JP6060625B2 - 細胞培養容器および細胞観察方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒトを含む哺乳類やその他生物の未受精卵、受精卵、クローン胚等を培養することができる、生殖補助医療、再生医療、創薬、発生工学、畜産業における育種改良や体外受精卵の生産、発生生物学等の研究に用いるための細胞培養容器および細胞観察方法に関する。
培養系で精子と卵子とを体外受精させて受精卵(接合子)を作製して、さらに受精卵を卵割、桑実胚、胚盤胞の段階を経て、透明帯から孵化した脱出胚盤胞の段階まで培養することが可能となり、この卵割から胚盤胞の段階にある受精卵を子宮に移植して産子を得る補助的生殖技術(ART)が、家畜領域のみならずヒトの不妊医療でも確立されている。
体外でこれらの初期胚を培養するときは、一般的に、複数の初期胚を含む少量の培養液を培養容器底面に配置し、その後、培養液の蒸発や水素イオン濃度変化を低減するための覆いとしてのオイルを上記培養容器内に加え、所定の設定環境条件の下、インキュベーター内で一定期間培養される。これらの体外培養下にある初期胚は、適宜、観察され、その状態や質の判定がなされた後に、後工程に配される。
一般に、培養容器で培養した細胞を観察するには、顕微鏡が用いられている。顕微鏡の焦点面の高さを制御することで、細胞内の所望の厚み位置に焦点を合わせて観察することができる。例えば、通常の接着系細胞を位相差顕微鏡で観察する場合、細胞が付着している培養容器の底面に焦点を合わせた後に、対物レンズまたはステージをZ軸方向に少しずらすことで細胞へ容易に焦点を合わせることが可能である。細胞自体の厚みが小さいため、焦点を合わせる際に注目する箇所の選択肢は少なく、撮影者の個人差が生じにくい。
一方、受精卵では、厚みが大きいため、培養容器の底面に焦点を合わせても、さらに数十〜数百μm単位で対物レンズまたはステージをZ軸方向に動かす必要がある。また、受精卵の内部では細胞が立体的な構造を取っているため、焦点を合わせる際に注目すべき箇所の選択肢が多く、撮影者によってバラつきが大きいという問題があった。
特許文献1には、受精卵等を収容可能な複数の窪み部を有する培養プレートにおいて、顕微鏡での観察を容易にするために、各窪み部を個別に特定する標識を付すことが記載されている。しかし、標識自体を焦点調整に用いることが可能なように高さ設計することについては記載されていない。
特開2009−50201号公報
本発明は、顕微鏡による観察および撮影において、対象物に応じて、焦点を合わせるべきZ軸方向の位置に、ばらつきなく、かつ容易に焦点を合わせることが可能な細胞培養容器を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行った結果、培養容器において、観察対象である受精卵等の細胞が接する底面とは異なる高さを有する焦点合わせ部を設けることより、当該焦点合わせ部に簡便に焦点合わせを行った後で、そのまま細胞を観察することにより、細胞を所望のZ軸位置でばらつきを減らして、迅速に観察および撮影できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)底壁に、細胞を収容するための凹部を有する細胞培養容器であって、
底壁における凹部の外に、焦点合わせ部を有し、
焦点合わせ部の高さは、凹部の最も低い位置より高い位置にあり、
焦点合わせ部の高さは、凹部の最も低い位置を基準として、凹部開口端の高さとは異なる、
前記細胞培養容器。
(2)焦点合わせ部の高さが、凹部の最も低い位置を基準として、凹部開口端の高さよりも低い位置にある、(1)記載の前記細胞培養容器。
(3)焦点合わせ部の高さは、凹部の最も低い位置を基準として、凹部開口端の高さの5倍よりも低い位置にある(1)記載の細胞培養容器。
(4)焦点合わせ部の高さが、凹部に細胞を収容したときの細胞の中心点と同じ高さである、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(5)焦点合わせ部が複数存在し、少なくとも2つの高さが異なる、(1)〜(4)のいずれか1項記載の細胞培養容器。
(6)焦点合わせ部は、平面視において一以上の図形を含むように構成され、
焦点位置に応じて顕微鏡の視野内におさまる図形の個数が異なるように構成される、(5)記載の細胞培養容器。
(7)焦点合わせ部の高さが、凹部の最も低い位置を基準として、20〜150μmである、(1)〜(6)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(8)焦点合わせ部が、最寄の凹部の中心から2000μm以内の範囲に存在する、(1)〜(7)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の細胞培養容器で培養した細胞を顕微鏡で観察する方法であって、
焦点合わせ部に顕微鏡の焦点を合わせる工程、および
細胞を観察する工程
を含む前記方法。
本発明により、顕微鏡による観察および撮影において、対象物に応じて、焦点を合わせるべきZ軸方向の位置に、容易に焦点を合わせることが可能な細胞培養容器が提供され、受精卵等の細胞をばらつきを減らして、迅速に観察および撮影することが可能になる。
本発明の細胞培養容器の一実施形態を示す上面図である。 図1の細胞培養容器の断面図である。 図1の細胞培養容器の内壁で囲まれた部分の拡大図である。 図3の断面図である。 本発明の細胞培養容器の内壁で囲まれた部分の一実施形態を示す上面図である。 図5の断面図である。 本発明の細胞培養容器の内壁で囲まれた部分の一実施形態を示す上面図である。 図7の断面図である。 本発明の細胞培養容器の内壁で囲まれた部分の一実施形態を示す上面図である。 図9の断面図である。 本発明の細胞培養容器の内壁で囲まれた部分の一実施形態を示す上面図である。 図11の断面図である。
以下、本発明について説明する。
本発明の細胞培養容器1は、例えば、図1〜図4に示すように、底壁2に、細胞を収容するための凹部3を有し、底壁2における凹部3の外に、焦点合わせ部4を有する。焦点合わせ部4の高さYは、凹部3の最も低い位置5より高い。また、凹部の最も低い位置5を基準にしたときに、焦点合わせ部4の高さYは、凹部3の開口端6の高さとは異なる。例えば、図4aおよび図4bに示すように、焦点合わせ部4の高さYが、凹部3の開口端6の高さより低くなるように構成してもよい。焦点合わせ部4の高さYが、凹部3の開口端6の高さより低い場合には、焦点合わせ部4に焦点を合わせた後で、底壁2に平行な方向へ観察位置を移動させることで観察対象に対して焦点を合わせることができる。また、図4cに示すように、焦点合わせ部4の高さYが、凹部3の開口端6の高さより高くなるように構成してもよい。焦点合わせ部4は、所定の観察高さに対して予め決められた所定の高さの値だけ上方にずれた位置に設けることが好ましい。焦点合わせ部4の高さYが、凹部3の開口端6の高さより高い場合には、焦点合わせ部4に焦点を合わせた後で、底壁2に垂直な方向であって下方、および底壁2に平行な方向へ観察位置を移動させることで観察対象に対して焦点を合わせることができる。
本発明において、焦点合わせ部の高さとは、本発明の細胞培養容器を顕微鏡のステージに設置したときの、顕微鏡におけるZ軸方向(すなわち、鉛直方向)の高さを意味する。
凹部の底面が平面である場合は、凹部の最も低い位置は、凹部の底面の位置を表す。凹部の底面は、平面以外の形状でもよく、例えば図4に示すように、凹部の最も低い位置から凹部の外縁に進むに従って高くなるような傾斜面を有し、凹部の底面が円錐状の形状を有していてもよい。その場合、凹部の最も低い位置は、円錐の頂点部分の位置となる。
凹部の寸法は、少なくとも1つの細胞を収容可能な寸法であれば特に制限されない。ここで、凹部の寸法は、凹部の開口部の外縁が形成する図形の最長径の長さをさす。従って、凹部の開口部の外縁が円形である場合、その直径(例えば、図3のV)は、培養する細胞の最大寸法と同じかそれより大きいものとなる。本発明の細胞培養容器により受精卵を培養する場合、胚盤胞の段階まで培養することが望ましいため、円形の開口部の直径は、胚盤胞の段階の細胞の最大寸法より大きいものであることが望ましい。胚盤胞の段階の細胞の最大寸法は通常100μm〜280μmであることから、円形の開口部の直径は、通常100μm以上である。また、凹部の開口部の外縁が円形である場合、その直径は、凹部間のピッチ、すなわち円の中心間の距離より短く、通常1mm未満である。ただし、上記寸法は収容する細胞の種類に依存して異なる。
例えば、ヒト受精卵の場合、凹部の開口部の直径は、通常100μm以上、好ましくは200μm以上、さらに好ましくは250μm以上であり、通常1000μm以下、好ましくは900μm以下、さらに好ましくは800μm以下である。また、上記の凹部開口部の直径は、細胞の最大寸法+αと規定することもできる。ここで、αは、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
焦点合わせ部4の高さYは、好ましくは凹部に観察対象となる細胞を収容したときの細胞の中心点と同じ高さである。換言すれば、焦点合わせ部4の高さYは、凹部に細胞を収容したときの、細胞の一番低い位置と一番高い位置の中点と同じ高さである。本発明において細胞には、受精卵のように複数の細胞の集合体も包含される。したがって、細胞の中心点には、細胞の集合体の中心点も包含される。したがって、凹部に細胞集合体を収容する場合、焦点合わせ部4の高さYは、凹部に細胞集合体を収容したときの、細胞集合体の一番低い位置と一番高い位置の中点と同じ高さである。
受精卵の観察や撮影においては、受精卵の中心部分を観察および撮影することが好ましい。受精卵の中心部分を観察することにより、中心部分断面において受精卵の外周が最大となり、より広い範囲の内部構造を観察できる。ただし、受精卵内部は、3次元構造をとっているため、全体を把握するには単一の断面観察では不十分な場合がある。この場合は、中心部分付近の上下断面も観察することで3次元構造を推測することが好ましい。
したがって、凹部に観察対象となる細胞を収容したときの細胞の中心点と同じ高さを有する焦点合わせ部を細胞培養容器に設ければ、予めその高さで焦点合わせを実施することにより、あとは顕微鏡のステージを水平方向に動かすだけで、受精卵を所望の位置で観察することができる。最初から細胞や細胞集合体を対象として焦点合わせを実施すると、観察者によって、または観察するたびに、焦点を合わせる位置(高さ)が異なってしまい、ばらつきが生じてしまう。観察位置が異なれば、細胞の経時変化を正確に観察することが難しく、細胞同士を正確に比較することも難しい。一方、本発明の細胞培養容器を用いれば、常に特定の高さに焦点を合わせて観察することになるため、ばらつきのない正確な観察が可能になる。また、細胞に焦点を合わせるよりも、焦点合わせ部に焦点を合わせる方が容易であるため、簡便かつ迅速な観察が可能になる。
したがって、焦点合わせ部の高さは、観察対象となる細胞や細胞集合体のサイズおよび観察したい部位によって適宜選択される。焦点合わせ部の高さは、凹部の最も低い位置を基準として、好ましくは20〜150μm、より好ましくは50〜140μmとすることができる。例えば、直径150μmの受精卵を観察する場合、焦点合わせ部の高さは、凹部の最も低い位置を基準として、75μmとすることが好ましい。また、観察対象となる細胞や細胞集合体の直径が凹部の深さの2倍より大きい場合もあり、細胞や細胞集合体の中心点の高さが凹部開口端の高さより高い位置にくる場合もある。その場合、焦点合わせ部の高さも、凹部開口端の高さより高い位置とすることが好ましいが、細胞や細胞集合体及び凹部のサイズを考慮すると、通常、凹部の最も低い位置を基準として、凹部開口端の高さの5倍よりも低い位置である。
焦点合わせ部は、階段状の構造など、複数の高さを有する構造とすることもできる。また、互いに異なる高さを有する複数の焦点合わせ部を設けてもよい。その場合は、焦点合わせ部に高さを表す標識(例えば、凹部の最も低い位置を基準とした場合の高さを表す数値など)を付すことにより、顕微鏡で観察しているときに、いずれの高さの焦点合わせ部に焦点があっているのかを確認できるような構造とすることが好ましい。焦点合わせ部自体が、文字、数字、図形などを構成していてもよい。異なる高さの焦点合わせ部を設けることにより、サイズの異なる種々の細胞の観察に使用することが可能になる。また、受精卵などの細胞が成長することによって、観察すべき部位が変化する場合に、適した高さの焦点合わせ部を選択することにより、観察すべき部位を的確に観察することができる。また、同一の細胞を同一のタイミングで観察する場合においても、細胞内の3次元構造を把握する上で有用な複数のZ断面観察を適切に行うことができる。
焦点合わせ部が複数の高さを有する構造である場合、または、互いに異なる高さを有する複数の焦点合わせ部を設ける場合、複数の高さとしては、2〜5種類程度の高さの焦点合わせ部が存在することが好ましい。その場合、異なる高さの間隔は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、このましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。情報量の観点では、高さの間隔がなるべく狭い方が好ましい。一方で、観察時のZ解像度の制約や実際に焦点合わせする際の精度の制約を受けるため、間隔を狭くしすぎても有効に活用することが難しい場合もある。また、焦点合わせ部の個数が同じ場合、高さの間隔が狭いと合わせられる高さの幅が狭くなる。従って、全体の構造を見たい場合や、様々な細胞のバリエーションに対応するには、ある程度高さの間隔は広いことが望ましい。
例えば、それぞれ35μm、55μm、75μm、95μm、115μmの高さを有する複数の焦点合わせ部を設けることができる。あるいは、それぞれ35μm、55μm、75μm、95μm、115μmの高さを有する部位を含む焦点合わせ部を設けることもできる。
焦点合わせ部の形状は、焦点合わせ可能な形状であれば特に制限されず、窪みからなる形状でもよいし、凸部からなる形状でもよい。窪みからなる場合、窪みの断面形状は、容器底壁側の底辺(下辺)が上方の底辺(上辺)より短い台形であることが好ましい。凸部からなる場合は、凸部の断面形状は、容器底壁側の底辺(下辺)が上方の底辺(上辺)より長い台形であることが好ましい。いずれも、通常の作製法(射出成型や切削加工、インプリント、エンボス加工など)では、逆テーパ形状は作製しづらいため、テーパ形状が好ましい。
凸部は、細胞を収容するための凹部と同じ形状の凹部の底面に設けられた凸部とすることが好ましい。さらに、焦点合わせ部は、焦点合わせが容易なように、角や辺などを有することが好ましい。
図4aに示す実施形態においては、焦点合わせ部4は、細胞を収容するための凹部より浅い窪みからなり、焦点合わせ部4の高さは、凹部の最も低い位置を基準として、Yで表される。高さYは、好ましくは細胞7を凹部に収容したときの中心部の位置に等しい高さである。図4bに示す実施形態において、焦点合わせ部4は、YおよびY’という複数の異なる高さを有する構造の窪みからなる。この場合、サイズの小さい細胞や細胞集合体7の観察には、高さYの焦点合わせ部を用いて焦点を合わせ、サイズの大きい細胞や細胞集合体7’の観察には、高さY’の焦点合わせ部を用いて焦点を合わせることにより、それぞれの細胞の適切な部位を正確に観察することができる。その場合、高さYおよびY’の焦点合わせ部の窪み底面に、それぞれ高さの数値を表示することが好ましい。
図5および6に示す実施形態においては、焦点合わせ部4は、細胞を収容するための凹部と同じ形状の凹部の底面に形成された凸部からなる。図6aの実施形態では、焦点合わせ部4は、凹部の底面に形成された高さYの凸部からなる。図6bの実施形態では、焦点合わせ部4は、凹部の底面に形成された高さYとY’を有する凸部からなる。凸部のエッジは顕微鏡観察の際にコントラスト高く観察が可能であるため、焦点合わせ作業をより容易に行うことができる。
図7および図8に示す実施形態においても、焦点合わせ部4は、細胞を収容するための凹部と同じ形状の凹部の底面に形成された凸部からなるが、複数の凸部がそれぞれ異なる高さYおよびY’を有するとともに、異なる図形を形成している。したがって、顕微鏡観察において、四角の形状の焦点合わせ部に焦点を合わせた場合は、高さYの位置で焦点が合っていることがわかり、三角の形状の焦点合わせ部に焦点を合わせた場合は、高さY’の位置で焦点が合っていることがわかる。このような態様において、三角、四角、円などの図形は例示であり、星型や楕円など別の図形でもよいし、文字や数字などの形状でもよい。観察者は、焦点の合った図形を確認するだけで、観察部位の高さを認識することができ、簡便かつ迅速な観察が可能になる。
図9および図10に示す実施形態においても、複数の焦点合わせ部4が存在し、それぞれ異なる高さYおよびY’を有するとともに、異なる図形を形成しているが、焦点合わせ部がそれぞれ窪みからなる態様である。このような態様においても、顕微鏡観察において、四角の形状の焦点合わせ部に焦点を合わせた場合は、高さYの位置で焦点が合っていることがわかり、三角の形状の焦点合わせ部に焦点を合わせた場合は、高さY’の位置で焦点が合っていることがわかる。上記態様と同様に、三角、四角、円などの図形は例示であり、星型や楕円など別の図形でもよいし、文字や数字などの形状でもよい。
また、図11および図12に示す実施形態においても、複数の焦点合わせ部4が存在し、各焦点合わせ部は、平面視において一以上の図形を含むように構成される。図形は、焦点位置ごとに顕微鏡の視野内におさまる個数が異なるように構成される。例えば、それぞれ20μm、40μm、60μm、80μmの高さを有する複数の焦点合わせ部を設ける場合、20μmの高さを有する焦点合わせ部を所定の倍率で顕微鏡により観察すると視野内に図形が1個おさまるように観察され、同様に40μm、60μm、80μmの高さを有する焦点合わせ部を観察すると視野内に図形が2個、3個、4個がおさまるように観察されるように焦点合わせ部を構成してもよい。観察者は、視野内におさまる、焦点の合った図形を確認するだけで、観察部位の高さを認識することができ、簡便かつ迅速な観察が可能になる。
顕微鏡で観察する観点から、焦点合わせ部は、細胞を収容する凹部の近傍に設けることが好ましい。焦点合わせ部を凹部の近傍に設けることにより、焦点を合わせた後、細胞を観察するにあたり、ステージを水平方向に大きく動かす必要がなく、顕微鏡の視野内に細胞を容易に捕らえることができ、迅速な観察が可能になる。具体的には、焦点合わせ部は、最寄の凹部の中心から好ましくは2000μm以内、より好ましくは1500μm以内の範囲に設けることが好ましい。例えば、図3において、焦点合わせ部4と、最寄の凹部の中心との距離Wは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上であり、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。焦点合わせ部が凹部に近すぎると、作製する際に技術的に困難となったり、培養対象物の操作や、発育、観察などの障害となったりする可能性がある。
細胞培養容器の本体形状は特に制限されないが、例えば図1に示すように、好ましくは底壁2と外壁8を有し、上面が開口した形状を有する。細胞培養容器のサイズは、特に制限されないが、開口部の開口幅(例えば、図1のA)が、30〜60mmのものが好ましく用いられる。これは従来の細胞培養に用いられているシャーレと同等のサイズであり、汎用のシャーレから簡便に作製できること、および既存の培養装置等に適合しやすいことから、上記のようなサイズのものが好ましい。
細胞培養容器は、図1および図2に示すように、好ましくは、細胞を収容するための凹部を取り囲むような内壁9を有する。このような内壁を設けることにより、内壁で囲われた領域に培養液の微小滴を形成することができ、少ない培養液の中で受精卵等の細胞を培養することができる。少ない培養液の中で受精卵を培養することにより、培養液内部に蓄積したタンパク質、ホルモン、酵素等の細胞分泌物によるオートクライン効果や複数の細胞の相互作用によるパラクライン効果を期待できる。例えば、内壁で囲まれた領域内には、細胞を収容するための凹部が、1〜20個存在することが好ましい。
本発明の細胞培養容器の材質は、特に制限されない。具体的には、金属、ガラス、およびシリコン等の無機材料、プラスチック(例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)で代表される有機材料を挙げることができる。本発明の培養容器は、当業者に公知の方法で製造することができる。例えば、プラスチック材料からなる培養容器を製造する場合には、慣用の成形法、例えば射出成形により製造することができる。
本発明の細胞培養容器は、受精卵の発育を促進するような表面処理または表面コートがなされていてもよい。特に、受精卵の発育を促進するために、他の器官の細胞(例えば、子宮内膜細胞や卵管上皮細胞)と共培養をする場合、これらの細胞をあらかじめ培養容器に接着させる必要がある。このような場合に、培養容器の表面に細胞接着性の材料をコートすると有利である。
培養対象となる細胞は、特に制限されないが、例えば、受精卵、卵細胞、ES細胞(胚性幹細胞)およびiPS細胞(人工多能性幹細胞)が挙げられる。卵細胞は、未受精の卵細胞をさし、未成熟卵母細胞および成熟卵母細胞が含まれる。受精卵は、受精後、卵割により2細胞期、4細胞期、8細胞期と細胞数が増えていき、桑実胚を経て、胚盤胞へと発生する。受精卵には、2細胞胚、4細胞胚および8細胞胚などの初期胚、桑実胚、胚盤胞(初期胚盤胞、拡張胚盤胞および脱出胚盤胞を含む)が含まれる。胚盤胞は、胎盤を形成する潜在能力がある外部細胞と胚を形成する潜在能力がある内部細胞塊からなる胚を意味する。ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊から得られる未分化な多能性または全能性細胞をさす。iPS細胞は、体細胞(主に線維芽細胞)へ数種類の遺伝子(転写因子)を導入することにより、ES細胞に似た分化万能性を持たせた細胞をさす。
本発明の細胞培養容器は、好ましくは哺乳動物および鳥類の細胞、特に哺乳動物の細胞の培養に好適である。哺乳動物は、温血脊椎動物をさし、例えば、ヒトおよびサルなどの霊長類、マウス、ラットおよびウサギなどの齧歯類、イヌおよびネコなどの愛玩動物、ならびにウシ、ウマおよびブタなどの家畜が挙げられる。さらに、本発明の培養容器は、非接着状態の細胞、重層化した細胞シート、細胞組織、スフェロイドやコロニーなどの細胞が集合した状態の細胞塊、受精卵などの接着や伸展した細胞に比べて容器に対する鉛直方向に大きい厚さを持つような対象物を観察するのに好適である。このような対象物を顕微鏡で観察する際は、合焦面が複数存在する場合があり、作業者によって観察位置にばらつきが生まれやすいからである。本発明の培養容器は、ヒトの受精卵の培養に特に好適である。受精卵は環境温度の変化に弱く、インキュベーターから取出して操作する際には、迅速性が要求される。特に、ヒトの受精卵を扱う場合には、発育性能を落とさないためにも観察を含む操作を迅速に行える培養容器が求められる。
用いる培養液は、細胞を培養する能力を有するものであれば特に制限はないが、受精卵培養用の培養液としては、例えば、M16が挙げられる。培養液の蒸発を防ぐために、培養液をオイルで被覆することが好ましい。オイルは、当技術分野で通常用いられるものであれば特に制限されないが、好ましくはミネラルオイルを用いる。
培養は、通常、細胞培養容器を培養細胞の発育および維持に必要なガスを含む環境雰囲気および一定の環境温度をもたらすインキュベーターに入れることにより実施される。必要なガスには、水蒸気、遊離酸素(O)および二酸化炭素(CO)が含まれる。環境温度とCO含有量を調節することにより、培養液のpHを一定時間内に安定させることができる。安定なCO含有量と安定な温度により安定なpHが得られる。画像比較プログラムにより、培養中の細胞の画像を予め保存された画像と比較することにより、培養の際の温度、ガスおよび培地などの培養条件を調節することもできる。
例えば受精卵を培養する場合には、通常、培養後に細胞を顕微鏡によって観察し、子宮への移植に適した良質な受精卵であるか否かが判別される。したがって、本発明はまた、細胞培養容器で培養した細胞を顕微鏡で観察する方法に関し、該方法は、焦点合わせ部に顕微鏡の焦点を合わせる工程、および細胞を観察する工程を含む。本発明の細胞観察方法は、好ましくは、焦点合わせ部に顕微鏡の焦点を合わせる工程の後、細胞を観察する工程の前に、顕微鏡の視野に、観察対象である細胞が入るように、顕微鏡のステージを水平方向に動かす工程を含む。顕微鏡による細胞の観察には、顕微鏡を介して細胞の画像を撮影または撮像することも含まれる。
細胞の観察に用いる顕微鏡は、当技術分野でも用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、無染色の細胞を観察するには、位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡、ホフマンモジューレションコントラスト顕微鏡などが用いられる。これらを用いることで、無色透明な細胞の形態を明暗のコントラストのついた画像として観察することができる。生殖補助医療においては、精子の洗浄や取り出し作業で正立型顕微鏡を、卵子の洗浄や取り出し作業では立体的に見えて作業のしやすい実体顕微鏡を、精子を卵子に注入する作業には細部を観察しやすい倒立型顕微鏡を使用することが多い。また、染色した細胞を観察する場合には、蛍光顕微鏡や共焦点顕微鏡などを用いてもよい。
培養細胞を自動で判別することも可能であり、自動判別においては、顕微鏡により取得された培養容器内の細胞の画像をCCDカメラ等の検出装置によって撮像し、得られた像を輪郭抽出処理に付し、画像中の細胞に該当する部分を抽出し、抽出された細胞の画像を画像解析装置で解析することによりその質を判別することができる。画像の輪郭抽出処理については、例えば、特開2006−337110に記載された処理を利用できる。
本発明の細胞培養容器を用いることにより、培養後に顕微鏡を用いて細胞を観察する際に、予め決められた高さで焦点合わせを実施することにより、あとは顕微鏡のステージを水平方向に動かすだけで、細胞における所望の位置、すなわち細胞の所望の断面を観察することができる。観察者によって、または観察するたびに、焦点を合わせる高さが異なることがなく、観察結果におけるばらつきを防止できる。したがって、細胞の経時変化を正確に観察することができ、細胞同士を正確に比較することもできる。すなわち、本発明の細胞培養容器を用いることにより、ばらつきのない正確な観察が可能になるとともに、簡便かつ迅速な観察が可能になる。
1:細胞培養容器
2:底壁
3:凹部
4:焦点合わせ部
5:凹部の最も低い位置
6:凹部の開口端
7:細胞
8:外壁
9:内壁

Claims (9)

  1. 底壁に、細胞を収容するための凹部を有する細胞培養容器であって、
    底壁における凹部の外に、焦点合わせ部を有し、
    焦点合わせ部の高さは、凹部の最も低い位置より高い位置にあり、
    焦点合わせ部の高さは、凹部の最も低い位置を基準として、凹部開口端の高さとは異なる、
    前記細胞培養容器。
  2. 焦点合わせ部の高さが、凹部の最も低い位置を基準として、凹部開口端の高さよりも低い位置にある、請求項1記載の細胞培養容器。
  3. 焦点合わせ部の高さは、凹部の最も低い位置を基準として、凹部開口端の高さの5倍よりも低い位置にある請求項1記載の細胞培養容器。
  4. 焦点合わせ部の高さが、凹部に細胞を収容したときの細胞の中心点と同じ高さである、請求項1〜3のいずれか1項記載の細胞培養容器。
  5. 焦点合わせ部が複数存在し、少なくとも2つの高さが異なる、請求項1〜4のいずれか1項記載の細胞培養容器。
  6. 焦点合わせ部は、平面視において一以上の図形を含むように構成され、
    焦点位置に応じて顕微鏡の視野内におさまる図形の個数が異なるように構成される、請求項5記載の細胞培養容器。
  7. 焦点合わせ部の高さが、凹部の最も低い位置を基準として、20〜150μmである、請求項1〜6のいずれか1項記載の細胞培養容器。
  8. 焦点合わせ部が、最寄の凹部の中心から2000μm以内の範囲に存在する、請求項1〜7のいずれか1項記載の細胞培養容器。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項記載の細胞培養容器で培養した細胞を顕微鏡で観察する方法であって、
    焦点合わせ部に顕微鏡の焦点を合わせる工程、および
    細胞を観察する工程
    を含む前記方法。
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