JP3252443B2 - 鉛蓄電池のエキスパンド格子体用鉛合金シートの製造法 - Google Patents

鉛蓄電池のエキスパンド格子体用鉛合金シートの製造法

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JP3252443B2 JP15036592A JP15036592A JP3252443B2 JP 3252443 B2 JP3252443 B2 JP 3252443B2 JP 15036592 A JP15036592 A JP 15036592A JP 15036592 A JP15036592 A JP 15036592A JP 3252443 B2 JP3252443 B2 JP 3252443B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉛蓄電池の、とくにそ
のエキスパンド格子体用鉛合金シートの製造法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、鉛蓄電池用エキスパンド格子体
は、カルシウム(Ca)を最大0.1重量%程度と錫
(Sn)を最大1.0重量%程度含む鉛−カルシウム−
錫(Pb−Ca−Sn)合金の溶湯から連続鋳造体を作
製して、これを自然放置によりある程度の時間をかけて
常温程度まで冷却するとともに、多段の圧延ローラーに
より圧延して所定の厚みの鉛合金シートを作製し、この
鉛合金シートをエキスパンド加工して作製していた。し
かしながら、前記連続鋳造体を自然放置により常温程度
まで冷却する方法は、時間がかかり作業効率を低下させ
ていたので、前記連続鋳造体を作製した直後、冷却オイ
ルを循環させた対ローラーの間を通過させることによ
り、短い時間で強制冷却を行い、ひきつづいて多段の圧
延ローラーにより圧延を行って効率良く所定の鉛合金シ
ートを作製する方法が広く採用されている。
【0003】また、このようにPb−Ca−Sn合金の
連続鋳造体を作製した後、強制冷却を施して圧延するこ
とにより、鉛合金シート全体の結晶構造を緻密にして鉛
合金シートの耐食性を向上させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法により錫(Sn)の含有量の少ない鉛−カルシウム
−錫(Pb−Ca−Sn)合金からなる連続鋳造体を作
製してこれを圧延すると、この鋳造体は延展性に優れる
ため、圧延時にクラックが発生することなく所定の厚み
の鉛合金シートを作製することができるが、Snの含有
量が少ないため鉛合金シートとしての機械的強度が低
く、機械的強度、耐食性ともに優れたエキスパンド格子
体を得ることができなかった。
【0005】一方、上記の方法によりSnの含有量の多
いPb−Ca−Sn合金からなる連続鋳造体を作製する
と、それ自体で強度や耐食性に優れた鋳造体を得ること
ができるが、冷却後ひきつづいて圧延を行うと冷却後の
連続鋳造体の強度が高くなりすぎているため、圧延時の
伸びが抑制されて作製した鉛合金シートにクラックが発
生していた。そして、この鉛合金シートをエキスパンド
加工すると、さらに大きなクラックや切れが発生するこ
とがあり、エキスパンド格子体の品質や生産性が低下す
るという問題が生じていた。
【0006】本発明は、このような課題を解決するもの
であり、Snの含有量が比較的多いPb−Ca−Sn合
金の溶湯から連続鋳造体を作製して、この連続鋳造体を
冷却するとともに圧延を行って所定の厚みの鉛合金シー
トを作製するときに、鉛合金シートの強度および耐食性
を向上させることができるとともに、圧延時に鉛合金シ
ートにクラックが発生することを防止することができる
エキスパンド格子体用鉛合金シートの製造法を提供する
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明のエキスパンド格子体用鉛合金シートの製
造法は、カルシウム(Ca)を0.03〜0.08重量
%、錫(Sn)を0.5〜1.5重量%含み、残部が鉛
(Pb)から鉛−カルシウム−錫(Pb−Ca−Sn)
合金の溶湯から連続鋳造体を作製し、この作製した連続
鋳造体を冷却するとともに圧延してエキスパンド格子体
用鉛合金シートを作製する製造法において、前記連続鋳
造体を作製した直後、速やかにその表面を150℃〜2
00℃の温度状態から40℃〜60℃になるまで冷却
し、その後、わずかな時間をおいて連続鋳造体内部から
の熱伝導により前記表面温度が上昇した連続鋳造体を圧
延して所定の厚みの鉛合金シートを作製するものであ
る。
【0008】ここで、前記連続鋳造体を、その表面温度
が150℃〜200℃から40℃〜60℃になるまで急
速に冷却した後、わずかな時間をおくことによって、連
続鋳造体自体の内部からの熱伝導により表面温度を冷却
した温度以上に上昇させて、連続鋳造体の延展性を高め
ている。
【0009】
【作用】本発明のエキスパンド格子体用鉛合金シートの
製造法では、カルシウム(Ca)を0.03〜0.08
重量%、錫(Sn)を0.5〜1.5重量%含み、残部
が鉛(Pb)から鉛−カルシウム−錫(Pb−Ca−S
n)合金の溶湯から連続鋳造体を作製した直後、速やか
にその表面を150℃〜200℃の温度から40℃〜6
0℃になるまで冷却するので、連続鋳造体の表面部分の
結晶のみが極めて微細かつ緻密になり、表面部分の強度
や耐食性を向上させることができる。
【0010】また、この冷却では、連続鋳造体の表面だ
けが短時間に冷却されるので、連続鋳造体内部まで結晶
の微細化が進行しなく、鋳造体内部は高温で軟らかい粗
な結晶構造になっている。
【0011】したがって、冷却後、わずかな時間をおく
と、連続鋳造体内部からの熱伝導により鋳造体の表面温
度が冷却した温度以上に上昇し、鋳造体の表面の延展性
が高められる。
【0012】そして、この表面温度が上昇した連続鋳造
体を圧延することで、圧延時にクラックが発生すること
なく、所定の厚みの鉛合金シートを得ることができる。
【0013】したがって、この鉛合金シートをエキスパ
ンド加工することにより、クラックや切れが発生するこ
となく、耐食性、機械的強度がともに向上したエキスパ
ンド格子体を得ることができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照にしなが
ら説明する。
【0015】Caを0.05重量%含み、Snの含有量
を変化させたPb−Ca−Sn合金を溶融し、この溶湯
から厚さ15mm、幅80mmの連続鋳造体1〜4を作製し
た。
【0016】そして、前記連続鋳造体を作製した直後、
30秒間でその表面を150〜200℃の温度状態から
50℃になるように冷却オイルを循環させた対ローラー
間を通すことにより冷却した。
【0017】ここで、各連続鋳造体1〜4におけるSn
の含有量を(表1)に示す。
【0018】
【表1】
【0019】そして、前記連続鋳造体1〜4のそれぞれ
に対して、冷却後の放置時間を加減することで圧延ロー
ラーに挿入する前の連続鋳造体の表面温度を10℃〜1
00℃の範囲で変化させ、各連続鋳造体に対して10種
類の温度条件で多段の圧延ローラーにより圧延を行い、
厚さ1.0mm、幅160mmの鉛合金シートを作製した。
【0020】また、このとき圧延時において鉛合金シー
トに発生したクラックの発生率を調べた。
【0021】この結果を図1に示す。図1に示したよう
に、Snの含有量が0.3重量%や0.4重量%と、比
較的少ない、連続鋳造体1,2では圧延ローラーに挿入
する前の表面温度が10℃〜100℃の範囲のいずれで
あっても、Snの含有量が少ないことに起因して、延展
性に優れているため、鉛合金シートにおけるクラックの
発生率は低かった。
【0022】しかし、Snの含有量が1.0重量%や
1.2重量%と、多くなるにつれて、図に示した連続鋳
造体3,4からわかるように、連続鋳造体を前記冷却後
に冷却した温度50℃とほとんど変わらない温度状態で
ひきつづいて圧延を行ったり、連続鋳造体を前記冷却後
に充分に時間をかけてさらに冷却を行い、低温度になっ
た状態で圧延を行った場合には、鋳造体の表面または全
体の強度が高くなりすぎるため鉛合金シートにおけるク
ラックの発生率は高くなった。
【0023】このように、Snの含有量の多いPb−C
a−Sn合金を用いた連続鋳造体では、それ自体で強度
の高い連続鋳造体になるのでクラックの発生のほとんど
ない鉛合金シートを得るためには、圧延ローラーに連続
鋳造体を挿入するときの温度を考慮しなければならない
ことがわかった。
【0024】そこで、本発明では前記連続鋳造体3,4
に対し、これを作製した直後、30秒間でその表面を5
0℃まで冷却し、ついで、約10秒間程度放置して前記
連続鋳造体内部からの熱伝導により前記表面温度が50
℃から70℃〜100℃程度まで上昇させた後、圧延を
行って鉛合金シートを作製した。すると、これらの鉛合
金シートはクラックの発生率が大幅に低下し、高く昇温
させる程、強度不足のため鉛合金シートとしては不適で
あるが、延展性には優れた連続鋳造体1,2の近くま
で、クラックの発生率を下げることができた。
【0025】なお、本発明の製造法によるこのような効
果は、Snの含有量が1.2重量%以上の場合において
も見られるが、Snの含有量が1.5重量%を越えたP
b−Ca−Sn合金ではSn量が増えるにつれ合金の原
材料コストが高くなるため、製造コスト量産性を考慮す
ると不適当である。
【0026】また、上記の効果は、その効果の程度は低
下するが、Snの含有量が0.5重量%以上になるころ
から見られた。
【0027】したがって、本発明の製造法は、Snの含
有量が0.5〜1.5重量%の範囲であるPb−Ca−
Sn合金に対して有効である。
【0028】なお、本発明では、連続鋳造体を作製した
直後、速やかにその表面を50℃まで冷却したが、冷却
オイルを循環させている対ローラーの設定本数や、ロー
ラー材質、冷媒等を変えることにより冷却温度を変化さ
せることができる。
【0029】したがって、Pb−Ca−Sn合金の合金
組成を変化させて冷却温度に対する検討を行った結果、
合金組成はCaが0.03〜0.08重量%、Snが
0.5〜1.5重量%、残部がPbであり、冷却温度が
40℃〜60℃の範囲である組合せにおいては上記とほ
ぼ同様の効果が得られた。
【0030】
【発明の効果】以上のように、本発明のエキスパンド格
子体用鉛合金シートの製造法では、Snの含有量の比較
的多いPb−Ca−Sn合金の溶湯から連続鋳造体を作
製した直後、速やかにその表面を150℃〜200℃の
温度状態から40℃〜60℃になるまで冷却し、その
後、連続鋳造体内部からの熱伝導により前記表面の温度
が上昇した連続鋳造体を圧延して所定の厚みの鉛合金シ
ートを作製するので、表面部分の結晶構造が微細かつ緻
密になり、強度や耐食性を向上させることができるとと
もに、圧延を延展性の高まった状態で行うので、クラッ
クの発生のほとんどないエキスパンド格子体用鉛合金シ
ートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延ローラーに挿入する前の連続鋳造体の表面
温度と、鉛合金シートのクラックの発生率との関係を示
す図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−162264(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/64 - 4/74 B21B 3/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カルシウム(Ca)を0.03〜0.08
    重量%、錫(Sn)を0.5〜1.5重量%含み、残部
    が鉛(Pb)からなる鉛−カルシウム−錫(Pb−Ca
    −Sn)合金の溶湯から連続鋳造体を作製し、この作製
    した連続鋳造体を冷却するとともに圧延してエキスパン
    ド格子体用鉛合金シートを作製する製造法であり、前記
    連続鋳造体を作製した直後、速やかにその表面を150
    ℃〜200℃の温度状態から40℃〜60℃になるまで
    冷却し、その後連続鋳造体内部からの熱伝導により前記
    表面の温度が上昇した連続鋳造体を圧延して所定の厚み
    の鉛合金シートを作製する鉛蓄電池のエキスパンド格子
    体用鉛合金シートの製造法。
JP15036592A 1992-06-10 1992-06-10 鉛蓄電池のエキスパンド格子体用鉛合金シートの製造法 Expired - Lifetime JP3252443B2 (ja)

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JP4239303B2 (ja) * 1999-06-22 2009-03-18 パナソニック株式会社 鉛蓄電池
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