLiTaO3の融点(1650℃)に近い温度であっても安定している。また、緻密な連続膜を形成することができる酸化物であるため、高温酸素含有雰囲気下においてもイリジウム表面への酸素の接触を抑制することができる。かかる抑制効果は、前記第1合金膜および前記第2合金膜と比べて特に高く、これらの膜と共に酸化アルミニウムからなる連続膜を備えることにより、イリジウムの酸化による消耗を更に抑制することができる。また、酸化アルミニウム膜があることにより、高温酸素雰囲気下における第1合金膜や第2合金膜中のイリジウムの酸化や揮発を抑制することができる。イリジウムの消耗を抑制するべく、酸化アルミニウム膜は一様にまんべんなく被覆する連続膜である。
前記酸化アルミニウムからなる連続膜の膜厚が、0.15μm以上1μm以下であることが好ましい。かかる範囲内の膜厚であれば、上記の酸素接触の抑制効果を満足しつつ、第2合金膜との密着性が良好となるため、酸化アルミニウムからなる連続膜の割れや剥離等をより抑制することができる。かかる膜厚が0.15μm未満の場合には、上記の酸素接触の抑制効果が十分に得られないおそれがある。また、かかる膜厚が1μmより大きい厚膜の場合には、上記の抑制効果や密着性に問題は生じないものの、厚膜とするためにコストがかかる場合がある。
次に、イリジウム発熱体の具体例として、図1に、本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体の概略断面図を示す。イリジウム発熱体10は、板状のイリジウム発熱体本体1の表面および裏面の両面が第1合金膜2によって一様に連続的に被覆されており、第1合金膜2は第2合金膜3によって一様に連続的に被覆されている。そして、第2合金膜3は、酸化アルミニウム膜4によって一様に連続的に被覆されている。このように各膜が連続的にまんべんなく下の膜やイリジウム発熱体本体1を被覆することにより、イリジウム発熱体本体1の酸化による消耗を抑制することができる。例えば、酸化アルミニウム膜4が連続膜ではなく、部分的にイリジウム発熱体本体1を被覆しない部分がある場合には、イリジウム発熱体本体1の酸化を抑制する効果が低くなり、イリジウムが消耗され易くなる。また、第1合金膜2や第2合金膜3が連続膜ではなく、イリジウム発熱体本体1を部分的に被覆しない部分がある場合には、イリジウム発熱体本体1に直接酸化アルミニウム膜4が被覆することとなる。この場合、イリジウムと酸化アルミニウムとでは熱膨張率が違うため、熱による膨張と収縮を繰り返すことにより酸化アルミニウム膜4が脱離するおそれがあり、結果としてイリジウムが消耗され易くなる。
本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体は、上記の膜以外にも膜を備えることができる。例えば、第1合金膜よりも耐酸化性に優れるAl3Ir膜を第2合金膜の上層または下層に備えることにより、酸化によるイリジウムの消耗をより抑制することができる。また、以下に示す表面処理方法によって得たイリジウム発熱体の場合には、成膜したイリジウム膜が完全に合金化せずに残存する場合がある。
上記において説明した本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体であれば、第1合金膜、第2合金膜および酸化アルミニウムからなる連続膜を備えることにより、高温酸化雰囲気においてイリジウム発熱体本体の酸化による消耗を抑制することが可能である。そのため、耐久性が要求される高温酸素雰囲気下に曝される部材としての用途に有用であり、例えばアフターヒーター、リフレクターまたはボトムヒーター等に形状を加工して用いることができる。アフターヒーターやリフレクターとして用いる場合には、イリジウム発熱体本体として、厚みが0.8mmから5mmの圧延した板材を用いることができる。
[イリジウム発熱体の表面処理方法]
上記した本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体を得る方法としては、特に限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体の表面処理方法は、イリジウム膜成膜工程と、第1混合膜成膜工程と、第2混合膜成膜工程と、第1熱処理工程と、第2熱処理工程と、第3熱処理工程を含む。
熱力学的な考察から、1500℃で安定なIr-Al相としては、IrAl2.75相、IrAl相、およびAlが固溶したIr相が挙げられる。ここで、IrAl2.75相の生成熱はIrAl相の約半分であるため、IrAl相よりもIrAl2.75相を優先して生成させる方法を採用することにより、表面処理に要する手間やコスト等を抑えることができる。本発明では、IrAl2.75相と、Alが固溶したIr相をイリジウム発熱体の表面に形成し、IrAl2.75相において過剰量となって最表面へ移動したアルミニウムを酸化する方法を採用した。この方法により、表面全体が万遍なくアルミニウム酸化膜で覆われたイリジウム発熱体を作製することができる。特に、IrAl2.75相と、Alが固溶したIr相からなるIr-Al多層構造にすることにより、表層の酸化アルミニウムからなる連続膜の脱離を防ぐことができる。
処理対象となるイリジウム発熱体の形状は、用途に応じて好適な形状のものを用いることができるため、特に限定されない。例えばアフターヒーターやリフレクターとして用いる場合には、イリジウム発熱体本体として、厚みが0.8mmから5mmの圧延した板材を用いることができる。
(イリジウム膜成膜工程、第1混合膜成膜工程および第2混合膜成膜工程)
イリジウム膜成膜工程は、イリジウム発熱体の表面に、膜厚が0.1μm以上1μm以下のイリジウム膜を成膜する工程である。そして、第1混合膜成膜工程は、前記イリジウム膜の表面に、膜厚が0.1μm以上1μm以下のアルミニウムを5原子%以上12原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第1混合膜を成膜する工程である。さらに、第2混合膜成膜工程は、前記第1混合膜の表面に、膜厚が0.4μm以上1μm以下のイリジウムを10原子%以上28原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第2混合膜を成膜する工程である。
イリジウム膜、第1混合膜および第2混合膜の膜形成に用いる成膜法としては、特に限定されない。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレーティング法等を用いることができる。イリジウムが高融点金属であることを考慮すると、スパッタリング法を用いて成膜することがより好ましい。
ここでは、スパッタリング法により成膜する工程について、具体的に説明する。まず、イリジウムターゲットとアルミニウムターゲットをスパッタリング用カソードに装着し、真空チャンバー内に対象となるイリジウム基材(例えば、イリジウム発熱体本体)をセットする。次に、真空チャンバー内を真空排気後、不活性ガスを導入して真空チャンバー内の圧力を0.13Pa~1.3Pa程度に保持する。不活性ガスとしてはArガスを用いることが好ましく、N2ガスを用いると窒化アルミニウムが生成されるおそれがある。この状態で、イリジウム基材を回転数10~30rpmで回転させながら、カソードに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、イリジウム基材の被覆対象面上にイリジウム膜とイリジウム-アルミニウム混合膜(第1混合膜および第2混合膜)を順次成膜する。各膜について所望の膜厚を形成した後、イリジウム基材を取り出して反転し、再度スパッタ成膜を行うことで、イリジウム基材の表面と裏面の両面にイリジウム膜とイリジウム-アルミニウム混合膜を形成することができる。イリジウム‐アルミニウム混合膜の組成比は、イリジウムターゲットとアルミニウムターゲットに印加する電力によって調整することができるため、印可電力の調整により第1混合膜と第2混合膜を作り分けることができる。
イリジウム発熱体の表面にイリジウム膜を成膜することにより、アルミニウムとイリジウムとの合金化による発熱反応を抑制することができる。この発熱反応は、イリジウム発熱体の密度よりも成膜によるイリジウム膜の密度の方が小さいことや、成膜によるイリジウム膜の結晶性が低いことにより、イリジウム-アルミニウム混合膜を成膜する際にアルミニウムがイリジウム膜へ拡散することで、イリジウム膜とイリジウム-アルミニウム混合膜との界面におけるアルミニウムの濃度を低くすることができることで、抑制することができる。
また、イリジウム膜を成膜することにより、アルミニウムがイリジウム発熱体の方へ拡散してしまうことを防止することができ、酸化アルミニウム膜を形成するにあたり、アルミニウムのロスを少なくすることができる。
更に、イリジウム膜を成膜することで、熱処理工程によってアルミニウムがイリジウム膜へ拡散することにより、表面処理後のイリジウム発熱体の本体と第1合金膜との界面が混ざり合うことで、密着性が向上する。
イリジウム膜の膜厚は0.1μm以上1μm以下である。膜厚が0.1μm未満の場合には、イリジウム膜が完全な連続膜にならないため、上記の発熱反応を防止する効果が低下するおそれがある。イリジウム膜の膜厚が1μmとなると、膜の密着性は一定になり、その一方でイリジウム膜の成膜時間が長くなるので、1μmを超える膜厚とすることは好ましくない。
第1混合膜は、アルミニウムを5原子%以上12原子%以下含み、不可避的に混入する不純物を考慮しなければ、残部はイリジウムである。アルミニウムの含有量が5原子%未満の場合には、イリジウム発熱体を1000℃~1600℃で使用する際に、アルミニウム濃度の高い膜と反応して大きな発熱が発生するおそれがある。また、1600℃でのイリジウム相中におけるアルミニウムの固溶限界は12原子%であるため、アルミニウムの含有量が12原子%を超えると、IrAl相が生成して大きな発熱が発生するおそれがある。これらの発熱反応により、イリジウムの酸化を助長してしまうおそれがあるため、イリジウムの消耗を抑制する観点から、発熱反応の発生を防止することが好ましい。なお、第1混合膜の生成後は、膜を安定化させる観点から、1~2時間程度の冷却時間を設けることが好ましい。
第1混合膜の膜厚は、0.1μm以上1μm以下である。第1混合膜の膜厚が0.1μm未満の場合には、第1混合膜が完全な連続膜にならないおそれがあり、この場合には第2混合膜との密着性が悪くなることが予想される。また、第1混合膜の膜厚が1μmを超えても密着性は向上せず、第1混合膜の成膜時間が長くなるので、1μmを超える膜厚とすることは好ましくない。
第2混合膜は、イリジウムを10原子%以上28原子%以下含み、不可避的に混入する不純物を考慮しなければ、残部はアルミニウムである。イリジウムの含有量が10原子%未満の場合には、後述する第2熱処理工程においてIrAl2.75相が生成されず、イリジウムが固溶したアルミニウム液相が生成するおそれがある。また、第1熱処理工程における合金化の際に、イリジウム濃度の高い第1混合膜と過剰に合金化反応することで、発熱量が大きくなるおそれがある。イリジウムの含有量が28原子%を超えると、IrAl2.75相とIrAl相の2相が生成されるおそれがあり、この場合には酸化可能なアルミニウムが少なくなってしまい、後述する第3熱処理工程を行っても、酸化アルミニウムからなる連続膜の膜厚を十分に確保することができなくなるおそれがある。
なお、第2混合膜は、膜としてのイリジウムの含有量の平均が10原子%以上28原子%以下であれば、複数の層として形成してもよく、単一の層として形成してもよい。例えば、イリジウムの含有量が10原子%以上28原子%の範囲内で異なるようにスパッタリングし、2~3層からなる第2混合膜を形成することができる。さらに、イリジウム発熱体の方に向けてイリジウムの含有量が大きくなるように複数の層を形成することや、イリジウム発熱体の方に向けてイリジウムの含有量が小さくなるように複数の層を形成することができる。
第2混合膜の膜厚は、0.4μm以上1μm以下とする。第2混合膜の膜厚が0.4μm未満の場合には、酸化可能なアルミニウムが少なくないことにより、酸化アルミニウムからなる連続膜の膜厚を十分に確保することができなくなるおそれがある。また、第2混合膜の膜厚が1μmを超えると、第2熱処理工程によって表面に析出するアルミニウムの量が多くなりすぎるおそれがあり、この場合には、析出したアルミニウムを第3熱処理工程によって完全に酸化できなくなるおそれがある。
(第1熱処理工程および第2熱処理工程)
第1熱処理工程は、前記第2混合膜が成膜されたイリジウム発熱体を400℃以上650℃以下に加熱して、アルミニウムとイリジウムとを合金化する工程である。また、第2熱処理工程は、前記第1熱処理工程後、イリジウム発熱体を1450℃以上1600℃以下に加熱して、IrAl2.75相からなる合金膜を形成するとともに、当該合金膜の表面にアルミニウム過剰膜とを形成する工程である。これらの工程により、アルミニウムを3.5原子%以上8原子%以下含むイリジウム相からなる第1合金膜と、IrAl2.75相からなる第2合金膜を形成することができる。また、第2合金膜の表層にアルミニウム過剰膜を形成するこができる。
アルミニウムを3.5原子%以上8原子%以下含むイリジウム相とIrAl2.75相の形成は、反応熱が大きいために1段階の熱処理で形成しようとすると別の相が形成されてイリジウムの消耗を抑制する効果を十分に発揮することができないおそれがある。そこで、第1熱処理工程および第2熱処理工程の2段階の熱処理を行って発熱を抑制する。
1段目の熱処理である第1熱処理工程では、第1混合膜と第2混合膜の各膜中のアルミニウムとイリジウムと合金化することが目的である。スパッタリング等により成膜した第1混合膜と第2混合膜では、アルミニウム原子とイリジウム原子が混合した非晶質状態となっているので、合金化に伴って発熱することがある。その際にアルミニウムが飛散しないように、第1熱処理工程はアルミニウムの融点以下で行う。また、反応温度は400℃未満では、合金化反応がほとんど進まない。そのため、第1熱処理工程は400℃以上で行う。また、反応温度が650℃を超えると、反応速度が大きくなって発熱量が増大して連続膜が出来ないおそれがあるため、第1熱処理工程は650℃以下で行う。合金化の効率を考慮すると、より好ましい反応温度は、500℃以上600℃以下である。
第1熱処理工程を行うにあたり、400℃以上から反応温度までの温度上昇速度を0.3℃/分以上0.5℃/分以下とすることが好ましい。均一な連続膜を形成することを考慮すると、温度上昇速度は、処理対象となる膜熱処理を行う膜の温度が均一かつ一定の温度となるように、また膜の最高温度が650℃以下になるように行うことが重要である。例えば、0.5℃/分よりも大きな温度上昇速度では、合金化反応による発熱を十分制御できないことにより、650℃を超える恐れがあるため好ましくない。また、温度上昇速度が0.3℃/分未満の場合には、温度上昇に時間がかかるため効率的ではない。また、反応温度での保持時間は、十分に合金化させるべく、1時間以上100時間以下とすることが好ましい。なお、加熱開始温度から400℃までについては、温度上昇速度は特に限定されないが、例えば1℃/分程度の温度上昇速度で昇温させることができる。
なお、第1熱処理工程の雰囲気は、非酸素雰囲気とし、N2ガス雰囲気とすると窒化アルミニウムが生成されるおそれがあるため、0.1Pa以下の真空中またはAr等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
2段目の熱処理である第2熱処理工程は、IrAl2.75相の形成と、IrAl2.75相の表面へアルミニウム過剰膜の析出を目的とする。アルミニウム過剰膜は、大部分がアルミニウムからなる膜であり、アルミニウム濃度が85原子%以上95原子%以下程度である。ただし、アルミニウム過剰膜には、熱処理条件によってはアルミニウムの酸化が阻害されない程度にイリジウムや不可避不純物を含む場合がある。
第2熱処理工程の熱処理温度は、1450℃以上1600℃以下とする。熱処理温度が1450℃未満ではAl3Irが形成されるおそれがあり、この場合にはイリジウムの消耗を抑制する効果が不十分となるおそれがある。また、熱処理温度が1600℃を超えると、IrAl2.75相が分解されてIrAl相が形成されるおそれがあり、この場合には密着性が不十分となること等によりイリジウムの消耗を抑制する効果が不十分となるおそれがある。第2熱処理工程の処理時間は、IrAl2.75相の形成と、IrAl2.75相の表面へアルミニウム過剰膜の析出を満足するべく、1時間以上20時間以下とすることが好ましい。
なお、第2熱処理工程の雰囲気は、非酸素雰囲気とし、N2ガス雰囲気とすると窒化アルミニウムが生成されるおそれがあるため、0.1Pa以下の真空中またはAr等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
(第3熱処理工程)
第3熱処理工程は、第2熱処理工程後、酸素含有雰囲気下にてイリジウム発熱体を660℃以上1000℃以下に加熱して、アルミニウム過剰膜を酸化させて酸化アルミニウムからなる連続膜を形成する工程である。この工程により、第2熱処理工程で析出したアルミニウム過剰膜を酸化させることができる。
第3熱処理工程は、アルミニウムが液相になると酸化反応が急速に進行することを利用して、アルミニウムの融点(660℃)以上の温度で、かつ1000℃以下で行う。アルミニウムを十分に酸化させることを考慮すると、700℃以上1000℃以下で熱処理することが好ましい。1000℃を越える熱処理温度で処理することも可能であるが、1000℃を超えても処理効率は向上しないため、熱処理温度の上限は1000℃を目安とする。
なお、第3熱処理工程の雰囲気は、アルミニウムを酸化させるべく、酸素含有雰囲気とする。N2ガスが存在すると窒化アルミニウムが生成されるおそれがあるため、Ar等の不活性ガスに酸素を5体積%以上20体積%以下加えた雰囲気とすることが好ましい。
酸化アルミニウム膜の膜厚は、0.15μm未満の場合は連続膜とならないおそれがあるため、0.15μm以上とすることが好ましい。また、酸化アルミニウム膜の膜厚が1μmを超えると、酸化膜に酸化しなかったアルミニウム金属が残るおそれがあり、この場合には高温酸素含有雰囲気下等とするための加熱時にアルミニウム金属が膨張や液化して酸化アルミニウムが脱落する場合がある。そのため、酸化アルミニウム膜の膜厚は1μm以下とすることが好ましい。イリジウム発熱体の表面全体を酸化アルミニウム層によって一様に被覆することを考慮すると、酸化アルミニウム膜の膜厚は0.15μm以上0.5μm以下とすることがより好ましい。
以上の表面処理方法の一例をまとめると、まず、イリジウム基板等の上にスパッタリング法で100%のイリジウム膜を形成し、その上にアルミニウムを5原子%以上12原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第1混合膜、最表層にイリジウムを10原子%以上28原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第2混合膜を形成する。そして、イリジウム基板等を加熱することで、アルミニウムを移動させて相制御を行い、イリジウム基板等の上に第1合金膜を形成し、その上に第2合金膜を、さらに最表層にアルミニウム過剰膜を形成する。最終的に、酸素を添加しながらイリジウム基板等を加熱することでアルミニウム過剰膜のアルミを溶融させ表面をまんべんなく覆うとともに酸化させる。これらの処理により、イリジウム基板等の上に第1合金膜、その上に第2合金膜、最表層に酸化アルミニウム膜を形成することができる。
以下に、イリジウム発熱体の表面処理方法における表面処理過程について図2、3を用いて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る表面処理方法における、第2混合膜成膜工程後のイリジウム発熱体の概略断面図である。イリジウム発熱体11は、板状のイリジウム発熱体本体1の表面および裏面の両面に、イリジウム膜5、第1混合膜6および第2混合膜7が成膜された状態である。この状態から、第1熱処理工程および第2熱処理工程を実施して合金化等を行う。
図3は、本発明の一実施形態に係る表面処理方法における、第2熱処理工程後のイリジウム発熱体の概略断面図である。イリジウム発熱体12は、第1熱処理工程および第2熱処理工程が実施されたことにより、イリジウム発熱体本体1の表面および裏面の両面に第1合金膜2および第2合金膜3が被覆され、更に最表面にアルミニウム過剰膜8が形成された状態である。この状態から、第3熱処理工程を実施して、アルミニウム過剰膜8を酸化させて酸化アルミニウム膜4を形成し、図1のイリジウム発熱体10が製造される。
上記において説明した本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体の表面処理方法であれば、表面処理により第1合金膜、第2合金膜および酸化アルミニウムからなる連続膜を備えるイリジウム発熱体を得ることができる。このイリジウム発熱体であれば、高温酸化雰囲気においてイリジウム発熱体本体の酸化による消耗を抑制することが可能である。そのため、耐久性が要求される高温酸素雰囲気下に曝される部材としての用途に有用であり、例えばアフターヒーター、リフレクターまたはボトムヒーター等に形状を加工して用いることができる。
[イリジウム製アフターヒーターの製造方法]
上記した本発明の一実施形態に係るイリジウム発熱体の一例として、イリジウム製アフターヒーターを製造する方法としては、特に限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係るイリジウム製アフターヒーターの製造方法は、イリジウム膜成膜工程と、第1混合膜成膜工程と、第2混合膜成膜工程と、第1熱処理工程と、第2熱処理工程と、成形工程と、第3熱処理工程を含む。なお、イリジウム膜成膜工程、第1混合膜成膜工程、第2混合膜成膜工程、第1熱処理工程、第2熱処理工程および第3熱処理工程の詳細は、イリジウム発熱体の表面処理方法において説明した内容と同様であり、説明を省略する。以下、成形工程について説明する。
(成形工程)
成形工程は、第2熱処理工程後、イリジウム発熱体を円筒状に成形する工程である。第3熱処理工程後は、酸化アルミニウムからなる連続膜が形成されており、この連続膜は他の膜と比べて硬く、イリジウム発熱体を変形させると割れが発生するおそれや、連続膜が脱離するおそれがある。そのため、成形工程は第3熱処理工程の前に行う。
成形工程は、イリジウム発熱体へ第1合金膜と第2合金膜が積層され、更に酸化アルミニウムからなる連続膜が最表面となるイリジウム製アフターヒーターを製造することが出来れば、イリジウム発熱体をどのように円筒状に成形してもよい。例えば、板状のイリジウム発熱体に対してイリジウム膜成膜工程から第2熱処理工程まで行った後、温度800℃以上1400℃以下、酸素や窒素を含まないアルゴン雰囲気下等の無酸素雰囲気下での熱間処理により、イリジウム発熱体の板を巻回して端部をつき合わせ溶接することにより、円筒状に成形することができる。
上記において説明した本発明の一実施形態に係るイリジウム製アフターヒーターの製造方法であれば、表面処理により第1合金膜、第2合金膜および酸化アルミニウムからなる連続膜を備えるイリジウム製アフターヒーターを得ることができる。このイリジウム製アフターヒーターであれば、高温酸化雰囲気においてイリジウム製アフターヒーターの酸化による消耗を抑制することが可能である。そのため、例えばチョクラルスキー法によってタンタル酸リチウム等の単結晶を育成する場合において、単結晶の割れを防止できるアフターヒーターとして有用である。
上記において説明した、本発明の一実施形態にかかるイリジウム発熱体の用途の一例としては、タンタル酸リチウムの単結晶の育成が挙げられる。そこで、以下、タンタル酸リチウムの単結晶の育成について、単結晶育成装置および単結晶育成方法を挙げつつ、具体的に説明する。
[タンタル酸リチウムの単結晶の育成について]
単結晶の育成としては、例えば抵抗加熱方式や高周波誘導加熱方式の単結晶育成装置を用いた、CZ法による単結晶の育成が挙げられる。単結晶育成装置では、タンタル酸リチウムのみならず、例えば、ニオブ酸リチウムランガサイト等の単結晶を育成することができる。また、単結晶育成に用いる雰囲気は、アルゴンなどの不活性ガスが挙げられる。
CZ法は、ある結晶方位に従って切り出された、通常、断面視における一辺が5mm~10mm程度の直方体の単結晶の先端を種結晶として、この種結晶を同一組成の単結晶の原料融液に浸潤し、回転しながら種結晶を徐々に引上げることによって、種結晶の性質を単結晶に伝播しながら大口径化して単結晶を製造する方法である。
CZ法における単結晶の育成過程は、まず、結晶径を徐々に拡大させて種結晶から円錐形状の肩部を形成する肩部形成過程と、所望の結晶径となるまで拡大させて肩部を形成したのち、円柱形状の直胴部を形成する直胴部形成過程と、を備える。肩部形成過程、直胴部形成過程に亘って、種結晶を坩堝上方の空間に向かって引き上げながら単結晶の育成を行うことができる。
(タンタル酸リチウム単結晶の育成装置)
次に、本発明の一実施形態にかかるイリジウム発熱体のうち、アフターヒーター100およびリフレクター110の使用例として、これらを設置した単結晶育成装置1000について、図4の断面模式図を参照して説明する。
単結晶育成装置1000は、円筒状のアフターヒーター100およびドーナツ板状のリフレクター110を備える装置であり、さらに、高周波誘導加熱方式の加熱手段として加熱コイル200、イリジウム製ルツボ300、アルミナ台400、断熱材500、種結晶保持治具610を備えるシード棒600、蓋700、セラミックス製ルツボ台800、単結晶育成装置1000の動作を制御する不図示の制御手段と、を備える。なお、図4においては、タンタル酸リチウムの種結晶をA、育成されたタンタル酸リチウム単結晶をB、原料融液をCの符号で示している。
(タンタル酸リチウム単結晶の育成方法)
次に、単結晶育成装置1000を使用した、タンタル酸リチウム単結晶Bの育成方法を説明する。
まず、イリジウム製ルツボ300に、タンタル酸リチウム単結晶Bの原料を充填して、高温酸化雰囲気にて加熱コイル200によりルツボ300を加熱して、ルツボ300内の原料を融点以上に加熱して融解することにより、単結晶Bの原料融液Cを得る。次に、シード棒600の種結晶保持治具610に取り付けられた、タンタル酸リチウムの種結晶Aを、ルツボ300内の原料融液Cの上面に接触させる。これを、シーディングという。その後、シード棒600のシード棒駆動手段(未図示)により、種結晶Aを回転させながら徐々に上方へシード棒600を引き上げる。単結晶Bの育成中は、加熱コイル200によるルツボ300、アフターヒーター100およびリフレクター110の加熱温度や、シード棒600の回転数および引き上げ速度等を制御手段等により制御することにより、単結晶Bに肩部および直胴部を育成する。直胴部が所定の長さになったところで、シード棒600の引き上げ速度等を制御して、原料融液Cの上面と育成した単結晶Bの下端とを切り離し、その後冷却してタンタル酸リチウム単結晶Bが完成する。
単結晶育成装置1000でタンタル酸リチウム単結晶Bを製造すると、アフターヒーター100およびリフレクター110は高温酸化雰囲気に曝されることとなり、イリジウムの酸化により消耗されやすい環境下へおかれることとなる。ただし、本発明のイリジウム発熱体であれば、酸化アルミニウム膜が連続膜としてイリジウム発熱体を被覆していることにより、イリジウムの消耗を抑制することができる。その結果、耐用年数が伸びることによりアフターヒーター100およびリフレクター110の交換頻度が減少し、同一のアフターヒーター100およびリフレクター110を用いて、タンタル酸リチウム単結晶を繰り返し育成することができる。
以下、本発明について、実施例によりさらに説明を行う。ただし、本発明の範囲は、この実施例により制限されることはない。
実施例では、スパッタリング法を採用してイリジウム発熱体の表面処理を行い、表面処理後のイリジウム発熱体の消耗性について、性能確認試験を行った。また、第1合金膜、第2合金膜および酸化アルミニウム膜について、膜構造と組成の確認を行った。
(スパッタリング条件)
スパッタリングは、スパッタリング装置(アルバック株式会社製 型式:SIH-450)を用いて行った。スパッタリング前のチャンバー内の到達真空度は、1.5×10-4Pa、スパッタ時のArガス圧は0.5Paとした。使用したAlターゲットは6インチ5mm厚、Irターゲットは5mm厚であり、銅製のバッキングプレートにInでボンディングして使用した。ターゲットと基板間距離60mm、基板回転数は30rpmとした。
イリジウム膜、第1混合膜および第2混合膜の組成は、各ターゲットに印加するDC電力の割合や成膜時間による膜厚制御により行った。成膜状態の確認のため、SEM-EDS装置(SEM(走査型電子顕微鏡):日本電子株式会社製 型式:JSM-7001F、EDS(エネルギー分散型X線分光器):サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 型式:検出器 UltraDry 解析システム NORAN System 7)により、EDS分析も行って膜の組成を分析した。
スパッタリング後のイリジウム膜、第1混合膜および第2混合膜のそれぞれの膜厚は、事前にマスク付の平坦基板(Si)に同様のスパッタリングを行って、マスクとスパッタ膜の段差を段差計(オプティカルプロファイラー)で測定することにより求めた平均値とした。
表面処理の対象となるイリジウム発熱体としては、イリジウム基板(150mm×50mm×1mm)を使用し、SUS(ステンレス)製ホルダー上に金属製の爪でイリジウム基板を固定した後、スパッタ成膜を行った。なお、SUSとイリジウム基板の間には、伝熱をよくするためにカーボンシート(1mm厚)を挟んだ。
(実施例1)
イリジウム基板の表面にスパッタリング法でイリジウム膜を0.3μm、アルミニウム濃度8原子%の第1混合膜を0.35μm、アルミニウム濃度85原子%(すなわち、イリジウム濃度15原子%)の第2混合膜を0.5μm、順次積層した。スパッタリング後の膜は、いずれも剥がれた部分がなく、連続膜であった。
次にアルゴンガス雰囲気中で、300℃から400℃へ2時間かけて温度上昇させ、次に400℃から550℃まで0.4℃/分の速度で温度上昇させ、その後、550℃で2時間、第1熱処理工程を行った。
次に、円筒を真空焼結炉に入れて0.05Paの真空中にて1500℃で2時間、第2熱処理工程を行った。
第2熱処理工程後のイリジウム基板を1200℃に加熱し、酸素や窒素を含まないアルゴン雰囲気下にて行う熱間処理により、巻回して端部をつき合わせて溶接し、円筒を形成した(成形工程)。
その後、10体積%の酸素を添加したアルゴンガス雰囲気中で、800℃で1時間、第3熱処理工程を行って、酸化アルミニウム膜の連続膜によって表面が被覆されたイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(実施例2)
イリジウム基板の表面に、スパッタリング法でイリジウム膜を0.8μm形成した以外は、実施例1と同様の方法でイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(実施例3)
第2混合膜のアルミニウム濃度を88原子%(すなわち、イリジウム濃度12原子%)にした以外は、実施例1と同様の方法でイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(実施例4)
第2混合膜のアルミニウム濃度を72原子%(すなわち、イリジウム濃度28原子%)にした以外は、実施例1と同様の方法でイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(実施例5)
第2混合膜のアルミニウム濃度を90原子%(すなわち、イリジウム濃度10原子%)にした以外は、実施例1と同様の方法でイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(実施例6)
第1混合膜のアルミニウム濃度を5原子%にした以外は、実施例1と同様の方法でイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(実施例7)
第1混合膜のアルミニウム濃度を12原子%にした以外は、実施例1と同様の方法でイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(比較例1)
イリジウム基板の表面にスパッタリング法でイリジウム膜を0.1μm形成した以外は、実施例1と同様の方法でスパッタリングを行い、イリジウム膜、第1混合膜および第2混合膜を成製した所、スパッタリング膜が部分的に剥がれた。そのため、第1熱処理工程以降の工程には進まなかった。
(比較例2)
第1混合膜のアルミニウム濃度を15原子%にした以外は、実施例1と同様の方法でスパッタリングを行い、イリジウム膜、第1混合膜および第2混合膜を作製した所、スパッタリング膜が部分的に剥がれた。そのため、第1熱処理工程以降の工程には進まなかった。
(比較例3)
第2混合膜のアルミニウム濃度を70原子%(すなわち、イリジウム濃度を30原子%)にした以外は、実施例1と同様の方法でスパッタリングを行い、イリジウム膜、第1混合膜および第2混合膜を作製した所、スパッタリング膜が部分的に剥がれた。そのため、第1熱処理工程以降の工程には進まなかった。
(比較例4)
第1混合膜の膜厚を0.08μmにした以外は、実施例1と同様の方法でイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(比較例5)
第2混合膜の膜厚を0.3μmにした以外は、実施例1と同様の方法でイリジウム製アフターヒーターを作製した。
(従来例)
イリジウム膜、第1混合膜および第2混合膜の成膜および第1~第3熱処理工程を実施せず、実施例1と同様の方法で、イリジウム基板を巻回して端部をつき合わせて溶接し、円筒を形成したことにより、酸化アルミニウム膜が形成されていないイリジウム製アフターヒーターを作製した。
[性能確認試験]
実施例1~7、比較例1~5および従来例で作製したイリジウム製アフターヒーターを、1200℃の酸素を5体積%含んだアルゴン雰囲気中(すなわち、高温酸化雰囲気中)で100時間保持して、各イリジウム製アフターヒーターの質量変化を調査した。表1に結果を示す。
Figure 0007095289000001
実施例1~7のいずれについても、熱処理工程の前後において膜の剥がれは認められなかった。また、イリジウム製アフターヒーターの質量減少量は、酸化アルミニウム膜がない従来例の質量減少量の1/10以下であり、イリジウムの消耗を抑制することができ、性能が向上していることが分かった。
一方、比較例の結果から、イリジウム膜の膜厚が不十分な場合(比較例1)、第1混合膜のアルミニウム含有量が多い場合(比較例2)および第2混合膜のアルミニウム含有量が少ない場合(比較例3)には、熱処理工程前において膜の剥がれが認められた。
また、第1混合膜の膜厚が不十分な場合(比較例4)および第2混合膜の膜厚が不十分な場合(比較例5)には、熱処理工程前において膜の剥がれが認められなかったものの、性能確認試験における質量減少量が従来例とほぼ同様であり、酸化アルミニウム膜による被覆効果が十分ではないために、イリジウムが酸化し、IrO2がさらにIrO3となり、気化したものと思われる。
[膜構造と組成の確認]
性能確認試験後に実施例1と比較例4、5のイリジウム製アフターヒーターの膜断面をSEM-EDSで調査した。
実施例1のアフターヒーターは、イリジウム基板の上にアルミニウム濃度5原子%のイリジウム層(第1合金膜)が0.41μm、次に、アルミニウム濃度72原子%のIrAl2.75相からなる層(第2合金膜)が0.33μm形成されており、さらにその上に0.18μmの酸化アルミニウム層が形成されていた。いずれの膜も連続膜であり、割れや脱離等の欠陥は認められなかった。なお、この結果より、第1混合膜と第1合金膜とでは、第1合金膜のアルミニウムの濃度が30~40原子%減少していたことから、アルミニウムを5原子%以上12原子%以下含む第1混合膜を熱処理して第1合金膜とすることにより、第1合金膜中のアルミニウム濃度はスパッタリング後のアルミニウム濃度の60~70%程度になることがわかった。
比較例4のアフターヒーターは、イリジウム基板上にアルミニウムを含む相およびIrAl2.75がまばらに存在していた。また、アフターヒーターの最表面には酸化イリジウム(IrO2)が観察された。この酸化イリジウムがさらに酸化されて、IrO3となって揮発することにより、アフターヒーターが消耗したものと予想された。
比較例5のアフターヒーターは、連続した酸化アルミニウム膜が表面に存在する部分の下にはイリジウム基板の上にアルミニウム濃度5原子%のイリジウム層(第1合金膜)やアルミニウム濃度73原子%のIrAl2.75相からなる層(第2合金膜)がそれぞれ約0.3μm形成されていた。しかしながら、性能確認試験によって酸化アルミニウム膜に亀裂が発生した部分や酸化アルミニウムが無くなった部分では、第1合金膜や第2合金膜がなく、下地のイリジウムが酸化して酸化イリジウム(IrO2)が観察された。この酸化イリジウムがさらに酸化されて、IrO3となって揮発することにより、アフターヒーターが消耗したものと予想された。
(実施例のまとめ)
アルミニウム層を酸化させて酸化アルミニウム(Al23)による保護膜を形成する際、アルミナによる連続膜を形成するためには、酸化処理を行う融液状態の場合には表面に凹凸があることによって薄い部分ができることを考慮すると、アルミニウム(融体)の膜厚が0.15μm相当必要であるものと考えられた。比較例5において、第2混合膜の組成はIr0.15Al0.85であるが、これが第2熱処理工程により相分離して0.6(Ir0.25Al0.75)+0.4Alになり、アルミニウム過剰膜が生成された。比較例5の第2混合膜の膜厚が0.3μmであることから(表1)、相分離した後のアルミニウム過剰層の厚みは0.12μm程度しかないと考えられ、連続膜が形成されなかったものと考えられた。ここで、酸化アルミニウムによる膜が連続膜でない場合や、酸化アルミニウム膜に割れがある場合には、連続膜の無い部分や割れのある部分から酸素ガスが侵入して、イリジウム合金の酸化やイリジウムの昇華が発生して、酸化アルミニウム膜の下に空洞が生じるものと考えられた。空洞が生じると、さらに酸素ガスの侵入、イリジウムの酸化、およびイリジウムの昇華が連続して起こり、さらに消耗が進行するものと考えられた。
一方、実施例5において、第2混合膜の膜厚は0.4μmであり(表1)、相分離後のアルミニウム過剰膜の厚みは0.16μm程度あると考えられ、酸化アルミニウムによる連続膜が形成され、イリジウムの消耗が抑制されたものと考えられた。
本発明によれば、高温酸化雰囲気においてイリジウム発熱体の酸化を抑制することが可能であり、耐用年数が伸びることによりイリジウム発熱体の交換頻度が減少する。そのため、タンタル酸リチウム単結晶等、高温酸化雰囲気下における単結晶の育成に有用であり、本発明は産業上の利用可能性を有している。
1 イリジウム発熱体本体
2 第1合金膜
3 第2合金膜
4 酸化アルミニウム膜
5 イリジウム膜
6 第1混合膜
7 第2混合膜
8 アルミニウム過剰膜
10 イリジウム発熱体
11 イリジウム発熱体
12 イリジウム発熱体
100 アフターヒーター
110 リフレクター
200 加熱コイル
300 イリジウム製ルツボ
400 アルミナ台
500 断熱材
600 シード棒
610 種結晶保持治具
700 蓋
800 セラミックス製ルツボ台
1000 単結晶育成装置
A タンタル酸リチウムの種結晶
B タンタル酸リチウム単結晶
C 原料融液

Claims (3)

  1. 酸化アルミニウムからなる連続膜によって表面が被覆されたイリジウム発熱体であって、
    イリジウム表面を被覆し、アルミニウムを3.5原子%以上8原子%以下含むイリジウム相からなる連続膜である第1合金膜と、
    前記第1合金膜を被覆し、IrAl2.75相からなる連続膜である第2合金膜と、
    前記第2合金膜を被覆する前記酸化アルミニウムからなる連続膜を備える、
    前記酸化アルミニウムからなる連続膜の膜厚が、0.18μmであり、
    前記第1合金膜の膜厚が、0.41μmであり、
    前記第2合金膜の膜厚が、0.33μmである、
    イリジウム発熱体。
  2. イリジウム発熱体の表面に、膜厚が0.3μm以上1μm以下のイリジウム膜を成膜するイリジウム膜成膜工程と、
    前記イリジウム膜の表面に、膜厚が0.1μm以上1μm以下のアルミニウムを5原子%以上12原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第1混合膜を成膜する第1混合膜成膜工程と、
    前記第1混合膜の表面に、膜厚が0.4μm以上1μm以下のイリジウムを10原子%以上28原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第2混合膜を成膜する第2混合膜成膜工程と、
    前記第2混合膜が成膜されたイリジウム発熱体を400℃以上650℃以下に加熱して、アルミニウムとイリジウムとを合金化する第1熱処理工程と、
    前記第1熱処理工程後、イリジウム発熱体を1450℃以上1600℃以下に加熱して、IrAl2.75相からなる合金膜を形成するとともに、当該合金膜の表面にアルミニウム過剰膜とを形成する第2熱処理工程と、
    前記第2熱処理工程後、酸素含有雰囲気下にてイリジウム発熱体を660℃以上1000℃以下に加熱して、前記アルミニウム過剰膜を酸化させて酸化アルミニウムからなる連続膜を形成する第3熱処理工程を含み、
    前記イリジウム膜、前記第1混合膜および前記第2混合膜は連続膜である、
    イリジウム発熱体の表面処理方法。
  3. イリジウム発熱体の表面に、膜厚が0.3μm以上1μm以下のイリジウム膜を成膜するイリジウム膜成膜工程と、
    前記イリジウム膜の表面に、膜厚が0.1μm以上1μm以下のアルミニウムを5原子%以上12原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第1混合膜を成膜する第1混合膜成膜工程と、
    前記第1混合膜の表面に、膜厚が0.4μm以上1μm以下のイリジウムを10原子%以上28原子%以下含むアルミニウムとイリジウムとの第2混合膜を成膜する第2混合膜成膜工程と、
    前記第2混合膜が成膜されたイリジウム発熱体を400℃以上650℃以下に加熱して、アルミニウムとイリジウムとを合金化する第1熱処理工程と、
    前記第1熱処理工程後、イリジウム発熱体を1450℃以上1600℃以下に加熱して、IrAl2.75相からなる合金膜を形成するとともに、当該合金膜の表面にアルミニウム過剰膜とを形成する第2熱処理工程と、
    前記第2熱処理工程後、イリジウム発熱体を円筒状に成形する成形工程と、
    前記成形工程後、酸素含有雰囲気下にてイリジウム発熱体を660℃以上1000℃以下に加熱して、前記アルミニウム過剰膜を酸化させて酸化アルミニウムからなる連続膜を形成する第3熱処理工程を含み、
    前記イリジウム膜、前記第1混合膜および前記第2混合膜は連続膜である、
    イリジウム製アフターヒーターの製造方法。
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