JP6056674B2 - 車体前部構造 - Google Patents

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Description

この発明は、車体前部構造に関し、詳しくは、車両前面に形成された前面開口部と、該前面開口部後方に略水平方向に延びるシュラウドアッパパネルと、該シュラウドアッパパネルに設けられたパネル開口部とを備え、該パネル開口部に対し車幅方向にオフセットした位置にエンジンへ空気を導く吸気ダクトのダクト開口部が設けられ、該ダクト開口部への空気が上記パネル開口部を通過するように構成された車体前部構造に関する。
通常、車体前部のエンジンルーム内に設けられたエンジンの吸気マニホルドには、吸気ダクトから流入したフレッシュエア(走行風)を、エアクリーナを介して導入するように構成されており、吸気ダクトは車両の走行時に吸気を導入すべく前方に開口して設けられる。
上記の吸気ダクトは、一般にラジエータファンシュラウド(ラジエータシュラウドと同意)の上方に設けられ、車両の前方から後方に流れる空気は、ラジエータファンシュラウドの上方に流れた後、ボンネット下面とラジエータファンシュラウド上方との間の画定された通路を通って、上述の吸気ダクトの開口部に導かれるものである。
また、上述の吸気ダクトには、車両走行時に雨水や雪が吸込まれないようにするため、これら雨水や雪(特に、雪)を吸気通路の途中で分離すべく、ラジエータファンシュラウドと一体または別体のラビリンス構造が形成されている(特許文献1参照)。
しかしながら、車両デザインの関係上、ボンネットが低い車両や、ラジエータおよびラジエータファンシュラウドなどの部品を他の車両と共通化する部品共用等の要請により、ボンネット下面(詳しくは、ボンネットインナパネル下面)とラジエータファンシュラウドとの間の上下間の空間が狭い車両においては、上述の如きラビリンス構造を形成することができない場合がある。
ラビリンス構造がない場合には、雨天時や降雪時の走行において、水や雪を充分に分離することができない。また、ボンネット下面とラジエータファンシュラウドとの間の空間が狭いことに起因して、当該空間に雪が堆積すると、この堆積した雪が塊となって上述の吸気ダクト内に吸入されるという課題が発生する。
特開2008−247122号公報
そこで、この発明は、降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを防止することができる車体前部構造の提供を目的とする。
この発明による車体前部構造は、車両前面に形成された前面開口部と、該前面開口部後方に略水平方向に延びるシュラウドアッパパネルと、該シュラウドアッパパネルに設けられたパネル開口部とを備え、該パネル開口部に対し車幅方向にオフセットした位置にエンジンへ空気を導く吸気ダクトのダクト開口部が設けられ、該ダクト開口部への空気が上記パネル開口部を通過するよう構成された車体前部構造であって、上記パネル開口部に対して上記ダクト開口部の無い側には、上記前面開口部から導入された空気を上方に通過させる空気通過部が形成されており、車両走行時に生じる負圧により上記空気通過部を通過した空気が、車幅方向外側で反ダクト側に流れるよう構成したものである。
上述の空気通過部は、スリットや櫛状部または多孔部あるいはメッシュ部で形成してもよい。
上記構成によれば、次の如き効果がある。
すなわち、車両走行時にはエンジンルーム内が負圧になり、シュラウドアッパパネルのパネル開口部から負圧により反ダクト側に流れる気流と、空気通過部を通過して反ダクト側へ流れる気流とが相俟って、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流が増強される。
このため、吸気ダクトのダクト開口部が無い側(反ダクト側、詳しくは、反ダクト開口部側)に吸入空気が導かれることになり、降雪時に、ダクト開口部、吸気ダクト、エアクリーナ、吸気マニホルドを介してエンジンに雪が吸込まれるのを防止することができる。
この発明の一実施態様においては、上記シュラウドアッパパネルのパネル開口部に対応する位置には、プレート開口部または切欠きを有するプレートが取付けられており、上記空気通過部は該プレートに形成されており、上記プレート下面の空気通過部の後方に、下方に延びる壁部が形成されたものである。
上記構成によれば、上記壁部によりラジエータに向かう空気が空気通過部を通過するように上方に偏向されるので、空気を確実に上記空気通過部を通過させることができる。
よって、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流が確実に増強され、降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを、より一層確実に防止することができる。
この発明の一実施態様においては、上記プレートは、上記シュラウドアッパパネルに対して上方から取付けられるものであり、上記シュラウドアッパパネルには、上記空気通過部の後方に位置する縦壁部が形成されたものである。
上記構成によれば、シュラウドアッパパネルの縦壁部により、ラジエータに向かう空気が空気通過部を通過するように上方に偏向されるので、上記プレートの壁部の作用と相俟って、空気をより一層確実に上記空気通過部を通過させることができる。
よって、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流がさらに増強され、降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを、さらに防止することができる。
この発明によれば、上記空気通過部を設けたので、該空気通過部を通過して反ダクト側へ流れる気流により、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流を増強することができ、この結果、吸気ダクトのダクト開口部が無い側に吸入空気が導かれ、降雪時に、ダクト開口部、吸気ダクト、エアクリーナ、吸気マニホルドを介してエンジンに雪が吸込まれるのを防止することができる効果がある。
本発明の車体前部構造を示す全体斜視図 図1からボンネットを取外した状態の要部斜視図 図2の正面図 図3のA−A線矢視断面図 図3の平面図 図5からバンパフェースおよびウエザストリップを取外した状態の平面図 図2からバンパフェース、ウエザストリップ、整流部材を取外した状態の要部斜視図 図7の分解斜視図 セットプレートの正面図 セットプレートの斜視図 (a)はセットプレートの平面図、(b)はセットプレートの側面図 カバープレートの平面図 カバープレートとフィンの関連構造を示す平面図 カバープレートを下方から見上げた状態で示す要部斜視図 カバープレートの空気通過部とシュラウドアッパパネルの縦壁部との関連構造を示す斜視図
降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを防止するという目的を、車両前面に形成された前面開口部と、該前面開口部後方に略水平方向に延びるシュラウドアッパパネルと、該シュラウドアッパパネルに設けられたパネル開口部とを備え、該パネル開口部に対し車幅方向にオフセットした位置にエンジンへ空気を導く吸気ダクトのダクト開口部が設けられ、該ダクト開口部への空気が上記パネル開口部を通過するよう構成された車体前部構造において、上記パネル開口部に対して上記ダクト開口部の無い側には、上記前面開口部から導入された空気を上方に通過させる空気通過部が形成されており、車両走行時に生じる負圧により上記空気通過部を通過した空気が、車幅方向外側で反ダクト側に流れるよう構成することで実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、車体前部構造を示し、図1は当該車体前部構造を示す全体斜視図、図2は図1からボンネットを取外した状態の要部斜視図、図3は図2の正面図、図4は図3のA−A線矢視断面図である。
図1〜図4において、ダッシュパネルの前方に設けられたエンジンルーム1(図4参照)にはエンジン(図示せず)を配設する一方、該エンジンルーム1の上方を開閉可能に覆うボンネット2を設けている。このボンネット2は上側に位置するボンネットアウタパネル3と、下側に位置するボンネットインナパネル4とをヘミング加工により接合一体化したもので、ボンネットインナパネル4の前部下面には、図2,図4に示すように、シール部材としての前部ウエザストリップ5および後部ウエザストリップ6を、これら両者5,6の間隔を隔てて一体的に接着固定している。
これら前後の各ウエザストリップ5,6は、図2に示すように、その車幅方向中間部はボンネット2の前部形状に対応して車幅方向に延びており、車幅方向の端部からボンネット2前部の側面形状に対応して斜め後方に延びるように形成されており、これらの各ウエザストリップ5,6は後述する空間部30(図4参照)を画定する。
図1,図2,図3に示すように、車両最前部に位置するバンパフェース7を設けている。このバンパフェース7の前面において車幅方向中央部に凹形状に形成されボンネット2の前端2aと相俟ってフレッシュエア(走行風)を取入れるための前面開口部8を形成している。
また、バンパフェース7の前面開口部8の直下部には、車幅方向に延びる下部開口部9(いわゆる走行風取入れ口)を形成し、この下部開口部9からもフレッシュエアを取込むように形成している。
さらに、バンパフェース7の車幅方向左右両側上部には、ヘッドランプ(図示せず)を配置するために下方へ湾曲形成された凹部10,10が設けられている。
図5は図3の平面図、図6は図5からバンパフェース7および前後の各ウエザストリップ5,6を取外した状態の平面図、図7は図2の要部斜視図である。
図4,図5に示すように、エンジンルーム1内のエンジン前方には、ラジエータ11(詳しくは、ウオータチューブ、フィン、アッパタンク、ロアタンクを有するラジエータ本体と、クーリングファンから成るラジエータユニット)を立設配置している。このラジエータ11はエンジン冷却水(クーラントを含む)の放熱器であって、該ラジエータ11は、図7に示すように、ラジエータファンシュラウド12(以下、単にラジエータシュラウドと略記する)で保持されている。また、上述のラジエータ11は後述するシュラウドアッパパネル13の下方に搭載されたものである。
図7に示すように、ラジエータシュラウド12は、上側において車幅方向に延びるシュラウドアッパ12Uと、下側において車幅方向に延びるシュラウドロア12Lと、左右両側部においてシュラウドアッパ12Uおよびシュラウドロア12Lを上下方向に連結する左右のシュラウドサイド12S,12Sと、を合成樹脂により一体形成して、方形枠状に成したものである。
図7に示すように、この実施例では、左右のシュラウドサイド12S,12Sの間においてラジエータ11の前面に位置する2本のシュラウドレイン12R,12R(詳しくは、シュラウドレインフォースメント)を車幅方向に間隔(後述するセットプレート31の取付け間隔)を隔てて上下方向に延びるよう設け、これら2本のシュラウドレイン12R,12Rによりシュラウドアッパ12Uの車幅方向中間部と、シュラウドロア12Lの車幅方向中間部とを上下方向に連結している。なお、これらシュラウドレイン12R,12Rは合成樹脂により上述のラジエータシュラウド12と一体形成されたものである。
図8は図7の分解斜視図であって、図4,図8に示すように、ラジエータシュラウド12におけるシュラウドアッパ12Uの上部には、前面開口部8の上側後方において略水平方向に延びるシュラウドアッパパネル13を配置している。
図4に示すように、該シュラウドアッパパネル13はシュラウドアッパ12Uの上部において車幅方向に延びる上側部材14と、該上側部材14の下部とシュラウドアッパ12Uの上部との間において車幅方向に延びる下側部材15と、の2部材により構成されている。
図4,図8に示すように、上述の上側部材14の車幅方向中央部には、切欠き形状のパネル開口部14aを形成すると共に、このパネル開口部14aから車幅方向右側に離間した位置には、開口14bを形成している。この開口14bは後述するスリット26cと上下方向に対向するものである。
また、図4,図8に示すように、上述の下側部材15の車幅方向中央部にも、上側部材14のパネル開口部14aと上下方向に対応すべくパネル開口部15aを形成している。
そして、エンジンへの吸気が上述のパネル開口部15a,14aおよび後述するプレート開口部26a(図5,図6参照)を通過するように構成されている。
ところで、図5,図6に示すように、ラジエータシュラウド12におけるシュラウドアッパ12Uの左右両側部は、シュラウド部材16,16を介してエプロンレインフォースメントなどの車体に支持されている。
また、図7,図8に示すように、ラジエータシュラウド12の左右のシュラウドサイド12S,12Sの下部前面とシュラウドロア12Lとのコーナ部前面には、左右一対のシールプレート17,17を取付けている。
これら左右一対のシールプレート17,17は、上下方向に延びる縦壁17aと、車幅方向に延びる下壁17bとを車両正面視でL字状または逆L字状に組合せたもので、走行風をラジエータ11側へ案内すべく構成したものである。
さらに、図4,図7,図8に示すように、上述のラジエータシュラウド12の前方には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント18を設けている。このバンパレインフォースメント18は、前方が開放された断面略ハット形状のバンパビーム19と、該バンパビーム19の前方開放部を閉塞する平板状のクロージングプレート20との2部材から成り、図4に示すように、バンパビーム19とクロージングプレート20との間には、車幅方向に延びる閉断面21が形成されている。
図7,図8に示すように、上述のバンパレインフォースメント18の左右両端部は、クラッシュカン22およびブラケット23を介して、図示しないフロントサイドフレームの前端部に連結されている。
また、図4に示すように、上述のバンパレインフォースメント18のクロージングプレート20前面には、ウレタンなどから成る衝撃吸収部材24いわゆるEA部材を接着固定し、この衝撃吸収部材24のさらに前方には、整流部材25を配置している。
この整流部材25は、走行風を当該整流部材25の上方と下方とに案内するもので、該整流部材25は、図1,図2,図3にも示すように、ラジエータ11の車幅方向の略全幅と等しい車幅方向長さを有し、その左右の取付け部25a,25aはラジエータシュラウド12のシュラウドサイド12S,12Sに取付けられている。
一方、図7,図8に示すように、上側部材14と下側部材15とから成るシュラウドアッパパネル13の上部には、プレートとしてのカバープレート26を取付けている。
このカバープレート26は複数のクリップ26d(図12参照)を有し、これら複数のクリップ26dにより該カバープレート26がシュラウドアッパパネル13に対して上方から取付けられている。
図5,図6,図8に示すように、シュラウドアッパパネル13のパネル開口部14a,15aと対応する位置において上記カバープレート26には、その車幅方向中央部に切欠き形状のプレート開口部26aが形成されている。
上述のパネル開口部14a,15aおよびプレート開口部26aは上下方向に対応する位置に設けられており、これらパネル開口部14a,15aおよびプレート開口部26aに対して車幅方向にオフセットした位置には、図5,図6に示すように、エンジンへ空気を導く吸気ダクト27のダクト開口部27aが設けられている。また、上述の各開口部14a,15a,26aからの空気は、ダクト開口部27aが形成されたダクト側と、これとは反対側の反ダクト側とに流れるように形成されている。
この実施例では、上述のパネル開口部14a,15aおよびプレート開口部26aを車幅方向中央部に形成し、吸気ダクト27のダクト開口部27aを、図5,図6に示すように車幅方向中央よりも車両左側に片寄った位置に設けることで、各要素14a,15a,26aに対してダクト開口部27aを車幅方向にオフセットした位置に設けたものである。
図5,図6,図8に示すように、上述の吸気ダクト27は、前部ダクト28と後部ダクト29との2部材から成り、上述のダクト開口部27aは車両前方に向けて開口形成されると共に、吸気ダクト27の下流側は、エアクリーナ(図示せず)を介してエンジンの吸気マニホルドに連通接続されている。
なお、上述の後部ウエザストリップ6は、ダクト開口部27aの直上部において、吸気ダクト27の前部ダクト28上面を通るように配設されている。
図4,図5で示すように、前後がウエザストリップ5,6で画定され、上下がボンネットインナパネル4と、シュラウドアッパパネル13およびカバープレート26で画定された空間部30(空気の通路)により、空気の流れが規制されており、前後の各ウエザストリップ5,6間の吸気ダクト27側(図5の左側)の空間部30、並びに、反吸気ダクト側(図5の右側)の空間部30は、車両走行時に負圧となるエンジンルーム1内の負圧が作用するように、それぞれエンジンルーム1内に連通している。
上述のダクト開口部27aへの空気は、パネル開口部14a,15a、プレート開口部26aおよび空間部30を通過するように構成されている。ここで、上述のパネル開口部14a,15aおよびプレート開口部26aは、ボンネットインナパネル4の下部に設けられ車体側のラッチに対してアンロック可能に係合されるボンネット側のストライカ(図示せず)の貫通孔を兼ねるものである。
ところで、図4,図7,図8に示すように、上述のラジエータ11の前面、詳しくは、ラジエータシュラウド12における左右一対のシュラウドレイン12R,12Rの前面上方部には、セットプレート31を取付けている。このセットプレート31は空力性能の向上を図るためのプレートである。
すなわち、ラジエータ11内、エンジンルーム1内には走行風を入れない方が空力性能がよくなることが知られており、このセットプレート31はそのためにラジエータ11での冷却に比較的寄与しない箇所を塞いで、ラジエータ11に流入する走行風を遮蔽し、以て、空力性能を向上させるためのプレートである。
図9はセットプレートの正面図、図10はセットプレートの斜視図、図11の(a)はセットプレートの平面図、図11の(b)はセットプレートの側面図である。
図9,図10,図11に示すように、該セットプレート31は、プレート本体31aと、このプレート本体31aの車幅方向両端部から後方に平面視で略L字状に延びる支持脚31b,31bと、プレート本体31aの車幅方向中央から前方に向けてボックス状に突出する突出部31cと、プレート本体31aの上端部から上方に延びる上辺部31dと、を合成樹脂にて一体形成したものである。
ここで、上述のプレート本体31aおよび上辺部31dは、図4に示すように、パネル開口部14a,15aおよびプレート開口部26aの前部口縁の下方、つまり、上流側に位置する。
図11の(a)、(b)に示すように、左右の支持脚31b,31bにおける後端取付け座部には後方へ向けて突出するクリップ32が一体形成されており、これら左右一対のクリップ32,32を用いて、セットプレート31をラジエータシュラウド12のシュラウドレイン12R,12Rに取付けるように構成している。
なお、セットプレート31における左右の支持脚31b,31bのクリップ32,32を有さない支持脚後側上部は、シュラウドレイン12R,12R側に設けられた図示しないクリップにより係止保持されるように構成している。
また、上記セットプレート31におけるプレート本体31aの前面と上辺部31dの前面とに跨がって傾斜状に延びる偏向手段としてのフィン33(いわゆる偏向板)を一体形成している。このフィン33はパネル開口部14a,15aおよびプレート開口部26aの下方に位置しており、該パネル開口部14a,15aおよびプレート開口部26aを通過する空気を車幅方向で吸気ダクト27のダクト開口部27aが無い側(図7の左側)に偏向させるための偏向手段である。
上述のフィン33をパネル開口部14a,15aおよびプレート開口部26aの下方、すなわち、上流側に設けることで、このフィン33でダクト開口部27aが無い側(反ダクト側)に吸入空気を導き、これにより、降雪時においてダクト開口部27a、吸気ダクト27、エアクリーナ、吸気マニホルドを介してエンジンに雪が吸込まれるのを防止すべく構成したものである。
図13はカバープレートとフィンの関連構造を示す正面図であって、フィン33の反ダクト側端部33aは、パネル開口部(この実施例では、シュラウドアッパパネル13を構成する上側部材14と下側部材15に対して、カバープレート26を一体的に取付けているので、図13では、カバープレート26におけるプレート開口部26aを示す)のダクト側端部26aよりもプレート開口部26a内側に位置し、フィン33のダクト側端部33bは、プレート開口部26aのダクト側端部26aよりもダクト側(詳しくは、ダクト開口部27a側)に位置しており、上記フィン33はその反ダクト側端部33aがダクト側端部33bより高い位置になるよう傾斜している。
上述のフィン33の反ダクト側およびダクト側の各端部33a,33bの位置を、上述の如く設定すると共に、当該フィン33を内高外低状にスラントする傾斜構造と成して、より一層多くの気流を、確実に反ダクト側に導き、以て、降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを、より一層確実に防止すべく構成したものである。
ここで、上述のフィン33は図示の直線状のものに代えて、曲率中心を斜め下方に有し、斜め上方へ突出するように湾曲する円弧状のフィンであってもよい。
また、図11の(a)、(b)に示すように、上述のフィン33の根元部分またはその近傍(この実施例では、根元部分)には、車両前方からの衝突荷重により当該フィン33の倒れを促進する脆弱部としてのスリット34を、該フィン33の長手方向に沿って上下2箇所に穿設形成している。
そして、車両と歩行者との衝突時に、車両前方からの衝突荷重により脆弱部としての2つのスリット34,34にて上記フィン33の根元部分またはその近傍からの倒れを促進し、これにより、歩行者に対する安全性を高めるように構成したものである。
なお、上述のスリット34に代えて、フィン33に薄肉部、V字状のノッチまたは凹溝部を形成する脆弱部と成してもよい。
図4に示すように、上述のセットプレート31のプレート本体31aおよび上辺部31dは、パネル開口部14a,15aの前縁近傍の下方、つまり、上流側に位置しており、該セットプレート31の上辺部31dには、図4,図9,図10に示すように、空気を通過させる一方で、雪の通過を妨げる防雪手段としてのメッシュ35(詳しくは、メッシュ構造部)を設けている。
図9,図10に示すように、この実施例では、フィン33を隔てた上辺部31dの左右両側に、方形状の角孔を車幅方向および上下方向に複数配列した構造のメッシュ35と成し、角孔が空気を通過させる孔部に設定され、角孔周縁部が雪の通過を妨げる孔縁部に設定されている。
上述のシュラウドアッパパネル13におけるパネル開口部14a,15aの前縁近傍の下方、つまり、上流側に上記メッシュ35を設け、このメッシュ35によりそれよりも下流側(特に、ダクト開口部27a側)へ雪が通過するのを防止し、よって、降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを防止すべく構成したものである。
また、上述のメッシュ35をラジエータ11前方側に位置する既存のセットプレート31に形成された複数の孔部とその孔縁部に設定し、空力性能向上のためのセットプレート31を有効利用して雪害対策を行ない、かつ、部品点数の増加を招かないように構成したものである。
ここで、図9,図10に示す角孔の縦横配列構造のメッシュ35に代えて、複数の丸孔や三角形状または多角形状の孔によるメッシュ構造を採用してもよい。
さらに、図4,図9,図10に示すように、上述の突出部31cは、セットプレート31の前面において、防雪手段としての上記メッシュ35に隣接して、その下方部から前方へ突出するように設けられたものであり、この突出部31cにより乱流を発生し、この乱流による大小のランダムな渦運動にて、雪の侵入をより一層抑制するように構成したものである。
なお、上述の突出部31cに代えて、セットプレート31のプレート本体31aに前方へ突出する車載機器としての前方監視用のレーダを取付け、この前方監視用のレーダを乱流発生手段として用いる構造を採用してもよい。
図14はカバープレートを下方から見上げた状態で示す要部斜視図、図15はカバープレートの空気通過部とシュラウドアッパパネルの縦壁部との関連構造を示す斜視図(但し、図15においてはシュラウドアッパパネルの上側部材14の図示を省略している)である。
図6,図12,図15に示すように、上述のカバープレート26におけるプレート開口部26aの反ダクト側の近傍位置には、前後方向に延びる複数条の長孔26bを穿設形成している。
また、図6,図12,図14,図15に示すように、パネル開口部15a,14aに対してダクト開口部27aの無い側には、バンパフェース7の前面開口部8から導入された空気を上方に通過させる空気通過部としてのスリット26cが形成されており、車両走行時に生じる負圧により当該スリット26cを通過した空気が、車幅方向外側で反ダクト側に流れるように構成している。
図14に示すように、上述のスリット26cはカバープレート26に形成されており、このスリット26cは前後方向に延びる複数の長孔を車幅方向に配列して形成したものである。
車両走行時に前面開口部8から導入された空気のうち、セットプレート31よりも車幅方向外側を流れる空気は、直接ラジエータ11を冷却するが、セットプレート11に対向する空気は、図4に矢印aで示すように、セットプレート31のメッシュ35を通ってその下流側へ流れた後に、同図に矢印bで示すように、シュラウドアッパパネル13の下側部材15のパネル開口部15aから上方へ流れる。ここで、降雪時には上記メッシュ35により雪がそれよりも下流側へ通過するのを防止する。
また、車両走行時には、エンジンルーム1内が負圧になり、この負圧が前後の各ウエザストリップ5,6で画定された空間部30(図4参照)に作用し、シュラウドアッパパネル13のパネル開口部15a,14aおよびカバープレート26のプレート開口部26aから該負圧により反ダクト側に流れる気流(図5の矢印c参照)と、空気通過部としてのスリット26cを通過して反ダクト側へ流れる気流(図5の矢印d参照)とが相俟って、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流が増強される。
この結果、吸気ダクト27のダクト開口部27aが存在する側と、吸気ダクト27のダクト開口部27aが無い側とを対比すると、ダクト開口部27aが無い側に相対的に多くの吸入空気が導かれ、降雪時にダクト開口部27a、吸気ダクト27、エアクリーナ、吸気マニホルドを介してエンジンに雪が吸込まれるのを防止するものである。
図14に示すように、カバー部材26の下面において上述のスリット26cの後方には、下方に延びる壁部36が一体形成されている。
上述の壁部36は、スリット26cの後縁部に沿って車幅方向に延びる後壁部36aと、スリット26cの車幅方向内端部に沿って車両前後方向に延びる側壁部36bと、スリット26cの車幅方向外端部に沿って車両前後方向に延びる側壁部36cと、を平面視で略コの字状に連設したものである。
上述の壁部36により、ラジエータ11に向かう空気がスリット26cを通過するように上方に偏向し、空気を確実に上記スリット26cを通過させるように構成したものである。
図15に示すように、シュラウドアッパパネル13の下側部材15は、そのパネル開口部15aが形成された部位(つまり、車幅方向中央部)においては当該パネル開口部15aの前縁近傍から下方に延びる前側縦壁部15bを有し、この前側縦壁部15bに対してダクト側(図15の右側)には、下方に延びる後側縦壁部15cを有し、さらに前側縦壁部15bに対して反ダクト側(図15の左側)には、下方に延びる後側縦壁部15dを有している。
そして、車幅方向中央部に位置する前側縦壁部15bと、該前側縦壁部15bに対して車幅方向の外側に位置するダクト側および反ダクト側の各後側縦壁部15c,15dを、なだらかに連設形成している。
上述の反ダクト側の後側縦壁部15dは、空気通過部を形成するスリット26cの後方に位置するように形成されており、当該後側縦壁部15dにより、ラジエータ11に向かう空気がスリット26cを通過するように上方に偏向させ、カバープレート26の壁部36の作用と相俟って、空気をより一層確実に上記スリット26cを通過させ、これにより、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流をさらに増強し、以て、降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを防止すべく構成している。
要するに、上記実施例においては、車両前方の前面開口部8から導入される空気を、シュラウドアッパパネル13の車幅方向中央部に設けられた各開口部14a,15aを通過するように構成すると共に、吸気ダクト27のダクト開口部27aを、これら開口部14a,15aに対して車幅方向にオフセットした位置に設けることで、ラビリンス効果をもたせたうえで、反ダクト側に流れる気流を増強するために、空気通過部としてのスリット26cを形成したものである。当該スリット26cよりも車幅方向外側は、車両走行時に負圧となるエンジンルーム1に連通しているため、上記スリット26cの下方から空気が導入され、車幅方向外側に流れる気流が増強されることになり、よって、水や雪を含んだ空気を反ダクト側に導くことが可能になるものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
このように、上記実施例の車体前部構造は、車両前面に形成された前面開口部8と、該前面開口部8後方に略水平方向に延びるシュラウドアッパパネル13と、該シュラウドアッパパネル13に設けられたパネル開口部14a,15aとを備え、該パネル開口部14a,15aに対し車幅方向にオフセットした位置にエンジンへ空気を導く吸気ダクト27のダクト開口部27aが設けられ、該ダクト開口部27aへの空気が上記パネル開口部14a,15aを通過するよう構成された車体前部構造であって、上記パネル開口部14a,15aに対して上記ダクト開口部27aの無い側には、上記前面開口部8から導入された空気を上方に通過させる空気通過部(スリット26c参照)が形成されており、車両走行時に生じる負圧により上記空気通過部(スリット26c)を通過した空気が、車幅方向外側で反ダクト側に流れるよう構成したものである(図1,図4,図5参照)。
この構成によれば、次の如き効果がある。
すなわち、車両走行時にはエンジンルーム1内が負圧になり、シュラウドアッパパネル13のパネル開口部14a,15aから負圧により反ダクト側に流れる気流と、空気通過部(スリット26c)を通過して反ダクト側へ流れる気流とが相俟って、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流が増強される。
このため、吸気ダクト27のダクト開口部27aが無い側に吸入空気が導かれることになり、降雪時に、ダクト開口部27a、吸気ダクト27、エアクリーナ、吸気マニホルドを介してエンジンに雪が吸込まれるのを防止することができる。
また、本実施形態においては、上記シュラウドアッパパネル13のパネル開口部14a,15aに対応する位置には、プレート開口部26a(または切欠き)を有するプレート(カバープレート26参照)が取付けられており、上記空気通過部(スリット26c参照)は該プレート(カバープレート26)に形成されており、上記プレート(カバープレート26)下面の空気通過部(スリット26c)の後方に、下方に延びる壁部36が形成されたものである(図6,図14参照)。
この構成によれば、上記壁部36によりラジエータ11に向かう空気が空気通過部(スリット26c)を通過するように上方に偏向されるので、空気を確実に上記空気通過部(スリット26c)を通過させることができる。
よって、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流が確実に増強され、降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを、より一層確実に防止することができる。
さらに、本実施形態においては、上記プレート(カバープレート26)は、上記シュラウドアッパパネル13に対して上方から取付けられるものであり、上記シュラウドアッパパネル13には、上記空気通過部(スリット26c)の後方に位置する縦壁部(後側縦壁部15d参照)が形成されたものである(図15参照)。
この構成によれば、シュラウドアッパパネル13の縦壁部(後側縦壁部15d)により、ラジエータ11に向かう空気が空気通過部(スリット26c参照)を通過するように上方に偏向されるので、上記プレート(カバープレート26)の壁部36の作用と相俟って、空気をより一層確実に上記空気通過部(スリット26c)を通過させることができる。
よって、車幅方向外側で反ダクト側に流れる気流がさらに増強され、降雪時にエンジンに雪が吸込まれるのを、さらに防止することができる。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の空気通過部は、上記実施例のスリット26cに対応し、
以下同様に、
プレートは、カバープレート26に対応し、
縦壁部は、後側縦壁部15dに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記空気通過部は、スリット26cに代えて、櫛状部、多孔部またはメッシュ部材であってもよい。
以上説明したように、本発明は、車両前面に形成された前面開口部と、該前面開口部後方に略水平方向に延びるシュラウドアッパパネルと、該シュラウドアッパパネルに設けられたパネル開口部とを備え、該パネル開口部に対し車幅方向にオフセットした位置にエンジンへ空気を導く吸気ダクトのダクト開口部が設けられ、該ダクト開口部への空気が上記パネル開口部を通過するよう構成された車体前部構造について有用である。
8…前面開口部
13…シュラウドアッパパネル
14a,15a…パネル開口部
15d…後側縦壁部(縦壁部)
26…カバープレート(プレート)
26a…プレート開口部
26c…スリット(空気通過部)
27…吸気ダクト
27a…ダクト開口部
36…壁部

Claims (3)

  1. 車両前面に形成された前面開口部と、
    該前面開口部後方に略水平方向に延びるシュラウドアッパパネルと、
    該シュラウドアッパパネルに設けられたパネル開口部とを備え、
    該パネル開口部に対し車幅方向にオフセットした位置にエンジンへ空気を導く吸気ダクトのダクト開口部が設けられ、
    該ダクト開口部への空気が上記パネル開口部を通過するよう構成された車体前部構造であって、
    上記パネル開口部に対して上記ダクト開口部の無い側には、上記前面開口部から導入された空気を上方に通過させる空気通過部が形成されており、
    車両走行時に生じる負圧により上記空気通過部を通過した空気が、車幅方向外側で反ダクト側に流れるよう構成した
    車両前部構造。
  2. 上記シュラウドアッパパネルのパネル開口部に対応する位置には、プレート開口部または切欠きを有するプレートが取付けられており、
    上記空気通過部は該プレートに形成されており、
    上記プレート下面の空気通過部の後方に、下方に延びる壁部が形成された
    請求項1記載の車体前部構造。
  3. 上記プレートは、上記シュラウドアッパパネルに対して上方から取付けられるものであり、
    上記シュラウドアッパパネルには、上記空気通過部の後方に位置する縦壁部が形成された
    請求項2記載の車体前部構造。
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