(第1実施形態)
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化した第1実施形態を、図1〜図17を用いて説明する。
図1に示すように、液体噴射装置の一例であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」と称す。)には、本体12の背面側に媒体の一例としての用紙P(シート)を給送する自動給紙装置13(Auto Sheet Feeder)が装備されている。自動給紙装置13は、給紙トレイ14、ホッパー15及びエッジガイド16を有する用紙ガイド17を備え、用紙ガイド17にセットされた用紙を1枚ずつ本体12内に給送する。左右一対のエッジガイド16は、給紙トレイ14の幅方向中央位置を中心として用紙Pを幅方向にガイドする。
また、本体12内にはキャリッジ18がその移動経路に沿った移動方向X(主走査方向)に往復動可能な状態に設けられ、このキャリッジ18の下部には液体噴射ヘッド19が取着されている。プリンター11は、キャリッジ18を移動方向Xに移動させる過程で液体噴射ヘッド19から用紙Pの表面にインク滴を噴射する記録動作と、用紙Pを移動方向Xと交差する搬送方向Y(副走査方向)に要求された搬送量で搬送する紙送り動作とを略交互に繰り返し、与えられた印刷データに基づく画像や文書などを用紙Pに印刷する。印刷後の用紙Pは本体12の前側下部に開口する排紙口12Aから排出される。
また、本体12の上面端部には、操作パネル20が設けられている。操作パネル20は、液晶表示パネル等からなる表示部21と、操作スイッチ22が設けられている。操作スイッチ22には、電源スイッチ23、印刷開始スイッチ24、キャンセルスイッチ25等が設けられている。なお、表示部21をタッチパネルとしてもよい。
次にプリンター11の内部構成について説明する。図2に示すように、プリンター11は、上側と前側が開口する略四角箱状の本体フレーム30を有し、この本体フレーム30の図2における左右の側壁間に架設されたガイド軸31には、キャリッジ18が主走査方向Xに往復移動可能な状態で取り付けられている。本体フレーム30の背板内面に取着された一対のプーリー33には無端状のタイミングベルト34が巻き掛けられており、キャリッジ18はタイミングベルト34の一部に固定されている。図2における右側のプーリー33にはキャリッジモーター35の駆動軸(出力軸)が連結されており、キャリッジモーター35が正逆転駆動されてタイミングベルト34が正転・逆転することにより、キャリッジ18は移動方向X(主走査方向)に往復移動する。
キャリッジ18の上部には、各色のインク(例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色)がそれぞれ収容された複数個(例えば4個)のインクカートリッジ37が装填されている。各インクカートリッジ37から供給されたインクは、液体噴射ヘッド19にインク色と同数列(本例では4列)形成された対応するノズル列NA(図5参照)の各ノズルからそれぞれ噴射される。また、キャリッジ18の移動経路の下方位置には、液体噴射ヘッド19と用紙Pとの間隔(ギャップ)を規定する支持台38が主走査方向Xに延びるように設けられている。なお、液体噴射ヘッド19が噴射可能なインク色は4色に限らず、1色、3色、5〜8色でもよい。
また、キャリッジ18の背面側には、キャリッジ18の移動量に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー39がガイド軸31に沿って延びるように設けられている。プリンター11ではリニアエンコーダー39から出力されるパルス信号に基づいてキャリッジ18の位置制御及び速度制御が行われる。
また、本体フレーム30の図2における右側下部には、搬送モーター41が配設されている。搬送モーター41の動力により不図示の給紙ローラーが駆動されることにより給紙トレイ14(図1参照)にセットされた用紙Pが1枚ずつ給送される。搬送方向Yに支持台38を挟んだその上流側と下流側には、それぞれ搬送ローラー対43と排出ローラー対44とが配置されている。各ローラー対43,44は、搬送モーター41の動力で回転する駆動ローラー43a,44aと、駆動ローラー43aの回転に連れ回りする従動ローラー43b,44bとからなる。搬送モーター41が駆動されることで、用紙Pは両ローラー対43,44に挟持(ニップ)された状態で搬送方向Y(副走査方向)に搬送される。
図2においてキャリッジ18の移動経路上の一端位置(図2では右端位置)が、キャリッジ18が非印刷時に待機するホーム位置となっている。ホーム位置に配置されたキャリッジ18の直下には、液体噴射ヘッド19に対してクリーニング等のメンテナンスを行うメンテナンス装置45が配設されている。本実施形態では、搬送モーター41がメンテナンス装置45の動力源ともなっている。また、キャリッジ18には、用紙Pの幅方向(移動方向X)における両側の端部(エッジ)を検出する光学式センサーの一例としての紙幅センサー48が設けられている。
図5はキャリッジの底面を示す。キャリッジ18の底面略中央位置に取り付けられた液体噴射ヘッド19のノズル形成面19aには、キャリッジ18がプリンター11に組み付けられた状態における搬送方向Yに多数個のノズルNzが一定ピッチで配列されてなるノズル列NAが移動方向Xに所定の間隔をおいて複数列配列されている。ノズル列NAを構成する各ノズルNzからは、対応するインクカートリッジ37から供給されるインクが噴射される。また、紙幅センサー48は、キャリッジ18の底面において液体噴射ヘッド19よりも搬送方向Y上流側の位置に取り付けられている。
次にプリンター11の電気的構成を図3に基づいて説明する。図3に示すプリンター11は、その全体的な制御を司る制御部50を備える。制御部50は、例えばコンピューター(マイクロコンピューター)により構成され、CPU51(中央処理装置)、ROM52、RAM53及び不揮発性メモリー54を備える。ROM52には、各種のプログラムが記憶されている。不揮発性メモリー54には、一部のプログラム及び各種のプログラムを実行する際の設定データなどが記憶され、電源をオフしても記憶内容が保持される。CPU51は、ROM52及び不揮発性メモリー54に記憶されたプログラムを実行することで、プリンター11の印刷動作などを制御する。なお、ASIC(Application Specific IC(特定用途向けIC))を追加し、液体噴射ヘッド19の駆動制御に必要なデータ処理などをASICに行わせてもよい。
制御部50は、印刷データに基づいて駆動回路55を介して液体噴射ヘッド19を駆動制御し、液体噴射ヘッド19からインクを噴射させる。また、制御部50は、駆動回路56を介してキャリッジモーター35を駆動制御し、キャリッジ18を移動方向Xに往復移動させる。さらに制御部50は、駆動回路57を介して搬送モーター41を駆動制御し、用紙Pを搬送方向Yに搬送させる。また、制御部50は、リニアエンコーダー39から入力するパルス信号に基づいてホーム位置を原点とするキャリッジ18の移動方向Xにおける位置(キャリッジ位置)を検出する。詳しくは、制御部50は、キャリッジ18がホーム位置にあるときを原点として、リニアエンコーダー39から入力するパルス信号のパルスエッジの数を計数するカウンターを備え、キャリッジ18の往動時にカウンターの計数値をインクリメント、キャリッジ18の復動時に計数値をデクリメントする。このため、カウンターの計数値は、キャリッジ18の移動方向Xにおける位置(キャリッジ位置)を示す。
また、制御部50に接続された紙幅センサー48は、光を支持台38側(鉛直方向下側)へ照射する発光部58と、発光部58から照射された光の反射光を受光する受光部59とを備える。制御部50は、発光部58の発光を制御するとともに、受光部59からその受光量に応じた出力電圧を入力する。制御部50は発光部58の発光量を設定する発光量設定回路60Aと接続されており、発光量設定回路60Aにおける発光量設定値の変更により発光部58の発光量を調整する。また、制御部50は受光部59の感度を設定する感度設定回路60Bと接続されており、感度設定回路60Bにおける感度設定値の変更により受光部59の感度を調整する。
図3(b)は、CPU51がROM52又は不揮発性メモリー54から読み出したプログラムを実行することによって機能する機能構成を示す。制御部50は、CPU51がプログラムを実行することによって機能する機能部として、電圧測定部61、補正量設定部62、端部検出部63及び感度調整部64を備える。電圧測定部61は、紙幅センサー48が基準反射面に照射した光の反射光を受光した受光部59によって出力される第1出力値の一例としての出力電圧VLを取得し、出力電圧VLに基づき基準反射面で反射した反射光を受光した受光部59の受光量に応じた基準面電圧Vsを測定する。補正量設定部62は、基準面電圧Vsと基準面電圧Vsの初期値Vs0との比に対応する補正量を設定する。補正量の設定方法の詳細は後述する。なお、本実施形態では、電圧測定部61により、測定部の一例が構成される。また、補正量設定部62により、補正量取得部の一例が構成される。
端部検出部63は、受光部59から入力した出力電圧に基づいて用紙Pの幅方向における端部の位置を検出する。端部検出部63は、用紙Pの端部位置を検出するために、端部位置検出部65及び補正部の一例としての端部位置補正部66を備える。
端部位置検出部65は、紙幅センサー48の出力電圧と閾値との比較から、出力電圧が閾値を横切ったことをもって用紙Pの端部を検出し、その検出時の紙幅センサー48の位置を用紙Pの端部位置(エッジ位置)として取得する。詳しくは、リニアエンコーダー39のパルス信号に基づき把握されるキャリッジ18の移動方向Xにおける位置(キャリッジ位置)と、そのキャリッジ位置と紙幅センサー48の位置との移動方向Xにおける既知の距離とに基づいて紙幅センサー48の位置を把握する。端部検出部63は、紙幅センサー48の出力電圧が閾値を横切ったことをもって用紙Pの端部を検出すると、キャリッジ18の位置を計数するカウンターの計数値と前記既知の距離(カウンター換算値)とに基づき、そのときの紙幅センサー48の位置、つまり用紙Pの端部検出位置Xd(エッジ検出位置)を取得する。
端部位置補正部66は、端部検出位置Xdを補正量dxで補正して端部位置Xe(エッジ位置)を取得する(Xe=Xd+dx)。ここで、補正量dxは、補正量設定部62が設定したものである。
感度調整部64は、発光量設定回路60Aにおける発光量設定値の変更により受光部59の感度を調整する。感度調整部64は、紙幅センサー48がインクミストや紙粉等の浮遊物の付着などに起因して汚れ、端部位置検出精度が許容範囲を超えて低下したと判断した場合に、発光量設定回路60Aの設定値を変更して受光部59の感度を高く変更する。
感度調整部64は、感度設定回路60Bにおける感度設定値の変更により受光部59の感度を調整する。感度調整部64は、紙幅センサー48がインクミストや紙粉等の浮遊物の付着などに起因して汚れ、端部位置検出精度が許容範囲を超えて低下したと判断した場合に、感度設定回路60Bの設定値を変更して受光部59の感度を高く変更する。なお、本実施形態では、感度調整部64による感度切替えが先に行われ、最終の感度まで切り替えられた後、その最終の感度の下で、端部位置検出精度が許容範囲を超えて低下したと判断されると、感度調整部64が発光量設定回路60Aの設定値を変更して発光部58の発光量を一段多くする発光量切替え制御を行う。
図4は支持台及びキャリッジを示す。支持台38には、搬送方向Yの上流側に位置する上流側支持面71と、上流側支持面71に対して搬送方向Yの下流側に位置する下流側支持面72とが形成されている。上流側支持面71には、鉛直方向上側(図4の紙面手前側)に突出し、かつ搬送方向Yに延びる上流側リブ73が形成されている。また、下流側支持面72には、鉛直方向上側に突出し、かつ搬送方向Yに延びる下流側リブ74が形成されている。上流側リブ73と下流側リブ74とは、搬送される用紙Pを鉛直方向下側から支持し、図2に示す用紙Pは、上流側リブ73と下流側リブ74に沿って搬送される。
図4に示すように、上流側支持面71において上流側リブ73以外の部分には、上流側リブ73の上端面よりも低い底面を有する溝部71aが形成されている。また、下流側支持面72において下流側リブ74以外の部分には、下流側リブ74の上端面よりも低い底面を有する溝部72aが形成されている。
図4に示すように、上流側支持面71において移動方向Xの略中央位置には、一対の上流側リブ73の間に台部75が形成されている。台部75の頂部(上端部)は、紙幅センサー48に対するインクミストや紙粉等の浮遊物の付着に起因する紙幅センサー48の汚れの程度(汚れ度)を検出する際に使用される基準反射面76が形成されている。基準反射面76は、発光部58からの光を反射させて受光部59にその反射光を受光させてその出力電圧の値から紙幅センサー48の汚れ度を調べる際の基準となる反射面であり、液体噴射ヘッド19のノズル形成面19aと平行な平坦な鏡面に仕上げられている。
図4及び図6に示すように、台部75の高さは、上流側リブ73よりも低くなっている。このため、台部75の頂面である基準反射面76は、用紙Pが摺動しないので、用紙Pの摺動により研磨されることがない。また、台部75は、印刷中は用紙Pにより覆われるので、インクミストによる汚損の虞が少ない。紙幅センサー48の汚れ度を調べる場合、基準反射面76の反射率が変動する要因を排除する必要があるが、台部75は用紙Pが摺動せず、かつ印刷時に用紙Pで覆われるので、基準反射面76の反射率は変動しにくくなっている。
基準反射面76の面方向は発光部58の照射方向(鉛直下方向)と直交している。基準反射面76を使用して検出された紙幅センサー48の汚れの程度に応じて受光部59の感度が段階的に切り替えられるとともに、発光部58の発光量が段階的に切り替えられる。
図4では、キャリッジ18が位置する右端位置がホーム位置となっている。また、キャリッジ18の移動方向Xにおいて液体噴射ヘッド19が印刷のためインク滴を噴射可能な最大エリアである液体噴射領域PA(印刷領域)は、図4に二点鎖線で示すように下流側支持面72上に位置する。台部75は、液体噴射領域PAが位置する下流側支持面72より搬送方向Y上流側に位置する上流側支持面71に配置されていることから、基準反射面76は液体噴射領域PAの外側に位置する。
図1に示す一対のエッジガイド16により幅方向に位置決めされた用紙Pは、その幅中心が搬送経路の幅方向中央位置を通るように給送される。そのため、図4の支持台38上に搬送されたときの用紙Pの幅方向における両側の端部の位置(エッジ位置)は、用紙Pの幅ごとに定まる。本実施形態では、規定サイズの用紙Pについてはその幅方向両端位置が、溝部71aに対向して位置するように、各上流側リブ73の移動方向Xにおける位置が設定されている。このため、支持台38上に搬送された用紙Pの幅方向の両端部はいつも溝部71aに対向して位置する。
図6に示すように、溝部71aの底面は、比較的細かな波状の面に形成されており、発光部58から溝部71aへ略垂直に照射された光が乱反射し易くなっている。このため、溝部71aで反射した光の受光部59による受光量が少なくなり、その出力電圧が相対的に大きくなる。また、用紙Pからの反射光を受光した受光部59の出力電圧は相対的に小さくなる。本実施形態では、発光部58から照射された光の反射面が、溝部71aであるときの受光部59の出力電圧と、その反射面が用紙Pであるときの受光部59の出力電圧との間に閾値を設定している。そして、受光部59の出力電圧が閾値を横切ることをもって用紙Pの幅方向の端部が検出される。そして、その用紙Pの端部が検出された時点の紙幅センサー48の位置から用紙Pの幅方向における端部位置(エッジ位置)が検出される。さらに端部検出部63(図3参照)は、用紙Pの端部位置を補正量で補正して用紙Pの端部位置を取得する。このように用紙Pの端部位置の検出処理は、端部検出部63により行われる。
図7に示すように、キャリッジ18において支持台38と対向する側(下面側)に固定された紙幅センサー48は、発光部58と受光部59とが隣合う状態で比較的接近した状態で取り付けられている。発光部58と受光部59の各光軸間の距離は非常に短く、発光部58から鉛直下方向に照射された光は、その光照射対象物の反射面RPで反射し、ほぼ鉛直上方向へ反射した反射光が受光部59によって受光される。図7では照射光と反射光との各光路を、模式的に斜めに延びる一点鎖線で示しているが、実際は集光レンズにより集光された略鉛直方向に延びる円柱状の光として近似できる。なお、光照射対象物の反射面RPには、用紙Pの表面、溝部71a、基準反射面76などがある。
次に発光量設定回路60A及び感度設定回路60Bを図8に基づいて説明する。図8に示すように、発光量設定回路60Aは、抵抗R1(制限抵抗)と発光量切替回路68とを含んで構成される。また、感度設定回路60Bは、抵抗R2(プルアップ抵抗)と感度切替回路69とを含んで構成される。
発光部58である発光ダイオードLDのカソードは接地され、発光ダイオードLDのアノードは抵抗R1の一端部と接続され、抵抗R1の他端部には電源電圧Vccが印加される。また、発光ダイオードLDのアノードは発光量切替回路68の一端部と接続され、発光量切替回路68の他端部には電源電圧Vccが印加される。端子部77は発光量切替回路68の制御用入力端子と接続されている。
CPU51は、端子部77を介して発光量切替回路68に制御信号を出力することにより、抵抗R1の抵抗値Rdを調整する。よって、CPU51が端子部77を介して発光量切替回路68に入力する制御信号に基づき、発光ダイオードLDからなる発光部58の発光量が調整される。
受光部59であるフォトトランジスターPTが受光すると、フォトトランジスターPTのコレクターとエミッター間には光電流Icが流れ、フォトトランジスターPTのコレクターと接続された端子部78には、出力電圧Voが検出される。
フォトトランジスターPTのエミッターは接地され、フォトトランジスターPTのコレクターは抵抗R2の一端部と接続され、抵抗R2の他端部には電源電圧Vccが印加される。また、フォトトランジスターPTのコレクターは感度切替回路69の一端部と接続され、感度切替回路69の他端部には電源電圧Vccが印加される。
端子部79は感度切替回路69の制御用入力端子と接続されている。CPU51は、端子部79を介して感度切替回路69に制御信号を入力することにより、抵抗R2の抵抗値Rを調整する。本実施形態では、感度調整部64(図3参照)が端子部77を介して発光量切替回路68に入力する制御信号に基づき、抵抗R1の抵抗値Rdを調整することにより、発光ダイオードLDからなる発光部58の発光量を調整する。
フォトトランジスターPTのコレクターには抵抗R2の抵抗値Rに応じた電流が流れる。本実施形態では、感度調整部64(図3参照)が端子部79を介して感度切替回路69に入力する制御信号に基づき、抵抗R2の抵抗値Rを調整することにより、フォトトランジスターPTからなる受光部59の感度を調整する。
制御信号は例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号である。感度調整部64は、例えばPWM発生回路(図示せず)を内蔵し、PWM信号の周期に対するパルス幅の比であるディーティ比を調整することにより、PWM発生回路から感度切替回路69に出力されるPWM信号を制御し、受光部59の感度を複数段階(例えば3段階)で切り替え可能となっている。また、感度調整部64は、PWM発生回路に与えるディーティ比を切り替えることにより、PWM発生回路から発光量切替回路68に出力されるPWM信号を制御し、発光部58の発光量を複数段階で切り替え可能となっている。本実施形態の感度調整部64は、発光部58の発光量調整と、受光部59の感度調整とを組み合わせて、紙幅センサー48の感度を調整する。なお、発光部58の発光量と受光部59の感度の各切り替え段数は、適宜設定でき、例えば2段切替え、あるいは4段以上の複数段切替えとしてもよい。また、発光量切替回路68及び感度切替回路69の各内部抵抗は、抵抗R1,R2の抵抗値Rd,Rに比べ十分小さい。
次に紙幅センサー48の汚れと感度低下との関係を図9に基づいて説明する。
図9(a)は、紙幅センサー48の発光部58及び受光部59を用いた発光・受光の様子を模式的に描いたものである。図9(a)では、発光部58から照射された光が基準反射面76で反射し、その反射光が最終的に受光部59に受光されるまでの光の経路及び光量を模式的に示している。このため、この図における照射光の光量(以下「照射光量Pd」という。)は、発光部58から照射される照射光のうち基準反射面76で反射して最終的に受光部59に受光される一部の照射光を示している。また、この図において基準反射面76で反射した反射光は、そのうち受光部59により受光される一部の反射光の光量(以下「反射光量Pi」という。)を示している。よって、この反射光量Piは、受光部59により受光される光量(受光量)に等しい。
また、図9(a)では、紙幅センサー48と基準反射面76との間に汚れが介在する様子を示している。汚れとしては、インクミストや紙粉等の浮遊物が付着した付着物による汚れが挙げられ、発光部58と受光部59のそれぞれに付着した汚れ、及び基準反射面76に付着した汚れがある。図9(a)では、発光部58から受光部59へ至る光の経路において光が通る全ての汚れをまとめて汚れとしている。
図9(a)に示すように、発光部58側の抵抗R1の抵抗値Rd、発光ダイオードLDの素子係数D、汚れ係数dとすると、照射光量Pdは、以下の式で与えられる。
Pd=Vcc/Rd×D×d …(1)
ここで、素子係数Dは、発光ダイオードLDを流れる電流と発光量との関係を示す係数である。汚れ係数dは、単位面積当たりの汚れによる光の減衰率を示す係数であり、0≦d≦1の値をとる。
また、図9(a)に示すように、基準反射面76の反射率K、照射面積Sとすると、反射光量Piは、以下の式で与えられる。
Pi=Pd×K×S×d …(2)
ここで、反射率Kとは、基準反射面76へ照射された照射光量Pdに対する反射光量Piの割合を規定する値である。
また、フォトトランジスターPTの倍率t(回路定数)とすると、光電流Icは、以下の式で与えられる。
Ic=t×Pi …(3)
この式は、紙幅センサー48が汚れて受光量Piが減少すると、光電流Icが倍数的に減少することを示している。また、受光部側の抵抗R2(プルアップ抵抗)の抵抗値Rとすると、出力電圧Voは、以下の式で与えられる。
Vo=Vcc−Ic×R …(4)
紙幅センサー48が汚れて受光量Piが減少し、光電流Icが倍数的に減少すると、出力電圧Voが著しく増加することになる。
上記(4)式は、上記(1)〜(3)の関係式を用いて、以下の式で表される。
Vo=Vcc−Vcc×(K×S×t×D×R/Rd)×d2 …(4)
本実施形態では、抵抗R1,R2の各抵抗値Rd,Rは、紙幅センサー48の感度調整により変更される。抵抗R1,R2の各抵抗値Rd,Rは、それぞれ初期値Rd0に対する変化率A(但しA>0),B(但しB>0)を用いて、初期値Rd0のA倍(Rd=A×Rd0)、初期値R0のB倍(R=B×R0)でそれぞれ表される。これらの関係から上記(4)式は以下の式で表される。
Vo=Vcc−Vcc×(K×S×t×D×B×R0/(A×Rd0))×d2 …(5)
ここで、Vcc,K,S,t,D,R0,Rd0が一定値であることから、上記(5)式中のVcc×(K×S×t×D×R0/Rd0)を、メカパラメーターMpとおくと(Mp1=Vcc×(K×S×t×D×R0/Rd0))、出力電圧Voは次式で表される。
Vo=Vcc−Mp×B/A×d2 …(6)
ここで、抵抗R1,R2の抵抗値Rd,Rの変化率A,Bの比B/Aを、抵抗変化率ΔR(=B/A)とおき、汚れ係数の二乗d2を汚れ率dc(但し0≦dc≦1)とおく。この抵抗変化率ΔR(=B/A)は、紙幅センサー48の感度の初期感度に対する倍率(以下「感度倍率ΔR」ともいう。)を表している。また、汚れ率dcは、紙幅センサー48の発光から受光までの光経路における汚れによる光量減衰率を表している。ここで、基準面電圧Vs=Vcc−Voと定義すると、基準面電圧Vsは、上記(6)式の関係を用いて、次式で表される。
Vs=Mp×ΔR×dc …(7)
図9(c)に示すグラフは、基準反射面76における紙幅センサー48の移動方向における位置xと、基準面電圧Vsとの関係を示している。電源電圧Vccから、基準反射面76を検出対象とした際の出力電圧Vo(=VL)を引いた基準面電圧Vsは、メカパラメーターMpと感度倍率ΔRと汚れ率dcとの積で表わされる。このため、汚れ率dcの変化率は基準面電圧Vsの変化率として表現可能である。
図9(c)に示すように、この基準面電圧Vs(=Vcc−Vo)は、紙幅センサー48の汚れが多くなる(つまり汚れ率dcが低下する)に連れて、その初期値Vs0から徐々に小さな値をとるようになる。
また、発光部58の発光量調整は抵抗R1の抵抗値Rdを変化させることで実現し、受光部59の感度調整は抵抗R2の抵抗値Rを変化させることで実現するため、感度倍率ΔRの変化率は、基準面電圧Vsの変化率として表現可能である。
プリンター出荷時の初期状態では、抵抗値Rd=Rd0、抵抗値R=R0であるので、感度倍率ΔR=1になる。また、汚れ率dcは汚れなしのときにdc=1、汚れが多くなるに連れて「1」から徐々に小さな値をとる。初期状態の汚れ率をdc0=1とすると、基準面電圧の初期値Vs0は、以下の式で与えられる。
Vs0=Mp …(8)
上記(7),(8)式から、基準面電圧Vsとその初期値Vs0との比であるVs/Vs0比は、次式で与えられる。
Vs/Vs0=ΔR×dc…(9)
このようにVs/Vs0比は、紙幅センサー48の感度調整により変化する感度倍率ΔR(=B/A)に応じて変化し、紙幅センサー48の汚れにより変化する汚れ率dcに応じて変化する。つまり、Vs/Vs0比は、汚れの変化の要因と感度の変化の要因で変化する。すなわち、紙幅センサー48の汚れ率dcの変化率及び感度倍率ΔRの変化率も含めて一律の比(Vs/Vs0比)として検出することが可能である。なお、本実施形態では、基準面電圧Vsが測定値の一例に相当し、基準面電圧の初期値Vs0が測定値の初期値の一例に相当する。
この手法を実現するためには、汚れの変化率及び感度(抵抗)の変化率を検出する際に基準とする反射面が必要になる。この基準反射面の制約として、用紙Pの摺動による研磨で反射率が初期値から非常に高くなったり、インクミストや紙粉等で汚れて反射率が初期値から非常に低くなったりして、検出電圧が上限側及び下限側で飽和することを回避でき、かつライフタイム内で反射率が変動しにくいことが必要になる。このため、本実施形態では、上述のように、溝部71aと上流側リブ73との中間の高さである台部75の頂面を基準反射面76として採用している。
次に紙幅センサー48の汚れ度が高くなったときに行われる感度切替えについて図10を用いて説明する。図10(a)は、用紙Pが支持台38(詳しくは上流側支持面71)を覆う位置まで搬送された状態で、キャリッジ18が移動方向Xに移動して紙幅センサー48によって用紙Pの端部を検出する場合の例を示す。図10(a)に示すグラフは、紙幅センサー48の移動方向Xにおける位置x(以下、「センサー位置x」ともいう。)と、受光部59の出力電圧Voとの関係を示す。このグラフにおいて、実線で示すグラフ線は、紙幅センサー48が汚れる前の初期段階におけるセンサー位置xと出力電圧Voとの関係を示し、破線で示すグラフ線は、紙幅センサー48が初期状態から汚れ、その感度が感度許容限界に達するほどの汚れ度になった時点におけるセンサー位置xと出力電圧Voとの関係を示す。
また、図10(b)〜図10(d)は、用紙Pの端部位置検出を行う際に受光部59に受光される前に溝部71a又は用紙Pで反射した円柱状の反射光RLの様子を示したものである。これらの図では反射光RLのうち、溝部71aで反射した光量の少ない暗部領域を濃灰色で示し、用紙Pの表面で反射した光量の多い明部領域を白色で示している。ここで、図10(b)は、初期の第1感度で紙幅センサー48が汚れる前の初期状態のときを示し、図10(c)は、紙幅センサー48の汚れ度が第1感度の許容限界に達したときを示す。また、図10(d)は、第1感度から次の第2感度に切り替えたときの状態を示す。なお、図10(b)〜(d)では、用紙Pの端部は端部検出位置を示し、図10(a)に示す実際の用紙Pの端部より少し内側へずれて描いている。
図10(b)において用紙Pの外側を検出対象としているとき(反射光RLが濃灰色のとき)、溝部71aによって反射された光量の少ない反射光RLを受光した受光部59からは高い出力電圧VH1が出力される。そして、反射光RLのうち用紙Pによって反射された領域が半分を占めることになると、出力電圧Voが出力電圧VH1の1/2の閾値VS1を下回ることになって用紙Pの第1端部(図10(b)における左側端)が検出される。また、用紙Pを検出対象としている区間では、用紙Pの表面で反射した光量の多い反射光RLを受光した受光部59から閾値VS1よりも十分小さな出力電圧VP(用紙電圧)が出力される。そして、反射光RLのうち用紙Pによって反射された領域が半分を占めることになると、出力電圧Voが閾値VS1を上回ることになって用紙Pの第2端部(図10(b)における右端部)が検出される。
その後、紙幅センサー48の汚れ度が高くなると、反射光RLの光量が相対的に少なくなる。このため、図10(c)に示すように、反射光RLのうち用紙Pによって反射された領域が半分を占めることになっても、出力電圧Voが閾値VS2を下回らず、8割近く占めることになってはじめて、図10(a)における破線で示すように出力電圧Voが閾値VS2を下回ることになる。このため、紙幅センサー48の汚れが進むと、用紙Pの端部を検出した位置が用紙Pの幅方向(つまり移動方向X)の内側へシフトする。このシフトした量が紙幅センサー48の汚れ度の違いによる検出誤差となる。
用紙Pの端部を検出した端部検出位置と、用紙Pの実際の端部の位置との間には位置ずれ量が存在する。そして、位置ずれ量は、紙幅センサー48の汚れ度に応じて変化する。本実施形態では、用紙Pの端部検出位置をこの位置ずれ量分に相当する補正量dxで補正する。不揮発性メモリー54には、基準面電圧Vs(=Vcc−Vo)をその初期値Vs0で割ったVs/Vs0比と補正量との対応関係が用紙種別に設定されたテーブルデータTD(図11を参照)が記憶されている。
図10(b)に示す汚れ度の低い初期状態では、出力電圧Voが閾値VS1を横切ったことで検知された用紙Pの端部検出位置を、Vs/Vs0比を基にテーブルデータTDを参照して取得される補正量dx1だけ補正し、用紙Pの端部の正確な検出位置を取得する。また、図10(c)に示す汚れ度の高い状態では、出力電圧Voが閾値VS1を横切ったことで検知された用紙Pの端部検出位置を、Vs/Vs0比を基にテーブルデータTDを参照して取得される補正量dx2だけ補正し、用紙Pの正確な端部位置を取得する。ここで、本例では、移動方向Xの位置は、ホーム位置から反ホーム位置へ向かう方向がプラス方向になるようにその位置座標が設定されている。このため、ホーム位置側の第1端部の検出位置を補正する場合の補正量dx10,dx20は負の値をとり、反ホーム位置側の第2端部の検出位置を補正する場合の補正量dx11,dx21は正の値をとる。
一方、感度設定処理は、プリンター11の電源投入時、あるいは累積印刷枚数が設定枚数に達した時などの所定時期にキャリッジ18をホーム位置から設定位置まで移動させ、発光部58からの照射光を基準反射面76で反射させた反射光を受光した受光部59によって出力される出力電圧VLを取得する。また、このときのキャリッジ18の移動過程で紙幅センサー48が溝部71aと対向する位置において、発光部58からの照射光を溝部71aで反射させた反射光を受光した受光部59によって出力される出力電圧VHを取得する。そして、感度調整部64は、出力電圧VHと出力電圧VLとの差ΔV(=VH−VL)を感度判定値として求め、この感度判定値ΔVが設定値b未満となり感度切替条件を満たしたことをもって、汚れにより低下した測定感度が許容限界を超えたと判断する。そして、感度調整部64は、ΔV<bが成立して測定感度が許容限界を超えたと判断すると、感度設定回路60Bの設定値を変更して受光部59の感度を一段高い感度に切り替える。なお、本実施形態では、出力電圧VLが第1出力値の一例に相当し、出力電圧VHが第3出力値の一例に相当する。また、ΔVが測定感度の一例に相当する。
図10(b)に示すように汚れ度が低い初期状態、及び汚れ度が許容限界以下であるうちは、図10(a)に示すように、出力電圧VH1と出力電圧VL1との差ΔV1は、設定値b以上になる(ΔV1≧b)。しかし、図10(c)に示すように汚れ度が許容限界を超えると、図10(a)に示すように、出力電圧VH2と出力電圧VL2との差ΔV2は、設定値bよりも小さくなる(ΔV2<b)。そして、受光部59の感度が一段高い感度に切り替えられることで、図10(d)に示すように、反射光RLのうち用紙Pによって反射された反射光の領域が半分を占めることになった時点で、出力電圧Voが閾値VSを横切ることになって用紙Pの端部が検出される。
補正量設定部62は、プリンター11の電源投入時に初期処理の1つとして補正量設定処理を行う。図11は補正量設定部62が補正量設定処理において参照するテーブルデータを示す。テーブルデータTDは、Vs/Vs0比と補正量dxとの対応関係を示すものである。ここで、補正量dxは、基準反射面76からの反射光を受光部59によって受光し、受光部59から出力された出力電圧VLを検出し、支持台38に置かれた用紙Pにおける実際の端部の位置と、図3における端部位置検出部65によって検出された用紙Pの端部検出位置Xdとの位置ずれ量を計測したものである。
図11に示すテーブルデータTDには、用紙Pの種類(用紙種)ごとに、Vs/Vs0比と補正量dxとの対応関係が設定されている。図11の例では、用紙種として「普通紙」と「光沢紙」とがある。もちろん、テーブルデータTDに用意される用紙種の数は3種以上としてもよい。
図11に示すテーブルデータTDは参照データとして不揮発性メモリー54に記憶されている。補正量設定部62は、紙幅センサー48を設定位置に配置して基準反射面76からの反射光を受光した受光部59よって出力される出力電圧VLを取得すると、電源電圧Vccから出力電圧VLを引いて基準面電圧Vs(=Vcc−VL)を計算する。さらに補正量設定部62は、初期値Vs0を用いてVs/Vs0比を計算し、さらにテーブルデータTDを参照してVs/Vs0比に対応する補正量dxを求める。このとき、Vs/Vs0比がテーブルデータTD中に存在しない場合、補正量設定部62は、そのVs/Vs0比を挟む両側2つのVs/Vs0比に対応する2つの補正量を用いて補間計算を行って補正量を求める。なお、感度切替えが行われてもその前後でテーブルデータTDは共通の1つが使用される。
ここで、テーブルデータTDについて説明する。図12のグラフは、基準面電圧Vsと補正量dxとの対応関係を示す。白丸が感度変更前、黒丸が感度変更後の基準面電圧Vsと補正量dxとの対応関係を示している。白丸で示した感度変更前の点(○)は実線で示すようにほぼ直線上に並び、黒丸で示した感度変更後の点(●)は破線で示すようにほぼ直線上に並ぶ。図12のグラフから分かるように、白丸の点群が並ぶ直線(実線)と、黒丸の点群が並ぶ直線(破線)は、傾きや接片が異なる。このため、仮に基準面電圧Vsに対応する補正量dxを求める構成を採用したとすると、感度切替えの前後で、参照するテーブルデータを切替える必要がある。
図13のグラフは、Vs/Vs0比と補正量dxとの対応関係を示すものである。このグラフから分かるように、感度変更前のVs/Vs0比に対応する補正量dxの点群(白丸)と、感度変更後のVs/Vs0比に対応する補正量dxの点群(黒丸)とは、同一の曲線上に並ぶ。よって、本実施形態の補正量設定部62は、紙幅センサー48の受光部59の感度及び発光量が変更され、紙幅センサー48の感度が切り替えられても、図11に示す同一のテーブルデータTDを参照してVs/Vs0比に対応する補正量dxを求める。このため、紙幅センサー48の異なる感度毎に、補正量設定用の参照データを設ける必要がないうえ、感度切替えの度に参照すべき参照データを変更する必要がない。
図14に示すグラフは、図8における感度切替回路69の端子部79に制御信号を印加して受光部59の感度を切り替える処理を説明するものである。このグラフの横軸は光電流Ic、縦軸が出力電圧Voである。図13において実線で示す出力電圧VHは、発光部58からの照射光が溝部71aで反射した反射光を受光した受光部59によって出力される出力電圧である。また、一点鎖線で示す出力電圧VPは、発光部58からの照射光が用紙Pで反射した反射光を受光した受光部59によって出力される出力電圧である。さらに、破線で示す閾値VSは、出力電圧VHに所定の定数a(但し0<a<1)を乗算した値として設定される。本実施形態では、定数aを例えば「0.5」としている。二点鎖線で示す出力電圧VLは、図4、図6及び図9等に示す基準反射面76に対して発光部58から光を照射し、基準反射面76で反射した反射光を受光した受光部59によって出力される出力電圧である。
紙幅センサー48にインクミストや紙粉等が付着して汚れ度が高くなるに連れて光電流Icは減少する。そして、図14に示すグラフから分かるように、光電流Icが減少するに連れて、溝部71aを検出した出力電圧VH、及び基準反射面76を検出した出力電圧VLは所定の傾き(勾配)で徐々に大きくなる。このとき、出力電圧VHの傾きよりも、出力電圧VLの傾きの方が大きな傾き角(急勾配)になるので、汚れ度が増すに連れて、感度判定値ΔV(=VH−VL)は徐々に小さくなる。受光部59の感度の許容限界を決める設定値bは、用紙Pを検出した出力電圧VP(用紙電圧)がほぼ一定の値から上昇し始めて閾値VSよりも十分小さな所定の値に達した時点の差ΔVに等しい値に設定されている。
図14のグラフにおいて縦方向に延びる破線は受光部59の感度を切り替える感度切替位置を示す。急激に増加した出力電圧VPが閾値VS以上の値をとる領域では、常に出力電圧VPが閾値VS以上の値をとるため、用紙Pの端部を検出できなくなる。このため、急激に増加し始めた出力電圧VPが閾値VSよりも十分小さな値となる光電流Icの範囲では受光部59を同じ感度で使用し、その範囲よりも光電流Icが小さくなると、受光部59の感度を一段高い側に切り替えることで、用紙Pの端部を検出できるようにしている。感度判定値ΔV(=VH−VL)が設定値bよりも小さくなると(ΔV<b)、紙幅センサー48の受光部59の感度を一段高い側に切り替える。このため、出力電圧VPが閾値VSよりも十分小さな値をとる感度の範囲で、紙幅センサー48を使用できる。
ここで、1回目の感度切替えが行われるまでの光電流Icの範囲B1で使用される感度が、初期に設定されている第1感度、1回目の感度切替えから2回目の感度切替えが行われるまでの範囲B2で使用される感度が第2感度、さらに2回目の感度切替えから3回目の感度切替えが行われるまでの範囲B3で使用される感度が第3感度となっている。光電流の範囲B2における最小の光電流Icは、光電流の範囲B1における最小の光電流Icよりも小さい。さらに光電流の範囲B3における最小の光電流Icは、光電流の範囲B2における最小の光電流Icよりも小さい。
そして、このように感度切替えが行われることで、紙幅センサー48の汚れ度が高くなって受光部59の光電流Icが低下しても、用紙Pを検出する出力電圧VPが閾値VSよりも十分小さな値となる光電流Icの範囲(つまり汚れ度の範囲)を、光電流Icが小さくなる側(つまり汚れ度の大きくなる側)へ広げることができる。このため、受光部59から出力される出力電圧VPと閾値VSとを比較し、用紙Pの端部を検出しうる範囲を広げることができる。なお、本実施形態では、受光部59の感度が最終の第3感度のときに、感度判定値ΔVが設定値bよりも小さくなると(ΔV<b)、制御部50は、発光量設定回路(図示せず)の設定値を変更して発光部58の発光量を一段多くなる側に切り替える。このように受光部59の複数段階の感度切替えを先に行い、感度切替えを全て終了した後に発光部58の発光量を切り替える手順を踏むのは、発光部58の発光量を多くすることによる消費電力の増加を極力避けるためである。
次に本実施形態のプリンター11の作用を図15〜図17に示すフローチャートに従って説明する。まず図15に示す補正量設定処理ルーチンについて説明する。プリンター11の起動中における所定時期になると、補正量設定部62が補正量設定処理を実行される。本実施形態では例えばプリンター11の電源投入時に実施される初期処理のうちの1つとして補正量設定部62が補正量設定処理を実行する。
ステップS1では、基準面電圧Vsを測定する。詳しくは、キャリッジモーター35を駆動して、紙幅センサー48が基準反射面76と対向する設定位置に到達するまでキャリッジ18を移動させる。リニアエンコーダー39からの入力パルスのエッジの数を計数するカウンターの計数値に基づくキャリッジ18の移動方向Xにおける位置を検出する。キャリッジ18が設定位置に到達し、カウンターの計数値が設定位置に相当する設定値に達すると、基準反射面76での反射光を受光した受光部59によって出力される出力電圧Vo(つまりVL)を取得し、さらにVcc−Voを計算して基準面電圧Vsを取得する。
ステップS2では、初期測定であるか否かを判定する。すなわち、プリンター11を購入後、初めて電源を投入し、初めてステップS1の基準面電圧の測定が行われたか否かを判断する。初期測定である場合(S2で肯定判定)はステップS3に進み、初期測定でない場合はステップS4に進む。
ステップS3では、測定した基準面電圧Vsを基準面電圧の初期値Vs0として保存する。初期値Vs0は、記憶部の一例としての不揮発性メモリー54の所定記憶領域に記憶される。その後、初期測定のときは当該ルーチンを終了する。
一方、初期測定ではない(つまり2回目以降の測定である)場合は、ステップS4において、Vs/Vs0比を計算する。Vs/Vs0比は紙幅センサー48の汚れ度が極めて低いうちは、Vs/Vs0≒1(但しVs/Vs0≦1)となり、初期段階から紙幅センサー48の汚れが進むに連れて、Vs/Vs0比は1未満の値をとりながら徐々に小さくなる。
次のステップS5では、補正量dxを求める。詳しくは、補正量設定部62は、テーブルデータTDを参照して、Vs/Vs0比に対応する補正量dxを取得する。この場合、テーブルデータTD中に該当するVs/Vs0比の値が存在しないときは、そのVs/Vs0比の値を間に挟む両側の値(両隣のVs/Vs0比の値)を用いて補間計算を行って、そのVs/Vs0比に対応する補正量dxを取得する。もちろん、参照データとして計算式を採用することもでき、この場合、補正量dxを算出するために不揮発性メモリー54に記憶された計算式dx=f(x)の変数xとしてVs/Vs0比の値を代入して補正量dxを算出する。そして、補正量設定部62は、求めた補正量dxを不揮発性メモリー54の所定記憶領域に保存(記憶)する。この保存された補正量dxは、その後、用紙Pの端部の位置を検出する際に、端部位置検出部65が検出した端部の位置を、端部位置補正部66が補正するときに使用される。
次に、用紙Pの端部の位置を検出する用紙端部位置検出処理を図16及び図17に基づいて説明する。
制御部50は、図16にフローチャートで示す用紙端部位置検出処理ルーチン及びそのサブルーチンに相当する図15に示す感度設定処理ルーチンのプログラムを実行する。プリンター11を購入後初めて電源を投入した初期状態では、受光部59の感度は第1感度にある。第1感度は相対的に低めの感度であるため、受光部59の感度が高過ぎることに起因する誤検出が抑制される。
ステップS11では、感度設定処理を行う。すなわち、制御部50内の感度調整部64は、紙幅センサー48の感度を設定する。本実施形態では、例えばユーザーが電源スイッチ23を操作してプリンター11の電源が投入された時点、及びプリンター11の起動中に累積印刷枚数が設定枚数(設定値)に達した時点に、感度調整部64は感度設定処理を行う。この感度設定処理の詳細は後述する。
次のステップS12では、紙幅センサー48が上流側支持面71に対向する位置になるようにキャリッジ18を移動する。詳しくは、制御部50は、キャリッジモーター35を駆動して、紙幅センサー48が上流側支持面71の溝部71aに対向する位置になるようにキャリッジ18を移動する。なお、このときのキャリッジ18の移動は、ステップS1における感度設定処理の際のキャリッジ18の移動と兼用してもよい。
ステップS3では、上流側支持面71の溝部71aからの反射光による紙幅センサー48の出力電圧VHを取得する。
ステップS14では、閾値VSを設定する。すなわち、閾値VSを、VS=a・VHに設定する。本実施形態では一例としてa=0.5を採用しているが、定数aは、0<a<1の範囲内の適宜な値を採用できる。
次のステップS15では、上流側支持面71を覆う位置まで用紙Pを搬送するとともにキャリッジ18を移動させる。制御部50は、例えば平面視において用紙Pの先端が紙幅センサー48の移動経路を横切ったタイミングで、キャリッジモーター35の駆動を開始し、キャリッジ18をホーム位置から反ホーム位置に向かって移動させる。このとき、キャリッジ18は、紙幅センサー48が用紙Pの幅方向両端を通過するように移動する。
ステップS16では、紙幅センサー48の受光部59から出力された出力電圧Voを取得する。すなわち、キャリッジ18の移動中において紙幅センサー48の出力電圧Voを逐次取得する。
次のステップS17では、出力電圧Voが閾値VSを横切ったか否かを判定する。つまり、端部検出部63は、出力電圧Voが閾値VS未満になったか、又は出力電圧Voが閾値VSを超えたか否かを判断する。出力電圧Voが閾値VSを横切っていなかった場合は、ステップS15に戻り、キャリッジ18の移動を継続する。そして、キャリッジ18を移動させながら、ステップS17で肯定判定となるまで、所定のサイクル時間(例えば10マイクロ秒〜100ミリ秒の範囲内の所定時間)毎にステップS15及びS16の処理を行う。そして、ステップS17において、出力電圧Voが閾値VSを横切ったと判定すると、ステップS18に進む。なお、ステップS15における用紙の搬送は、用紙Pが上流側支持面71を覆う所定位置に達したら停止される。
ステップS18では、用紙Pの端部検出位置Xdを取得する。本実施形態では、出力電圧VPが閾値VSを横切ったときのカウンターの計数値から把握されるキャリッジ18の位置と、キャリッジ18の位置と紙幅センサー48の取付位置までの既知の距離とを用いて紙幅センサー48の位置、つまり用紙Pの端部検出位置Xdを算出する。
ステップS19では、端部検出位置Xdを補正量dxで補正して端部位置Xeを取得する(Xe=Xd+dx)。すなわち、不揮発性メモリー54の所定領域には、プリンター11の電源投入時に実行された補正量設定処理(図15)において求められた補正量dxが記憶されている。端部位置補正部66は、不揮発性メモリー54の所定記憶領域から補正量dxを読み出し、用紙Pの端部検出位置Xdを補正量dxに基づき補正することにより、用紙Pの端部位置Xeを計算する(Xe=Xd+dx)。このとき、端部位置補正部66は、不揮発性メモリー54の所定記憶領域から、用紙Pの第1端部と第2端部のうちそのとき検出した端部に対応する補正量dxを読み出し、端部検出位置Xdをその補正量dxで補正して用紙Pの端部位置Xeを取得する。なお、ステップS19で第1端部の端部位置Xeが取得されると、その後、ステップS15〜S19の処理を第2端部についても同様に行い、ステップS9において第2端部の端部位置Xeが取得される。
こうして紙幅センサー48の汚れ度が高くなって受光部59の受光量が低減し、用紙Pの端部検出位置Xdと用紙Pの実際の端部位置との幅方向の位置ずれ量が変化しても、そのときの汚れ度から決まる紙幅センサー48の感度に応じた補正量dxによる補正が施される。この結果、用紙Pの端部位置Xeを比較的正確に検出できる。
次にステップS11の感度設定処理ルーチンの詳細を説明する。この感度設定処理は、上流側支持面71が用紙Pに覆われていない状態で行われる。
まずステップS21では、紙幅センサー48が上流側支持面71に対向する位置になるようにキャリッジ18を移動する。すなわち、制御部50は、キャリッジモーター35を駆動し、キャリッジ18を例えばホーム位置から反ホーム位置へ向かって移動させる。このキャリッジ18の移動過程において制御部50は紙幅センサー48を作動させる。
ステップS22では、上流側支持面71の溝部71aからの反射光による紙幅センサー48の出力電圧VHを取得する。例えばキャリッジ18の移動中に紙幅センサー48が溝部71aに対向する位置にあるときの出力電圧VHを取得する。例えばキャリッジ18の異なる位置で複数個の出力電圧VHを取得し、その平均値を出力電圧VHとしてもよい。もちろん、紙幅センサー48が溝部71aに対向する位置でキャリッジ18を停止させた状態で出力電圧VHを取得してもよい。
次のステップS23では、キャリッジ18を設定位置へ移動させる。例えばステップS11でキャリッジ18をホーム位置から反ホーム位置へ向かって移動させる過程で、出力電圧VHの取得(S12)を終えると、そのままキャリッジ18の移動を継続し、キャリッジ18を設定位置まで移動させる。
ステップS24では、基準反射面76からの反射光による紙幅センサー48の出力電圧VLを取得する。キャリッジ18が設定位置に到達して停止したときには、紙幅センサー48が基準反射面76と対向する状態にある。感度調整部64は、キャリッジ18が設定位置に停止すると、紙幅センサー48の出力電圧VLを取得する。
ステップS25では、感度判定値VH−VLを計算する。つまり、感度判定値ΔV(=VH−VL)を計算する。
次のステップS26では、紙幅センサー48の劣化判定(汚れ判定)を行う。詳しくは、感度調整部64は、出力電圧VHと出力電圧VLとの差分で示される感度判定値ΔV(=VH−VL)が設定値b未満(ΔV<b)であるか否かを判断する。ΔV<bが不成立であって、紙幅センサー48の感度が、感度切替えが必要な程度に低下していなければ、紙幅センサー48の感度を切り替えることなく当該ルーチンを終了する。一方、ΔV<bが成立し、紙幅センサー48の感度が、感度切替えが必要な程度に低下していると判定すると、ステップS27に進む。なお、本実施形態では、このステップS26の判定処理を実行するCPU51により、感度が許容限界値を超えたか否かを判定する判定部の一例が構成される。
ステップS27では、紙幅センサー48の感度を切り替える。すなわち、感度調整部64は、感度設定回路60Bの設定値を変更し、感度設定回路60Bへ出力する制御信号(PWM信号)を変更後の設定値に応じたデューティ比に変更することで、紙幅センサー48の受光部59の感度を現状の感度より一段高い感度に切り替える。こうして図13に示すように、感度判定値ΔV(=VH−VL)が設定値b未満(ΔV<b)になる度に、紙幅センサー48の感度が一段高い感度に切替えられる。この結果、紙幅センサー48の感度を汚れが進んだ適切な時期に切り替えることができる。
本実施形態では、紙幅センサー48の感度が切り替えられても、補正量設定部62によって、同一のテーブルデータTDを使用して、Vs/Vs0比に対応する補正量dxが設定される。
以上詳述したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)基準反射面76を検出した際の出力電圧VLを電源電圧Vccから差し引いた電圧Vsをその初期値Vs0で割ってVs/Vs0比を求め、Vs/Vs0比と補正量(位置ずれ量)との対応関係を示すテーブルデータTDを参照して、Vs/Vs0比に対応する補正量dxを取得する。そして、出力電圧VPと閾値VSとの比較により検出した用紙Pの端部検出位置Xdを、補正量dxを用いて補正することにより用紙Pの端部位置を取得する。このため、例えば特許文献2、3に記載の技術のように、支持台のリブとリブ以外の部分(溝部)との各検出電圧の比に基づいて閾値を設定する構成に比べ、用紙Pの端部位置Xeを比較的精度高く検出できる。
(2)紙幅センサー48の感度を切り替えた前後でも、Vs/Vs0比を基に同一のテーブルデータTDを使用して補正量dxを取得できる。つまり、紙幅センサー48の感度切替えの前後で、使用すべきテーブルデータTDを切り替える必要がない。よって、感度切替えが行われても、感度切替え前と同様のテーブルデータTDを使用した同一の処理を行えば適切な補正量dxを取得できる。
(3)基準面電圧Vs=MP×ΔR×dcの関係から、Vs/Vs0=ΔR×dcで表されるVs/Vs0比は、感度調整のパラメーターであるΔR(感度倍率)と、汚れのパラメーターである汚れ率dc(光量減衰率)との積で示される。このため、Vs/Vs0比と補正量dxとの対応関係を示すテーブルデータTDは、紙幅センサー48の汚れが進んで感度切替えが行われたり汚れ率が変化したりしても1つあればよく、同じテーブルデータTDを参照してそのときのVs/Vs0比に応じた補正量dxを取得できる。
(4)テーブルデータTDを不揮発性メモリー54に記憶し、Vs/Vs0比を基にテーブルデータTDを参照して補正量dxを取得する構成なので、補間演算を除けば、例えば直線近似式を用いた場合における計算処理を行わなくて済み、比較的簡単な処理で補正量dxを取得できる。
(5)受光部59の感度を優先して調整し、受光部59の感度が許容限界を超えた後、発光部58の発光量を調整することで紙幅センサー48の感度切替えを行う。よって、感度調整で発光部58の発光量を多くする使用の機会を極力少なくすることができ、ひいては発光部58の寿命を長くすることができる。
(6)電源投入時及び累積印刷枚数が設定枚数に達したときに、補正量設定処理を行うので、頻繁に補正量設定処理が行われることがない。このため、補正量設定処理が印刷スループットを低下させる原因になりにくい。
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図18及び図19に基づいて説明する。本実施形態では、Vs/Vs0比が、Vs/Vs0=1になるように紙幅センサー48の感度を調整する。
図18に示すように、前記第1実施形態における補正量設定部62に替え、パラメーター取得部の一例としてのパラメーター算出部67を備えている。本実施形態のパラメーターは、紙幅センサー48の感度を調整するためのパラメーターを指し、本例では具体的には抵抗R1,R2の抵抗値R,Rdを指す。制御部50内の感度調整部80は、感度切替回路69に感度設定値を設定し、その感度設定値に応じた例えばデューティ比の制御信号を出力して抵抗R2の抵抗値Rを調整することにより、受光部59の感度を調整する。ここで、抵抗値Rの調整で対応できる感度には限界があり、感度調整用のパラメーターとして算出された抵抗値Rが、感度の許容限界に相当する許容限界値Rmax以内にあるうちは、受光部59の感度調整で対応する。そして、感度調整用のパラメーターとして算出された抵抗値Rが許容限界値Rmaxを超えると、抵抗値R=Rmaxとし、抵抗値RをRmaxとしたうえで、必要な感度とするために必要な抵抗R1の抵抗値Rdを算出する。そして、抵抗値Rdを調整して発光部58の発光量を調整する。このように受光部59側の感度設定回路60B内の抵抗R2の抵抗値Rを調整して受光部59の感度調整を優先して実施し、抵抗値Rが許容限界値Rmaxを超えて受光部59側の感度が許容限界を超えると、次に発光部58側の発光量設定回路60A内の抵抗R1の抵抗値Rdを調整して発光部58の発光量を調整することで、紙幅センサー48の感度を調整する。
本実施形態の感度調整部64は、発光量切替回路68を制御することで抵抗R1の抵抗値Rdを連続的に調整することが可能となっており、これにより紙幅センサー48の感度を連続的に調整できる。また、感度調整部64は、感度切替回路69を制御することで抵抗R2の抵抗値Rを連続的に調整することが可能となっており、これにより紙幅センサー48の感度を連続的に調整できる。また、本実施形態では、第1実施形態にはあった補正量設定部62を備えていないので、不揮発性メモリー54にはテーブルデータTDが記憶されておらず、制御部50内の補正量設定部62は、図15に示す補正量設定処理を実行しない。
次に本実施形態のプリンター11の作用を図16及び図19に基づいて説明する。
本実施形態では、第1実施形態と同様に図16に示す用紙端部位置検出処理を実行する。このとき、ステップS11における感度設定処理の内容が異なり、本実施形態では図19に示す感度設定処理を実行することにより紙幅センサー48の感度設定を行う。図16の用紙端部位置検出処理については第1実施形態と同様なので詳細な説明は省略し、以下に、図19の感度設定処理を説明する。
まずステップS31では、基準面電圧Vsを測定する。すなわち、制御部50はキャリッジモーター35を駆動させてキャリッジ18を設定位置まで移動させ、その設定位置で停止した状態で、発光部58が基準反射面76に照射した光の反射光を受光した受光部59の出力電圧Vo(つまり出力電圧VL)を取得する。そして、Vs=Vcc−Voを計算し、基準面電圧Vsを取得する。
ステップS32では、初期測定であるか否かを判定する。すなわち、プリンター11を購入後初めて電源を投入し、初めてステップS1の基準面電圧の測定が行われたか否かを判断する。初期測定である場合(S2で肯定判定)はステップS33に進み、初期測定でない場合はステップS34に進む。
ステップS33では、測定した基準面電圧Vsを基準面電圧の初期値Vs0として保存する。初期値Vs0は、例えば不揮発性メモリー54の所定記憶領域に記憶される。
一方、初期測定ではない(つまり2回目以降の測定である)場合は、ステップS34において、Vs/Vs0比を計算する。Vs/Vs0比は紙幅センサー48の汚れ度が極めて低いうちはVs/Vs0≒1(但しVs/Vs0≦1)となり、初期段階から紙幅センサー48の汚れが進むに連れて、Vs/Vs0比は1未満の値をとりながら徐々に小さくなる。ここまでのステップS31〜S34の各処理は、第1実施形態の図15におけるステップS1〜S4の各処理に同じである。
次のステップS35では、Vs/Vs0比がVs/Vs0=1になるような抵抗値Rを計算する。詳しくは、Vs/Vs0比の逆数を計算して定数Nを求め、抵抗値RoをN倍することで、抵抗値Rを計算する(R=N・Ro)。
次のステップS36では、抵抗値Rが許容限界値Rmaxを超えたか否かを判断する。R>Rmaxが不成立(つまりR≦Rmax)であればステップS37に進み、一方、R>Rmaxが成立した場合はステップS38に進む。なお、本実施形態では、このステップS36の判定処理を実行するCPU51により、パラメーターが許容限界値を超えたか否かを判定する判定部の一例が構成される。
ステップS37では、抵抗R1の抵抗値Rdをその初期値Rd0に設定する(Rd=Rd0)。
ステップS38では、抵抗値R=Rmaxとし、この条件下で、Vs/Vs0=1になるような抵抗値Rdを計算する。詳しくは、抵抗値Rmax=Bmax×R0で表される。前記(9)式の関係から、ΔR=Bmax/Aであることを用いて、Vs/Vs0=ΔR×dc=Bmax/A×dcであるので、Vs/Vs0=1にするためには、Bmax/A×dc=1を満たすAを算出する。よって、A=Bmax×dcと求められ、抵抗R1の抵抗値Rdは、Rd=Bmax×dc×Rd0とする。
こうしてパラメーター算出部67がステップS34〜S38の処理を行うことで、本例のパラメーターである抵抗値R,Rdが算出される。
次のステップS39では、抵抗値R,Rdを設定して紙幅センサー48の感度を調整する。つまり、感度調整部80は、発光量切替回路68に抵抗値Rdに応じた制御信号を出力して抵抗R1を抵抗値Rdに設定するとともに、感度切替回路69に抵抗値Rに応じた制御信号を出力して抵抗R2を抵抗値Rに設定する。この結果、発光部58が抵抗値Rdに応じた発光量に調整されるとともに、受光部59が抵抗値Rに応じた感度に調整される。こうして紙幅センサー48の感度が調整される。このときの感度は、Vs/Vs0=1を満たす。つまり、基準面電圧Vsがその初期値Vs0と同じ値になる感度に調整される。
よって、紙幅センサー48が汚れても、図16の用紙端部位置検出処理におけるステップS17で出力電圧Voが閾値VSを横切ったときに(S17で肯定判定)、取得される用紙Pの端部検出位置Xd(S18)は、常に用紙Pの実際の端部位置からの位置ずれ量が一定になる。このため、ステップS19では、端部検出位置Xdを予め設定された一定の補正量dxで補正して端部位置Xeを取得する(Xe=Xd+dx)。
この第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(7)Vs/Vs0比が「1」になるような抵抗値Rを求め、求めた抵抗値Rを設定して紙幅センサー48の感度を調整する。よって、端部検出位置Xdから端部位置Xeを算出する際に使用する補正量dxを一定とすることができる。このため、テーブルデータTDを用意する必要がないうえ、補正量設定処理を省くことができる。このため、補正量dxが汚れ度に応じて変化する第1実施形態のような構成に比べ、用紙端部位置検出処理を比較的簡単な処理とすることができる。
(8)抵抗値Rが許容限界値Rmax以下で、受光部59の感度が許容限界を超えないうちは受光部59の感度を優先して調整する。そして、抵抗値Rが許容限界値Rmaxを超え、受光部59の感度が許容限界を超えると、発光部58の感度調整を行う。よって、発光部58の寿命を長くすることができる。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・Vs/Vs0比が「1」になるような定数J(=Vs0/Vs)を算出し、用紙Pの端部位置を検出する際に紙幅センサー48から取得した出力電圧VoをJ倍して出力電圧Vrに補正する。そして、補正後の出力電圧Vrが閾値VSを横切ったときの端部検出位置Xdを検出する。この構成でも、常に補正量dxを一定にできるので、端部検出位置Xdを一定の補正量dxで補正すれば端部位置Xeを取得できる。なお、VsとVs0の比は、Vs/Vs0比の逆数のVs0/Vs比としてもよい。
・前記第1実施形態ではテーブルデータTDを使用したが、図13のグラフ中のプロット点を例えば最小二乗法などの公知の方法で直線近似した直線の式 dx=m・(Vs/Vs0)+n (ここで、mは係数、nは定数)を不揮発性メモリー54に記憶し、この式にVs/Vs0比の値を代入して補正量dxを算出する方法を採用することもできる。もちろん、近似式は直線で近似する一次式に限定されず、曲線を近似する二次式でもよい。
・初期値は、初回(1回目)に測定された第2出力電圧に限定されない。補正情報を作成するときに基準とされる第2出力電圧であって、その後の汚れ度合をみる基準となるものであればよく、初回には限定されない。例えば10回目から20回目の測定値の平均値を第2出力値の初期値としてもよい。
・前記実施形態では受光部の感度を切り替える構成としたが、感度切替え機能を備えていない構成としてもよい。この場合も、補正量を比較的簡単に取得できるので、媒体の検出位置を比較的簡単に取得することはできる。
・パラメーターは抵抗値に限定されない。感度を変更できるパラメーターであればよい。パラメーターは例えば電圧値又は電流値でもよく、電圧値又は電流値を変更して感度を調整してもよい。
・閾値VS=a・VHと設定したが、閾値の設定方法は適宜変更できる。例えば出力電圧VHに比例しない一定の閾値を設定してもよい。また、例えば特許文献2、3に記載のように、支持台のリブと溝部とを光学式センサーにより検出した各々の出力電圧の比に応じた閾値を設定してもよい。
・印刷中にキャリッジ18が通る位置の下方に基準反射面76を配置したが、基準反射面76の位置は、移動方向Xにおいて液体噴射領域PAの外側となる位置でもよい。
・基準反射面は支持台に一体形成される構成に限定されず、カバーが開くとその下側奥からキャリッジに接近する方向へ上昇する構成でもよい。さらに基準反射面は、紙幅センサーが用紙等の媒体と対向する方向と同じ方向に対向しうる位置に配置されることに限定されない。例えばキャリッジ18に紙幅センサーを角度変更可能に設け、支持台以外の位置、例えばプリンターの本体フレームの側壁面上に鉛直面となる基準反射面を設けてもよい。この場合、紙幅センサーの向きを変更して基準反射面からの反射光を受光した受光部の出力電圧VLを取得すればよい。
・感度設定処理の実施時期は、電源投入時などに限定されず、印刷中であってもよい。例えば、印刷する頁が切り替わる給排紙時や、液体噴射ヘッドのノズルをメンテナンスするためにキャリッジを移動経路の端部に移動させて廃液部にインクを噴射するフラッシング時に感度設定処理を行ってもよい。また、電源遮断時の終了処理の中で感度設定処理を行ってもよい。さらに累積印刷時間が設定時間に達する度に感度設定処理を行ってもよい。
・媒体の幅方向の端部位置を検出する光学式センサーは、紙幅の取得や、液体噴射ヘッド19の移動方向X(主走査方向)における噴射開始位置(印刷開始位置)の決定を目的とする紙幅センサーに限定されない。例えば、単に媒体の幅方向における端部位置の取得を目的としてもよい。また、媒体のスキュー(斜行)の検出を目的としてもよい。さらに光学式センサーは、媒体の搬送方向の端部の検出を目的とするものであってもよい。この場合、キャリッジを媒体の搬送前の搬送エリア内に配置し、その後、媒体をキャリッジの下方を通過するように搬送することで、光学式センサーにより媒体の搬送方向の端部を検出する。
・紙幅センサー48の検出回路は、受光部59の受光量が多いときに出力電圧Voが小さくなり、受光量が少ないときに出力電圧Voが大きくなる回路構成であったが、これとは逆に、受光部59の受光量が多いときに出力電圧Voが大きくなり、受光量が少ないときに出力電圧Voが小さくなる回路構成を採用してもよい。この場合、受光部59の出力電圧VLを基準面電圧とし、VL/VL0比を採用し、VL/VL0比に対応する補正量dxを求めたり、VL/VL0=1になるような抵抗値を計算したりする。
・図3における制御部50(コンピューター)内の各機能部を、プログラムを実行するCPUにより主にソフトウェアで実現したが、例えば集積回路により各機能部をハードウェアで実現したり、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現したりしてもよい。
・液体噴射装置はプリンターに限定されず、プリンター機能の他にスキャナー機能及びコピー機能などを含む複数機能を備えた複合機でもよい。
・プリンター(印刷装置)は、シリアルプリンターに限定されず、ラテラル式プリンター、ラインプリンター、ページプリンターでもよい。例えばラインプリンターの場合、キャリッジは小型で発光部又は受光部を備えた光学式センサー移動用のもので、液体噴射ヘッドは固定位置調整用に多少の移動は可能であっても、基本的に固定されている。つまり、液体噴射ヘッドはキャリッジに設けられておらず、光学式センサーがキャリッジに設けられている。このようなラインプリンターの場合も、第1実施形態においては適切な補正量で端部検出位置を補正でき、第2実施形態においては光学式センサーを適切な感度に調整して端部位置を簡単に検出できる。
・媒体は用紙に限定されず、樹脂製のフィルム、金属箔、金属フィルム、樹脂と金属の複合体フィルム(ラミネートフィルム)、織物、不織布、セラミックシートなどであってもよい。さらに媒体の形状はシート状に限定されず立体形状でもよい。
・前記実施形態では、液体噴射装置の1つであるインクジェット式プリンターに具体化したが、液体噴射装置に適用する場合、プリンターに限定されない。例えばインク以外の他の液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液体噴射装置でもよい。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために熱硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。このように媒体(記録媒体)は、素子や配線等がインクジェットで形成される基板でもよい。液体噴射装置が噴射する「液体」には、液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。