しかしながら、従来の放射線検出器には、次のような問題点がある。すなわち、従来構成によれば、別種の電気配線同士がショートすることにより放射線検出器60が破損してしまうという問題点がある。
放射線検出器60には、複数種類の電気配線が縦横に付設されている。これらの電気配線は、配線の交点で互いにショートしないように、層間絶縁層を介して絶縁されている。アモルファスセレン層51の膜厚が肉薄となっている端部に配線の交点が位置していると、この部分で配線のショートが起こりやすくなる。
互いに立体的に交差し、ねじれの位置の関係にある2つの電気配線がショートする様子について説明する。図17に示すように、配線58、配線59、アモルファスセレン層51、電極層53とがこの順に積層されているとする。別種の配線58と配線59とはねじれの位置の関係にあり、立体的に交差している。
配線58と配線59との交差部において、電極層53と配線58との間の電圧について考えると、電圧は2つの抵抗に分配される。すなわち、アモルファスセレン層51がなす第1の抵抗r1と、配線58、配線59の間の図示省略された層間絶縁層がなす第2の抵抗r2である(図17参照)。
次に、この2つの抵抗にどの程度の電圧が分配されるかを考える。図17左側に示すように交差部がアモルファスセレン層51の層厚が厚い部分に存している場合は、アモルファスセレン層51がなす抵抗の抵抗値は大きなものとなり、第1の抵抗r1に高い電圧がかかることになる。その分、第2の抵抗r2にはさほど高い電圧はかからない。
一方、図17右側に示すように交差部がアモルファスセレン層51の層厚が薄い部分に存している場合は、アモルファスセレン層51がなす抵抗の抵抗値はより小さくなる。すると、第1の抵抗r1にかかる電圧がより低くなることになる。すると、その分、第2の抵抗r2により高い電圧がかかることになる。なお、アモルファスセレン層51の層厚が薄い部分には、電圧を供給する電極層53が設けられていないが、高抵抗膜52がある程度の導電性を有している。したがって、アモルファスセレン層51は、層厚が薄い部分においても電極層53によって電界に晒される。
配線58と配線59とに挟まれて存在する図示省略された層間絶縁層の絶縁耐性はそれほど高いものではない。配線58と配線59との交差部において層間絶縁層(第2の抵抗r2)に高い電圧がかかると、層間絶縁層が破壊され、配線58と配線59とがショートしてしまう。
すると、配線58と配線59とのショート部において、検出素子の欠損が生じる。この検出素子の欠損は、図18に示すように放射線検出器60の端部に止まらず、1列に並んだ検出素子が一斉に欠損してしまい、ライン状の欠損hとして現れる。ライン状の欠損の部分は、もはや放射線を検知することはできない。
このようなライン状の欠損hは、放射線検出器60の検出信号を基に生成される放射線画像において偽像として現れる。したがって、別種の電気配線が部分的にショートすることに起因して、ライン状の偽像が放射線画像に現れることになる。このライン状の偽像は、診断の妨げとなる。
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、層間絶縁層を介して互いに交差する電気配線同士がショートすることを防止し、検出素子の欠損の発生が抑制された放射線検出器を提供することにある。
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。すなわち、本発明に係る放射線検出器は、2次元的に配列され検出素子の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、放射線の入射によりキャリアを生成する半導体層と、電圧が印加される電極層とがこの順に積層され、半導体層は、電極層下の層厚を有する中央部と、中央部に対して肉薄となっているテーパ状の端部とを有し、マトリックス基板はねじれの位置の関係にある電気配線を有し、マトリックス基板を半導体層側から見たときに電気配線が重なっている交差部は、半導体層における中央部に覆われる位置に設けられていることを特徴とするものである。
[作用・効果]本発明の構成によれば、別種の電気配線同士がショートすることを防ぐように工夫がされている。すなわち、電気配線の交差部は、半導体層における層厚が肉厚の中央部に覆われる位置に設けられている。この様にすることで、電気配線の交差部は、電極層と確実に隔離されるので、互いに交差する電気配線がショートしてしまうことがない。したがって、本発明によれば、別種の電気配線同士がショートすることにより生じる検出素子の欠損が抑制されるので、長期間の使用に耐えることができる放射線検出器を提供できる。
また、上述の放射線検出器において、電気配線は、検出素子が有するコンデンサのグランド電極に電気的に接続されているバスライン配線を束ねて基準電位を供給する幹ライン配線であればより望ましい。
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線検出器の具体的構成を示すものとなっている。すなわち、電極層と、検出素子が有するコンデンサのグランド電極に電気的に接続されているバスライン配線を束ねて基準電位を供給する幹ライン配線とが肉厚の半導体層で隔絶されるように構成されていれば、放射線検出器で頻発している検出素子の欠損の発生を抑制することができる。幹ライン配線は、放射線検出器において最も周縁部に設けられている配線であるから、この他の配線は確実に半導体層の肉厚部分に存することになる。
また、本発明に係る放射線検出器は、2次元的に配列され検出素子の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、放射線の入射によりキャリアを生成する半導体層と、キャリアを選択的に通過させる抵抗膜と、電圧が印加される電極層とがこの順に積層され、マトリックス基板はねじれの位置の関係にある電気配線を有し、マトリックス基板の端部には、抵抗膜に覆われない露出領域が設けられており、マトリックス基板を半導体層側から見たときに電気配線が重なっている交差部は、抵抗膜に覆われる位置を避けてマトリックス基板の露出領域に設けられていることを特徴とするものである。
[作用・効果]上述の構成は、本発明の目的を達成し得る別の構成についてのものである。すなわち、電気配線同士のショートが起こりやすい交差部は、抵抗膜に覆われる位置を避けてマトリックス基板の露出領域に設けられている。抵抗膜は、キャリアを選択的に通過させる性質を有するので、電流を通過させる性質をある程度有している。したがって、電気配線を抵抗膜に覆われる位置に設けると、電極層から電気配線までの間を電流が抵抗膜を介して流れる現象が発生してしまい、検出素子の欠損が生じてしまう。本発明の構成によれば、電気配線の交差部は、マトリックス基板が抵抗膜に覆われていない露出領域に設けられているので、抵抗膜が電気配線の交差部の位置に存在しない。この様にすることで、互いに交差する電気配線がショートしてしまうことがない。したがって、本発明によれば、電気配線同士がショートすることにより生じる検出素子の欠損が抑制されるので、長期間の使用に耐えることができる放射線検出器を提供できる。
また、上述の放射線検出器において、電極層とマトリックス基板の露出領域とを覆うエポキシ樹脂層(絶縁層)を備え、電気配線の交差部は、絶縁層に覆われる位置に設けられていればより望ましい。
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線検出器の具体的構成を示すものとなっている。電気配線の交差部を絶縁層に覆われる位置に設けられるようにすれば、電気配線の交差部を抵抗膜に覆われる位置から確実に避けて設けるようにすることができる。
また、上述の放射線検出器において、電極層とマトリックス基板の露出領域とを覆う絶縁層を備え、絶縁層を覆う補助板と、マトリックス基板の周縁部の形状に倣って筒状となっており、補助板とマトリックス基板の周縁部において両板を架橋するように設けられているスペーサとを備え、電気配線の交差部は、スペーサに覆われる位置に設けられていればより望ましい。
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線検出器の具体的構成を示すものとなっている。電気配線の交差部をスペーサに覆われる位置に設けられるようにすれば、電気配線の交差部を抵抗膜に覆われる位置から確実に避けて設けるようにすることができる。
本発明の構成によれば、電気配線同士がショートすることを防ぐように工夫がされている。すなわち、電気配線の交差部は、半導体層における層厚が肉厚の中央部に覆われる位置に設けられている。この様にすることで、電気配線は、電極層と確実に隔離されるので、電気配線同士がショートしてしまうことがない。したがって、本発明によれば、電気配線同士がショートすることにより生じる検出素子の欠損が抑制されるので、長期間の使用に耐えることができる放射線検出器を提供できる。
以降、本発明における最良の形態について説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。
実施例1
<X線検出器の全体構成>
実施例1に係るX線検出器10は、図1に示すように、キャリアの移動によって誘起される電荷を蓄積して読み出すアクティブマトリックス基板4と、X線をキャリア対に変換するアモルファスセレン層1と、第2高抵抗膜2と、共通電極3と、常温硬化型エポキシ樹脂が硬化して構成されるエポキシ樹脂層5と、ガラスで構成される補助板6とを有している。また、X線検出器10は、アクティブマトリックス基板4,第1高抵抗膜7,アモルファスセレン層1,第2高抵抗膜2,共通電極3,エポキシ樹脂層5,および補助板6の順に積層された構成となっている。X線検出器は、本発明の放射線検出器に相当する。
アモルファスセレン層1は、本発明の半導体層に相当し、第2高抵抗膜2は、本発明の抵抗膜に相当する。また、共通電極3は、本発明の電極層に相当し、アクティブマトリックス基板4は、本発明のマトリックス基板に相当する。そして、エポキシ樹脂層5は、本発明の絶縁層に相当する。
アモルファスセレン層1は、比抵抗109Ωcm以上(好ましくは1011Ωcm以上)となっている高純度のアモルファスセレンで構成される。その積層方向の厚さは、0.2mm〜3.0mmとなっている。このアモルファスセレン層1にX線が入射すると、正孔と電子のペアであるキャリア対が発生する。アモルファスセレン層1は、強い電場に置かれているので、キャリアは、それに伴って移動し、アクティブマトリックス基板4に形成された収集電極4aに電荷が誘起される。
図2は、アモルファスセレン層1の構成について説明するものである。アモルファスセレン層1は、端部1aにおいて、層厚が肉薄となっているテーパ状となっている。これは、アクティブマトリックス基板4上にアモルファスセレン層1を成長形成する際に、化合物がマスクの外側にはみ出してアクティブマトリックス基板4に付着することに起因する。一方、アモルファスセレン層1において、端部1aよりもアモルファスセレン層1の他端側(内部側)に位置する中央部1bの層厚は肉薄となっていない平坦部となっている。共通電極3は、アモルファスセレン層1の中央部1bに設けられている。中央部1bの平均の層厚を100%とすると、端部1aの層厚は0%以上80%以下となっている。
図3は、アモルファスセレン層1の端部1aと中央部1bとの位置関係を示した平面図である。矩形となっているアクティブマトリックス基板4には、第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1および第1高抵抗膜7が設けられていない額縁状の露出部Rを有している。アモルファスセレン層1は、アクティブマトリックス基板4の露出部Rの内側に存在する額縁状の端部1aと、この端部1aの更に内側に設けられた中央部1bとに分けられる。
アクティブマトリックス基板4は、2次元的に配列され検出素子の各々から信号を読み出す構成となっている。この詳細を説明する。アクティブマトリックス基板4には、ガラス基板上にキャリア収集用の収集電極4aが形成されている。収集電極4aは、第1高抵抗膜7に接するとともに、アクティブマトリックス基板4の表面に2次元的に配列されている。この収集電極4aは、図1に示すように、電荷蓄積用のコンデンサ4cに接続されている。コンデンサ4cは、収集電極4aで収集された電荷が蓄積される。コンデンサ4cは、トランジスタ4tに接続されている。このトランジスタ4tは、コンデンサ4cに接続される入力端子の他に、電流制御用のゲートGと、検出信号読み出し用の読み出し電極Pとを有している。トランジスタ4tのゲートGがオンされると、コンデンサ4cに蓄積している電荷は読み出し電極Pに向けて流れる。
2次元的に配列されたトランジスタ4tは、縦横に格子状に伸びる配線に接続されている。すなわち、図4における縦方向に配列したトランジスタ4tの読み出し電極Pは、全て共通のアンプ電極Q1〜Q4のいずれかに接続されており、図4における横方向に配列したトランジスタ4tのゲートGは、全て共通のゲート制御電極H1〜H4のいずれかに接続されている。ゲート制御電極H1〜H4は、ゲートドライバ13に接続され、アンプ電極Q1〜Q4は、アンプアレイ14に接続される。
各コンデンサ4cに蓄積される電荷を読み出す構成について説明する。図4におけるコンデンサ4cの各々に電荷が蓄積されているものとする。ゲートドライバ13は、ゲート制御電極H1を通じてトランジスタ4tを一斉にオンする。オンされた横に並んだ4つのトランジスタ4tは、アンプ電極Q1〜Q4を通じて、電荷(原信号)をアンプアレイ14に伝達する。
次に、ゲートドライバ13は、ゲート制御電極H2を通じてトランジスタ4tを一斉にオンする。この様に、ゲートドライバ13は、ゲート制御電極H1〜H4を順番にオンしていく。その度ごとに行の異なるトランジスタ4tがオンされる。こうして、FPD4は、コンデンサ4cの各々に蓄積された電荷を1行毎に読み出す構成となっている。
アンプアレイ14には、アンプ電極Q1〜Q4の各々に、信号を増幅するアンプが設けられている。アンプ電極Q1〜Q4からアンプアレイ14に入力された原信号は、ここで所定の増幅率で増幅される。画像生成部15は、アンプアレイ14から出力された原信号を基にX線透視画像を生成する。
収集電極4a,コンデンサ4c,およびトランジスタ4tは、X線を検出する検出素子を構成する。検出素子は、アクティブマトリックス基板4において、例えば3,072×3,072の縦横に並んだ2次元マトリックスを形成している。
共通電極3は、金で構成され、第2高抵抗膜2を介してアモルファスセレン層1にバイアス電圧を印加する目的で設けられている。図1に示すようにノード3aに接続されている。ノード3aに高電位が供給されることにより、共通電極3には、電位にして、例えば、10kVの正のバイアス電圧が印加されている。
第1高抵抗膜7,および第2高抵抗膜2は、例えばSb2S3から構成され、電子、またはホールのうちのいずれかを選択的に通過させる膜である。その膜厚は、0.1μm〜5μm程度であり、比抵抗は109Ωcm以上となっている。
図5は、幹ライン配線(CS幹配線)Sを説明する図である。幹ライン配線Sは、図5に示すように、検出素子4a,4c,4tのマトリックス配列の両端に縦方向に伸びるように配線されている。そして、検出素子4a,4c,4tの横方向の配列のそれぞれについて横方向に伸びたバスライン配線bが設けられていて、幹ライン配線Sはバスライン配線bの各々を束ねて構成され、幹ライン配線Sの太さはバスライン配線bよりも太くなっている。バスライン配線bは、図1におけるコンデンサ4cのグランド電極GNDに電気的に接続されている。幹ライン配線Sには、グランド電位等の基準電位が与えられる。幹ライン配線Sも、本発明の電気配線に相当する。
電気配線の交差部について説明する。図6は、横方向に伸びるバスライン配線bと縦方向に伸びるアンプ電極Qの配線とが交差する様子を表している。図6に示すようにバスライン配線bは、アクティブマトリックス基板4における上層部に配線されるアンプ電極Qの配線(図6においては破線で表示)と立体交差しており、各配線はねじれの位置の関係にある。アクティブマトリックス基板4をアモルファスセレン層1から見たとき両配線Q,bが重なっている交差点を交差部D1と呼ぶ。両配線Q,bは立体交差しているので、両配線Q,bの交差部D1は、両配線Q,bが互いに最も接近する地点であることになる。この交差部D1は、縦方向に配列して配線される複数のバスライン配線bと横方向に配列して配線される複数のアンプ電極Qの配線との間の各々で見られ、アクティブマトリックス基板4をアモルファスセレン層1から見たとき、交差部D1は、2次元マトリックス状に配置している。
互いに横方向に隣接する交差部D1の幅をW2とする。この幅W2は、検出素子の配列ピッチと同じ幅となっている。幹ライン配線Sとこれに横方向から隣接する交差部D1の幅をW1とする。この幅W1は、検出素子の配列ピッチに制約されることなく、自由に設計変更することができる。
電気配線の交差部について更に説明する。図7は、横方向に伸びるゲート制御電極Hの配線と、縦方向に伸びる幹ライン配線Sとが交差する様子を示している。図7に示すように幹ラインバスライン配線Sbは、アクティブマトリックス基板4における上層部に配線されるゲート制御電極Hの配線(図7においては破線で表示)と立体交差しており、各配線はねじれの位置の関係にある。アクティブマトリックス基板4をアモルファスセレン層1から見たとき両配線H,Sbが重なっている交差点を交差部D2と呼ぶ。両配線H,Sbは立体交差しているので、両配線H,Sbの交差部D2は、両配線H,Sbが互いに最も接近する地点であることになる。この交差部D2は、横方向に配列して配線される複数のゲート制御電極Hの配線と縦方向に伸びるように配線される幹ライン配線Sとの間の各々で見られ、アクティブマトリックス基板4をアモルファスセレン層1から見たとき、交差部D2は縦方向に配列している。
絶縁性のエポキシ樹脂層5は、共通電極3を覆うように設けられている。エポキシ樹脂層5が共通電極3を覆うことで、共通電極3の高電位が封じ込められる。エポキシ樹脂層5は、図3を用いて説明したアクティブマトリックス基板4における額縁状の露出部Rも覆うように設けられている。
つまり、エポキシ樹脂層5は、X線検出器10の周縁部において、第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1,および第1高抵抗膜7の側端をも覆っている。したがって、X線検出器10の周縁部において、エポキシ樹脂層5は、アクティブマトリックス基板4に接していることになる。つまり、共通電極3,第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1,および第1高抵抗膜7は、アクティブマトリックス基板4,およびエポキシ樹脂層5によって封止されている。言い換えれば、共通電極3,第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1,および第1高抵抗膜7の側端は、エポキシ樹脂層5で覆われている。この様にすることで、共通電極3に印加される電圧により未封止の側端に沿って外部に放電する沿面放電を防ぐことができる。
補助板6は、絶縁性のガラス製の板であり、エポキシ樹脂層5に面している。その厚さは、0.5mm〜1.5mmとなっている。補助板6の熱膨張係数は、アクティブマトリックス基板4のそれと同程度となっている。この様にすることで、外気温の変化により補助板6とアクティブマトリックス基板4とは同じように伸縮することになる。すると、X線検出器10全体が外気温の変化に応じて反り返ることがなくなり、各層のクラックを防止することができる。
スペーサ8は、アクティブマトリックス基板4の周縁部の形状に倣って角筒状となっており、補助板6とアクティブマトリックス基板4の周縁部において両板を架橋するように設けられている。スペーサ8は、一端の開口部がアクティブマトリックス基板4に当接しており、もう一端の開口部が補助板6に当接している。このように、スペーサ8は、アクティブマトリックス基板4および補助板6を架橋するように設けられており、スペーサ8の開口の内部に共通電極3,第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1,第1高抵抗膜7,およびエポキシ樹脂層5が存している。
図8は、X線検出器10の端部における断面図で本発明の特徴的な構成を説明している。すなわち、アクティブマトリックス基板4の周縁の一辺に沿って設けられている幹ライン配線Sとゲート制御電極Hとの交差部D2は、図8に示すように、アクティブマトリックス基板4がアモルファスセレン層1の中央部1bに覆われる位置に設けられている。すなわち、交差部D2は、端部1aに覆われる位置を避けて、中央部1bに覆われる位置に設けられている。
この様な構成とすることにより、共通電極3から幹ライン配線Sの間に設けられているアモルファスセレン層1の膜厚は、両配線H,S間がショートすることを防止するのに十分なものとなっている。幹ライン配線Sがアモルファスセレン層1の端部から離れた場所に設けられているから、第2高抵抗膜2,第1高抵抗膜7を伝わって両配線H,S間に電流が流れることもない。
この様な構成は、交差部D2に限られない。すなわち、アクティブマトリックス基板4の周縁部に位置する両配線Q,bの交差部D1も端部1aに覆われる位置を避けて、中央部1bに覆われる位置に設けられている。アクティブマトリックス基板4には、様々な配線の交差部が存在する。この中でも、幹ライン配線Sとゲート制御電極Hの配線との交差部D2がアクティブマトリックス基板4の最も周縁部に近い位置に位置している。交差部D2をアモルファスセレン層1の中央部1bに覆われる位置に設けるようにすれば、これらよりもアクティブマトリックス基板4の内側に位置する交差部D1は確実にアモルファスセレン層1の中央部1bに位置するようにすることができる。これにより交差部D2のみならず交差部D1においても配線のショートを防ぐことができる。
図9は、X線検出器10の端部における断面図で、図8とは異なる別の構成を示したものとなっている。すなわち、図9におけるアクティブマトリックス基板4の周縁に一辺に沿って設けられる幹ライン配線Sとゲート制御電極Hの配線との交差部D2は、第2高抵抗膜2,第1高抵抗膜7に覆われる位置を避けてアクティブマトリックス基板4の露出部Rに相当する位置に設けられている。一方、両配線Q,bの交差部D1は、図8に示すように、端部1aに覆われる位置を避けて、中央部1bに覆われる位置に設けられている。これにより、両配線Q,bがショートしてしまうことがない。
この様な構成とすることにより、幹ライン配線Sがアモルファスセレン層1の端部から離れた場所に設けられているから、第2高抵抗膜2,第1高抵抗膜7を伝わって両配線H,S間に電流が流れることがない。
この露出部Rは、エポキシ樹脂層5またはスペーサ8に覆われる。図10は、交差部D2がエポキシ樹脂層5に覆われる位置に設けられている例を示しており、図11は、交差部D2がスペーサ8に覆われる位置に設けられている例を示している。いずれの場合でも、図9で説明した構成が実現されている。図6で説明したように、交差部D1と幹ライン配線Sの幅W1は自由に変更することができるので、図9、図10のような構成は容易に実現できる。
図8,図9に示した2つの構成は、幹ライン配線Sが設けられている位置は異なるものの、いずれにおいても、ゲート制御電極Hの配線と幹ライン配線Sとのショートが抑制されて、X線画像にライン状の偽像が発生することが抑制される。
図12は、本発明における図9に似た構成を示している。すなわち、図12は、アモルファスセレン層1の端部1aがアクティブマトリックス基板4の外側に広くせり出している。図12においては、アクティブマトリックス基板4におけるアモルファスセレン層1が覆わない領域が狭すぎて、この領域に幹ライン配線Sを設けることができない。
この場合、図12に示すように、第1高抵抗膜7がアモルファスセレン層1の端部の全てを覆わないように形成される。すると、図12に示すように、アモルファスセレン層1の端部は、第1高抵抗膜7から露出する。そして、幹ライン配線Sは、第1高抵抗膜7に覆われる位置を避けて、アクティブマトリックス基板4の露出領域Rに設けられている。交差部D2も露出領域Rに設けられていることになる。この場合の露出領域Rとは、第1高抵抗膜7から露出しているという意味であり、アモルファスセレン層1から露出していることを意味しない。図示しない交差部D1は、アモルファスセレン層1の中央部1bに覆われる位置に設けられている。
このような図12の構成によっても、本発明の効果が得られることは実験により確認されているので、この結果について説明する。図13は、基板上に成長させたアモルファスセレン層1の端部の膜厚を実測したものである。図13に示すように、アモルファスセレンからなる厚さ0μm以上5μm以下の薄い層が基板における広い範囲に亘って存在している。この5μm以下の薄い層の部分に幹ライン配線Sを設けた場合におけるX線検出器10の耐久試験を行った。
上記の表は、各構成において、ゲート制御電極Hの配線と幹ライン配線Sとが部分的にショートすることに起因して検出素子の欠損が生じるまでの時間(耐久時間)を示している。表中のA1,A2は、図8で説明した構成のX線検出器を用いた実験結果を表している。すなわち、A1,A2のX線検出器における幹ライン配線Sは、アモルファスセレン層1の中央部1bに覆われる位置に設けられている。また、B1,B2は、図9で説明した構成のX線検出器を用いた実験結果を表している。すなわち、B1,B2のX線検出器における幹ライン配線Sは、アクティブマトリックス基板4の露出部Rに設けられているとともに、高抵抗膜2,7およびアモルファスセレン層1に覆われる位置に設けられていない。
表中のC1,C2,C3は、図12で説明した構成のX線検出器を用いた実験結果を表している。すなわち、C1,C2,C3のX線検出器における幹ライン配線Sは、アクティブマトリックス基板4の露出部Rに設けられているとともに、高抵抗膜2,7に覆われる位置には設けられていない。そして、幹ライン配線Sは、アモルファスセレン層1に覆われる位置に設けられている。幹ライン配線Sが設けられている位置におけるアモルファスセレン層1の膜厚は5μm以下となっている。
表中の”control”は、従来のX線検出器を用いた実験結果を表している。すなわち、”control”のX線検出器における幹ライン配線Sは、図14に示すように、アモルファスセレン層1の端部1aに覆われる位置に設けられている。従って、交差部D2も端部1aに覆われる位置に設けられていることになる。
従来構成(”control”の構成)のX線検出器は、実験開始から2450時間以内に検出素子の欠損が発生した。従来構成における平均の耐久時間は2317時間であった。それに比べて、本発明における図8に係る構成(A1,A2に係る構成)においては、実験開始から4440時間以上経過しても検出素子の欠損は発生しなかった。図8に係る構成における平均の耐久時間は4992時間以上となっている。
本発明における図9に係る構成(B1,B2に係る構成)においては、実験開始から2769時間以上経過しても検出素子の欠損は発生しなかった。図9に係る構成における平均の耐久時間は4096時間以上である。
本発明における図12に係る構成(C1,C2,C3に係る構成)においては、実験開始から2769時間以上経過しても検出素子の欠損は発生しなかった。図12に係る構成における平均の耐久時間は2769時間以上である。
本発明に係る構成のいずれについても従来構成よりも耐久時間が長くなっている。したがって、図12に係る構成のように、幹ライン配線Sがアモルファスセレン層1に覆われる位置に設けられていても、実験によりX線検出器の耐久性が有意に向上していることが示された。このように、幹ライン配線Sを覆う位置に存在するアモルファスセレン層1の層厚は5μm以下であれば、本発明の効果が期待できる。理想的にはアモルファスセレン層1の層厚が0μm以上1μm以下となっていればより望ましい。
以上のように、本発明の構成によれば、別種の電気配線同士がショートすることを防ぐように工夫がされている。すなわち、電気配線の交差部D1,D2は、アモルファスセレン層1における層厚が肉厚の中央部1bに覆われる位置に設けられている。この様にすることで、電気配線の交差部D1,D2は、共通電極3と確実に隔離されるので、互いに交差する配線がショートしてしまうことがない。したがって、本発明によれば、別種の電気配線同士がショートすることにより生じる検出素子の欠損が抑制されるので、長期間の使用に耐えることができる放射線検出器を提供できる。
また、図9ないし図12は、本発明の目的を達成し得る別の構成についてのものである。すなわち、共通電極3と、検出素子が有するコンデンサのグランド電極に電気的に接続されている幹ライン配線Sとが肉厚のアモルファスセレン層1で隔絶されるように構成されていれば、放射線検出器で頻発している検出素子の欠損の発生を抑制することができる。幹ライン配線Sは、放射線検出器において最も周縁部に設けられている配線であるから、この他の配線は確実にアモルファスセレン層1の肉厚部分に存することになる。
また、図9で説明したように電気配線同士のショートが起こりやすい交差部D2は、第2高抵抗膜2に覆われる位置を避けてアクティブマトリックス基板4の露出領域Rに設けるようにしてもよい。第2高抵抗膜2は、キャリアを選択的に通過させる性質を有するので、電流を通過させる性質をある程度有している。したがって、幹ライン配線Sを第2高抵抗膜2に覆われる位置に設けると、共通電極3から幹ライン配線Sまでの間を電流が第2高抵抗膜2を介して流れる現象が発生してしまい、検出素子の欠損が生じてしまう。本発明の構成によれば、幹ライン配線Sの交差部D2は、アクティブマトリックス基板4が第2高抵抗膜2に覆われていない露出領域Rに設けられているので、第2高抵抗膜2が幹ライン配線Sの交差部D2の位置に存在しない。この様にすることで、互いに交差する電気配線がショートしてしまうことがない。したがって、本発明によれば、電気配線同士がショートすることにより生じる検出素子の欠損が抑制されるので、長期間の使用に耐えることができる放射線検出器を提供できる。
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例では、アクティブマトリックス基板を製造していたが、これに代えてパッシブマトリックス基板を製造してもよい。
(2)上述した実施例では、ボトムゲート型アクティブマトリックス基板を製造していたが、これに代えてトップゲート型アクティブマトリックス基板を製造してもよい。
(3)上述した実施例では、バスライン配線bがゲート制御電極Hの配線と平行に走っている例を示したが、バスライン配線bがアンプ電極Qの配線と平行に走るように構成してもよい。この場合バスライン配線bを束ねる幹ライン配線Sはアンプ電極Qの配線と互いに交差することになる。
本発明は、医用の放射線撮影装置に適している。