以下図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置100および後処理装置200の断面図である。
本実施例に係る画像形成装置100は、本体110および用紙供給装置120(以下、PFU120(Paper Feeding Unit)という。)から構成されている。また、本体110には、後処理装置200が接続されており、PFU120、本体110、および後処理装置200で画像形成システムを構成している。
画像形成装置100は、用紙収納部として、PFU120内に配設された大容量トレイ11a、11b、および本体110内に配設された、給紙トレイ12a〜12cを有する。
画像形成装置100は、搬送部として、搬送経路21、PFUノーフィードセンサー22a、22b、本体ノーフィードセンサー22c〜22e、PFU搬送センサー22f〜22h、中間搬送センサー22i、レジストセンサー22j(これらのセンサーは、図2に記載の検知センサー22に含まれる)、PFUピックアップローラ23a、23b、本体ピックアップローラ23c〜23e、PFU搬送ローラ23f、23g、本体搬送ローラ23h、レジストローラ23i、排紙ローラ23k(これらのローラは、図2に記載の搬送部材23に含まれる)を有する。
画像形成装置100は、スキャナ31および不図示の画像処理部を有する。スキャナ31および画像処理部は、図2に記載の画像入力部30に含まれる。
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン及び黒の画像を形成する4個の画像形成ユニット41a、41b、41c、41d、及び定着装置42を有する。これらの要素は、図2に記載の画像形成部40に含まれる。
画像形成装置100は、分岐部51a、循環通紙部51b、反転搬送部51c、再給紙搬送部51d、反転検知センサー52a、52b、反転搬送部材53を有する。これらの要素は、図2に記載の反転部50に含まれる。また、反転検知センサー52a、52bおよび反転搬送部材53は、検知センサー22および搬送部材23にそれぞれ含まれる。さらに、分岐部51a、循環通紙部51b、反転搬送部51c、再給紙搬送部51dは、反転搬送経路を構成する。
後処理装置200は、パンチ部61、折り部62、および排紙トレイ63a、63bを有する。
図2は、本発明の実施例1に係る画像形成装置100の制御構成を示すブロック図である。
制御部70は、画像形成装置100全体の制御を行い、他のブロックとの情報のやり取りや、制御を行うか否かの判断を行う。
搬送部材23は、制御部70の制御によって駆動され、用紙の搬送を行う。
検知センサー22は、そのセンサーの配設された位置に用紙の到達を検知するようになっている。検知センサー22は、用紙の到達を検知すると、制御部70に信号を送る。なお、この検知センサー22は、搬送経路21を通過する用紙の位置が検知できるものであれば、光透過型や光反射型のいずれのセンサーでもよいし、他の各種位置検知センサーを適用することもできる。
画像読取部は、制御部70からの指令でスキャナ31を駆動して原稿を読み取り、画像データに変換し、画像形成部40へ伝達する。
画像形成部40は、画像入力部30より伝達された画像データを参照し、画像形成を行う。
反転部50中の反転検知センサー52a、52bは、用紙の到達を検知して制御部70に信号を送る。また、反転部50中の反転搬送部材53は、制御部70の制御によって駆動される。
シリアル通信部80は、通信ケーブル等を介して後処理装置200とシリアル通信を行う。
操作部90は、タッチパネルからなり、情報を表示する表示部と、ユーザーが情報を入力する入力部とを兼ねている。操作部90により入力された情報は、制御部70に伝達される。
<画像形成動作>
次に、図1および図2を用いて、大容量トレイ11a(PFU上段トレイ)に収納されている用紙に対して画像形成を行う動作を以下に説明する。
大容量トレイ11aに用紙を入れてトレイをセットすると、大容量トレイ11aの図示しない昇降モータが駆動し昇降板が上昇する。用紙の上面が用紙供給部に備え付けられているPFUピックアップローラ23aを押し上げることで、図示しない上限センサーがONし、昇降版の上昇が停止する。
用紙への画像形成動作が開始すると、用紙上面に接しているPFUピックアップローラ23aが駆動し、搬送経路21に対して、用紙を供給する。
また、画像形成装置100の本体110が有する給紙トレイ12a〜12cから、本体ピックアップローラ23c〜23eを駆動することで、搬送経路21に対して用紙を供給することも可能である。
送り出された用紙は、PFUノーフィードセンサー22a、PFU搬送センサー22f〜22hを順に通過し、本体110に搬送される。本体110の中間搬送センサー22iを通過しレジストセンサー22jに到達すると、画像形成のタイミングに合わせてレジストローラ23iを駆動し、画像データに基づいて画像形成を行う。
画像入力部30は、原稿に形成された色画像を読み取るように動作する。
スキャナ31内に配設されている、不図示のイメージセンサーは、入射光の光量に応じて光電変換を行う。光電変換されたアナログの画像読取信号は画像入力部30内においてA/D変換されてデジタルの画像読取信号Soutが画像入力部30から出力される。画像入力部30には制御部70を介して画像処理部が接続され、デジタルの画像読取信号Soutが画像処理部において、画像圧縮処理及び変倍処理等がなされ、R色、G色、B色成分のデジタルの画像データとなる。更に、画像処理部は、その画像データを3次元色情報変換テーブルによって、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック色用の画像データDy、Dm、Dc、Dkに変換し、その色変換後の画像データDy、Dm、Dc、Dkを、画像形成部40を構成する画像形成ユニット41a、41b、41c、41dへ転送する。
画像形成部40は、画像処理部から転送された画像データに基づいて、イエロー、マゼンタ、シアン及び黒の画像をそれぞれ形成する。
画像形成が行われた用紙は、後処理装置200に搬送され、パンチ部61、折り部62において指定された後処理を行った後に、排紙トレイ63a、63bに排出される。また、画像形成装置100に後処理装置200が接続されていない場合は、画像形成が行われた用紙は、画像形成装置100に設けられた排紙トレイに排出される。
なお、用紙の両面に画像を形成する時には、表面に画像を形成した後、定着装置42から排出された用紙が分岐部51aにより排紙路から分岐される。次いで、用紙は、下方の循環通紙部51bを経て、再給紙機構である反転搬送部51cより表裏を反転され、再給紙搬送部を通過して、レジストローラ23iから搬送経路21に合流する。
反転搬送された用紙は、レジストローラ23iを経て、再度画像形成部40に搬送され、用紙の裏面上にカラー画像が一括転写される。
また、用紙の片面にのみ画像形成を行う場合であっても、以下のように用紙を反転部内で搬送することで、フェイスダウンの状態で用紙を排出することができる。すなわち、用紙を分岐部51aで排紙路から分岐させ循環通紙部51bを経て反転搬送部51cにより表裏を反転した後に、反転搬送部材53の駆動方向を逆転させることで、循環通紙部51bを逆方向に通過した後に、後処理装置200内を搬送し、排紙トレイ63a、63bに排出する。
<ジャム起因紙の自動パージ>
次に、本実施例に係る画像形成装置100が、ジャム起因紙を自動パージする条件について説明する。
用紙搬送処理では、正常に用紙が搬送できない場合のエラー検知として、ジャム検知処理を行っている。用紙の搬送中に、搬送経路21上に配設された各センサーに用紙が所定時間到達しない場合に、制御部70はジャムが発生したと判断して用紙搬送を停止する。例えば、大容量トレイ11aから用紙を送り出す場合、用紙先端がPFUノーフィードセンサー22aに到達しない場合は、なんらかの問題により用紙が正常に搬送できなかったと判断し、該当する紙の搬送を停止させる。このとき、既に給紙済みの先行紙は、ジャムを検知した箇所に対して下流(排出)側にあるため、継続して搬送し画像形成して出力する。
検知されたジャムのうち、例えば大容量トレイ11aからレジストローラ23i付近までの位置では、用紙とローラ間のすべりによるジャムが多い。これは、主に以下の3つの理由による。すなわち、(1)用紙収納部において次の用紙の給紙を行う場合は、その下の用紙との間に摩擦力が働くため、搬送経路21内で搬送を行う場合と比べて、ピックアップローラによる搬送の駆動力が不足する場合が多いこと、(2)定着装置42付近や排出トレイと比べて搬送部材23の数が少なく、駆動力が不足する場合が多いこと、(3)用紙供給部から給紙されてからレジストローラ23iに至るまでの搬送路は、定着装置42よりも搬送方向下流側と比べて曲率が大きいため、搬送の駆動力が不足する場合が多いことである。
このようなすべりによるジャムの場合、ジャムが検知される要因となった用紙、すなわちジャム起因紙はさほど傷んでおらず、搬送が可能である。しかし、このジャム起因紙にはローラ痕等がある可能性があるため、再び画像形成に用いることは好ましくない。そこで、本実施例に係る画像形成装置100では、このようなジャム起因紙に対して画像形成を行うことなく、搬送して排出するように制御を行う。以下、この制御を強制排出モードという。
一方、大容量トレイ11aからレジストローラ23i付近までの位置以外においては、折れによるジャムが検知される可能性が高い。折れによるジャムの場合は、ジャム起因紙は傷んでおり、自動パージは困難である。また、折れによるジャムの起因紙を無理に搬送しようとすると、装置がダメージを受ける可能性がある。そのため、折れによるジャムが発生した場合は、従来と同様に搬送を停止し、ユーザーに対してジャム起因紙の除去を促すように制御する。
制御部70は、検知センサー22からの情報に基づいてジャムが検知された箇所を特定する。特定した箇所がすべりによるジャムが発生する可能性が高いとして予め決定された所定箇所であると判断した場合はジャム起因紙に対して強制排出モードを実行する。
図3は、ジャムが検知された箇所と、強制排出モードを実行するか否かとの関係の一例を示す図である。図中の○は強制排出モードを実行する箇所であることを、×は実行しない箇所であることをそれぞれ示す。本実施例では、大容量トレイ11a、11bからPFUノーフィードセンサー22a、22bの間、PFUノーフィードセンサー22aからPFU搬送センサー22fの間、PFUノーフィードセンサー22bからPFU搬送センサー22hの間でジャムが検知された場合は強制排出モードを実行する。また、給紙トレイ12a〜12cから本体ノーフィードセンサー22c〜22eの間でジャムが検知された場合も強制排出モードを実行する。一方、これら以外の箇所でジャムが検知された場合は、強制排出モードを実行しない。なお、上記の条件は画像形成装置100の構成に応じて適宜設定可能なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
以下、図4および図5を用いて、ジャムが検知された場合の動作を説明する。
図4は、PFUノーフィードセンサー22aにおいてジャムが検知された場合の、画像形成装置100および後処理装置200の断面図である。
用紙Aはジャム起因紙であり、用紙Bおよび用紙Cは残留紙である。ジャム起因紙Aは、ピックアップローラ23aとPFUノーフィードセンサー22aの間で、すべりによるジャムを起こしている。
まず制御部70は検知センサー22からの情報に基づいてジャムが検知された箇所を特定する。次に制御部70は、図3に示した、ジャムが検知された箇所と強制排出モードを実行するか否かの関係を参照する。この場合、ピックアップローラ23aからPFUノーフィードセンサー22aの間でのジャムに該当するため、制御部70は強制排出モードを実行すると判断する。
その後、残留紙の自動パージおよびジャム起因紙に対する強制排出モードを実行する。まず、PFUピックアップローラ23aの駆動を停止する。そして、ジャム起因紙Aに対して下流側にある残留紙B、Cは引き続き画像形成が可能であるため、画像形成を行った後に排出する。その後、再びPFUピックアップローラ23aを駆動し、ジャム起因紙Aの自動パージを行う。
また、図4には示していないが、本体110内の給紙トレイ12a〜12cから用紙供給を行う場合に、給紙トレイ12a〜12c付近の本体ノーフィードセンサー22c〜22eにおいてジャムが検知された場合も、用紙とローラ間のすべりによるものであることが多い。したがって、この場合にも強制排出モードを実行する。すなわち、本体ピックアップローラ23c〜23eを駆動してジャム起因紙の自動パージを行う。
図5は、レジストセンサー22jにおいてジャムが検知された場合の、画像形成装置100および後処理装置200の断面図である。
用紙Eはジャム起因紙であり、用紙Dおよび用紙Fは残留紙である。ジャム起因紙Eは、レジストセンサー22jにおいて折れによるジャムを起こしている。
まず制御部70は検知センサー22からの情報に基づいてジャムが検知された箇所を特定する。次に制御部70は、図3に示した、ジャムが検知された箇所と強制排出モードを実行するか否かの関係を参照する。この場合、PFU搬送センサー22fからレジストセンサー22jの間でのジャムに該当するため、制御部70は強制排出モードを実行しないと判断する。
ジャム起因紙Eに対して下流側にある残留紙Fは排出が可能であるが、ジャム起因紙Eより上流にある残留紙Dは、ジャム起因紙Eによって搬送経路21が塞がれてしまっているため、排紙することができない。そのため、残留紙Fに対しては画像形成を行った後に排出するが、用紙Dに対しては、PFU搬送ローラ23fの駆動を停止する。
図6は、本実施例に係る画像形成装置100においてジャムが検知された際に、強制排出モードを実行するか否かを判断するための制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、判断を伴うステップにおいては、制御部70内のCPUが判断を行う。
まず、所定時間内に用紙が検知センサー22に到達したことが検知されなかった場合、ジャムとして検知され、検知センサー22から制御部70に信号が送られる。
ジャムが検知されると、制御部70は、ジャムが検知された箇所の搬送部材23の駆動を停止するよう制御する(ステップS601)。
ジャムが検知された箇所の搬送部材23が停止した後に、ジャム起因紙に対して下流側にある残留紙の排出を行う(ステップS602)。このとき、引き続き画像形成が可能な用紙に対しては、画像形成を行った後に排出する。一方、残留紙に対して下流側の搬送経路21がジャム起因紙によって塞がれている場合は、残留紙の排出を行わない。
残留紙の排出が終了したら、全ての搬送部材23を停止する停止処理を行う(ステップS603)。
停止処理の後に、ステップS604からステップS606において強制排出モードを実行するか否かの判断を行う。
まず、検知センサー22からの情報に基づいて、ジャムが検知された箇所は強制排出モードを実行できる箇所か否かを判断する(ステップS604)。
この判断は、図3に示したような条件テーブルを、制御部70に予め記憶させておき、この条件テーブルを参照することで行う。ここでジャムが検知された箇所が強制排出モードを実行しない箇所であると判断した場合は(ステップS604;No)、ジャムが検知された旨の表示をして終了する(ステップS609)。
一方、ジャムが検知された箇所が強制排出モードを実行する箇所であると判断した場合は(ステップS604;Yes)、次にジャム起因紙が排出可能な排出トレイが有るか否かを判断する(ステップS605)。ジャム起因紙を、正常に画像形成が完了した用紙と異なる排出トレイに排出することで、用紙の混在を防ぐためである。ここで、排出可能な排出トレイがないと判断した場合は(ステップS605;No)、ジャムが検知された旨の表示をして終了する(ステップS609)。
一方、排出可能な排出トレイがあると判断した場合は(ステップS605;Yes)、ジャム起因紙の排出経路に自動パージできない用紙が存在するか否かを判断する(ステップS606)。ここで、同時に複数のジャムが発生し、排出経路に自動パージできない用紙が存在すると判断した場合は(ステップS606;No)、ジャムが検知された旨の表示をして終了する(ステップS609)。一方、排出経路に自動パージできない用紙が存在しないと判断した場合は(ステップS606;Yes)、ジャム起因紙を自動パージする強制排出モードを実行する(ステップS607)。強制排出モード実行時の制御方法については後述する。
強制排出モードを実行した後に、ジャムが検知されなければ、ジャム起因紙の自動パージに成功したと判断して、終了する(ステップS608)。一方、強制排出モードを実行した後に、さらにジャムが検知された場合は、ジャム起因紙の自動パージを中止し、ジャムが検知された旨の表示(ステップS609)をして終了する。
図7は、図6のステップS607において、強制排出モードを実行する際の制御方法の一例を示すフローチャートである。
強制排出モードを実行すると判断した後、用紙供給部に、ジャム起因紙又は残留紙があるか否かを判断する(ステップS701)。用紙供給部に当該用紙が存在する場合は(ステップS701;Yes)、給紙モータおよび給紙送り出しクラッチをONにし(ステップS702)、当該用紙の搬送を試みてステップS703へ進む。用紙供給部に当該用紙が存在しなければ(ステップS701;No)、そのままステップS703へ進む。
続いて、用紙供給部から排出トレイに至るまでの搬送経路21上で、ジャム起因紙および残留紙の排出に必要な搬送部材23を駆動する(ステップS703)。このとき、ジャム起因紙にはローラ痕などが付いている可能性があるため、ジャム起因紙に対しては画像形成を行わない。
用紙の排出に必要な搬送部材23を駆動してから所定時間経過後に、用紙供給部にジャム起因紙および残留紙が存在するか否かを判断する(ステップS704)。ジャム起因紙および残留紙が用紙供給部からなくなっていれば(ステップS704;Yes)、給紙送り出しクラッチをOFFにし(ステップS705)、ステップS706へ進む。一方、依然として用紙供給部にジャム起因紙又は残留紙が存在している場合は(ステップS704;No)、そのままステップS706へ進む。
強制排出モード実行中には、ジャムが検知されたか否かを判断する(ステップS706)。ジャムが検知された場合は(ステップS706;Yes)、ジャム起因紙および残留紙の自動パージを中止し、全停止処理(ステップS708)を行い、終了する。ジャムが検知されなければ(ステップS706;No)、ステップS707へ進む。
搬送経路21内にあるジャム起因紙および残留紙が全て排出できた場合は(ステップS707;Yes)、全停止処理(ステップS708)を行い、終了する。一方、当該用紙の全てが排出できていない場合は(ステップS707;No)、ステップS704へ戻って制御を続ける。
本実施例によれば、すべりによるジャムが発生した場合であっても、ジャム起因紙の自動パージが行われるため、装置のダウンタイムをなくすことができ、またユーザーが自ら用紙を除去するための負荷を無くすことができる。また、「リトライ」方式と異なり、すべりによるジャムのジャム起因紙に画像形成を行うことなく排出するため、画像形成の品質が低下することを避けることができる。
(実施例2)
実施例1では、強制排出モードを実行するか否かは、検知センサー22からの情報のみに基づいて判断していたが、本実施例では、検知センサー22からの情報では強制排出モードを実行すると判断しなかった場合であっても、さらに、ジャム起因紙に関する情報を考慮して強制排出モードを実行するか否かを判断する。
図8は、本発明の実施例2に係る画像形成装置100において、搬送経路21上の区間を、ジャムが検知された場合に強制排出モードを「実行区間」、「条件付実行区間」、および「不実行区間」の3つに分けた分類を示す図である。図中の○は実行区間を、△は条件付実行区間を、×は不実行区間をそれぞれ表わす。実行区間とは、ジャムが検知されたときに、他の条件(排出可能な排出トレイがあること、排出経路に自動パージできない用紙が無いこと)を満たす場合はジャム起因紙の属性によらず、必ず強制排出モードを実行する位置である。条件付実行区間とは、ジャム起因紙の属性が所定の条件を満たすときのみ強制排出モードを実行する位置である。不実行区間とは、ジャムが検知されたときに、ジャム起因紙の属性によらず、強制排出モードを実行せずにジャム表示をして装置を停止する位置である。条件付実行区間においてジャムが検知された場合に考慮する用紙の属性としては、たとえば坪量や紙種、用紙の色、平滑度、剛度等を用いることができる。また、用紙の属性は、ユーザーが画像形成装置100に備えられた操作部90によって入力することができる。
図9は、条件付実行区間においてジャムが検知された場合に、坪量が異なる用紙について、ジャムが検知された箇所と強制排出モードを実行するか否かとの関係を示す図である。本実施例では、坪量が20〜260gの用紙の場合は強制排出モードを実行しないが、坪量が260〜300gの用紙の場合は実行するように設定している。坪量が大きく重い用紙を用いた場合、搬送部材23との間で搬送の駆動力が不足し、すべりによるジャムが発生しやすいためである。
図10は、条件付実行区間においてジャムが検知された場合に、異なる紙種の用紙について、ジャムが検知された箇所と強制排出モードを実行するか否かとの関係を示す図である。本実施例では、普通紙の場合は強制排出モードを実行しないが、塗工紙の場合は実行するように設定している。塗工紙を用いた場合、紙同士の摩擦係数が大きく、すべりによるジャムが発生しやすいためである。なお、用紙に関する情報として、紙種や坪量以外にも、用紙の色、平滑度、剛度等を用いてもよい。
図11は、本実施例に係る画像形成装置100においてジャムが検知された際に強制排出モードを実行するか否かを判断するための制御方法の一例を示すフローチャートである。図11に特徴的な部分はステップS1104〜S1106である。
図11には示していないが、画像形成動作開始に先立って、ユーザーが画像形成装置100に備えられた操作部90によって、画像形成に用いる用紙に関する情報を入力し、その後画像形成動作を開始する。その後ジャムが検知されてから、停止処理を行うまで(ステップS1101〜S1103)は、図6のステップS601〜S603と同様の制御方法である。
次に、ジャムが検知された箇所が強制排出モードの実行区間に属するか否かを判断する(ステップS1104)。この判断は、図8に示したような条件テーブルを、制御部70に予め記憶させておき、この条件テーブルを参照することで行う。
ステップS1104において、ジャムが検知された箇所が強制排出モードの実行区間に属していないと判断した場合は(ステップS1104;No)、ステップS1105へ進む。一方、強制排出モードを実行すると判断した場合は(ステップS1104;Yes)、ステップS1107へ進み、以降の制御方法(S1107〜S1111)は、図6のステップS605〜S609と同様の制御方法である。
ステップS1105へ進んだ場合、ジャムが検知された箇所が強制排出モードの条件付実行区間に属しているか否かを判断する。条件付実行区間に属していると判断した場合は(ステップS1105;Yes)、ステップS1106へ進む。一方、ジャムが検知された箇所が条件付実行区間に属していないと判断した場合は(ステップS1105;No)、不実行区間に属しているため、ジャム表示(ステップS1111)をして終了する。
ステップS1106へ進んだ場合、用紙属性を考慮すると強制排出モードを実行するか否かを判断する。この判断は、ユーザーが操作部90によって入力した、用紙に関する情報を基に、制御部70に予め記憶させておいた図9または図10に示したような条件テーブルを参照することで行う。
ステップS1106において、強制排出モードを実行すると判断した場合は(ステップS1106;Yes)、ステップS1107へ進み、強制排出モードを実行するか否かの検討を続ける。その後の制御方法(ステップS1107〜S1111)は、実施例1における図6のステップS605〜S609と同様の制御方法である。一方、用紙に関する情報を考慮してもなお強制排出モードを実行しないと判断された場合は(ステップS1106;No)、ジャムが検知された旨の表示(S1111)をして終了する。
また、本実施例では、ユーザーが操作部90によって用紙に関する情報を入力するとしたが、画像形成装置100の工場出荷時に予め用紙情報を記憶させておくことも可能である。
本実施例によれば、強制排出モードを実行するか否かを判断するにあたって、ジャム発生箇所の情報に加えてさらに用紙に関する情報を考慮することで、より適切な判断が可能となる。
(実施例3)
以上の実施例では、所与の状況においてジャム起因紙の自動パージを行うか否かは予め決定されていたが、本実施例では、強制排出モードを実行するか否かの条件をユーザーがカスタマイズする機能を備えている。
図12は、ユーザーがジャム起因紙の強制排出モードを実行する条件を入力する際の入力画面を示した図である。実施例1における図3に記載の実施条件を、操作部90によってユーザーが変更できるようになっている。実施条件をユーザーが入力した後は、実施例1における図6と同様の制御方法で、強制排出モードを実行するか否かを判断する。
なお、本実施例では、実施例1における図3に記載の実施条件をユーザーが変更できるように構成したが、実施例2における図8に記載の実施条件をユーザーが変更できるように構成してもよい。
本実施例によれば、強制排出モードを実行するか否かを判断するにあたって、ユーザーの使用状況を反映することで、より適切な判断が可能となる。
例えば、予めオフセット印刷機など別の印刷装置で印刷した用紙に対して、追い刷り印刷させる場合、紙同士が引っ付かないように打ち粉(印刷パウダー)を塗布していることが多い。その場合、搬送ローラと用紙間に打ち粉が入り込み、通常の用紙を使用した場合と比べて、すべりによるジャムが起こりやすくなる。そこで、このような用紙を用いた場合は、通常の用紙を用いた場合に強制排出モードを実行する区間に加えて、搬送経路上のより広い範囲で検知されたジャムに対しても強制排出モードを実行するように設定することで、より適切に強制排出モードを実行することができる。
(実施例4)
以上の実施例では、強制排出モードを実行する際も、画像形成時と同じ搬送速度でジャム起因紙を搬送していた。本実施例では、強制排出モードを実行する際には、まず画像形成時の搬送速度より遅い速度で搬送部材23を駆動し、ジャム起因紙がセンサーに到達したことが検知された場合は、画像形成時と同じ搬送速度で駆動を行う。
強制排出モードを実行する際に、ジャム起因紙の搬送を行う搬送部材を、画像形成時と同じ搬送速度で駆動すると、ジャム検知時と同様にすべりが発生して搬送できない可能性がある。そこで、本実施例に係る画像形成装置100では、強制排出モードにおいては、画像形成時の搬送速度よりも遅い速度で搬送部材23を駆動することで、再びすべりによるジャムが発生することを防ぐことができる。
図13は、本実施例に係る画像形成装置100において、強制排出モードを実行すると判断した場合の制御方法の一例を示すフローチャートである。図13に示すフローチャートにおいて特徴的な部分は、ステップS1301およびS1302である。なお、ジャムが検知されてから強制排出モードを実行するか否かの判断を行うまでは、実施例1における図6のフローチャートと同様の制御方法で行う。
まず、強制排出モードが実行されると、ジャム起因紙の搬送に必要な搬送部材23を、画像形成時の搬送速度より遅い速度で駆動する(ステップS1301)。例えば、画像形成時の搬送速度が500mm/secとすると、この半分の速度250mm/secで搬送部材23を駆動する。
その後、所定時間内に次の検知センサー22に到達したか否かを判断する(ステップS1302)。ジャム起因紙が検知センサー22に到達した場合は(ステップS1302;Yes)、通常の搬送速度である500mm/secに加速して搬送を継続する。以後の制御方法は、実施例1におけるその後のステップS1303〜S1310は、実施例1における図7のステップS701〜S708と同様の制御方法である。一方、ジャム起因紙が次の検知センサー22に到達しなかった場合は(ステップS1302;No)、強制排出モードの実行を中止して終了する。
本実施例によれば、強制排出モードを実行した際に、搬送部材23を画像形成時よりも遅い速度で駆動することで、再びすべりによるジャムが発生する確率を低減できる。そのため、より確実にジャム起因紙の自動パージを行うことが可能となる。
(実施例5)
以上の実施例では、ジャムが検知された際に装置を停止し、強制排出モードを実行してジャム起因紙の自動パージに成功した場合であっても、装置を停止したままであったが、本実施例では、ジャム起因紙の自動パージに成功した場合には、停止していた画像形成処理を自動再開する。
図14は、本実施例に係る画像形成装置100において、強制排出モードが実行された際の制御方法の一例を示すフローチャートである。
ステップS1401〜S1406までは、実施例1における図7のステップS701〜S706と同様の制御方法である。また、ステップS1406においてジャムが検知された場合に、全停止処理(ステップS1408)を行って終了する点も、実施例1における図7のステップS708と同様である。
図14に示すフローチャートにおいて特徴的な部分は、ステップ1407後の制御方法である。本実施例では、強制排出モードを実行して、全排出が完了したと判断した場合(ステップS1407;Yes)、全停止処理を行うことなく、画像形成動作を再開する。一方、全排出が完了していない場合には(ステップS1407;No)、再びステップS1404に戻り自動パージを継続する点は、実施例1と同様である。
本実施例によれば、強制排出モードを実行してジャム起因紙の自動パージに成功した場合、ユーザーが改めて画像形成動作を再開させる必要がないため、装置のダウンタイムが削減でき、ユーザーが画像形成を再開するための負荷を減らすことが可能となる。
(実施例6)
以上の実施例では、強制排出モードが繰り返し実行される場合があったが、本実施例では、所定期間内に強制排出モードを所定回数実施した場合、所定回数実行した後にジャムが検知された場合、制御部70は、強制排出モードを実行しないように制御を行う。
例えばピックアップローラ23aが摩耗して用紙との間に働く摩擦力が小さくなった場合、ピックアップローラ23aと用紙との間のすべりが通常より起こりやすくなる。また、画像形成を行う用紙の平滑度等の属性によっては、搬送部材23との間で頻繁にすべりが生じてしまう場合がある。
このような状況では、すべりの原因を根本的に改善しないと、強制排出モードが何度も実行され、無駄に廃棄される用紙が多くなってしまう。
そこで、本実施例では、所定期間内に強制排出モードを所定回数実施した場合、所定回数実行した後にジャムが検知された場合、制御部70は、強制排出モードを実行しないように制御を行う。なお、所定回数とは、1回又は複数回のいずれであっても良い。また、所定期間および所定回数は、使用状況に応じてユーザーが操作部90によって入力することができる。
図15は、本実施例に係る画像形成装置100の制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、ステップS1501〜S1503およびS1505〜S1510は、実施例1における図6のステップS601〜S603およびステップS604〜S609と同様の制御方法である。
本実施例の特徴はステップS1504である。ジャムが検知され、ジャムが検知された箇所に対して下流側にある残留紙の排出を行い、停止した後に、制御部70は、所定期間内に強制排出モードが所定回数実行されたか否かを判断する(ステップS1504)。図2のブロック図には記載されていないが、本実施例に係る画像形成装置100は、強制排出モードを実行した回数を記憶するカウンターを備えている。ステップS1504において、制御部70は、カウンターに記憶されている情報を参照して、所定期間内に強制排出モードが所定回数実施されたか否かを判断する。その結果、所定回数実施されている場合は(ステップS1504;Yes)、ジャムが検知された旨の表示(ステップS1510)をして終了する。一方、所定回数実施されていない場合は(ステップS1504;No)、ステップ1505へ進み、強制排出モードを実行するか否かの検討を続ける。
強制排出モードが所定回数実行された場合に、それ以降は実行しないように制御を行うことで、用紙を変更する、ピックアップローラ23aを交換するといった、根本的な改善を行うようユーザーに促すことができる。したがって、強制排出モードの実行を繰り返すことによって廃棄される用紙を減らすことが可能となる。
(実施例7)
以上の実施例では、反転部50においてジャムが検知された場合、折れによるジャムである可能性が高いため、図3に示したように、強制排出モードを実行することなく装置を停止していた。本実施例では、反転部においてジャムが検知された場合であっても強制排出モードを実行し、ジャムが検知される直前の搬送方向と逆方向に反転搬送部材53を駆動してジャム起因紙の自動パージを行う。
例えば、定着装置42から出た用紙が分岐部51aを通過して、循環通紙部51bに侵入し、反転搬送部51cへ搬送される際に折れによるジャムを起こした場合、用紙の先端は折れなどのダメージを受けている可能性が高い。そのため、ジャム検知時の搬送方向と同じ方向へ自動パージすることは困難である。そこで制御部70は、搬送方向を逆方向に切り換え、循環通紙部51bから分岐部51aへ向かって戻る方向に反転搬送部材53を駆動し、排紙トレイ24に排出するように制御する。
図16は、本実施例に係る画像形成装置100の制御方法の一例を示すフローチャートである。
ジャムが検知されると、制御部70は、ジャムが検知された箇所の搬送部材23の駆動を停止するよう制御する(ステップS1601)。
その後制御部70は、検知センサー22の情報に基づいてジャムが検知された箇所を特定し、特定された箇所が、反転検知センサー52aから反転検知センサー52bの間であるか否かを判断する(ステップS1602)。ジャムが検知された箇所が反転検知センサー52aから反転検知センサー52bの間であれば(ステップS1602;Yes)、ステップS1603へ進む。ジャムが検知された箇所が反転検知センサー52aから反転検知センサー52bの間でなければ(ステップS1602;No)、実施例1における図6のステップS602へ移行し、その後の処理を実行する。
次に、ジャム起因紙の後端が反転検知センサー52aを既に通過しているか否かを判断する(ステップS1603)。ジャム起因紙の後端が反転検知センサー52aを通過していなければ、ジャム起因紙の後端は分岐部51aに留まっている可能性が高く、強制排出モードを実行したとしても、ジャム起因紙が分岐部51aに引っ掛かり、排出することができないためである。ジャム起因紙の後端が反転検知センサー52aを既に通過している場合は(S1603;Yes)、ステップS1604へ進む。一方、ジャム起因紙の後端が反転検知センサー52aを通過していない場合は(S1603;No)、ジャムが検知された旨の表示(ステップS1607)を行った後に、全停止処理(S1608)を行って終了する。
次に、ジャム起因紙が排出可能な排出トレイが有るか否かを判断する(ステップS1604)。ジャム起因紙を、正常に画像形成が完了した用紙と異なる排出トレイに排出することで、用紙の混在を防ぐためである。ここで、排出可能な排出トレイがないと判断した場合は(ステップS1604;No)、ジャムが検知された旨の表示をして終了する(ステップS1607)。
ジャム起因紙が排出可能な排出トレイが有る場合、以下の強制排出モードを実行する。
ジャムが検知される直前の搬送方向と逆方向に反転搬送部材53を駆動し、ジャム起因紙の自動パージを行い(ステップS1605)、ステップS1606へ進む。
反転搬送部材53を逆方向に駆動してから一定時間内にジャムが検知されたか否かを判断する(ステップS1606)。ジャムが検知されなかった場合は(ステップS1606;No)、全停止処理(ステップS1608)を行って終了する。一方、ジャムが検知された場合は(ステップS1606;Yes)、ジャムが検知された旨の表示(ステップS1607)を行った後に、全停止処理(S1608)を行って終了する。以上のステップS1605〜S1608が、反転部50における強制排出モードの動作に該当する。
本実施例によれば、反転部50において折れによるジャムが発生した場合であってもジャム起因紙の自動パージを行うことができるため、装置が停止するダウンタイムをなくすことができる。またユーザーが自ら用紙を除去するための負荷を無くすことができる。