JP6037332B2 - 金属板の鋳造方法及び金属板鋳造装置 - Google Patents
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Description
このような、鋳造後の加工工程を行うことをなく、鋳造工程において最終製品である板材を得ることができれば、製造コストの削減および省エネルギーの実現等多くの利点を有する。
このため、例えば特許文献1〜3等に示すように、双ロールキャスター、双ベルトキャスター、ブロックキャスター等の鋳造装置を用いて鋳造により板材を得る方法が知られている。
より詳細には、鋳造材(板材)の表面、とりわけ板材にとって特に重要な主面(例えば、周囲6面のうち最も表面積の広い2面)が平滑にならず、肌荒れ等の凹凸を生ずる場合が多いという問題があった。
本明細書において「溶湯」とは、完全に溶融した状態と、溶融状態と凝固状態との中間状態(半凝固状態)とを含む。
冷却能を有し、注湯された金属が完全に凝固する前に、金属の表面を前記側壁と共に底板に向かう方向に圧下するための押圧具と、を有することを特徴とする。
ここで、型枠内の金属板は完全に凝固する前に押圧具で圧下されるので、表面が容易に変形する。これにより、金属板の表面を容易に制御することができる。
特許文献1に開示された双ロールキャスターでは、厚さ10mm以上の金属板は鋳造することができない。
特許文献2のような双ベルトキャスターでは、厚さ10mm以上の金属板を連続鋳造することが可能であるが、装置が大変高価である。更に、高価なベルトが運転による熱と応力で変形しやすく取り替えが必要である。また、ベルトキャスターは側壁ブロックがあるため金属を十分に圧下することができないため、板の幅方向の中央部が凝固収縮により凹んだ板ができやすい。また、冷却むらが生じるため、金属組織の不均一が発生し、金属板の表面に部分的な色むらや窪みが発生しやすい。
特許文献3の単ベルトキャスターでは、上記特許文献2の問題に加え、金属板を下方向からのみ冷却するため、厚い板ができない。
また、一般的な鋳型法(型内で冷却して鋳造する方法)では上面を平坦にするために絶えず表面を均一に加熱しながら全体として冷却するには表面加熱装置及び熟練した技術を要する。
このように、簡易なバッチプロセスで、厚さ10mm以上で表面および内部が健全な厚板を鋳造する技術がなかった。
以下に図を用いて本発明の詳細を説明する。
図1〜図3に示す本実施の形態の鋳造装置10は、冷却能を有する底板20と、底板20の上面21に配置され互いに離間して一方向に延在する一対の側壁30(301、302)とを含む型枠と、溶湯を供給する溶湯供給部50とを備えている。また、鋳造装置10は、型枠内に供給した溶湯に荷重を付与するための押圧具(上側ロール40)を備えている。上側ロール40は、一対の側壁30を挟んで底板20の上面21と対向して配置されている。
本明細書における「キャビティー12」とは、金属板の鋳造方向(図1、図2のx方向)に対して垂直に切った断面において4方向が囲まれている部分であり、金属板を鋳造するための鋳造空間を指す(図3および図5参照)。
また、例えば環状のベルト上に複数の板状体を配置し、ベルトを移動させることで1回の鋳造工程で、その上から一旦鋳造材を取り除いた板状体の上に再び溶湯を供給し鋳造を行ってもよい。
図1及び図4に示すように、側壁30は、上側ロール40により付与された荷重により上側ロール40の外形に追随した形状に変形される。すなわち、上側ロール40にかけられた荷重により変形し、ロール形状にへこむことができる。
ロールの外形に追随して変形するためには、側壁30は、上側ロール40により付与された荷重(応力)により、変形するだけでなく、上側ロール40(上側ロール40全体)が側壁30から離れる方向(例えばz方向)に動いた際にも追随できるように、上側ロール40による荷重がなくなると元の形状に近い形状に戻ることができる復元性を有することが好ましい。
すなわち、側壁30は、ロール等の押圧具による押圧を受けたときに追随して変形することが必須であり、さらに復元性を有することが好ましい。
イソウール(登録商標)などの通気性部材を用いると、溶湯中のガスが凝固する際に発生するガスを、側壁30から排出することができる。これにより、ガス抜け不良による巣の発生を抑制することができる。
例えば、回転軸40Cがyz平面内にあり且つy軸に対して傾斜するように上側ロール40を配置してもよい。すなわち、x方向から鋳造装置10を視認すると、底板20の上面21に対して上側ロール40のロール面が傾いており、キャビティー12が台形形状になる。そのような鋳造装置10では、断面が台形形状の金属板を鋳造することができる。
別の例では、回転軸40Cがxy平面内にあり且つy軸に対して傾斜するように上側ロール40を配置してもよい。x方向から鋳造装置10を視認すると、底板20の上面21と上側ロール40のロール面とが平行であり、キャビティー12が長方形である。しかし、z方向から鋳造装置10を視認すると、一対の側壁30が延在する方向(つまりy方向)に対して、上側ロール40が斜めに配置されている。このような鋳造装置10では、溶湯に接触する上側ロール40の面積が広くなるので、上側ロール40からの放熱性を向上させることができる。
上側ロール40は、例えば、耐熱鋼等の鋼により形成されたロール等のように従来から双ロール法を含む鋳造方法に用いられているロールを用いてよい。
上側ロール40の表面が滑らかであるのが望ましい。上側ロール40によって押圧される金属板の表面に、上側ロール40の表面性状が転写されるので、滑らかな表面の上側ロール40を用いると、滑らかな表面を有する金属板を製造し得る。
また、焼付きを防止するためにロールと溶湯(または凝固シェル)との間に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を設けてもよい。
なお、1枚の金属板の鋳造中に板厚が変動しないように、鋳造中は、凝固距離を一定に保つ(つまり、上側ロール40と溶湯供給部50との相対位置を一定に保つ)のが好ましい。
冷却管60内に冷却流体(例えば水)を流すことにより、底板20を冷却して、底板20が一定温度以上に上がらないようにすることができ、生産性を向上できる。また、底板20による溶湯の冷却効率を高めることができるので、鋳造可能な金属板の厚さを厚くすることができ、さらに得られる金属板の金属組成を改善することができる。
また、冷却管60の代わりに、中空の底部ブロック73に冷却流体を流して、底板20を冷却する冷却手段としてもよい。
図示した底部ブロック73は、冷却管60の供給チューブを間に配置するために、2つの部材から構成されている。
また、上述のように、側壁30の他端(x方向の端部であり、本明細書では「後端」と称する)にも、側壁301と側壁302との間に、y方向に伸びる後堰(図示せず)を設けてもよい。後堰は、溶湯が底板20を超えて後端方向からこぼれるのを抑制し得る。
図4(a)に示すように、上側ロール40が側壁30と接触しないようにz方向に離した状態で、上側ロール40を底板20の先端の上方(z方向)に配置する。次に、上側ロール40を底板20に近付ける。このとき、底板20と上側ロール40との最小間隔(これを「キャビティー12の高さ12t」と称する)は、少なくとも圧縮前の側壁30の高さt1より小さくする。
側壁30は変形可能(例えば圧縮変形可能)な材料から形成されているので、上側ロール40を底板20に近づけたときに、側壁30は上側ロール40によって変形(圧縮)され、上側ロール40の外形に沿うように凹む(図4(b))。
次に、図5(a)に示すように、溶湯供給部50からキャビティー12に向けて溶湯M1を供給する。溶湯供給部50は例えば樋、ノズル等であり、金属を溶融する坩堝又は貯留槽52(一部図面には図示)等から溶湯部50に溶湯が供給される。溶湯供給部50から流れ出た溶湯M1は、溶湯供給路15を通ってキャビティー12に到達する。溶湯M1は、キャビティー12に到達するまでの間に徐々に凝固する。凝固の様子を、図7を参照しながら説明する。
溶湯M1は底板20によって冷却されるため、底板20側の溶湯M1は、溶湯供給部50から出た直後から凝固し始める。一方、溶湯M1の表面は比較的冷却されにくいため、溶融状態を保ったまま、上側ロール40の近傍にまで到達し得る。通常、溶湯M1(溶融状態)と、溶湯が完全に凝固した部分(凝固層M3)との間には、半凝固の部分(半凝固層M2)が存在している。そして、溶湯M1及び半凝固層M2(条件によってはいずれか一方の場合もある)が上側ロール40に接触すると、表面側の溶湯M1及び半凝固層Mは上側ロール40によって冷却されて、完全に凝固する。
よって、溶湯M1がキャビティー12の出口に到達する頃には、溶湯M1はほぼ無くなり(又は完全に無くなり)、多くの部分が(又は全てが)半凝固層M2と凝固層M3とになる。この状態の金属を「非溶湯部」と称する。
溶湯の供給を続けたまま(すなわち、上側ロール40より上流側(x方向)に存在する溶湯の液面を維持したまま)、図5(a)に示すように、上側ロール40を、回転軸40Cを中心に(実際には、上側ロール40のシャフト41を中心に)、回転方向40Rに回転させる。上側ロール40の外面40Sは、側壁30及び凝固層M3と接触しているため、それらを介して底板20が−x方向(移動方向20D)に力を受ける。このとき、底板20がx方向に移動自在にされていれば、底板20は移動方向20Dに移動する。その結果、非溶湯部は、上側ロール40の直下に向かって−x方向に移動する(図5(b))。底板20と上側ロール40との間隔は、上側ロール40の直下に向かって徐々に狭くなるため、非溶湯部は上側ロール40によって徐々に圧下される。
一方、側壁を上側ロール40の外側に設けた場合(すなわちロールが側壁の間)も上側ロールは側壁により阻害されることなく圧下を行うことができる。しかし、この場合、中央部と比べ、温度が低下しやすい(温度制御が困難な)ロールの端部(y方向の端部)に溶湯および非溶湯部が接触することとなり、非溶湯部に温度分布のばらつき(すなわち、鋳造されている材料のy方向端部の温度低下)が生ずることとなる。
すなわち、本発明では、鋳造される材料の端部(y方向端部)の温度低下を抑制した状態で上側ロール41により均一に圧下できることから(換言すると、温度分布が均一な状態で上側ロール41が被鋳造材に接触するため、被鋳造材のロール直下でのy方向における温度、硬度等の特性のばらつきを抑制した状態で圧下が可能になるため)、得られた鋳造材の表面(とりわけ主面が)の表面性状が優れるとともに、得られた鋳造の厚さも均一にできると考えられる。
ただし、これらは現時点で得られている情報を基に本願発明者らが推定したメカニズムであって本発明の技術的範囲を制限することを意図するものではないことに留意されたい。
さらに、図6に示すように、キャビティー12内を満たす金属板Mの上面と側壁30の上面とは共に上側ロール40によって圧下されるので、金属板Mの上面と側壁30の上面とが面一になる。よって、金属板Mの縁部に、z方向に伸びるバリ(縦バリ)が発生することがない。
しかし、本発明はバッチプロセスに限定するものではなく、例えば、上述のように環状のベルト上に複数の板状体201〜203を配置すること等により連続鋳造プロセスにより鋳造を行ってもよい。
図8(a)は、図7の7A−7A線に沿った断面図であり、非溶湯部の内部状態を示している。溶湯M1の熱は主に底板20から放熱されるため、溶湯M1は底板20に接触する部分から凝固して、凝固層M3を形成する。その上に半凝固層M2と溶湯M1が層状に積層している。ここで、側壁30が断熱性を有しているので、溶湯M1の熱は側壁30から放熱されない。よって、凝固層M3と半凝固層M2との界面及び半凝固層M2と溶湯M1との界面は、底板20と略平行になる。
この時、非溶湯部の上面から上側ロール40によって応力Fで圧下されるので、最も軟質な半凝固層M2に応力が集中する。この状態で半凝固層M2は徐々に凝固するため、巣が生じにくい。また、図8(b)のような状態では、半凝固層M2で偏析が起こりやすいが、半凝固層M2に応力をかけることができるので、偏析状態を解消し得る。
図9(a)は、図7の7A−7A線に沿った断面図であり、非溶湯部の内部状態を示している。溶湯M1の熱は底板20と側壁30’とから放熱されるため、溶湯M1は底板20に接触する部分と側壁30’に接触する部分とから凝固して、凝固層M3を形成する。その内側に半凝固層M2と溶湯M1が層状に積層している。凝固層M3と半凝固層M2との界面及び半凝固層M2と溶湯M1との界面は、カップ状になる。
このとき、非溶湯部はキャビティー12内に入り、上側ロール40によって応力Fで圧下されているが、半凝固層M2の周囲が凝固層M3になっているので、応力Fを半凝固層M2に十分に付加することができない。よって半凝固層M2内に生じやすい巣を十分に抑制できない。
断熱性を有する材料として、空気層を含む材料を挙げることができる。例えば、上述したセラミックス繊維のような耐火物の繊維材料を綿状に配置した材料は、繊維と繊維と間の空間が空気層として機能することから好ましい。この空気層を通って気体が流通するので、空気層を含む側壁30は通気性を有している。
なお、このような材料を用いる際には、例えば、芯材として金属ワイヤを用いて、その周囲に綿状の断熱材料を巻き付けてもよい。金属ワイヤによって断熱部材の形状を整えることができるので、側壁30の形成や再生(再利用するために、圧縮変形前の状態に戻すこと)に有利であり、且つ金属ワイヤは直接溶湯M1に接触することはないので、溶湯M1の凝固を促進させることや、溶湯M1と反応して好ましくない合金を形成することがない。
また、金属ワイヤを金属製の肉薄チューブに置き換えると、さらに、断熱部材に弾力性を付与することもできる。
なお、鋳造時の熱に耐えることができれば、金属以外の材料から成る芯材も使用可能である。
また、溶湯M1が側壁30側から溢れるのを抑制するために、溶湯M1の高さT1が圧縮変形前の側壁30の高さt1よりも小さくなるように、溶湯M1の供給量を制御する。
金属板Mが所定の長さになったら、溶湯M1の供給を止める。そして、金属板Mがキャビティー12から完全に出たら、上側ロール40の回転を止める。そして、底板20の上で十分に冷却した後、金属板Mを底板20と側壁30とから取り外す。
これにより、表面が比較的平坦で、冷却むらによる部分的な色変化や窪みが無い金属板Mを鋳造することができる。
本発明の鋳造装置10では、底板20の上で金属板Mを完全に冷却させることができるので、例えば従来の双ロールキャスターに比べて、長時間にわたって金属板Mを安定した状態で冷却することができる。そのため、双ロールキャスターでは(内部まで十分に冷却できないために)鋳造が困難な厚さ10mm以上の金属板Mも、本発明の鋳造装置10では鋳造することができる。
一方、塑性変形する傾向の強い材料を用いて側壁30を形成すると、側壁30を廃棄する際に容積を圧縮変形できるので、再生不能な側壁30の場合に好ましい。
底板20と上側ロール40との間隔を変更可能にするためには、上側ロール40のみ昇降可能、底板20のみ昇降可能、又は上側ロール40と底板20とを共に昇降可能にすればよい。
上側ロール40を昇降可能にするには、例えばシャフト41を保持する軸受けを、従来公知の手段により上下方向に位置変更できるようにすればよい。底板20を昇降可能にするためには、底板20を支える部材を、従来公知の手段により上下方向に位置変更可能にする。
上側ロール40’は、一対の側壁301、302の間に位置する金属板Mの表面と、一対の側壁301、302のうち金属板Mと隣接する部分を押圧する。本発明では、側壁30が押圧により追随して変形可能な材料から形成されているので、一対の側壁301、302のうち金属板Mと隣接する部分は、上側ロール40’の形状に追従して変形する。一方、側壁301、302のうち、側板72側に位置する部分は、上側ロール40’によって押圧されず、上側ロール40’と側板72との隙間にはみ出した状態になる。
なお、溶湯内のガスは、上側ロール40と側板72との隙間から外部に排出されるため、上側ロール40と側板72との隙間が広くされた広い図11のような製造装置は、脱ガス効率が高い。
底板20は、鋳造中に上面だけが溶湯に接触して高温になるため、上面と下面との膨張差によって反りを生じることがあり、反りの程度は底板20の面積が大きくなるほど顕著になる。分割底板201〜203は個々の面積は小さいので、反りを抑制することができる。また、反りが抑制されるため、底板20の寿命が長くなる。
また、底板20の長さ(x方向の寸法)は、使用する分割底板201〜203の枚数によって任意に調節できるので、例えば1m程度の短い金属板Mから、25m以上の長い金属板Mまで鋳造することができる。
ここで、第1金属片201aを熱伝導率の高い材料(例えばCu)から形成し、第2金属片201bを熱伝導率は高くないが安価な材料(例えばFe)から形成すると、溶湯M1からの放熱性を維持したまま、分割底板201’のコストを抑制することができる。
上側ロール40及び下側ロール45を備えた鋳造装置10は、例えば既存の双ロールキャスターの間に底板20を配置することによって構成することもできる。
下側ロール45の代わりに、ベアリング等の底板移動手段によって、底板20が、x方向及び−x方向に自由に移動することもできる。
しかし、例えば、ステンレス鋼、合金鋼を含む鋼等の比較的融点が高い金属にも適用可能である。
(側壁30(301、302))
側壁30は、圧縮可能な耐火材料から形成されている。具体的には、セラミック等の耐火物の繊維材料(例えば、アルミナ、シリカ等)から成り、通気性のある圧縮可能部材から形成することができる。特に、断熱性を有する材料であるのが好ましい。また、通気性のある材料を使用すると、溶湯M1中のガスが側壁30から抜けるので、溶湯中にボイドが発生しにくくなる。また、溶湯に対する濡れ性の低い材料であると、金属板Mから側壁30を取り除き易くなる。また、反発力(復元性)のある材料を用いると、再生して再び側壁30として利用でき、ランニングコストを抑えることができる。
底板20は、例えば鉄系(軟鉄鋼)、銅系などの金属から形成することができる。特に、軟鋼を用いて作製すれば安価であり,コスト的に有利である。また、図12(a)のように2種類の異なる材料を用いる場合には、第1金属片201aには熱伝導率の高い銅を用い、第2金属片201bには安価な軟鋼を用いてもよい。
上側ロール40、下側ロール45及び2次ロール48は、例えば鉄系、銅系などの金属から形成することができる。なお、上側ロール40及び2次ロール48は、金属板Mに直接接触するので、鋳造する金属板Mの材料によって、その材料と反応しない金属から形成したロールを使用する。
2次ロール48は、鋳造する金属板Mと直接接触しないため、任意の材料を使用し得る。なお、上側ロール40と下側ロール45は、既存の双ロールキャストを利用することもできる。
上側ロール40及び底板20に使用する離型剤としては、BN、カーボン系のものが利用できる。離型剤は、溶媒等に溶解または分散等したものを上側ロール40及び底板20の表面にスプレー等することができる。
なお、本実施の形態では、底板20が水平配置された鋳造装置10を例示したが、これに限定されず、底板20が傾斜した鋳造装置10、底板20が垂直の鋳造装置10も本発明に含まれる。
また、底板20が傾斜した鋳造装置10では、鋳造段階(例えば鋳造開始時、鋳造中、鋳造終了時など)に合わせて底板20の傾斜角度が変更可能な鋳造装置10であると特に好ましい。例えば、鋳造開始時は先端側が高くなるように底板20を傾斜させて、先端側からの溶湯漏れを抑制し、鋳造中から鋳造終了時までは、先端側が低くなるように傾斜させて、後端側からの溶湯漏れを抑制してもよい。
図15〜図16に示す本実施の形態の鋳造装置100は、底板25と側壁35とから構成された型枠内に金属の溶湯M1を注湯し、その溶湯が完全に凝固する前(例えば半凝固状態)に、冷却能を有する押圧具85で、金属の表面を側壁35と共に金属板Mの厚み方向に圧下するものである。
押圧具85は、上側から型枠に向かって圧力Fの荷重をかけるための部材である。この図の押圧具85は、金属と接触する下面85aが平坦にされている。なお、下面85aは滑らかな平面にされているのが好ましい。また、必要に応じて下面85aに離型剤を塗布してもよい。
側壁35の外側には、側壁35を保持するための外枠75を備えていてもよい。
このように、追随変形可能な側壁35を用いることにより、溶湯M1の表面を押圧することができる。
図17、図18の鋳造装置110は、下面86aを凸状曲面にした押圧具86を用いている。図17から分かるように、押圧具86の凸状曲面とは、例えば円柱、楕円柱等の曲面を有する柱状体を切り取ったような曲面のことである。
押圧具6を溶湯に接触させる際は、まず、凸状曲面の一端(図18(a)では右端)が下がった状態で側壁35の上端に接触させる。押圧具86に荷重をかけると、側壁35は押圧具86の形状に追随して変形する。変形した側壁35の高さが溶湯M1の表面と同一になったら、押圧具86を回転させて、凸状曲面の右端を上げ、反対側の左端を下げる。このとき凸状曲面の最下位置が、必ず所定の高さMhに位置するように回転を制御する(図18(a)〜(c))。
この変形例では、溶湯M1に付加される応力が、凸状曲面の最下位置にある線状部分に集中するので、比較的小さな応力を付加するだけで、表面性状の良好な金属板を製造することができる。
図19は、本実施の形態の鋳造装置100を一方向に長く配列して、間欠的に金属板を製造できる鋳造装置100’を示している。
一方向に沿って底板25を複数配列し、その底板に合わせて側壁35を配列して、複数の型枠を形成する。隣接する型枠の間には、それぞれの型枠を構成する側壁35を1枚ずつ(合計2枚)配置してもよいが、図19のように、1枚の側壁35で隣接する型枠の側壁と機能させると、使用する側壁35を低減できるので経済的である。
また、型枠の上方向には、押圧具85が配置されている。
十分に押圧が完了したら、押圧具85を上昇させて型枠から離す(図19(b))。この状態で、型枠を左側に型枠1つ分だけ移動させることにより、左から2番目の型枠が押圧具85の直下に配置される。
そして、押圧具85を降下させて、左から2番目の型枠内の溶湯M1を押圧する(図19(c))。これを繰り返すことにより、複数の金属板Mを半連続的で間欠的に製造することができる。
図20は、変形例2において、側壁35により個々に分割されていた型枠を、1つの長い型枠とした鋳造装置100’’を示している。
この鋳造装置100’’では、実施の形態1と同様の底板25と側壁35を備えている。すなわち、一方向に沿って底板25を複数配列し、その底板の配列方向に沿って一対の側壁35を延在させて、型枠を形成する。また、この型枠に溶湯M1を注湯するための溶湯供給部50を備えてもよい。
また、型枠の上方向には、押圧具85が配置されている。
十分に押圧が完了したら、押圧具85を上昇させて型枠から離す(図20(b))。この状態で、型枠を左側に1ブロック分だけ移動させることにより、未押圧の溶湯が押圧具85の直下に配置される。そして、押圧具85を降下させて、次のブロックの溶湯M1を押圧する(図20(c))。これを繰り返すことにより、1枚の長い金属板Mを半連続的で間欠的に製造することができる。
なお、この図では押圧具85を1つだけ図示しているが、これに限らず、複数の押圧具85を用いることもできる。
得られた金属板の板幅及び板厚を測定し、外観(金属板の表面荒れの程度)と、内部(断面を肉眼で観察したときの巣の有無)を評価した。
上側ロール40は軟鋼製で直径250mm、幅100mmの水冷ロールを用いた。
底板20は軟鋼製のものを用いた。
側壁30には、厚み20mmのイソウール(登録商標)ブランケットを用いた。側壁30の高さは溶湯の高さよりも高く(溶湯の高さの+10〜20mm)なるように調節して、底板20の両端部(底板20の長手方向の両側部)に沿って延在するよう設置した。
溶湯供給部50には、側壁30間の幅(一対の側壁30間の離間距離)と同程度の幅を有する樋を用いた。樋に坩堝で溶かした溶湯を供給した。
実験中に溶湯が漏出しないように、前記樋の後ろ側の底板20上に、一方の側壁301から他方の側壁302に伸びる後堰を設けた。後堰は、側壁30と同じイソウール(登録商標)ブランケットから成り、両端が側壁30に接する長さと、側壁30と同じ高さとにされていた。
上側ロール40の水冷は、上側ロール40中の冷却路に水道水を循環させて行った。ロール温度は、ロール頂点を測温したが各実験中50℃以下に保たれていた。
底板20を冷却するため底板下の冷却管としては100mm幅30mm高さの軟鋼性缶を用い、供給チューブを介して水道水を缶に通水した。
ロール荷重が1kN/mの実施例No.5と、ロール荷重が10kN/mの実施例No.11では、表面に湯じわが生じていた(図21(b))。湯じわは、金属板の幅方向の中央辺りに、板の長手方向に伸びて発生していた。また、実施例No.5、11では、内部に50μm以上100μm未満の巣がいくつか確認された(図22(b)参照)。
さらに、ロール荷重が20kN/m以上であると、表面に湯じわも生じず、内部の巣もほとんど存在しない金属板が鋳造できることがわかった。
特に、錫を40質量%含有するアルミ錫合金(実施例No.10、11)は、液相線温度と固相線温度の差が大きく、巣ができやすく鋳造が困難な材料であり、従来のベルトキャスター及び双ロールキャスターでは鋳造することが実質的にできなかった。しかしながら、本発明の鋳造装置を用いてロール荷重を付与して鋳造することにより、鋳造することができた。
得られた金属板の板幅及び板厚を測定し、外観と、内部を評価した。○△×の評価基準は、実施例1と同じものを用いた。なお、内部評価では、最も巣の発生しやすい金属板の中心部分(図24のMc部分)の断面を観察した。
鋳型75は、軟鋼製の直径60mm、高さ50mm程度の円柱形で、左右分割式の鋳型を用いた。
押圧具85は、直径60mm軟鋼製の板を用い、荷重は、30トン・プレス機を用いて負荷した。
側壁35は、厚み10mmのイソウール(登録商標)ブランケットを用い、側壁35の高さは溶湯の高さ+10〜20mmになるように調節して、鋳型の内側面に設置した。
それ以外の各実験条件は表2に示した。
Claims (8)
- 鋳造による金属板の製造方法において、金属の溶湯を、押圧具の押圧により追随して変形可能な側壁と冷却能を有する底板とを有する型枠内に注湯し、金属が完全に凝固する前に、冷却能を有する前記押圧具で、金属の表面を前記側壁と共に底板に向かう方向に圧下することを特徴とする金属板の製造方法。
- 前記押圧具が、前記一対の側壁を挟んで前記底板の上面と対向するロールであり、
前記側壁が、前記底板の上面に配置され互いに離間して一方向に延在する一対の側壁であり
溶湯を前記型枠内に注湯する溶湯供給部から金属の溶湯を注湯し、前記溶湯を、前記底板にて冷却しつつ、前記底板と、前記一対の側壁と、前記ロールと、から形成されたキャビティーに供給し、前記キャビティー内で、前記ロールにより底板に向かう方向に荷重を付与することにより、前記一対の側壁を前記ロールの外形に追随した形状に変形させると共に、前記ロールで前記溶湯をさらに冷却しながら圧下して、前記金属板を鋳造する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 - 前記側壁が、耐火物の繊維材料から成り通気性を有する断熱部材から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記底板が、複数の分割底板から構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記底板を冷却する冷却手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 鋳造により金属板を製造する製造装置において、
押圧具の押圧により変形可能な側壁と、冷却能を有する底板とを有する型枠と、
冷却能を有し、注湯された金属が完全に凝固する前に、金属の表面を前記側壁と共に底板に向かう方向に圧下するための押圧具と、
を有することを特徴とする金属板の製造装置。 - 前記押圧具が、前記一対の側壁を挟んで前記底板の上面と対向するロールであり、
前記側壁が、前記底板と、前記底板の上面に配置され互いに離間して一方向に延在する一対の側壁であり、
溶湯を前記型枠内に注湯する溶湯供給部を備えており、
前記側壁は、前記ロールにより付与された荷重により前記ロールの外形に追随した形状に変形されることを特徴とする請求項6に記載の鋳造装置。 - 前記底板と前記ロールで冷却され鋳造された前記金属板をさらに冷却して圧下する2次冷却ロールを有することを特徴とする請求項7に記載の鋳造装置。
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