JP6033153B2 - フィルムミラー、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルムミラー、及び、その製造方法、並びに、該フィルムミラーを適用する太陽熱発電装置用フィルム、太陽光発電装置用フィルムミラーに関する。
近年、石油エネルギーに代表される化石燃料エネルギーに代わる代替エネルギーの研究が盛んに検討され始めている。特に、風力発電、地熱発電、太陽熱発電、太陽光発電等はクリーンな自然エネルギーであり、今後のエネルギー開発の鍵を握るとも言われている。この中で、太陽エネルギーを利用するものは安定しており、かつ、量が多いことから特に有力であると考えられている。
しかしながら、太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを活用しようとする場合、太陽エネルギーのエネルギー密度が低い、エネルギーの貯蔵や移送が難しくそのため夜間等に利用しにくい、等の問題があるとされている。
近年、これらの問題を解決するために、集光型の太陽光発電や集熱型の太陽熱発電が提案されている。これら方式では太陽エネルギーのエネルギー密度が低い問題に対して、反射鏡で太陽光を集めることによって解決を図ろうとしている。
しかしながら、これら反射鏡は太陽光による紫外線や熱線、潮風や酸性雨といった風雨および化学的衝撃、埃・粉塵・砂嵐といった物理的衝撃に晒されることとなり、従来ガラス製の反射鏡が用いられてきた。しかしながら、ガラス製ミラーは環境に対する耐久性は高いものの、重量があって破損しやすいという特徴のため、輸送時に破損したり、重いミラーを設置する架台を強大にする必要から建設費がかさんだり、太陽を追尾するために駆動させるのに大きなエネルギーが必要であったりする、といった問題があった。
一方、上記問題を解決する方法としてプラスチック製のミラーを用いることが考えられるが、プラスチック製ミラーは反射率が低いために、大量の鏡が必要となり、広い設置面積と建設費とがかさむという問題があった。また、プラスチック製のミラーはプラスチック基材と反射金属膜との密着性が悪く、長期の屋外使用に対しては問題があった。
プラスチック基材への主な金属膜形成法としては、蒸着やめっき処理が挙げられる。めっきにて密着性を上げるためには、プラスチックフィルム基材の表面に凹凸をつけ、金属とフィルム基材との間のアンカー効果により密着性を上げるという方法がとられてきた。しかしながら、アンカー効果により密着性を上げる方法では、金属膜厚が薄い場合にはプラスチックフィルム基材表面の凹凸が金属層表面に反映されることで、反射能が落ちてしまうという問題があった。
これに対し、無電解めっき触媒と相互作用できるポリマーを塗布後に、無電解めっき触媒を吸着し、無電解めっきを施し、あるいは更に電気めっきを施して、フィルム基材上に高密着、高平滑に金属膜を形成させる手法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかしながら、無電解めっきによる成膜は、無電解めっきで使用する処理液中において金属の自己析出反応が起こりやすく、処理液の寿命が著しく低くなるため、生産効率やコストの面で問題があった。また、無電解めっき処理にて表面凹凸が増加し、反射率が低くなるという問題も生じていた。
一方、これに対し、金属前駆体含有ポリマーを塗布後に金属として還元、もしくは金属前駆体と相互作用できるポリマーを塗布後に金属前駆体を吸着し金属として還元し、プラスチックフィルム基材上に金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層を形成することで導電性を持たせ、そこに電気めっきにより金属層を成膜する手法が開示されている(例えば、特許文献2、3参照。)。これらの手法では、無電解めっきを経ることなく直接電解めっきを施すことができるため、金属の自己析出の問題なく、密着性よくプラスチックフィルム基材上に金属膜を形成させることができる。
通常、金属反射層としては、反射性に優れることから銀を含有する金属反射層の使用が望ましいとされている。さらに、銀の腐食を抑えるため、犠牲防食層として、銀層の下地層として銅層を形成し、銅層の表面に銀層を形成してなる反射層を有するフィルムミラーが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
国際公開第2010−150570号パンフレット 特開2009−164575号公報 特開2006−228478号公報 特開2011−150316号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、犠牲防食層として銅の下地層を有する銀反射層を用いた場合、経時により銅が銀反射層中に拡散して、銀反射性能を低下させるという問題があることが明らかとなった。
このため、経時した場合でも、高い反射率が維持され、且つ反射層中への下地層の金属の拡散が抑制されたフィルムミラーが望まれているのが現状である。
上記実情に鑑みてなされた本発明の課題は、支持体と金属反射層との良好な密着性を低下させることなく、高い反射性能が長期間維持され、長期間の屋外使用にも耐え得るフィルムミラーを提供することである。
また、本発明のさらなる課題は、上記本発明のフィルムミラーの簡易な製造方法、及び該フィルムミラーを用いた、軽量であり、耐久性に優れた太陽熱発電装置用フィルムミラー、並びに太陽光発電装置用フィルムミラーを提供することである。
本発明の上記した課題は、以下の手段によって解決される。
<1> 支持体と、還元された金属粒子である銀粒子及び少なくとも1種の銀よりも卑な金属からなる金属粒子、並びにめっき下塗りポリマーを含むめっき下塗りポリマー層と、銀を含有する反射層と、樹脂保護層と、をこの順に有するフィルムミラーであって、前記銀よりも卑な金属が、Co、Zn、Al、Fe、Ni、Sn、Pb及びCuから選ばれた少なくとも1種であり、前記還元された金属粒子全量に対する前記銀よりも卑な金属からなる金属粒子の含有率が5質量%以上80質量%以下であり、前記めっき下塗りポリマーが、重合性基、並びにエーテル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びボロン酸基から選ばれた少なくとも一種の官能基を側鎖に有するアクリルポリマーである、フィルムミラー
<2> 還元された金属粒子全量に対する銀よりも卑な金属からなる金属粒子の含有率が、5質量%以上50質量%以下である<1>に記載のフィルムミラー。
<3> 銀よりも卑な金属が銅である<1>又は<2>に記載のフィルムミラー。
> アクリルポリマーが、カルボン酸基、スルホン酸、リン酸基及びボロン酸から選ばれた官能基を有するアクリルポリマーである<1>〜<3>のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
> 支持体上に、還元された金属粒子である銀粒子及び少なくとも1種の銀よりも卑な金属からなる金属粒子、並びにめっき下塗りポリマーを含むめっき下塗りポリマー層を形成する工程、電気めっきにより、銀を含有する反射層を形成する工程、及び樹脂保護層を形成する工程を含み、前記銀よりも卑な金属が、Co、Zn、Al、Fe、Ni、Sn、Pb及びCuから選ばれた少なくとも1種であり、前記還元された金属粒子全量に対する前記銀よりも卑な金属からなる金属粒子の含有率が5質量%以上80質量%以下であり、前記めっき下塗りポリマーが、重合性基、並びにエーテル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びボロン酸基から選ばれた少なくとも一種の官能基を側鎖に有するアクリルポリマーである、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のフィルムミラーの製造方法。
っき下塗りポリマー層を形成する工程が、支持体上に、重合性基並びにエーテル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びボロン酸基から選ばれた少なくとも一種の官能基を側鎖に有するアクリルポリマーを含むポリマー層を形成する工程、還元されて銀となる銀前駆体、並びに還元されて銀よりも卑な、Co、Zn、Al、Fe、Ni、Sn、Pb及びCuから選ばれた少なくとも1種の金属の前駆体を、該ポリマー層に付与する工程、及び該銀前駆体及び該銀よりも卑な金属の前駆体を還元する工程を含む<>に記載のフィルムミラーの製造方法。
> 太陽熱発電装置用または太陽光発電装置用である<1>〜<>のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
本発明のフィルムミラーは、フィルム基材に反射層となる金属膜との密着を良好にするために、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層を支持体上に設け、該めっき下塗りポリマー層上に銀を含有する反射層を設けてなる。
即ち、支持体と密着性が良好なポリマーからなるめっき下塗りポリマー層に含まれる還元された銀粒子及び銀よりも卑な金属の粒子は、ポリマーと親和性が良好であり、且つ、これら金属粒子が、銀を含有する反射層に含まれる銀との間においても相互作用することで、支持体と銀含有反射層との高い密着性が維持される。
また、銀を含有する反射層の反射性能が長期間維持される作用機構は明確ではないが、以下のように推定される。
めっき下塗りポリマー層において、還元された銀粒子と、銀よりも卑な金属の粒子とはそれぞれがポリマー層中に均一に分散されて混在している。ここで、銀よりもイオン化され易い銀よりも卑な金属の粒子は、酸素の影響を受けて隣接する銀粒子や銀を含有する反射層内の銀よりも早く酸化されるために、酸素の銀に対する影響が低減され、銀を含有する反射層の酸化による反射性能の低下が抑制されるものと考えられる。
また、銀よりも卑な金属がイオン化した場合でも、めっき下塗りポリマー層表面に形成された銀を含有する反射層よりも近傍に存在するめっき下塗りポリマー層中の銀粒子へと選択的に拡散され、銀を含有する反射層への拡散は抑制される。隣接する銀粒子中に拡散した銀よりも卑な金属イオンはそこで酸化物となり、もはや拡散されない。このため、銀含有反射層に対する酸素の影響、銀よりも卑な金属の銀含有反射層への拡散のいずれもが低減され、銀を含有する反射層の高い反射性能が長期間維持されるものと考えられる。
このため、本発明のフィルムミラーは、銀の使用量を低減した場合でも、銀を含有する反射層に与える酸素や銀よりも卑な金属の影響がより低減され、長期間優れた反射性能が維持されるものと推定している。
本発明によれば、支持体と金属反射層との良好な密着性を低下させることなく、高い反射性能が長期間維持され、長期間の屋外使用にも耐え得るフィルムミラーを提供することができる。
また、本発明によれば、上記の本発明のフィルムミラーの簡易な製造方法を提供することができ、それを用いた太陽熱発電装置、太陽光発電装置を提供することができる。
以下に本発明のフィルムミラーの好ましい実施形態について説明する。以下、便宜上、各構成要件に(A)〜(D)の符号を付して説明することがある。
本発明に係るフィルムミラーは、(A)支持体と、(B)還元された金属粒子である銀粒子及び少なくとも1種の銀よりも卑な金属からなる金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層(以下、適宜、「めっき下塗りポリマー層」と称する。)と、(C)銀を含有する反射層(以下、適宜、「銀含有反射層」と称する。)と、(D)樹脂保護層と、をこの順に有する。ここで、前記(C)銀含有反射層がフィルムミラーの反射面を構成する。
先ず、各層について各層を構成する成分と共に説明し、次いで製造方法について説明する。なお、各層の説明において、製造方法についても説明することがある。
<(A)支持体>
本発明において、(A)支持体として用いるフィルム基材の材料としては、フレキシブル性や軽量化の観点で、ポリエステル、ポリイミド、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアラミド、液晶ポリマー等が挙げられ、これらの樹脂をフィルム状など任意の形状に成形して支持体として用いることができる。また、ガラスエポキシ基材、紙基材などを用いてもよい。
支持体は、上記例示した基材からなる単層構造であっても、複数種を積層してなる多層構造であってもよい。
樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BT樹脂、PPE樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、液晶樹脂、ポリエステル樹脂、PEN、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアセチレン等が好適であり、フィルム状に成形できる樹脂であればすべて使用することができる。
特に好適な支持体としては、ポリエステル樹脂のフィルム又はポリイミド樹脂のフィルムが挙げられる。
支持体の形状としては、平面、拡散面、凹面、凸面、等各種のフィルムミラーにおいてフィルム基材として求められる形状であればよい。
支持体の厚みとしては、10μm〜5mm程度が好ましい。厚みがこの範囲において、生産時のハンドリングが良好であり、容易に任意の形状に成形が可能である。支持体の厚みは、より好ましくは、20μm〜1mmであり、更に好ましくは25μm〜500μmである。
支持体は、支持体の上に設けられる(B)めっき下塗りポリマー層との密着性を向上する、不純物の混入を抑制する等の目的で、表面処理を施してもよい。
表面処理としては、UV照射、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理などの表面を分解活性化させる処理、ヒドラジン、N−メチルピロリドン、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液のようなアルカリ性溶液での処理、硫酸、塩酸、硝酸のような酸性溶液での処理などが挙げられる。
また、支持体表面の汚れを落として清浄にする処理としては、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン等の有機溶剤による処理、付着したゴミを落とすための水洗等が挙げられる。
これらの表面処理は複数種を組み合わせて行ってもよい。
また、めっき下塗りポリマー層の形成を容易にしたり、形成されためっき下塗りポリマー層との密着性をより向上したり、といった目的で、支持体とめっき下塗りポリマー層との間に、別の下塗り層をさらに設けてもよい。
フィルムミラーの反射能を向上させる目的から、支持体の表面粗さ(Ra)が50nm以下であるものを用いることが好ましく、Raが20nm以下であることがより好ましい。更に好ましくは、平均粗さ(Ra)が、5nm以下であることである。
(支持体に含まれうる添加剤)
支持体は、樹脂などの基材に加え、目的に応じて種々の添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、樹脂フィルムを用いた場合に耐久性をより向上させるための紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、樹脂の柔軟性をより向上させるための可塑剤などが挙げられる。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤を使用することが好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−2,4,8,10−テトラオキオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
特に、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が550以上のものが好ましい。
チオール系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等が挙げられる。
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
支持体に酸化防止剤を用いる場合の含有量としては、支持体の基材となる樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部の範囲であることが好ましい。
(紫外線吸収剤)
支持体に用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリチル酸フェニル系等の紫外線吸収剤、酸化チタン等の無機粒子型紫外線吸収剤などが挙げられ、これらから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤としては、フェニルサルチレート、2−4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、上記以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギー等として放出する機能を有する化合物が含まれる。さらに、酸化防止剤あるいは着色剤等との併用で効果を発現するもの、あるいはクエンチャーと呼ばれる、光エネルギー変換剤的に作用する光安定剤等も併用することができる。
支持体に紫外線吸収剤を用いる場合の含有量としては、支持体の基材となる樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましい。
<(B)還元された金属粒子である銀粒子及び少なくとも1種の銀よりも卑な金属からなる金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層>
本発明における(B)めっき下塗りポリマー層は、還元された金属粒子としての銀粒子及び銀よりも卑な金属の粒子と、後述のめっき下塗りポリマーとを少なくとも有する。
本発明においては、銀などの金属の前駆体と後述のめっき下塗りポリマーとを含む組成物を用いて、支持体上に塗布等の方法により金属の前駆体を含むめっき下塗りポリマー層を形成し、あるいは、後述のめっき下塗りポリマーを含む組成物を用いて支持体上に層を形成し、その後、支持体上に設けた前記層に、金属の前駆体を含む組成物を浸漬等の方法によって接触させることにより金属の前駆体を含むポリマー層を形成し、然る後、金属の前駆体を含むめっき下塗りポリマー層が有する該金属の前駆体を還元して、本発明の(B)還元された金属の粒子を含むめっき下塗りポリマー層を形成することが好ましい。
(めっき下塗りポリマー)
まず、めっき下塗りポリマー層形成用組成物に用いるめっき下塗りポリマーについて説明する。
本発明におけるめっき下塗りポリマー層形成用組成物に用いるめっき下塗りポリマーは、重合性基、及び、金属前駆体と相互作用する官能基(以後、適宜「相互作用性基」と称する。)を少なくとも有する。相互作用性基は、以下に詳述するように、酸性基などのイオン性極性基と、シアノ基などの非解離性官能基を含む。
めっき下塗りポリマーは、分子内に重合性基と相互作用性基を有すればよく、重合性基はポリマーの主鎖末端及び側鎖の少なくともいずれかに有すればよい。めっき下塗りポリマーとしては、例えば、重合性基を有する構成単位と、相互作用性基を有する構成単位とを含んで構成されるポリマーなどが挙げられ、また、同一の構成単位に重合性基と相互作用性基とを含んでいてもよい。
重合性基は、ポリマーの作製後に高分子反応により導入されてもよい。
めっき下塗りポリマーには、2種以上の重合性基を含んでいてもよく、2種以上の相互作用性基を含んでいてもよい。
めっき下塗りポリマーは、目的に応じて、重合性基を含む構成単位、および相互作用性基を含む構成単位以外の構成単位(以下、適宜、「他の構成単位」と称する。)を含んでいてもよい。他の構成単位を含むことによって、めっき下塗りポリマー層形成用組成物としたときに、水または有機溶剤への溶解性をより向上させたり、ハンドリング性を向上させたりすることができ、より均一なめっき下塗りポリマー層を形成することができる。
(めっき下塗りポリマーの主骨格)
めっき下塗りポリマーの主骨格としては、アクリルポリマー、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル等が好ましいが、アクリルポリマーであることがより好ましい。
アクリルポリマーとしては、相互作用性基として、イオン性極性基である酸性基を側鎖に含み、且つ、重合性基を側鎖に含む高分子化合物であることが好ましい。
アクリルポリマーに導入される酸性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられるが、原料入手の点からカルボキシル基が好ましい。
また、重合性基としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、カルボン酸のビニルエステル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、アリルエステル基、スチリル基等の各種重合性基が好ましい。
前記アクリルポリマーをより具体的に説明すると、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂に、環状エーテル基含有重合性化合物、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、桂皮酸等の不飽和脂肪酸のグリシジルエステルや、脂環式エポキシ基(例えば、同一分子中にシクロヘキセンオキシド等のエポキシ基)と(メタ)アクリロイル基を有する化合物等のエポキシ基含有の重合性化合物を付加させて得られる化合物等が挙げられる。また、酸性基及び水酸基を含有するアクリル樹脂に、イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有の重合性化合物を付加させて得られる化合物、酸無水物基を含有するアクリル樹脂に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する重合性化合物を付加させて得られる化合物等も挙げられる。また、グリシジルメタクリレート等の環状エーテル基含有重合性化合物と(メタ)アクリロイルアルキルエステル等のビニルモノマーを共重合し、側鎖のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を付加させて得られる化合物等も挙げられる。
これらの例は、特許2763775号公報、特開平3−172301号公報、特開2000−232264号公報等が挙げられる。
これらの中で、アクリルポリマーが、高分子化合物の酸性基の一部に環状エーテル基(例えば、エポキシ基、オキセタン基を部分構造に有する基)含有重合性化合物を付加させたもの、及び高分子化合物の環状エーテル基の一部又は全部にカルボキシル基含有重合性化合物を付加させたもののいずれかから選択された高分子化合物であることが、さらに好ましい。
以下、めっき下塗りポリマーに含まれる重合性基、相互作用性基、およびその特性等について詳述する。
(重合性基)
めっき下塗りポリマーが有する重合性基は、エネルギー付与により、ポリマー同士、または、ポリマーと下地層(支持体若しくは支持体上に設けられた下塗り層)との間で化学結合を形成しうる官能基であればよい。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。カチオン重合性基としては、オキセタン環、オキシラン環(エポキシ環)、ビニルエーテル基を含む官能基が挙げられる。
なかでも、反応性の観点から、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記一般式(A−5)〜(A−7)で表されるものが好ましい。
一般式(A−5)〜(A−7)中、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は−N−R12−を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、−N−R13−、又はフェニレン基を表す。R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。
前記一般式(A−5)において、Rとしては、例えば、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが好ましく、水素原子、メチル基が、ラジカル反応性が高いことからより好ましい。
前記R及びRとしては、それぞれ独立に、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基等が挙げられ、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が、ラジカル反応性が高いことからより好ましい。
前記Xが表す−N−R12−におけるR12としては、例えば、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基等が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基が、ラジカル反応性が高いことからより好ましい。
これらの基に導入しうる置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
前記一般式(A−6)において、R〜Rとしては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基等が好ましく、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がより好ましい。
これらの基に導入しうる置換基としては、前記一般式(A−5)においてR、R及びR12に導入しうる置換基として挙げたものが同様に例示される。
前記Yが表す−N−R12−におけるR12としては、前記一般式(A−5)におけるR12において挙げたものと同様である。
前記一般式(A−7)において、Rとしては、例えば、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが好ましく、水素原子、メチル基が、ラジカル反応性が高いことからより好ましい。
また、前記R10、R11としては、それぞれ独立に、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基等が好ましく、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が、ラジカル反応性が高いことからより好ましい。
ここで、導入しうる置換基としては、前記一般式(A−5)においてR、R及びR12に導入しうる置換基として挙げたものが同様に例示される。
前記Zとしては、酸素原子、硫黄原子、−NR13−、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R13は、水素原子又は水素原子、又は1価の有機基を表し、1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基が好ましく、R13としては、水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基が、ラジカル反応性が高いことから好ましい。
前記一般式(A−5)〜(A−7)で表される重合性基の中でも、一般式(A−5)で表されるものが、重合反応性が高く感度が高くなり、より好ましい。
重合性基のめっき下塗りポリマーにおける含有量は、特に制限はないが、0.1meq/g〜3.0meq/gが好ましく、0.3meq/g〜3.0meq/gがより好ましく、0.5meq/g〜2.5meq/gが特に好ましい。含有量をこの範囲とすることにより、さらに反応量が多くアルカリ液の処理液耐性に優れる。
ここで、含有量(meq/g)は、例えば、ヨウ素価滴定により測定することができる。
前記一般式(A−5)で表される重合性基をめっき下塗りポリマーの側鎖に導入する方法としては、特に制限はないが、例えば、側鎖にカルボキシル基を含有する高分子化合物と重合性基及びエポキシ基を有する化合物を付加反応させることで得ることができる。
側鎖にカルボキシル基を含有する高分子化合物は、例えば、カルボキシル基を含有するラジカル重合性化合物1種以上と、必要に応じて共重合成分として他のラジカル重合性化合物1種以上とを通常のラジカル重合法によって製造することができ、ラジカル重合法としては、例えば、懸濁重合法、溶液重合法等が挙げられる。
重合性基及びエポキシ基を有する化合物としては、これらを有すれば特に制限はないが、例えば、下記一般式(A−8)で表される化合物及び一般式(A−9)で表される化合物が好ましい。
一般式(A−8)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは2価の有機基を表す。
前記一般式(A−9)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは2価の有機基を表す。Wは4員〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
前記一般式(A−8)で表される化合物及び一般式(A−9)で表される化合物の中でも、一般式(A−8)で表される化合物が好ましく、前記一般式(A−8)においても、Lが炭素数1〜4のアルキレン基のものがより好ましい。
前記一般式(A−8)で表される化合物又は一般式(A−9)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の例示化合物(31)〜(40)が挙げられる。
カルボキシル基を含有するラジカル重合性化合物しては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、インクロトン酸、マレイン酸、p−カルボキシルスチレン等があり、特に好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
側鎖への導入反応としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の3級アミン、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ピリジン、トリフェニルフォスフィンなどを触媒として有機溶剤中、反応温度50℃〜150℃で数時間〜数十時間反応させることにより行うことができる。
側鎖に重合性基を有する構造単位としては、特に制限はないが、例えば、下記一般式(A−10)で表される構造、一般式(A−11)で表される構造、及びこれらの混合により表されるものが好ましい。
前記一般式(A−10)及び一般式(A−11)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは連結基を有してもよい2価の有機基を表す。
前記一般式(A−10)で表される構造及び一般式(A−11)で表される構造のめっき下塗りポリマーにおける含有量は、2mol%以上が好ましく、2mol%〜50mol%がより好ましく、5mol%〜45mol%が特に好ましい。含有量がこの範囲とすることで、さらにアルカリ液に対する処理液耐性が良好となり、且つ、保存安定性がより良好となる。
(相互作用性基)
めっき下塗りポリマーが有する相互作用性基は、金属前駆体と相互作用する官能基(例えば、配位性基、金属イオン吸着性基など)であり、金属前駆体と静電相互作用を形成可能な官能基、あるいは、金属前駆体と配位形成可能な含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などを使用することができる。
相互作用性基としては、非解離性官能基であっても、イオン性極性基であってもよく、これらが同時に含まれていてもよい。
相互作用性基としてより具体的には、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基;エーテル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフォート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用することができる。
(非解離性官能基からなる相互作用性基)
非解離性官能基からなる相互作用性基としては、上記相互作用性基の中でも、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、エーテル基、又はシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
一般的に、高極性になるほど吸水率が高くなる傾向であるが、シアノ基はめっき下塗りポリマー層中にて互いに極性を打ち消しあうように相互作用しあうため、膜が緻密になり、且つ、めっき下塗りポリマー層全体としての極性が下がるため、高極性にもかかわらず吸水性が低くなる。また、めっき下塗りポリマー層の良溶剤にて触媒を吸着させることで、シアノ基が溶媒和されてシアノ基間の相互作用がなくなり、めっき触媒と相互作用できるようになる。以上のことから、シアノ基を有するめっき下塗りポリマー層は低吸湿でありながら、めっき触媒とはよく相互作用をする、相反する性能を発揮する点で、好ましい。
また、本発明における相互作用性基としては、既述の置換基のなかでも、シアノ基、又は、アルキルシアノ基であることが更に好ましい。これは、芳香族シアノ基は芳香環に電子を吸引されており、めっき触媒等への吸着性として重要な不対電子の供与性が低めになるが、アルキルシアノ基はこの芳香環が結合していないため、めっき触媒等への吸着性の点で好ましい。
(イオン性極性基からなる相互作用性基)
また、イオン性極性基からなる相互作用性基としては、上記相互作用性基の中でも、めっき下塗りポリマーの基材との密着性の観点から、酸性基が好ましく、より具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられ、中でも適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点、及びめっき層との親和力向上などの諸性能を向上させるという点から、カルボン酸基が特に好ましい。
カルボン酸基は、酸性基を有するラジカル重合性化合物を共重合させることにより、めっき下塗りポリマーに付与することができる。
カルボン酸基を有するラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、インクロトン酸、マレイン酸、p−カルボキシルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、p−カルボキシルスチレンが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
カルボン酸基のめっき下塗りポリマーにおける含有量は、1.0meq/g〜12.0meq/gであり、2.0meq/g〜9.0meq/gが好ましく、2.5meq/g〜8.0meq/gがより好ましい。含有量をこの範囲とすることにより、めっき層との親和力が十分となり、アルカリ水等の後処理によるめっき面上の悪化ダメージをより低減させることができる。
以下、本発明の使用されるめっき下塗りポリマーの好適な構成について詳細に説明する。
(めっき下塗りポリマーのユニット構成)
本発明におけるめっき下塗りポリマーとしては、既述のように重合性基と、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する相互作用性基とを有するが、相互作用性基は、非解離性官能基であっても、イオン性極性基であってもよく、これらの少なくともいずれかを有するポリマーである。
上記めっき下塗りポリマーの好適な態様として、下記式(A)で表される重合性基含有ユニットと下記式(B)で表される非解離性官能基からなる相互作用性基含有ユニットと下記式(C)で表されるイオン性極性基からなる相互作用性基含有ユニットとを含む共重合体、下記式(A)で表されるユニットと下記式(B)で表されるユニットとを含む共重合体、下記式(A)で表されるユニットと下記式(C)で表されるユニットとを含む共重合体、が挙げられる。
上記式(A)〜(C)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成するイオン性極性基を表す。
なお、本発明において有機基とは、炭素原子を含む置換基を指す。
式(A)で表されるユニットにおいて、Y及びZは、それぞれ独立に、エステル基、アミド基、フェニレン基(−C−)が好ましい。Lは炭素数1〜10の、置換もしくは無置換の2価の有機基であることが好ましい。
式(B)で表されるユニットにおいて、Wはシアノ基又はエーテル基であることが好ましい。また、XおよびLはいずれも単結合であることが好ましい。
また、式(C)で表されるユニットにおいて、Vはカルボン酸基であることが好ましく、また、Vがカルボン酸基であり、且つ、LがVと連結する部分において4員〜8員の環構造を含む態様が好ましく、更に、Vがカルボン酸基であり、且つ、Lの鎖長が6原子〜18原子である態様も好ましい。
更に、式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びLが単結合であることも好ましい態様の1つである。なかでも、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びLのいずれも単結合である態様が最も好ましい。
本発明におけるめっき下塗りポリマーは、共重合ユニット全体に対し、重合性基含有ユニット(式(A)で表されるユニット)、非解離性官能基からなる相互作用性基含有ユニット(式(B)で表されるユニット)、イオン性極性基からなる相互作用性基含有ユニット(式(C)で表されるユニット)の割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、式(A)で表されるユニットと式(B)で表されるユニットと式(C)で表されるユニットとを含む共重合体の場合には、式(A)で表されるユニット:式(B)で表されるユニット:式(C)で表されるユニット=5mol%〜50mol%:5mol%〜40mol%:20mol%〜70mol%であることが好ましく、10mol%〜40mol%:10mol%〜35mol%:20mol%〜60mol%であることがより好ましい。
また、式(A)で表されるユニットと式(B)で表されるユニットとを含む共重合体の場合には、式(A)で表されるユニット:式(B)で表されるユニット=5mol%〜50mol%:50mol%〜95mol%が好ましく、10mol%〜40mol%:60mol%〜90mol%であるこがより好ましい。
さらに、式(A)で表されるユニットと式(C)で表されるユニットとを含む共重合体の場合は、式(A)で表されるユニット:式(C)で表されるユニット=5mol%〜50mol%:50mol%〜95mol%が好ましく、10mol%〜40mol%:60mol%〜90mol%であるこがより好ましい。
この範囲にて、UV露光に対するめっき下塗りポリマーの重合性の向上、金属前駆体還元後の還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマーの抵抗値の低下、また耐湿密着力の向上、を行うことができる。
めっき下塗りポリマーは、画像強度等の諸性能を向上する目的で、前述のラジカル重合性化合物の他に、更に他のラジカル重合性化合物を共重合させることが好ましい。
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、ハロゲンスチレン等のスチレン類、アルキル(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、N−置換マレイミド類、ビニルシアノ類等などから選ばれるラジカル重合性化合物などが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数は1〜20のものが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−t−オクチル、(メタ)アクリル酸−i−オクチル、(メタ)アクリル酸−i−デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、クロルエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、シアノプロピル(メタ)アクリレート、シアノベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜25のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、炭素数2〜15のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、アクリル酸エステル類がより好ましい。
アリール(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜25のアルキル基を有するアリール(メタ)アクリレート類が挙げられる。中でも、フェニルアクリレートが好ましい。
スチレン類としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロへキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、シアノスチレン等、アルコキシスチレン類としては、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等、ハロゲンスチレンとしては、例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレン等の、炭素数1〜25のスチレン類が挙げられる。中でも、スチレン、メトキシスチレンが好ましい。
アルキル(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、メチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ドデシル(メタ)アクリルアミドなどの、炭素数1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドが挙げられる。中でも、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドが好ましい。
ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。中でも、フェニルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルが好ましい。
N−置換マレイミド類としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミド等が挙げられる。中でも、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドがより好ましい。
ビニルシアノ類としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアノプロペン、ジシアノエチレン、等が挙げられる。
これらの他のラジカル重合性化合物は、他のラジカル重合性化合物として、1種単独で含んで使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明において、めっき下塗りポリマーを合成する際に用いられる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明において、めっき下塗りポリマー中には、未反応の単量体を含んでいてもよい。この場合、単量体のめっき下塗りポリマーにおける含有量は、15質量%以下が好ましい。
本発明において、めっき下塗りポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、めっき下塗りポリマーとは構造が異なる他の高分子化合物を混合して用いてもよい。この場合、他の高分子化合物のめっき下塗りポリマーにおける含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
本発明におけるめっき下塗りポリマーの重量平均分子量は、1000以上70万以下が好ましく、より好ましくは2000以上20万以下であり、さらに好ましくは5000以上10万以下である。重量平均分子量をこの範囲とすることにより、さらに高い密着強度が得られ、且つ、アルカリ水等の処理液耐性が得られ、経時保存性もより良好である。
なお、ここで記載の重量平均分子量とは、GPC(使用溶媒:N−メチルピロリドン)を用いてポリスチレン換算により測定される値であり、例えば、次の条件で測定することができる。
・カラム:ガードカラム TOSOH TSKguardcolum Super AW−H
分離カラム TOSOH TSKgel Super AWM−H(サイズ6.0mm×15cmを3本連結)
・溶離液:N−メチルピロリドン(LiBr10mM含有)
・流速:0.35mL/min
・検出方法:RI
・温度:カラム40℃、インレット40℃、RI40℃
・サンプル濃度:0.1wt%
・注入量:60μL
また、本発明におけるめっき下塗りポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、1500量体以下が好ましく、1000量体以下がより好ましい。
めっき下塗りポリマーの具体例としては、ラジカル重合性基と非解離性官能基からなる相互作用性基を有するポリマーとして、特開2009−007540号公報の段落[0106]〜[0112]に記載のポリマーが使用できる。また、ラジカル重合性基とイオン性極性基からなる相互作用性基とを有するポリマーとしては、特開2006−135271号公報の段落[0065]〜[0070]に記載のポリマーなどが使用できる。ラジカル重合性基と、非解離性官能基からなる相互作用性基と、イオン性極性基からなる相互作用性基とを有するポリマーとしては、特開2010−248464号公報の段落[0010]〜[0128]、特開2010−84196号公報、米国特許出願公開2010−080964号明細書の段落[0030]〜[0108]に記載のポリマーなどが使用できる。
以下に、本発明において特に好適に用いられるめっき下塗りポリマーを挙げるが、これらに限定されない。なお、添え字の数字は組成比(モル比)を表す。下記例示化合物の重量平均分子量は10,000〜70,000である。
めっき下塗りポリマー層を形成するためには、支持体、或いは、下塗り層を有する支持体上にめっき下塗りポリマー層形成用組成物を接触させ、エネルギーを付与すればよい。支持体上へのめっき下塗りポリマー層形成用組成物の接触は、支持体上にめっき下塗りポリマー層形成用組成物を含有する塗布液を塗布することにより行うことが好ましい。
(めっき下塗りポリマー層形成用組成物)
めっき下塗りポリマー層形成用組成物はめっき下塗りポリマーを含有する。
めっき下塗りポリマー層形成用組成物中のめっき下塗りポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、2質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、ポリマー層の層厚の制御がしやすい。
また、めっき下塗りポリマーの含有量を、この範囲とすることにより、塗布膜の面状がより良好となり、塗布液が高粘化することもなく、所望の塗布膜厚を得ることがさらに容易である。
なお、後述する金属前駆体は、めっき下塗りポリマー層形成後に付与してもよく、また、めっき下塗りポリマー層用組成物に当初から含有させてもよい。めっき下塗りポリマー層形成用組成物に金属前駆体を含有させる場合の金属前駆体の含有量としては、前記組成物の全量に対して、0.5質量%〜100質量%が好ましく、1質量%〜50質量%であることがより好ましい。この範囲であると、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層を電極として用いたときに導電性が良好でエネルギーの損失が小さい。
〔溶剤〕
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物は、前述のめっき下塗りポリマーの他に、このめっき下塗りポリマーを溶解しうる溶剤を含有することが好ましい。
めっき下塗りポリマー層形成用組成物に使用できる溶剤は特に限定されず、通常の塗布等で使用される溶剤などが挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、1−メトキシ−2−プロパノールの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
めっき下塗りポリマー層形成用組成物中の溶剤の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、50質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、めっき下塗りポリマー層の膜厚の制御などがしやすい。
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物において、イオン性極性基を塩基で中和し、親水性を上げることで、溶剤として水を使用することもできる。なお、塗布時の塗布性を考えると溶剤として水と水溶性有機溶剤とを併用することが好ましく、その際の有機溶剤の含有量は、全溶剤に対して、20質量%〜90質量%であることが好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、上記の含有量の範囲において水と溶解しうるものを意味する。このような性質を有している有機溶剤であれば、特に限定されず、組成物の溶剤として用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、ハロゲン系溶媒などが好ましく用いられる。
以下、本発明において用いるのに好適な有機溶剤の具体例を列挙する。
ケトン系溶媒としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2−(2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
グリコール系溶媒としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
アミン系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
チオール系溶媒としては、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
その他にも、水溶性有機溶媒として、下記表1に記載の溶媒も使用することができる。
本発明における水溶性有機溶剤の沸点は蒸散のし易さの観点から、70℃〜150℃が好ましく、65℃〜120℃がより好ましい。このような水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール(沸点:78℃)、イソプロピルアルコール(沸点:82℃)、n−プロピルアルコール(沸点:97℃)、THF(テトラヒドロフラン 沸点:66℃)、1−メトシキ−2−プロパノール(沸点:119℃)、MEK(メチルエチルケトン 沸点:80℃)などが好ましく挙げられる。
また、上述のように、水と水溶性有機溶剤の混合液を用いる場合、作業のし易さの観点から、その引火点としては30℃以上のものが好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
なお、本発明における引火点は、JIS−K2265に準拠するタグ密閉式によって得られた測定値を意味する。
−水−
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物に使用される水は、不純物を含まないことが好ましく、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などが好ましく、脱イオン水や蒸留水がより好ましい。
−めっき下塗りポリマーの溶解性を高めるための添加剤−
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物に水と水溶性有機溶剤との混合液を使用する場合は、めっき下塗りポリマーの溶解性を高めるために添加剤を使用することができる。
例えば、溶質であるめっき下塗りポリマーがカルボン酸基などの酸性基を有する場合は、この酸性基をカルボン酸ナトリウムなどの塩とすることで、このめっき下塗りポリマーは、水と水溶性有機溶剤との混合液に溶解し易くなる。カルボン酸基をカルボン酸ナトリウムに変換するために使用する添加剤としては、塩基性の化合物が使用することができ、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、アンモニア、1、8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)などが使用できる。特に好ましくは水溶性化の度合い、最適な塩基性度の観点から、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
〔活性種を発生しうる材料〕
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物は、エネルギー付与に対する感度を高めるために、活性種を発生しうる材料を含有することが好ましい。活性種を発生しうる材料としては、各種のラジカル開始剤が好適である。
ラジカル開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが用いられ、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アゾイソブチロニトリルなどのような過酸化物開始剤、およびアゾ系開始剤などを使用することができる。
また、光重合開始剤としては低分子化合物でもよく、高分子化合物でもよく、一般に公知のものが使用される。
低分子の光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドの如きホスフィンオキサイド類;ベンゾフェノン、(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンの如きベンゾフェノン類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;ミヒラーのケトン;ベンゾイルベンゾエート;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾイン類;α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジンおよび−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きチオキサントン等の公知の光重合開始剤を使用できる。また通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
高分子の光重合開始剤としては、特開平9−77891号、特開平10−45927号各公報に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物、特開2004−161995号公報に記載の重合開始基が側鎖にペンダントしてなるポリマーもめっき下塗りポリマーに混合して使用することができる。このポリマーは、具体的には、側鎖に重合開始能を有する官能基(重合開始基)及び架橋性基を有するポリマーであり、このポリマーにより、ポリマー鎖に結合した重合開始基を有し、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化された形態を形成することができる。具体的な例としては、特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0158〕に記載のものが挙げられる。また既述の低分子の光重合開始剤をその骨格中に有する高分子化合物も用いることができる。
なお、これらのラジカル開始剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
また、エネルギー付与によりめっき下塗りポリマーが支持体や下塗り層を有する支持体と相互作用する活性点を生成しうる場合、即ち、前記したポリマー骨格中に重合開始部位を有するポリマーを用いるような場合には、これらの活性種を添加しなくてもよい。
また、これらの活性種を発生しうる材料を、支持体を形成する樹脂フィルムや支持体上の下塗り層に含有させてもよく、そのような場合には、めっき下塗りポリマー同士のみならず、めっき下塗りポリマーと支持体との相互作用がより良好に形成されることになり、銀を含む反射層と支持体の結合がより強固になる。なお、既述のように、支持体を形成する樹脂が、ポリマー骨格中に重合開始部位を有する樹脂である場合には、活性種を発生しうる材料の添加は必ずしも必要ではない。
めっき下塗りポリマー層形成用組成物に含有させる重合開始剤の量は、めっき下塗りポリマー層形成用組成物の構成に応じて選択されるが、一般的には、めっき下塗りポリマー層形成用組成物中に、0.05質量%〜30質量%程度であることが好ましく、0.1質量%〜10.0質量%程度であることがより好ましい。
また、支持体を構成する樹脂フィルム基材中に重合開始剤を含有させる場合の含有量は、固形分で0.05質量%〜30質量%程度であることが好ましく、0.1質量%〜10.0質量%程度であることがより好ましい。
〔増感剤〕
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物には、エネルギー付与が露光で行われる場合、その露光に対する感度をより高める目的で、ラジカル発生剤に加え、増感剤を含有させることもできる。
増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、ラジカル発生剤と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から露光波長に合わせて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられ、他に、特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。またその他にも、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン誘導体等が含まれる。
ラジカル発生剤と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
その他、増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などを用いることもできる。
これらの増感剤は、本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物中、めっき下塗りポリマーの質量に対して、1質量%〜30質量%程度の量で含有させることが好ましい。
〔界面活性剤〕
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
本発明に用いられる界面活性剤は、前述の溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
〔可塑剤〕
また、本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物には、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
〔重合禁止剤〕
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物には、必要に応じて、重合禁止剤を添加することもできる。使用できる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を使用することができる。
〔硬化剤、硬化促進剤〕
また、後述のように、本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物を用いて密着補助層上にめっき下塗りポリマー層を形成する場合、密着補助層の硬化を進めるために、めっき下塗りポリマー層形成用組成物に硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することができる。例えば、密着補助層にエポキシ化合物が含まれる場合の硬化剤及び/又は硬化促進剤として、重付加型では、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、活性水素を2個以上持つ化合物等、触媒型としては、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体などが挙げられる。
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始するものとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BFモノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアーリルヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレニウム塩、ケチミン化合物などが挙げられる。
これらの硬化剤及び/又は硬化促進剤は、めっき下塗りポリマー層形成用組成物の塗布性、基板やめっき膜との密着性などの観点から、溶剤を除去した残りの不揮発成分の0〜50質量%程度まで添加することが好ましい。
なお、硬化剤及び/又は硬化促進剤は密着補助層に添加してもよく、その場合は、密着補助層に添加した量とめっき下塗りポリマー層形成用組成物中に添加した総和量で上記範囲を満たすことが好ましい。
〔その他の添加剤〕
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物には、更に、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、水溶性物質(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のミネラル成分)、溶解性低分子物質(例えば、εカプロラクタム、ポリエチレングリコール等のポリアルキルグリコール)などを添加してもよい。また、支持体の項で例示したような酸化防止剤を添加してもよい。
本発明に係るめっき下塗りポリマー層形成用組成物として、めっき下塗りポリマーと各種の添加剤とを適宜混合した組成物を用いることで、形成されためっき下塗りポリマー層の物性、例えば、熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、ポアソン比、破断応力、降伏応力、熱分解温度などを最適に設定することができる。特に、破断応力、降伏応力、熱分解温度については、より高い方が好ましい。
〔めっき下塗りポリマー層の形成方法〕
以下、フィルムミラーの材料とそれを用いためっき下塗りポリマー層の作製方法を簡易に説明するが、フィルムミラーの製造方法については後で詳述する。
(めっき下塗りポリマー層形成用組成物の支持体への接触)
得られためっき下塗りポリマー層形成用組成物を、支持体を形成するフィルム基材に接触させる方法は特に限定されず、めっき下塗りポリマー層形成用組成物中にフィルム基材を浸漬する方法や、めっき下塗りポリマー層形成用組成物を支持体上に塗布する方法などが挙げられる。得られるめっき下塗りポリマー層の厚みを制御しやすい点から、組成物を支持体上に塗布する方法が好ましい。
塗布の方法は特に制限されず、具体的な方法としては、ダブルロールコータ、スリットコータ、エアナイフコータ、ワイヤーバーコータ、スライドホッパー、スプレーコーチィング、ブレードコータ、ドクターコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、エクストロージョンコータ、カーテンコータ、ディップコーター、ダイコータ、グラビアロールによる塗工法、押し出し塗布法、ロール塗布法等の公知の方法を用いることができる。
また蒸着によりポリマー層を形成してもよく、更にインクジェットによりポリマー層を形成してもよい。インクジェットの場合、ポリマー層形成領域を制御することができ、露光におけるマスキングが不要になる。
めっき下塗りポリマー層形成用組成物を支持体と接触させる場合、その塗布量は、後述する金属前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.05g/m〜10g/mが好ましく、特に0.3g/m〜5g/mが好ましい。
なお、本工程においてめっき下塗りポリマー層を形成するに際しては、乾燥条件として、ポリマー層を20℃〜60℃で0〜2時間乾燥した後に60℃以上で0時間を超え2時間以下乾燥することが好ましく、20℃〜60℃で1秒間〜20分間乾燥した後に60℃以上で0時間を超え2時間以下乾燥することがより好ましい。
(エネルギーの付与)
めっき下塗りポリマー層形成用組成物を支持体へ接触させた後、エネルギーを付与することで、エネルギー付与領域においてポリマーが有する重合性基同士、或いは、ポリマーが有する重合性基と支持体との間に相互作用が形成され、支持体上に固定化されためっき下塗りポリマー層が形成される。
本工程におけるエネルギー付与方法としては、例えば、露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射が可能である。
露光で使用する光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、などがある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
またアーク放電やグロー放電などによるプラズマ照射もエネルギー付与の手法として用いることができる。
露光パワーは、重合を容易に進行させるため、また、ポリマーの分解を抑制するため、或いは、ポリマーが良好な相互作用を形成するため、といった観点から10mJ/cm〜8000mJ/cmの範囲であることが好ましく、100mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲であることがより好ましい。
また、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスによる置換を行い、酸素濃度を600ppm以下、好ましくは400ppm以下に抑制した雰囲気中で照射してもよい。
本工程において、めっき形成領域が後述するフィルムミラーの反射層形成領域となるため、パターン状に露光を行うことで、露光領域のみに反射層が形成される。パターン状の露光としては、走査露光或いは、未露光にフォトマスクによるマスキングを施す手段などが挙げられる。
(未反応めっき下塗りポリマーの除去)
さらに、エネルギー付与後に、適宜、未反応のポリマーを除去する工程を行ってもよい。除去方法としては、溶媒を使用する方法が挙げられ、例えば、ポリマーを溶解する溶剤や、アルカリ可溶性のポリマーの場合はアルカリ系現像液(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液)などをめっき下塗りポリマー層が形成された支持体に接触させることで未反応のポリマーを除去することができる。
(めっき下塗りポリマー層の物性)
このようにして形成されためっき下塗りポリマー層の厚みは特に制限されないが、後に形成される反射層となる金属膜との密着性の点から、0.05μm〜10μmが好ましく、0.3μm〜5μmがより好ましい。
また、乾燥重量で0.05g/m〜10g/mが好ましく、特に0.3g/m〜5g/mが好ましい。
めっき下塗りポリマー層の表面粗さRaとしては、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。この範囲内であると、めっき後のAg面が平滑になり、反射性が良好となる。
表面粗さの測定方法としては、原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメンツ製、SPA−400)にて測定した。
〔還元された金属粒子である銀粒子及び銀より卑な金属の粒子〕
本発明のめっき下塗りポリマー層は、還元された金属粒子である銀粒子及び銀より卑な金属の粒子を含む。めっき下塗りポリマー層に含まれる還元された金属粒子は、支持体上に形成された、前述のめっき下塗りポリマー層に、前記金属の前駆体を付与し、該金属の前駆体を還元して、金属の前駆体を還元された金属粒子とすることによって得られる。金属の前駆体をめっき下塗りポリマー層に接触させることで、該金属の前駆体がめっき下塗りポリマーの相互作用性基に相互作用により付着する。
以下にめっき下塗りポリマー層に含まれる金属の前駆体について説明する。
(b:金属の前駆体)
本発明においては、めっき下塗りポリマー層は、金属の前駆体として、少なくとも銀前駆体と、銀よりも卑な金属の前駆体とを含む。金属の前駆体を還元反応により金属粒子に変化させることで、該金属粒子はその後に実施されるめっき工程において電極として機能する。ここで、銀粒子と銀よりも卑な金属の粒子とがそれぞれの前駆体を還元して得られることが重要であり、還元して得られる微細な2種の金属粒子がめっき下塗りポリマー層中に互いに近接して混在することで本発明の効果が得られるものと考えている。
(b−1:銀前駆体)
本発明においては、金属の前駆体として、銀前駆体を用いる。
銀前駆体としては、銀イオンが用いられる。銀前駆体である銀イオンは、めっき下塗りポリマーを含む組成物(めっき下塗りポリマー層形成用組成物)に含まれており、支持体上に層を形成した後、還元反応によって0価の銀粒子となる。
銀前駆体としての銀金属イオンは、銀塩としてめっき下塗りポリマー層形成用組成物に含まれることが好ましい。
使用される銀塩としては、適切な溶剤に溶解して銀イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、AgNO、AgCl、AgSO、AgPOなどが挙げられる。銀イオンは、以下に具体的に示すごとき銀塩が解離したものを好適に用いることができる。銀イオンは多座配位可能である点で、触媒能に優れる。
本発明で用いられる銀前駆体としての銀イオンは、以下に示すような銀化合物が解離したものを好適に用いることができる。
銀化合物の具体例としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。この中でも、水溶性の観点から硝酸銀が好ましい。
(b−2:銀よりも卑な金属の前駆体)
本発明においては、前記めっき下塗りポリマー層中に少なくとも1種の銀よりも卑な金属の粒子を含有する。このため、少なくとも1種の銀よりも卑な金属の前駆体を用いる。
銀よりも卑な金属としては、具体的には、Co、Zn、Al、Fe、Ni、Sn、Pb、Cuなどの金属が挙げられ、これらより選択された1種以上の金属イオンが用いられる。 これら金属の前駆体である金属イオンは、金属塩としてめっき下塗りポリマー層形成用組成物に含まれることが好ましい。
使用される金属塩としては、適切な溶剤に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。例えば、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類、数、および触媒能の点で、Cuイオン、Pdイオンが好ましい。
銅(Cu)イオンを用いる場合、以下に示すような銅化合物が解離したものを好適に用いることができる。
銅化合物の具体例としては、硝酸銅、酢酸銅、硫酸銅、シアン化銅、チオシアン酸銅、塩化銅、臭化銅、クロム酸銅、クロラニル酸銅、サリチル酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミド酸銅、p−トルエンスルホン酸銅が挙げられる。この中でも、水溶性の観点から硫酸銅が好ましい。
パラジウム(Pd)イオンを用いる場合、以下に示すようなパラジウム化合物が解離したものを好適に用いることができる。
パラジウム化合物の具体例としては、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、シアン化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウムが挙げられる。このなかでも、水溶性の観点から硝酸パラジウムが好ましい。
金属の前駆体は、溶液に溶解した金属イオンの状態で含まれることが好ましいが、還元されて銀や銀よりも卑な金属になりうる金属化合物であれば、粒子状の金属前駆体であってもよい。粒子状の金属前駆体を用いる場合の粒子径としては、1nm以上200nm以下が好ましく、1nm以上100nm以下がより好ましく、1nm以上60nm以下であることが更に好ましい。この粒子径とすることで、還元された金属粒子の粒子径を所望の大きさに制御することができる。
なお、ここで粒子径とは、平均1次粒子径(体積換算)のことであり、測定の方法については、以下の金属粒子の項で述べる方法と同じ方法が適用される。
(b−3:金属前駆体液の調製)
上記銀前駆体及び銀よりも卑な金属の前駆体は、分散液または溶液(以下、金属前駆体液と総称することがある)として、めっき下塗りポリマー層に付与されることが好ましい。
金属前駆体液(金属前駆体の溶液又は分散液)の調製に用いる溶媒又は分散媒としては、水や有機溶媒が用いられる。水や有機溶剤を含有することで、金属の前駆体のポリマー層に対する浸透性がより向上し、相互作用性基に効率よく金属の前駆体を吸着させることができる。
金属前駆体液に使用される水としては、不純物を含まないことが好ましい。そのような観点からは、RO水、脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いるのが特に好ましい。金属前駆体液に使用される有機溶媒としては、ポリマー層に浸透しうる溶媒であれば特に制限は無い。例えば、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
特に、金属前駆体との相溶性、およびポリマー層への浸透性の観点では、水もしくは水溶性の有機溶剤が好ましく、アセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
更に、分散液や溶液には、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、膨潤剤や、界面活性剤などが挙げられる。
めっき下塗りポリマー層に含まれる銀粒子と銀よりも卑な金属の粒子との含有比率としては、還元された金属粒子全量に対する銀よりも卑な金属の粒子の含有率は10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、そのような観点から、金属前駆体液に含まれる銀よりも卑な金属の前駆体の量は、金属の前駆体の総量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは、15質量%以上30質量%以下である。
同一の金属前駆体液に、銀前駆体と銀よりも卑な金属の前駆体を含有する場合には、銀よりも卑な金属の前駆体の含有量を上記好ましい範囲に調整すればよく、別々に含有させる場合、それぞれの金属前駆体液に含まれる含有量を調整して、上記好ましい含有比率の範囲となるようにすればよい。
(b−4:金属前駆体液の下塗りポリマー層への付与)
調製された金属前駆体液をめっき下塗りポリマー層に付与する方法としては、支持体上に形成されためっき下塗りポリマー層に、上記のようにして調製された金属前駆体液(分散液または溶液)を前記層に浸漬、塗布等の方法により接触させればよい。
調製された金属前駆体液をめっき下塗りポリマー層に付与する方法としては、めっき下塗りポリマー層を備える支持体に、金属前駆体液を前浸漬、塗布等の方法により接触させる方法が挙げられる。接触により金属の前駆体がめっき下塗りポリマーにおける相互作用性基に付着し、金属の前駆体を含むめっき下塗りポリマー層が形成される。
このとき、銀前駆体を含む金属前駆体液と、銀よりも卑な金属の前駆体を含む金属前駆体液とを、別々に(順次)接触させてもよく、銀前駆体と銀よりも卑な金属の前駆体とを含む金属前駆体液を接触させてもよい。
なかでも、それぞれの金属前駆体の付与量を制御しやすいという観点から、銀前駆体を含む金属前駆体液と、銀よりも卑な金属の前駆体を含む金属前駆体液とを、別々に接触させる逐次接触方法が好ましい。逐次接触の場合、銀前駆体を含む金属前駆体液と、銀よりも卑な金属前駆体を含む金属前駆体液の接触順は任意である。
(b−5:金属前駆体液の還元)
前記銀前駆体及び銀よりも卑な金属の前駆体を還元させることで、めっき下塗りポリマー層中に、還元された銀粒子及び還元された銀よりも卑な金属の粒子が生成する。
還元は、還元剤を含有する溶液を接触させることにより行われる。
ポリマー層に付与した金属前駆体である金属イオンを金属活性化液(還元液)により還元する。金属活性化液は、金属前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤と該還元剤を活性化するためのpH調整剤からなる。
金属活性化液全体に対する還元剤の濃度が0.05質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
特に、ホルムアルデヒドを含有するアルカリ水溶液で還元することが好ましい。
金属活性化液全体に対するpH調整剤の濃度としては、0.05質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることがより好ましい。
pH調整剤としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを使用することが可能である。
また、還元時の温度としては10℃〜100℃が好ましく、20℃〜70℃が更に好ましい。
これら濃度や温度範囲は、還元の際の、金属前駆体の粒子径、ポリマー層の表面粗さ、導電性(表面抵抗値)、還元液の劣化の観点からこの範囲であることが好ましい。
めっき下塗りポリマー層に含まれる還元された金属粒子の粒子径としては、銀粒子と銀よりも卑な金属の粒子とは同一でも異なっていてもよいが、それぞれの粒子径は、1nm以上200nm以下が好ましく、1nm以上100nm以下がより好ましく、1nm以上60nm以下であることが更に好ましい。還元された金属粒子の粒子径がこの範囲内にあることで、めっきにより形成された銀含有反射層の反射率がより良好となる。
なお、ここで粒子径とは、SEM(日立ハイテクマニファクチャ&サービス社製 S−5200)画像から読み取ったものである。
また、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層の表面抵抗値としては、0.001Ω/□以上100Ω/□以下であることが好ましく、0.03Ω/□以上50Ω/□以下であることがより好ましい。この範囲内であると、均一および平滑にめっき面が形成され反射率がより良好となる。
本発明においては、表面抵抗は、表面抵抗計(三菱化学製、ロレスターGP MCP−T600)にて測定した値を用いている。
なお、めっき下塗りポリマー層中における還元された銀粒子と銀よりも卑な金属の粒子の含有量は以下の方法にて確認することができる。
還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層付きの基板を濃硝酸溶液に浸漬して、めっき下塗りポリマー層に含まれる銀粒子および銅粒子を溶解後、溶液中の銀及び銅の含有率を、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いた元素分析により測定することで確認される。
<(C)銀を含有する反射層>
本発明における銀を含有する反射層(以下、適宜、銀含有反射層と称する)は、銀を含有する金属膜で構成される反射層であり、最表面、即ち、後述する(D)樹脂保護層を設ける側の表面粗さRaが20nm以下である。反射層は単層の金属層であっても、異なる金属組成物を有する複数の金属層の積層構造を有していてもよいが、銀は反射性に優れるため、最表面層は銀を含有する金属層であることが好ましい。
本発明における銀含有反射層は、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層の上に、電気めっき法等により、銀含有金属膜を形成することで得られる。
電気めっき以外の方法としては、蒸着やスパッタリングなどの方法が挙げられる。
本発明における銀含有反射層を形成する金属としては、光の反射性能から銀、もしくは銀を含む合金が挙げられる。銀もしくは銀を含む合金はフィルムミラーの可視光領域での反射率を高め、入射角による反射率の依存性を低減できる。可視光領域とは400nm〜700nmの波長領域を意味する。ここで、入射角とは膜面に対して垂直な線に対する角度を意味する。
銀合金としては、銀含有反射層の耐久性が向上する点から銀と、金、パラジウム、スズ、ガリウム、インジウム、銅、チタンおよびビスマスからなる群の金属から選ばれる1種以上の金属とからなる合金が好ましい。特に、高温耐湿性、反射率の観点から銀と金との合金が好ましい。
銀含有反射層が銀合金からなる膜である場合、銀の含有量としては、銀含有反射層における銀と他の金属との合計(100原子%)中、90〜99.8原子%が好ましい。また、他の金属の含有量は、耐久性の点から0.2〜10原子%が好ましい。
本発明における銀含有反射層の表面粗さ(Ra)としては、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。この範囲内とすることで、得られたフィルムミラーの反射率が向上し、太陽熱、太陽光を効率よく集熱、集光し、太陽熱発電装置に用いたときのエネルギー効率が高くなる。
以下、銀含有反射層を電気めっきによる方法で形成する場合について、説明する。
電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
本発明においては、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層が、電極としての機能を有する場合、めっき下塗りポリマー層に対して電気めっきを行うことにより、銀含有反射層を形成できる。
電気めっき法などにより得られる銀含有反射層の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。適切な厚みの下地金属層を入れることで、表面平滑化による反射率向上やピンホール低減が可能となる。
銀含有反射層の膜厚は、ピンホールなく反射膜を形成する観点、および銀含有反射層の表面に光を散乱させるような凹凸を作らないという観点から、0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.08μm以上0.5μm以下がより好ましい。
また、金属前駆体を還元させた還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層を利用して真空蒸着等の乾式めっきを行って、銀含有反射層を形成してもよい。この場合、表面が金属で覆われているため通常の蒸着等よりも密着性がよく、かつ、熱に対しても強い銀含有反射層を形成することができる。
更に、電気めっきの後、銀含有反射層の反射性能をより向上させたり、銀含有反射層の耐久性を向上させたりするために、銀含有反射層を強酸や強アルカリ等で処理してもよい。また、金属表面に無機皮膜や金属酸化皮膜を形成してもよい。また、変色防止剤で処理をして変色防止剤層を設けてもよい。
変色防止剤層は、銀含有反射層の変色防止として機能する。変色防止剤としては、チオエーテル系、チオール系、Ni系有機化合物系、ベンゾトリアゾール系、イミダゾール系、オキサゾール系、テトラザインデン系、ピリミジン系、チアジアゾール系が挙げられる。
変色防止剤層は、大別して銀との吸着基を有するものと、酸化防止剤が好ましく用いられる。以下、これらについて具体例を挙げる。
(銀との吸着基を有する変色防止剤)
銀との吸着基を有する変色防止剤としては、アミン類およびその誘導体、ピロール環を有する物、トリアゾール環を有する物、ピラゾール環を有する物、チアゾール環を有する物、イミダゾール環を有する物、インダゾール環を有する物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
アミン類及びその誘導体としては、エチルアミン、ラウリルアミン、トリ−n−ブチルアミン、O−トルイジン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アセトアミド、アクリルアミド、ベンズアミドp−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
ピロール環を有する物としては、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−2,5ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
トリアゾール環を有する物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾ
トリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
ピラゾール環を有する物としては、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾール、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
チアゾール環を有する物としては、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
イミダゾール環を有する物としては、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
インダゾール環を有する物としては、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾール、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
銅キレート化合物類としては、アセチルアセトン銅、エチレンジアミン銅、フタロシアニン銅、エチレンジアミンテトラアセテート銅、ヒドロキシキノリン銅等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
チオ尿素類としては、チオ尿素、グアニルチオ尿素等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
メルカプト基を有する物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、メルカプト酢酸、チオフェノール、1,2−エタンジオール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、グリコールジメルカプトアセテート、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
<(D)樹脂保護層>
本発明のフィルムミラーは、太陽光や紫外線による耐光性劣化防止の目的で、入射光側に(D)樹脂保護層を設ける。
樹脂保護層としては、公知の紫外線吸収剤を含有する樹脂からなるフィルムを用いてもよく、また、紫外線吸収剤を含有するUV硬化性樹脂や紫外線吸収剤を含有する熱硬化性樹脂を用いて形成してもよい。
紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルムに用いる樹脂フィルムとしては、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、およびセルロースエステル系フィルム、アクリルフィルムが好ましい。
特に、光透過性の観点からアクリルフィルムがより好ましく、ポリメチルメタクリレートを主成分としたフィルムを用いることが特に好ましい。
樹脂フィルムの成型方法は任意であり、例えば、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶融押出製膜で製造されたフィルムであってもよい。
また、樹脂保護層に用いるフィルムには、紫外線吸収剤を含有することが好ましく、紫外線吸収剤としては、支持体の含みうる紫外線吸収剤として挙げたものを同様に用いることができる。
樹脂保護層における紫外線吸収剤の含有量は、樹脂保護層全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下である。紫外線吸収剤の含有量が上記好ましい範囲において、形成された樹脂保護層と隣接する層との密着性が良好となり、且つ、紫外線吸収剤による耐候性改良効果が十分に得られる。
(D)樹脂保護層は、(C)銀含有反射層の上に直接設けてもよいが、予め形成された樹脂フィルムを、接着層を介して接着することにより設けることが好ましい。
接着層には、銀含有反射層と樹脂保護層とを密着する密着性、耐候性、及び高い反射性能を引き出すための平滑性、および反射光領域に光の吸収がないことが求められる。
接着層には樹脂が使用されるが、用いる樹脂としては、上記の密着性、耐候性、耐熱性、及び平滑性等の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合して熱硬化型とすることがより好ましい。
接着層には前述の紫外線吸収剤、柔軟性を維持するための可塑剤やフィルム自体の劣化を防ぐ酸化防止剤、ラジカル捕捉剤等を含んでもよい。
接着層を用いる場合の接着層の厚さは、0.01μm以上15μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上5μm以下である。厚さが、上記好ましい範囲において、密着性がより良好となり、フィルム基材表面の微細な凹凸を覆って平滑にすることができ、平滑性をより良好になしうるとともに、接着層の厚さが厚くなることに伴って生じる、塗りムラの発生、接着層の硬化不良、あるいは反射率の低下が抑制される。
接着層の形成方法としては、接着剤組成物を、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法により銀含有反射層表面に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
本発明のフィルムミラーは、上記した構成であるが、本発明のフィルムミラーは、波長600nmの光の反射率が、90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましい。
反射率は、分光光度計(島津製作所製、UV−3100PC)にて測定し、波長600nmにおける値を用いた。
本発明に係るフィルムミラー全体の厚さは75μm以上250μm以下であることが好ましく、更に好ましくは90μm以上230μm以下、更に好ましくは100μm以上220μm以下である。厚さが上記好ましい範囲において、フィルムミラーを金属等の筐体や枠体等に取り付けて用いる場合においても、フィルムミラーが撓むことがなく、形状追従性も良好となり、取り扱い性が良好であり好ましい。
このようにして得られたフィルムミラーの最外層である樹脂保護層は、表面粗さ20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、この範囲とすることで高い反射率のフィルムミラーとすることができる。
<フィルムミラーの製造方法>
次に、本発明のフィルムミラーの製造方法について、各工程を順次説明する。以下に記載の方法は本発明の一つの態様であって、本発明はこれに制限されるものではない。
本発明のフィルムミラーの製造方法は、支持体上に、還元された金属粒子として銀粒子及び銀よりも卑な金属の粒子を含むめっき下塗りポリマー層を形成する工程(「工程1」と称する。)、電気めっきにより、銀を含有する金属層を形成する工程(「工程2」と称する。)、及び樹脂保護層を形成する工程(「工程3」と称する。)を含むことを特徴とする。
〔支持体上に、還元された金属粒子として銀粒子及び銀よりも卑な金属の粒子を含むめっき下塗りポリマー層を形成する工程〕
支持体上に、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層を形成する工程は、銀前駆体及び銀よりも卑な金属の前駆体を含むポリマー層を形成する工程(「工程1−1」と称する。)と、前記銀前駆体及び銀よりも卑な金属の前駆体を還元する工程(「工程1−2」と称する。)とからなることが好ましい。
また、「工程1−1」は、めっき下塗りポリマーを含むポリマー層形成用組成物を塗布等の方法により、支持体上に層を設け、エネルギーを付与してポリマー層を形成する工程(「工程1−1−1」と、該ポリマー層に金属前駆体を付与する工程(「工程1−1−2」)とを含むことが好ましい。
なお、「めっき下塗りポリマーを含むポリマー層形成用組成物」は、金属前駆体を含有しないで、めっき下塗りポリマーと、溶剤等のその他の成分を含む組成物であることを意味する。本明細書において単に「ポリマー層」と称する場合には、金属前駆体を含まず、めっき下塗りポリマーとその他の成分を含んで支持体上に形成された層を意味する。
(工程1−1−1)
工程1−1−1では、重合性基と相互作用性基とを有するポリマーを含むポリマー層を有する基板に対して、エネルギーを付与することにより、めっき下塗りポリマー中に含まれる重合性基、および支持体表面の官能基が活性化され、ポリマー間の架橋や、支持体とポリマー層との間で化学的な結合などが形成される。その結果として、ポリマー層と支持体とが強固に密着する。
支持体上にポリマー層を設ける方法は特に限定されず、めっき下塗りポリマーを含むポリマー層形成用組成物中に支持体を浸漬する方法や、めっき下塗りポリマーを含むポリマー層形成用組成物を支持体上に塗布する方法などが挙げられる。得られるポリマー層の厚みを制御しやすい点から、めっき下塗りポリマーを含むポリマー層形成用組成物を支持体上に塗布する方法が好ましい。
塗布の方法は特に制限されず、具体的な方法としては、ダブルロールコータ、スリットコータ、エアナイフコータ、ワイヤーバーコータ、スライドホッパー、スプレーコータ、ブレードコータ、ドクターコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、エクストロージョンコータ、カーテンコータ、ディップコータ、ダイコータ、グラビアロールによる塗工法、押し出し塗布法、ロール塗布法等の公知の方法を用いることができる。
めっき下塗りポリマーを含むポリマー層形成用組成物の支持体への塗布量は、後述する金属前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.05g/m〜10g/mが好ましく、特に0.3g/m〜5g/mが好ましい。
なお、工程1−1−1において、ポリマー層を形成するに際しては、塗布後の溶媒が残存した状態で露光しても、乾燥させて残存溶媒を除去してから露光してもよいが、ポリマー層の表面平滑性の観点から乾燥させてから露光するほうが好ましい。乾燥は行わなくてもよいが、乾燥を行う場合の乾燥条件としては、ポリマー層を20℃〜60℃で0時間を超え2時間以下乾燥した後に60℃以上で0時間を超え、2時間以下乾燥することが好ましく、20℃〜60℃で1秒間〜20分間乾燥した後に60℃以上で0時間を超え2時間以下乾燥することがより好ましい。
工程1−1−1におけるエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光を用いることができる。
露光を行う場合の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、などがある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
またアーク放電やグロー放電などによるプラズマ照射もエネルギー付与の手法として用いることができる。
加熱を行う場合、例えば、一般の熱ヒートローラー、ラミネーター、ホットスタンプ、電熱板、サーマルヘッド、レーザー、送風乾燥機、オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥機、加熱ドラム等を用いることができる。
エネルギー付与に要する時間としては、光源により異なるが、通常、0.5秒〜5時間の間である。
また、これらのエネルギー付与方法を組み合わせてもよい。例えば、露光と加熱を組み合わせてもよい。
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、重合を容易に進行させるため、またポリマーの分解を抑制するため、更には後述の未反応ポリマー除去後の表面をより平滑にするため、10mJ/cm〜8000mJ/cmの範囲であることが好ましく、100mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲であることがより好ましい。
また加熱にてエネルギー付与を行う場合、その温度は、重合を容易に進行させるため、また支持体の熱変性を抑制するため、20℃〜200℃の範囲であることが好ましく、40℃〜120℃の範囲であることがより好ましい。
また、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスによる置換を行い、酸素濃度を600ppm以下、好ましくは400ppm以下に抑制した雰囲気中で露光してもよい。さらに、必要に応じて、パターン状にエネルギー付与を行ってもよい。
さらに、エネルギー付与後に、適宜、エネルギー付与後のポリマー層から未反応のめっき下塗りポリマーを除去してもよい。除去方法としては、溶媒を使用する方法が挙げられ、例えば、めっき下塗りポリマーを溶解する溶剤や、めっき下塗りポリマーがアルカリ可溶性である場合は、アルカリ系現像液(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液)などで除去することができる。
得られるポリマー層の厚みは特に制限されないが、銀含有反射層の支持体への密着性の観点から、0.05μm〜10μmが好ましく、0.3μm〜5μmがより好ましい。
また、乾燥重量で0.05g/m〜10g/mが好ましく、特に0.3g/m〜5g/mが好ましい。
さらに、ポリマー層の表面粗さ(Ra)は、反射性能の点から、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
なお、ポリマー層中におけるポリマーの含有量は、ポリマー層全量に対して、2質量%〜100質量%であることが好ましく、更に好ましくは10質量%〜100質量%の範囲である。
(工程1−1−2)
銀前駆体及び銀よりも卑な金属の前駆体を、工程1−1−1で得られたポリマー層に付与する方法は、特に制限されない。
本工程に用いられる銀前駆体及び銀よりも卑な金属の前駆体を含有する金属前駆体液の詳細は既述の通りであり、既述の金属前駆体液をポリマー層上に塗布する方法、または、金属前駆体液にポリマー層が形成された支持体を浸漬する方法などにより両者を接触させることでポリマー層中の相互作用性基に金属の前駆体が付与される。
ポリマー層と金属前駆体液(分散液、溶液)との接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
接触時の金属前駆体含有液の温度は、5℃〜80℃程度であることが好ましく、15℃〜60℃程度であることがより好ましい。
上記のように金属前駆体液を接触させることで、めっき下塗りポリマー中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、または、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、金属前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、金属前駆体含有液中の金属前駆体濃度または金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
(工程1−2:金属前駆体を還元する工程)
本工程では、ポリマー層に付与した金属前駆体である金属イオンを金属活性化液(還元液)により還元する。金属活性化液は、金属前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤と該還元剤を活性化するためのpH調整剤からなる。
金属活性化液全体に対する還元剤の濃度が0.05質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
特に、ホルムアルデヒドを含有するアルカリ水溶液で還元することが好ましい。
金属活性化液全体に対するpH調整剤の濃度としては、0.05質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることがより好ましい。
pH調整剤としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを使用することが可能である。
また、還元時の温度としては10℃〜100℃が好ましく、20℃〜70℃が更に好ましい。
これら濃度や温度範囲は、還元の際の、金属前駆体の粒子径、ポリマー層の表面粗さ、導電性(表面抵抗値)、還元液の劣化の観点からこの範囲であることが好ましい。
次の工程である銀含有反射層の形成工程に付す際の、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層の表面抵抗値としては、0.001Ω/□以上100Ω/□以下であることが好ましく、0.03Ω/□以上50Ω/□以下であることがより好ましい。この範囲内であると、均一および平滑にめっき面が形成され得られる銀含有反射層の反射率がより良好となる。
また反射性能の観点から、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層の表面のRaは20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。また同じく反射性能の観点から、還元された金属粒子の粒子径としては、1nm以上200nm以下が好ましく、1nm以上100nm以下がより好ましく、1nm以上60nm以下であることが更に好ましい。
(工程2:銀を含有する金属反射層を形成する工程)
銀を含有する金属反射層は、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層の上に、電気めっき法で形成される。電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
本発明においては、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層が、電極としての機能を有する場合、還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層に対して電気めっきを行うことにより、銀含有反射層を形成できる。
めっきに用いる銀化合物としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、メタンスルホン酸銀、アンモニア銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。中でも環境影響や平滑性の観点から、メタンスルホン酸銀が好ましい。
本工程により、表面が平滑で反射性能に優れた銀含有反射層が形成される。
(工程3:樹脂保護層を形成する工程)
本発明のフィルムミラーでは、(C)銀含有反射層表面に(D)樹脂保護層を有する。(D)樹脂保護層の形成方法には、特に制限はないが、銀含有反射層表面に保護フィルムを、接着層を介して貼り合せる方法が好ましい。
貼り合せの方法としては、前述の接着剤を保護フィルム又は銀含有反射層の表面に塗布して接着層を形成した後、両者を貼り合せる方法が一般的である。
また、樹脂保護層形成用の保護フィルムを熱ラミネートなどの方法で融着させる方法、樹脂保護層形成材料を溶融して銀含有反射層上にキャストにより形成する方法、樹脂保護層形成材料を銀含有反射層上に塗布した後、何らかの反応をさせて硬化させ、樹脂保護膜を形成する方法、真空蒸着などの気相法を用いて形成する方法などにより樹脂保護層を形成してもよい。これらの方法を用いた場合、接着層を介すことなく、銀含有反射層上に直接、保護層を形成することができる。
このようにして得られたフィルムミラーは、そのまま用いてもよいが、剛性を有する筐体等に貼り合わせたり、剛性を有する枠体に取り付けたりして用いてもよく、このような形態で、太陽光の集光、集熱等を行う部材として、太陽熱発電装置や太陽光発電装置に組み込まれて用いられる。
本発明のフィルムミラーは前記構成としたため、簡易な方法で作製され、銀含有反射層の光反射性能に優れ、且つ、光反射性能の経時による低下が抑制されるため、太陽熱発電装置用フィルムミラーまたは太陽光発電装置用フィルムミラーとして有用である。
<太陽光反射板>
本発明のフィルムミラーは単体でも、太陽光の集光に用いることができるが、好ましくは、樹脂等の基板上に貼り付けにより保持させたり、枠体に固定化したりして、太陽光反射板として用いることが好ましい。
本発明の太陽光反射板は、本発明のフィルムミラーを用いて作製されたものであり、具体的には、本発明の太陽光反射板は、樹脂、金属、又はセラミックのいずれかからなる基板に、本発明のフィルムミラーが粘着層を介して貼り合されたり、固定治具を介して、樹脂、金属、若しくはセラミックのいずれかからなる枠に取り付けられたりして用いられる。
フィルムミラーを、太陽光を集光させるに当たり、基体として、剛性を有する筐体に貼り合わせる場合の、剛性を有する筐体とは、SUS、Al、Al合金などの金属、塩ビ、ポリカーボネート、アクリルなどの樹脂、CRP、FRPなどの複合材料からなる筐体を言う。太陽光の集光に適した形状を有した筐体にフィルムミラーを、下記粘着層を介して貼り合わせることができる。
粘着層としては、特に制限されず、例えばドライラミネート剤、ウエットラミネート剤、ヒートシール剤、ホットメルト剤などのいずれもが用いられる。例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴム、シリコーン樹脂などが用いられる。ラミネート方法は特に制限されず、例えばロール式で連続的に行うのが経済性及び生産性の点から好ましい。粘着層の厚さは通常1〜50μm程度の範囲から選ばれる。厚さが1μm未満では充分な粘着効果が得られず、一方50μmを超えると粘着剤層が厚すぎて乾燥速度が遅くなり、非能率的である。しかも本来の粘着力が得られず、溶剤が残留するなどの弊害が生じるので好ましくない。
また、既述の(D)樹脂保護層の項にて詳述した接着層形成用の樹脂を粘着層に用いてもよい。
また、筐体に直接貼付する他、固定治具を介して、樹脂、金属、若しくはセラミックのいずれかからなる枠に取り付けられて用いられてもよい。枠にフィルムミラーを取り付けることで、温度変化による膨張、収縮等のサイズ変動の影響を受け難くなり、シワの発生などによる反射率の低下が長期間抑制されるという利点をも有することになる。
本発明を実施例により、更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお特に断りのない限り、「%」、「部」は質量基準である。実施例12は、参考例である。
〔実施例1〕
(めっき下塗りポリマー層形成工程)
アクリルポリマー1(下記構造、各繰り返し単位の数字は質量換算の組成比を表す。):7質量%、1−メトキシ−2プロパノール:74質量%、水:19質量%の溶液に、光重合開始剤(エサキュアKTO−46、ランベルディー社製):0.35質量%を添加し、攪拌することにより、めっき下塗りポリマー(アクリルポリマー1)の溶液を調製した。
得られためっき下塗りポリマーの溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(TOYOBO社製、コスモシャインA4300)に、乾燥後の膜厚が約0.55μmとなるように、バーコート法により塗布し、25℃で10分および80℃で5分間乾燥した後、UV照射装置(GSユアサ社製、UVランプ・・・メタルハライドランプ)により、254nmの波長において1000mJ/cm、UV露光した。
得られためっき下塗りポリマーが塗布されたPETフィルムは、1質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液に5分間浸漬後に純水で1分間掛け流しにより洗浄を行い、未反応のポリマーを除去した。
(銀前駆体及び銀よりも卑な金属の前駆体の付与)
銀よりも卑な金属の前駆体を含む溶液〔金属前駆体液(1)〕として、硫酸銅の0〜1%水溶液を調整した。
上記工程で得られためっき下塗りポリマーが塗布されたPETフィルム基板を、調製した銀よりも卑な金属を含む金属前駆体液(1)に5分間25℃で浸漬後、純水で1分間掛け流しにより洗浄を行い、銅イオンの付与を行った。
次に、銀前駆体を含む溶液〔金属前駆体液(2)〕として、硝酸銀の0〜1質量%水溶液を調製した。上記工程で得られためっき下塗りポリマーが塗布されたPETフィルム基板であって、金属前駆体液(1)に浸漬された基板を、さらに、調製した金属前駆体液(2)に5分間25℃で浸漬後、純水で1分間掛け流しにより洗浄を行い、銀イオンの付与を行った。
金属前駆体液(1)及び金属前駆体液(2)は、下塗りポリマー層中の下記ICP−AESによる測定値が所望のAg/Cu比となるように、処理液濃度を調製して付与を行った。
(金属前駆体の還元)
還元液として、ホルムアルデヒド0.25質量%、水酸化ナトリウム0.14質量%の水溶液を調製した。上記工程で得られた金属前駆体が付与されたPETフィルム基板を、調製した還元液に1分間25℃で浸漬後、純水で1分間掛け流しにより洗浄を行い、銅前駆体及び銀前駆体の還元を行った。
(銅粒子及び銀粒子の含有率測定)
前記金属前駆体の還元を行うことで、めっき下塗りポリマー層中に還元された銅粒子と還元された銀粒子が生成する。
得られた還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層を濃硫酸に浸漬して、めっき下塗りポリマー層に含まれる銀粒子および銅粒子を溶解後、溶液中の銀及び銅の含有率を、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いた元素分析により測定し、当該濃度により銀/銅の含有比率(表2においては「Ag/Cu比」と記載)を算出した。結果を下記表2に示した。
(電気めっき)
電気めっきの前処理として、上記工程で得られた還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層を表面に有するPETフィルム基板を、ダインクリーナーAC100(大和化成社製)の10質量%水溶液に30秒間25℃で浸漬後、数回洗浄した。続けて同じく電気めっき前処理として、ダインシルバーACC(大和化成社製)の10質量%水溶液に10秒浸漬後、数回洗浄した。
電気めっき液として、ダインシルバーブライトPL50(主成分 メタンスルホン酸銀、大和化成社製)を用い、8M水酸化カリウムによりpH9.0に調整した。上記還元された金属粒子を含むめっき下塗りポリマー層を表面に有するPETフィルム基板を、電気めっき液に浸漬し、0.5A/dm、にて20秒間めっきした。
電気めっき後処理として、めっき後のPETフィルム基板を、ダインシルバーACC(主成分 メタンスルホン酸、大和化成社製)の10質量%水溶液に90秒間浸漬後、数回洗浄した。
(保護層形成)
接着剤として、LIS―825(東洋インキ社製)を44質量%、LCR−901(東洋インキ社製)を4.4質量%、を酢酸エチル52質量%に溶解させ、接着剤溶液を調製した。
得られた接着剤溶液を、上記工程で得られた銀めっき面に、乾燥後の膜厚が約10μmとなるように、バーコート法により塗布し、室温で2分および80℃で10分間乾燥した。
これに保護層としてUV吸収剤含有PMMAフィルム(住友化学社製、S001G)をラミネーターにより貼り合わせた(ラミネート速度0.1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)。その後60℃で12時間後加熱することで、接着剤を硬化させた。
貼り合わせた後の銀面の600nmにおける反射率を測定したところ、約94%であった。
(性能評価)
上記のようにして得られたフィルムミラーを用いて、下記の評価を行った。結果は他の実施例、比較例の結果とともに表2に示した。
<1.耐久性評価>
得られたフィルムミラーについて、キセノンランプ耐光性試験機(ATLAS社製、Ci5000、パワー:180W、Black Panel Temperature:83℃)内に配置して、500時間放置し、その際のフィルムミラーの450nmにおける反射率の低下を以下の式により評価した。
〔反射率の低下〕=(放置前の反射率(%)−放置後の反射率(%))
なお、反射率は、紫外可視近赤外分光光度計UV−3100(島津製作所社製)を用いて測定した。以下の基準に従って耐光性を評価した。評価AA、A及びBが実用上問題のないレベルである。
AA:反射率の低下が10%未満
A:反射率の低下が10%以上15%未満
B:反射率の低下が15%以上20%未満
C:反射率の低下が20%以上
<2.密着性評価>
フィルムミラーを、JIS H8504テープ試験方法に準じて、カッターで2mm角のマス目状の切れ目を入れ、100個のマス目を形成した後、テープによる引き剥がし試験を行い、以下の基準で評価した。評価AA及びAが実用上問題のないレベルである。
AA:剥離なし
A:剥離があり、マス目の25%未満が剥離
B:マス目の25%以上が剥離
<3.銀含有反射層への銅イオンの拡散評価>
得られたフィルムミラーについて、恒温恒湿槽(エスペック社製、PR−3ST)にて、フィルムミラーを温度65℃、湿度80%RHの環境下で2000時間放置し、その際の銀含有反射層への拡散による450nmにおける反射率の低下を下記式により測定して、以下の基準で評価した。
反射率の低下=(放置前の反射率(%)−放置後の反射率(%))
なお、反射率は、紫外可視近赤外分光光度計UV−3100(島津製作所社製)を用いて測定した。上記条件の放置試験による反射率の低下は、銀含有反射層への銅イオンの拡散に起因する。評価AA及びAが実用上問題のないレベルである。
AA:反射率の低下が10%未満
A:反射率の低下が10%以上15%未満
B:反射率の低下が15%以上
〔実施例2〜12〕
実施例1における硫酸銅溶液の濃度及び硝酸銀の濃度を、それぞれ下記表2に記載の濃度に変えた溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムミラーを得た。
得られた各フィルムミラーは実施例1と同様に評価した。
〔参考例1〕
実施例1において、硫酸銅水溶液を付与せず、硝酸銀水溶液のみを付与した以外は実施例1と同様にしてフィルムミラーを得た。得られたフィルムミラーは実施例1と同様に評価した。
〔比較例1〕
実施例1において、硫酸銅水溶液のみを付与し、硝酸銀水溶液を付与しなかった以外は実施例1と同様にしてフィルムミラーを得た。得られたフィルムミラーは実施例1と同様に評価した。
表2に明らかなように、本発明のフィルムミラーは、銀含有反射層と支持体との密着性、銀含有反射層の反射性能の耐久性に優れ、銀含有反射層内への銅イオンの拡散が抑制されることがわかる。その傾向は銀よりも卑な金属である銅の含有率が15%〜30%で顕著であり、驚くべきことに、一般に用いられる銀のみを含有する反射層を有する参考例1のフィルムミラーよりも、さらに、反射性能の耐久性がより向上し、銅のみを含有する比較例1のフィルムミラーに対して、密着性の著しい向上が確認された。
以上の結果より、本発明のフィルムミラーは、反射性能の耐久性、支持体と銀含有反射層との密着性のいずれにも優れ、銀含有反射層への銀よりも卑な金属の拡散が抑制されることが明らかとなった。

Claims (7)

  1. 支持体と、還元された金属粒子である銀粒子及び少なくとも1種の銀よりも卑な金属からなる金属粒子、並びにめっき下塗りポリマーを含むめっき下塗りポリマー層と、銀を含有する反射層と、樹脂保護層と、をこの順に有するフィルムミラーであって、
    前記銀よりも卑な金属が、Co、Zn、Al、Fe、Ni、Sn、Pb及びCuから選ばれた少なくとも1種であり、前記還元された金属粒子全量に対する前記銀よりも卑な金属からなる金属粒子の含有率が5質量%以上80質量%以下であり、
    前記めっき下塗りポリマーが、重合性基、並びにエーテル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びボロン酸基から選ばれた少なくとも一種の官能基を側鎖に有するアクリルポリマーである、
    フィルムミラー
  2. 前記還元された金属粒子全量に対する前記銀よりも卑な金属からなる金属粒子の含有率が、5質量%以上50質量%以下である請求項1に記載のフィルムミラー。
  3. 前記銀よりも卑な金属が銅である請求項1又は請求項2に記載のフィルムミラー。
  4. 前記アクリルポリマーが、カルボン酸基、スルホン酸、リン酸基及びボロン酸から選ばれた官能基を側鎖に有するアクリルポリマーである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
  5. 支持体上に、還元された金属粒子である銀粒子及び少なくとも1種の銀よりも卑な金属からなる金属粒子、並びにめっき下塗りポリマーを含むめっき下塗りポリマー層を形成する工程、
    電気めっきにより、銀を含有する反射層を形成する工程、及び
    樹脂保護層を形成する工程を含み、
    前記銀よりも卑な金属が、Co、Zn、Al、Fe、Ni、Sn、Pb及びCuから選ばれた少なくとも1種であり、前記還元された金属粒子全量に対する前記銀よりも卑な金属からなる金属粒子の含有率が5質量%以上80質量%以下であり、
    前記めっき下塗りポリマーが、重合性基、並びにエーテル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びボロン酸基から選ばれた少なくとも一種の官能基を側鎖に有するアクリルポリマーである、
    請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のフィルムミラーの製造方法。
  6. 記めっき下塗りポリマー層を形成する工程が、
    支持体上に、重合性基並びにエーテル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びボロン酸基から選ばれた少なくとも一種の官能基を側鎖に有するアクリルポリマーを含むポリマー層を形成する工程、
    還元されて銀となる銀前駆体、並びに還元されて銀よりも卑な、Co、Zn、Al、Fe、Ni、Sn、Pb及びCuから選ばれた少なくとも1種の金属の前駆体を、該ポリマー層に付与する工程、及び
    該銀前駆体及び該銀よりも卑な金属の前駆体を還元する工程、を含む請求項に記載のフィルムミラーの製造方法。
  7. 太陽熱発電装置用または太陽光発電装置用である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
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