JP3984840B2 - トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電印刷の如き画像形成方法において、静電荷像を現像するためのトナー、またはトナージェット方式の画像形成方法におけるトナー像を形成するためのトナーの製造方法に関し、特にトナーで形成されたトナー像を転写材の如きプリントシートに加熱加圧定着させる定着方式に供されるトナーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
記録体上の電気的或いは磁気的潜像を顕像化するために、トナーといった検電性或いは感磁気性の微粒子を該潜像に吸着させて可視像とする画像形成方法がある。その代表的なものとしては電子写真法が挙げられ、例えば米国特許2,297,691号明細書に記載されているように、多数の方法が知られている。この電子写真法においては、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段で感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像してトナー像を形成し、必要に応じて紙などの転写材にこのトナー画像を転写した後、加熱、加圧、或いは溶剤蒸気を用いてトナー画像を転写材に定着することにより、複写物を得るといったものである。
【0003】
近年、上述の技術がその印字品質の高さ、静粛性といったことからコンピューター、ワードプロセッサー等の出力手段、いわゆるプリンターに使用されるようになっている。通常、プリンターや複写機に使用されるトナーは、主成分が樹脂及び磁性体、カーボンブラック、染料、顔料等の着色剤、及びワックス類からなる微粒子であり、通常その粒径は6〜30μmの範囲である。トナーは、一般に熱可塑性樹脂中に染顔料或いは磁性体からなる着色剤を混合、溶融し、着色剤を均一に分散させた後、微粉砕、分級することにより所望の粒子径を有するトナーとして製造されている。この方法は技術として比較的安定しており、各材料、各工程の管理も比較的容易に行うことができる。
【0004】
一方、重合法によるトナーの製造方法、いわゆる懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案されている。これらは、例えば特公昭36−10231号公報、特公昭51−14895号公報、特開昭53−177735号公報、特開昭53−17736号公報、及び特開昭53−17737号公報に記載されている。この方法は、結着樹脂、染顔料或いは磁性体などの着色剤、カーボンブラック、帯電制御剤、ワックスやシリコーンオイルなどの離型剤等、トナー中に内包すべき物質を必要に応じて重合開始剤や分散剤とともに重合性単量体中に溶解或いは分散させて重合性組成物とし、分散安定剤を含有する水系連続相に分散装置を使用して分散させ、微粒子の分散体とし、この分散体を重合させて固化することによって所望の粒径、組成を有するトナー粒子を得るものである。この方法は粉砕工程が無いためエネルギーの節約、工程収率の向上、コスト削減といった効果が期待されるものである。
【0005】
印字品質を高める方法としては、前述のトナーの粒子径を小さくし、前述の潜像を細かく忠実に再現するための技術が盛んに検討されている。粒子径を小さくすると、単位面積あたりのトナー消費量を少なくすることが可能である一方、転写材上のトナー層厚が薄くなるために、トナー単位体積あたりの着色力を上げる必要がある。その手段としては、着色剤である染顔料の仕込量をアップすることが一般的であるが、さらに染顔料自体の着色力をアップし、OHPの透過性を向上させる手段として、トナー内部の染顔料の分散性を向上させることが盛んに研究されている。
【0006】
一般に染顔料と樹脂とをなじみやすくするために、染顔料の表面処理を行う必要がある。特にアゾ系の顔料は、構造上極性基が多く存在するため、極性基同士の凝集力が強く作用し、良好な分散が得られにくく、表面処理が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
粉砕トナーの場合、染顔料の種類により、結着樹脂組成を調整する必要があるため、染顔料と樹脂とのマッチングが不適切であると、良好な分散状態が得られない。
【0008】
また重合トナーの場合でも染顔料の表面処理を行うことが多いが、多くはシランカップリング剤等による疎水化処理、或いは極性基を有するポリマーである顔料分散剤を色材の表面に吸着させることで顔料の凝集を防ごうとしている。
【0009】
しかし、このような顔料分散剤を用いる場合には、ある程度の分散状態は得られるが、乾燥、成型、重合反応等の後工程における顔料の再凝集、特に水系での重合法トナーの製造方法においては、顔料表面の極性基の存在により、トナー表面への顔料の浮きだしが生じ、帯電性や環境安定性に問題を生じる場合がある。
【0010】
従って本発明は、上記の問題点を解決したトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
即ち、本発明の目的は、トナー中の顔料を微分散させ、着色力、透明性に優れたトナーの製造方法を提供することにある。
【0012】
また本発明の目的は、トナーの着色力が大きくなることにより色再現性、透明性を損なうことなくトナーへの顔料添加量を少量にすることができるトナーの製造法を提供することにある。
【0013】
また本発明の目的は、水系の重合トナーの製造方法において、トナー表面に着色剤の浮きだしがなく、帯電性や環境安定性に優れたトナーの製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記目的は、以下の本発明によって達成することができる。
【0015】
即ち、本発明は、少なくともアゾ系顔料と、アゾ系顔料誘導体及び結着樹脂を溶融混錬し、粉砕し、分級することによってトナーを作製するトナーの製造方法、及び、少なくともアゾ系顔料、アゾ系顔料誘導体とを分散させた重合性単量体組成物を重合反応させてトナーを作製するトナーの製造方法であって、上記アゾ系顔料誘導体が、下記式(I)或いは(II)に示される化合物であることを特徴とするトナーの製造方法に関する。
【0016】
【化3】
【0017】
上記式中、R1は、アセトアセトアニリド類の置換体であり、Xはオリゴマー或いはポリマーであり、R 1 とXとが−O−で結合されており、R2〜R6は−CH3、−NO2、−SO3H、−Cl、−OCH3、−CONH2、−SO2NHCH3、−COOC4H9、−CF3、−CONHC6H5またはそれらの置換体、または、それら2点を結ぶ環状化合物、芳香族を含む環状化合物である。
【0018】
本発明に用いられる顔料誘導体の特徴は、着色剤であるアゾ系顔料に吸着するアゾ系色素の分子骨格と、溶媒及び結着樹脂に親和性のあるオリゴマー或いはポリマーとが共有結合で結合していることである。また、当該顔料誘導体中の上記置換基Xが顔料分散工程で使用される溶媒及び結着樹脂との親和性を持ち、該溶媒中及び該樹脂中で解離することがなく安定に存在可能なことである。よって、かかる顔料誘導体を用いて表面処理したアゾ系顔料は、良好に樹脂中に分散することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明においては、下記式(I)或いは(II)に示されるアゾ系顔料誘導体と、アゾ系顔料及び結着樹脂を溶融混錬し、粉砕し、分級することによってトナーを作製する、或いは、下記式(I)或いは(II)に示されるアゾ系顔料誘導体、アゾ系顔料を分散させた重合性単量体組成物を重合反応させてトナーを作製することに特徴を有する。
【0020】
【化4】
【0021】
上記式中、R1は、アセトアセトアニリド類の置換体であり、Xはオリゴマー或いはポリマーであり、R 1 とXとが−O−で結合されており、R2〜R6は−CH3、−NO2、−SO3H、−Cl、−OCH3、−CONH2、−SO2NHCH3、−COOC4H9、−CF3、−CONHC6H5またはそれらの置換体、または、それら2点を結ぶ環状化合物、芳香族を含む環状化合物である。
【0022】
上記式(I)、(II)の置換基Xとしては、公知のオリゴマーまたはポリマーの置換基が可能であるが、特にスチレン、アクリルまたはそれらの共重合の構造を有するオリゴマーまたはポリマーが有効であり、顔料分散工程で使用される結着樹脂や溶媒、重合性単量体との親和性に優れていることが必要である。例えば、スチレン系ではポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等、アクリル系ではポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等、またはそれぞれの共重合体が挙げられる。
【0023】
また、置換基Xの数平均分子量は顔料分散工程で使用される溶媒に溶解する500〜30000が好ましく、分子量分布はシャープであることが好ましい。
【0024】
本発明のトナーの製造方法としては、従来の粉砕法や重合法を用いることができ、製造工程においてアゾ系顔料の表面処理方法を行う。また、トナーの製造に用いる原材料としては、アゾ系顔料を表面処理するための顔料誘導体を加える以外は公知の材料を用いることができる。
【0025】
本発明において粉砕法によりトナーを製造する場合、本発明にかかる顔料誘導体とアゾ系顔料とを結着樹脂や他の添加剤とともに混合し、熱及び機械的剪断力により溶融混練し分散させる、粉砕分級工程を経てトナー粒子とする。一方、水系の重合法トナー、特に懸濁重合法によりトナーを製造する場合には、重合性単量体組成物中に本発明にかかる顔料誘導体及び必要に応じて他の結着樹脂を溶かし込み、撹拌しながらアゾ系顔料粉末を徐々に加え十分に重合性単量体になじませる。さらにボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加えることで得られた顔料分散ペーストを重合開始剤とともに、トナー粒子を分散させる分散剤を含有する水系溶媒中に添加し、光や熱により重合反応させトナー粒子を得ることができる。尚、いずれの場合にも、必要に応じて溶媒を用いることができる。
【0026】
本発明に用いられるアゾ系顔料としては、公知のアゾ系顔料が利用できる。例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、17、22、112、245、25、146、150、170、185、208、144、166、38、41、48:2、53:1、57:1、C.I.ピグメントイエロー1、3、10、17、74、81、93、94、95、97、98、154、166、167、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、36、等が挙げられる。
【0027】
本発明において用いることのできる溶媒としては、主として置換基Xとの親和性から決められるものである。具体的には、例えば水、メチルアルコール、エチルアルコール、変性エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサンテトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄・窒素含有有機化合物類等から選ばれる。またこれらの溶媒を2種類以上混合して用いることもできる。
【0028】
本発明に用いることができる重合性単量体は、付加重合系或いは縮合重合系単量体である。好ましくは、付加重合系単量体である。具体的にはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体などを挙げることができる。
【0029】
また、本発明に用いられる結着樹脂は主として置換基Xとの親和性から決められるものである。例えば、スチレン系ではポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等、アクリル系ではポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等、エステル系ではポリエステル類、またはそれぞれの共重合体が挙げられる。
【0030】
本発明において、アゾ系顔料の添加量は、粉砕法の場合には結着樹脂、重合法の場合には重合性単量体及び他の結着樹脂100質量部当たり3〜20質量部添加することが好ましい。
【0031】
また、顔料誘導体の添加量は、アゾ系顔料100質量部当たり3〜50質量部添加することが好ましい。
【0032】
本発明において重合法によりトナーを製造する際に用いる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができる。具体的には,2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート、4,4−アゾビス−4−シアノバレル酸、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物;アルカリ金属、金属水酸化物、グリニャール試薬等の求核試薬、プロトン酸、ハロゲン化金属、安定カルボニウムイオン等が挙げられる。重合開始剤の濃度は重合性単量体に対して0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0033】
また、重合法でトナーを製造する際に用いる連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤を挙げることができる。
【0034】
さらに本発明では様々な特性付与を目的として、以下に示すようなトナーの添加剤を用いることもできる。
【0035】
トナーの摩擦帯電特性を安定化するために、トナー粒子に荷電制御剤を含有させても良い。この場合、トナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。トナー粒子の作製に重合法を用いる場合には、重合阻害性がない荷電制御剤が特に好ましい。具体的には、ネガ系制御剤としては、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の金属化合物;スルホン酸、カルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリークスアレーン等が好ましい。ポジ系制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましい。これら荷電制御剤は、粉砕法であれば結着樹脂、重合法であれば重合性単量体及び必要に応じて添加される他の結着樹脂100質量部に対し0.5乃至10質量部添加することが好ましい。
【0036】
流動性付与剤としては、金属酸化物(酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等)が好適に用いられる。これらは疎水化処理を行ったものがより好ましい。研磨剤としては、金属酸化物(チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロムなど)、窒化物(窒化ケイ素等)、炭化物(炭化ケイ素等)、金属塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)が好適に用いられる。滑剤としては、フッ素系樹脂粉末(フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等)が好適に用いられる。荷電制御性粒子としては、金属酸化物(酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)、カーボンブラック等が好適に用いられる。
【0037】
これらの添加剤は、トナー粒子100質量部に対し0.1乃至10質量部用いられ、好ましくは0.1乃至5質量部が用いられる。これらの添加剤は、単独で使用しても良いし、複数を併用しても良い。
【0038】
本発明のトナーは一成分系現像剤として用いることもできるし、キャリアと混合して二成分系現像剤として用いることもできる。
【0039】
本発明で使用する各種の測定方法について、以下にまとめて説明する。
【0040】
<分子量分布>
本発明にかかる樹脂成分の分子量分布は、GPC測定装置(HLC−8120GPC、東ソー社製)を用いて、下記の測定条件で測定した。
カラム:TSKgelHM−M(6.0mmφ×15cm)の2連
温度:40℃
流速:0.6ml/min
検出器:RI
サンプル濃度:0.1%の試料を10μl
【0041】
サンプル調製は、測定対象の試料をテトラヒドロフラン(THF)中に入れ、数時間放置した後、充分に振とうし(試料の合一体がなくなるまで)、さらに12時間静置して行なう。そして、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45μm)を通過させたものをGPC測定用試料とする。検量線は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。
【0042】
<摩擦帯電量の測定方法>
トナーとキャリアを現像剤化するとき適当な混合量(2〜15質量%)となるように混合し、ターブラミキサーで180秒混合する。この混合粉体(現像剤)を底部に635メッシュの導電性スクリーンを装着した金属製の容器にいれ、吸引機で吸引し、吸引前後の重量差と容器に接続されたコンデンサーに蓄積された電位から摩擦帯電量を求める。この際、吸引圧を250mmHgとする。この方法によって、摩擦帯電量を下記式を用いて算出する。
【0043】
Q(μC/g)=(C×V)/(W1−W2)
W1:吸引前の質量
W2:吸引後の質量
C:コンデンサーの容量
V:コンデンサーに蓄積された電位
【0044】
<トナー粒径測定>
電解質溶液100〜150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml添加し、これに測定試料を2〜20mg添加する。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、コールターカウンターマルチサイザーにより100μmのアパーチャーを用いて体積を基準として2〜40μmの粒度分布等を測定し、個数平均粒径、重量平均粒径を算出するものとする。
【0045】
【実施例】
以下に本発明を実施例をもって説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中で使用する部はすべて質量部を示す。
【0046】
(実施例1)
<顔料誘導体の製造例1>
以下に示す方法によりアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー17)のスチレン誘導体の合成を行った。
【0047】
(1)C.I.ピグメントイエロー17の脱メチル化
300mlの反応容器に顔料(C.I.ピグメントイエロー17)10.0g、AlBr3を8.6g、ベンゼン150mlを仕込み、30時間加熱還流させた。反応液を氷水中にあけ、析出結晶を濾過した。結晶をアンモニア水で洗浄し、水洗乾燥して、9.4gのオレンジ色結晶Bを得た。得られた結晶をIR分析したところ、OH基の吸収がみられ、脱メチル反応が進んでいることが確認された
【0048】
(2)スチレン/アクリル酸共重合体の付加反応
反応容器にスチレン/アクリル酸共重合体(共重合比:7/3、Mn=5700、Mw=7400)4.0g、トルエン40ml、塩化チオニル12mlを仕込み、次いでピリジン0.2mlを滴下し、10時間還流を行った。反応物はエバポレータにより濃縮し、酸塩素化されたポリマーCを得た。
【0049】
次いで上記結晶Bを4.0g、ニトロベンゼン80ml、塩化アルミニウム8.0gを反応容器に仕込み、室温で4時間撹拌した後、上記ポリマーC25.0gを添加し、室温で6時間撹拌した。反応物をTHF100mlで希釈した後、2リットルのメタノール中に滴下し、再沈精製を行った。さらにメタノールで洗浄濾過を繰り返し、室温で12時間減圧乾燥を行い、目的の顔料誘導体Aを得た。
【0050】
<顔料誘導体の製造例2>
C.I.ピグメントイエロー17をC.I.ピグメントイエロー74に変える以外は顔料誘導体の製造例1と同様に合成を行い、顔料誘導体Bを得た。
【0051】
<樹脂(1)の製造>
スチレン60部、n−ブチルアクリレート25部、マレイン酸モノブチル15部、ジビニルベンゼン0.5部、ベンゾイルパーオキサイド1.2部を混合して溶液1を作製し、水170部にポリビニルアルコール部分ケン化物0.12部を溶解したものを溶液2とする。このようにして得られた溶液1と2を激しく撹拌して懸濁分散液を調整した。次に、水300部を入れ窒素置換した反応器に、上記で得られた懸濁分散液を添加し、反応温度75℃で8時間懸濁重合反応させた。反応終了後、水洗し、脱水乾燥して樹脂(1)を得た。
【0052】
<トナーの作製例1>
樹脂(1) 100部
顔料誘導体A 4部
モノアゾイエロー(C.I.ピグメントイエロー74) 6部
クロム錯体(荷電制御剤) 4部
【0053】
上記材料をブレンダ−でよく混合した後、150℃で設定した二軸混練押出機にて混練した。得られた混練物を冷却し、カッタ−ミルにて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕粉を固定壁型風力分級機で分級して分級粉を作製した。更に、上記で得られた分級粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業製 エルボジェット分級機)を用いて、超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去してイエロー色の樹脂微粉体を得た。
【0054】
<作製したトナーの評価>
得られたトナーの粒径をコールターカウンターで測定したところ、重量平均径7.8μmを有していた。トナー粒子の断面を染色超薄切片法により透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂層には約50nm〜70nmの顔料粒子が均一に微分散されていることが確認された。
【0055】
得られたトナー100部に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカ0.8部を外添した。このトナー7部に対し、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体で表面被覆した、粒径45μmのフェライトキャリア93部を混合し、現像剤とした。
【0056】
得られた現像剤0.1gをブローオフ法により帯電量を測定したところ、−20.5μC/gであった。この現像剤を用いてキヤノン製フルカラー複写機CLC−500改造機を用いて画像出しを行った。現像条件は温度25℃/湿度60%RHの環境下で現像コントラスト300Vで行なった。得られた画像はトナー載り量も適当であって、濃度も高く、細線の再現性も良好で、高品質な画像が得られた。本評価を、低温低湿(15℃/15%)、高温高湿(30℃/75%)でも行ったところ、いずれもカブリの発生もなく、濃度変化も少なく、トナーが良好な帯電特性を示していることがわかった。また、OHPシートに同様に画像出しを行い、OHPにて投影してみたところ、透明性の高いイエロー色の投影画像が得られた。
【0057】
(実施例2)
<顔料ペーストの作製例1>
スチレンモノマー 340部
顔料誘導体A 4部
モノアゾイエロー(C.I.ピグメントイエロー74) 20部
を容器中でよくプレミクスした後に、それを20℃以下に保ったままビーズミルで約5時間分散し、顔料分散ペーストaを作製した。得られた顔料分散ペーストaをガラス板上にワイヤーバーを用いて均一に塗布し、自然乾燥した後、光沢値を測定したところ107であり、良好な平滑性を示した。また、アルミ箔上に同様に塗布したものをSEM観察したところ、粒径は約50nm〜100nmであり、顔料が細かく均一に分散されていることがわかった。
【0058】
<トナーの作製例2>
イオン交換水710部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入し、60℃に加温した後、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて11000rpmにて撹拌した。これに1.0M−CaCl2水溶液70部を徐々に添加し、Ca3(PO4)2を含む分散媒体を得た。
顔料分散ペーストa 182部
2−エチルへキシルアクリレート 30部
パラフィンワックス(m.p.75℃) 60部
スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体 5部
ジ−tert−ブチルサリチル酸金属化合物 3部
これらを60℃に加温し、溶解・分散して単量体混合物とした。さらに60℃に保持しながら、開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10部を加えて溶解し、単量体組成物を調製した。
【0059】
前記ホモミキサーの2リットルフラスコ中で調製した分散媒に、上記単量体組成物を投入した。60℃で、窒素雰囲気としたTKホモミキサーを用いて10000rpmで20分間撹拌し、単量体組成物を造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ60℃で3時間反応させた後、80℃で10時間重合させた。重合反応終了後、反応生成物を冷却し、塩酸を加えて、Ca3(PO4)2を溶解し、濾過・水洗乾燥することにより、重合トナーを得た。
【0060】
<作製したトナーの評価>
得られたトナーの粒径をコールターカウンターで測定したところ、重量平均径7.6μmを有していた。トナー表面を電子走査型顕微鏡(SEM)により観察したところ、顔料粒子は観察されなかった。さらに、実施例1と同様に粒子の断面を染色超薄切片法により透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、スチレン−アクリル樹脂を主体とする表層部とワックスを主体とする中心部に分かれており、カプセル構造が確認された。また、スチレン−アクリル樹脂層には約50nm〜100nmの顔料粒子が均一に微分散されていることが確認された。
【0061】
実施例1と同様に現像剤を作製し、得られた現像剤0.1gをブローオフ法により実施例1と同様に帯電量を測定したところ、−16.9μC/gであった。この現像剤を用いてキヤノン製フルカラー複写機CLC−500改造機を用いて実施例1と同様に画像出しを行った。現像条件は温度25℃/湿度60%RHの環境下で現像コントラスト300Vで行なった。得られた画像はトナー載り量も適当であって、濃度も高く、細線の再現性も良好で、高品質な画像が得られた。本評価を、低温低湿(15℃/15%)、高温高湿(30℃/75%)でも行ったところ、いずれもカブリの発生もなく、濃度変化も少なく、トナーが良好な帯電特性を示していることがわかった。また、OHPシートに同様に画像出しを行い、OHPにて投影してみたところ、透明性の高いイエロー色の投影画像が得られた。
【0062】
(実施例3)
<顔料ペーストの作製例2>
スチレンモノマー 320部
n−ブチルアクリレート 80部
顔料誘導体B 4部
ジスアゾイエロー(C.I.ピグメントイエロー17) 20部
を容器中でよくプレミクスした後に、それを20℃以下に保ったままビーズミルで約5時間分散し、顔料分散ペーストbを作製した。
【0063】
得られた顔料分散ペーストbをガラス板上にワイヤーバーを用いて均一に塗布し、自然乾燥した後、光沢値を測定したところ110であり、良好な平滑性を示した。また、アルミ箔上に同様に塗布したものをSEM観察したところ、粒径は約60nm〜80nmであり、顔料が細かく均一に分散されていることがわかった。
【0064】
<トナーの作製例3>
トナーの作製例2と同様にCa3(PO4)2を含む分散媒体を得た。
顔料分散ペーストb 212部
パラフィンワックス(m.p.75℃) 60部
スチレン−メタクリル酸共重合体(95:5,Mw5万) 5部
ジ−tert−ブチルサリチル酸金属化合物 3部
これらを60℃に加温し、溶解・分散して単量体混合物とした。さらに60℃に保持しながら、開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を加えて溶解し、単量体組成物を調製した。
【0065】
前記ホモミキサーの2リットルフラスコ中で調製した分散媒に、上記単量体組成物を投入した。60℃で、窒素雰囲気としたTKホモミキサーを用いて10000rpmで20分間撹拌し、単量体組成物を造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ60℃で1時間反応させた後、80℃で12時間反応させた。重合反応終了後、反応生成物を冷却し、塩酸を加えて、Ca3(PO4)2を溶解し、濾過・水洗乾燥することにより、重合トナーを得た。
【0066】
<作製したトナーの評価>
得られたトナーの粒径をコールターカウンターで測定したところ、重量平均径8.5μmを有していた。実施例2と同様にトナー表面をSEMにより観察したところ、実施例2と同様に顔料粒子は観察されなかった。さらに、実施例2と同様に粒子の断面をTEMにより観察したところ、実施例2と同様のカプセル構造が確認され、スチレン−アクリル樹脂層には約60nm〜100nmの顔料粒子が均一に微分散されていることが確認された。
【0067】
実施例1と同様に現像剤を作製したところ、帯電量は−21.2μC/gであった。この現像剤を用いてキヤノン製フルカラー複写機CLC−500改造機を用いて実施例1と同様の画像出しを行った。得られた画像はトナー載り量も適当であって、濃度も高く、細線の再現性も良好で、高品質な画像が得られた。本評価を、低温低湿(15℃/15%)、高温高湿(30℃/75%)でも行ったところ、いずれもカブリの発生もなく、濃度変化も少なく、トナーが良好な帯電特性を示していることがわかった。また、OHPシートに同様に画像出しを行い、OHPにて投影してみたところ、透明性の高いイエロー色の投影画像が得られた。
【0068】
(比較例1)
<顔料ペーストの作製例3>
スチレンモノマー 320部
n−ブチルアクリレート 80部
ジスアゾイエロー(C.I.ピグメントイエロー17) 20部
を容器中でよくプレミクスした後に、それを20℃以下に保ったままビーズミルで約5時間分散し、顔料分散ペーストcを作製した。
【0069】
得られた顔料分散ペーストcをガラス板上に実施例2と同様に塗布し、光沢値を測定したところ68となり平滑性が得られなかった。また、実施例2と同様にアルミ箔上に塗布したものをSEM観察したところ、粒径は200nm程度の粗粒が多くみられ、顔料の凝集による粒度分布のばらつきが顕著であった。
【0070】
<トナーの作製例4>
トナーの作製例2と同様にCa3(PO4)2を含む分散媒体を得た。
顔料分散ペーストc 212部
パラフィンワックス(m.p.75℃) 60部
スチレン−メタクリル酸共重合体(95:5,Mw5万) 5部
ジ−tert−ブチルサリチル酸金属化合物 3部
これらを60℃に加温し、溶解・分散して単量体混合物とした。さらに実施例2と同様に開始剤を加え、造粒および重合、洗浄、乾燥を経て、重合トナーを得た。
【0071】
<作製したトナーの評価>
得られたトナーの粒径をコールターカウンターで測定したところ、重量平均径8.2μmを有していた。実施例2と同様にトナー表面をSEMにより観察したところ、実施例2と同様に顔料粒子は観察されなかった。さらに、実施例2と同様に粒子の断面をTEMにより観察したところ、実施例2と同様のカプセル構造が確認され、スチレン−アクリル樹脂層には100nm〜200nmの顔料粒子が分散されていた。また、ワックスとスチレンアクリル樹脂との界面に顔料粒子が多く堆積していることが観察された。
【0072】
実施例1と同様に現像剤を作製したところ、帯電量は−22.0μC/gであった。この現像剤を用いてキヤノン製フルカラー複写機CLC−500改造機を用いて実施例21と同様の画像出しを行った。得られた画像はトナー載り量も適当であり、細線の再現性も良好であり、低温低湿(15℃/15%)、高温高湿(30℃/75%)環境下でも行ったところ、いずれもカブリの発生もなく、トナーが良好な帯電特性を示していることがわかった。しかし、OHPシートに同様に画像出しを行い、OHPにて投影してみたところ、実施例3に比べ透明性にわずかに劣る投影画像となり、彩度も実施例3ほど得られなかった。
【0073】
(比較例2)
<トナーの作製例5>
樹脂(1) 100部
モノアゾイエロー(C.I.ピグメントイエロー74) 6部
クロム錯体(荷電制御剤) 4部
上記材料をトナー作製例1と同様に混練、粉砕、分級を行い、イエロー色の樹脂微粉体を得た。
【0074】
<作製したトナーの評価>
得られたトナーの粒径をコールターカウンターで測定したところ、重量平均径7.7μmを有していた。実施例1と同様に粒子の断面をTEMにより観察したところ、スチレン−n−ブチルメタクリレ−ト樹脂層には約55nm〜180nmの顔料粒子が若干凝集気味に存在していることがわかった。
【0075】
実施例1と同様に現像剤を作製したところ、帯電量は−15.7μC/gであった。この現像剤を用いてキヤノン製フルカラー複写機CLC−500改造機を用いて実施例1と同様に、OHPシート上への画像出しをしたところ、実施例1に比べ透明性にわずかに劣るイエロー色の投影画像が得られた。
【0076】
【発明の効果】
本発明においては、トナー中に顔料を微分散させ、着色力、透明性に優れたトナーを提供することができ、特に、水系の重合トナーにおいて、トナー表面に着色剤の浮きだしがなく、帯電性や環境安定性に優れたトナーを提供することが可能となる。
Claims (6)
- 少なくともアゾ系顔料、アゾ系顔料誘導体及び結着樹脂を溶融混錬し、粉砕し、分級することによってトナーを作製するトナーの製造方法であって、
上記アゾ系顔料誘導体が、下記式(I)或いは(II)に示される化合物であることを特徴とするトナーの製造方法。
- 少なくともアゾ系顔料、アゾ系顔料誘導体を分散させた重合性単量体組成物を重合反応させてトナーを作製するトナーの製造方法であって、
上記アゾ系顔料誘導体が、下記式(I)或いは(II)に示される化合物であることを特徴とするトナーの製造方法。
- 該アゾ系顔料誘導体の置換基Xがスチレン、アクリルまたはそれらの共重合の構造を有するオリゴマーまたはポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
- 上記置換基Xの数平均分子量が500〜100000であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 重合性単量体組成物を熱により重合反応させ、トナーを作製することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 上記重合性単量体組成物を水系媒体中に分散させて懸濁重合法によりトナーを作製することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
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