JP6042850B2 - ポリマー性充填剤を有する歯科矯正用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は広範に歯科矯正用組成物に関する。より具合的には、本発明はポリマー性充填剤を含有する歯科矯正用接着剤に関する。
(関連技術の説明)
歯科矯正治療は、適切な位置への位置異常歯の管理、誘導、及び矯正に関連する、歯科学の分野における特殊なタイプの処置である。歯科矯正処置は、患者の噛み合わせ(咬合とも呼ばれる)における欠陥を矯正すると共に、衛生面の改良をし、歯の全体的な審美性を改善する上で有用となり得る。
歯科矯正処置は、多くの場合、ブラケットとして知られる小さなスロット付きの装具の使用を伴い、その装具は一般に、患者の前歯、犬歯、及び小臼歯に固定される。ブラケットが歯上に置かれた後、アーチワイヤが各ブラケットのスロットの中に受容され、歯科学的に正しい位置への各歯の移動を誘導するトラックとして働く。アーチワイヤの端面は、一般的に、患者の臼歯に固定されたバッカルチューブとして知られる装具に受容される。ブラケット、アーチワイヤ及びバッカルチューブの組み合わせは一般に歯科矯正用ブレース又は「ブレース類」と称される。
歯の表面に歯科矯正用装具を接着させるために接着剤を用いることは、歯科矯正医にとり通常の治療行為である。このことは直接接着法により達成することができ、この直接接着法は、装具の基部に接着剤を塗布すること、装具を歯に取り付けること、装具の基部に沿って押し出されたいくらかの過剰な接着剤のはみ出しを除去すること及び最終的に接着剤を硬化させることを含む。代替法として間接的方法を用いることができ、この間接的方法では、最初に装具を接着的に患者の歯のレプリカ(通常、石膏又は歯科矯正用石膏で形成される)に接着し、並びに装具及びレプリカの上に形成された弾力的な転移トレーに接着させる。次いで、転移トレイを用いて装具を注意深くレプリカから引き離し、同時に、再び適切な接着剤を用いて装具を患者の歯に再接着させる。臨床医は、装具を歯の表面に接着させるための様々な接着剤を入手でき、それらの多くが優れた接着強度を提供する。通常2年以上である治療のプロセスを通じて装具の歯の表面への接着を維持するためには、高い接着強度が望ましい。
歯科矯正治療の終了時には、全ての装具は患者の歯から剥離される。しかしながら、歯科矯正治療の終了に先立って装具が歯から除去される状況もある。例えば、部分的な治療の目標を達成するために、歯科矯正医が、治療の途中でただ1個か2個の装具を取り外して再配置することができる。患者が硬い食物を噛んだときに、1個以上の装具が偶発的に剥離されてしまうことも起き得る。
上記の状況のそれぞれにおいて、装具の剥離された歯の表面には、通常ある程度の量の残余の接着剤が残され、この接着剤は歯科専門家により慎重に除去されるべきである。従来の歯科矯正用接着剤は高度に架橋され、通常、例えばシリカなどの硬質の無機充填剤を含有している。更に、高い強度及び許容範囲にある接着剤の取り扱い性を達成するために、これらの充填剤はしばしば接着剤の50重量パーセントを越える量で存在する。いったん硬化してしまうと、これらの物質を患者の歯から取り除くことは困難であり、また多大な時間を必要とする傾向を持つ。現在は、除去プロセスは、しばしば20,000〜200,000rpmで稼動する溝付の炭化タングステンのドリル錐(burr)などの回転する先端を有する手工具の使用を含む。炭化タングステンは歯のエナメル質と比較してより硬質の物質であるため、誤って先端がエナメル質の損傷を引き起こす危険性がいくばくかあり、その結果、この除去作業は一般には助手に委託されず、歯科矯正医によって遂行される。
歯からの接着剤の削り取りは多大な時間を要し、全歯科矯正治療の中で、歯科矯正医と患者の両者にとって最も煩わしい医療行為としてしばしば引き合いに出される。更に、歯科矯正医の時間は助手のそれに比較して大変貴重であるため、歯科矯正医によってのみ遂行される医療行為は、財務上及び/又は診療所運営の観点から、非効率的である。
高速回転手工具を患者に用いることに付随する、他の危険性も存在する。高速回転の速度は、溝付のドリル錐によりエナメル質の表面に摩擦熱を引き起こす。この加熱は冷却水流の使用により軽減され得るが、多くの場合治療部位が乾燥しているほうがエナメル質上の残余の接着剤が見やすいために、多くの臨床医はかかる冷却液の使用を避ける。最近の研究では、溝付のドリル錐による研磨により引き起こされる歯髄腔内の温度上昇は、6−溝付の炭化タングステンのドリル錐が使用される場合には最高9.5℃に達することが示唆されている(ジョンク(Jonke)他、World Journal of Orthodontics、7巻、357頁(2006年))。かかる温度においては、歯髄損傷が起き得る(ザッハ(Zach)他、Oral Surg.Oral Med.Oral Pathol.(1965年)19巻,515頁〜530頁)。
いくつかの参照文献は、歯科矯正用接着剤において、通常使用されるよりも少ない量の充填剤を使用することで、残余の接着剤の除去が容易になることを示唆している。かかる概念の内のいくつかは、グイネット(Gwinnett)及びゴアリック(Gorelick),Am.J.Orthod.,71巻,6号,651頁〜665頁(1977年6月)、レチーフ(Retief)及びデニス(Denys)、「歯科矯正用取り付け具の剥離後のエナメル質表面の仕上げ(Finishingof Enamel Surfaces After Debonding of Orthodontic Attachments)」Angle Orthodontist、49巻、1号、1頁〜10頁(1979年1月)、及び米国特許第3,629,187号(ワラー(Waller)他)に記載されている。しかしながら、残余の接着剤を削り取るためには硬化した工具を使用しなければならないため、これらの充填剤を含有している残余の接着剤の除去は未だエナメル質の損傷を誘発し得る。明らかに、可能であれば歯の髄質のいかなる損傷も避けられるべきである。
優れた取り扱い性と接着の信頼性を提供し及び更に歯から装具が剥離された後の接着剤の除去を容易にする、改善された歯科矯正用接着剤への需要が存在する。本発明は、確定した粒径特性を持つポリマー性充填剤粒子を含む歯科矯正用接着剤を対象とする。これらの接着剤が歯に歯科矯正用装具を接着するために使用されたときに、従来の歯科矯正用接着剤と同程度の機械的保持及び凝集強度を提供するように粒経特性は管理される。しかしながら、ポリマー性充填剤が殆どの無機充填剤よりも軟質であるおかげで、歯科矯正用装具を剥離した後に、通常、これらの接着剤は従来の接着剤よりもより容易に除去することができる。
好適には、この接着剤は本質的に全ての硬質の(即ちモース硬度で少なくとも5の)無機充填剤を含まない。エナメル質のモース硬度が5であるのに対して、殆どの従来の接着剤は、石英ガラスを含むか又は例えばモース硬度基準において7付近の硬度レベルを示す石英充填剤などの誘導体を含む。これらの値は、装具が剥離された後に歯から従来の残余の接着剤を除去するために通常用いられる、溝付の炭化タングステンのドリル錐のモース硬度である9に匹敵する。一方、本発明のポリマー性充填剤はモース硬度基準において5未満の硬度レベルを示す。これらの物質は比較的軟質であるため、残余の接着剤は、プロフィー・ペースト(prophy paste)又は例えば、歯石除去器や歯科用仕上げディスクなどの仕上げ器具により、より完全にかつより容易に除去され得る。接着剤清掃のために高速度の炭化物ドリル錐を使用することを避けることにより、患者にとって、プロセスはより短時間でより快適であり、熱は歯の表面により少なく発生され、エナメル質損傷の危険性は顕著に削減される。同時に、接着剤清掃の容易さ、改善された患者の快適性、及び削減された歯の損傷の危険性は、歯科矯正医及び患者の両方に利益を提供する。
一態様では、本発明は硬化性成分、硬化剤及びポリマー性充填剤を含む歯科矯正用接着剤を提供する。このポリマー性充填剤は、6〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する。特定の実施形態では、ポリマー性充填剤は、以下に記載されるような2.5より小さいd50/d25粒径比により特徴付けられるサイズ分布を有する。充填剤は、エマルション重合又は懸濁重合により調製され、架橋されていてよい。他の実施形態では、組成物は更に他のポリマー性充填剤又は無機充填剤を含む。特定の実施形態では、充填剤全体の荷重は、接着剤の全重量に基づいて55〜65重量パーセントの範囲で存在する。任意に、組成物はフッ化物を放出する無機充填剤を含む。無機充填剤が少なくとも5のモース硬度を有する場合、無機組成物は接着剤の全重量に基づいて0〜5重量パーセントの範囲で存在することが好ましい。
別の態様では、本発明は、酸化剤を含む第1の接着剤組成物及び還元剤を含む第2の接着剤組成物を含む、2成分歯科矯正用接着剤を提供し、第1の接着剤組成物及び第2の接着剤組成物のうちの少なくとも1つは、6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有するポリマー性充填剤を含み、及び更にかかる歯科矯正用接着剤は、第1の接着剤組成物及び第2の接着剤組成物を互いに接触させることにより硬化される。
別の態様では、本発明は、装具を歯に接着させるための基部を有する歯科矯正用装具、及び装具の基部の表面上の接着剤を含むパッケージ化物品を提供する。上記接着剤は、硬化性成分、硬化剤及び6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有するポリマー性充填剤を含む。容器は、その基部に接着剤を有する歯科矯正用装具を少なくとも部分的に包囲する。
別の態様では、本発明は硬化した歯科矯正用接着剤を歯から除去する方法を提供する。一実施形態では、かかる方法は、少なくともその一部上に硬化した歯科矯正用接着剤を有する歯の表面を提供し、歯科矯正用接着剤は、硬化性成分と、硬化剤と、ポリマー性充填剤とを含有し、ポリマー性充填剤は6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有することと、歯から接着剤を除去するために歯の表面に研磨剤を塗布することとを含む。前記研磨剤は5より小さいモース硬度を有し、任意に、仕上げ用ディスク又はプロフィー粉末であってよい。
本発明は添付された図に関連させて記載される。
本発明の例示的実施形態において用いられるポリマー性充填剤の粒径分布を示すヒストグラム。 本発明の特定の実施形態の、例示的な接着剤により事前に被覆された歯科矯正用装具を着脱可能なカバーを有する容器内に含んでいる、パッケージ化物品を図示する側面断面図。 剥離基材と一部が接触している例示的な接着剤により事前に被覆された、歯科矯正用装具の基部を見る透視図。
本明細書に記載される例示的な歯科矯正用接着剤は、そのそれぞれが、少なくとも1つのポリマー性又はハイブリッド充填剤、硬化性成分、硬化剤、及び任意に、例えば色変化特性などの二次的機能を提供する添加物とを含む、複合材料を構成する。本明細書に記載される硬化性接着剤及び硬化した接着剤は、歯組織に対して粘着性のある(例えば、接着)材料を用いる、様々な歯科及び歯科矯正の用途に使用することができる。歯科矯正用接着剤として特に有用である一方、これらの硬化性接着剤及び硬化した接着剤は、例えば、歯科用接着剤、セメント(例えば、グラスアイオノマーセメント、樹脂修飾グラスアイオノマーセメント及び歯科矯正用セメント)及びこれらの組み合わせとして用いてもよい。上記のそれぞれの組成物(充填剤、硬化性成分、硬化剤、及び任意の添加物)は、以下に記載される副題において、より詳細が明らかにされ、記載される。
充填剤
ポリマー性充填剤
本発明に従う接着剤は、管理された粒経(粒子の最も大きい寸法であり、通常は直径である)及び粒径分布を有するポリマー性充填剤を少なくとも1つ含む。粒子は、球状、扁平状、桿状、又は何らかの他の非対称な形状であってよい。粒径分布は単峰性又は多峰性(例えば2峰性)であってよい。好適には、充填剤の粒径中央値は、18マイクロメートル以下、より好適には17マイクロメートル以下、そして最も好適には16マイクロメートル以下である。好適には、充填剤の粒径中央値は、6マイクロメートルより大きく、より好適には7マイクロメートルより大きく、そして最も好適には8マイクロメートルより大きい。
範囲の下端での粒径分布の幅は、粒径中央値「d50」の25パーセンタイルの粒径「d25」に対する比、すなわちd50/d25により記述され得る。大きなd50/d25比は、一般的に広い粒径分布を示し、一方、逆に小さいd50/d25比は一般的に狭い粒径分布を示す。好適には、d50/d25は2.5未満であり、より好適にはd50/d25は2.0未満であり、最も好適にはd50/d25は1.8未満である。上記の特性を実証する2つのポリマー充填剤A及びBについての例示的な粒径のヒストグラムが図1に示される。図示されるように、充填剤Aは6.7マイクロメートルの粒径中央値(又はd50)及び1.55のd50/d25比を有し、一方充填剤Bは5.5マイクロメートルの粒径中央値(又はd50)及び1.40のd50/d25比を有する。
上記に提示された範囲は、いくらかの大きい粒子及び小さい粒子の存在が許容されることを反映している。しかしながら、接着剤が、接着操作の間にブラケットの歯への正常な着座を妨害するほど大きいポリマー充填剤粒子を含まないことが好ましい。一方、多すぎる小ポリマー粒子が充填された接着剤は、しばしば低い凝集強度を有する。好適には、ポリマー性充填剤は、接着剤の全重量に基づき50重量パーセント〜70重量パーセントの範囲で存在し、更に好適には55重量パーセント〜65重量パーセントの範囲で存在する。
ポリマー性充填剤としては、例えば、ポリメタクリレートポリマー、ポリスチレン、ポリシアノアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエポキシド及びポリウレタンなどの天然及び合成ポリマー及びコポリマーが挙げられる。好適には、ポリマー粒子はエマルション重合又は懸濁重合により形成される。これらの方法は、妥当な精度での粒度特性の管理を可能にするため、有利である。しかしながら、ポリマー性充填剤は、粒径及び粒径分布の適切な管理を可能とする他の方法を用いて形成され得る。例えば、液体のモノマーを空気中に散布し、化学線又は電子線照射を用いて空中の噴霧の液滴を架橋することができる。重合は必ずしも照射により引き起される必要は無い。例えば、小さなポリマー・ビーズを作製するために、シアノアクリレート・モノマーを湿った環境中に噴霧し、微小液滴の形態で重合させることができる。更に、ポリマー性充填剤は、バルクの形態で重合させ、次いで微細に分割された粒子を形成するために、後処理を行うことができる。例えば、充填剤ポリマーを、ボールミリング、せん断又は噴霧により粉砕し、必要に応じてフィルターを通過させることで、適切なサイズ分布を有するポリマー粒子を製造することができる。形成された粒子は、必ずしも球状でなくてもよい。
好適な実施形態では、ポリマー性充填剤には、寸法的に安定であり、架橋されているか又は半結晶であるがために堅固であるポリマーを含む。別の選択肢では、例えば、ポリスチレン又はポリメチルメタクリレートなどの高いガラス転移温度を有するポリマーを用いることが可能である。この場合には、ガラス転移温度は、口腔内で遭遇するいかなる温度よりも十分に高いことが好適である。任意に、熱力学的な架橋が寸法的安定性又は耐クリープ性をポリマー充填剤に付与する、例えば、クレイトン(KURATON)(商標)のような弾力性のあるブロックコポリマー又は他の自己組織化ポリマー構造を用いることができる。
ポリマー性充填剤はまた、充填剤と硬化性成分又は樹脂との間の結合を増強するための、コーティングされているか、又は機能化された表面を有し得る。架橋された粒子は、例えば、フリーラジカルにより重合可能な基を任意に粒子の表面上に含み得る。例えば、充填材粒子上への、炭素及び更に任意には水素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、イオウ、チタニウム及び銅を含む非晶質物質の密に充填されたコーティングの蒸着には、カーボン系のプラズマ(carbon-based plasma)を用い得る。選択された硬化性成分に応じて、前記コーティングを粒子及び樹脂の界面相溶性の最適化に使用できる。容量的に結合された系内でイオン殻を用いるプラズマ処理法も、極性及び/又は水性樹脂組成物による改善された濡れのための、ポリマー充填剤の親水性の改質に用い得る。親水性化プラズマ処理のための化学種源としては、アクリル酸及びメタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸及びフマル酸、ビニルエーテル、ピロリドン、アルコール、グリコールが挙げられ、そのそれぞれを粒子の親水性の変更のために用いることができる。結果として生じる蒸着は、高度に架橋しており、通常はプラズマ重合として知られる。他のプラズマ処理としては、例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ホウ素、チタニア、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム又はオキシ窒化物などのアモルファス膜などの窒化物及び酸化物の蒸着が挙げられる。更にこれらは、例えば、アミン、ヒドロキシ、カルボキシル、シラノールやその他などの官能基の連結も包み得る。硬化した接着剤の清掃に逆効果を与えることを避けるために、好適には、これらの層の蒸着は薄膜(<1マイクロメートル)に制限される。この様式により粒子をコーティングする方法は、更に米国特許第6,015,597号、同第6,197,120号及び同第6,878,419号(デビッド(David)他)に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
更に、本発明の充填剤は1種類のポリマー充填剤に限定されない。所望の場合には、2つ以上のポリマー充填剤の混合物を用いてよい。
ハイブリッド充填剤
特定の実施形態では、接着剤が本質的にいかなる非ポリマー性(例えば無機の)充填剤をも含まないことが好適である。しかしながら、接着剤の配合において、ポリマー性充填剤と共に無機充填剤を用いることが可能であり、それでも、容易な接着剤の清掃を含む特定の利益を得ることができる。例えば、ハイブリッド充填剤系を形成するために、少量の微粒子状無機ガラス又は結晶をポリマー性充填剤と混合することができる。無機充填剤組成物の含有は、接着剤に所望の性質を付与するために用いてよい。以下に記載されるように、フッ化物を放出する性質を接着剤に付与するために無機充填剤を用いることができる。多くの歯科矯正医にとり、フッ化物の放出は望ましい特徴である。無機充填剤は、臨床医又は歯科矯正助手による取り扱いを容易にするために、接着剤の弾性率若しくは強度の増大、又はそのレオロジー特性を改質するのに有効である。
しかしながら、組成物に加え得る無機充填剤の量は、かかる無機充填剤の性質に部分的に依存する。比較的軟質である無機充填剤が選択される場合には、この無機充填剤は、接着剤の清掃の容易さを過度に損なうこと無く接着剤組成物中にかなりの量が許容され得る。しかしながら、例えば少なくとも5のモース硬度を有する硬質の充填剤などは、大量に加えられた場合に、接着剤の清掃の容易さに悪影響を与える可能性がある。少なくとも5のモース硬度を有する無機充填剤の場合、接着剤の全重量に基づき、無機組成物は5重量%以下を占めることが好適である。接着剤の全重量に基づき、少なくとも5のモース硬度を有する無機組成物は、2重量%以下を占めることがより好適である。最も好適には、そして、上記に提示した理由により、接着剤は少なくとも5のモース硬度を有する無機組成物を含まない。特定の実施形態では、接着剤は、少なくとも6のモース硬度を有する充填剤、少なくとも7のモース硬度を有する充填剤、少なくとも8のモース硬度を有する充填剤、又は少なくとも9のモース硬度を有する充填剤を全く含まない。充填剤は、いかなる場合においても無毒性であり、口内での使用に適したものでなければならない。充填剤は、放射線不透過性又は放射線透過性であり得る。充填剤は典型的には実質的に水に不溶性である。
適切な無機充填剤の例は、限定するものではないが、例えば石英(即ち、シリカ、SiO);窒化物(例えば窒化ケイ素);ガラス及び例えば、Zr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAlから誘導された充填剤;長石;ホウケイ酸塩ガラス;カオリン;タルク;ジルコニア;チタニア;米国特許第4,695,251号(ランドクレフ(Randklev))に記載されているような低モース硬度充填剤;及びサブミクロンのシリカ粒子(例えば、「OX 50」、「130」、「150」及び「200」シリカが挙げられる、商品名AEROSILでデグッサ社(Degussa Corp.(オハイオ州アクロン(Akron,OH)))から入手可能であるような焼成シリカ及びキャボット社(Cabot Corp.(イリノイ州タスコラ(Tuscola, IL)))より入手可能な、CAB−O−SIL M5及びTS−720シリカのような焼成シリカ)などが挙げられる、天然素材又は合成された物質である。
酸非反応性の好適な充填剤粒子としては、石英(即ち、シリカ)、サブミクロンのシリカ、ジルコニア、サブミクロンのジルコニア、及び米国特許第4,503,169号(ランドクレフ(Randklev))に記載されている種類の非ガラス質微小粒子が挙げられる。これら酸非反応性充填剤の混合物、並びに有機及び無機物質から作製される混合物充填剤も考えられる。
充填剤はまた、酸反応性充填剤であることもできる。好適な酸反応性充填剤としては、金属酸化物、ガラス及び金属塩が挙げられる。典型的な金属酸化物としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛が挙げられる。典型的なガラスとしては、ガラス、ホスフェートガラス及びフルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラスが挙げられる。FASガラスが特に好ましい。FASガラスは、典型的には、前記ガラスが接着剤と混合したときに、硬化した接着剤が生じるために十分な量の、溶出可能なカチオンを有する。フッ化物を放出する接着剤では、前記ガラスは典型的には、硬化した接着剤が抗う蝕性を有するために十分な量の溶出可能なフッ素イオンを含有する。前記ガラスは、フッ化物、アルミナ、及び他のガラス形成成分を含有する溶解物から、FASガラス製造技術における当業者によく知られている技術を使用して作製することができる。FASガラスは、典型的には、十分に超微粒子状の粒子の形態であるので、他のセメント構成成分と都合よく混合することができ、得られた混合物が口内に使用される時に良好に機能する。好適には、FASガラスは、接着剤中に、接着剤の全重量に基づき、最大40重量%存在する。全部の充填剤の組成物(ポリマー性及びモース硬度5以下の無機物)は、接着剤の全重量に基づき、好適には50重量パーセント〜80重量パーセントの範囲で、及びより好適には、55重量パーセント〜77重量パーセントの範囲で、及び最も好適には60重量パーセント〜75重量パーセントの範囲で存在する。
一般的に、FASガラスの平均粒径は、例えば沈降分析器を用いて測定した場合に、12マイクロメートル以下の大きさであり、典型的には、10マイクロメートル以下の大きさであり、及びより典型的には5マイクロメートル以下の大きさである。適切なFASガラスは当業者によく知られており、広範囲の商業的供給源から入手可能であり、かつその多くが現在、例えば、ヴィトレマー(VITREMER)、ヴィトレボンド(VITREBOND)、リライ・X・ルーティング・セメント(RELY X LUTING CEMENT)、リライ・X・ルーティング・プラス・セメント(RELY X LUTING PLUS CEMENT)、フォタック−フィル・クイック(PHOTAC-FIL QUICK)、ケタック−モラー(KETAC-MOLAR)、及びケタック−フィル・プラス(KETAC-FIL PLUS)(ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M・エスペ・デンタル・プロダクツ社(3M ESPE Dental Products)より入手可能)、フジII LC(FUJI II LC)及びフジIX(FUJI IX)(G−Cデンタル工業社(G-C Dental Industrial Corp.)、日本、東京)並びにケムフィル・スペリオール(CHEMFIL Superior)(デンツプライ・インターナショナル社(Dentsply International)、ペンシルベニア州ヨーク(York))などの商標表記で市販されているガラスアイオノマーセメントに見出される。所望の場合、充填剤の混合物を使用することが可能である。FASガラス充填剤を含有する他の組成物に関する更なる記載は、以下の副題「硬化性成分/ガラスアイオノマー」において提供される。
充填剤と樹脂との間の接着を強化するために、充填剤粒子の表面を、カップリング剤で処理することもできる。適切なカップリング剤としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。シランにより処理されたタルク充填剤、シランにより処理されたカオリン充填剤、シランにより処理された粘土系充填剤、及びこれらの組み合わせは、特定の実施形態において特に好適である。
他の好適な充填剤は、米国特許第6,387,981号(ジャン(Zhang)他)及び同第6,572,693号(ウー(Wu)他)、並びに国際特許出願公開第01/30305号(ジャンら)、国際公開第01/30306号(ウィンディシュ(Windisch)他)、国際公開第01/30307号(ジャンら)、及び国際公開第03/063804号(ウー他)に開示されている。これらの参考文献に記載されている充填剤構成成分としては、ナノサイズシリカ粒子、ナノサイズ金属酸化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填剤は、更に米国特許第7,090,721号(クレイグ(Craig)他)、同第7,156,911号(カンガス(Kangas)他)及び同第7,090,722号(ブッド(Budd)他);及び米国特許出願第2005/0256223(A1)号(コルブ(Kolb)他)に記載されている。
硬化性成分
エチレン性不飽和化合物
本明細書に開示されるとき、「適切な接着剤」は、エチレン性不飽和化合物(フリーラジカルに対して活性な不飽和基を含む)を含む硬化性成分(例えば、光重合可能な化合物)を用いることができる。本発明では、硬化性成分は、接着剤の全重量に基づき、好ましくは、20重量%〜60重量%の範囲で、より好ましくは30重量%〜45重量%の範囲で存在する。有用なエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
接着剤(例えば、光重合可能な組成物)は、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー及びポリマーを含む場合がある、フリーラジカルに対して活性な不飽和基を有する化合物を含むことができる。好適な化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合を受けることが可能である。そのようなフリーラジカル重合性化合物としては、モノ−、ジ−又はポリ−(メタ)アクリレート類(即ち、アクリレート類及びメタクリレート類)例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート;(メタ)アクリルアミド類(即ち、アクリルアミド類及びメタクリルアミド類)例えば、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、並びにジアセトン(メタ)アクリルアミド;ウレタン(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール類のビス−(メタ)アクリレート類(好ましくは、分子量200〜500)、米国特許第4,652,274号(ボッチャー(Boettcher)他)に記載されているような、アクリレート化されたモノマー類の共重合性混合物、米国特許第4,642,126号(ザドール(Zador)他)に記載されているような、アクリレート化されたオリゴマー類、及び米国特許第4,648,843号(ミトラ(Mitra))に開示されているもののような、ポリ(エチレン部が不飽和の)カルバモイルイソシアヌレート類;ビニル化合物類、例えばスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジペート及びジビニルフタレートが挙げられる。他の好適なフリーラジカル重合性化合物としては、例えば、PCT国際公開特許第00/38619号(グーゲンベルガー(Guggenberger)他)、同第01/92271号(ヴァインマン(Weinmann)他)、同第01/07444号(グーゲンベルガーら)、同第00/42092号(グーゲンベルガーら)に開示されているようなシロキサン官能性(メタ)アクリレート、並びに、例えば、米国特許第5,076,844号(フォック(Fock)他)、同第4,356,296号(グリフィス(Griffith)他)、欧州特許第0373 384号(ヴァーゲンクネヒト(Wagenknecht)他)、同第0201 031号(ライナーズ(Reiners)他)、及び同第0201 778号(ライナーズ(Reiners)他)に開示されているようなフルオロポリマー官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。必要に応じて、2種以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を使用することができる。
硬化性成分は、単一分子内にヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を含有してもよい。そのような物質の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ−又はジ−(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ−、ジ−、及びトリ−(メタ)アクリレート、ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、又はペンタ−(メタ)アクリレート、及び2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−エタアクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)が挙げられる。好適なエチレン性不飽和化合物はまた、多種多様な民間の供給元、例えばシグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)(セントルイス)から入手可能である。必要であれば、エチレン性不飽和化合物の混合物を使用することができる。
特定の実施形態では、硬化性成分としては、PEGDMA(約400の分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート)、ビスGMA、UDMA(ウレタンジメタクリレート)、GDMA(グリセロールジメタクリレート)、TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、米国特許第6,030,606号(ホームズ(Holmes))に記載されるようなビスEMA6、及びNPGDMA(ネオペンチルグリコールジメタクリレート)が挙げられる。所望であれば、この硬化性成分の様々な組み合わせを使用することができる。特定の実施形態では、例えばUDMAなどの架橋性モノマーが、接着剤の全硬化性成分に相当することができる。好ましくは本明細書において開示される接着剤は、接着剤の全重量に基づき、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、及びより好ましくは少なくとも30重量%のエチレン性不飽和化合物(例えば、酸官能基の存在するもの及び/又は存在しないもの)を含有する。更に、本明細書において開示される接着剤は、接着剤の全重量に基づき、最大60重量%、好ましくは最大50重量%、及びより好ましくは最大45重量%のエチレン性不飽和化合物(例えば、酸官能基の存在するもの及び/又は存在しないもの)を含有する。
本明細書において開示される接着剤は、更に、酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物の形態の1個以上の硬化性成分を含有できる。本明細書で使用するとき、酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和並びに酸及び/又は酸前駆体官能基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを包含することを意味する。酸前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロホスフェートが挙げられる。酸官能基としては、カルボン酸官能基、リン酸官能基、ホスホン酸官能基、スルホン酸官能基、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリセロールリン酸モノ(メタ)アクリレート、グリセロールリン酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)リン酸、ビス((メタ)アクリロキシエチル)リン酸、((メタ)アクリロキシプロピル)リン酸、ビス((メタ)アクリロキシプロピル)リン酸、ビス((メタ)アクリロキシプロピル)プロピルオキシリン酸、(メタ)アクリロキシヘキシルリン酸、ビス((メタ)アクリロキシヘキシル)リン酸、(メタ)アクリロキシオクチルリン酸、ビス((メタ)アクリロキシヘキシル)クチルリン酸、(メタ)アクリロキシデシルリン酸、ビス((メタ)アクリロキシデシル)リン酸、カプロラクトンメタクリレートリン酸、クエン酸ジ−又はトリ−メタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリクロロホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリスルホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリホウ酸などのα,β−不飽和酸性化合物が、硬化性成分系の成分として用い得る。また、不飽和カルボン酸のモノマー、オリゴマー、及びポリマー、例えば、(メタ)アクリル酸、芳香族(メタ)アクリレート化酸、(例えば、メタクリレート化トリメリット酸)、及びそれらの無水物を使用することが可能である。本発明の好適な方法において用いられる特定の組成物としては、少なくとも1つのP−OH部分を有する酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
これらの化合物の特定のものは、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との間の反応生成物として得られる。酸官能基及びエチレン性不飽和成分の両方を有するこの種の追加の化合物は、米国特許第4,872,936号(エンゲルブレヒト(Engelbrecht))及び同第5,130,347号(ミトラ(Mitra))に記載されている。エチレン性不飽和部分及び酸部分の両方を含有する多種多様のこのような化合物を使用することができる。所望であれば、このような化合物の混合物を使用することができる。
酸官能基を有する更なるエチレン系不飽和化合物としては、例えば、米国特許出願公開第2004/0206932号(アブエリアマン(Abuelyaman)他)に開示されているような重合性二ホスホン酸;AA:ITA:IEM(例えば、米国特許第5,130,347号(ミトラ(Mitra))の実施例11に記載されているような、AA:ITAコポリマーを十分な2−イソシアナトエチルメタクリレートと反応させて、コポリマーの酸性基の一部分を末端メタクリレート基に変換することによって作成した、末端メタクリレートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー);並びに、米国特許第4,259,075号(ヤマウチ(Yamauchi)他)、同第4,499,251号(オムラ(Omura)他)、同第4,537,940号(オムラら)、同第4,539,382号(オムラら)、同第5,530,038号(ヤマモト(Yamamoto)他)、同第6,458,868号(オカダ(Okada)他)、及び欧州特許出願公開第712,622号(トクヤマ社(Tokuyama Corp.))及び欧州特許第1,051,961号(クラレ社(Kuraray Co.,Ltd.))に列挙されているものが挙げられる。
本明細書において開示される接着剤は、酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物の組み合わせを含む組成物を更に含むことができる。好適には接着剤は自己接着剤であり、非水性である。例えば、かかる組成物には、少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基と少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基が含まれている化合物であって、式中のxが1又は2であり、少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基と少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基がC1〜C4の炭化水素基によって接着し合っている第1の化合物と、少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基と少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基が含まれている化合物であって、式中のxが1又は2であり、少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基と少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基がC5〜12の炭化水素基によって接着し合っている第2の化合物と、酸性官能基を有していないエチレン性不法飽和化合物と、反応開始剤系と、充填剤を含有させることができる。そのような組成物は、例えば、米国仮出願第60/600,658号(ラクターハンド(Luchterhandt)他)(2004年8月11日出願)に記載されている。好ましくは、本明細書において開示される接着剤は、接着剤の全重量に基づき、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、及びより好ましくは少なくとも30重量%の、酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物を含有する。本明細書において開示される接着剤は、接着剤の全重量に基づき、最大で60重量%、好ましくは50重量%、及びより好ましくは45重量%の、酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物を含有する。
エポキシ(オキシラン)又はビニルエーテル化合物
本明細書において開示される接着剤は、更に、それらによって接着剤が形成される、エポキシ(オキシラン)化合物(カチオンにより活性化されるエポキシ基を含むもの)、又はビニルエーテル化合物(カチオンにより活性化されるビニルエーテル基を含むもの)の形態の、1個以上の硬化性成分を含むことができる。
エポキシ又はビニルエーテルのモノマーは単独又は、例えば、本明細書で開示されるエチレン性不飽和化合物などの他の種類のモノマーと組み合わせて、接着剤の硬化性成分として用いることができ、またその化学構造の一部分に、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
エポキシ(オキシラン)化合物の例としては、開環によって重合が可能なオキシラン環を有する有機化合物を含む。これらの物質は、モノマー型のエポキシ化合物及びポリマー型のエポキシドを包含し、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式であり得る。これらの化合物は、一般的に平均で、1分子あたり少なくとも1つの重合性エポキシ基を有し、一部の実施形態では少なくとも1.5、他の実施形態では1分子あたり少なくとも2つの重合性エポキシ基を有する。ポリマーのエポキシドには、末端エポキシ基を有する直鎖ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が挙げられる。エポキシドは純粋化合物であってよく、又は1分子あたり1つ、2つ、若しくはそれ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物であってもよい。分子当たりのエポキシ基の「平均」数は、エポキシ含有物質中の合計のエポキシ基の数を、存在する、エポキシを含む分子の合計数で割って決定される。
これらのエポキシ含有物質は、低分子量のモノマー性物質から高分子量のポリマーまで変化してもよく、それらの骨格鎖及び置換基の性質において大いに変化してもよい。許容される置換基の例としては、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、カルボシラン基、ニトロ基、ホスフェート基などが挙げられる。エポキシ含有材料の分子量は、58〜100,000以上で変動し得る。
本発明の方法に使用する樹脂系反応性成分として有用な好適なエポキシ含有材料は、米国特許第6,187,836号(オクスマン(Oxman)他)及び同第6,084,004号(ワインマン(Weinmann)他)に列挙されている。
樹脂系反応性成分として有用な他の好適なエポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロへキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−メチル)アジペートに代表されるエポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのシクロヘキサンオキシド基を含有するものが挙げられる。この性質を有する有用なエポキシドのより詳細な一覧は、米国特許第6,245,828号(ワインマン(Weinmann)他)及び同第5,037,861号(クリベロ(Crivello));及び米国特許第6,779,656号(クレック(Klettke)他)に述べられている。
本明細書で開示される接着剤において有用である他のエポキシ樹脂は、グリシジルエーテルのモノマーを含む。例としては、多価フェノールとエピクロロヒドリン(例えば、2,2−ビス−(2,3−エポキシプロポキシフェノール)プロパンのジグリシジルエーテル)のような過剰クロロヒドリンと反応させることで得られる多価フェノールのグリシジルエーテルである。この種のエポキシドの更なる例は、米国特許第3,018,262号(シュレーダー(Schroeder))、並びにリー(Lee)及びネビル(Neville)著、「エポキシ樹脂のハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」、(ニューヨーク:マグローヒル・ブック社(McGraw-Hill Book Co.)、1967年)に記載されている。
樹脂系反応性成分として有用な他の好適なエポキシドは、シリコンを含有するものであり、その有用な例は、国際特許出願公開WO 01/51540(クレック(Klettke)他)に記載されている。
樹脂系反応性成分として有用な更なる好適なエポキシドとしては、酸化オクタデシレン、エピクロロヒドリン、酸化スチレン、酸化ビニルシクロヘキサン、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、及び、米国特許出願公開第2005/0113477(A1)号(オクスマン(Oxman)他)に提供されているような、他の市販されているエポキシド類が挙げられる。
様々なエポキシ含有物質のブレンドもまた企図される。そのような混合物の例としては、低分子量(200未満)、中分子量(200〜10,000)及び高分子量(10,000超)のような2つ以上の重量平均分子量分布を有するエポキシ含有化合物が挙げられる。あるいは又は更に、エポキシ樹脂は、脂肪族及び芳香族ような異なる化学的性質、又は極性及び非極性のような異なる官能基を有する、エポキシ含有物質のブレンドを含有してもよい。
カチオン系活性官能基を有する有用な硬化性成分の他の型としては、ビニルエーテル、オキセタン、スピロオルトカーボネート、スピロオルトエステルなどが挙げられる。
所望であれば、カチオン系活性官能基及び遊離活性官能基の双方を単一分子内に含有してもよい。こうした分子は、例えば、ジ−又はポリエポキシドと1当量以上のエチレン系不飽和カルボン酸とを反応させることにより得られてもよい。こうした物質の例は、UVR−6105(ユニオンカーバイド(Union Carbide)から入手可能)と1当量のメタクリル酸との反応生成物である。エポキシ及び遊離活性官能基を有する市販材料としては、日本のダイセル化学(Daicel Chemical)から入手可能なCYCLO(登録商標)MER M−100、M−101、又はA−200のようなCYCROMERシリーズ、及びジョージア州アトランタ(Atlanta)のラッドキュアー・スペシャルティズ(Radcure Specialties)、UCBケミカルズ(UCB Chemicals)から入手可能なEBACRYL−3605が挙げられる。
カチオン系の硬化性成分は、ヒドロキシル含有有機物質を更に包含してもよい。適切なヒドロキシを含む物質は、少なくとも1つの、好適には少なくとも2つのヒドロキシ官能基を有する任意の有機物質であってよい。好適にはヒドロキシを含む物質は、2つ以上の1級又は2級の脂肪族ヒドロキシ基(即ち、ヒドロキシ基は非芳香族性炭素原子に直接的に結合する)を含む。ヒドロキシル基は末端に位置し得るか、又はそれらは、ポリマー若しくはコポリマーのペンダントであり得る。ヒドロキシル含有有機物質の分子量は、極低(例えば、32)〜極高(例えば、100万以上)で変動できる。好適なヒドロキシル含有材料は、低分子量(つまり、32〜200)、中分子量(つまり、200〜10,000)、又は高分子量(つまり、10,000超)を有することができる。本明細書で使用するとき、すべての分子量は重量平均分子量である。
ヒドロキシル含有材料は天然で非芳香族であるか、芳香族基を含有してよい。ヒドロキシル含有材料は、窒素、酸素、硫黄などのような分子の骨格鎖内にヘテロ原子を含有する。ヒドロキシ含有材料は、例えば、天然由来又は人工調製されたセルロース性材料から選択されてよい。ヒドロキシ含有材料は、熱不安定性基又は光分解不安定性基を実質的に含むべきではない;つまり、材料は、100℃未満の温度において、又は重合性組成物における所望の光重合条件中に発生し得る化学光の存在下で揮発性成分を分解又は遊離すべきではない。
本発明の方法に有用な好適なヒドロキシル含有物質は、米国特許第6,187,836号(オクスマン(Oxman)他)に列挙されている。
硬化性成分は、ヒドロキシル基及びカチオン系活性官能基を単一分子内に含有してもよい。一例としては、ヒドロキシル基及びエポキシ基の双方を含む単一分子である。
ガラスアイオノマー
本明細書に記載された接着剤は、例えば、典型的にその主成分として、エチレン性不飽和カルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、コポリ(アクリル、イタコン酸)など)のホモポリマー又はコポリマー、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラス、水、及び例えば酒石酸などのキレート化剤を使用する従来のガラスアイオノマーセメントなどのガラスアイオノマーセメントを含むことができる。従来のガラスアイオノマー(即ち、ガラスアイオノマーセメント)は、典型的には、使用直前に混合される典型的に粉末/液体の処方で提供される。ポリカルボン酸の酸性反復単位とガラスから浸出するカチオンとの間におけるイオン性反応に起因して、混合物は暗所で自己硬化を行うことになる。
ガラスアイオノマーセメントは、更に樹脂修飾ガラスアイオノマー(「RMGI」)セメントも含むことができる。従来のガラスアイオノマーと同様に、RMGIセメントはFASガラスを用いる。しかしながら、RMGIの有機部分は異なる。RMGIの1つの型において、ポリカルボン酸は、酸性反復単位の幾つかが側鎖硬化可能基で置換するか、又はエンドキャップするように変性され、例えば、米国特許第5,130,347号(ミトラ(Mitra))に記載されるような第2硬化機構を提供するために、光反応開始剤が付加される。側鎖硬化可能基としては、通常、アクリレート又はメタクリレート基が用いられる。別の型のRMGIでは、セメントは、ポリカルボン酸、アクリレート又はメタクリレートの機能を有するモノマー、及び例えば、マシス(Mathis)他著、「新しいガラスアイオノマーの性質/複合樹脂ハイブリッド(Properties of a New Glass Ionomer/Composite Resin Hybrid Restorative)」、要旨No.51、J.Dent Res.,66:113(1987)及び米国特許第5,063,257号(アカハネ(Akahane)他)、同第5,520,725号(カトウ(Kato)他)、同第5,859,089号(シン(Qian))、同第5,925,715号(ミトラ(Mitra))及び同第5,962,550号(アカハネ(Akahane)他)にあるような光開始剤を含む。別の種類のRMGIでは、セメントは、ポリカルボン酸、アクリレート官能性モノマー、又はメタクリレート官能性モノマー、及び酸化還元硬化系又は例えば、米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)他)、同第5,520,725号(カトウ(Kato)他)及び同第5,871,360号(カトウ(Kato))に記載されるような他の化学硬化系を含むことができる。RMGIの他の種類では、セメントとしては、米国特許第4,872,936号(エンゲルブレヒト(Engelbrecht))、同第5,227,413号(ミトラ(Mitra))、同第5,367,002号(ファン(Huang)他)、及び同第5,965,632号(オルロフスキ(Orlowski))に記載されるような様々なモノマー含有又は樹脂含有成分が挙げられる。RMGIセメントは、好ましくは、粉末/液体又はペースト/ペースト系として処方され、混合及び塗布される水を含有する。ポリカルボン酸の酸性反復単位とガラスから浸出するカチオンの間のイオン性の反応に起因して、接着剤は、暗所で硬化することができ、商業的なRMGI製品も、典型的には、セメントの歯科用硬化ランプからの光への曝露により硬化する。酸化還元硬化系を含み、かつ化学線照射を用いることなく暗所で硬化できるRMGIセメントは、米国特許第6,765,038号(Mitra)に記載されている。
硬化剤
光開始剤系
特定の実施形態では、本発明の接着剤は、光重合可能であり即ち硬化性成分は光重合性であり、及び硬化剤は光開始剤(又は光開始剤系)を包含し、化学線による照射によって接着剤の重合(又は硬化)を開始する。かかる光重合性組成物は、フリーラジカル重合可能であるか、又はカチオン重合可能であることができる。
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるのに好適な光開始剤(即ち、1種以上の化合物を含む光開始剤系)としては、2元系及び3元系が挙げられる。典型的な3元光開始剤としては、米国特許第5,545,676号(パラゾット(Palazzotto)他)に記載されているような、ヨードニウム塩、光増感剤、及び電子供与体化合物が挙げられる。好適なヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボラート、及びトリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである。好適な光増感剤は、400nm〜520nm(好適には、450nm〜500nm)の範囲内のいくらかの光を吸収するモノケトン及びジケトンである。より好適な化合物は、400〜520nm(更により好適には、450〜500nm)の範囲にある光の一部を吸収するα−ジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン及び他の1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオン、並びに環状α−ジケトンである。最も好ましいのは、カンファーキノンである。好ましい電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば、エチルジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。カチオン系重合可能樹脂を光重合させるために有用な他の好適な3元光反応開始剤系は、例えば米国特許第6,765,036号(デデ(Dede)他)に記載されている。
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるための他の好適な光開始剤としては、典型的に380nm〜1200nmの機能的波長範囲を有するホスフィンオキシドの部類が挙げられる。好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル反応開始剤は、380nm〜450nmの機能的波長範囲を有し、米国特許第4,298,738号(レッケン(Lechtken)他)、同第4,324,744号(レッケン他)、同第4,385,109号(レッケン他)、同第4,710,523号(レッケン他)、及び同第4,737,593号(エルリッヒ(Ellrich)他)、同第6,251,963号(コーラ−(Kohler)他)、及び欧州特許出願公開第0173567(A2)号(イン(Ying))に記載されているもののようなアシル及びビスアシルホスフィンオキシドである。
380nm〜450nmの波長範囲の光を照射するとフリーラジカルによる反応開始が可能な市販のホスフィンオキシド光反応開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)819、チバスペシャリティーケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州、タリータウン(Tarrytown)))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403、チバスペシャリティーケミカルズ)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの25:75重量混合物(イルガキュア1700、チバスペシャリティーケミカルズ)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの1:1重量混合物(ダロキュア(DAROCUR)4265、チバスペシャリティーケミカルズ)、及びエチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(ルシリン(LUCIRIN)LR8893X、BASF社(ノースカロライナ州、シャーロット(Charlotte)))が挙げられる。
典型的には、ホスフィンオキシド開始剤は、光重合可能な組成物中に、接着剤の全重量に基づき、例えば、0.1重量パーセント〜5.0重量パーセントなどの触媒的に有効な量で存在する。
三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。本発明で有用な三級アミンの一例としては、エチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。存在する場合、アミン還元剤は、光重合可能な組成物中に、接着剤の全重量に基づき、0.1重量パーセント〜5.0重量パーセントの量で存在する。その他の反応開始剤の実用的な量は、当業者には周知である。
カチオン性光重合性組成物の重合に好適な光開始剤は、2元系及び3元系が挙げられる。典型的な三要素光反応開始剤としては、欧州特許第0897710号(ウェインマン(Weinmann)他);米国特許第5,856,373号(カイサキ(Kaisaki)他)、同第6,084,004号(ウェインマン(Weinmann))、同第6,187,833号(オックスマン(Oxman)他)、及び同第6,187,836号(オックスマン(Oxman)他);及び米国特許第6,765,036号(デデ(Dede)他)に記載されるようなヨードニウム塩、光増感剤、及び電子供与化合物が挙げられる。本発明の接着剤は、1つ以上の、アントラセンを主成分とする化合物を電子供与体として含むことができる。いくつかの実施形態では、接着剤は、複数置換アントラセン化合物又は置換アントラセンと無置換アントラセンとの混合物を含む。光反応開始剤系の一部としてのこれらの混合アントラセン電子供与体を組み合わせることによって、同マトリックスにおける単一供与体光反応開始剤系と比較した際、著しい硬化深さ及び硬化速度及び温度非感受性の向上がもたらされる。アントラセン系電子供与体を有するかかる組成物は、米国特許出願公開第2005/0113477(A1)号(オクスマン(Oxman)他)に記載されている。
好適なヨードニウム塩としては、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル−フェニル)ボレート)、及び例えばジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートなどのジアリールヨードニウム塩が挙げられる。好適な光増感剤は、450nm〜520nm(好適には、450nm〜500nm)の範囲内でいくらかの光を吸収するモノケトン及びジケトンである。より好適な化合物は、450nm〜520nm(更により好適には、450nm〜500nm)の範囲内でいくらかの光を吸収するα−ジケトンである。好適な化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン及び他の環状αジケトンである。最も好適なのは、カンファーキノンである。好適な電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート及び2−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート並びに多縮合芳香族化合物(例えばアントラセン)が挙げられる。
開始系又は硬化剤は、所望の硬化率(例えば、重合及び/又は架橋)をもたらすのに十分な量で存在する。光反応開始剤において、この量は、光源、放射エネルギーに曝露される層の厚さ、及び光反応開始剤の吸光係数に部分的に依存するであろう。硬化剤は、接着剤の全重量に基づき、好ましくは全量として少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.03重量%、及び最も好ましくは少なくとも0.05重量%存在する。硬化剤は、接着剤の全重量に基づき、好ましくは10重量%程度であり、より好ましくは5重量%程度であり、最も好ましくは2.5重量%程度である。
酸化還元反応開始剤系
特定の実施形態では、本発明の接着剤は化学的に硬化可能であり、即ち、接着剤が、化学線による照射に依存することなく、重合させ、硬化させ、ないしは別の方法で接着剤を硬化させる化学的に硬化可能な成分及び化学的開剤(即ち、開始剤系)を含有している。かかる化学的接着剤は、時により、「2成分」又は「自己硬化」組成物と称され、ガラスアイオノマーセメント、樹脂修飾されたガラスアイオノマーセメント、酸化還元硬化系及びそれらの組み合わせを含み得る。
化学的接着剤は、硬化性成分(例えば、エチレン性不飽和重合可能成分)並びに、酸化剤及び還元剤を含む酸化還元剤を含む酸化還元系を含むことができる。本発明に有用な硬化性成分、酸化還元剤、任意の酸官能性成分、及び任意の充填剤は、米国特許第6,982,288号(ミトラ(Mitra)他)及び同第7,173,074号(ミトラ他)に記載されている。
還元剤及び酸化剤は、共に反応すべきであるか、さもなくば、お互いに協同して樹脂系(例えば、エチレン性不飽和成分又は硬化性成分)の重合を開始する能力のあるフリーラジカルを生成すべきである。この種類の硬化は暗反応であり、即ち、光の存在に依存せず、かつ光が存在しない状態で進行可能である。還元剤及び酸化剤は、好適には十分に貯蔵安定性があり、望ましくない着色がなく、典型的な歯科条件においての保存及び使用を可能にする。それらは、接着剤の他の成分への速やかな溶解(及びそれからの分離の阻止)を可能とするために、樹脂系と十分に混和性(及び好適には水溶性)がなければならない。
有用な還元剤類としては、米国特許第5,501,727号(ワン(Wang)他)に記載されているようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び金属錯体アスコルビン酸化合物、アミン、特に三級アミン、例えば、4−tert−ブチルメチルアニリン、芳香族スルフィン酸塩、例えば、p−トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩、チオ尿素、例えば、1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び1,3−ジブチルチオ尿素、及びそれらの混合物が挙げられる。他の二次的な還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第1鉄、硫酸第1鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、亜ジチオン酸塩又は亜硫酸塩アニオンの塩、及びそれらの混合物を包含してもよい。好適には、還元剤はアミンである。
好適な酸化剤はまた、当業者によく知られており、また過硫酸及びその塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム、及びアルキルアンモニウム塩が挙げられるが、それらに限定されない。追加の酸化剤としては、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)、ヒドロペルオキシド(例えば、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシド)、並びに遷移金属の塩(例えば塩化コバルト(III)及び塩化第2鉄、硫酸セリウム(IV))、過ホウ酸並びにそれらの塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。
1種を超える酸化剤又は1種を超える還元剤を使用することが望ましい場合がある。少量の遷移金属化合物を添加して、酸化還元硬化速度を速めることもできる。ある実施形態では、米国特許第6,982,288号(ミトラ(Mitra)他)に記載されているように、重合性組成物の安定性を増強するために、二次的なイオン性塩を包含することが好ましい場合がある。
還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を得るのに十分な量で存在する。このことは、充填剤を除く接着剤の全ての成分を混合して、硬化した塊が得られるか否かを観察することで評価することができる。
還元剤は、接着剤の成分の総重量(水を含む)に基づき、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在する。還元剤は、接着剤の成分の全重量(水を含む)に基づき、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
酸化剤は、接着剤の成分の全重量(水を含む)に基づき、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在する。酸化剤は、接着剤の成分の全重量(水を含む)に基づき、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%の量で存在する。
還元剤又は酸化剤は、米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)他)に記載されているように、マイクロカプセル化することができる。このことは一般的に接着剤の貯蔵安定性を増大させ、及び必要な場合には還元剤と酸化剤の同梱を可能とする。例えば、カプセル化用材料を適切に選択することにより、酸化剤及び還元剤を酸官能性成分及び任意の充填剤と共に組み合わせ、保管安定性状態に維持することができる。同様に、非水溶性カプセル化用材料を適切に選択することにより、酸化剤及び還元剤をFASガラス及び水と共に組み合わせ、安定した保管状態に維持することができる。
酸化還元硬化系は、他の硬化系、例えば、米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)他)に記載されたような接着剤と混合することができる。
任意の添加剤
光退色性色素及びサーモクロミック染料
いくつかの実施形態では、本発明の接着剤は、好適には患者の歯の色とは著しく異なる初期色を有する。好適には、色は、光退色性色素又はサーモクロミック染料の使用により接着剤に付与される。接着剤は、接着剤の全重量に基づき、好ましくは少なくとも0.001重量%の光退色性色素又はサーモクロミック染料を、より好ましくは少なくとも0.002重量%の光退色性色素又はサーモクロミック染料を含む。接着剤は、接着剤の全重量に基づき、好ましくは最大1重量%、より好ましくは最大0.1重量%の光退色性色素又はサーモクロミック染料を含む。光退色性及び/又はサーモクロミック色素の量は、吸光係数、初期の色を識別する人の目の能力、及び所望の色の変化に応じて異なってもよい。好適なサーモクロミック色素が、例えば米国特許第6,670,436号(バーガス(Burgath)他)において開示されている。
光退色性染料を含む実施形態において、光退色性染料の色形成及び退色特性は、例えば、酸強度、誘電率、極性、酸素量、及び大気の湿分含量を含む様々な要因によって変動する。しかしながら、色素の退色性は、接着剤を照射し、色の変化を評価することにより容易に決定することができる。好ましくは、少なくとも1つの光退色性色素は、少なくとも部分的に硬化性樹脂に可溶である。
光退色性色素の代表的な部類が、例えば、米国特許第6,331,080号(コール(Cole)他)、同第6,444,725号(トロム(Trom)他)、及び同第6,528,555号(ニクトウスキー(Nikutowski)他)において開示されている。好ましい色素には、例えば、ローズベンガル(Rose Bengal)、メチレンバイオレット(Methylene Violet)、メチレンブルー(Methylene Blue)、フルオレセイン(Fluorescein)、エオシンイエロー(Eosin Yellow)、エオシンY(Eosin Y)、エチルエオシン(Ethyl Eosin)、エオシンブルイッシュ(Eosin bluish)、エオシンB(Eosin B)、エリトロシンB(ErythrosinB)、エリトロシンイエロイッシュブレンド(Erythrosin Yellowish Blend)、トルイジンブルー(Toluidine Blue)、4’,5’−ジブロモフルオレセイン(4’,5’-Dibromofluorescein)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
本発明の組成物における色変化は、光によって開始する。好適には、接着剤の色の変化は、例えば、可視光又は近赤外(IR)光を十分な量の時間放射する歯科用硬化ライトの使用による化学線を用いることにより開始される。本発明の接着剤において、色変化を開始する機構は、樹脂の硬化機構とは別のものでも、又は実質的に樹脂の硬化機構と同時に起こるものでもよい。例えば、重合が化学的(例えば酸化還元開始)又は熱的に開始する際に組成物は硬化され、初期色から最終色までの色変化は化学線への曝露の際の硬化プロセスに続いて起こることができる。
組成物における初期色から最終色までの色変化は、好適には比色試験によって定量化される。比色試験を用いて、3次元の色空間での合計の色の変化を示す、ΔEの値が決定される。標準の照明条件下で、人間の目は、約3ΔE単位の色の変化を検知できる。本発明の接着剤は、好適には少なくとも20のΔE、より好適には少なくとも30のΔE、最も好適には少なくとも40のΔEの色の変化を有する能力がある。
各種の添加剤
任意に、本発明の組成物は、溶媒(例えば、アルコール(例えば、プロパノール、エタノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、他の非水性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリジノン))、及び水を含有してもよい。
所望の場合、本発明の接着剤は、指示薬、染料、顔料、阻害剤、促進剤、粘度調整剤、湿潤剤、緩衝剤、安定化剤、及び当業者に周知の他の同様の成分を包含し得る。粘度調整剤は、熱感応性粘度調整剤(例えば、BASFワイアンドット社(BASF Wyandotte Corporation)、ニュージャージー州パーシパニー(Parsippany)から入手可能なプルロニック(PLURONIC)F−127及びF−108など)を包含し、調整剤上の重合性部分又は調整剤と異なる重合性成分を任意に包含してもよい。このような熱感応性粘度調整剤は、米国特許第6,669,927号(トロム(Trom)他)及び米国特許出願公開第2004/0151691号(オクスマン(Oxman)他)に記載されている。
更に、所望により薬剤及び他の治療用物質を接着剤に加えることができる。例としては、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどのフッ化物源、白色剤、虫歯予防剤(例えば、キシリトール)、カルシウム源、リン源、ミネラル補給剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、呼気清浄化剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫応答調節剤、チキソトロープ、ポリオール、抗炎症剤、抗菌剤(抗菌性脂質成分に加えて)、抗真菌剤、口内乾燥治療のための薬剤、脱感作剤及びしばしば接着剤において使用されるものなどが挙げられるがこれに限定されない。上述のいずれかの添加剤の組み合わせを用いてもよい。当業者は、所望の結果を達成するために、過度な実験をすることなく、かかる添加剤の任意の1種の選択及び量を選ぶことができる。
パッケージ化物品、キット及び方法
更なる実施形態においては、本発明に従う包装された装具及びキットは、本発明の接着剤により被覆された歯科矯正用装具を含む。かかる例示的な実施形態の1つが図2に示されている。図2において、例示的な装具10は、歯組織に接着するための基部14を有する歯科矯正用装具12を含む。この例示的な装具12は、歯科矯正用ブラケット、バッカルチューブ、リンガル・ボタン(lingual buttons)、リンガル・シース(lingual sheaths)、クリート(cleats)及び歯科矯正用バンドを含む様々な歯科矯正用装具の1つを代表している。これれの装具は、金属、プラスチック、セラミック及びそれらの組み合わせにより形成され得る。好適には、基部14の底表面は、患者の歯表面の凸部の複合輪郭(図示されていない)に一致する凹型の複合輪郭を有する。任意に、基部14の底表面には、患者の歯への装具12の直接的な接着を促進するための、溝、粒子、凹部、アンダーカット、化学結合増強物質、若しくは任意の他の物質若しくは構造又はそれらの組み合わせが備えられる。装具12は、更に基部14に接触する接着剤16を含む。接着剤16の特性に関する詳細はすでに詳細に記載されており、ここでは繰り返さない。
装具12が任意に1つ以上の基部14及び/又は接着剤16に接触する、1つ以上の付加的な接着剤の層(例えば、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、又はそれらの組み合わせであり、図2には図示されていない)を含み得ることが理解されるべきである。特に、かかる付加的な層(単層又は複数の層)は、基部14と接着剤16の間、基部14に向かい合った接着剤16の上、又はその両方に存在できる。かかる層は、同一の範囲を被覆しても、又は被覆しなくてもよく、及び、独立して、基部14の全体若しくは一部に延伸する、不連続的な(例えば、パターン化された層)又は連続的な(例えば非パターン化されている)物質であってよい。
好適には、また図示されているように、表面27を含む剥離基材25が接着剤16に接触している。剥離基材25は、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及びポリ(テトラフルオロエチレン)を含む多数の物質から選択できる。任意に、剥離基材25の表面27は、いくつもの孔を含み、及び好適には接着剤16の50重量%未満が孔内にある。特定の実施形態においては、剥離基材25は、例えば米国特許第6,183,249号(ブレナン(Brennan)他)に開示されるような独立気泡発泡体物質を含む。
物品10は、好適には、光及び/又は水蒸気の透過に対する障壁を与える容器内に包装されている。本発明のいくつかの実施形態においては、物品10は好適にはキットとして提供される。他の実施形態においては、本発明は好適には歯科矯正用装具12を歯に接着する方法を提供し、この接着剤は、1つ以上の上記の種類の充填剤を含む。
本発明の接着剤は、更に間接的な接着方法にも適応され得る。間接的な接着方法を目的として、一般には取り付け装置又はトランスファートレーを用いて患者の歯組織へと後に取り付けられるカスタムベースを提供するために、典型的に歯科矯正用装具は例えば患者の歯列弓のレプリカ・モデル(歯科矯正用石膏又は硬化させたエポキシから作成されるようなもの)上に取り付けられる。1実施形態においては、歯科矯正用装具のそれぞれの基部には、レプリカ・モデルに接着するための接着剤が被覆されている。したがって、接着剤は、例えば接着剤の硬化時に、特注の土台を形成するためにレプリカ・モデル上に着座させられることができる。例示的な間接的接着法は、より詳細に米国特許第7,137,812号(クレアリー(Cleary)他)に記載されている。
図3を参照して、別の実施形態においては、本発明は歯科矯正用装具12aを含むパッケージ化物品10aを提供する。装具12aは装具12aを患者の歯組織(図示されていない)に直接接着するための基部14aを有する。接着剤16aはブラケット12aの基部14aの全域にわたり延在する。ブラケット12a及び接着剤16aは、少なくとも部分的に容器18aにより囲まれている。図3に図示されている容器18aは、凹部すなわち孔20aを画成する内部壁部分を有する一体成形された本体を含む。孔20aは側壁及び底面22aを含む。付加的な選択肢として、孔20aの側壁30aは、キャリア24aの端構造と係合するための水平に延伸する凹部を含む。適切なキャリア24aに関する付加的な情報は、米国特許第5,328,363号(チェスター(Chester)他)に提示されている。好適には、孔20aの底面22aは、剥離基材25aを含む。好適には、物品10aは更にタブ28aを有するカバー26aを含み、カバー26aは、剥離可能に容器18aに、例えば接着剤30aによって結合されている。
好適な実施形態においては、長期間の後にさえも、容器は接着剤(単数又は複数の接着剤)の分解(例えば、光重合可能な化合物)に対して優れた保護を与える。かかる容器は、前述のように接着剤が、接着剤に色変化の特性を付与する染料を任意に含む実施形態において、特に有用である。かかる容器は、好適には、効果的に広いスペクトル領域にわたる化学線の通過を遮断し、その結果、保存期間中に接着剤が望ましくない早い時期に失色しない。
好適な実施形態においては、容器18aはポリマー及び金属粒子を含む。例として、容器18aは、アルミニウム充填剤で構成されるか、又は米国特許公開第2003/0196914(A1)号(ツオウ(Tzou)他)に開示されているような、アルミ粉末の被覆を施されたポリプロピレンで形成されることができる。ポリマー及び金属粒子の組み合わせは、色変化染料が光に対して高度に感受性であることが知られているにも関わらず、色変化染料への化学線照射の通過の遮断に高度に有効である。かかる容器もまた、良好な蒸気バリア性も示す。結果として、接着剤(単数又は複数の接着剤)のレオロジー的特性は、長期間にわたって、変化することが少ない。例えば、かかる容器の改善された蒸気バリア性は、接着剤が望ましくない早い時期に硬化若しくは乾燥したり、又は別な方法で不満足な状態にならないように、接着剤の取り扱い特性の低下に対して実質的な保護を提供する。かかる容器のための適切なカバー26は、接着剤が望ましくない早い時期に硬化しないように、化学線の透過に対して本質的に不透明な任意の物質により形成することができる。カバー26のために好適な材料の例には、アルミホイルとポリマーのラミネートが挙げられる。例えば、このラミネートは、ポリエチレンテレフタレート、接着剤、アルミホイル、接着剤、及び配向ポリプロピレンの層を含んでもよい。
いくつかの実施形態においては、包装された装具は、1組の2つ以上の歯科矯正用装具を含むことができ、少なくとも1つの装具には、その表面上に接着剤を有する。装具及び1組の装具の付加的な例は、米国特許出願第2005/0133384(A1)号(シナダー(Cinader)他)に記載されている。パッケージ化歯科矯正装具は、例えば、米国特許出願公開第2003/0196914(A1)号(ツオウ(Tzou)他)、及び米国特許第4,978,007号(ジェイコブス(Jacobs)他)、同第5,015,180号(ランドクレフ(Randklev))、同第5、328、363号(チェスター(Chester)他)、及び同第6、183、249号(ブレナン(Brennan)他)に記載されている。
更に別の実施形態は、歯の表面から接着剤を除去する方法を提供する。この方法においては、歯の表面が提供され、本発明の硬化した接着剤はこの歯の表面の少なくとも1部分上に存在する。この場合の用語「歯」は、患者の実際の歯ばかりではなく、歯科矯正用石膏又は硬化したエポキシモデルにより与えられる患者の歯の物理的なレプリカをも表す。この方法は更に、歯から硬化した接着剤を除去するために、歯の表面に5未満のモース硬度である研磨剤を塗布することを含む。特定の実施形態では、研磨剤は4.5未満、4未満、又は3.5未満のモース硬度を有する。
この研磨剤は、仕上げ用ディスク又は砂で覆われたサンドペーパーなどの物体に被覆された研磨粒子の形態をとることができる。適切な被覆された研磨剤の1例は、3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul))のSOF−LEX仕上げディスクである。仕上げ用ディスクには、10,000rpmの回転速度を用いることができる。代替法として、通常接着に先立って患者の歯の清掃に用いられる予防的(又はプロフィー(prophy))処置を用いることができる。プロフィー処置は、歯科用品販売業者から入手可能な軽石粉を含んでよい。プロフィー・カップ及びプロフィー・アングルと共に微細な、中程度の又は粗い粒子の軽石(プロフィー・ペースト)を用いてよい。仕上げ用ドリル錐又は例えば歯石除去器などの刃付の歯科用手工具も用いてよい。
本発明の目的及び利点を以下の実施例で更に例示する。しかしながら、これらの実施例に列挙される特定の物質及びその量は、他の条件及び詳細と共に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。他に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。特に注記されない限り、全ての試薬はシグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Corp.)(ミズリー州セントルイス(St. Louis))から入手された。
本明細書で使用するとき、
「ビスGMA」は、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]プロパンを指し、
「ビスEMA」は、エトキシ化(2モルのエチレンオキシド)ビスフェノールAジメチルアクリレートを指し、
「BHT」は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを指し、
「CPQ」は、カンファーキノンを指し、
「EDMAB」はエチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートを指し、
「ヨードニウムPF 」は、ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを指し、
「HEMA」は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを指し、
「TEGDMA」は、テトラエチレングリコールジメチルアクリレートを指し、
「UDMA」はウレタンジメタクリレートを指し、
「SR340」は、サートマー社(Sartomer Company,Inc.)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))から入手可能な2−フェノキシエチルメタクリレートを指し、
「PMMA」は、米国特許出願第5,238,736号(ツェン(Tseng)他)の比較例8において、調製され記載されている架橋したポリ(メチルメタクリレート)充填剤を指し、
「PSt」は、米国特許出願第5,238,736号(ツェン他)の比較例9において、調製され記載されているポリ(スチレン)充填剤を指し、
「P(St−EMA)」は、米国特許出願第5,238,736号(ツェン他)において開示される方法を用いて調製される(スチレン−r−エチル(メタクリレート))コポリマー充填剤を指し、
「MRD PMMA 20−1」、「MRD PMMA 20−3」は、米国特許出願第5,238,736号(ツェン他)において開示される方法を用いて調製される、2つの異なる粒径分布を有するポリ(メチルメタクリレート)充填剤を指し、
「MR−2HG」は、綜研社(Soken Inc.(日本国、東京))から入手可能な2マイクロメートルの直径のPMMA微粒子を指し、
「MR−7HG」は、綜研社(Soken Inc.(日本国東京))から入手可能な7マイクロメートルの直径のPMMA微粒子を指し、
「MR−10HG」は、綜研社(Soken Inc.(日本国東京))から入手可能な10マイクロメートルの直径のPMMA微粒子を指し、
「MR−7G」は、綜研社(Soken Inc.(日本国東京))から入手可能な7マイクロメートルの直径のPMMA微粒子(削減された架橋を有する)を指し、
「S/Tショット(Schott)ガラス」は、国際特許出願公開第00/69393号(ブレナン(Brennan)他)の調製例1において調整され記載される、シラン処理されたフルオロアルミノシリケートガラスを指し、
「微細に分割されたPMMA」は、15,000g/molの分子量を有するポリ(メチルメタクリレート)のバルク粉末から粉砕されたポリ(メチルメタクリレート)充填剤を指し、
「S/Tコンサイス(Concise)充填剤」は、米国特許第6,960,079号(ブレナン(Brennan)他)において「充填剤A」として調製され記載されるシラン処理された石英充填剤を指す。
せん断接着強度試験
せん断接着強度測定は、洗浄され、円形ポリメチルメタクリレートディスクに舌側の歯表面を露出させて部分的に埋め込まれた、未切断の牛歯で行なわれた。全ての歯は、Oral−Bブランドの中型軽石粉末(パターソン社(Patterson Companies,Inc.)(ミネソタ州セントポール(St. Paul))製)を用いる更なる30秒間のプロフィー処置、水によるすすぎ処理、及び接着直前にエアー・シリンジを用いる乾燥を受けた。次いで、乾燥したエナメル質にTRANSBOND PLUSブランドの自己エッチング・プライマー(3Mユニテック(3M Unitek)(カリフォルニア州モンロビア(Monrovia)))を、準備されたミクロブラシにより歯上にこすりこんで、エッチングと下塗りを行った。プライマーを薄く塗布するためと、歯の表面のプライマーを乾燥させて接着するために、穏やかな空気炸裂を用いた。次いで、約10mgの試験接着剤をビクトリー・シリーズ(VICTORY SERIES)ブランドの上部中央薄型ブラケット(部品番号024−775、3Mユニテック(カリフォルニア州モンロビア)製)の基部に塗布し、被覆されたブラケットを歯の表面にしっかりと着座させる。ブラケット基部周辺の周りに搾り出された過剰の接着剤は、0/1マーケット・コンデンサー(Marquette Condenser)(部品番号PLG0/1、フ・フリーディー(Hu−Friedy)(イリノイ州シカゴ(Chicago)))を用いて、不注意によりブラケットの位置を乱さないよう注意しながら、実質的に除去される。次いで、3M ESPE ELIPARブランドのTRILIGHT硬化ライト・ユニット(3M ESPE(ミネソタ州セントポール))を用いて、ブラケットの2つの対向する側面の化学線への10秒間の曝露により接着剤を光硬化した。上記の処理は、完全な複製されたサンプルのセットを得るために、接着試験試料の数に応じて必要なだけ繰り返された。全ての試料が完全に接着された後、37℃に維持された水に24時間浸漬された。
それぞれの試験試料に対する剥離は、500Nのロードセルを取り付けたR−5500ユニバーサル試験機械(Universal Test Machine)(インストロン(Instron)(マサチューセッツ州ノーウッド(Norwood))製)により行われた。それぞれの剥離では、試験試料は固定具に取り付けられ、次いで、クロスヘッドに固定された0.44mm(0.017インチ)の直径のステンレススチールのワイアを、ブラケットの咬合タイウイングの下部で輪にし、せん断破壊が観察されるまでクロスヘッドを1分当たり5.1mm(0.20インチ)の率で上方に平行移動させる。力の生データを、既知のブラケットベース面積(ビクトリー・シリーズブランドの上部中央薄型ブラケットについて、10.6mm又は0.0164インチ)を用いて、単位面積当たりの力(kg/cm又はMPa)へと変換したそれぞれの試験された接着剤について、少なくとも5回の反復試験測定について、せん断接着力の平均と標準偏差が記録された。試験の間の一貫性を維持するために、1組に含まれる全ての接着剤は、ただ一人のオペレーターにより並列して試験され、及び周囲の温度と湿度は試験中を通じて可能な限り一定に保たれた。
いくつかの場合、及び注記される場合には、上記のビクトリー・シリーズブランドのブラケットは、例えば、CLARITY MBTブランドの上部左方中央セラミックブラケット(P/N 6400−801、3Mユニテック(3M Unitek(カリフォルニア州モンロビ))製)、ミニ・ダイアモンド(MINI-DIAMOND)ブランドの下部右方中央ブラケット(部品番号455−0610、オームコ社(Ormco Corporation)(カリフォルニア州グレンドラ(Glendora))製)などの他の歯科矯正用ブラケットで置き換えられた。その他の操作手順は同一である。
粒径測定
充填剤粒子のサイズの中央値及びサイズ分布は、ベックマン−コウルター(Beckman-Coulter(カリフォルニア州フラートン(Fullerton)))製のモデルLS 13 320粒径分析器を用いて得られた。典型的な操作手順では、100mgの充填剤粉末を、1%CALGONブランドの水溶液及び10滴のLIQUI−NOXブランドの洗剤(アルコノックス社(Alconox Inc.)(ニューヨーク州ホワイトプレインズ(White Plains))製)に分散させた。この懸濁物を、超音波ホーンを用いた高強度の超音波に60秒曝露した。この間、この懸濁物を加温し、沈降を防ぐために回転状態でバイアル中に保った。これらの懸濁物を用いて粒径分析器によりデータ採集を行った。データ解析は、計算に屈折率の算入を必要としないフラウンホーファー(Fraunhofer)の等式を用いるか、又は屈折率を組み込む偏光散乱強度差モデル(polarization intensity differential scattering:PIDS)を用いる、製造時に組み込まれたソフトウエアにより遂行した。粒径データは、粒子の半径分布よりも、むしろ容積分布を用いる粒径中央値(d50)として記録された。全ての記録された値は、3回の反復する粒径測定の平均を表している。
ブエラー(Buehler)磨耗試験
歯科矯正用装具の剥離に続いて、エナメル質表面からの硬化した接着剤の除去の容易度を測定するために、硬化した接着剤の長方形の切り取り試片に対して磨耗試験が行われた。これらの長方形の切り取り試片を準備して光硬化させるために、硬化していない接着剤のペーストを内部チャンバーのサイズが2.1cm(0.83インチ)×1.5cm(0.59インチ)×0.183cm(0.0720インチ)であるステンレススチールの金型内に押圧した。それぞれの試片を、カーバー・モデル(Carver Model)3912実験室プレス機(カーバー社(Carver,Inc.)(インジアナ州ワバッシュ(Wabash))を用いて、34.47MPa(5000psi)の圧力で60秒間押圧した。その後直ちに、押圧物にタングステン・ハロゲン・ライト、次いで高強度のパルス化キセノン光源(クルツァー(Kulzer)UniXS(ドイツ、ハーナウ(Hanau))を用いて120秒間照射することにより接着剤を光硬化させた。より完全な硬化を得るために、引き続く金型からの除去の後、試片は、再び光源から約2.5cm(1インチ)離して、高強度のパルス化キセノン光源を用いてそれぞれの側面に対して90秒間照射した。
1対の試片試料を秤量し、次いでブエラー・グラインダー−研磨機モデル49−1775−160(ブエラー有限責任会社(Buehler,Ltd.)(イリノイ州ブラフ(Bluff))製)の回転プラテンに、試料の長手側面が回転方向に直交して配向されるように直径方向に対向する位置に取り付けた。試料を回転プラテンに貼り付けるために両面気泡テープ(3M社(3M Company)(セントポール))が用いられた。新しい30.5cm(12インチ)の直径の3M Wet−or−Dryブランドの600グリットのサンドペーパーのパッド(3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール)製)を磨耗試験に用い、機器の静止試料台の上に取り付けた。接触荷重は44.5N(10ポンド)に設定され、回転プラテンは600グリットのサンドペーパーの面に交差して連続的に流れるように導かれた水流により150rpmで30秒間回転するように設定された。60秒の磨耗試験の経過後に、回転プラテンは停止され、試料が両面粘着テープから注意深く取り外され、質量変化を記録し、損失率を計算するために再度秤量された。記録された値は2回反復された測定から計測された平均損失値として記録された。
実施例1〜3及び比較例CE−1
最初の系では、実施例1〜3は充填剤の充填によるせん断接着強度への効果を探査する意図で行われた。接着剤の調製の間、接着剤成分は、望ましくない早い時期での重合を最小化するために黄色光の下で貯蔵され、かつ取り扱われた。実施例1〜3のそれぞれにおいて、開始剤系は、最初にカンファーキノン、EDMAB、及びヨードニウムPF と硬化性成分であるSR340及びUDMAの各量を混合することにより調製された。上記の成分の量は表1に示されている。接着剤のペーストは交互に対流式オーブン中で85℃に加熱され、60秒間に5サイクルの3000rpmの回転によりDAC−150FZ SpeedMixer(フラックテック社(Flacktec Inc.)(サウス・カロライナ州ランドラム(Landrum))製)と均一に混合された。このサイクルは均一な樹脂混合物が得られるまで繰り返された。示されているように、充填剤の充填は接着剤の全重量に基づき59.9〜62.4重量パーセントの範囲に定められた。最終的に、樹脂混合物は3つのバッチに分割され、各種の充填剤が充填された3種類の接着剤ペーストを形成するために、ポリマー性充填剤、MR−7HGが、それぞれに添加された。MR−7HGは、7マイクロメートルの公称粒径中央値を有する、PMMAがエマルション重合された充填剤である。次いで、金属製歯科矯正用ブラケットについて測定されるせん断接着強度は、既に記載されている「せん断接着強度試験方法」に従い行われた。MR−7HGの粒径も、既に記載された「粒径測定法」を用いて、その特徴が決定された。これらの結果は、表1の下部に示されている。比較例CE−1として名づけられたTBXT接着剤ペーストが、標準接着剤として用いられ、実施例1〜3と並列して試験された。平均接着強度におけるいくつかの差異が観察された一方、実施例1〜3の接着剤は、互いに同等でありTBXTに匹敵する平均せん断接着強度をもたらした。この結果は、ポリマー性充填剤を含む歯科矯正用接着剤が、市販の歯科矯正用接着剤に匹敵する接着強度を達成できることを実証する。
実施例4〜6及び比較例CE−2
実施例4〜6は、充填剤の充填量をほぼ一定に保って、粒径のせん断接着強度に対する影響を探査する意図で行われた。実施例4〜6のそれぞれは、表1に示されるように、カンファーキノン、EDMAB及びヨードニウムPF とSR340及びUDMAの各量を一緒に混合することで、前述のように調製された。この場合には、しかしながら、3つの異なるPMMA充填剤の直径が試験された。充填剤MR−2HG、MR−7HG、及びMR−10HGに対応する粒径が測定され、表1の下部に示されている。充填剤の充填時に、接着剤ペーストにそれぞれ約57、約60、及び約59重量パーセントのこれらの充填剤が均一に混合された。次いで、これらの組成物のせん断接着強度試験を開始し、その結果が比較例CE−2と名付けられたTBXTの対照接着剤と比較された。これらの物質に対する接着強度試験により、6.71マイクロメートルの粒径(実施例5)が最も高い接着強度中央値を与え、一方2.72マイクロメートルの粒径(実施例4)が最低値を与えたことが明らかになった。統計的解析が更に、これらの2つの組成物の間の差が有意であることを実証した(P=0.006)。実施例5及び6は、比較例CE−2と同等、又はそれを少し上回る程の接着強度を与えた。
実施例7〜9及び比較例CE−3
実施例7〜9では、PMMA粒子を異なる硬化性成分、又は樹脂系と組み合わせた処方が調製され、せん断接着強度の差が試験された。実施例7では、BisGMA、BisEMA及びSR340に基づく樹脂系が使用され、一方実施例8及び9では、UDMA及びSR340に基づく樹脂系が使用された。これらの物質に対する組成物の一覧は表2に示されている。接着強度データも表2に示されており、これらはTBXT、又は比較例CE−3を基準としている。
この一連の実験において、樹脂の型及び粘度に依存して、PMMA粒子の達成しうる最大充填は、わずかに異なる。実施例7での粒子の最大有効充填は45重量%である一方で、実施例8及び9での最大有効充填は60重量%に近かった。これは接着剤ペーストのレオロジーに直接的な効果を有する。
Figure 0006042850
全体的に見て、測定された接着強度は、比較例CE−3と同等か、又はそれよりわずかに高いものであった。
実施例10〜11及び比較例CE−4
実施例10〜11においては、充填剤の架橋のレベルは異なっているが、PMMAの粒径及び充填剤の充填が同様である接着剤間の比較をおこなった。実施例10で用いられたMR−7HG及び実施例11で用いられたMR−7Gは、どちらも約7マイクロメートルの公称粒径を有する。しかしながら、前者は後者のほぼ2倍の架橋度を有する。全組成物が表2に示されている。前述と同様に、せん断接着強度測定が遂行され、その結果は比較例CE−4中のTBXTと比較された。
そのデータは、エマルション重合充填剤に用いられる架橋剤の濃度が増加するほど、せん断接着強度に顕著な好ましい効果を与えることを示唆した。更に、実施例10及び11の接着強度間の差は、有意であることが決定された(P=0.048)。実施例11で用いられた接着剤は、比較例CE−4よりわずかに低い平均接着強度を示したが、その標準偏差も、より低かった。
実施例12〜15及び比較例CE−5
実施例12〜15の目的は、PMMA充填剤を用いた接着剤(実施例12)、ハイブリッドPMMA/無機ガラス充填剤を用いた接着剤(実施例13〜15)及び基準接着剤であるTBXT(比較例CE−5)の間での磨耗試験の成績の差を実証することである。前述のブエラー磨耗試験法を用いて、例えば表3中で実施例12〜15に与えられている処方が長方形の切り取り試片の調製に用いられ、試片は秤量され、次いで回転プラテンに取り付けられ、研磨剤を用いて定められた時間の間研磨された。次いで、試片試料を取り外し、質量損失を測定するために再秤量した(すなわち歯科矯正治療終了時での接着剤の除去のシミュレートをしている)。
Figure 0006042850
この試験において、実施例12〜15のそれぞれはMR−7HG充填剤を含有し、実施例13〜15は付加的に0〜40重量%の範囲の量のS/Tショットガラス充填剤を含んでいた。
磨耗試験の結果は表3に示されている。このデータは、実施例12は接着剤残渣の100%の除去を達成し及びCE−5はほんの5.3%の除去を達成しているという、接着剤の清掃の容易さにおけるかなりの差を示している。実施例13〜15に示されるように、S/Tショットガラス無機充填剤の量は、増加するほど清掃の容易さを減少させる効果を有している。それでもなお、これらの結果は、最大40重量%の例えばS/Tショットガラスなどの無機フルオロアルミノシリケート充填剤でさえもが、比較例CE−5と比較して顕著に良好な接着剤の清掃を得ることが可能であることを示している。この実施例は、更に、容易な清掃と組み合わせてフッ化物の放出を得ることが可能であることを実証している。このように、有機充填剤は歯科臨床医又は歯科矯正臨床医により所望される他の性質と両立できるものと思われる。
実施例16〜18及び比較例CE−6
実施例16〜18においては、実施例12、14及び15で用いられたものと同様の接着剤組成物がせん断接着強度を評価され、TBXT(比較例CE−6)と比較された。これらの接着剤の組成物及び対応するせん断接着強度データは表4に示されている。
Figure 0006042850
Figure 0006042850
実施例16〜18のせん断接着強度データは一貫して15MPaを越える接着強度中央値を示したが、これらは、22MPaを越える異常に高い接着強度データを生み出した比較例CE−6よりも低い。
実施例16〜18に対応するデータのセットが統計的に等価である(P≧0.191)ことも注目される。したがって、S/Tショットガラス充填剤の量の増加は接着強度に対して逆効果を有するとは思われなかった。この結果は、無機フッ化物を放出するガラスを、これらの例示的な接着剤の接着強度又は接着剤の除去の容易さに、顕著な悪影響を殆ど又は全く与えることなく導入できる可能性があることを実証する。
実施例19〜24及び比較例CE−7
実施例19〜24では、2つのホモポリマーであるPMMA及びPStと同時に、コポリマーであるP(St−EMA)を含む3つの異なるエマルション重合充填剤の組成物が試験された。これらのポリマー性充填剤が例示的な接着剤の処方に組み込まれ、お互いの比較及びTBXT(比較例CE−7)との比較のために、そのせん断接着強度が測定された。表5の接着剤組成物に示されるように、実施例19〜24を製造するために、それぞれのポリマー充填剤は、接着剤の全重量に基づき40重量%及び50〜54重量%の2つの充填剤を充填して混合された。4〜7マイクロメートルの範囲にわたる同様な粒子直径を持つ充填剤を選ぶことにより、粒径の影響は最小化された。
表5の下部に示される接着強度データから、条件を満たした接着強度を生成するために、複数の異なるポリマー性充填剤を効果的に用い得ることが明白である。接着強度データは、統計的に比較例と同様か、又はわずかにそれより低いことが見出された。このデータも、充填剤の充填がせん断接着強度に影響する程度を実証している。この系では、約40%の充填剤の充填が、50〜54%の充填剤の充填よりも優れた接着強度の値をもたらした。しかしながら、約40%の充填剤を充填した組成物は、50〜54%の充填剤を充填した組成物よりも、粘性の低い接着剤の取り扱い性を生起させるということは注目された。
実施例25及び比較例CE−8、CE−9
実施例25の目的は、一般に狭い粒径分布を持つエマルション重合PMMA充填剤を含む接着剤を、広い粒径分布を持つ微細に分割されたPMMA充填剤と比較することである。実施例25のエマルション重合充填剤としてMR−7HGが用いられ、一方PMMA粉末(MW=15,000g/mol)を乳鉢及び乳棒を用いて粉砕して、比較例CE−8の微細に分割された充填剤として使用した。TBXTは第2の比較例CE−9として使用された。表6は、これらの物質の調製に用いられた組成物、及び測定された充填剤の粒径、並びにそれぞれの組成物に対応するせん断接着強度結果を列挙する。
Figure 0006042850
これらの接着強度の結果から、これらの2つの異なる方法を用いて製造されたPMMA充填剤の間に統計的な有意差があることが示された(P=0.004)。エマルション重合PMMA充填剤は、微細に分割されたPMMA粉末よりも顕著な利点を与えた。CE−9は、実施例25及びCE−8の両方よりもはるかに高い接着強度を示す一方、この差はこの系ではCE−8の値が異常に高いことに帰属させられることができ、実施例25の14MPaでの平均接着強度は大変に条件を満たすものである。
Figure 0006042850
これらの結果も、単に接着剤に微細に分割されたポリマー性充填剤を用いることが、必ずしも有用な組成物を生み出すとは限らないことを実証する。
実施例26〜29及び比較例CE−10
この系では、実施例26〜29は、硬質のシリカ充填剤の量を増加させて接着剤に導入することが、接着剤の清掃の容易さにどのように影響するかを示している。表7は、実施例26〜29の、変化するレベルのシリカを含む接着剤組成物を示す。これらの組成物は、実施例1〜3で既に記載したものと同様の方法を用いて調製された。次いで、既に記載したブエラーの磨耗試験法に従って磨耗試験も行った。
表7の下部に示された磨耗試験の結果は、たとえ少量でも、S/Tコンサイス接着剤を加えた場合に、清掃の容易さに顕著な損失があることを明らかにした。5重量%のS/Tコンサイス充填剤でさえも、同一条件下で接着剤除去の容易さの100%から28%への削減を引き起こした。この結果は、接着剤の清掃の容易さへのはるかに少ない影響を示した、実施例13〜15におけるフルオロアルミノシリケートガラス充填剤の添加とは対照的である。
実施例33〜34及び比較例CE−11、CE−12
実施例33〜34は、ビクトリー・シリーズの金属ブラケット以外の、代替的なメッシュ基部を持つセラミック製歯科矯正用ブラケット及び金属製歯科矯正用ブラケット歯科矯正用装具に使用された例示的な接着剤の測定された接着強度示す。これらの実施例では、接着剤は、表8に示される組成物に基づき、7マイクロメートルの直径のMR−7HG及びCab−O−Sil充填剤並びにTEGDMA/UDMA樹脂系により調製された。CLARITY MBTの上部左方中央セラミック製ブラケットが実施例33で用いられ、下部左方中央lMINI−DIAMONDブラケット(オームコ社(Ormco Corporation)(カリフォルニア州グレンドラ(Glendora))から入手可能である)が実施例34で用いられ、それぞれの対照例CE−11及びCE−12においてはTBXTが用いられた。
表8の下部に示される接着強度データから、セラミックブラケット上で比較した場合、MR−7HGを充填した接着剤は、TBXTに比べて顕著に低い接着強度を示した。しかしながら、代替的なメッシュブラケットで比較した場合、接着剤は同程度の接着強度を有することが見出された。実施例34(2.64MPaの標準偏差を示す)が、比較例CE−12(9.18MPaの標準偏差を示す)と比べて、はるかに狭い接着強度の分布を示すことは注目に値する。これらの実施例におけるポリマー性充填剤を有する接着剤は、市販の接着剤に匹敵する接着強度を一貫して与える能力があることを示した。
Figure 0006042850
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実施例35〜38及び比較例CE−13
実施例35〜38は、粒径の中央値が前述の実施例33〜34で用いられたMR−7HG充填剤のものよりも顕著に大きい2つの接着剤処方の評価を示す。この系では、実施例35及び37は、約17マイクロメートルの単峰性の粒径分布を持つMRD20−1PMMA充填剤を用い、一方実施例36及び38は、分布の中心がそれぞれ17及び8マイクロメートルにある、二峰性の粒径分布を持つMRD PMMA20−1及びMRD PMMA20−3充填剤の混合物を用いる。全ての充填剤の粒径データは、前述の粒径測定法に従い求められた。
これらの接着剤の接着強度は、実施例35及び36ではビクトリー・シリーズ銘柄の薄型上部右方中央金属ブラケット(部品番号024−776)を用いて、実施例37及び38では、CLARITY銘柄のエッジワイズブラケット(部品番号6400−920)のセラミックブラケットを用いた。測定された接着強度は、比較例CE−13においてTBXTをセラミックブラケットに用いた場合のものを基準として評価された(金属ブラケットに対する比較例はない)。全ての接着剤の測定された接着強度は、表9に与えられている。表9に更に含まれるものは実施例35〜38の組成物、粒径中央値、及び接着剤のd50/d25粒径比である。
実施例35〜38のそれぞれが、比較例CE−13のものを越える平均接着強度値を生成したが、しかしながら実施例35〜38で観察された接着強度分布も、より広かった。これらの実施例は、実施例35〜38で用いられたより大きな粒径が、金属及びセラミックブラケットの両方の歯への接着において、実際に有効であることを実証する。これらの実施例を実施例33〜34に比較して、粒径中央値及び粒径分布の両方が、これらの充填された歯科矯正用接着剤の、特にセラミック装具に対する性能に影響する顕著な要素であると思われる。
Figure 0006042850
本明細書で引用されたすべての特許、特許出願及び刊行物並びに電子的に入手可能な資料の完全な開示は、参考として組み込まれる。前述の詳細な説明及び実施例は理解を明確化するためにのみ提示されている。それらから無用の限定を解するべきでない。本発明は図示され記載された厳密な詳細にのみに限定されず、当業者にとり明白な変更は以下の請求項により定義される本発明内に包含される。
以下に、本発明を限定することなく、実施の態様の例を示す。
(態様1)
歯科矯正用組成物であって、
硬化性成分と、
硬化剤と、
ポリマー性充填剤と、を含み、
前記ポリマー性充填剤が6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、歯科矯正用組成物。
(態様2)
前記ポリマー性充填剤がエマルションポリマーである、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様3)
前記ポリマー性充填剤が懸濁ポリマーである、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様4)
前記ポリマー性充填剤が7マイクロメートル〜17マイクロメートルの範囲の粒経中央値を有する、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様5)
前記ポリマー性充填剤が8マイクロメートル〜16マイクロメートルの範囲の粒経中央値を有する、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様6)
前記ポリマー性充填剤が最大2.5のd50/d25粒径比を有する、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様7)
前記ポリマー性充填剤が最大2.0のd50/d25粒径比を有する、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様8)
前記ポリマー性充填剤が最大1.8のd50/d25粒径比を有する、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様9)
シリカ充填剤を更に含む、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様10)
前記シリカ充填剤が、接着剤の全重量に基づき最大5重量パーセントの量で存在する、態様9に記載の歯科矯正用組成物。
(態様11)
フルオロアルミノシリケートガラス充填剤を更に含む、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様12)
前記フルオロアルミノシリケートガラス充填剤がシラン処理されている、態様11に記載の歯科矯正用組成物。
(態様13)
前記フルオロアルミノシリケートガラス充填剤が、接着剤の全重量に基づき最大40重量パーセントの量で存在する、態様11に記載の歯科矯正用組成物。
(態様14)
前記フルオロアルミノシリケートガラス充填剤がフッ化物を放出する、態様11に記載の歯科矯正用組成物。
(態様15)
前記ポリマー性充填剤が、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン)又はポリ(スチレン−エチルメタクリレート)のうちの少なくとも1つから誘導される、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様16)
前記ポリマー性充填剤が、接着剤の全重量に基づき55重量パーセント〜65重量パーセントの範囲で存在する、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様17)
前記ポリマー性充填剤が架橋されている、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様18)
前記硬化性成分が架橋剤を含む、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様19)
前記硬化性成分が、接着剤の全重量に基づき30〜45重量パーセントの範囲で存在する、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様20)
前記硬化性成分が、ウレタンジメタクリレート、ビス−グリシジルメタクリレート又はビス−エチルメタクリレートのうちの少なくとも1つを含む、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様21)
前記硬化剤が、接着剤の全重量に基づき1〜2.5重量パーセントの範囲で存在する、態様1に記載の歯科矯正用組成物。
(態様22)
歯科矯正用組成物であって、
硬化性成分と、
硬化剤と、
ポリマー性充填剤であって、6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有するポリマー性充填剤と、
無機充填剤であって、少なくとも5のモース硬度を有し接着剤の全重量に基づき最大5重量パーセントの量で存在する無機充填剤と、を含み、
前記接着剤が、本質的に少なくとも5のモース硬度を有するいかなる他の無機充填剤も含まない、歯科矯正用組成物。
(態様23)
前記接着剤が、少なくとも5のモース硬度を有するいかなる無機充填剤も含まない、態様22に記載の歯科矯正用組成物。
(態様24)
前記ポリマー性充填剤が7マイクロメートル〜17マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、態様22に記載の歯科矯正用組成物。
(態様25)
前記ポリマー性充填剤が8マイクロメートル〜16マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、態様22に記載の歯科矯正用組成物。
(態様26)
前記ポリマー性充填剤が最大2.5のd50/d25粒径比を有する、態様22に記載の歯科矯正用組成物。
(態様27)
前記ポリマー性充填剤が最大2.0のd50/d25粒径比を有する、態様22に記載の歯科矯正用組成物。
(態様28)
前記ポリマー性充填剤が最大1.8のd50/d25粒径比を有する、態様22に記載の歯科矯正用組成物。
(態様29)
2成分歯科矯正用接着剤であって、
酸化剤を含む第1の接着剤組成物と、
還元剤を含む第2の接着剤組成物と、を含み、
前記第1の接着剤組成物又は前記第2の接着剤組成物の少なくとも1つが、更に硬化性成分及びポリマー性充填剤を含み、
前記ポリマー性充填剤が6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有し、
前記歯科矯正用接着剤が、前記第1の接着剤組成物及び前記第2の接着剤組成物をお互いに接触させることにより硬化する、2成分歯科矯正用接着剤。
(態様30)
前記ポリマー性充填剤が7マイクロメートル〜17マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、態様29に記載の2成分歯科矯正用接着剤。
(態様31)
前記ポリマー性充填剤が8マイクロメートル〜16マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、態様29に記載の2成分歯科矯正用接着剤。
(態様32)
パッケージ化物品であって、
装具を歯に接着するための基部を有する歯科矯正用装具と、
前記装具の前記基部上の接着剤であり、
硬化性成分と、
硬化剤と、
ポリマー性充填剤と、を含む接着剤と、
前記基部上に接着剤を有する前記歯科矯正用装具を少なくとも部分的に包囲する容器と、を含み、前記ポリマー性充填剤が6マイクロメートル〜18マイクロメートルの粒径中央値をする、パッケージ化物品。
(態様33)
前記ポリマー性充填剤がエマルションポリマーである、態様32に記載のパッケージ化物品。
(態様34)
前記ポリマー性充填剤が7マイクロメートル〜17マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、態様32に記載の物品。
(態様35)
前記ポリマー性充填剤が8マイクロメートル〜16マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、態様32に記載の物品。
(態様36)
前記接着剤に接触する表面を更に含む、態様32に記載の物品。
(態様37)
硬化した歯科矯正用組成物を歯から除去する方法であって、
少なくともその一部上に硬化した歯科矯正用接着剤を有する歯の表面を提供し、前記歯科矯正用接着剤は硬化性成分と、硬化剤と、ポリマー性充填剤を含有し、前記ポリマー性充填剤は6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有することと、
前記接着剤を前記歯から除去するために、前記歯の表面に5未満のモース硬度を有する研磨剤を塗布することと、を含む、硬化した歯科矯正用組成物を歯から除去する方法。
(態様38)
前記ポリマー性充填剤がエマルションポリマーである、態様37に記載の方法。
(態様39)
前記ポリマー性充填剤が7マイクロメートル〜17マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、態様37に記載の方法。
(態様40)
前記ポリマー性充填剤が8マイクロメートル〜16マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有する、態様37に記載の方法。
(態様41)
前記研磨剤を塗布する行為がプロフィー粉末により遂行される、態様37に記載の方法。
(態様42)
前記研磨剤を塗布する行為が仕上げ用ディスクにより遂行される、態様37に記載の方法。
(態様43)
前記研磨剤を塗布する行為が仕上げ用ドリル錐により遂行される、態様37に記載の方法。
(態様44)
前記研磨剤を塗布する行為が歯石除去器により遂行される、態様37に記載の方法。

Claims (5)

  1. 硬化性成分と、
    光開始剤と、
    堅固で寸法安定な架橋されたポリマー性充填剤と、を含み、
    無機充填剤を含まず、
    前記ポリマー性充填剤が6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有し、
    前記ポリマー性充填剤のd50/d25粒径比が1.8以下である、歯科矯正用接着剤組成物。
  2. 硬化性成分と、
    光開始剤と、
    堅固で寸法安定な架橋されたポリマー性充填剤と、
    下記組成物の全質量を基準に5質量%以下の量の、モース硬度が少なくとも5の無機充填剤と、を含み、
    前記架橋されたポリマー性充填剤が6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有し、
    前記ポリマー性充填剤のd50/d25粒径比が1.8以下である、歯科矯正用接着剤組成物。
  3. 前記無機充填剤が、シリカ充填剤とフルオロアルミノシリケートガラス充填剤の少なくとも1方を含む、請求項2に記載の歯科矯正用接着剤組成物。
  4. 硬化性成分と、
    光開始剤と、
    堅固で寸法安定な架橋されたポリマー性充填剤と、
    モース硬度が5未満の無機充填剤と、を含み、
    モース硬度が少なくとも5の無機充填剤は含まず、
    前記架橋されたポリマー性充填剤が6マイクロメートル〜18マイクロメートルの範囲の粒径中央値を有し、
    前記ポリマー性充填剤のd50/d25粒径比が1.8以下であり、
    前記ポリマー性充填剤と前記無機充填剤の合計量は下記組成物の全質量を基準に50質量%〜80質量%の量である、歯科矯正用接着剤組成物。
  5. 前記無機充填剤が前記組成物の全質量を基準に40質量%以下の量でフルオロアルミノシリケートガラス充填剤を含む、請求項4に記載の歯科矯正用接着剤組成物。
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