JP6049528B2 - 正極格子基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉛蓄電池に用いられる正極格子基板の製造技術に関する。
従来、自動車等に用いられている鉛蓄電池の正極格子基板の材料には、Pb−Sb合金が用いられてきた。近年では、自己放電、減液量が少ない等の特徴を備え、メンテナンスフリーな鉛蓄電池を構成できることから、Pb−Ca−Sn系合金が正極格子基板の材料に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
正極格子基板の製造には、従来、鋳造が用いられてきた。近年では、Pb−Ca−Sn系合金等の鉛合金や鉛を材料にして正極格子基板を製造する方法として、生産性に優れ、薄く軽量な基板を形成できることから、材料のスラブを圧延して圧延シートを製造し、この圧延シートから正極格子基板を成型する手法が広く普及している。
圧延シートから正極格子基板を成型し易いように、圧延シートの製造には、圧下率を80%以上として厚みを薄くする、いわゆる強圧延が用いられている。そして、この圧延シートに対し、例えばエキスパンド加工や、プレス加工機等を用いて打抜くパンチング加工等を用いて正極格子基板が成型されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2010−113913号公報 特開昭60−185365号公報
しかしながら、鉛合金や鉛のスラブを強圧延して得た圧延シートは、繊維状の圧延組織を有し、結晶粒径が非常に微細になる。このため、この圧延シートから成型された正極格子基板は、全面腐食が生じ易く鉛蓄電池の耐用寿命が低下する、という問題がある。
これに加え、鉛合金や鉛のスラブを高い圧下率で強圧延すると、圧延組織が動的に再結晶を起こし、機械的強度の低下も引き起こす。
本発明は、上述した事情に鑑み、なされたものであり、鉛、又は鉛合金のスラブを圧延した圧延シートから正極格子基板を成型した場合でも、耐食性、及び機械的強度の低下を抑制できる正極格子基板の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、鉛蓄電池に用いられる正極格子基板を、鉛、又は鉛合金のスラブを圧延した圧延シートから成型する正極格子基板の製造方法において、前記スラブを圧延する圧延工程では、前記スラブに熱を与えて前記スラブの温度を40℃〜60℃にした状態で、かつ圧下率を80%よりも低めて圧延し、前記圧延工程の後に、前記圧延シートを1〜10°C/分の冷却速度で冷却する急冷工程を備えることを特徴とする。
また本発明は、上記正極格子基板の製造方法において、前記急冷工程によって冷やされた圧延シートから成型によって前記正極格子基板を成型した後に、120℃を超えない時効温度を保持し、所定の硬さまで前記正極格子基板を硬化させる時効処理工程を備えることを特徴とする。
また本発明は、上記正極格子基板の製造方法において、前記スラブをPb−Ca−Sn−Al−Ba系鉛合金としたことを特徴とする。
本発明によれば、強圧延よりも低い圧下率で鉛、又は鉛合金のスラブを圧延するため、圧延組織の動的な再結晶が抑制され、機械的強度の低下が防止される。また再結晶が抑制されることで圧延組織には粗大な結晶粒が残存することとなり、耐食性の低下も防止される。
これに加え、スラブに熱が加えられた状態で圧延が行われるため、通常は不均一に導入される転移を、熱のエネルギーにより結晶粒内に均一に分散させることができ、機械的強度、及び耐食性の向上が図られる。
本発明の第1実施形態に係る正極格子基板の製造工程を示すフローチャートである。 圧延シートの圧下率と引張強度の関係を示す図である。 圧延材の組織の観察像であり、(A)は圧下率40%における冷間圧延材の組織を示し、(B)は圧下率40%における温間圧延材の組織を示す。 本発明の第2実施形態に係る正極格子基板の製造工程を示すフローチャートである。 80℃の時効温度で時効処理を行った場合の時効硬化曲線を示す図であり、(A)は実施例3について示し、(B)は実施例4について示す。 100℃の時効温度で時効処理を行った場合の時効硬化曲線を示す図であり、(A)は実施例3について示し、(B)は実施例4について示す。 120℃の時効温度で時効処理を行った場合の時効硬化曲線を示す図であり、(A)は実施例3について示し、(B)は実施例4について示す。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下では、自動車等の車両の電源、又は携帯電話基地局等の設備のバックアップ用電源に好適に用いられる鉛蓄電池について説明する。
[第1実施形態]
図1は本実施形態に係る鉛蓄電池の正極格子基板の製造方法のフローチャートである。
この製造方法は、スラブ鋳造工程(ステップS11)、圧延工程(ステップS12)、急冷工程(ステップS13)、基板形成工程(ステップS14)、及び活物質充填・乾燥工程(ステップS15)を備える。
スラブ鋳造工程(ステップS11)は、鉛、又は鉛合金からスラブを鋳造する工程である。
すなわち、このスラブ鋳造工程では、鉛(Pb)、又は、鉛と各種金属を混ぜ合わせた混合金属のブロック、又は粉末体を素材として用意する。混合合金では、カルシウム(Ca)や、スズ(Sn)の他、例えば、アルミニウム(Al)やバリウム(Ba)などの金属が鉛と混合される。混合される金属の選択や質量比は、耐食性や機械的強度、正極活物質の保持性能等を考慮して決定される。特に、カルシウム、及びバリウムの特定組織により高度の機械的強度が安定維持されることから、本実施形態では、Pb−Ca−Sn−Al系鉛合金、及びPb−Ca−Sn−Al−Ba系鉛合金を素材としている。
スラブ鋳造工程では、上記する素材を500℃まで加熱、溶融した後、200℃に加熱した鋳型に流し込む。その後、鋳型内で素材が凝固した後、鋳型から取り出してスラブを製造する。本実施形態では、スラブのサイズを、例えば、幅40mm、長さ200mm、及び厚さ3mmとしている。
圧延工程(ステップS12)は、ステップS11で予め製造したスラブを圧延して圧延シートを製造する工程である。この圧延工程では、常温で保持されたスラブに熱を加え、かつ、強圧延(圧下率80%以上)よりも低い圧下率で圧延して圧延シートが製造される。具体的には、所定温度に加熱したスラブを、その温度を保持した状態で上下一対の圧延ロール間を通してスラブを圧延する。スラブへの加熱は、例えば、50℃に加熱したオイル溜まりに素材のスラブを浸すことで行われ、このスラブを圧延することで、常温(25℃程度)で圧延する冷間圧延に対して、いわゆる温間圧延が行われることとなる。
また、本発明における圧延ロールによる圧延後の圧下率は、強圧延時の圧下率よりも低くなるように設定しており、具体的には80%よりも低く、好ましくは30〜50%に設定している。なお、圧下率が80%を超える場合、動的再結晶により機械的強度が低下し、微細な再結晶粒の形成により耐食性が低下し、また、圧下率が30%より低い場合、生産性が低下する。
急冷工程(ステップS13)は、圧延工程により得た圧延シートを急冷する工程である。この急冷は、例えば50℃に過熱された圧延シートを氷水に浸す、スプレーで水をかける、こと等で10℃以下に冷却するものであり、1〜10℃/分程度の冷却速度で行われる。
なお、圧延後の圧延シートはロール状に巻き取られ、その間に徐冷するのが一般的である。しかし、本発明では圧延シートに加えられた熱を早急に除去するために急冷を行うものであり、圧延シートを急冷することで過飽和に固溶している添加元素を析出させずに維持することが可能である。
基板成型工程(ステップS14)は、圧延シートから正極格子基板を成型する工程である。この成型には、エキスパンド加工や打ち抜き加工が用いられる。
これら工程を経た正極格子基板の製造方法によれば、スラブを強圧延して圧延シートを製造していた従前の製造方法に比べ、圧延工程において、強圧延よりも低い圧下率で鉛、又は鉛合金のスラブを圧延するため、圧延組織の動的な再結晶が抑制され、機械的強度の低下が防止される。
なお、活物質充填・乾燥工程(ステップS15)は、成型後の正極格子基板に鉛粉と希硫酸と水とを練り合わせた鉛ペーストからなる正極活物質ペーストを充填し、熟成・乾燥する工程である。
詳述すると、一般に、金属の圧延においては、圧下率が高くなるにつれて硬さ(機械的特性)が上昇する。しかしながら、低融点金属である鉛、或いは鉛合金は、圧下率が高くなるとひずみエネルギーにより再結晶という現象が起き軟化してしまう。しかも、このような高い圧下率で圧延する際に、スラブに熱を加えると更に顕著に軟化が進むことが知られている。このため、スラブの圧延には、スラブに熱を加えずに圧延する冷間圧延が用いられていた。
図2は圧延シートの圧下率と引張強度の関係を示す図である。
なお、この図に示す圧延シートは、Pb−Ca−Sn−Al系鉛合金を素材としたスラブを、熱を加えずに圧延(いわゆる従前の冷間圧延)して製造したものである。また、図2では、圧延工程後に100℃の雰囲気下に100時間に亘って曝した圧延シートの引張強度をXで示し、当該雰囲気に曝されていない圧延シートの引張強度をYで示している。これらX,Yの対比によって、圧延シートの引張強度と圧化率との環境温度の関係が示される。
図2に示されるように、圧下率がゼロを起点に大きくなるにしたがい引張強度は上昇するものの、ある程度圧下率が大きくなると、圧延組織の再結晶が顕著に生じ、引張強度は低下傾向、或いは横ばい傾向に転じる。特に、100℃の環境下に曝された圧延シートでは(図2中、X)、圧下率が約50〜60%を超えたあたりから引張強度の低下傾向が顕著となっている。
一方、圧下率が0%〜約50%までの間は、環境温度(圧延工程後の熱処理の有無)にかかわらずに引張強度の増強が図れることが分かる。
そこで、本実施形態では、強圧延時の圧下率(80%以上)よりも十分に低い、0%〜約50%の圧下率でスラブを圧延することとし、これにより、機械的強度の低下が無い圧延シートを得ることとしている。
ただし、同一厚さのスラブを用いた場合には圧下率が低いほど圧延シートが厚くなるため、圧延シートから正極格子基板を成型し難い。また圧下率が低すぎると、圧延シートの表面が荒れていたり、面内での厚みのばらつきも大きくなったりする。特に、圧下率が30%を下回ると、スラブ内に部分的な転位が導入され易く、局所的にひずみエネルギーが高い箇所が生じ易くなる。このような箇所は腐食の発生源となり易く耐食性を悪くする。また、ひずみエネルギーが高い箇所は熱が加わった際に再結晶を起こすことで軟化の要因となり、機械的強度も劣化する。
そこで、本製造方法では、圧下率の下限値を、機械的特性の向上が認められ、かつ熱的にも安定した範囲の下限である約30%とすることが好ましい。
ここで、発明者は、このような低い圧下率においては、スラブに熱を加えることで、通常は不均一に導入される圧延組織が、熱のエネルギーにより結晶粒内に均一に分散し、耐食性、及び機械的強度の向上が図れることを見いだした。
即ち、図3(A)、及び図3(B)に示すように、圧下率40%における冷間圧延材と温間圧延材とでは、温間圧延を行った圧延材の圧延組織の方がより均一となっていることが分かる。
詳述すると、圧下率が低くなると、図3(A)に示すように、圧延ロールによる圧延のみでは均一な組織制御が難しく、局所的にひずみエネルギーが高い箇所が多少なりとも含まれ、このような箇所は、上述の通り、耐食性、及び機械的強度を劣化させる。
これに対し、図3(B)に示すように、スラブに対して圧延によりひずみエネルギーが導入される際に、熱エネルギーをも与えることで、転移を再配列させ、安定な回復組織が得られるのである。
ただし、従前の冷間圧延においても、金属製の圧延ロールや搬送ローラとの摩擦等により、圧延時のスラブの温度が40℃近くまで上昇する場合がある。しかしながら、この温度範囲では、スラブに生じたひずみを再配列させるには不十分であり、発明者は、圧延時のスラブの温度が40℃以上、好ましくは50℃以上であると、耐食性が改善することを実験等で確認した。
また、圧延時のスラブの温度が高過ぎると、加工硬化が起こらず、機械的強度の向上が得られないため、スラブの温度の上限は、少なくとも局所的なひずみの蓄積が生じる温度範囲で規定され、好ましくは60℃以下である。
以上のことから、本実施形態の圧延工程(ステップS12)では、少なくとも圧延時にスラブの温度が40℃〜60℃の範囲、好ましくは約50℃となるようにスラブに熱を加え、この加熱されたスラブを強圧延よりも低い80%よりも低く、好ましくは30%〜50%の範囲の圧下率で圧延して圧延シートを製造することとしている。
これにより、機械的強度、及び耐食性に優れた圧延シートが得られ、この圧延シートから正極格子基板を成型することで、鉛蓄電池の耐用寿命の向上が図られる。
次いで、本実施形態の製造方法を用いて製造した正極格子基板の実施例を説明する。
<実施例1>
本実施例では、スラブの素材に、Pb−Ca−Sn−Al系鉛合金を用いて製造を行った。具体的には、Caが0.06質量%、Snが1.4質量%、Alが0.02質量%、残部Pbからなる合金(以下、合金1と言う)をスラブの素材に用い、図1に示す製造工程、即ちスラブ鋳造工程、圧延工程、急冷工程、基板成型工程を経て正極格子基板を製造した。
詳細には、スラブ鋳造工程で作製したスラブの素材(幅40×長さ200×厚さ1mm)を、圧延工程(ステップS12)で、スラブの素材温度が50℃となるようにオイル溜まり素材を浸して調整(温間圧延)し、圧下率を40%となるように上下2段の圧延ロールを用いて圧延を行い圧延シートを作製した。その後、急冷工程(ステップS13)を経て、続く基板成型工程(ステップS14)では、圧延工程で作製した圧延シートを幅15×長さ70×厚さ0.4mmに成型して正極格子基板を製造した。
<実施例2>
本実施例では、スラブの素材にBaを含むPb−Ca−Sn−Al−Ba系鉛合金を用いて製造を行った。具体的には、Caが0.06質量%、Snが1.4質量%、Alが0.02質量%、Baが0.008質量%、残部Pbからなる合金(以下、合金2と言う)をスラブの素材に用い、実施例1と同様にして、正極格子基板を製造した。
(比較例1)
圧延工程において温間圧延を行わず常温(25℃)で圧延した以外は、実施例1と同様にして、正極格子基板を製造した。
(比較例2)
圧延工程において温間圧延を行わず常温(25℃)で圧延した以外は、実施例2と同様にして、正極格子基板を製造した。
(比較例3)
圧下率を90%とした以外は、比較例1と同様にして、正極格子基板を製造した。
(比較例4)
圧下率を90%とした以外は、比較例2と同様にして、正極格子基板を製造した。
これら実施例1、実施例2、及び比較例1〜4の正極格子基板を試験片として耐食性試験を行った結果を表1に示す。
この耐食性試験は、次の手順で行った。
すなわち、先ず試験片の対極基板として鉛基板を用意し、試験片を正極とし、鉛基板を負極として電解液中に浸した。電解液は、比重1.28の硫酸を使用し、60℃の雰囲気下で試験片と鉛基板との間に電位差1350mVの電圧を印加し、電流を流して試験片を酸化(腐食)させた。通電時間が28日となったところで試験片を取り出し、腐食率Sを算出し、試験を終了した。
腐食率Sの算出方法は次の通りである。
まず、取り出した試験片から酸化物を除去し、この除去した酸化物の重量を腐食量とする。さらに腐食量を試験前の試験片の表面積で除した値(腐食量/正極格子基板の表面積)を腐食率S(mg/cm2)とした。
試験片の腐食が少なければ、腐食量が小さくなるので、腐食率Sも下がる。換言すれば、腐食率Sが低いほど試験片の耐食性の低下が抑制されていると言える。
この表1において、比較例1〜4は、実施例1、及び実施例2における圧延時の加熱効果を確かめるための比較例である。すなわち、比較例1〜4では、実施例1、及び実施例2のそれぞれにおいてスラブに熱を加えることなく、いわゆる冷間圧延で圧延シートを製造している。比較例1〜4のその他の工程は、実施例1、及び実施例2と同じである。
表1で示されたように、実施例1、及び実施例2の試験片は、比較例1〜4の試験片と比較して、格段に低い腐食率Sとなっており、スラブを加熱した状態で圧延することで、従前の冷間圧延に比べて耐食性の向上が得られることが分かる。
特に、実施例1よりも実施例2の試験片の方が、良好な耐食性が得られる結果となった。実施例1の試験片と実施例2の試験片の合金組成の違いとして、実施例2の試験片にはBaが含まれている。
すなわち、正極格子基板の材料としては、Pb−Ca−Sn系鉛合金のなかでも、Pb−Ca−Sn−Al−Ba系鉛合金を採用することで、より良好な耐食性を有する正極格子基板が得られると言える。
なお、表1には示していないが、温間圧延において圧下率を90%とした場合、比較例1、2と略同等の値であり、温間圧延において強圧延を行った場合、所望の効果を得ることが困難であることが確認された。
このように、本実施形態によれば、スラブの圧延工程において温間圧延を行うことで、圧延して得た圧延シートにおける圧延組織の再結晶や結晶粒の微細化が抑制される。さらに、温間圧延によって圧延を行うことから、圧延時に熱が加えられている。したがって、圧延工程では、加えられた熱のエネルギーによって、圧延時に導入される転位を均一に分散させる作用が促される。このため、正極格子基板の耐食性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の製造方法によって製造された正極格子基板を備えた鉛蓄電池によれば、機械的強度、及び耐食性に優れることから、耐用寿命に優れた電池となる。
[第2実施形態]
図4は本実施形態の正極格子基板の製造工程を示すフローチャート図である。
図4において、第1実施形態の正極格子基板の製造工程(図1)と同じ工程については、同一の符号を付して説明を省略する。
同図に示すように、本実施形態の正極格子基板の製造工程は、急冷工程(ステップS13)の後に、時効処理工程(ステップS20)が行われる点で第1実施形態と大きく異なっている。
この時効処理工程(ステップS20)は、時効処理により正極格子基板の機械的強度を更に向上させる工程である。
次いで、本実施形態の製造方法を用いて製造した正極格子基板の実施例を説明する。
<実施例3>
本実施例では、第1実施形態の実施例1において、急冷工程後に時効処理工程(ステップS20)を設けて正極格子基板を製造した。
<実施例4>
本実施例では、第1実施形態の実施例2において、急冷工程後に時効処理工程(ステップS20)を設けて正極格子基板を製造した。
図5は、圧延シートの時効硬化曲線を示す図であり、(A)は実施例3についての温間圧延(実施例3)、圧下率40%の冷間圧延(比較例5)、圧下率90%の冷間圧延(比較例6)、圧延なし(参考例1)について示し、(B)は実施例4についての温間圧延(実施例4)、圧下率40%の冷間圧延(比較例7)、圧下率90%の冷間圧延(比較例8)、圧延なし(参考例2)について示す。
この時効効果曲線は、実施例3、及び実施例4において、時効処理を施した後の圧延シートの試験片に対し、マイクロビッカース硬さ試験をして得たものである。マイクロビッカース硬さ試験は、試験力を50gfとし、また、試験力保持時間を30秒として行った。
時効処理の時効処理条件は、時効温度を80℃とし、保持時間を1ks(1000秒)、2ks、1hr(1時間)、2hr、3hr、5hr、10hr、30hr、及び50hr毎にマイクロビッカース硬さを測定した。
なお、図5(A)の比較例5〜6、図5(B)の比較例7〜8は、実施例3、及び実施例4においてスラブに熱を加えることなく、いわゆる冷間圧延で圧延シートを製造したものであり、その他の工程は、実施例3、及び実施例4と同じである。
また、図5(A)の参考例1、図5(B)の参考例2は、実施例3、及び実施例4においてスラブを圧延せずに、そのまま時効処理をしている。
図5(A)及び図5(B)に示すように、実施例3、及び実施例4の各試験片とも保持時間が増えるにつれて硬さが上昇し、保持時間12hr付近でピークを示すことが分かる。特に実施例3、及び実施例4は、時効処理を施す前(時効処理時間がゼロ)では、冷間圧延と同等の硬さを示しながらも、その後の時効処理では、実施例3、及び実施例4は、冷間圧延の比較例5〜比較例8よりも硬さが上昇し、更には圧延を行っていない参考例1、及び参考例2より大きく上昇することが分かる。
また、実施例3は実施例4に比べて相対的に高い硬さを示し、また上昇率も大きく高いピークを有することが分かる。
以上のことから、熱が加えられたスラブに対し、強圧下よりも低い所定の圧下率で圧延した圧延シートに対して時効処理を施すことで、従前の圧延シートに対して時効処理を施した場合よりも格段に機械的強度が高められることが示された。
なお、図5に示すように、保持時間が12hrを超えると過時効状態となり、硬さが低下することも分かった。
図6、及び図7は前記実施例3及び4において時効処理の時効温度を変えたときの時効硬化曲線を示す図である。具体的には、図6は100℃の時効温度で時効処理を行った場合の圧延シートの時効硬化曲線を示す図であり、(A)は実施例3について時効温度を100℃とした場合(実施例3、比較例5、比較例6、参考例1)について示し、(B)は実施例4について時効温度を100℃とした場合(実施例4、比較例7、比較例8、参考例2)について示す。また図7は120℃の時効温度で時効処理を行った場合の圧延シートの時効硬化曲線を示す図であり、(A)は実施例3について時効温度を120℃とした場合(実施例3、比較例5、比較例6、参考例1)について示し、(B)は実施例4について時効温度を120℃とした場合(実施例4、比較例7、比較例8、参考例2)について示す。
これらの図において、試験片は、時効温度が異なる他は、図5で説明した条件で製造されている。
図6に示すように、時効温度を100℃とした実施例3、実施例4、及び比較例5、比較例6とも、時効温度が80℃であった図5の結果と比べ、短い保持時間で硬さが上昇していることが分かる。一方、冷間圧延で製造した比較例5、比較例6については、時効温度が80℃のときよりもピークの硬さが低下している。これについて検討すると、比較例5、及び比較例6では、冷間圧延によって導入された圧延組織が時効温度の増加に伴い、回復、再結晶を起こしたものと考えられる。
これに対して、実施例3、及び実施例4では、時効温度が80℃のときよりもピークの硬さが上昇し、またピークに達する時間も短縮していることが分かる。
更に時効温度を高め120℃とした場合には、図7に示すように、実施例3、実施例4、及び比較例5、比較例6とも、時効温度が100℃であった図6の結果と比べ、更に短い保持時間で硬さが上昇していることが分かる。
しかしながら、硬さがピークに近付くにつれ硬さの上昇は見られなくなり、しかもピークの硬さも、時効温度が100℃の場合に比べて低下している。これは、120℃の時効温度で時効処理を行うことで析出物の粗大化による軟化が起こることで、時効温度が100℃の場合に比べて硬さが低下するものと考えられる。
すなわち、時効温度が高ければ良い訳ではなく、少なくとも120℃を超えない範囲が良いことが分かる。
以上のことから、スラブに熱を加えた状態で、強圧延よりも低い圧下率で圧延を行った圧延シート(実施例1、及び実施例2)に対し時効処理を施すことで、従前の冷間圧延による圧延シートに同条件の時効処理を施した場合よりも高い硬さを示すことが分かる。
さらに、時効温度が80℃から上昇するにつれてピークの硬さも大きくなり、100℃のときに最も高い硬さとなることが分かった。時効温度が100℃を超えるとピークの硬さは低下するものの、時効温度が120℃に達しても十分に高い硬さを維持することが示された。
この理由は、実施例3、及び実施例4の圧延シートは、熱を加えたスラブを圧延することで、圧延工程時に転位が再配列し、熱的に安定した回復組織が形成されたためと考えられる。
また、この実施例3、及び実施例4では、硬さがピークに達するまでの保持時間が、従前の冷間圧延による圧延シートに同条件で時効処理を施した場合に比べて短縮され、また、この短縮効果は、時効温度が高いほど顕著に見られる。
なお、時効温度は、その温度が低いほど時効硬化が起こりにくくなり、所望の硬さに硬化するまでに長い保持時間が必要となり、処理時間が長くなってしまう。特に、時効温度が80℃を下回ると、生産性の観点から製造ラインで採用し得る妥当な保持時間の間で、妥当な硬さが得られない。したがって、生産性の観点から時効温度の下限は約80℃に設定するのが良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1実施形態の製造工程に時効処理工程を加えることで、従前の時効処理に比べ、短い処理時間で機械的強度に優れた正極格子基板が得られる。
なお、上述した各実施形態、及び実施例は、あくまでも本発明の一態様を示すものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能であることは勿論である。

Claims (3)

  1. 鉛蓄電池に用いられる正極格子基板を、鉛、又は鉛合金のスラブを圧延した圧延シートから成型する正極格子基板の製造方法において、
    前記スラブを圧延する圧延工程では、前記スラブに熱を与えて前記スラブの温度を40℃〜60℃にした状態で、かつ圧下率を80%よりも低めて圧延し、前記圧延工程の後に、前記圧延シートを1〜10°C/分の冷却速度で冷却する急冷工程を備えることを特徴とする正極格子基板の製造方法。
  2. 前記急冷工程によって冷やされた圧延シートから成型によって前記正極格子基板を成型した後に、120℃を超えない時効温度を保持し、所定の硬さまで前記正極格子基板を硬化させる時効処理工程を備える
    ことを特徴とする請求項1に記載の正極格子基板の製造方法。
  3. 前記スラブをPb−Ca−Sn−Al−Ba系鉛合金としたことを特徴とする請求項1または2に記載の正極格子基板の製造方法。
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