しかし、上述した従来のプロジェクタ、特に、特許文献2で開示される液晶プロジェクタは、次のような問題点があった。
第一に、アスペクト比を変換し、黒帯が生じない映像を投射する場合、基本的には、標準レンズに対してアナモフィックレンズを装着する方法が画質や明るさの損失を回避する上で最も望ましい方法となるが、特許文献2で開示される方法は、いわば人為的な着脱作業が必要になるため、確実に固定できる利点はあるものの、レンズの交換作業に時間がかかるとともに、プロジェクタをいわゆる天吊り方式により高い位置に設置したような場合、その設置位置によっては交換作業に大変な労力を必要とする。
第二に、レンズの交換(切換)を、駆動モータを用いて使用位置又は非使用位置へ選択的に移動させる自動切換方式で行う機構も構築可能であるが、この場合、使用位置に移動させた際の位置決め精度の確保、さらには駆動モータ及び動力伝達機構により発生するバックラッシュを回避するのは容易でなく、コストアップやサイズアップ等の新たな問題も無視できない。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したレンズ交換装置及びプロジェクタの提供を目的とするものである。
本発明に係るレンズ切換装置1は、上述した課題を解決するため、投射レンズLの一部Lp又は全部(以下、可動レンズユニットUm)を移動させて使用位置Xu又は非使用位置Xrに切換えるレンズ切換装置を構成するに際して、可動レンズユニットUmを移動自在に支持するレンズ支持機構部2と、可動レンズユニットUmを移動させる駆動機構部3と、可動レンズユニットUmが移動する移動範囲を規制する規制機構部4と、可動レンズユニットUmを非使用位置Xrから使用位置Xuへ移動させる際に、当該使用位置Xuの手前から当該使用位置Xuに至るまで可動レンズユニットUmを弾性部材16により加圧し、摩擦力を大きくする弾圧機構15を設けることにより、使用位置Xuの手前で移動時の負荷を増加させ、かつ使用位置Xuで増加させた負荷を所定の大きさに維持する負荷変化機構部5とを備えることを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、投射レンズLの一部Lpには、画面のアスペクト比を変更できる回転非対象なレンズLpaを適用することができる。なお、可動レンズユニットUmは、投射レンズLの縮小側に配することが望ましい。また、レンズ支持機構部2は、可動レンズユニットUmに設けたスライダ部11及びこのスライダ部11を移動自在に支持するガイドレール部12により構成できるとともに、このレンズ支持機構部2は、可動レンズユニットUmを、相対的に大きな光学パワーを有する断面方向に対して直角方向へ移動可能に支持することができる。さらに、駆動機構部3は、ロータリモータ又はリニアモータを含む駆動モータ13を用いて構成することができる。一方、規制機構部4は、可動レンズユニットUmに当接して移動範囲を規制する離間した一対のストッパ部14p,14qと、可動レンズユニットUmがストッパ部14p,14qに当接した際に増加する駆動モータ13の負荷電流を検出して当該駆動モータ13を停止させる制御機能部14cとを備えて構成できる。また、負荷変化機構部5は、使用位置Xuにおける負荷の大きさが直前の負荷の大きさよりも小さくなるように設定することが望ましい。
他方、本発明に係るプロジェクタPは、上述した課題を解決するため、スクリーンに映像を投射するプロジェクタであって、以上の構成を有するレンズ切換装置1を備えることを特徴とする。
このような構成を有する本発明に係るレンズ切換装置1及びプロジェクタPによれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 可動レンズユニットUmが移動する移動範囲を規制機構部4により規制するとともに、可動レンズユニットUmを非使用位置Xrから使用位置Xuへ移動させる際に、負荷変化機構部5により、使用位置Xuの手前で移動時の負荷を増加させ、かつ使用位置Xuで増加させた負荷を所定の大きさに維持するようにしたため、使用位置Xuに移動させた際における駆動モータ及び動力伝達機構により発生する停止時の衝撃等を有効に排除できる。したがって、無用な振動等を防止し、使用位置Xuに切換えたアナモフィックレンズ等を有する可動レンズユニットUmに対する高い位置決め精度を容易に確保できる。しかも、使用位置Xuに至る寸前で負荷がかかり、停止する際の衝撃等の発生を低減できるため、可動レンズユニットUmを含む可動部分の信頼性向上及び衝撃音の低減による静音性向上に寄与できる。
(2) レンズ支持機構部2により可動レンズユニットUmを移動自在に支持し、かつ駆動機構部3により可動レンズユニットUmを移動させるとともに、規制機構部4により可動レンズユニットUmが移動する移動範囲を規制するようにしたため、プロジェクタPに対して可動レンズユニットUmを切換える場合であっても人為的な切換作業が不要になる。したがって、可動レンズユニットUmを切換える際における労力を排除して迅速な切換を実現できるという基本的効果を享受できる。
(3) 負荷変化機構部5は、可動レンズユニットUmを使用位置Xuへ移動させる際に、当該使用位置Xuの手前から当該使用位置Xuに至るまで可動レンズユニットUmを弾性部材16により加圧し、摩擦力を大きくする弾圧機構15を用いて構成したため、使用位置Xuの手前で移動時の負荷を増加させ、かつ使用位置Xuで増加させた負荷を所定の大きさに維持する負荷変化機構部5を、無視できないコストアップやサイズアップを生じることなく容易に構築することができる。
(4) 好適な態様により、投射レンズLの一部Lpに、画面のアスペクト比を変更できる回転非対象なレンズLpaを適用すれば、例えば、アスペクト比が異なるビスタサイズ又はスコープサイズの双方の映像を投射する場合であっても、黒帯の無い高品質の投映を実現できるとともに、その切換を容易かつ迅速に行うことができる。
(5) 好適な態様により、可動レンズユニットUmを、投射レンズLの縮小側に配すれば、位置決め構造の簡略化を実現できる。即ち、通常、縮小側は、レンズの偏芯感度が高いため、高精度な位置決めが必要となるが、可動レンズユニットUmを、投射レンズLの縮小側に配することにより、高精度な位置決めが不要となることから、位置決め構造の簡略化を図ることができる。
(6) 好適な態様により、レンズ支持機構部2を、可動レンズユニットUmに設けたスライダ部11と、このスライダ部11を移動自在に支持するガイドレール部12とを設けて構成すれば、可動レンズユニットUmが大きな重量であっても、必要な範囲の移動を、容易,正確かつ確実に実現できる。
(7) 好適な態様により、レンズ支持機構部2により、可動レンズユニットUmを、相対的に大きな光学パワーを有する断面方向に対して直角方向へ移動可能に支持するようにすれば、可動レンズユニットUmを移動させた場合であっても、この移動による偏芯の影響を受けにくくすることができる。
(8) 好適な態様により、駆動機構部3を、ロータリモータ又はリニアモータを含む駆動モータ13を用いて構成すれば、汎用モータの利用により容易かつ低コストに実施できる。
(9) 好適な態様により、規制機構部4を、可動レンズユニットUmに当接して移動範囲を規制する離間した一対のストッパ部14p,14qと、可動レンズユニットUmがストッパ部14p,14qに当接した際に増加する駆動モータ13の負荷電流を検出して当該駆動モータ13を停止させる制御機能部14cとを設けて構成すれば、高価なサーボモータ等を用いることなく、正確な使用位置Xuに停止させ、かつ位置決めすることが可能となる。
(10) 好適な態様により、負荷変化機構部5において、使用位置Xuにおける負荷の大きさが直前の負荷の大きさよりも小さくなるように設定すれば、弾圧機構15はいわばクリック係合した状態となるため、可動レンズユニットUmを使用位置Xuに確実に停止できるとともに、信頼性及び安定性の高い機構を実現できる。
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
最初に、本発明の理解を容易にするため、本実施形態に係るレンズ切換装置1を有する投射レンズLを備えるプロジェクタ(フロントプロジェクタ)Pの概略構成について、図2を参照して説明する。
図2に示すように、プロジェクタPは、映像を投写する光学系50及びこの光学系50の動作を制御する制御系70を備える。光学系50において、光源51は、例えば、超高圧水銀ランプであって、R光,G光及びB光を含む光を照射する。なお、光源51は、超高圧水銀ランブ以外の放電光源であってもよいし、LEDやレーザーのような固体光源であってもよい。また、第一インテグレータレンズ52及び第二インテグレータレンズ53は、アレイ状に配列された複数のレンズ素子を有し、第一インテグレータレンズ52は、光源51からの光束を複数に分割するとともに、第一インテグレータレンズ52の各レンズ素子は、光源51からの光束を第二インテグレータレンズ53のレンズ素子近傍にて集光させる機能を有する。一方、第二インテグレータレンズ53のレンズ素子は、重畳レンズ54と協働して第一インテグレータレンズ52のレンズ素子の像を液晶パネル55R,55G及び55Bに形成する。このような構成により、光源51からの光は、液晶パネル55R,55G及び55Bの表示領域全体を略均一な明るさにより照明する。
偏光変換素子56は、第二インテグレータレンズ53からの光を所定の直線偏光に変換するとともに、重畳レンズ54は、第一インテグレータレンズ52の各レンズ素子の像を、第二インテグレータレンズ53を介して液晶パネル55R,55G及び55Bの表示領域上で重畳させる。第一ダイクロイックミラー57は、重畳レンズ54から入射したR光を反射させ、G光及びB光を透過させる。そして、第一ダイクロイックミラー57で反射されたR光は、反射ミラー58及びフィールドレンズ59Rを経て、光変調素子である液晶パネル55Rヘ入射するとともに、液晶パネル55Rは、R光を画像信号に応じて変調することにより、R色の画像を形成する。
第二ダイクロイックミラー60は、第一ダイクロイックミラー57からのG光を阪射させ、B光を透過させるとともに、第二ダイクロイックミラー60で反射したG光は、フィールドレンズ59Gを経て、光変調素子である液晶パネル55Gへ入射する。液晶パネル55Gは、G光を画像信号に応じて変調し、G色の画像を形成する。一方、第二ダイクロイックミラー60を透過したB光は、リレーレンズ61,62、反射ミラー63,64、及びフィールドレンズ59Bを経て、光変調素子である液晶パネル55Bへ入射する。液晶パネル55Bは、B光を画像信号に応じて変調し、B色の画像を形成する。クロスダイクロイックプリズム65は、光合成用のプリズムであり、各液晶パネル55R,55G及び55Bで変調された光を合成して画像光とし、本実施形態に係る投写レンズLに入光させるとともに、この投写レンズLにより、映像を不図示のスクリーン上に役写する。
制御系70は、ビデオ信号等の外部画像信号Svが入力される画像処理部71と、この画像処理部71の出力に基づいて光学系50に設けた液晶パネル55G,55R,55Bを駆動する表示駆動部72と、投写レンズLに設けた駆動機構(不図示)を動作させて投写レンズLの状態を調整するレンズ駆動部73と、これらの回路部分71,72,73等の動作を統括的に制御するレンズ制御部74を備える。
画像処理部71は、入力された外部画像信号を各色の階調等を含む画像信号に変換する。画像処理部71は、投写レンズLが画像の横縦比又はアスペクト比(縦横比)を変換して投写する状態(位置)にある場合、投写レンズ1による横縦比の変換を逆にした画像のアスペクト比変換を予め行って、スクリーン上に表示される画像が縦横に伸縮しないようにする。具体的には、投写レンズLによって、例えば、1.78:1から、例えば、2.4:1となるように横方向に画像の伸張が行われる場合、予め、横方向に0.742=1.78/2.4倍の画像の圧縮が行われ、或いは、縦方向に1.35=2.4/1.78倍の画像の伸張が行われる。一方、投写レンズLが画像の横縦比又はアスペクト比を変換しないで投写する状態(位置)にある場合、画像処理部71は、上記のような画像のアスペクト比変換を行わない。なお、画像処理部71は、外部画像信号に対して歪補正や色補正等の各種画像処理を行うこともできる。
次に、本実施形態に係るレンズ切換装置1を有する投射レンズLの全体構成について、図1〜図6を参照して説明する。
投射レンズLは、スクリーン(不図示)に映像を投射する上述したプロジェクタPに装着したプロジェクタ用レンズである。例示の投射レンズLは、三つのレンズ部からなる基本構成を備える。即ち、最前部に配する位置を固定した第一のレンズ部を構成する前レンズ部Lfと、前レンズ部Lfの後方に離間して配する位置を固定した第二のレンズ部を構成する後レンズ部Lrと、前レンズ部Lfと後レンズ部Lr間に配し、かつ非使用位置Xr又は使用位置Xuに移動可能な第三のレンズ部を構成する可動レンズユニットUmを備える。この場合、投射レンズLは、図3に示すように、ベースプレート21を備え、このベースプレート21の前端部に固定し、かつ起立させた前支持プレート22に、前レンズ部Lfを支持させるとともに、ベースプレート21の後端側に固定し、かつ起立させた後支持プレート23に、後レンズ部Lrを支持させる。この際、前レンズ部Lfと後レンズ部Lrはベースプレート21に対して所定高さだけ高い位置に配する。
また、可動レンズユニットUmは、投射レンズLの一部Lpを備えるとともに、この投射レンズLの一部Lpに設けたスライダ部11を備える。例示する投射レンズLの一部Lpは、画面のアスペクト比を変更できる回転非対象なレンズLpaであり、このような回転非対象なレンズLpaとしては、アナモフィックレンズが望ましい。その他、回転非対象なレンズLpaには、シリンドリカルレンズ或いは自由曲面レンズ等を用いてもよい。なお、後レンズ部Lrの後端はプロジェクタPの前端部に装着する。これにより、プロジェクタPで生成された投射光は、後レンズ部Lrに入光するとともに、投射レンズL内を通過して前レンズ部Lfから出光し、不図示のスクリーンに投映される。
一方、この可動レンズユニットUmは、本実施形態に係るレンズ切換装置1により非使用位置Xr又は使用位置Xuに切換えられる。この場合、可動レンズユニットUmが非使用位置Xrに移動すれば、投射レンズLから横方へオフセットした状態となる。これにより、可動レンズユニットUmは投射レンズLからリリースし、この状態の投射レンズLは、可動レンズユニットUmの無い前レンズ部Lfと後レンズ部Lrのみで構成する標準レンズとなる。この標準レンズは、アスペクト比が、例えば、1.66:1のビスタサイズに対応する。これに対して、可動レンズユニットUmが使用位置Xuに移動すれば、投射レンズLにセット、即ち、装着した状態となる。これにより、投射レンズLは、前レンズ部Lf,可動レンズユニットUm及び後レンズ部Lrが光軸方向に順次並んだレンズ構成となり、この状態の投射レンズLは、標準レンズに対してアナモフィックレンズLpaを装着したワイド対応レンズとなる。このワイド対応レンズは、アスペクト比が、例えば、2.35:1のスコープサイズに対応する。このように、投射レンズLの一部Lpに、画面のアスペクト比を変更可能なアナモフィックレンズLpaを適用すれば、アスペクト比が異なるビスタサイズ又はスコープサイズの双方の映像を投射する場合であっても、黒帯の無い高品質の投映を実現できるとともに、その切換を容易かつ迅速に行える利点がある。なお、以上のアスペクト比は例示であって、異なる各種アスペクト比を適用できる。
ところで、可動レンズユニットUmは、例示のように、投射レンズLの縮小側に配すれば、位置決め構造の簡略化を実現できる利点がある。即ち、通常、縮小側は、レンズの偏芯感度が高いため、高精度な位置決めが必要となるが、可動レンズユニットUmを、投射レンズLの縮小側に配することにより、高精度な位置決めが不要となることから、位置決め構造の簡略化を図ることができる。また、例示の場合、可動レンズユニットUmは、相対的に大きな光学パワーを有する断面方向に対して直角方向へ移動可能に支持するようにしたため、可動レンズユニットUmを移動させた場合であっても、この移動による偏芯の影響を受けにくくする利点がある。
他方、レンズ切換装置1は、大別して、レンズ支持機構部2,駆動機構部3,規制機構部4及び負荷変化機構部5を備える。レンズ支持機構部2は、投射レンズLの一部LpであるアナモフィックレンズLpaをスライド移動自在に支持する機能を有し、アナモフィックレンズLpaを備える可動レンズユニットUmに一体に設けた前述のスライダ部11を備える。このスライダ部11は、図1に示すように、可動レンズユニットUmの下端に取付ける。さらに、レンズ支持機構部2は、このスライダ部11を移動自在に支持するガイドレール部12を備える。ガイドレール部12はリニアガイドであり、装填したスライダ部11をスライド自在にガイドする機能を備える。したがって、スライダ部11とガイドレール部12は、円滑性,正確性,耐久性等に優れていることが望ましい。このように、レンズ支持機構部2を、可動レンズユニットUmに設けたスライダ部11と、このスライダ部11を移動自在に支持するガイドレール部12とを設けて構成すれば、可動レンズユニットUmが大きな重量であっても、必要な範囲の移動を、容易,正確かつ確実に実現できる利点がある。
駆動機構部3は、可動レンズユニットUmを移動させる機能を有し、ロータリモータによる駆動モータ13を備える。なお、例示の駆動モータ13は減速機構を内蔵したギアモータである。この場合、駆動モータ13を取付けるに際しては、図3に示すように、前述した前支持プレート22の上端から水平方向後方に延出させた支持部材24を設け、この支持部材24における垂直部24vに取付ける。また、駆動モータ13の回転出力軸には、図1に示すように、ピニオン25を取付けるとともに、このピニオン25は、可動レンズユニットUmの上端に固定して取付けたラック26に噛合させる。ラック26はガイドレール部12に対して平行となる。さらに、駆動モータ13を正逆方向に回転駆動するドライバ27を備え、このドライバ27は切換制御部28に接続する。切換制御部28には操作部29が付属し、この操作部29により使用位置Xu又は非使用位置Xrへ切換える切換操作を行うことができる。このように、駆動機構部3を、ギアモータ等のロータリモータによる駆動モータ13を用いて構成すれば、汎用モータの利用により容易かつ低コストに実施できる利点がある。
規制機構部4は、可動レンズユニットUmが移動する移動範囲を規制する機能を有し、可動レンズユニットUmに当接して移動範囲を規制する離間した一対のストッパ部14p,14qを備える。このストッパ部14p,14qは、それぞれ使用位置Xu,非使用位置Xrに対応する位置であって、ガイドレール部12の近傍に配設することが望ましい。また、規制機構部4は、可動レンズユニットUmがストッパ部14p,14qに当接した際に増加する駆動モータ13の負荷電流を検出して当該駆動モータ13を停止させる制御機能部14cとを備える。この制御機能部14cには、前述したドライバ27及び切換制御部28が含まれる。したがって、駆動モータ13の負荷電流に係わる情報(検出データ)がドライバ27から切換制御部28に付与されるため、負荷電流の大きさを監視し、負荷電流が予め設定した閾値を超えたときに、ストッパ部14p又は14qに当接したものと判断する。これにより、切換制御部28はドライバ27に停止指令信号を付与し、駆動モータ13を停止制御することができる。
このように、規制機構部4を、可動レンズユニットUmに当接して移動範囲を規制する離間した一対のストッパ部14p,14qと、可動レンズユニットUmがストッパ部14p,14qに当接した際に増加する駆動モータ13の負荷電流を検出して当該駆動モータ13を停止させる制御機能部14cとを設けて構成すれば、高価なサーボモータ等を用いることなく、正確な使用位置Xuに停止させ、かつ位置決めできる利点がある。
一方、負荷変化機構部5は、可動レンズユニットUmを非使用位置Xrから使用位置Xuへ移動させる際に、使用位置Xuの手前で移動時の負荷を増加させ、かつ使用位置Xuで増加させた負荷を所定の大きさに維持する機能を有し、本発明の要部を構成する。この負荷変化機構部5は、図1〜図6に示すように、可動レンズユニットUmが使用位置Xu側へ移動した際に、当該使用位置Xuの手前から当該使用位置Xuに至るまで可動レンズユニットUmを弾性部材16により加圧し、摩擦力を大きくして負荷を増加させる弾圧機構15により構成する。
例示の弾圧機構15は、図3に示すように、前述した支持部材24の水平部24hに固定した加圧部15pと可動レンズユニットUmに固定した被加圧面部15sを備える。加圧部15pは、図5に示す縦形の筒体部31を備え、この筒体部31を支持部材24の水平部24hに固定する。この筒体部31は内部に収容部31iを有し、この収容部31iは筒体部31の上下端に開口する。また、収容部31iには、上端の開口から丸棒状の加圧子32を収容するとともに、コイルスプリングを用いた弾性部材16を圧縮状態にして収容し、収容後はキャップ部材33により筒体部31の上端の開口を閉塞する。さらに、収容部31iの下端には加圧子32が下方に抜け落ちるのを阻止する図面に現れないストッパを設け、これにより、加圧子32の下部一部のみが下方に露出し、かつ下方に弾圧される構成を有する。なお、加圧子32の下端は半球形状である。
他方、被加圧面部15sは、可動レンズユニットUmの上端面に対して複数のネジ35…を用いて固定したプレート部材34により形成する。この場合、プレート部材34の中間位置に、三角山形の盛上部34sを折曲形成し、この盛上部34sの傾斜面、特に、上り傾斜面を被加圧面部15sとして用いる。なお、加圧部15pは一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。例示は、二つの場合を示している。また、この際、被加圧面部15sの数量は各加圧部15p…に対応した数量だけ設けてもよいし、共用する一つの被加圧面部15sとして構成してもよい。
このように、負荷変化機構部5を、可動レンズユニットUmが使用位置Xu側へ移動した際に、当該使用位置Xuの手前から当該使用位置Xuに至るまで可動レンズユニットUmを弾性部材16により加圧し、摩擦力を大きくする弾圧機構15を用いて構成すれば、使用位置Xuの手前で移動時の負荷を増加させ、かつ使用位置Xuで増加させた負荷を所定の大きさに維持する機能を発揮する負荷変化機構部5を、無視できないコストアップやサイズアップを生じることなく容易に構築できる利点がある。
次に、本実施形態に係るレンズ切換装置1を含む投射レンズLの機能及び使用方法について、図1〜図7を参照して説明する。
今、可動レンズユニットUmは、図4に示す非使用位置Xrにあるものとする。図7(b)には、非使用位置Xrにある可動レンズユニットUmを平面方向から見た状態を示す。非使用位置Xrでは、可動レンズユニットUmが投射レンズLからオフセットし、リリースした状態となるため、投射レンズLは、可動レンズユニットUmの無い前レンズ部Lfと後レンズ部Lrのみで構成した標準レンズとなる。例示の場合、標準レンズは、アスペクト比が1.66:1となるビスタサイズに対応する。したがって、アスペクト比が同じ比率の映像を投射した場合、黒帯は生じない。
他方、ユーザーが、例えば、映像信号のアスペスト比がスコープサイズとなる映画を見る場合を想定する。この場合、ユーザーは操作部29におけるサイズモード切換スイッチを操作し、スコープサイズを選択(ON)する。これにより、切換制御部28はドライバ27に切換指令信号を付与し、ドライバ27は駆動モータ13に給電を行う。この結果、駆動モータ13が正方向に回転動作し、ピニオン25が回転することにより、ラック26を、図1中、右方向へ変位させる。これにより、ラック26に一体の可動レンズユニットUmが同一方向(右方向)へ移動、即ち、ガイドレール部12に沿って投射レンズL側(弾圧機構15側)へ移動する。図6の可動レンズユニットUmが、矢印Fs方向に移動し、弾圧機構15に近付いている状態を示している。
そして、可動レンズユニットUmが移動し、使用位置Xuの手前に達すれば、盛上部34sの被加圧面部15sにおける上り傾斜面に加圧部15pの加圧子32の下端が当接する。図6における仮想線の被加圧面部15sが加圧子32の下端に当接した状態を示している。可動レンズユニットUmがさらに移動すれば、被加圧面部15sにおける上り傾斜面により加圧子32が上方へ押し上げられる。この際、加圧子32はコイルスプリングを用いた弾性部材16の弾圧に抗して上方へ変位し、使用位置Xuの手前から移動時の負荷が漸次増加する。
この後、可動レンズユニットUmは、固定したストッパ部14pに当接するため、可動レンズユニットUmの移動は強制的に停止させられる。また、これにより、駆動モータ13における負荷電流が増加するため、切換制御部28は、使用位置Xuに達したことを検出(判断)し、ドライバ27に停止指令信号を付与することにより駆動モータ13を停止制御する。この結果、可動レンズユニットUmは、投射レンズLに装着された状態となり、投射レンズLは、前レンズ部Lf,可動レンズユニットUm及び後レンズ部Lrが光軸方向に順次並んだレンズ構成となる。即ち、標準レンズに対してアナモフィックレンズLpaを装着したワイド対応レンズとなり、アスペクト比が2.35:1となるスコープサイズに対応する。したがって、アスペクト比が同じ比率の映像を投射した場合、黒帯は生じない。
図5が使用位置Xuにおける可動レンズユニットUmの状態を示しているとともに、図7(a)が使用位置Xuにある可動レンズユニットUmを平面方向から見た状態を示している。使用位置Xuでは増加した負荷を所定の大きさに維持する状態で停止する。特に、本実施形態の場合、使用位置Xuは、図5に示すように、盛上部34sの頂点を若干通過した位置、即ち、被加圧面部15sにおける下り傾斜面側へ、盛上部34sの頂点より距離Scだけ進んだ位置に設定するため、使用位置Xuにおける負荷の大きさは、直前の負荷の大きさよりもやや小さくなる。これにより、弾圧機構15における加圧部15pと被加圧面部15sは、いわばクリック係合した状態となるため、可動レンズユニットUmを使用位置Xuに確実に停止させることができるとともに、信頼性及び安定性の高い機構を実現できる利点がある。
このように、本実施形態に係るレンズ切換装置1によれば、可動レンズユニットUm(アナモフィックレンズLpa)が移動する移動範囲を規制機構部4(ストッパ部14p)により規制するとともに、可動レンズユニットUmを非使用位置Xrから使用位置Xuへ移動させる際に、負荷変化機構部5により、使用位置Xuの手前で移動時の負荷を増加させ、かつ使用位置Xuで増加させた負荷を所定の大きさに維持するようにしたため、使用位置Xuに移動させた際における駆動モータ13及び動力伝達機構(ピニオン25,ラック26等)により発生する停止時の衝撃等を有効に排除できる。したがって、無用な振動等を防止し、使用位置Xuに切換えたアナモフィックレンズ等を有する可動レンズユニットUmに対する高い位置決め精度を容易に確保できる。また、レンズ支持機構部2により可動レンズユニットUmをスライド移動自在に支持し、かつ駆動機構部3により可動レンズユニットUmを移動させるとともに、規制機構部4により可動レンズユニットUmが移動する移動範囲を規制するようにしたため、プロジェクタPに対して可動レンズユニットUmを切換える場合であっても人為的な切換作業が不要になる。したがって、可動レンズユニットUmを切換える際における労力を排除して迅速な切換を実現できるという基本的効果を享受できる。
なお、この後、ユーザーがビスタサイズに対応する元の状態に戻す場合には、操作部29におけるサイズモード切換スイッチを操作し、ビスタサイズを選択(ON)すればよい。これにより、切換制御部28はドライバ27に切換指令信号を付与し、ドライバ27は駆動モータ13に給電を行う。この結果、駆動モータ13が逆方向に回転動作し、ピニオン25が回転することにより、ラック26を、図1中、左方向へ変位させる。これにより、ラック26に一体の可動レンズユニットUmが同一方向(左方向)へ移動、即ち、ガイドレール部12に沿って投射レンズLから離間する方向へ移動する。図6の可動レンズユニットUmが矢印Fr方向に移動し、弾圧機構15から離間する状態を示している。
そして、可動レンズユニットUmが移動し、非使用位置Xrに達すれば、可動レンズユニットUmは、固定した他方のストッパ部14qに当接するため、可動レンズユニットUmの移動は強制的に停止させられる。また、これにより、駆動モータ13における負荷電流が増加するため、切換制御部28は非使用位置Xrに達したことを検出(判断)し、ドライバ27に停止指令信号を付与することにより駆動モータ13を停止制御する。この結果、可動レンズユニットUmは非使用位置Xrで停止するため、投射レンズLからリリースした位置となり、投射レンズLは、可動レンズユニットUmの無い前レンズ部Lfと後レンズ部Lrのみで構成した標準レンズとなる。このように、投射レンズLは容易にビスタサイズに対応する状態に戻される。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、負荷変化機構部5を構成するに際し、図1〜図6は、加圧子32が当接する被加圧面部15sを、中間部に三角山形の盛上部34sを折曲形成したプレート部材34により構成した場合を示したが、図8に示すように、所定の厚さを有するプレート部材(ブロック部材)34eを使用し、このプレート部材34eの片側に上り傾斜面を形成し、被加圧面部15seとして用いてもよい。したがって、この場合は、図8に示すように、正面視の形状は台形状となり、可動レンズユニットUmが使用位置Xu側へ移動した際には、使用位置Xuの手前で移動時の負荷を増加させ、かつ使用位置Xuで増加させた負荷を所定の大きさに維持する機能を備えるも、使用位置Xuにおける負荷の大きさは、直前の負荷の大きさと同じになり、小さくなる設定は行わない。
また、投射レンズLの一部Lpを移動させる場合を示したが、投射レンズLの全部を移動させてもよく、投射レンズLの一部Lpには全部も含まれる。さらに、投射レンズLの一部LpとしてアナモフィックレンズLpaを適用した場合を示したが、他の各種レンズを適用できるとともに、フィルタやプリズム等のレンズ以外の各種光学部品も適用可能である。一方、レンズ支持機構部2におけるスライダ部11は、可動レンズユニットUmに直接形成(構成)してもよいし、別体のスライダ部11を取付けてもよい。さらに、ガイドレール部12は上方位置に配し、可動レンズユニットUmを吊下げ式に構成してもよい。なお、駆動機構部3におけるピニオン25とラック26は、プーリとタイミングベルトで置換可能である。また、駆動モータ13は、ロータリモータを用いた場合を示したが、リニアモータ(リニア駆動部)であってもよい。この場合には、ピニオン25及びラック26は不要となる。他方、規制機構部4は、スライダ部11に当接して可動レンズユニットUmが移動する移動範囲を規制する離間した一対のストッパ部14p,14qと、可動レンズユニットUmがストッパ部14p,14qに当接した際に増加する駆動モータ13の負荷電流を検出して当該駆動モータ13を停止させる制御機能部14cとを備えて構成した場合を示したが、同様の機能を有する他の構成で置換可能である。さらに、負荷変化機構部5は、可動レンズユニットUmを弾性部材16により上方から加圧する場合を示したが、可動レンズユニットUmを横方向両側から挟む形式で構成してもよいなど、同様の機能を有する他の構成で置換可能である。また、円柱状の加圧子32は球体であってもよいし、弾性部材16は板バネ等の他の弾性部材により置換できるとともに、弾性部材以外の手段により負荷を増加、例えば、マグネットによる加圧又は吸引等により負荷を増加させる形態を排除するものではない。