以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂、下記式(2)で表される単量体単位を有する高分子部と、下記式(1)で表される部分構造とが連結した化合物、および、着色剤としてカーボンブラックを含有するトナー粒子を有することを特徴とする。
[式(1)中、R
2、R
3、Ar
1およびAr
2の少なくとも1つは、直接、又は、連結基を介して該高分子部と連結しており、R
1は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、またはヒドロキシル基を表し、高分子部と連結しないR
2、R
3は、それぞれ独立して、アルキル基、フェニル基、OR
4基、及びNR
5R
6基からなる群より選択される1価の基を表し、R
4乃至R
6は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基、またはアラルキル基を表し、高分子部と連結しないAr
1、Ar
2は、それぞれ独立して、アリール基を表し、高分子部と連結するR
2、R
3は、上記R
2、R
3が表す1価の基から1つの水素元素が脱離した2価の基を表し、高分子部と連結するAr
1、Ar
2は、上記Ar
1、Ar
2が表すアリール基から1つの水素元素が脱離した2価の基を表し、mは、3または4の整数を表し、nは、1または2の整数を表し、n+mは、5である。]
[式(2)中、R
7は、水素原子、またはアルキル基を表し、R
8は、フェニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、またはカルボン酸アミド基を表す。]
初めに、アゾ骨格構造を有する化合物の構成について説明する。該アゾ骨格構造を有する化合物は、カーボンブラックへの親和性が高い上記式(1)で表されるアゾ骨格構造と、非水溶性溶剤への親和性が高い上記式(2)で表される単量体単位を有する高分子部で構成される。
まず、アゾ骨格構造について詳細に説明する。
上記式(1)の中のR1におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
上記式(1)の中のR1におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、およびシクロヘキシル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記式(1)の中のR1におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、およびイソプロポキシ基等の直鎖または分岐のアルコキシ基が挙げられる。
上記式(1)の中のR1は上記に列挙した置換基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ヒドロキシル基、および水素原子から任意に選択できるが、カーボンブラックへの親和性の観点から、水素原子である場合が好ましい。
上記式(1)中のアシルアセトアミド基の置換位置は、mが4かつnが1の場合、アシルアセトアミド基同士が、o−位、m−位、およびp−位で置換した場合が挙げられる。これらの置換位置の違いによるカーボンブラックへの親和性は、o−位、m−位、およびp−位で同等である。また、mが3かつnが2の場合、アシルアセトアミド基同士が、1,2,3−位、1,2,4−位、および1,3,5−位で置換した場合が挙げられる。これらの置換位置の違いによるカーボンブラックへの親和性は、1,2,3−位、1,2,4−位、および1,3,5−位で同等である。
上記式(1)中のR2およびR3におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、およびシクロヘキシル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記式(1)中のR2およびR3の置換基は、カーボンブラックへの親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、およびトリフルオロメチル基等が挙げられる。
上記式(1)中のR4乃至R6におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、およびシクロヘキシル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記式(1)中のR4乃至R6におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、およびフェネチル基等が挙げられる。
上記式(1)中のR4乃至R6は上記に列挙した置換基、水素原子およびフェニル基から任意に選択できる。
上記式(1)中のAr1およびAr2はアリール基を表し、フェニル基、およびナフチル基等が挙げられる。これらの置換基は、カーボンブラックへの親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、およびカルボン酸アミド基等が挙げられる。
上記式(1)中のR2、R3、Ar1およびAr2の少なくとも1つは、直接、又は、連結基を介して、該高分子部と連結している。R2、R3、Ar1、Ar2が該高分子部と連結する場合には、R2、R3、Ar1およびAr2は、上記したR2、R3、Ar1およびAr2が表すそれぞれの構造から1つの水素原子が脱離して形成される2価の基を表す。また、R2、R3、Ar1およびAr2と高分子部とが、連結基を介してい連結した構造であることが好ましい。カーボンブラックへの親和性の点で、上記式(1)で表される部分構造が下記式(3)のユニットで表される場合が好ましい。すなわち、式(1)中のAr1、Ar2がフェニル基であり、該フェニル基の水素原子の少なくとも1つが連結基で置換され、該高分子との連結している場合が好ましい。
[式(3)中、R
1は、上記式(1)中のR
1と同意義を表す。R
9、R
10は、それぞれ独立して、アルキル基、フェニル基、OR
4基、またはNR
5R
6基(R
4乃至R
6は上記式(1)中のR
4乃至R
6と同意義を表す。)を表す。R
11乃至R
20は、それぞれ独立して、水素原子、COOR
21基、CONR
22R
23基、又は、該高分子部との連結基を表す。R
21乃至R
23は、それぞれ独立して、水素原子、またはアルキル基を表す。但し、R
11乃至R
20の少なくとも1つは、該高分子部との連結基を表す。mは、3または4の整数を表し、nは、1または2の整数を表し、n+mは5である。]
上記式(3)中のR11乃至R20は、水素原子、COOR21基、およびCONR22R23基から選択できるが、カーボンブラックへの親和性の観点から、R11乃至R20のうち少なくとも1つがCOOR21基、またはCONR22R23基である場合が好ましい。
上記式(3)中のR21乃至R23におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、およびシクロヘキシル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記式(3)中のR21乃至R23は上記に列挙した置換基、および水素原子から任意に選択できるが、カーボンブラックへの親和性の観点から、R21がメチル基であり、R22が水素原子であり、R23がメチル基または水素原子である場合が好ましい。
上記式(3)中のR9およびR10におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、およびシクロヘキシル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記式(3)中のR9およびR10の置換基は、カーボンブラックへの親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、およびトリフルオロメチル基等が挙げられる。
上記式(3)中のR9およびR10は上記に列挙した置換基から任意に選択できるが、カーボンブラックへの親和性の観点からメチル基である場合が好ましい。
上記式(3)で表される部分構造は、カーボンブラックの親和性の点で、下記式(4)乃至(7)のユニットで表される場合がより好ましい。すなわち、下記式(4)乃至(7)で示されるような、アゾ骨格構造と高分子部とが連結基Lを介して連結する場合である。
[式(4)中、R
1は上記式(1)中のR
1と同意義を表す。R
9およびR
10は上記式(3)中のR
9およびR
10と同意義を表す。R
24乃至R
28はそれぞれ独立して水素原子、COOR
21基、またはCONR
22R
23基(R
21乃至R
23は上記式(3)中のR
21乃至R
23と同意義を表す)を表す。lは4である。Lは上記一般式(2)で表される単量体単位を有する高分子部と連結する二価の連結基を表す。]
[式(5)中、R
1は上記式(1)中のR
1と同意義を表す。R
9およびR
10は上記式(3)中のR
9およびR
10と同意義を表す。R
24乃至R
28はそれぞれ独立して水素原子、COOR
21基、またはCONR
22R
23基(R
21乃至R
23は上記式(3)中のR
21乃至R
23と同意義を表す)を表す。lは4である。Lは上記一般式(2)で表される単量体単位を有する高分子部と連結する二価の連結基を表す。]
[式(6)中、R
1は上記式(1)中のR
1と同意義を表し、R
9は上記式(3)中のR
9と同意義を表す。pは2または3の整数を表し、qは3または4の整数を表し、p+qは6である。Lは上記一般式(2)で表される単量体単位を有する高分子部と連結する二価の連結基を表す。]
[式(7)中、R
1は上記式(1)中のR
1と同意義を表し、R
9は上記式(3)中のR
9と同意義を表す。pは2または3の整数を表し、qは3または4の整数を表し、p+qは6である。Lは上記一般式(2)で表される単量体単位を有する高分子との二価の連結基を表す。]
上記式(4)乃至(7)中のLは、二価の連結基であり、アゾ骨格構造と高分子部とを結合する。
上記式(4)および上記式(6)の部分構造では、Lを介し1箇所でアゾ骨格構造と高分子部とが連結し、上記式(5)および上記式(7)の部分構造は、二箇所で連結する。
上記式中のLは、二価の連結基であれば特に限定されるものではないが、カルボン酸アミド結合およびスルホン酸アミド結合等のアミド結合、カルボン酸エステル結合およびスルホン酸エステル結合等のエステル結合、および、エーテル結合およびチオエーテル結合等のエーテル結合等を含む結合が挙げられる。該連結基は、上記列挙した結合種の中から任意に選択できるが、合成容易性の点でカルボン酸エステル結合、またはカルボン酸アミド結合を含む場合が好ましい。
上記式(4)乃至(7)中の、Lの置換位置はカーボンブラックへの親和性の点で、少なくとも1つのLが、ヒドラゾ基に対しp−位またはm−位である場合が好ましい。
上記式(4)もしくは(5)のR24乃至R28は、水素原子、COOR21基、およびCONR22R23基から選択できるが、カーボンブラックへの親和性の観点から、少なくとも1つがCOOR21基、またはCONR22R23基である場合が好ましい。
次に上記高分子部について詳細に説明する。
上記一般式(2)中のR7におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、およびシクロヘキシル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記一般式(2)中のR7は上記に列挙した置換基、および水素原子から任意に選択できるが、単量体単位の重合性の観点から水素原子、またはメチル基である場合が好ましい。
上記一般式(2)中のR8におけるカルボン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、n−プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n−ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec−ブチルエステル基、tert−ブチルエステル基、オクチルエステル基、ノニルエステル基、デシルエステル基、ウンデシルエステル基、ドデシルエステル基、ヘキサデシルエステル基、オクタデシルエステル基、エイコシルエステル基、ドコシルエステル基、2−エチルヘキシルエステル基、フェニルエステル基、および2−ヒドロキシエチルエステル基等の直鎖、または分岐のエステル基が挙げられる。
上記一般式(2)中のR8におけるカルボン酸アミド基としては、N−メチルアミド基、N,N−ジメチルアミド基、N−エチルアミド基、N,N−ジエチルアミド基、N−イソプロピルアミド基、N,N−ジイソプロピルアミド基、N−n−ブチルアミド基、N,N−ジ−n−ブチルアミド基、N−イソブチルアミド基、N,N−ジイソブチルアミド基、N−sec−ブチルアミド基、N,N−ジ−sec−ブチルアミド基、N−tert−ブチルアミド基、N−オクチルアミド基、N,N−ジオクチルアミド基、N−ノニルアミド基、N,N−ジノニルアミド基、N−デシルアミド基、N,N−ジデシルアミド基、N−ウンデシルアミド基、N,N−ジウンデシルアミド基、N−ドデシルアミド基、N,N−ジドデシルアミド基、N−ヘキサデシルアミド基、N−オクタデシルアミド基、N−フェニルアミド基、N−(2−エチルヘキシル)アミド基、およびN,N−ジ(2−エチルヘキシル)アミド基等の直鎖、または分岐のアミド基が挙げられる。
上記一般式(2)中のR8の置換基は、更に置換されていてもよく、単量体単位の重合性を阻害したり、アゾ骨格構造を有する化合物の溶解性を著しく低下させたりするものでなければ特に制限されない。この場合、置換しても良い置換基としてはメトキシ基、およびエトキシ基等のアルコキシ基、N−メチルアミノ基、およびN,N−ジメチルアミノ基等のアミノ基、アセチル基等のアシル基、フッ素原子、および塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
上記一般式(2)中のR8は上記に列挙した置換基、フェニル基、およびカルボキシル基から任意に選択できるが、アゾ骨格構造を有する化合物のトナーの結着樹脂への分散性、相溶性の点でフェニル基またはカルボン酸エステル基である場合が好ましい。
上記高分子部は、上記式(2)で表される単量体単位の割合を変化させることで分散媒体との親和性を制御することができる。分散媒体がスチレンのような非極性溶剤の場合には、上記式(2)中のR8がフェニル基で表される単量体単位の割合を大きくすることが分散媒体との親和性の点で好ましく、分散媒体がアクリル酸エステルのようなある程度極性がある溶剤の場合には上記式(2)中のR8がカルボキシル基、カルボン酸エステル基、またはカルボン酸アミド基で表される単量体単位の割合を大きくすることが分散媒体との親和性の点で好ましい。
上記高分子部の分子量は、カーボンブラックの分散性を向上させる点で数平均分子量が500以上である場合が好ましい。分子量は大きい方がカーボンブラックの分散性を向上させる効果が高いが、分子量があまりに大きすぎると非水溶性溶剤への親和性が低下する傾向にある。従って、該高分子部の数平均分子量は200000までである場合が好ましい。この他、製造容易性の点を考慮すると、該高分子部の数平均分子量は2000乃至50000の範囲内である場合がより好ましい。
また、特表2003−531001号公報に開示されるように、ポリオキシアルキレンカルボニル系の分散剤において、末端に分岐した脂肪族鎖を導入することで分散性を向上させる方法が知られているが、上記高分子部においても、後述するATRP(Atom Transfer Radial Polymerization)のような方法でテレケリックな高分子部を合成すれば、末端に分岐した脂肪族鎖を導入することができ、分散性が向上する場合もある。
上記アゾ骨格構造を有する化合物中のアゾ骨格構造の位置は、ランダムに点在していても、一端に1つもしくは複数のブロックを形成して偏在していてもよい。
上記アゾ骨格構造を有する化合物中のアゾ骨格構造の数は、多い方がカーボンブラックへの親和性は高いが、あまりに多すぎると非水溶性溶剤への親和性が悪化するため好ましくない。従って、アゾ骨格構造の数は、高分子部を形成する単量体数100に対して0.2乃至10の範囲内である場合が好ましく、0.2乃至5の範囲内である場合がより好ましい。
上記式(1)で表されるアゾ骨格構造は、下記図に示されるように、下記式(8−A)および(8−B)等で表される互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。
[式(8−A)および(8−B)中のR
1乃至R
3、Ar
1、Ar
2、mおよびnは式(1)におけるR
1乃至R
3、Ar
1、Ar
2、mおよびnと各々同義である。]
上記アゾ骨格構造を有する化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
アゾ骨格構造を有する化合物を合成する方法としては、例えば、下記(i)乃至(iv)に示す方法が挙げられる。
まず、方法(i)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。方法(i)は、予めアゾ骨格構造および高分子部をそれぞれ合成し、縮合反応等により連結させることによりアゾ骨格構造を有する化合物を合成する。
[式(9)乃至(18)中のR
1乃至R
3、Ar
1、mおよびnは上記式(1)中のR
1乃至R
3、Ar
1、mおよびnと各々同義である。式(17)および(18)中のAr
3はアリーレン基を表す。式(10)中のX
1および式(15)中のX
2は脱離基を表す。P
1は、上記一般式(2)で表される単量体単位のうち少なくとも1種類の単量体単位を有する高分子部を表す。式(17)および(18)中のX
3は、P
1と反応して上記二価の連結基Lを形成する置換基を表し、rは1または2の整数である。]
上記に例示したスキームでは、式(9)で表されるニトロアニリン誘導体と式(10)で表されるアセト酢酸類縁体をアミド化し、アシルアセトアニリド類縁体である中間体(11)を合成する工程1、中間体(11)とアニリン誘導体(12)をジアゾカップリングさせ、アゾ化合物(13)を合成する工程2、アゾ化合物(13)中のニトロ基を還元し、アニリン類縁体である中間体(14)を合成する工程3、中間体(14)と式(15)で表されるアセト酢酸類縁体をアミド化し、アシルアセトアニリド類縁体である中間体(16)を合成する工程4、中間体(16)とアニリン誘導体(17)をジアゾカップリングし、アゾ化合物(18)を合成する工程5、アゾ骨格と高分子部P1を縮合反応等により合成する工程6によって、上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
まず、工程1について説明する。工程1では公知の方法を利用できる[例えば、Datta E.Ponde、外 4名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1998年、第63巻、第4号、1058−1063頁]。また、式(11)中のR2がメチル基の場合は原料(10)の替わりにジケテンを用いた方法によっても合成可能である[例えば、Kiran Kumar Solingapuram Sai、外 2名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、2007年、第72巻、第25号、9761−9764頁]。
上記ニトロアニリン誘導体(9)およびアセト酢酸類縁体(10)は、それぞれ多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐために溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、および酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、およびヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、およびクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、およびプロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸等の酸類、水等が挙げられる。また、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で、上記式(9)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
次に、工程2について説明する。工程2では公知の方法を利用できる。例えば、下記に示す方法が挙げられる。先ず、メタノール溶剤中、アニリン誘導体(12)を塩酸、または硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム、またはニトロシル硫酸等のジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム塩を合成する。更に、このジアゾニウム塩を中間体(11)とカップリングさせて、アゾ化合物(13)を合成する。
上記アニリン誘導体(12)は、多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、および酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、およびヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、およびクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、およびプロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸等の酸類、水等が挙げられる。また、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で、上記式(12)で表される化合物に対し1.0乃至20重量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常−50℃乃至100℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
次に、工程3について説明する。工程3では公知の方法を利用できる[金属化合物等を用いる方法としては、例えば、「実験化学講座」、丸善(株)、第1版、第17−2巻、162−179頁。接触水素添加法としては、例えば、「実験化学講座」、丸善(株)、第1版、第15巻、390−448頁、または国際公開第2009/060886号パンフレット]。
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、および酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、およびヘプタン等の炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類等が挙げられる。また、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、基質の溶解性に応じて、任意に定めることができるが、反応速度の点で、上記式(13)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
次に、工程4について説明する。工程4では上記工程1と同様の方法を利用し、アシルアセトアニリド類縁体である中間体(16)を合成することができる。
次に、工程5について説明する。工程5では上記工程2と同様の方法を適用し、アゾ化合物(18)を合成することができる。
上記アニリン誘導体(17)は、多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
次に、工程6で用いる高分子部P1の合成方法について説明する。高分子部P1の合成では公知の重合方法を利用できる[例えば、Krzysztof Matyjaszewski、外 1名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、2921−2990頁]。
例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられるが、製造容易性の点でラジカル重合を用いることが好ましい。
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の使用、放射線、レーザー光等の照射、光重合開始剤と光の照射との併用、および加熱等により行うことができる。
ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、重合反応を開始させることができるものであればよく、熱、光、放射線、および酸化還元反応等の作用によってラジカルを発生する化合物から選ばれる。例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、および光重合開始剤等が挙げられる。例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、およびtert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、過酸化ベンゾイル−ジメチルアニリン系、およびセリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、およびチオキサントン類等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
この際使用される重合開始剤の使用量は、単量体100質量部に対し0.1乃至20質量部の範囲で、目標とする分子量分布を有する共重合体が得られるように調節することが好ましい。
上記P1で表される高分子部は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合等何れの方法を用いて製造することも可能であり、特に限定するものではないが、製造時に用いる各成分を溶解し得る溶媒中での溶液重合が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、および2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、およびメチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、およびジエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、またはそのアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、またはそのアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の極性有機溶剤や、場合によりトルエン、およびキシレン等の非極性溶剤等を、単独で、または混合して使用することができる。これらのうち沸点が100乃至180℃の温度範囲の溶剤を、単独、または混合して使用するのがより好ましい。
重合温度は、用いる開始剤の種類により好ましい温度範囲は異なり、特に制限されるものではないが、例えば、−30乃至200℃の温度範囲で重合することが一般的であり、より好ましい温度範囲は、40乃至180℃の場合である。
上記P1で表される高分子部は、公知の方法を用いて、分子量分布や分子構造を制御することができる。例えば、付加開裂型の連鎖移動剤を利用する方法(特許第4254292号公報および特許第3721617号公報参照)、アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するNMP法[例えば、Craig J.Hawker、外 2名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、3661−3688頁]、ハロゲン化合物を重合開始剤として、金属触媒および配位子を用いて重合するATRP法[例えば、Masami Kamigaito、外 2名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、3689−3746頁]、ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物等を重合開始剤とするRAFT法(例えば、特表2000−515181号公報)、その他MADIX法(例えば、国際公開第99/05099号パンフレット)、およびDT法[例えば、Atsushi Goto、外 6名、「Journal of The American Chemical Society」、(米国)、American Chemical Society、2003年、第125巻、8720−8721頁]等を用いることで、分子量分布や分子構造を制御した該高分子部位P1を製造することができる。
次に、工程6について説明する。工程6では公知の方法を利用できる例えば、カルボキシル基を有する高分子部P1とX3がヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(18)を使用することで、連結基Lがカルボン酸エステル結合を有するアゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。また、ヒドロキシル基を有する高分子部P1とX3がスルホン酸基を有する置換基であるアゾ化合物(18)を使用することで、連結基Lがスルホン酸エステル結合を有するアゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。更に、カルボキシル基を有する高分子部P1とX3がアミノ基を有する置換基であるアゾ化合物(18)を使用することで連結基Lがカルボン酸アミド結合を有するアゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。例えば、脱水縮合剤として、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等を使用する方法(例えば、Melvin S.Newman、外 1名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1961年、第26巻、第7号、2525−2528頁)、およびショッテン−バウマン法(例えば、Norman O.V.Sonntag、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、1953年、第52巻、第2号、237−416頁)等が挙げられる。
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、およびヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、およびクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、およびプロピオニトリル等のニトリル類等が挙げられる。また、上記溶剤は基質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記一般式(18)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
次に、方法(ii)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。方法(ii)は、予め重合性官能基を有するアゾ化合物を合成し、上記式(2)で表される重合性単量体と共重合させることにより上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成する。
[式(18)中のR
1乃至R
3、Ar
1、Ar
3、X
3、m、nおよびrは、上記方法(i)のスキーム中の式(18)中のR
1乃至R
3、Ar
1、Ar
3、X
3、m、nおよびrと各々同義である。式(19)中のR
29は、水素原子またはアルキル基を表し、X
4は、式(18)中のX
3と反応して、式(20)中のX
5を形成する置換基を表す。式(20)中のR
1乃至R
3、R
29、Ar
1、Ar
3、m、nおよびrは式(18)および(19)と各々同意義を表し、X
5は式(18)中のX
3および式(19)中のX
4が反応し、形成する上記二価の連結基Lを表す。]
上記に例示したスキームでは、アゾ化合物(18)と式(19)で表されるビニル基含有化合物を反応させ、重合性官能基を有するアゾ化合物(20)を合成する工程7、重合性官能基を有するアゾ化合物(20)と上記式(2)で表される単量体単位を形成する重合性単量体とを共重合する工程8によって、アゾ骨格構造を有する化合物を合成する。
まず、工程7について説明する。工程7では上記方法(i)の工程6と同様の方法を利用し、重合性官能基を有するアゾ化合物(20)を合成することができる。
上記ビニル基含有化合物(19)は、多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
次に、工程8について説明する。工程8では上記方法(i)の高分子部P1の合成と同様の方法を利用し、上記アゾ骨格構造(20)と上記式(2)で表わされる単量体単位を形成する重合性単量体とを共重合することによって、アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
次に、方法(iii)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。方法(iii)は、予め合成したハロゲン原子を有するアゾ化合物を重合開始剤とし、上記式(2)で表される単量体単位を形成する重合性単量体と共重合させることにより、上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成する。
[式(18)中のR
1乃至R
3、Ar
1、Ar
3、X
3、m、nおよびrは、上記方法(i)のスキーム中の式(18)中のR
1乃至R
3、Ar
1、Ar
3、X
3、m、nおよびrと各々同義である。式(21)中のX
6は、式(18)中のX
3と反応して、式(22)中のX
7を形成する置換基を表し、Aは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。式(22)中のR
1乃至R
3、Ar
1、Ar
2、X
3、m、nおよびrは、上記式(18)と同意義を表し、X
7は式(18)中のX
3および式(21)中のX
6が反応し、形成する上記二価の連結基Lを表す。]
上記に例示したスキームでは、アゾ化合物(18)と式(21)で表されるハロゲン原子含有化合物を反応させ、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(22)を合成する工程9、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(22)を重合開始剤として、上記式(2)で表される単量体単位を形成する重合性単量体と重合する工程10によって、アゾ骨格構造を有する化合物を合成する。
まず、工程9について説明する。工程9では上記方法(i)の工程6と同様の方法を利用し、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(22)を合成することができる。例えば、カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(21)とX3がヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(18)を使用することで、連結基Lがカルボン酸エステル結合を含む構造を有するハロゲン原子を有するアゾ骨格構造(22)を合成することができる。また、ヒドロキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(21)とX3がスルホン酸基を有する置換基であるアゾ化合物(18)を使用することで、連結基Lがスルホン酸エステル結合を含む構造を有するハロゲン原子を有するアゾ骨格構造(22)を合成することができる。更に、カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(21)とX3がアミノ基を有する置換基であるアゾ化合物(18)を使用することで、連結基Lがカルボン酸アミド結合を含む構造を有するハロゲン原子を有するアゾ骨格構造(22)を合成することができる。
上記カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(21)としては、例えば、クロロ酢酸、α−クロロプロピオン酸、α−クロロ酪酸、α−クロロイソ酪酸、α−クロロ吉草酸、α−クロロイソ吉草酸、α−クロロカプロン酸、α−クロロフェニル酢酸、α−クロロジフェニル酢酸、α−クロロ−α−フェニルプロピオン酸、α−クロロ−β−フェニルプロピオン酸、ブロモ酢酸、α−ブロモプロピオン酸、α−ブロモ酪酸、α−ブロモイソ酪酸、α−ブロモ吉草酸、α−ブロモイソ吉草酸、α−ブロモカプロン酸、α−ブロモフェニル酢酸、α−ブロモジフェニル酢酸、α−ブロモ−α−フェニルプロピオン酸、α−ブロモ−β−フェニルプロピオン酸、ヨード酢酸、α−ヨードプロピオン酸、α−ヨード酪酸、α−ヨードイソ酪酸、α−ヨード吉草酸、α−ヨードイソ吉草酸、α−ヨードカプロン酸、α−ヨードフェニル酢酸、α−ヨードジフェニル酢酸、α−ヨード−α−フェニルプロピオン酸、α−ヨード−β−フェニルプロピオン酸、β−クロロ酪酸、β−ブロモイソ酪酸、ヨードメチルメチル安息香酸、および1−クロロエチル安息香酸等が挙げられ、その酸ハロゲン化物および酸無水物も同様に本発明において使用することができる。
上記ヒドロキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(21)としては、例えば、1−クロロエタノール、1−ブロモエタノール、1−ヨードエタノール、1−クロロプロパノール、2−ブロモプロパノール、2−クロロ−2−プロパノール、2−ブロモ−2−メチルプロパノール、2−フェニル−1−ブロモエタノール、および2−フェニル−2−ヨードエタノール等が挙げられる。
次に、工程10について説明する。工程10では上記方法(i)中のATRP法を利用し、ハロゲン原子を有するアゾ骨格構造(22)を重合開始剤として、金属触媒、配位子の存在下、上記単量体単位(2)を形成する重合性単量体を重合することで、アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
ATRP法に使用する金属触媒としては、特に制限されないが、周期表7乃至11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属が好ましい。低原子価錯体と高原子価錯体とが可逆的に変化するレドックス触媒(レドックス共役錯体)においては、使用される低原子価金属として、例えば、Cu+、Ni0、Ni+、Ni2+、Pd0、Pd+、Pt0、Pt+、Pt2+、Rh+、Rh2+、Rh3+、Co+、Co2+、Ir0、Ir+、Ir2+、Ir3+、Fe2+、Ru2+、Ru3+、Ru4+、Ru5+、Os2+、Os3+、Re2+、Re3+、Re4+、Re6+、Mn2+、およびMn3+の群から選ばれる金属が挙げられる。中でも、Cu+、Ru2+、Fe2+、またはNi2+が好ましく、特にCu+が好ましい。一価の銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、およびシアン化第一銅等が挙げられ、上記銅化合物は原料入手容易性の点からも好適に使用できる。
ATRP法に使用する配位子としては、一般的には有機配位子が使用される。例えば、2,2’−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリフェニルホスフィン、およびトリブチルホスフィン等が挙げられるが、特にN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンの様な脂肪族ポリアミン類が原料入手容易性の点で好ましい。
次に、方法(iv)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。方法(iv)は、予めアミノ基を有するアリール基と結合した上記式(2)で表される単量体単位のうち少なくとも1種類の単量体単位を有する高分子部とアシルアセトアニリド類縁体である中間体をそれぞれ合成し、ジアゾカップリングすることによりアゾ骨格構造を有する化合物を合成する。
[P
1は上記方法(i)のスキーム中のP
1と同義である。式(16)中のR
1乃至R
3、Ar
1、mおよびnは、上記方法(i)のスキーム中の式(16)中のR
1乃至R
3、Ar
1、mおよびnと各々同義である。式(23)乃至(25)中のAr
4は、アリーレン基を表す。式(23)中のX
8は、P
1と反応して式(24)中のX
9を形成する置換基を表し、rは1または2を表す。式(24)および(25)中のX
9は式(23)中のX
8とP
1が反応して形成される上記二価の連結基Lを表す。]
上記に例示したスキームでは、高分子部P1にニトロ基含有アリーレン基(23)を導入し、ニトロ基含有アリーレン基を有する高分子部(24)を合成する工程11と、ニトロ基含有アリーレン基を有する高分子部(24)を還元して、アミノ基含有アリーレン基を有する高分子部(25)を合成する工程12と、アミノ基含有アリーレン基を有する高分子部(25)とアシルアセトアニリド類縁体である中間体(16)をジアゾカップリングする工程13によって、アゾ骨格構造を有する化合物を合成する。
まず、工程11について説明する。工程11では、上記方法(i)の工程6と同様の方法を利用し、ニトロ基含有アリーレン基を有する高分子部(24)を合成することができる。例えば、カルボキシル基を有する高分子部P1とX8がヒドロキシル基を有する置換基であるニトロ基含有アリーレン基(23)を反応させることで、連結基がカルボン酸エステル結合であるニトロ基含有アリーレン基を有する高分子部(24)を合成することができる。また、ヒドロキシル基を有する高分子部P1とX8がスルホン酸を有する置換基であるニトロ基含有アリーレン基(23)を反応させることで、連結基がスルホン酸エステル結合であるニトロ基含有アリーレン基を有する高分子部(24)を合成することができる。更に、カルボキシル基を有する高分子部P1とX8がアミノ基を有する置換基であるニトロ基含有アリーレン基(23)を使用することで、連結基がカルボン酸アミド結合であるニトロ基含有アリーレン基を有する高分子部(24)を合成することができる。
上記式(23)のニトロ基含有アリーレン基を有する化合物は多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
次に、工程12について説明する。工程12では上記方法(i)の工程3と同様の方法を適用し、アミノ基含有アリーレン基を有する高分子部(25)を合成することができる。
次に、工程13について説明する。工程13では上記方法(i)の工程2と同様の方法を適用し、アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
上記例示した合成方法の各工程で得られた上記アゾ骨格構造を有する化合物、上記式(11)、(13)、(14)、(16)、(18)、(20)、(22)、(24)および(25)で表される化合物は、通常の有機化合物の単離、精製方法を用い精製することができる。単離、精製方法としては、例えば、有機溶剤を用いた再結晶法や再沈殿法、シリカゲル等を用いたカラムクロマトグラフィー等が挙げられる。これらの方法を単独、または2つ以上組み合わせて精製を行うことにより、高純度の化合物を得ることが可能である。
上記例示した合成方法の各工程で得られた上記式(11)、(13)、(14)、(16)、(18)、(20)、および(22)で表される化合物は、核磁気共鳴分光分析[ECA−400、日本電子(株)製]、ESI−TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)、HPLC分析[LC−20A、(株)島津製作所製]により同定、純度測定を行った。
上記例示した合成方法により得られたアゾ骨格構造を有する化合物、上記式(24)、および(25)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)[HLC8220GPC、東ソー(株)製]、核磁気共鳴分光分析[ECA−400、日本電子(株)製]、JIS K−0070に基づく酸価測定[自動滴定測定装置COM−2500、平沼産業(株)製]により同定、分子量測定を行った。
次に、本発明のトナーの結着樹脂について説明する。
本発明のトナーの結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、およびスチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。例えばスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、およびp−エチルスチレン等のスチレン系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、およびメタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、およびアクリル酸アミド等のアクリレート系単量体、もしくは、ブタジエン、イソプレン、およびシクロヘキセン等のオレフィン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独、または理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いられる[J.Brandrup、E.H.Immergut編、「ポリマーハンドブック」、(米国)、第3版、John Wiley&Sons、1989年、209−277頁を参照]。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において透明性が低下する。本発明のトナーにおける結着樹脂は、ポリスチレン等の非極性樹脂にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性樹脂を併用して用いることで、着色剤や電荷制御剤、ワックス等の添加剤のトナー内分布を制御することができる。例えば、懸濁重合法等により直接トナー粒子を製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に該極性樹脂を添加する。該極性樹脂は、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系媒体の極性のバランスに応じて添加する。その結果、該極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成する等、トナー粒子表面から中心に向けその樹脂濃度が連続的に変化するように制御することができる。この時、上記アゾ骨格構造を有する化合物、着色剤および電荷制御剤と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー粒子中への着色剤の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。
本発明のトナーの着色剤として用いられるカーボンブラックは、特に制限はないが、例えばサーマル法、アセチレン法、チャンネル法、ファーネス法、およびランプブラック法等の製法により得られたカーボンブラックを用いることができる。
本発明に用いるカーボンブラックの一次粒子の平均粒径は、特に制限はないが、一次粒子の平均粒径が14乃至80nmであることが好ましく、より好ましくは25乃至50nmである。一次粒子の平均粒径が14nmよりも小さいと、トナーは赤味を呈し、フルカラー画像形成用のブラックとしては不適となる。逆に、カーボンブラックの一次粒子の平均粒径が80nmより大きい場合には、良好に分散しても着色力が低くなりすぎて好ましくない。
尚、カーボンブラックの一次粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡で拡大した写真を撮影して測定することができる。
本発明に用いるカーボンブラックのDBP吸油量は、特に制限はないが、30乃至200ml/100gであることが好ましく、より好ましくは40乃至150ml/100gである。カーボンブラックのDBP吸油量が30ml/100g未満の場合、良好に分散しても着色力が低くなりやすい。逆に、カーボンブラックのDBP吸油量が200ml/100gより大きい場合には、トナー製造プロセスにおいてカーボンブラック分散液を作製する際に、大量の分散媒が必要となり好ましくない。
尚、カーボンブラックのDBP吸油量とは、カーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)量であり、「JIS K6217」に準拠して測定することができる。
本発明に用いるカーボンブラックのpHは、上記アゾ骨格構造を有する化合物の効果を著しく阻害するものでなく、またトナーの定着性やかぶり等のトナー特性を阻害するものでなければ特に制限はない。
尚、カーボンブラックのpHは、カーボンブラックと蒸留水の混合液をpH電極で測定することができる。
本発明に用いるカーボンブラックの比表面積は、特に制限はないが、300m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは100m2/g以下である。カーボンブラックの比表面積が300m2/gより大きいと、カーボンブラックの良好な分散性を得るために必要な、上記アゾ骨格構造を有する化合物が多く必要となるため好ましくない。
尚、カーボンブラックの比表面積とはBET比表面積であり、「JIS K4652」に準拠して測定することができる。
上記カーボンブラックは単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
本発明のトナーにおけるカーボンブラックとアゾ骨格構造を有する化合物との重量組成比は、100:0.1乃至100:100の範囲である場合が好ましい。更に好ましくは、カーボンブラックの比表面積300m2/g以下である場合、カーボンブラック分散性の点で100:0.5乃至100:20の範囲である場合である。
本発明のトナーにおける着色剤としては、上記カーボンブラックが必ず使用されるが、該カーボンブラックの分散性を阻害しない限りは、他の着色剤を併用することができる。
併用できる着色剤としては、非磁性トナーとして用いる場合には、公知のブラック着色剤を用いることができる。
併用できるブラック着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Black 1、C.I.Pigment Black 10、C.I.Pigment Black 31、C.I.Natural Black 1、C.I.Natural Black 2、C.I.Natural Black 3、C.I.Natural Black 4、C.I.Natural Black 5、C.I.Natural Black 6、および活性炭等が挙げられる。
更に、本発明のトナーには、調色のために、公知のマゼンタ着色剤、シアン着色剤、またはイエロー着色剤を併用して用いることができる。
更に、本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合には、以下に挙げられる磁性材料をブラック着色剤として用いることができる。すなわち、マグネタイト、マグヘマイト、およびフェライト等の酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、およびNi等の金属、或いは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、およびV等の金属との合金、およびこれらの混合物等が挙げられる。
これらの着色剤の使用量は、着色剤の種類によって異なるが、結着樹脂100質量部に対して総量で0.1乃至60質量部、好ましくは0.5乃至50質量部が適当である。更に、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、上記粒子構成分子の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
本発明のトナー粒子に用いられる架橋剤としては、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、およびこれらジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルトリメリテート等が挙げられる。
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、上記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部の範囲、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いることが良い。
更に、本発明においては、定着部材への付着防止のため、結着樹脂の合成時にワックス成分を用いることもできる。
本発明において使用し得るワックス成分としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、およびペトロラタム等の石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックスおよびそれらの誘導体等が挙げられ、該誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、およびグラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物ワックス、動物ワックス等が挙げられる。これらは単独、または併せて用いることができる。
上記ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部の範囲であることが好ましく、更には3.0乃至10.0質量部の範囲であることがより好ましい。ワックス成分の添加量が2.5質量部より少ないとオイルレス定着が困難となり、15.0質量部を超えるとトナー粒子中でのワックス成分の量が多すぎるため、余剰のワックス成分がトナー粒子表面に多く存在して、所望の帯電特性を阻害する可能性があるために好ましくない。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて電荷制御剤を混合して用いることも可能である。これにより、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
電荷制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる電荷制御剤が好ましい。更に、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない電荷制御剤が特に好ましい。
電荷制御剤は、例えば、トナーを負帯電に制御するものとして、スルホン酸基、スルホン酸塩基、またはスルホン酸エステル基を有する重合体、または共重合体、サリチル酸誘導体およびその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、および樹脂系電荷制御剤等が挙げられる。また、トナーを正帯電に制御するものとしては、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩およびこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、および樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。これらを単独でまたは2種類以上組み合わせて用いることができる。
本発明のトナーは、流動化剤として無機微粉体をトナー粒子に添加しても良い。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、またはそれらの複酸化物や、これらを表面処理したもの等の微粉体が使用できる。
本発明のトナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、従来使用されている、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化重合法等が挙げられる。製造時の環境負荷および粒径の制御性の観点から、これらの製造方法のうち、特に懸濁重合法、懸濁造粒法等、水系媒体中で造粒する製造法によって得ることが好ましい。
本発明のトナーの製造法において、アゾ骨格構造を有する化合物と、カーボンブラックとを予め混合し、顔料組成物を調製することで、カーボンブラックの分散性を向上させることができる。
上記顔料組成物は湿式、または乾式にて製造が可能である。アゾ骨格構造を有する化合物が非水溶性溶剤との高い親和性を有していることを考えると簡便に均一な顔料組成物が製造できる湿式による製造が好ましい。例えば、下記のようにして得られる。分散媒中にアゾ骨格構造を有する化合物、および必要に応じて樹脂を溶かし込み、撹拌しながらカーボンブラック粉末を除々に加え十分に分散媒になじませる。更にニーダー、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、またはハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加えることで、カーボンブラックを安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
上記顔料組成物に使用し得る分散媒としては特に限定されないが、アゾ骨格構造を有する化合物の高い顔料分散効果を得るためには、分散媒が非水溶性溶剤である場合が好ましい。該非水溶性溶剤として例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および酢酸プロピル等のエステル類、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびキシレン等の炭化水素類、四塩化炭素、トリクロロエチレン、およびテトラブロモエタン等の含ハロゲン炭化水素類等が挙げられる。
上記顔料組成物に使用し得る分散媒は重合性単量体であっても良い。例えばスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸‐n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびアクリルアミド等を挙げることができる。また、これらの分散媒を2種以上混合して用いることができる。
上記顔料組成物に使用し得る樹脂としては、本発明のトナーの結着樹脂として使用できる樹脂を使用することができる。例えば、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、およびスチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。更に、上記顔料組成物は公知の方法、例えば、濾過、デカンテーションもしくは遠心分離によって単離することができる。溶剤は洗浄によって除去することもできる。
上記顔料組成物は製造時に更に助剤を添加しても良い。例えば、表面活性剤、分散剤、充填剤、標準化剤(standardizers)、樹脂、ワックス、消泡剤、静電防止剤、防塵剤、増量剤、濃淡着色剤(shading colorants)、保存剤、乾燥抑制剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、もしくはこれらの組み合わせである。また、上記アゾ骨格構造を有する化合物は粗製顔料製造の際に予め添加しておいても良い。
本発明の懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。上記顔料組成物、重合性単量体、ワックス成分および重合開始剤等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
上記工程における重合性単量体組成物は、上記顔料組成物を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものであることが好ましい。すなわち、上記顔料組成物を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合することにより、カーボンブラックがより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
上記懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができ、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、および光重合開始剤等が挙げられる。例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、およびtert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、およびセリウム(IV)塩−アルコール系等の開始剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、およびケタール類等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独または2つ以上組み合わせて使用することができる。
上記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1乃至20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1乃至10質量部の範囲である場合である。上記重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独または混合して使用される。
上記懸濁重合法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、およびアルミナ等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、およびデンプン等が挙げられる。また、ノニオン性、アニオン性、またはカチオン性の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、およびオレイン酸カルシウム等が挙げられる。
上記分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。また、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2乃至2.0質量部の範囲となるような割合で使用することが該重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させても良いが、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、上記難水溶性無機分散安定化剤は、水中にて、高速撹拌下、生成されたものであることが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
本発明のトナー粒子は、懸濁造粒法により製造された場合においても好適なトナー粒子を得ることができる。懸濁造粒法の製造工程では加熱工程を有さないため、低融点ワックスを用いた場合に起こる樹脂とワックス成分の相溶化を抑制し、相溶化に起因するトナーのガラス転移温度の低下を防止することができる。また、懸濁造粒法は、結着樹脂となるトナー材料の選択肢が広く、一般的に定着性に有利とされるポリエステル樹脂を主成分にすることが容易である。そのため、懸濁重合法を適用できない樹脂組成のトナーを製造する場合に有利な製造方法である。
上記懸濁造粒法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。先ず、上記顔料組成物、結着樹脂、ワックス成分等を、溶剤中で混合して溶剤組成物を調製する。次に、該溶剤組成物を水系媒体中に分散して溶剤組成物の粒子を造粒してトナー粒子懸濁液を得る。そして、得られた懸濁液を加熱、または減圧によって溶剤を除去することでトナー粒子を得ることができる。
上記工程における溶剤組成物は、上記顔料組成物を第1の溶剤に分散させた分散液を、第2の溶剤と混合して調製されたものであることが好ましい。すなわち、上記顔料組成物を第1の溶剤により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の溶剤と混合することにより、カーボンブラックがより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
上記懸濁造粒法に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、およびヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、および四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、ブタノール、およびイソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、およびトリエチレングリコール等の多価アルコール類、メチルセロソルブ、およびエチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンジルアルコールエチルエーテル、ベンジルアルコールイソプロピルエーテル、およびテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、および酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これらを単独または2種類以上混合して用いることができる。これらのうち、上記トナー粒子懸濁液中の溶剤を容易に除去するため、沸点が低く、且つ上記結着樹脂を十分に溶解できる溶剤を用いることが好ましい。
上記溶剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、50乃至5000質量部の範囲である場合が好ましく、120乃至1000質量部の範囲である場合がより好ましい。
上記懸濁造粒法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、および炭酸バリウム等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、およびラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、およびポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。
上記分散安定化剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲である場合が、該溶剤組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。
本発明において、好ましいトナーの重量平均粒径(以下、D4と記載する)は3.00乃至15.0μmの範囲であり、より好ましくは4.00乃至12.0μmの範囲である場合である。上記の範囲内であれば、帯電安定性を維持しつつ、高精細な画像が得られやすい。
また、トナーのD4と個数平均粒径(以下、D1と記載する)の比(以下、D4/D1と記載する)は、高解像度を維持しつつ、カブリ抑制、転写効率の向上を達成できるという点で、1.35以下、好ましく1.30以下が良い。
尚、本発明のトナーのD4とD1は、トナー粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、または反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
本発明のトナーは、磁性トナーまたは非磁性トナーどちらでも良い。磁性トナーとして用いる場合には、本発明のトナーを構成するトナー粒子は、磁性材料を混合して用いても良い。このような磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、およびフェライト等の酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、およびNi等の金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、およびV等の金属との合金およびこれらの混合物等が挙げられる。本発明の目的に特に好適な磁性材料は四三酸化鉄またはγ−三二酸化鉄の微粉末である。
これらの磁性体は平均粒径が0.1乃至2μm(好ましくは0.1乃至0.3μm)で、795.8kA/m印加での磁気特性が保磁力は1.6乃至12kA/m、飽和磁化は5乃至200Am2/kg(好ましくは50乃至100Am2/kg)、残留磁化は2乃至20Am2/kgである場合がトナーの現像性の点で好ましい。
これら磁性材料の添加量は結着樹脂100質量部に対して、磁性体10乃至200質量部、好ましくは20乃至150質量部使用する場合である。
以下、実施例、比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。尚、以下の記載で「部」、「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
以下に本合成例で用いられる測定方法を示す。
(1)分子量測定
上記高分子部位、およびアゾ骨格構造を有する化合物の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、ポリスチレン換算で算出される。SECによる分子量の測定は以下に示すように行った。
サンプル濃度が1.0%になるようにサンプルを下記溶離液に加え、室温で24時間静置した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過したものをサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF−804の2連
溶離液:THF
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量 :0.025ml
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂[東ソー(株)製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、およびA−500]により作成した分子量校正曲線を使用した。
(2)酸価測定
上記高分子部、アゾ骨格構造を有する化合物の酸価は以下の方法により求められる。
基本操作はJIS K−0070に基づく。
1)試料0.5乃至2.0gを精秤する。このときの質量をM(g)とする。
2)50mlのビーカーに試料を入れ、テトラヒドロフラン/エタノール(2/1)の混合液25mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用い、電位差滴定測定装置を用いて滴定を行う[例えば、平沼産業(株)製自動滴定測定装置「COM−2500」等が利用できる。]。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOH溶液のファクターである。
(3)組成分析
上記高分子部位、アゾ骨格構造を有する化合物の構造決定は以下の装置を用いて行った。
1H NMR
日本電子(株)製ECA−400(使用溶剤 重クロロホルム)
[実施例1]
下記方法で、アゾ骨格構造を有する化合物を得た。
<化合物(41)の製造例>
下記構造で表されるアゾ骨格構造を有する化合物(41)を下記スキームに従い製造した。
まず、クロロホルム30部にp−ニトロアニリン(97)3.11部を加え、10℃以下に氷冷し、ジケテン(98)1.89部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(99)4.70部を得た(収率94.0%)。
次に、2−アミノテレフタル酸ジメチル(100)4.25部に、メタノール40.0部および濃塩酸5.29部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム2.10部を水6.00部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.990部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール70.0部に、上記化合物(99)4.51部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム5.83部を水7.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製することで化合物(101)8.71部を得た(収率96.8%)。
次に、N,N−ジメチルホルムアミド150部に上記化合物(101)8.58部およびパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.40部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(102)6.99部を得た(収率87.5%)。
次に、クロロホルム30.0部に化合物(102)6.50部を加え、10℃以下に氷冷し、ジケテン(98)0.95部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮してアゾ化合物中間体(103)7.01部を得た(収率94.2%)。
次に、2−(4−アミノフェニル)エタノール(104)1.78部に、メタノール15.0部および濃塩酸1.48部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム1.08部を水3.00部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.380部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。N,N−ジメチルホルムアミド70.0部に、炭酸カリウム7.18部を水7.00部に溶解させたものおよび上記化合物(103)6.50部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製することで化合物(105)7.62部を得た(収率91.0%)。
次に、クロロホルム20.0部に化合物(105)2.00部を加え、10℃以下に氷冷し、2−ブロモイソブチリルブロミド(106)0.855部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して中間体(107)2.26部を得た(収率92.0%)。
次に、N,N−ジメチルホルムアミド10.0部に化合物(107)0.684部、スチレン(108)27.3部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.305部および臭化銅(I)0.124部を加えた。その後、窒素雰囲気下、100℃で7.5時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、メタノールでの再沈殿による精製で化合物(41)8.50部を得た(収率85.0%)。
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
[アゾ骨格構造を有する化合物(41)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=15117、数平均分子量(Mn)=12910
[2]酸価測定の結果:
0mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図1参照):
δ [ppm]=15.65(s、1H)、14.77(s、1H)、11.40(s、1H)、11.41(s、1H)、8.62(s、1H)、8.15(d、1H)、7.79(d、1H)、7.74(d、2H)、7.64(d、2H)、7.37−6.27(m、738H)、4.07(s、3H)、3.98(s、3H)、3.73(br、2H)、2.72−2.52(m、9H)、2.47−1.05(m、458H)、1.01−0.78(m、6H)
<化合物(54)の製造例>
アゾ骨格を有する化合物(54)を下記スキームに従い製造した。
まず、プロピレングリコールモノメチルエーテル100部を窒素置換しながら加熱し液温120℃以上で還流させ、そこへ、スチレン(108)190部、アクリル酸(109)10.0部、およびtert−ブチルパーオキシベンゾエート[有機過酸化物系重合開始剤、日油(株)製、商品名:パーブチルZ]1.00部を混合したものを3時間かけて滴下した。滴下終了後、溶液を3時間撹拌した後、液温170℃まで昇温しながら常圧蒸留し、液温170℃到達後は1hPaで減圧下1時間蒸留して脱溶剤し、樹脂固形物を得た。該固形物をテトラヒドロフランに溶解し、n−ヘキサンでの再沈殿による精製で化合物(110)185部を得た(収率92.5%)。
次に、クロロホルム15.0部に化合物(110)3.00部およびオキサリルクロリド184部を加え、窒素ガス雰囲気下、室温で5時間撹拌させた。この溶液に、クロロホルム10.0部、NおよびN−ジメチルホルムアミド5.00部にp−フェニレンジアミン(111)0.644部を溶解させたものを滴下し、窒素ガス雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルム/水により分液し、濃縮して、メタノールでの再沈殿による精製で化合物(112)2.98部を得た(収率90.3%)。
次に、化合物(112)1.00部にテトラヒドロフラン10.0部および濃塩酸0.252部を加えて0℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム0.0900部を水0.270部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.063部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。N,N−ジメチルホルムアミド15.0部に、炭酸カリウム0.446部を水1.50部に溶解させたものおよび上記化合物(103)0.354部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えて、10℃以下で4時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、クロロホルムに溶解させてメタノールでの再沈殿による精製で化合物(54)0.970部を得た(収率97.0%)。
次に、得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
[アゾ骨格を有する化合物(54)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=32442、数平均分子量(Mn)=18329
[2]酸価測定の結果:
0mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図2参照):
δ [ppm]=15.57(s、1H)、14.70(s、1H)、11.44(s、1H)、11.33(s、1H)、8.54(s、1H)、8.07(d、1H)、7.71(d、1H)、7.65(d、2H)、7.56(d、2H)、7.19−6.43(m、136H)、4.00(s、3H)、3.91(s、3H)、2.61(s、3H)、2.50(s、3H)、1.76−0.81(m、97H)
<化合物(91)の製造例>
下記構造で表されるアゾ骨格を有する化合物(91)を下記スキームに従い製造した。
まず、2−ブロモプロピオン酸メチル(113)0.395部にスチレン(108)60.0部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン1.47部および臭化銅(I)0.493部を加え、窒素ガス雰囲気下、100℃で5時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、メタノールでの再沈殿による精製で化合物(114)52.4部を得た(収率81.9%)。
次に、ジオキサン150部に化合物(114)1.00部を加え、110℃で撹拌した後、濃塩酸5.00部とジオキサン30部を混合したものを加え、窒素ガス雰囲気下、110℃で5時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、メタノールでの再沈殿による精製で化合物(115)0.98部を得た(収率98.0%)。
次に、クロロホルム5.00部に化合物(115)1.00部をおよびオキサリルクロリド0.0160部を加え、窒素ガス雰囲気下、室温で5時間撹拌させた。この溶液に、クロロホルム10.0部およびN,N−ジメチルホルムアミド5.00部にp−フェニレンジアミン(111)0.0670部を溶解させたものを滴下し、窒素ガス雰囲気下、60℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルム/水により分液し、濃縮して、メタノールでの再沈殿による精製で化合物(116)0.970部を得た(収率97.0%)。
次に、クロロホルム300部にp−フェニレンジアミン(111)50.0部、アセトン35.0部を加え、10℃以下に氷冷し、ジケテン(98)72.0部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(117)121部を得た(収率97.4%)。
次に、化合物(116)4.00部に、THF40.0部、濃塩酸0.127部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム0.005部を水1.70部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.0320部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール70.0部に、酢酸カリウム0.230部を水1.00部に溶解させたものおよび上記化合物(117)0.0460部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、メタノールでの再沈殿による精製で化合物(91)3.80部を得た(収率95.0%)。
[アゾ骨格を有する化合物(91)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=31686、数平均分子量(Mn)=22633
[2]酸価測定の結果:
0mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図3参照):
δ [ppm]=14.78(s、2H)、11.50(s、2H)、7.63(d、4H)、7.29−6.37(m、1192H)、2.56(s、6H)、2.18−0.99(m、839H)
<化合物(93)の製造例>
下記構造で表されるアゾ骨格を有する化合物(93)を下記スキームに従い製造した。
まず、上記化合物(91)の製造例と同様の操作で化合物(116)を得た。
次に、N,N−ジメチルホルムアミド10.0部に1、3、5−トリアミノベンゼン(119)0.500部およびトリエチルアミン0.345部を加え室温で撹拌した。次に、ジケテン(98)0.949部を加え、50℃で2時間撹拌した。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、化合物(119)1.41部を得た(収率92.8%)。
次に、化合物(116)4.00部に、DMF20部、THF20.0部および濃塩酸0.130部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム0.0450部を水0.136部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.0320部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。DMF15.0部に、酢酸カリウム0.225部を水1.00部に溶解させたものおよび上記化合物(119)0.0440部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製することで化合物(93)3.78部を得た(収率94.5%)。
[アゾ骨格を有する化合物(93)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=48989、数平均分子量(Mn)=28481
[2]酸価測定の結果:
0mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図4参照):
δ [ppm]=14.73(s、3H)、11.53(s、3H)、7.79(s、3H)、7.27−6.31(m、2175H)、2.52(s、9H)、2.12−0.81(m、1461H)
上記アゾ骨格構造を有する化合物(41)、(54)、(91)および(93)の合成例と同様の操作を行い、アゾ骨格を有する化合物(26)乃至(40)、(42)乃至(53)、(55)乃至(90)、(92)、および(94)乃至(96)を製造した。
下記表1に上記高分子部を表わし、下記表2−1乃至2−2に上記アゾ骨格を有する化合物を表す。
[表1中、接頭語αは構造の左につく末端基を表す。WはCOOH基を表し、X、YおよびZは下記構造を表す。「Bn」は無置換のベンジル基を表し、(n)はアルキル基が直鎖状であることを表す。]
[式(X)中、R
30は水素原子、アルキル基を表す。]
[式(Y
1)中、R
31は水素原子、アルキル基を表し、R
32はカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基を表す。]
[式(Y
2)中、R
33は水素原子、アルキル基を表し、R
34はカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基を表す。]
[式(Z)中、R
35は水素原子、アルキル基を表す。]
[表2−1乃至2−2中、m、n、R
1およびR
9乃至R
20は下記式(3)中のm、n、R
1およびR
9乃至R
20を表す。「Pr」は無置換のプロピル基を表し、「Ph」は無置換のフェニル基を表し、(n)、(i)はそれぞれアルキル基が直鎖状、分岐状であることを表す。「高分子部との連結部」が「W」である化合物は、表1に記載の高分子部中の「W」で表わされるCOOH基と結合して連結基Lを形成し、「Z」である化合物は、表1に記載の高分子部中の単量体「Z」中のCOOH基と結合して連結基Lを形成する。表2−1乃至2−2中のL
1乃至L
8は高分子樹脂との連結基Lであり、下記構造を表す。]
[式(L
1)中の「*」は表1に示した高分子部との連結部位を表し、「**」は上記式(1)で表されるアゾ骨格構造中での連結部位を表す。]
[式(L
2)中の「*」は表1に示した高分子部との連結部位を表し、「**」は上記式(1)で表されるアゾ骨格構造中での連結部位を表す。]
[式(L
3)中の「*」は表1に示した高分子部との連結部位を表し、「**」は上記式(1)で表されるアゾ骨格構造中での連結部位を表す。]
[式(L
4)中の「*」は表1に示した高分子部との連結部位を表し、「**」は上記式(1)で表されるアゾ骨格構造中での連結部位を表す。]
[式(L
5)中の「*」は表1に示した高分子部との連結部位を表し、「**」は上記式(1)で表されるアゾ骨格構造中での連結部位を表す。]
[式(L
6)中の「*」は表1に示した高分子部との連結部位を表し、「**」は上記式(1)で表されるアゾ骨格構造中での連結部位を表す。]
[式(L
7)中の「*」は表1に示した高分子部との連結部位を表し、「**」は上記式(1)で表されるアゾ骨格構造中での連結部位を表す。]
[式(L
8)中の「*」は表1に示した高分子部との連結部位を表し、「**」は上記式(1)で表されるアゾ骨格構造中での連結部位を表す。]
[実施例2]
まず、懸濁重合法によるトナー製造プロセスにおける、カーボンブラックとアゾ骨格構造を有する化合物を含有するカーボンブラック分散液を下記の方法で調製した。
<カーボンブラック分散液の調製例1>
着色剤としてカーボンブラック(a)(比表面積=65m2/g、平均粒径=30nm、pH=9.0)30.0部、上記アゾ骨格構造を有する化合物(26)3.0部、非水溶性溶剤としてスチレン180部、ガラスビーズ(φ1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させ、メッシュで濾過してカーボンブラック分散液(DIS1)を得た。
<カーボンブラック分散液の調製例2>
上記カーボンブラック分散液の調製例1においてアゾ骨格構造を有する化合物(26)を、アゾ骨格構造を有する化合物(27)乃至(96)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれカーボンブラック分散液(DIS2)乃至(DIS71)を得た。
<カーボンブラック分散液の調製例3>
上記カーボンブラック分散液の調製例1において、カーボンブラック(a)(比表面積=65m2/g、平均粒径=30nm、pH=9.0)をカーボンブラック(b)(比表面積=77m2/g、平均粒径=28nm、pH=7.5)およびカーボンブラック(c)(比表面積=370m2/g、平均粒径=13nm、pH=3.0)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれカーボンブラック分散液(DIS72)および(DIS73)を得た。
[比較例1]
評価の基準値となるカーボンブラック分散液、比較用のカーボンブラック分散液を下記方法により調製した。
<基準用カーボンブラック分散液の調製例1>
上記実施例2のカーボンブラック分散液の調製例1において、アゾ骨格構造を有する化合物(26)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用カーボンブラック分散液(DIS74)を得た。
<基準用カーボンブラック分散液の調製例2>
上記実施例2のカーボンブラック分散液の調製例3において、アゾ骨格構造を有する化合物(26)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用カーボンブラック分散液(DIS75)および(DIS76)を得た。
<比較用カーボンブラック分散液の調製例1>
上記実施例2のカーボンブラック分散液の調製例1においてアゾ骨格構造を有する化合物(26)を、特許文献1に記載のスチレンホモポリマー(Mw=10,976)(比較化合物1)、スチレン/ブチルアクリレート[共重合比(質量比)=80/20]ランダムコポリマー(Mw=10,804)(比較化合物2)、スチレン/ブチルアクリレート[共重合比(質量比)=95/5]ブロックコポリマー(Mw=9,718)(比較化合物3)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ比較用カーボンブラック分散液(DIS77)乃至(DIS79)を得た。
[実施例3]
上記カーボンブラック分散液を下記の方法で評価した。
<カーボンブラック分散液中の分散性評価>
本発明のアゾ色素骨格ユニットを有する化合物のカーボンブラック分散性を、上記カーボンブラック分散液の塗工膜の光沢試験をおこなうことで評価した。すなわちカーボンブラック分散液をスポイトですくい取り、スーパーアート紙[SA金藤 180kg 80×160、王子製紙(株)製]上部に直線状に載せ、ワイヤーバー(#10)を用いて均一にアート紙上に塗工し、乾燥後の光沢(反射角:75°)を光沢計Gloss Meter VG2000[日本電色工業(株)製]により測定し、下記基準で評価した。尚、カーボンブラックがより微細に分散するほど塗工膜の平滑性が向上し光沢が向上する。
A:光沢値が80%以上
B:光沢値が50%以上、80%未満
C:光沢値が20%以上、50%未満
D:光沢値が20%未満
光沢値が20%以上であれば良好なカーボンブラック分散性であると判断した。
上記カーボンブラック分散液の評価結果を表3に示す。
[実施例4]
次に、下記方法で懸濁重合法による本発明のトナーを製造した。
<トナー製造例1>
高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]を備えた2リットル用4つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液450部を添加し回転数を12000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−CaCl2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系媒体を調製した。次に下記組成物を60℃に加温し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]を用いて5000rpmにて均一に溶解・分散した。
・上記カーボンブラック分散液(DIS1) 132部
・スチレン単量体 46部
・n−ブチルアクリレート単量体 34部
・極性樹脂[飽和ポリエステル樹脂(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、酸価15、ピーク分子量6000)] 10部
・エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピーク=70℃、Mn=704)
25部
・サリチル酸アルミニウム化合物(オリエント化学工業(株)製、商品名:ボントロンE−108) 2部
・ジビニルベンゼン単量体 0.1部
これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を加え、上記水系媒体中に投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
得られた上記重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5で2時間撹拌し、Ca3(PO4)2を含むリン酸とカルシウムの化合物を溶解させた後に、濾過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、濾過器で固液分離した。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とをCa3(PO4)2を含むリン酸とカルシウムの化合物が十分に除去されるまで繰り返し行った。その後、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.0部(一次粒子の数平均径7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15部(一次粒子の数平均径45nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.5部(一次粒子の数平均径200nm)をヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製]で5分間乾式混合して、トナー(TNR1)を得た。
<トナーの製造例2>
上記トナーの製造例1における上記カーボンブラック分散液(DIS1)をカーボンブラック分散液(DIS2)乃至(DIS71)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、本発明のトナー(TNR2)乃至(TNR71)を得た。
<トナーの製造例3>
上記トナーの製造例1における上記カーボンブラック分散液(DIS1)をカーボンブラック分散液(DIS72)および(DIS73)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、本発明のトナー(TNR72)および(TNR73)を得た。
[比較例2]
上記実施例4で製造した本発明のトナーに対して、評価の基準値となるトナー、比較用トナーを下記方法により製造した。
<基準用トナーの製造例1>
上記トナーの製造例1における上記カーボンブラック分散液(DIS1)をカーボンブラック分散液(DIS74)に変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、基準用トナー(TNR74)を得た。
<基準用トナーの製造例2>
上記トナーの製造例1における上記カーボンブラック分散液(DIS1)をカーボンブラック分散液(DIS75)および(DIS76)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、基準用トナー(TNR75)および(TNR76)を得た。
<比較用トナーの製造例1>
上記トナーの製造例1における上記カーボンブラック分散液(DIS1)をカーボンブラック分散液(DIS77)乃至(DIS79)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、比較用トナー(TNR77)乃至(TNR79)を得た。
[実施例5]
次に、下記方法で懸濁造粒法による本発明のトナーを製造した。
<トナーの製造例4>
酢酸エチル180部、カーボンブラック(a)30部、上記アゾ骨格構造を有する化合物(26)3.0部、ガラスビーズ(直径1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]により3時間分散させ、メッシュで濾過することでカーボンブラック分散液を調製した。
下記組成をボールミルで24時間分散することにより、トナー組成物混合液200部を得た。
・上記カーボンブラック分散液 96.0部
・極性樹脂[飽和ポリエステル樹脂(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとフタル酸の重縮合物、Tg=75.9℃、Mw=11000、Mn=4200、酸価11)] 85.0部
・炭化水素ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、DSC測定における最大吸熱ピーク=80℃、Mw=750) 9.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物[ボントロンE−108、オリエント化学工業(株)製] 2部
・酢酸エチル(溶剤) 10.0部
下記組成をボールミルで24時間分散することにより、カルボキシメチルセルロースを溶解し、水系媒体を得た。
・炭酸カルシウム(アクリル酸系共重合体で被覆) 20.0部
・カルボキシメチルセルロース[セロゲンBS−H、第一工業製薬(株)製]
0.5部
・イオン交換水 99.5部
該水系媒体1200部を、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]に入れ、回転羽根を周速度20m/secで撹拌しながら、上記トナー組成物混合液1000部を投入し、25℃一定に維持しながら1分間撹拌して懸濁液を得た。
上記懸濁液2200部をフルゾーン翼[(株)神鋼環境ソリューション製]により周速度45m/minで撹拌しながら、液温を40℃一定に保ち、ブロワ−を用いて上記懸濁液面上の気相を強制吸気し、溶剤除去を開始した。その際、溶剤除去開始から15分後に、イオン性物質として1%に希釈したアンモニア水75部を添加し、続いて溶剤除去開始から1時間後に上記アンモニア水25部を添加し、続いて溶剤除去開始から2時間後に上記アンモニア水25部を添加し、最後に溶剤除去開始から3時間後に上記アンモニア水25部を添加し、総添加量を150部とした。更に液温を40℃に保ったまま、溶剤除去開始から17時間保持し、懸濁粒子から溶剤(酢酸エチル)を除去したトナー分散液を得た。
溶剤除去工程で得られたトナー分散液300部に、10mol/L塩酸80部を加え、更に0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液により中和処理後、吸引濾過によるイオン交換水洗浄を4回繰り返して、トナーケーキを得た。得られたトナーケーキを真空乾燥機で乾燥し、目開き45μmの篩で篩分しトナー粒子を得た。これ以降の操作は上記トナーの製造例1と同様にしてトナー(TNR80)を得た。
<トナーの製造例5>
上記トナーの製造例4におけるアゾ骨格構造を有する化合物(26)を(27)乃至(96)にそれぞれ変更すること以外は、同様の操作で、本発明のトナー(TNR81)乃至(TNR150)を得た。
<トナーの製造例6>
上記カーボンブラック(a)をカーボンブラック(b)およびカーボンブラック(c)にそれぞれ変更すること以外は、上記トナーの製造例5と同様にして、本発明のトナー(TNR151)および(TNR152)を得た。
[比較例3]
実施例5で製造した本発明のトナーに対して、評価の基準値となるトナー、比較用トナーを下記方法により製造した。
<基準用トナーの製造例3>
上記アゾ骨格構造を有する化合物(26)を加えないこと以外は、トナーの製造例4と同様にして、基準用トナー(TNR153)を得た。
<基準用トナーの製造例4>
上記アゾ骨格構造を有する化合物(26)を加えないこと以外は、トナーの製造例6と同様にして、基準用トナー(TNR154)および(TNR155)を得た。
<比較用トナーの製造例2>
上記アゾ骨格構造を有する化合物(26)を、特許文献1に記載のスチレンホモポリマー(Mw=10,976)(比較化合物1)、スチレン/ブチルアクリレート[共重合比(質量比)=80/20]ランダムコポリマー(Mw=10,804)(比較化合物2)、スチレン/ブチルアクリレート[共重合比(質量比)=95/5]ブロックコポリマー(Mw=9,718)(比較化合物3)に変更した以外は、トナーの製造例4と同様にして、比較用トナー(TNR156)乃至(TNR158)を得た。
[実施例6]
本発明で得たトナーを下記の方法で評価した。
トナー(TNR1)乃至(TNR76)、(TNR80)乃至(TNR155)を用いて、画像サンプルを出力し後述する画像特性を比較評価した。尚、画像特性の比較に際し画像形成装置(以下LBPと略)としてLBP−5300(キヤノン社製)の改造機を使用した通紙耐久を行った。改造内容としてはプロセスカートリッジ(以下CRGとする)内の現像ブレードを厚み8[μm]のSUSブレードに交換した。その上でトナー担持体である現像ローラーに印加する現像バイアスに対して−200[V]のブレードバイアスを印加できるようにした。
<トナーの重量平均粒径D4、および個数平均粒径D1の測定>
コールターマルチサイザー[ベックマン・コールター(株)製]を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス[日科機バイオス(株)製]およびパーソナルコンピューターを接続した。電解液は塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を用いるが、例えばISOTON R−II[ベックマン・コールター(株)製]が使用できる。具体的な測定手順は、コールター社発行のコールターマルチサイザーのカタログ(2002年2月版)や、測定装置の操作マニュアルに記載されているが、以下の通りである。
上記電解水溶液100乃至150mlに測定試料を2乃至20mg加えた。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行い、上記コールターマルチサイザーの100μmアパーチャーを用いて、2.0μm以上64.0μm以下のトナー粒子の体積、個数を測定した。得られたデータを16のチャンネルに振り分け、重量平均粒径D4、個数平均粒径D1および、D4/D1を求めた。
本発明の懸濁重合法によるトナーの重量平均粒径D4、およびD4/D1の測定評価結果を表4−1乃至4−2に、懸濁造粒法によるトナーの重量平均粒径D4、およびD4/D1の測定評価結果を表5−1乃至5−2に示す。
<トナーの着色力評価>
常温常湿[N/N(23.5℃,60%RH)]環境下にて、転写紙(75g/m2紙)に対してトナー載り量0.5mg/cm2のベタ画像を作成した。反射濃度計Spectrolino(GretagMacbeth製)を用いてそのベタ画像の濃度を測定した。トナーの着色力はベタ画像濃度の向上率で評価した。
上記トナー(TNR1)乃至(TNR73)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR74)乃至(TNR76)のベタ画像濃度を基準値とした。
上記トナー(TNR80)乃至(TNR152)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR153)乃至(TNR155)のベタ画像濃度を基準値とした。
以下に、トナーの着色力の評価基準を示す。
A:ベタ画像濃度の向上率が60%以上
B:ベタ画像濃度の向上率が40%以上、60%未満
C:ベタ画像濃度の向上率が20%以上、40%未満
D:ベタ画像濃度の向上率が20%未満
ベタ画像濃度の向上率が20%以上であれば良好な着色力であると判断した。
本発明の懸濁重合法によるトナーの着色力評価結果を表4−1乃至4−2に、懸濁造粒法によるトナーの着色力評価結果を表5−1乃至5−2に示す。
<トナーのかぶり評価>
常温常湿[N/N(23.5℃,60%RH)]環境下、および高温高湿[H/H(30℃,80%RH)]環境下にて、転写紙(75g/m2紙)を用いて2%の印字比率の画像を10,000枚までプリントアウトする画出し試験において、耐久評価終了時に白地部分を有する画像を出力し、「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」[(有)東京電色製]により測定したプリントアウト画像の白地部分の白色度[反射率Ds(%)]と転写紙の白色度[平均反射率Dr(%)]の差から、かぶり濃度(%)[=Dr(%)−Ds(%)]を算出し、耐久評価終了時のかぶりを評価した。
以下に、トナーのかぶりの評価基準を示す。
A:かぶり濃度が1.0%未満
B:かぶり濃度が1.0%以上乃至2.0%未満
C:かぶり濃度が2.0%以上乃至3.0%未満
D:かぶり濃度が3.0%以上
かぶり濃度が3%未満であれば実用上問題ないレベルであると判断した。
本発明の懸濁重合法によるトナーのかぶり評価結果を表4−1乃至4−2に、懸濁造粒法によるトナーのかぶり評価結果を表5−1乃至5−2に示す。
<トナーの転写性評価>
高温高湿[H/H(30℃,80%RH)]環境下にて、転写紙(75g/m2紙)を用いて2%の印字比率の画像を10,000枚までプリントアウトする画出し試験において、耐久評価終了時に転写効率確認を行った。トナーの載り量0.65mg/cm2のベタ画像をドラム上に現像させた後、転写紙(75g/m2紙)に転写させ未定着画像を得た。ドラム上のトナー量と転写紙上のトナー量との重量変化から転写効率を求めた(ドラム上トナー量が全量転写紙上に転写された場合を転写効率100%とする。)。
以下に、トナーの転写効率の評価基準を示す。
A:転写効率が95%以上
B:転写効率が90%以上95%未満
C:転写効率が80%以上90%未満
D:転写効率が80%未満
転写効率が80%以上であれば良好な転写効率であると判断した。
本発明の懸濁重合法によるトナーの転写効率評価結果を表4−1乃至4−2に、懸濁造粒法によるトナーの転写効率評価結果を表5−1乃至5−2に示す。
[比較例4]
比較用トナー(TNR77)乃至(TNR79)、(TNR156)乃至(TNR158)について、それぞれ重量平均粒径D4、およびD4/D1、着色力、かぶり、転写効率を実施例6と同様の方法で評価した。
上記比較用トナー(TNR77)乃至(TNR79)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR74)のベタ画像濃度を基準値とした。
上記比較用トナー(TNR156)乃至(TNR158)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR153)のベタ画像濃度を基準値とした。
懸濁重合法による比較用トナーの評価結果を表4−1乃至4−2に、懸濁造粒法による比較用トナーの評価結果を表5−1乃至5−2に示す。
<トナー中のカーボンブラック分散性評価>
合成したブラックトナーを、クロスセクションポリッシャーSM−09010[日本電子(株)製]を用いて断面を形成し、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略)S−4800[(株)日立ハイテクノロジーズ製]によりトナー断面のカーボンブラックを観察した。TNR16のトナー断面SEM写真を図5に、TNR74のブラックトナー断面SEM写真を図6に示す。
表3より明らかなように、アゾ骨格構造を有する化合物を用いることで、カーボンブラックの結着樹脂への分散性を改善することが確認された。また、表4−1乃至4−2より明らかなように、アゾ骨格構造を有する化合物を用いることで、カーボンブラックの結着樹脂への分散性を改善し、着色力が良好なブラックトナーが提供されることが確認された。また、アゾ骨格構造を有する化合物を用いることで、かぶりが抑制され、転写効率が高いブラックトナーが提供されることが確認された。更に、表5−1乃至5−2より明らかなように、懸濁造粒法においても同様に、カーボンブラックの結着樹脂への分散性を改善し、着色力が良好なブラックトナーが提供されること、かぶりが抑制され、転写効率が高いブラックトナーが提供されることが確認された。
更に、図5および図6より明らかなように、アゾ骨格構造を有する化合物を用いることで、トナー中でもカーボンブラックが良好に分散されていることが確認された。