JP6043336B2 - ホイール及び自動二輪車 - Google Patents

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この発明は、タイヤを保持するホイールと、そのホイールを用いる自動二輪車に関するものである。
車両のタイヤを保持するホイールとして、ホイール本体部がアルミニウム合金によって形成され、そのホイール本体部の軸心部に鉄製のホイールボス部が鋳込まれたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種のホイールは、鉄製のホイールボス部に軸心孔が設けられ、その軸心孔に車軸が嵌入され、軸心孔を突出した車軸の端部に抜け止め用のナットが螺着される。こうして、車軸に取り付けられたホイールは車軸と一体に回転する。
特開2007−112387号公報
ところで、別体のホイールボス部が鋳込まれるタイプのホイールにおいては、トルクが加わったときにホイールボス部とホイール本体部の間に回転方向のズレが生じないことが重要となる。このため、ホイールボス部の外周面には、通常、軸方向に延出する突出部が円周方向に離間して複数設けられ、ホイール本体部の鋳造時に、ホイール本体部の金属素材が突出部間の隙間に充填されるように工夫されている。このホイールボス部を用いた場合、ホイールボス部の外周域の広い面積でホイール本体部の金属素材が密接するとともに、径方向外側に隆起する複数の突出部が回転トルクをホイール本体部に効率良く伝達するようになる。
そして、この種のホイールにおいて、ホイールボス部とホイール本体部の間の回転方向のズレをより確実に規制するためには、ホイールボス部の軸長が長く、突出部の突出高さが高いことが望ましい。
しかし、ホイールボス部の軸長を長くすると、ホイール全体の軸長が長くなり、ホイールとの干渉を避けるために車体上の他の部品のレイアウトに影響を与えたり、ホイールを脱着するためのスペースを確保するのが難しくなることが懸念される。
また、ホイールボス部上の突出部の突出高さを高くすると、そのぶん隣接する突出部間に形成される溝の深さが深くなり、ホイールボス部を鋳込んでホイール本体部を鋳造するときに突出部間の溝に入り込む溶湯の流入部深さが深くなる。このため、溶湯の凝固に伴うひけ巣が突出部間の溝の底部付近に発生し易くなる。
そこでこの発明は、軸長の短縮化と鋳造品質の向上を図りつつ、ホイールボス部とホイール本体部の間のトルクを伝達する強度を向上させることができるホイール及びそのホイールを用いる自動二輪車を提供しようとするものである。
この発明に係るホイールは、上記課題を解決するために、車軸(20)に取り付けられる軸心孔(30)を有するホイールボス部(31)と、軸心部に前記ホイールボス部(31)が鋳込まれるホイール本体部(32)と、を備えたホイールであって、前記ホイールボス部(31)は、軸方向の一端寄りの外周面を成す大径ベース面(38)と、軸方向の他端寄りの外周面を成し前記大径ベース面(38)よりも小径の小径ベース面(39)と、前記大径ベース面(38)と前記小径ベース面(39)を接続する傾斜ベース面(40)と、外周域に離間して配置されるとともに、各々が前記大径ベース面(38)から前記傾斜ベース面(40)に亘る範囲に軸方向に略沿って延在する複数の第1の突出部(45)と、を備えるようにした。
これにより、ホイールボス部(31)を鋳込んでホイール本体部(32)を鋳造するときに、溶湯が成形型内でホイールボス部(31)の外周面に流れ込むと、その溶湯は、大径ベース面(38)と傾斜ベース面(40)に亘って延在する第1の突出部(45)を包み込み、かつ、隣接する第1の突出部(45)間に充填されるようになる。この状態で溶湯が冷却されると、ホイール本体部(32)の外面側から溶湯の凝固が始まり、ホイール本体部(32)の外面から離間するほど溶湯の凝固が遅くなる。このため、ホイール本体部(32)の外面からの離間距離が長いとその部分にひけ巣が生じ易くなるが、このホイールの場合、ホイールボス部(31)の大径ベース面(38)から傾斜ベース面(40)に亘って第1の突出部(45)が延在していることから、隣接する第1の突出部(45)間に形成される溝の深さが深くならず、ひけ巣が生じにくくなる。
例えば、ホイールボス部の外周面のベース面の全域が一定外径で、そのベース面の外周に、略一定高さの複数の突出部が延在している場合には、突出部の高さを高くして隣接する突出部間の溝の深さを充分に深くしなければ、ホイールボス部とホイール本体部の間においてトルクを伝達するために必要な強度の確保が難しくなる。しかし、この発明に係るホイールにおいては、ホイールボス部(31)の軸心から径方向外側に大きく離間した位置にある大径ベース面(38)から傾斜ベース面(40)とに亘って第1の突出部(45)が延在しているため、第1の突出部(45)の突出高さを全域で高くしなくても、ホイールボス部(31)とホイール本体部(32)の間でトルクを伝達するための強度を確保することが可能になる。特に、第1の突出部(45)のうちの傾斜ベース面(40)に延在する領域は、ホイールボス部(31)の軸線と平行になるように突出部が延在する場合に比較して、同じ軸方向の範囲であれば延在長さを長く確保することができる。このため、ホイールボス部(31)の軸長を短縮した場合にも、第1の突出部(45)の突出高さを高くせずにホイール本体部(32)との接触面積を増やしてトルク伝達のための充分な強度を確保することができる。したがって、この発明に係るホイールにおいては、隣接する第1の突出部(45)間に形成される溝の深さが深くならないことから、鋳造時におけるひけ巣の発生も抑制することができる。
前記大径ベース面(38)上には、周方向で隣接する複数の前記第1の突出部(45)の間において軸方向に沿って延出し、前記第1の突出部(45)よりも高さの低い第2の突出部(46)が設けられるようにしても良い。
この場合、周方向で隣接する複数の第1の突出部(45)の間において、第1の突出部(45)よりも高さいの低い第2の突出部(46)により、ホイールボス部(31)とホイール本体部(32)の間の接触面積を増大することができる。
前記第1の突出部(45)の前記小径ベース面(39)側の端部は前記小径ベース面(39)に接続されるようにしても良い。
この場合、第1の突出部(45)の延在長さがホイールボス部(31)の軸方向に長くなり、ホイールボス部(31)とホイール本体部(32)の間の接触面積が増大する。また、第1の突出部(45)の軸方向の端部が小径ベース面(39)に接続されることから、第1の突出部(45)の捩れ剛性が高まる。
前記小径ベース面(39)上には、軸方向に沿う複数の第3の突出部(47)が周方向に離間して設けられるようにしても良い。
この場合、小径ベース面(39)側においては、複数の第3の突出部(47)を介してホイールボス部(31)とホイール本体部(32)が接合される。このため、小径ベース面(39)側部分においてもホイールボス部(31)からホイール本体部(32)にトルクを伝達するための充分な強度を得ることが可能になる。
前記小径ベース面(39)上には、軸方向に沿う複数の第3の突出部(47)が周方向に離間して設けられ、前記小径ベース面(39)に接続された前記第1の突出部(45)には、前記第3の突出部(47)の軸方向の端部が接続されるようにしても良い。
この場合、第1の突出部(45)の延在方向の端部が小径ベース面(39)上で第3の突出部(47)に接続されるため、第1の突出部(45)の捩れ剛性がより高まる。
前記ホイールボス部(31)の前記大径ベース面(38)側の軸方向の端面には、前記車軸(20)に螺合するナット(42)が配置される収容凹部(41)が設けられるようにしても良い。
この場合、ナット(42)を配置するための収容凹部(41)によって大径ベース面(38)の内側部分の肉が削減される。このため、ホイールボス部(31)の体積増加に伴う重量の増加を回避することができるとともに、ホイールボス部(31)を鋳造で形成する場合には、ホイールボス部の肉厚増加に起因する巣の発生も抑制することができる。
この発明に係る自動二輪車は、前記いずれかのホイール(25)を用いた自動二輪車であって、車体に車幅方向の片側で支持される車軸(20)と、前記車軸(20)の自由端側に対向して配置される排気マフラー(22)と、を備え、前記車軸(20)と前記排気マフラー(22)の間には、前記車軸(20)に対して前記ホイール(25)を脱着するための作業空間(50)が確保されるようにしても良い。
この場合、ホイール(25)の軸長を短縮することができるため、車軸(20)と排気マフラー(22)の間の狭い作業空間(50)を通してホイール(25)を容易に脱着することができる。
この発明によれば、ホイールボス部が大径ベース面と小径ベース面と傾斜ベース面とを備え、大径ベース面から傾斜ベース面に亘る範囲に軸方向に略沿って第1の突出部が延在しているため、ホイールボス部の軸長を短縮しても、鋳造時におけるひけ巣の発生を抑制し、かつ、ホイールボス部とホイール本体部の間のトルクを伝達する強度を向上させることができる。
この発明の一実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。 この発明の一実施形態に係る自動二輪車の図1のII−II断面に対応する断面図である。 この発明の一実施形態に係るホイールの断面図である。 この発明の一実施形態に係るホイールボス部の図8のIV−IV断面に対応する断面図である。 この発明の一実施形態に係るホイールボス部の斜視図である。 この発明の一実施形態に係るホイールボス部の側面図である。 この発明の一実施形態に係るホイールボス部の図6のVII矢視図である。 この発明の一実施形態に係るホイールボス部の図6のVIII矢視図である。
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面において、矢印FRは、車両の前方を指し、矢印UPは、車両の上方を、矢印LHは、車両の左側方をそれぞれ指すものとする。
図1は、この実施形態に係る自動二輪車1の右側面を示す図である。この実施形態に係る自動二輪車は、乗員シート2の前部下方に足載せ部3を有するスクータ型の自動二輪車である。
この自動二輪車1の車体フレームFは、前端にヘッドパイプ11が結合されるメインフレームパイプ12と、メインフレームパイプ12の後端に直交して結合されるクロスパイプ13と、クロスパイプ13の左右の端部に前端がそれぞれ結合される左右一対のリヤフレームパイプ14と、を備えている。各リヤフレームパイプ14は、前端側のクロスパイプ13との結合部から後上がりに傾斜して後方に延出している。
メインフレームパイプ12は、ヘッドパイプ11から後下がりに傾斜したダウンフレーム部12aと、ダウンフレーム部12aの後端からほぼ水平に後方に延出するロアフレーム部12bとを有する。
ヘッドパイプ11には、前輪WFの両側に配置される一対の脚部15と、これらの脚部15の上端を連結するブリッジ部材16とを有するフロントフォーク17が回動操作可能に支持され、左右の脚部15の下端間に前輪WFが回転可能に軸支されている。フロントフォーク17の上端にはバータイプのハンドル18が結合されている。
図1に示すクロスパイプ13には、後輪WRの前方側に配置されるエンジンEと、後輪WRの左側方に配置されるベルト式無段変速機M(図2参照)とからなるユニットスイング式のパワーユニットPの前部が、リンク19を介して上下揺動可能に支持されている。後輪WRは、パワーユニットPの後部から右側方に向かって突出する車軸20に取り付けられている。また、左側のリヤフレームパイプ14とパワーユニットPの後部との間には図示しないクッションユニットが介装されている。
左右のリヤフレームパイプ14の前側上部には燃料タンク27が取り付けられ、燃料タンク27の上部には乗員シート2が支持されている。左右のリヤフレームパイプ14の燃料タンク27の設置部よりも後方側には、上部に物品を載せ置くためのキャリア29が取り付けられている。
なお、図1中の符号5は、車体骨格部の外側を覆う合成樹脂製の車体カバーである。
また、エンジンEのシリンダヘッドの吸気側には、図示しない吸気管を介してエアクリーナ21が接続され、シリンダヘッドの排気側には、排気管28を介して排気マフラー22が接続されている。排気マフラー22は、エンジンEの右側の後部下方位置から後輪WRの車軸20の右側方を通って車体後方側に延出している。
図2は、図1のII−II断面に対応する断面を示す図である。
図2に示すように、後輪WRの車軸20は、ベルト式無断変速機Mの動力出力部に設けられている。車軸20には、ベルト式無断変速機Mの変速部と減速機構23を介してエンジンEの動力が伝達される。車軸20に取り付けられる後輪WRは、チューブを内蔵するタイヤ24がホイール25の外周部に保持されて構成されている。車軸20と排気マフラー22の間には、車軸20に対して後輪WR(ホイール25)を脱着するための作業空間50が確保されている。
図3は、ホイール25を径方向に沿って切った断面を示す図である。
ホイール25は、車軸20に取り付けられる軸心孔30を有するホイールボス部31と、軸心部にホイールボス部31が鋳込まれるホイール本体部32と、を備えている。ホイールボス部31は、鉄等の硬質金属によって形成され、ホイール本体部32は、アルミニウム合金等の軽金属によって形成される。ホイールボス部31は予め鋳造等によって形成されており、ホイール本体部32の鋳造時に鋳造型内にセットされる。鋳造型内に軽金属の溶湯が導入され、その溶湯が凝固することによってホイール本体部32とホイールボス部31が一体化される。
ホイール本体部32は、外周部でタイヤ24を保持する円環状のリム33と、リム33の径方向の中心位置に配置され、軸心部にホイールボス部31が鋳込まれるハブ34と、ハブ34の軸方向の一端側(車軸20に取り付けたときに排気マフラー22に近接する側)の端部から径方向外側に延出して、ハブ34とリム33を連結する複数のスポーク35と、ハブ34の径方向外側にハブ34と同心に設けられたブレーキドラム36と、を備えている。ブレーキドラム36は、複数のハブ34に一体に接続されている。ブレーキドラム36は、後輪WRのドラム式のブレーキ装置の一部を構成している。
図4は、ホイールボス部31の断面を示す図であり、図5は、ホイールボス部31の斜視図、図6は、ホイールボス部31の側面図である。また、図7,図8は、それぞれ図6のVII矢視とVIII矢視に対応する図である。
ホイールボス部31は、軸方向の一端寄りの外周面を成す円筒状の大径ベース面38と、軸方向の他端寄りの外周面を成し大径ベース面38よりも小径の円筒状の小径ベース面39と、大径ベース面38と小径ベース面39を接続する截頭円錐状の傾斜ベース面40と、を備えている。大径ベース面38は、ホイール25を車両に取り付けたときに排気マフラー22に近接する側に配置され、小径ベース面39は、無断変速機Mに近接する側に配置される。
ホイールボス部31の軸心位置には、所定内径の上記の軸心孔30が形成されており、軸心孔30の内面から外周面までの距離(肉厚)は、基本的に外周面の形状に応じたものとなっている。ただし、ホイールボス部31の大径ベース面38側の軸方向の端面には、軸心孔30と同心円状の収容凹部41が設けられている。したがって、ホイールボス部31の大径ベース面38の内側領域においては、収容凹部41によって実質的に肉抜きされているために、外周面の形状によらずに比較的薄い肉厚とされている。収容凹部41には、軸心孔30を貫通した車軸20に螺合されてホイール25を抜け止めするためのナット42(図2参照)が収容される。なお、詳細な図示は省略されているが、車軸20と軸心孔30には、車軸20とホイールボス部31の相対回転を規制するためのスプライン等の回り止め機構が設けられている。
ホイールボス部31の大径ベース面38から傾斜ベース面40に亘る範囲には、軸方向に略沿って延出する第1の突出部45が径方向外側に膨出して形成されている。第1の突出部45の小径ベース面39側の軸方向の端部は小径ベース面39上に接続されている。第1の突出部45の端部は、小径ベース面39のうちの、傾斜ベース面40との境界位置から小径ベース面39の軸方向の約半分の長さに達する範囲に亙って接続されている。第1の突出部45は、ホイールボス部31の外周域に等間隔離間して複数設けられている。
第1の突出部45は、大径ベース面38上に延在する大径部領域45aと、傾斜ベース面40から小径ベース面39の一部に跨る範囲に延在する傾斜部領域45bとを有している。図4に示すように、大径部領域45aは、大径ベース面38に対する面直方向の高さが略一定高さとなるように形成されており、傾斜部領域45bは、傾斜ベース面40に対する面直方向の高さが略一定高さとなるように形成されている。また、第1の突出部45は、図8に示すように、軸方向視の形状が付根部側(ホイールボス部31の径方向内方側)から先端部側(ホイールボス部31の径方向外方側)に向かって先細りとなるテーパ状に形成されている。
ホイールボス部31の大径ベース面38上には、円周方向で隣接する第1の突出部45,45間において軸方向に沿って延出する第2の突出部46が設けられている。大径ベース面38上における第2の突出部46の突出高さは第1の突出部45の突出高さよりも低く設定されている。第2の突出部46は、図8に示すように、軸方向視の形状が付根部側から先端部側に向かって先細りとなるテーパ形状、若しくは、円弧形状に形成されている。
また、ホイールボス部31の小径ベース面39には、軸方向に沿って延在する複数の第3の突出部47が円周方向に等間隔に離間して形成されている。この実施形態の場合、第3の突出部47は、第1の突出部や第2の突出部に比較して突出高さが低く、かつ円周方で隣接する小径ベース面39には緩やかに湾曲して連続している。
そして、第3の突出部47の傾斜ベース面40側の端部は、第1の突出部45の傾斜部領域45bの小径ベース面39寄り端部に接続されている。この実施形態の場合、円周方向で隣接する2つの第3の突出部47,47が対を成して対応する第1の突出部45の円周方向両側の端部付近に接続されている。
この実施形態に係るホイール25は、以下のようにして形成される。
ホイールボス部31は鋳造等によって予め形成しておき、そのホイールボス部31をホイール本体部32を造形するための鋳造型内にセットする。
次に、この状態において、ホイール本体部32を形成するための金属の溶湯を鋳造型内に流し込む。これにより、溶湯は、ホイール本体部32の各部を形成するキャビティ内に行き渡り、その溶湯の一部は、図4に示すように、ホイールボス部31の外周面と軸方向の端面の一部に回り込む。
具体的には、ホイールボス部31の外周側に流れ込んだ溶湯は、複数の第1の突出部45を包み込むように流れ込むとともに、円周方向で隣接する第1の突出部45,45の間の溝部分にも流れ込む。このとき第2の突出部46が溶湯によって包み込まれる。また、小径ベース面39方向に流れ込んだ溶湯は、小径ベース面39の第3の突出部47と、円周方向で隣接する第3の突出部47,47の間にも流れ込む。さらに、このとき、溶湯の一部は、ホイールボス部31の大径ベース面38側の端面の収容凹部41の外縁部分にも流れ込む。
この後、溶湯の凝固を待って鋳造型が型開きされ、成形品であるホイール25が鋳造型から取り出される。
ところで、溶湯が鋳造型内で冷却されて凝固する際には、ホイールボス部31周りでは、ホイールボス部31から離間したホイール本体部32の外面側から凝固が始まり、ホイール本体部32の外面から離間した部位ほど凝固が遅くなる。
この実施形態に係るホイール25においては、ホイールボス部31のうちの軸心からの離間距離の大きい大径ベース面38から傾斜ベース面40に亘って第1の突出部45が延在しているため、ホイールボス部31とホイール本体部32の金属材料を径方向外側の広い面積でもって接触させつつ、隣接する第1の突出部45の間に形成される溝の深さが深くなるのを抑制し、鋳造時における溶湯の部分的な凝固遅れを防止することができる。
特に、このホイール25の場合、第1の突出部45のうちの傾斜部領域45bは、ホイールボス部31の軸線と平行になるように突出部が延在する場合に比較して、同じ軸方向の範囲であれば延在長さを長く確保することができる。このため、ホイールボス部31の軸長を短縮した場合にも、第1の突出部45の突出高さを高くせずにホイール本体部32との接触面積を増やしてトルク伝達のための充分な強度を確保することができる。
したがって、この実施形態に係るホイール25においては、ホイールボス部31の軸長を短縮しても、鋳造時におけるひけ巣の発生を抑制し、かつ、ホイールボス部31とホイール本体部32の間のトルクを伝達する強度を向上させることができる。
また、この実施形態に係るホイール25においては、大径ベース面38上の隣接する第1の突出部45,45の間に、軸方向に沿って延出する第2の突出部46が設けられ、第2の突出部46の突出高さが大径ベース面38上における第1の突出部45の高さよりも低く設定されている。このため、隣接する第1の突出部45の間において、ホイールボス部31とホイール本体部32の間の接触面積を第2の突出部46によって増大させることができる。このため、ホイールボス部31とホイール本体部32の間のトルクを伝達する強度を向上させることができる。
さらに、この実施形態に係るホイール25では、第1の突出部45の傾斜部領域45bの小径ベース面39側の端部が小径ベース面39上の一部に接続されている。このため、第1の突出部45の延在長さが長くなり、ホイールボス部31とホイール本体部32の間の接触面積が全体として増大する。また、第1の突出部45の軸方向の端部が小径ベース面39に接続されるため、第1の突出部45の捩れ剛性が高まる。したがって、ホイールボス部31からホイール本体部32にトルクを伝達する強度をさらに向上させることができる。
また、この実施形態に係るホイール25においては、小径ベース面39上に、軸方向に沿う複数の第3の突出部47が周方向に離間して設けられているため、小径ベース面39側部分においてもホイールボス部31からホイール本体部32にトルクを伝達する強度を向上させることが可能になる。
また、この実施形態に係るホイール25の場合、さらに、小径ベース面39に接続された第1の突出部45の端部に対して第3の突出部47の軸方向の端部が接続されている。このため、第1の突出部45の延在方向の端部が小径ベース面39上で第3の突出部47に接続されることから、第1の突出部45の捩れ剛性を第3の突出部47によって効率良く高めることができる。
また、この実施形態に係るホイール25においては、ホイールボス部31の大径ベース面38側の軸方向の端面に、ホイール固定用のナット42を配置するための収容凹部41が、ほぼ大径ベース面38の軸長全域に亙るように形成されている。このため、ホイールボス部31の大径ベース面38の内側が肉抜きされつつ、ホイールボス部31の端面にナット配置用の収容凹部41が配置されることになる。したがって、このホイール25においては、ホイールボス部31の体積増加に伴う重量の増加を回避することができるとともに、ホイールボス部31を鋳造する際に、肉厚増加に起因する巣が発生するの抑制することができる。
また、ホイール25を採用するこの実施形態に係る自動二輪車1においては、鋳造時におけるひけ巣の発生や、ホイールボス部31とホイール本体部32の間のトルクを伝達する強度の低下等の不都合を招くことなく、ホイール25の軸長を短縮することができるため、限られた作業空間50内において後輪WR(ホイール25)を容易に脱着することができる。
特に、この実施形態の自動二輪車1のように、車軸20の自由端側に対向する位置に排気マフラー22が配置される車両においては、車軸20と排気マフラー22の間に極めて狭い作業空間50しか確保できない場合があるが、このような場合にも後輪WR(ホイール25)の脱着作業を容易に行うことができる。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
1…自動二輪車
20…車軸
22…排気マフラー
25…ホイール
30…軸心孔
31…ホイールボス部
32…ホイール本体部
38…大径ベース面
39…小径ベース面
40…傾斜ベース面
41…収容凹部
42…ナット
45…第1の突出部
46…第2の突出部
47…第3の突出部
50…作業空間

Claims (7)

  1. 車軸(20)に取り付けられる軸心孔(30)を有するホイールボス部(31)と、
    軸心部に前記ホイールボス部(31)が鋳込まれるホイール本体部(32)と、を備えたホイールであって、
    前記ホイールボス部(31)は、
    軸方向の一端寄りの外周面を成す大径ベース面(38)と、
    軸方向の他端寄りの外周面を成し前記大径ベース面(38)よりも小径の小径ベース面(39)と、
    前記大径ベース面(38)と前記小径ベース面(39)を接続する傾斜ベース面(40)と、
    外周域に離間して配置されるとともに、各々が前記大径ベース面(38)から前記傾斜ベース面(40)に亘る範囲に軸方向に略沿って延在する複数の第1の突出部(45)と、を備えていることを特徴とするホイール。
  2. 前記大径ベース面(38)上には、周方向で隣接する複数の前記第1の突出部(45)の間において軸方向に沿って延出し、前記第1の突出部(45)よりも高さの低い第2の突出部(46)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のホイール。
  3. 前記第1の突出部(45)の前記小径ベース面(39)側の端部は前記小径ベース面(39)に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のホイール。
  4. 前記小径ベース面(39)上には、軸方向に沿う複数の第3の突出部(47)が周方向に離間して設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のホイール。
  5. 前記小径ベース面(39)上には、軸方向に沿う複数の第3の突出部(47)が周方向に離間して設けられ、
    前記小径ベース面(39)に接続された前記第1の突出部(45)には、前記第3の突出部(47)の軸方向の端部が接続されていることを特徴とする請求項3に記載のホイール。
  6. 前記ホイールボス部(31)の前記大径ベース面(38)側の軸方向の端面には、前記車軸(20)に螺合するナット(42)が配置される収容凹部(41)が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のホイール。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のホイール(25)を用いた自動二輪車であって、
    車体に車幅方向の片側で支持される車軸(20)と、
    前記車軸(20)の自由端側に対向して配置される排気マフラー(22)と、を備え、
    前記車軸(20)と前記排気マフラー(22)の間には、前記車軸(20)に対して前記ホイール(25)を脱着するための作業空間(50)が確保されていることを特徴とする自動二輪車。
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