JP6364817B2 - 細胞培養容器 - Google Patents

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Description

本発明は、受精卵などの個別管理が必要な細胞を培養するための細胞培養容器に関する。
培養系で精子と卵子とを体外受精させて受精卵(接合子)を作製して、さらに受精卵を卵割、桑実胚、胚盤胞の段階を経て、透明帯から孵化した脱出胚盤胞の段階まで培養することが可能となり、この卵割から胚盤胞の段階にある受精卵を子宮に移植して産子を得る補助的生殖技術(ART)が、家畜領域のみならずヒトの不妊医療でも確立されている。
しかし、体外受精による妊娠成功率は必ずしも高くはなく、たとえばヒトにおいては、その妊娠成功率は、依然として25〜35%程度に留まっている。その原因の一つとして、培養において子宮への移植に適した良質な受精卵を得られる確率が高くないことが挙げられる。培養された受精卵は、専門家が顕微鏡で個別に観察することにより、子宮への移植に適した良質な受精卵であるか否か判別されている。
体外受精においては、容器中に培養液のドロップを作り、この中に受精卵を入れて体外培養するマイクロドロップ法が用いられることが多い。従来、このマイクロドロップ法には、細胞培養容器として、底面が単一平面であり、直径が30〜60mmのシャーレが使用され、シャーレの底面に、培養液のドロップを、間隔をあけて複数個作製し、その中で細胞を培養する方法が使用されてきた。
通常のシャーレでドロップを作成すると、受精卵自身の細胞運動やドロップ内の対流によって受精卵の位置が変わってしまい、その中で培養して観察していた受精卵の特定が難しくなるという問題があった。したがって、受精卵の位置を制御できる手段が求められていた。
受精卵の培養効果をより効率的にするためには受精卵同士の相互作用(パラクライン効果)を利用することが好ましいとされている。これらの効果を利用しつつ、受精卵の位置を制御する目的で、シャーレの底面に受精卵の大きさと同程度のマイクロウェルを形成し、複数個のマイクロウェルを覆うように培養液のドロップを添加し、培養液で満たされたマイクロウェルに受精卵を配置して培養を行うシステムが知られている。それにより複数の受精卵の位置を制御して個別観察を可能としつつ、少量の培養液の中で複数の受精卵の培養を行うことができ、パラクライン効果を利用できる。
一方、個々の受精卵を区別するためには、個々のマイクロウェルを識別する必要がある。マイクロウェルは顕微鏡で観察するため、顕微鏡の視野だけから多くの情報を推測する必要があるが、倍率が高いとどのマイクロウェルを見ているか判断できない。マイクロウェルの識別には、マイクロウェルアレイの最外周に数字や文字の情報を付加し、マトリクス的にマイクロウェルを識別できるようにすることが知られている。しかし、上記の方法では、顕微鏡下、高倍率で観察する際に、マイクロウェルから観察位置を大きくずらして、識別情報を読み取る必要があり、作業性の観点で問題があった。また、顕微鏡で細胞を撮影した際に、写真にはマイクロウェルの識別情報がないため、写真データに対して手作業で情報を付与する必要が生じ、作業が煩雑であり、また作業者のミスによる関連付けの誤りが発生する危険性があった。
特許第4724854号公報
本発明者らは、また、マイクロウェルが大きくなると、マイクロウェルの近傍に識別子を付した場合でも、顕微鏡下で、細胞と識別子を同一視野内にとらえることができない場合があることを見出した。
したがって、本発明は、複数のマイクロウェルを有する細胞培養容器において、顕微鏡下で観察位置を移動することなく、マイクロウェルに収容された細胞とマイクロウェルに対になって付された識別子とを観察可能な細胞培養容器を提供することを目的とする。
本発明者らは、複数のマイクロウェルを有する細胞培養容器において、各マイクロウェルと対になるように識別子を付し、かつマイクロウェルに収容された細胞と識別子との距離がなるべく小さくなるように、マイクロウェル最深部をマイクロウェルの重心からずらして識別子と近づけるか、又はマイクロウェル内面に識別子を付すことにより、上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)底部と側壁とを有する細胞培養容器であって、
底部に、細胞を収容するための複数のマイクロウェルが配置されてなる細胞収容部を有し、
前記複数のマイクロウェルに、識別子がマイクロウェルごとに対になって付されており、
マイクロウェルの内面が、最深部から外縁に進むに従って高くなるような傾斜面を有し、
マイクロウェルの最深部と識別子との距離が、マイクロウェルの開口幅の半分より小さい、
細胞培養容器。
(2)少なくとも1つのマイクロウェルにおいて、上面視において、マイクロウェルの最深部の重心が、マイクロウェルの重心と重ならない、(1)に記載の細胞培養容器。
(3)少なくとも1つのマイクロウェルにおいて、識別子がマイクロウェルの内面に付されている、(1)又は(2)に記載の細胞培養容器。
(4)マイクロウェルの最深部と識別子との距離が、500μm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(5)識別子のその対となるマイクロウェルに対する相対位置が、識別子とマイクロウェルの対ごとに異なる、(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(6)上面視において、識別子の大きさが、マイクロウェルの開口部の大きさより小さい、(1)〜(5)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(7)識別子がドット状又は線状の形状を有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(8)マイクロウェルの内面であって識別子が存在しない内面に、凹凸構造が形成されている、(1)〜(7)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(9)細胞培養方法であって、
底部と側壁とを有する細胞培養容器であって、
底部に、細胞を収容するための複数のマイクロウェルが配置されてなる細胞収容部を有し、
前記複数のマイクロウェルに、識別子がマイクロウェルごとに対になって付されており、
マイクロウェルの内面が、最深部から外縁に進むに従って高くなるような傾斜面を有し、
マイクロウェルの最深部と識別子との距離が、マイクロウェルの開口幅の半分より小さい、細胞培養容器を準備する工程、及び
前記細胞培養容器のマイクロウェルに細胞と培養液とを添加して細胞培養する工程、
を含む前記方法。
本発明により、複数のマイクロウェルを有する細胞培養容器において、各マイクロウェルに収容された細胞と識別子とを、顕微鏡下で観察位置を移動することなく、同時観察することが可能になる。
本発明の細胞培養容器の一実施形態の上面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の垂直断面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の拡大上面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の垂直断面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の拡大上面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の垂直断面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の拡大上面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の垂直断面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の垂直断面図を示す概略図である。 マイクロウェルの一実施形態の斜視図を示す概略図である。 マイクロウェルの一実施形態の斜視図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の拡大上面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器を用いた細胞培養方法の一実施形態の垂直断面図を示す概略図である。
以下、本発明について説明する。
一実施形態においては、例えば、図1〜4に示すように、細胞培養容器1は、底部2と側壁3とを有し、底部に、細胞を収容するための複数のマイクロウェル4が配置されてなる細胞収容部5を有する。これら複数のマイクロウェルには、それぞれ、識別子6がマイクロウェルごとに対になって付されている。マイクロウェルを形成する凹部の内面は、最深部7から外縁に進むに従って高くなるような傾斜面8を有する。マイクロウェルの最深部7と識別子6との距離rは、マイクロウェルの開口幅Rの半分(0.5R)より小さい。識別子とマイクロウェルの最深部との距離は、マイクロウェルの最深部と識別子との最近接距離として定義される。なお、細胞と識別子の同時観察が可能とは、細胞を観察可能な顕微鏡視野内においてに識別子の一部分だけ観察可能な場合も包含する。
本発明の細胞培養容器は、底部と側壁とから形成される空間に液体を収容可能である。底部の形状は特に制限されず、三角形及び四角形等の多角形の形状でもよく、円(円形、略円形、楕円形及び略楕円形を含む)の形状でもよく、側壁は底部の外縁を囲うように形成される。通常、底部と反対側は開口しており、開口部の形状は好ましくは底部の形状と同一である。好ましくは、開口部が円形で、開口幅(例えば、図2のZ)が、好ましくは30〜60mm、特に35mmのものが用いられる。これは従来の細胞培養に用いられているシャーレと同等の大きさであり、汎用のシャーレから簡便に作製できること、及び既存の培養装置等に適合しやすいことから、上記のような大きさのものが好ましい。なお、細胞培養容器は、通常のシャーレと同様に蓋を有していてもよい。
マイクロウェルは、細胞培養容器の底部において、複数配置され、細胞収容部を構成する。このようなマイクロウェルの群から構成される細胞収容部は、底部に複数群配置されていてもよく、それらの群は互いに近接していなくてもよい。本発明の細胞培養容器の底部には、マイクロウェルが、好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上、例えば6個以上で、好ましくは50個以下、より好ましくは30個以下の個数で配置されており、したがって、受精卵等の細胞を、1のマイクロウェルに1個ずつ配置して、複数の細胞を培養することができる。受精卵等の細胞を同一系内に複数近接して配置した状態で培養することにより、良好なパラクライン効果やオートクライン効果を期待することができる。ここで、同一系内の培養は、隔離されておらず流通可能な培養液内、好ましくは同一の培養液のドロップ内の培養をさす。
近接する複数のマイクロウェルは、正方格子状又は最密充填状に配置されていることが好ましい。例えば、25個のマイクロウェルを5×5の正方格子状に配置する場合を挙げることができる。正方格子状又は最密充填状に配置することにより、培養容器の底部における各マイクロウェルの位置の特定が、識別子との組み合わせでさらに容易になり、自動化処理に適用しやすい。
近接する複数のマイクロウェルの配置は、正方格子又は最密充填の配置から、一部が欠落したような配置でもよい。例えば、8個以上のマイクロウェルが、平行四辺形の辺上及び頂点上に等しいピッチで配置され、細胞収容部を構成している場合が挙げられる。平行四辺形には、正方形、長方形、菱形及びそれ以外の平行四辺形が包含される。マイクロウェルが平行四辺形の辺上及び頂点上に配置されるとは、マイクロウェルの開口部の外縁が形成する図形の重心が平行四辺形の辺上及び頂点上に配置されることをさす。例えば、図3に示す実施形態では、8個のマイクロウェルが、正方形の4つの頂点に1つずつ配置され、かつ4つの辺の中点に1つずつ配置されている。
マイクロウェル間のピッチは好ましくは1mm以下、より好ましくは0.85mm以下、さらに好ましくは0.75mm以下である。マイクロウェル間のピッチは近接するマイクロウェルの重心間の距離である(例えば、図3のa)。マイクロウェルの重心は、マイクロウェルの開口部の外縁が形成する図形の重心とし、外縁が円形であればその円の中心をさす。マイクロウェル間のピッチは、マイクロウェルの開口幅より大きい。
マイクロウェルは、内面と開口部を有する凹部を形成し、細胞培養容器の底部に直接窪みとして設けられた凹部でもよいし、底部から突出した部材により形成される凹部でもよい。したがって、上面視における各マイクロウェルの開口部の大きさは、換言すれば、マイクロウェルの開口部の外縁が形成する図形の大きさをさす。マイクロウェルの開口部の外縁が形成する図形は特に制限されず、三角形及び四角形等の多角形の形状でもよく、円(円形、略円形、楕円形及び略楕円形を含む)の形状でもよいが、好ましくは円形である。具体的には、細胞培養容器の上面視における各マイクロウェルの開口部の大きさは、マイクロウェルの開口部の外縁が形成する図形の面積として、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.07mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上であり、好ましくは0.8mm未満、さらに好ましくは0.44mm未満である。
マイクロウェルは、細胞を1つずつ収容するのに好適な開口幅を有するウェルをさし、通常1mm未満の開口幅を有する。マイクロウェルの開口幅は、マイクロウェルの開口部の外縁が形成する図形の最大長さをさし、マイクロウェルの開口部の外縁が円形である場合、開口幅は円の直径に等しく(例えば、図3〜図8のR)、マイクロウェルの開口部の外縁が楕円形である場合、開口幅は楕円の最大径に等しく、その直径や最大径は、培養する細胞の最大寸法より大きいものとなる。本発明の細胞培養容器により受精卵を培養する場合、胚盤胞の段階まで培養することが望ましいため、円形の開口部の直径は、胚盤胞の段階の細胞の最大寸法より大きいものであることが望ましい。また、マイクロウェルの開口部の外縁が円形である場合、開口幅は、マイクロウェル間のピッチより小さい。したがって、マイクロウェルの開口部の開口幅(マイクロウェルの開口部の外縁が円形である場合はその直径)は、好ましくは0.25mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは1mm未満、さらに好ましくは0.75mm未満である。
マイクロウェルの深さは、マイクロウェルの開口部から最深部までを垂直に測った深さをいい、好ましくは0.05〜0.5mmである。マイクロウェルの深さは、浅過ぎると、培養容器の輸送時や細胞の分裂時などに細胞が動き、細胞がマイクロウェルの範囲外に出てしまう恐れがあるため、確実に細胞をマイクロウェル内に保持できるように設定される。例えば、細胞をマイクロウェル内に保持するには、深さが細胞の最大径の1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがさらに好ましい。一方、深過ぎると、マイクロウェル内に培養液や細胞を導入することが難しくなるため、細胞をマイクロウェル内に保持しつつ、深過ぎない値になるよう適宜設定される。例えば、深さの上限をマイクロウェルの開口部の開口幅に対して3倍以下とすることができる。さらに、培養液の導入を容易にするためには、深さはマイクロウェルの開口幅の1倍以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。
マイクロウェルの内面において、最深部から外縁に進むに従って高くなるように形成される傾斜面の形状(プロファイル)は、マイクロウェルが形成する凹部の最深部から凹部の外縁へ向かって曲線状に高くなる場合、階段状に高くなる場合等、適宜採用することができるが、特に直線部分を含むこと、すなわち凹部の最深部から凹部の外縁へ進むに従い、その経路の全区間もしくは一部の区間が直線状に高くなる傾斜面であることが好ましい。直線部分を含むことで、マイクロウェル内に配置した細胞の移動が抑制され、細胞をマイクロウェルの最深部に固定し易くなる。したがって、顕微鏡で観察した場合に鮮明な画像を得ることができる。
このような傾斜面は、好ましくは、円錐面又は円錐台の側面を形成する。円錐面を形成する場合、マイクロウェルの最深部は円錐の頂点に該当するように円錐が配置されるような構成となる。この場合、マイクロウェルの最深部、すなわち円錐の頂点は丸みを帯びていてもよい。傾斜面が円錐台の側面を形成する場合、円錐台の上面及び下面のうち面積の狭いほうがマイクロウェルの最深部に該当するように円錐台が配置されるような構成となる。
一実施形態においては、マイクロウェルの最深部の重心が、マイクロウェルの重心と重ならないようにマイクロウェルが形成される。マイクロウェルの最深部の重心は、マイクロウェルの最深部が面である場合は、その面の外縁が形成する図形の重心をさし、マイクロウェルの最深部が点である場合は、その点をさす。マイクロウェルの上面視において、マイクロウェルの最深部の重心が、マイクロウェルの重心と重ならないようにすることで、マイクロウェルに細胞を収容したときに、細胞がマイクロウェルの重心からずれた位置に配置されることとなる。したがって、マイクロウェルの近傍であって、マイクロウェルの最深部の重心に近い側に識別子を配置することで、マイクロウェルの最深部と識別子との距離を、マイクロウェルの開口幅の半分より小さくすることができる。換言すれば、上面視において、マイクロウェルの最深部がマイクロウェルの重心に重なる場合と比較して、マイクロウェルの最深部と識別子との距離を小さくすることができ、結果として、マイクロウェルに収容された細胞と識別子との距離が近くなり、顕微鏡観察において、観察位置を移動することなく、マイクロウェルに収容された細胞と識別子とを同一視野内で同時に観察する上で都合がよい。また、マイクロウェルの最深部(すなわち細胞が収容される部分)から遠い側からピペット等の器具を挿入することにより、マイクロウェル内における操作を容易に実施できる。
一実施形態においては、例えば、図3及び図4に示すように、マイクロウェルの傾斜面8を、正円錐ではなく、正円錐から頂点をずらした円錐の側面とすることにより、マイクロウェルの最深部の重心7が、マイクロウェルの重心と重ならないようにマイクロウェルを形成することができる。その場合、マイクロウェルの最深部は円錐の頂点に該当するように円錐が配置されるような構成となる。マイクロウェルの最深部、すなわち円錐の頂点は丸みを帯びていてもよい。このような実施形態においては、マイクロウェルの最深部、すなわち円錐の頂点は、上面視において、マイクロウェルの重心と重ならない。したがって、マイクロウェルに細胞Cを収容したときに、細胞がマイクロウェルの重心からずれた位置に配置されることとなる。マイクロウェルの近傍であって、マイクロウェルの最深部の重心に近い側に識別子を配置することで、マイクロウェルの最深部と識別子との距離を小さくすることができ、結果として、マイクロウェルに収容された細胞と識別子との距離が近くなり、顕微鏡観察において、観察位置を移動することなく、マイクロウェルに収容された細胞と識別子とを同一視野内で同時に観察する上で都合がよい。
一実施形態においては、識別子をマイクロウェルの内面に付すことで、マイクロウェルの最深部と識別子との距離を、マイクロウェルの開口幅の半分より小さくすることができる。換言すれば、マイクロウェルの近傍、すなわちマイクロウェルの開口端より外側に識別子を付す場合と比較して、マイクロウェルの最深部と識別子との距離を小さくすることができ、結果として、マイクロウェルに収容された細胞と識別子との距離が近くなり、顕微鏡観察において、観察位置を移動することなく、マイクロウェルに収容された細胞と識別子とを同時に観察する上で都合がよい。細胞培養容器の上面から顕微鏡観察する観点から、識別子は、マイクロウェルの内面のうち、細胞培養容器の底部に垂直な面ではなく、傾斜面に付すことが好ましい。
一実施形態においては、図5及び図6に示すように、マイクロウェルの内面のうち、最深部7から外縁に進むに従って高くなるように形成される傾斜面8に識別子6を付すことができる。当該実施形態においても、マイクロウェルの最深部と識別子との距離(図5及び図6のr)を、マイクロウェルの開口幅の半分より小さくすることができる。すなわち、マイクロウェルの近傍、すなわちマイクロウェルの開口端より外側に識別子を付す場合と比較して、マイクロウェルの最深部と識別子との距離を小さくすることができる。当該実施形態においては、細胞培養容器の上面視において、マイクロウェルに収容した細胞と識別子とが重ならないように、識別子は、マイクロウェル内面の十分外縁側に配置することが好ましい。
一実施形態においては、図7及び図8aに示すように、マイクロウェルの内面が、最深部から外縁に進むに従って高くなるように形成される傾斜面8に加えて、更なる傾斜面9を有する場合、この更なる傾斜面9に識別子6を付すことができる。一実施形態においては、図8bに示すように、マイクロウェルの内面が、最深部から外縁に進むに従って高くなるように形成される傾斜面8に加えて、更なる傾斜面9を有する場合に、傾斜面8に識別子6を付してもよい。更なる傾斜面は、好ましくは、マイクロウェルの開口端からマイクロウェルの最深部の重心に進むに従って低くなるように形成される傾斜面である。当該実施形態においても、マイクロウェルの最深部と識別子との距離rを、マイクロウェルの開口幅の半分より小さくすることができる。マイクロウェルの近傍、すなわちマイクロウェルの開口端より外側に識別子を付す場合と比較して、マイクロウェルの最深部と識別子との距離を小さくすることができる。最深部から外縁に進むに従って高くなるように形成される傾斜面と更なる傾斜面以外の内面は、細胞培養容器の底部に垂直な面であっても、傾斜面であってもよい。当該実施形態においては、細胞培養容器の上面視において、マイクロウェルに収容した細胞と識別子とが重ならないように、識別子を配置することが好ましい。
一実施形態においては、マイクロウェルの内面であって識別子が存在しない部分に、凹凸構造が形成されていることが好ましい。例えば、凹凸構造は、図9a及び図9bに示すように、マイクロウェルの内面が、最深部から外縁に進むに従って高くなるように形成される傾斜面8に加えて、更なる傾斜面9を有する場合、この更なる傾斜面に形成することが好ましい。更なる傾斜面は、好ましくは、マイクロウェルの開口端からマイクロウェルの最深部の重心に進むに従って低くなるように形成される傾斜面である。凹凸構造を形成することにより、細胞を培地などの液体とともにマイクロウェルに収容する場合に、気泡抜けを向上させることができる。識別子は、図9aに示すように更なる傾斜面9の凹凸構造が存在しない部分に付してもよいし、図9bに示すように傾斜面8に付してもよい。凹凸構造の形状は、気泡抜けを向上させる形状であれば、特に制限されないが、2以上のライン状の凹凸構造10や(例えば、図9a及び図9b)、2以上のドット状の突起及び/又は2以上のドット状の窪みによって構成される凹凸構造が挙げられる。
2以上のライン状の凹凸構造としては、2以上のライン状の凸部がスペースを挟んで連続して形成されている構造や、2以上のライン状の凹部がスペースを挟んで連続して形成されている構造などが挙げられる。2以上のライン状の凸部がスペースを挟んで連続して形成されている構造は、スペース部分を凹部とみなすことができるので、実質的には、2以上のライン状の凹部がスペースを挟んで連続して形成されている構造ともいえる。以下、凸部をラインとし、凹部をスペースとして説明する。ライン状の凸部は、マイクロウェルの最深部から開口部に向かう方向に形成されていることが好ましい。
2以上のドット状の突起及び/又は2以上のドット状の窪みによって構成される凹凸構造においてドットの形状は特に制限されない。ドット状の突起及び窪みの形状としては、錐体、錐台、柱体、ランダムな異方性凹凸状等が挙げられる。錐体状、錐台状、及び柱体状の突起及び窪みが加工性の点から好ましい。錐体状突起及び錐台状突起の場合は、突起の先端ほど細くなる形状が加工性の点から好ましく、錐体状窪み及び錐台状窪みの場合は、窪みの開口側ほど開口幅が広くなる形状が加工性の点から好ましい。
マイクロウェルの内面、特に傾斜面であって、上記のような凹凸構造を有しない面の表面粗さは、大きい値であると、顕微鏡で透過観察を行った画像を輪郭抽出処理に付す際に、傾斜面上の凹凸に起因して明瞭な輪郭が得られない恐れがあるため、可能な限り小さい値であることが好ましい。具体的には、最大高さRy(粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分における山頂線と谷底線との間隔をいう)が1.0μm未満、特に0.5μm未満であることが好ましい。なお、傾斜面の表面粗さは、培養容器の鋳型を作製する際に磨き処理を施す等して、鋳型の加工精度を高めることにより小さくすることができる。
各識別子は、どのマイクロウェルと対になっているかが明らかなように、好ましくは、すべてのマイクロウェルの中で、対となるマイクロウェルの最深部との距離が最も小さくなるように付される。識別子とマイクロウェルの最深部との距離は、マイクロウェルの最深部と識別子との最近接距離として定義され、マイクロウェルの開口幅の1/2より小さく、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。識別子とマイクロウェルの最深部との距離が上記範囲であれば、顕微鏡観察において、マイクロウェルに収容された細胞と識別子とを同一視野内で同時に観察する上で有利である。
識別子の大きさは、好ましくはマイクロウェルの大きさより小さい。したがって、細胞培養容器の上面視において、識別子は、好ましくはマイクロウェルの開口部が形成する図形の内部に収まる大きさである。より具体的には、細胞培養容器の上面視における識別子の大きさは、面積が30000μm、好ましくは15000μm、より好ましくは8000μmの円の内部に収まる大きさであり、好ましくは面積が100μmの円の内部からはみ出す大きさである。
識別子は、好ましくは細胞収容部内のマイクロウェルのすべてに付されるが、識別子が付されていないマイクロウェルが数個(例えば、細胞収容部に含まれるマイクウェル全体の個数の10%以下で)含まれていても、本発明に包含される。細胞が収容されず、観察対象でないマイクロウェルが存在する場合に、そのようなマイクロウェルには識別子は必要ないからである。識別子は、対となるマイクロウェルに好ましくは1つ付されるが、2つ以上の識別子が付されていてもよい。マイクロウェルごとに対となって付される識別子の数を変化させることにより、情報量を増大させることができる。
識別子の形状、すなわち識別子が形成する図形の形状は、特に制限されない。図形の例として、文字、数字、多角形などの図形、矢印、線(バー)、ドット、QRコードなどのバーコード及びこれらの組合せが挙げられる。受精卵等の細胞を個別に収容するのに好適な微小なマイクロウェルの近傍に、好ましくは当該マイクロウェルより大きさの小さい識別子を付すことから、識別子の形状は、成形が容易な単純な形状であることが好ましい。細胞培養容器は、射出成型で製造される場合が多いため、あまり複雑な形状を微小な大きさで成形することが困難だからである。識別子の形状は単純であっても、すなわち識別子自体が持つ情報が少なくても、マイクロウェルとの相対位置や識別子の数という情報を付加することによって、各マイクロウェルの位置を特定することができる。また、識別子を複雑な形状とすると、細胞培養容器の製造時における歩留りが低下するおそれがあるが、単純な形状とすることで、歩留りの低下を回避でき、製造コストを下げることができる。マイクロウェルごとに2つ以上の識別子が付される場合は、1つのマイクロウェルに付される複数の識別子の形状は互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。形状の異なる識別子を付すことにより、情報量を増大させることができる。識別子の形状が異なるとは、複数の識別子のうち、少なくとも1つ形状の異なる識別子が存在することをさす。
識別子は、好ましくはドット状又は線状(バー状)の形状を有する。1の細胞培養容器及び1の細胞収容部には、ドット状の識別子と線状の識別子が混在していてもよく、混在させることにより、情報量を増大させることができる。さらに、線状の識別子は、その長さを変化させることにより、識別子自体が有する情報量を増大させることができる。さらに、識別子の向きを変化させることによっても、識別子自体が有する情報量を増大させることができる。ここでいう「向き」は自転角度であって、後述する角度αとは異なる。例えば、図10の実施形態においてドットを線(バー)に置き換えた場合、線がドットの位置で直線Xに対して回転(自転)する角度、すなわち直線Xと識別子の線がなす角度をさす。この向きの情報量と角度αを使って、培養容器の向きを特定することができる。向きと長さを組み合わせて情報量を増大させることもできる。
一実施形態においては、識別子は、その対となるマイクロウェルに対する相対位置が、識別子とマイクロウェルの対ごとに異なるように配置される。識別子のマイクロウェルに対する相対位置が、マイクロウェルごとに異なることによって、マイクロウェルと識別子の対を1組観察するだけで、複数のマイクロウェルにおける当該マイクロウェルの位置を特定することができる。識別子は、各マイクロウェルの近傍又は内面に付されていることから、高倍率で観察する際に、マイクロウェルから観察位置を大きくずらす必要はなく、迅速な観察が可能になる。さらに、高倍率で細胞を撮影した際も、写真には、マイクロウェルとともに識別子が撮影されることから、写真データに対して手作業で情報を付与する必要がなく、煩雑な作業を回避でき、作業者のミスによる関連付けの誤りが発生するリスクも回避できる。
識別子のその対となるマイクロウェルに対する相対位置が、識別子とマイクロウェルの対ごとに異なることには、識別子とその対となるマイクロウェルとの距離が、対ごとに異なること、ならびに識別子のその対となるマイクロウェルに対する角度が異なることが包含される。識別子とマイクロウェルとの距離は、識別子の重心とマイクロウェルの重心との距離と定義される。識別子の重心は、識別子が形成する図形の重心をさす。識別子のマイクロウェルに対する角度αについては、以下のように定義することができる。例えば図10に示す実施形態において、角度αは、上面視において細胞培養容器の底部に一本の直線Xを引いた場合に、当該直線Xに平行な直線と、マイクロウェルの重心と識別子の重心とを通る直線Yとがなす角度と定義することができる。そして、角度αを、マイクロウェルと識別子の対ごとに異なるよう配置することで、複数のマイクロウェルにおける特定のマイクロウェルの位置を特定することができる。距離と角度を組み合わせて情報量を増大させることもできる。
また、マイクロウェルの近傍又は内面を複数の領域に区分けし、各領域における識別子の有無が、識別子とマイクロウェルの対ごとに異なるようにすることで、識別子のマイクロウェルに対する相対位置を対ごとに異なるように配置することもできる。例えば、図3に示す実施形態においては、マイクロウェルの近傍が3つの領域に区分けされており、各領域における識別子の有無が、識別子とマイクロウェルの対ごとに異なる。マイクロウェルAでは、一番上の領域にのみ識別子が存在し、その他の領域には存在しない。一方、マイクロウェルDでは、すべての領域に識別子が存在する。このように、領域ごとに識別子の有無を変化させることによって、複数のマイクロウェルにおける特定のマイクロウェルの位置を特定することができる。
各領域における識別子の有無は、各領域に識別子の重心が存在するか否かで判断することができる。したがって、マイクロウェルごとに複数の識別子が対になって付されている場合、各識別子の重心位置を特定できる限り、識別子同士が重なっていてもよい。例えば、3つの領域に区分けする場合は、識別子の配置は2通り(=8通り)が考えられ、少なくとも8個のマイクロウェルの位置を特定することができる。図3のマイクロウェルFのように、いずれの領域にも識別子が存在しないマイクロウェルが存在してもよく、1つのマイクロウェルの位置を特定することが可能である。ただし、マイクロウェルを特定する目的では、識別子が付されていないマイクロウェルは1つだけである。なお、領域を区分けする線は、概念上のものであればよく、実際に存在している必要はない。
マイクロウェルごとに複数の識別子が対になって付されている場合は、少なくとも1つの識別子のその対となるマイクロウェルに対する相対位置が、識別子とマイクロウェルの対ごとに異なるように配置することが好ましい。すなわち、複数のマイクロウェルを比較した場合に、マイクロウェルに対する相対位置が互いに異なる識別子が、少なくとも1つずつ存在すればよく、相対位置が同じ識別子が存在していてもよい。
高倍率でマイクロウェルと識別子の対を1つ撮影し、これを繰り返して複数の対を撮影する場合、撮影する際の細胞培養容器の向きを常に一定とする必要がある。そうでなければ、上記の角度αに、細胞培養容器自体の傾きが含まれてしまい、細胞培養容器上では相対位置が異なるにもかかわらず、写真上では相対位置が区別できない場合があるからである。撮影する際の細胞培養容器の向きを常に一定とする観点から、細胞培養容器には、識別子とは別の、細胞培養容器の向きを特定するための第2識別子を付すことが好ましい。第2識別子は、写真を撮影する際に用いることから、目視で確認できるものであることが好ましい。したがって、細胞培養容器の上面視において、第2識別子の大きさは、マイクロウェルの開口部の大きさより大きいことが好ましい。すなわち、第2識別子は、マイクロウェルの開口部の外縁が形成する図形に収まらない大きさであることが好ましい。第2識別子は、底部上であって、複数のマイクロウェルが配置されてなる細胞収容部の外側に付すことが好ましい(例えば図1の12)。第2識別子は細胞培養容器の側壁に付してもよい。あるいは、細胞培養容器自体の形状により、細胞培養容器の向きを常に一定とすることも可能である。すなわち、細胞培養容器の側壁の外周形状を細胞培養容器の向きを特定できる形状、例えば円が欠けた形状とすることにより、撮影する際の細胞培養容器の向きを常に一定とすることも可能である。この場合、細胞培養容器の形状は、細胞培養容器の向きを特定できる限り、特に制限されない。
あるいは、識別子が線状であれば、ドット状の場合と異なり、二次元の情報を有することから、第2識別子がなくても、高倍率で撮影されたマイクロウェルと識別子の対の写真において、細胞培養容器の向きをある程度特定することができる。すなわち、いずれの識別子も、細胞培養容器の上面視において、同方向を向いた線状とすることで、高倍率で撮影されたマイクロウェルと識別子の対の写真においても、線(バー)の向きに基づいて、撮影時の細胞培養容器の向きをある程度特定できる。
また、細胞収容部内の複数のマイクロウェルすべてについて、識別子をマイクロウェルの右側のみ、左側のみ、上側のみ、又は下側のみに付すことにより、高倍率で撮影されたマイクロウェルと識別子の対の写真においても、細胞培養容器の向きを特定することができる。対象のマイクロウェルごとに識別子のおおまかな位置がある程度決まっているため、高倍率で手動にて受精卵を撮影する際に撮影位置を決めやすい。同じ方向でないと、例えば、あるウェルは中央より少し左、別のウェルは中央より少し下といったように、ウェルごとに識別子の位置を360°探しながら撮影位置を決める必要が生じる。
ここで、マイクロウェルの右側、左側、上側、又は下側とは、マイクロウェルの重心まわり360°を4つに分けたそれぞれの範囲と定義することができ、例えば、図10に示すαが45〜135°の範囲を上側と定義できる。したがって、識別子をマイクロウェルの上側のみに付す場合であっても、その範囲内でマイクロウェルごとに相対位置を異なるようにすることは可能である。
また、複数のマイクロウェルにそれぞれ付される複数の識別子が、同一軸上に配置されることが好ましい場合もある。ここで複数のマイクロウェルとは、細胞収容部内のすべてのマイクロウェルである必要はなく、好ましくはそのうちの2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上の、その重心が同一軸上にある複数のマイクロウェルをさす。重心が同一軸上にある複数のマイクロウェルに、それぞれ付される複数の識別子が、同一軸上に配置されることで、高倍率観察において、観察対象となるマイクロウェルを変更する場合に、細胞培養容器をレンズに対してX軸又はY軸方向にのみ動かすことで、マイクロウェルと識別子の対を捕えることができるため、迅速な観察が可能となる。また、顕微鏡観察では、視野が一般的に横長となるため、横軸上に並んだ複数の識別子を一度に観察することができる。また、顕微鏡視野の長辺方向と、識別子の軸方向をそろえることで、より高倍率の観察時にも全ての識別子を観察することができる。例えば、視野の短辺距離がマイクロウェルの直径ギリギリである場合などに特に有利である。
複数の識別子が、同一軸上に配置されるとは、識別子の重心が正確に同一軸上に配置されることを意図するものではなく、高倍率観察における迅速化が達成される限り、多少のずれがあってもよい。
細胞培養容器の材質は、特に制限されない。具体的には、金属、ガラス、及びシリコン等の無機材料、プラスチック(例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)で代表される有機材料を挙げることができる。細胞培養容器は、当業者に公知の方法で製造することができる。例えば、プラスチック材料からなる培養容器を製造する場合には、慣用の成形法、例えば射出成形により製造することができる。
細胞培養容器は、培養細胞の非特異的接着を防止し、また培養液のドロップが表面張力によって偏ることを防止する観点から、プラズマ処理などの表面親水化処理することが好ましい。製造後の容器に付着している菌数(バイオバーデン数)が100cfu/容器以下であることが好ましい。また、さらにγ線滅菌などの滅菌処理を施されていることがより好ましい。
細胞培養容器は、受精卵の発育を促進するような表面処理又は表面コートがなされていてもよい。特に、受精卵の発育を促進するために、他の器官の細胞(例えば、子宮内膜細胞や卵管上皮細胞)と共培養をする場合、これらの細胞をあらかじめ培養容器に接着させる必要がある。このような場合に、培養容器の表面に細胞接着性の材料をコートすると有利である。
本発明の細胞培養容器において培養対象となる細胞は、特に制限されないが、例えば、受精卵、卵細胞、ES細胞(胚性幹細胞)及びiPS細胞(人工多能性幹細胞)が挙げられる。卵細胞は、未受精の卵細胞をさし、未成熟卵母細胞及び成熟卵母細胞が含まれる。受精卵は、受精後、卵割により2細胞期、4細胞期、8細胞期と細胞数が増えていき、桑実胚を経て、胚盤胞へと発生する。受精卵には、2細胞胚、4細胞胚及び8細胞胚などの初期胚、桑実胚、胚盤胞(初期胚盤胞、拡張胚盤胞及び脱出胚盤胞を含む)が含まれる。胚盤胞は、胎盤を形成する潜在能力がある外部細胞と胚を形成する潜在能力がある内部細胞塊からなる胚を意味する。ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊から得られる未分化な多能性又は全能性細胞をさす。iPS細胞は、体細胞(主に線維芽細胞)へ数種類の遺伝子(転写因子)を導入することにより、ES細胞に似た分化万能性を持たせた細胞をさす。すなわち、細胞には、受精卵や胚盤胞のように複数の細胞の集合体も包含される。
本発明の細胞培養容器は、好ましくは哺乳動物及び鳥類の細胞、特に哺乳動物の細胞の培養に好適である。哺乳動物は、温血脊椎動物をさし、例えば、ヒト及びサルなどの霊長類、マウス、ラット及びウサギなどの齧歯類、イヌ及びネコなどの愛玩動物、ならびにウシ、ウマ及びブタなどの家畜が挙げられる。本発明の細胞培養容器は、ヒトの受精卵の培養に特に好適である。
複数のマイクロウェルが配置されてなる細胞収容部は、それらを囲む内壁により、培養容器内のその他の部分と隔てられていてもよい(例えば、図1と図2における11)。複数のマイクロウェルの群が細胞培養容器の底部に存在する場合は、群ごとに内壁で囲まれることが好ましい。通常、受精卵等の培養においては、培養容器に受精卵を含む培養液の液滴を形成し、液滴をオイルで覆うことにより培養液の乾燥が防止されている。近接して形成されたマイクロウェルの群をさらに内壁で囲むことにより、その内部に培養液を収容して安定なドロップを形成し、培養液の分散を防ぐことができる。培養液をミネラルオイル等のオイルで覆う場合も同様である。
通常、マイクロウェルを覆うように培養液Aを添加した後、培養液を覆うようにオイルBを添加し、さらに培養液中に細胞Cを添加する。これらの作業は、通常ピペットやガラスキャピラリー等の器具を用いて実施される。本発明の細胞培養容器は、開口が大きいので、これらの操作を比較的容易に実施できる(図11)。
培養は、通常、細胞培養容器を培養細胞の発育及び維持に必要なガスを含む環境雰囲気及び一定の環境温度をもたらすインキュベータに入れることにより実施される。必要なガスには、水蒸気、遊離酸素(O)及び二酸化炭素(CO)が含まれる。環境温度とCO含有量を調節することにより、培養液のpHを一定時間内に安定させることができる。安定なCO含有量と安定な温度により安定なpHが得られる。画像比較プログラムにより、培養中の細胞の画像を予め保存された画像と比較することにより、培養の際の温度、ガス及び培養液などの培養条件を調節することもできる。
例えば受精卵を培養する場合には、通常、培養後に、子宮への移植に適した良質な受精卵であるか否かが判別される。判別は自動で行ってもよいし、顕微鏡等により手動で行ってもよい。培養細胞の自動判別においては、顕微鏡により取得された培養容器内の細胞の画像をCCDカメラ等の検出装置によって撮像し、得られた像を輪郭抽出処理に付し、画像中の細胞に該当する部分を抽出し、抽出された細胞の画像を画像解析装置で解析することによりその質を判別することができる。画像の輪郭抽出処理については、例えば、特開2006−337110に記載された処理を利用できる。
本発明の細胞培養容器を用いて細胞を培養することにより、各マイクロウェルに収容された細胞と識別子とを、顕微鏡下で観察位置を移動することなく、同時観察することが可能になり、細胞の観察と特定を迅速に実施することが可能になる。
1:細胞培養容器
2:底部
3:側壁
4:マイクロウェル
5:細胞収容部
6:識別子
7:マイクロウェル最深部
8:傾斜面
9:傾斜面
10:凹凸構造
11:内壁
12:第2識別子
X:細胞培養容器の開口幅
R:マイクロウェルの開口幅
r:マイクロウェル最深部と識別子の距離
a:マイクロウェルのピッチ
A:培養液
B:オイル
C:細胞

Claims (9)

  1. 底部と側壁とを有する細胞培養容器であって、
    底部に、細胞を収容するための複数のマイクロウェルが配置されてなる細胞収容部を有し、
    前記複数のマイクロウェルに、識別子がマイクロウェル対になって付されており、
    マイクロウェルの内面が、最深部から外縁に進むに従って高くなるような傾斜面を有し、
    少なくとも1つの前記マイクロウェルにおいて、上面視において、マイクロウェルの最深部の重心が、マイクロウェルの重心と重ならず、前記最深部の重心に近い側に前記識別子が配置され、
    マイクロウェルの最深部と識別子との距離が、マイクロウェルの開口幅の半分より小さい、
    細胞培養容器。
  2. 少なくとも1つのマイクロウェルにおいて、識別子がマイクロウェルの開口端より外側に配置されている請求項1に記載の細胞培養容器。
  3. 少なくとも1つのマイクロウェルにおいて、識別子がマイクロウェルの内面に付されている、請求項1記載の細胞培養容器。
  4. マイクロウェルの最深部と識別子との距離が、500μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養容器。
  5. 識別子のその対となるマイクロウェルに対する相対位置が、識別子とマイクロウェルの対ごとに異なる、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞培養容器。
  6. 上面視において、識別子の大きさが、マイクロウェルの開口部の大きさより小さい、請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養容器。
  7. 識別子がドット状又は線状の形状を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の細胞培養容器。
  8. マイクロウェルの内面であって識別子が存在しない内面に、凹凸構造が形成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の細胞培養容器。
  9. 細胞培養方法であって、
    底部と側壁とを有する細胞培養容器であって、
    底部に、細胞を収容するための複数のマイクロウェルが配置されてなる細胞収容部を有し、
    前記複数のマイクロウェルに、識別子がマイクロウェル対になって付されており、
    マイクロウェルの内面が、最深部から外縁に進むに従って高くなるような傾斜面を有し、
    少なくとも1つの前記マイクロウェルにおいて、上面視において、マイクロウェルの最深部の重心が、マイクロウェルの重心と重ならず、前記最深部の重心に近い側に前記識別子が配置され、
    マイクロウェルの最深部と識別子との距離が、マイクロウェルの開口幅の半分より小さい、細胞培養容器を準備する工程、及び
    前記細胞培養容器のマイクロウェルに細胞と培養液とを添加して細胞培養する工程、
    を含む前記方法。
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