以下、本発明の一実施形態に係る筒状部材としての筒状フード及びそれを備えた釣竿用リールシートについて図面を参酌しつつ説明する。図1乃至図3に示す釣竿用リールシート(以下、単に「リールシート10」という。)は、釣竿にリールを固定するためのものであって、釣竿の竿本体11に装着されて使用される。該リールシート10は、いわゆるパイプシートと称される全体として筒状のものであって竿本体11に外装されて所定位置に固定される。このリールシート10は主としてスピニングリールを取り付けるためのものであり、使用状態ではリールが釣竿の下側に位置する。従って、図1では、説明のためにリール脚が載置される脚載置面28を上向きとして図示しているが、使用状態を示す図2及び図3においては脚載置面28が下側を向いた状態で図示している。以下、図4は図1と同じ向きであり、図5乃至図8は図2及び図3と同じ向きで示している。尚、周方向のうち脚載置面28が存在している側を正面側とし、それと反対側を背面側とする。また、図3では後述する筒状フード16と連結体17についてはハッチングを省略している。また、矢印15が竿軸方向を示している。
リールシート10は、竿本体11に外装される筒状のリールシート本体29と、該リールシート本体29に外装されて竿軸方向に移動可能な可動フードユニット13とを備えている。以下、順に説明する。
リールシート本体29は、合成樹脂製の成形品である主部31を備えている。主部31は、全体として筒状であってその内周面を竿本体11が挿通する。主部31にはリール脚の両端部のうち一端部を保持するための固定フード部12が一体的に形成されている。該固定フード部12は、図3に示すように正面側に厚肉且つドーム状に膨出して形成されており、脚載置面28の竿軸方向一端部に位置していて竿軸方向他端側に開口し、その開口部からリール脚の一端部が竿軸方向一端側に向けて挿入される。
また、主部31の竿軸方向他端部には雄ネジ部34が形成されている。該雄ネジ部34を部分的に切り欠くようにして竿軸方向に直線状に延びるスライド溝25,27が形成されている。該スライド溝25,27は主部31の竿軸方向他端縁まで達している。また、スライド溝25,27は周方向に90度毎に合計四箇所形成されているが、この数や配置は任意である。
尚、主部31の両側面にはそれぞれ貫通孔33が形成されている。該貫通孔33は脚載置面28の両側に位置しており、該貫通孔33を介して竿本体11を直接指先等で触れることができる。符号32は貫通孔33の壁面を示している。また、主部31の背面側には、図3のように脚載置面28と対向した位置に厚肉部30が形成されていてホールド性を向上させている。
かかるリールシート本体29の竿軸方向他端側に可動フードユニット13が外装される。該可動フードユニット13は、筒状フード16と連結体17とからなる可動フード体と、該可動フード体を竿軸方向に移動させるための操作ナット14とを備えている。操作ナット14は、その内周面48に雌ネジ部49を有していて、リールシート本体29の雄ネジ部34に螺合している。可動フード体は操作ナット14の竿軸方向一端側に位置していて操作ナット14に相対回転可能に係止されていると共に、リールシート本体29のスライド溝25,27に竿軸方向にスライド可能に係合している。従って、操作ナット14を回転させると可動フード体は回転することなく操作ナット14と共に竿軸方向に移動する。操作ナット14を一方に回転させて可動フード体を固定フード部12に接近させると、リール脚の両端部が固定フード部12と可動フード体によって竿軸方向に狭持されると共に脚載置面28に押し付けられて固定される。逆に、操作ナット14を他方に回転させて可動フード体を固定フード部12から離すと、リール脚の固定状態が解除されてリールを釣竿から取り外すことができる。
詳細には、図3及び図4のように操作ナット14の竿軸方向の一端部内周面には周溝50が形成されており、該周溝50に可動フード体の竿軸方向の他端部が内側から係止している。尚、操作ナット14の外周面51には回転操作の操作性を向上すべく縦溝52が形成されている。該縦溝52は竿軸方向の他端側の端面53から竿軸方向に延びており、複数本、本実施形態では周方向に等間隔で合計七本形成されているがその数は任意であって、またこれを省略してもよい。
可動フード体は二つの部材から構成されている。具体的には、可動フード体は、図4のように操作ナット14から遠い側に位置する筒状フード16と、操作ナット14に近い側に位置する連結体17とから構成されている。
筒状フード16は、リール脚の他端部を保持すべく周方向の一部が径方向外側に膨出した脚保持部56を備えている。脚保持部56は筒状フード16の竿軸方向一端側に形成されていて固定フード部12と対向しており、その径方向外側への膨出形状により、リールシート本体29の脚載置面28との間にリール脚の他端部が挿入可能な脚挿入空間58(図3参照)が形成される。即ち、筒状フード16の脚保持部56も固定フード部12と同様に正面側に形成されている。
図7のように、筒状フード16のうち背面側の少なくとも半周分(180度分)は、横断面視あるいは竿軸方向矢視において、竿本体11の中心線C(リールシート本体29の内周面の中心線)を中心とした円弧である。その一方、筒状フード16の正面側は脚保持部56を形成すべく背面側よりも径方向外側に膨出している。脚保持部56の周方向の中央部56aは上述の中心線Cを中心とした円弧であってその半径は背面側の半径よりも大きい。脚保持部56の周方向の両側部56bは、脚保持部56の周方向の中央部56aよりも曲率が大きくなっている。
また、図8に示しているように、筒状フード16の背面側は竿軸方向(軸線方向)に沿ってストレート形状即ち竿本体11の中心線Cからの距離(半径)が一定である。一方、筒状フード16の正面側の脚保持部56においては竿軸方向一端側から他端側にかけて中心線Cからの距離が徐々に小さくなっている。しかも、脚保持部56は竿軸方向一端側から他端側にかけて径方向外側凸に湾曲しつつ縮径していく。尚、筒状フード16の竿軸方向の一端面54は、正面側が背面側に対して竿軸方向他端側に位置するように、竿軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面となっている。一方、筒状フード16の竿軸方向の他端面55は、竿軸方向に対して直交した垂直面となっている。従って、筒状フード16の背面側における竿軸方向の長さL2は、正面側における竿軸方向の長さL1よりも長い。尚、筒状フード16の背面側であって竿軸方向の他端面55の近傍位置には、貫通した係止孔57が形成されている。該筒状フード16は繊維強化樹脂製であるが、その製造並びに詳細な仕様については後述する。
連結体17は、筒状フード16と操作ナット14とを連結すると共に、操作ナット14に相対回転可能に係止され且つリールシート本体29と径方向に凹凸係合して竿軸方向に移動可能に構成される。連結体17は、合成樹脂からなる成形品であって、図5のように、ベースリング部18と、該ベースリング部18の一端面37から突出するパッド部19とを有している。
図6にも示しているようにベースリング部18は全体として環状であって、その内周面36には竿軸方向に延びるキー部20,21,22,23が径方向内側に向けて突設されている。該キー部20,21,22,23はリールシート本体29のスライド溝25,27に係合し、スライド溝25,27に対して竿軸方向に相対移動可能である。該キー部20,21,22,23の竿軸方向の他端部はベースリング部18の他端面40から竿軸方向に所定長さ突出しており、その先端部外面には径方向外側に向けて係止凸部39が突設されている。また、キー部20,21,22,23はリールシート10のスライド溝25,27に対応して90度間隔で合計四箇所形成されているが、その全ての竿軸方向の他端部に係止凸部39が形成されている。キー部20,21,22,23がベースリング部18の他端面40を支点として径方向内側に撓むことで操作ナット14の内側に入り込むことができ、これらの係止凸部39が操作ナット14の周溝50に径方向内側から係合し、これにより連結体17が操作ナット14に相対回転可能に係止される。即ち、キー部20,21,22,23は、リールシート本体29のスライド溝25,27に係入する真直部38と、操作ナット14の周溝50に係入する係止凸部39とを備えている。尚、真直部38の内面41は周面とされておりそれが好ましい形状であるが、平坦面であってもよく、スライド溝25,27に係入して相対移動可能であればよい。また、ベースリング部18の外径は操作ナット14の外径と略等しく、従って、操作ナット14の外周面51からベースリング部18の外周面へと滑らかに連続している。
また、四つのキー部20,21,22,23のうち左右に位置する二つのキー部21,23はベースリング部18の一端面37から突出していない一方、背面側に位置するキー部22と正面側に位置するキー部20はベースリング部18の一端面37から竿軸方向に突出している。背面側に位置するキー部22の竿軸方向の一端部外面には、径方向外側に突出した係止凸部43が形成されている。該係止凸部43は筒状フード16の係止孔57に内側から係合し、これにより筒状フード16と連結体17とが一体となって移動できると共に連結体17を介して筒状フード16と操作ナット14とが連結される。
一方、正面側に位置するキー部20もベースリング部18の一端面37から竿軸方向に突出しているが、その突出部分は上述したパッド部19と一体化されている。即ち、パッド部19は正面側に位置しており、図5のように竿軸方向の一端側に向けて径方向外側に緩やかに傾斜しつつ延びている。該パッド部19は筒状フード16の脚保持部56の内側に挿入されて筒状フード16を竿軸方向に貫通し、その先端部が筒状フード16の一端面54から僅かに露出した状態となる。従って、パッド部19は筒状フード16の脚保持部56に対応した形状となっている。パッド部19の外面には筒状フード16の脚保持部56が略面一となるように係入する凹部47が形成されている。符号45,46はそれぞれ凹部47の先端側と基端側の段差部であり、該凹部47に筒状フード16の脚保持部56が係合すると共に筒状フード16の係止孔57に背面側の係止凸部43が係合することにより、連結体17に筒状フード16が確実に取り付けられる。また、先端側の段差部45によってパッド部19の先端部外面にはフランジ44が形成されており、該フランジ44が筒状フード16から露出することになる。筒状フード16の一端面54のうち脚保持部56に対応した部分をフランジ44がカバーしてその部分を保護する。パッド部19の内面35にリール脚の他端部外面が当接するので、その内面形状はリール脚の他端部外面に対応して横断面視円弧状に形成されている。尚、筒状フード16と連結体17を合体させた状態では、図2及び図3のように連結体17のベースリング部18の外周面から筒状フード16の外周面にかけて段差がほとんどない連続した状態となる。
次に、筒状フード16の詳細仕様と製法について図9乃至図12を参酌しつつ説明する。上述したように筒状フード16は繊維強化樹脂製であり、カーボン繊維に代表される強化繊維に樹脂を含浸させたシート状のプリプレグを用いて製造される。但し、カーボン繊維以外の強化繊維を使用してもよい。プリプレグをマンドレルに巻回して加熱焼成することにより筒状フード16を形成するのであるが、筒状フード16には、周方向の一部が膨出して脚保持部56が形成されているうえに、その一端面54よりも他端面55の方が周長が短い。即ち、周方向の一部において曲率が大きく変化していると共に、その箇所のみが竿軸方向の他端側に向けて小径となっていく。そこで、このような周方向及び竿軸方向の変化が大きい形状に対応するために、図9(a)のように、プリプレグ70の竿軸方向他端部70bにはV字状の切欠部60を形成している。該切欠部60を筒状フード16の脚保持部56の両側部56bに対応した箇所にそれぞれ形成しているので、切欠部60は合計二箇所である。このように切欠部60を形成することによって、図9(b)のようにプリプレグ70の竿軸方向他端部70bの長さは竿軸方向一端部70aの長さよりも短くなる。従って、筒状フード16がその竿軸方向他端側に向けて縮径した形状でありマンドレルもそれに対応して縮径した形状であっても、プリプレグ70に皺が生じにくくなってマンドレルにプリプレグ70を綺麗に巻き付けることができる。また、プリプレグ70は脚保持部56の両側部56bの位置において周方向に最も張られた状態となるので、その両側部56bにそれぞれ切欠部60を位置させることで、プリプレグ70を皺なく綺麗にマンドレルに巻き付けることができる。
図9はプリプレグ90の概略図であるが、その長手方向Aが筒状となった際には周方向となり、その短手方向Bが筒状となった際には竿軸方向となるが、プリプレグ70の両側縁部70c同士(同図においては長手方向Aの両端部同士)が重ね合わせられることで図10のように筒状となる。つまり、プリプレグ70の長さは略一周分であってマンドレルに一回巻きとされる。同図のようにプリプレグ70の一方の側縁部70cが内側となり他方の側縁部70cがその外側となるようにして重ね合わせられているが、その重ね合わせ部70dの幅Wは0.3mm〜2mm、好ましくは0.5mm〜1.5mmである。尚、図9(a)に二点鎖線Dで示している位置は加熱焼成後においてカットされる位置であり、両カット線Dの内側部分のみから筒状フード16が形成される。即ち、プリプレグ70の竿軸方向の長さは所定の余分を有しており、加熱焼成後においてその竿軸方向の両端部を所定量カットして最終形状とされる。
このようにプリプレグ70を筒状とすることで強化繊維層が形成されることになるが、筒状フード16は、このような強化繊維層を複数層、本実施形態においては五層備えている。その一例を図11に示す。同図のように合計五枚のプリプレグ71,72,73,74,75が使用されるが、何れもその周方向の長さは略等しい。同図において最も左側のプリプレグ71が最内層のプリプレグであり、最も右側のプリプレグ75が最外層のプリプレグである。内側から順に一番目のプリプレグ71は、斜め補強材として機能するバイアス層を構成するためのものであって、強化繊維が竿軸方向に対して所定角度で傾斜しつつ交差した、いわゆるバイアス材とも称されるプリプレグが用いられる。その強化繊維の竿軸方向に対する角度は例えば略45度である。尚、バイアス層を最内層に設けているが、例えば、内側から二番目や三番目、四番目に設けてもよく、その位置は任意である。
内側から二番目から四番目のプリプレグ72,73,74は筒状フード16のメイン層となる部分であって、それらは同一仕様であり、いわゆる縦横貼り合わせ材とも称されるプリプレグが用いられる。該二番目から四番目のプリプレグ72,73,74は、図12に示すように強化繊維が竿軸方向に沿った縦シート81と強化繊維が周方向に沿った横シート82とを積層一体化させた積層シート83からなる。
そして、最も外側のプリプレグ75は主として意匠用であるが強度にも貢献している。該最外層のプリプレグ75には、強化繊維を平織りにした織物クロス(二軸織物プリプレグ、三軸織物プリプレグ、四軸織物プリプレグ)や、プリプレグを縦方向と横方向と斜め二方向(0度、90度、−45度、45度)の合計四方向に重ね合わせて積層一体化したいわゆる四軸プリプレグや、あるいは細幅のスリットテープ状のプリプレグを四方向等に平織りにしたもの等が使用される。該最も外側のプリプレグ75はその仕様を容易に変更することができる。従って、その仕様変更によって、金型等を変更することなく、筒状フード16の表面の模様を容易に変更することができる。また加熱焼成後に塗装により色付けも可能であるので、バリエーションに富んだ模様を施すことができる。但し、この最外層の意匠用のプリプレグ75を省略することもでき、この意匠用のプリプレグ75の有無によっても筒状フード16の意匠が異なってくるが、これについては後述する。また、この最外層のプリプレグ75を巻回した後に、成形テープを巻き付け締め付けて加熱焼成するが、これについても後述する。
このように筒状フード16は、合計五層の強化繊維層から構成されるが、各層毎に重ね合わせ部70dが存在する。この重ね合わせ部70dは周方向のうち所定の範囲内に全て存在するようにしている。具体的には、図7のように周方向のうち脚保持部56が形成された箇所以外の箇所90に、五つ全ての重ね合わせ部70dを位置させるようにする。より好ましくは、全ての重ね合わせ部70dを正面側ではなく背面側に位置させるようにする。図7において符号91で示しているように周方向のうちの背面側180度の範囲に全ての重ね合わせ部70dを位置させることが好ましい。その一例を図7及び図11に挙げている。最も内側のプリプレグ71から順にその重ね合わせ部70dの位置を図7に符号P1〜P5で示している。背面側の半周分である180度の範囲に五つの重ね合わせ部70dを符号P1〜P5で示すように45度の間隔を空けながら均等に分散させており、各層の重ね合わせ部70dが互いに内外重なり合わないように、即ち、周方向の同じ箇所に位置しないように周方向に位置ずれさせている。また、合計五つの重ね合わせ部70d(符号P1〜P5)のうち内側の四つ(符号P1〜P4)については、内外隣り合う強化繊維層の重ね合わせ部70dが、横断面視において正面側から背面側へと上下方向に延びる中心線Tに対して、左右交互に位置ずれしている。そして、最外層の重ね合わせ部70d(符号P5)はその上下方向の中心線T上に位置している。このようにマンドレルに巻回した際に各層の重ね合わせ部70dがそれぞれ所定位置に位置するようにプリプレグ71,72,73,74,75の長手方向Aの長さと切欠部60の位置が設定されている。
以上のように構成された筒状フード16にあっては、プリプレグ70の両側縁部70c同士を重ね合わせて筒状とした強化繊維層を合計五層備えているので、単層構造に比して薄いプリプレグを使用することができ、厚いプリプレグに比してマンドレルに容易且つ綺麗に巻回することができる。そして、各層の重ね合わせ部70dを周方向のうち脚保持部56が形成された箇所以外の箇所90に位置させているので、リール脚から大きな力が作用する脚保持部56には重ね合わせ部70dが存在せず、従って、筒状フード16が高い耐久性を有することになる。特に、周方向のうち背面側の180度の範囲91に全ての重ね合わせ部70dを配置しているので、強度をより一層確保しやすくなる。また、各層の重ね合わせ部70dを周方向に位置ずれして配置しているので、各層の重ね合わせ部70dが周方向に分散されることになり、全体としての薄肉化を達成することができる。また、周方向の特定箇所への応力集中も分散することができる。このような重ね合わせ部70dの背面側の配置と分散配置によって、筒状フード16をステンレス製並に薄肉化でき、ステンレス製に比して大幅な軽量化ができる。例えば、厚さ0.5mmで、重さ1gという薄肉軽量化が可能になる。これはステンレス製の約1/4程度の重さであり、リールシート10ひいては釣竿の更なる軽量化に大きく貢献することになる。しかも、0.5mm程度の薄さであるので、リールシート本体29との間の段差も極小であって、リールシート10を把持した際の違和感も小さく、握りやすいものとなり、釣竿の操作性も向上する。
特に、背面側半周分91の範囲に45度間隔で重ね合わせ部70dを配置しているので、重ね合わせ部70dが背面側に均等に分散され、背面側の領域を効果的に利用しつつ重ね合わせ部70dを分散することができて薄肉化と強度確保を容易に両立させることができる。また、筒状フード16の横断面視において上下方向に延びる中心線Tに対し、内外隣り合う重ね合わせ部70d同士(符号P1,P2,P3,P4)が左右交互に位置ずれしているので、内外隣り合う重ね合わせ部70d同士を周方向に離間させやすく、局所的な厚肉化を容易に防止できる。また、筒状フード16が周方向の一方向に捩れていくこともなく、安定した形状が確保できると共に強度も容易に確保できる。
また、プリプレグ70の竿軸方向他端部70bにV字状の切欠部60が形成されているので、周長の縮小に容易に対応できて皺の発生を防止できる。特に周方向のうちで皺が発生しやすい箇所である脚保持部56の形成箇所に切欠部60を形成しておくことで、皺の発生をより一層確実に抑制することができる。更に、周方向のうち脚保持部56の左右両側部56bに対応した箇所にそれぞれ切欠部60が形成されていることにより、スムーズにマンドレルにプリプレグを巻回することができ、皺の発生もより一層抑制される。
また更に、縦シート81と横シート82とが積層された積層シート83からなるプリプレグ72,73,74をメイン層に使用しているので、周方向と竿軸方向の二方向に形状が変化する筒状フード16を容易に製造することができる。即ち、マンドレルにプリプレグ72,73,74を巻回する際に、縦シート81の強化繊維が周方向に開くようにずれることを横シート82により防止でき、横シート82の強化繊維が竿軸方向に開くようにずれることを縦シート81により防止できる。また、この縦横貼り合わせ材のプリプレグ72,73,74から形成される強化繊維層を二層以上設けているので、薄い縦横貼り合わせ材(積層シート83)を使用することができてスムーズに巻回することができる。そして更に、バイアス材のプリプレグ71を使用しているので、バイアス材の強化繊維が縦横貼り合わせ材のプリプレグ72,73,74に対する筋交いとして機能し、縦横貼り合わせ材における縦横二方向の強化繊維の変形を効果的に防止する。
一方、可動フード体を筒状フード16と連結体17から構成したことにより、筒状フード16を薄肉化できる。また、連結体17をそのままにして筒状フード16の模様や色彩のみを変更することも容易であり、特に最外層に意匠用のプリプレグ75を使用しているので、その意匠用のプリプレグ75の仕様を変更するだけで容易に筒状フード16の模様を変更することができる。そして、脚保持部56の内側にはパッド部19を配置しているのでリール脚の他端部を合成樹脂からなるパッド部19で安定的にしっかりと保持することができると共にリール脚が直接筒状フード16の脚保持部56に当たることがないので、筒状フード16の脚保持部56の傷つきも防止できる。また、操作ナット14の周溝50に係止する係止凸部39を連結体17に設けているので、筒状フード16に係止凸部39を形成する必要がなく、筒状フード16を薄肉化できる。このようにパッド部19と係止凸部39とをベースリング部18を介して一体的に形成して連結体17という一つの部材として構成しているので、筒状フード16が比較的シンプルな形状で済み、後加工も最小限で済むことから筒状フード16を容易に高強度且つ薄肉化することができる。その一方、連結体17については合成樹脂から成形によって形成することで複雑な形状であっても容易に製造することができる。また、ベースリング部18を設けることで、パッド部19のある正面側の一箇所のみならず他の箇所にもキー部20,21,22,23を容易に設けることができ、確実且つスムーズに可動フード体を竿軸方向に移動させることができる。更に、キー部20,21,22,23の先端に係止凸部39と係止凸部43を形成するようにしているので、連結体17の成形も容易である。
次に、筒状フード16の外周面16aに凹凸模様を形成した構成とその形成方法について説明する。図13(a)にマンドレル100にプリプレグ101を巻回した状態の断面図を示している。該プリプレグ101の仕様は上述したような五層構造仕様であってもよいしそれ以外の仕様であってもよい。該プリプレグ101の外側に成形テープ102を巻回する。該成形テープ102は所定幅の重なり部分を持たせながら竿軸方向の一方側から他方側に向けて螺旋状に巻回していく。該成形テープ102の上に凹凸転写材103を巻き付ける。該凹凸転写材103には様々なものを用いることができ、それによって様々な凹凸模様を形成することができるが、その一例としては組紐を使用することができる。該凹凸転写材103を筒状フード16の全体に亘って配置するが、筒状フード16の一部のみに配置してもよい。そして、凹凸転写材103の上に更に成形テープ104を巻回して締め付ける。該上側の成形テープ104も下側の成形テープ102と同様に巻回するが、その巻き付け力については後述のように強弱調整する。そして加熱焼成した後、上下両成形テープ102,104と凹凸転写材103を除去し、マンドレル100を引き抜く。
図13(b)に加熱焼成後の筒状フード16の要部断面を示しており、そのE部の拡大図を図14に示している。図14に示しているように、筒状フード16の外周面16aには、下側の成形テープ102の痕跡である成形テープ目105が形成されている。該成形テープ目105は周方向に沿って筋状に延びている。図15(a)に最外層の意匠用のプリプレグ75を使用しない態様であって且つ凹凸転写材103を使用しなかったときの筒状フード16の外観を参考例として示している。この図15(a)にも示しているように、成形テープ目105は、周方向に沿った筋状であって竿軸方向に一定間隔毎に形成され、図14のように山部と谷部とが竿軸方向に交互に繰り返される断面形状を有している。そして、成形テープ目105の上には更に凹凸転写材103によって転写凹部106が転写されている。該転写凹部106は下側の成形テープ102を介して凹凸転写材103から転写されたものであるため、凹凸転写材103の凸部に対応した箇所における成形テープ目105が部分的に一段深くなるようにして転写凹部106が形成される。
その外観は図15(b)のようになり、成形テープ目105の上に更に転写凹部106がレイヤー状に重なり合うようにして形成されるが、転写凹部106のない図15(a)の場合と比較すれば、転写凹部106の存在によって成形テープ目105が目立ちにくくなる。しかも、転写凹部106と成形テープ目105との複合模様にもなる。この転写凹部106の深さ、外観上の強さは、上側の成形テープ104の巻き付け力によって変わる。従って、上側の成形テープ104の巻き付け力を強くすれば凹凸転写材103が下側の成形テープ102を介してプリプレグ101に強く押圧され、転写凹部106は深くしっかりと形成され、見た目にもはっきりとわかるようになる。その一方、相対的に成形テープ目105は目立ちにくくなってその存在感が薄れることになり、巻き付け力によっては成形テープ目105が事実上視認できない程度まで転写凹部106を強く深く形成することも可能である。逆に、上側の成形テープ104の巻き付け力を弱めに設定すれば、転写凹部106は浅く転写されることになってその見た目の印象も弱くなり、成形テープ目105は相対的に目立ちやすくなってその存在感が増すことになる。このように上側の成形テープ104の巻き付け力の大小によって転写凹部106と成形テープ目105との複合模様はその見た目の印象が大きく変わる。従って、同じ凹凸転写材103であっても筒状フード16の外観イメージを種々変更することができる。
また、成形テープ目105は周方向に沿っているので、それと交差する形状の転写凹部106を形成することにより、筒状フード16を触ったり把持したりしたときに滑りにくくなり、握り心地が向上する。しかも、凹凸転写材103を変更することによって表面の凹凸模様を容易に変更することができ、触感も変えることができる。また、凹凸転写材103は加熱焼成後に除去される部材であって筒状フード16の構成部材ではないために筒状フード16の強度には影響を与えない。従って、筒状フード16の強度や厚さに影響を与えることなく外周面16aの凹凸模様のみを簡単に仕様変更することができる。しかも、プリプレグ101に凹凸転写材103を直接接触させるのではなく下側の成形テープ102を介して凹凸転写材103の凹凸模様をプリプレグ101に転写するので、加熱焼成後において容易に凹凸転写材103を除去することができる。
一方、上述したような意匠用のプリプレグ75を最外層に使用した場合には、筒状フード16の模様が更に複雑化する。図16(a)には参考例として、最外層に意匠用のプリプレグ75を使用した態様であって且つ凹凸転写材103を使用しなかったときの筒状フード16の外観を示している。この図16(a)の場合も図15(a)の場合と同様に成形テープ目105が筋状に形成されるが、その内側には意匠用のプリプレグ75の模様が存在しているので、該意匠用のプリプレグ75の模様と成形テープ目105とが重なり合って見えることになる。従って、意匠用のプリプレグ75の模様のない図15(a)の場合よりも成形テープ目105は目立ちにくくなる。これに対して凹凸転写材103を使用すると図16(b)のようになり、意匠用のプリプレグ75の模様と成形テープ目105に加えて更に転写凹部106がその上に重なった状態で見えることになる。意匠用のプリプレグ75の模様は素地、素材自体の模様であるため視覚的には認識しやすい。一方、転写凹部106は最も表面に位置するものであって凹凸形状でもあるため、やはり視覚的には強い印象を与える。従って、意匠用のプリプレグ75の模様と転写凹部106とによって、成形テープ目105はより一層目立ちにくくなる。しかも、図16(a)の場合には、見た目には意匠用のプリプレグ75の模様が強く見えるが、手で触れた場合には成形テープ目105の筋が触感として伝わることになり、この触感によって成形テープ目105の存在を見た目以上に認識することになる。これに対して図16(b)のように成形テープ目105の上に転写凹部106が形成されていると、手で触れたときに転写凹部106の触感が伝わり、成形テープ目105の筋状の触感が転写凹部106によって薄められることになる。そのため、成形テープ目105の存在が視覚的のみならず触感によっても薄められることになる。
また、図15(a)や図16(a)に示した成形テープ目105は加熱焼成後に表面研磨によって除去することができ平滑化することができるが、別途研磨工程が必要になる。これに対して図15(b)や図16(b)のように成形テープ目105の上に転写凹部106を形成すると、研磨することなく成形テープ目105を目立ちにくくすることができるため、製造工程を簡素化できる。尚、金属製のものとは異なり繊維強化樹脂製であるので、加熱焼成後に筒状フード16の表面にニスやインキを塗布することも容易である。
尚、凹凸転写材103を全体に亘って設けたが、周方向の一部あるいは竿軸方向全長のうちの一部に凹凸転写材103を設けるようにしてもよい。例えば、文字の形の凹凸転写材103を設けて筒状フード16の外周面16aにその文字を転写凹部106として形成してもよい。
また、筒状フード16の外周面16aに転写凹部106を設けたが、他の筒状部材にも同様に凹凸模様を形成することができる。例えば、操作ナット14を上述したような単層構造とするのではなく内外二層構造とし、その内層を構成する内側筒状部材を樹脂製とし、外層を構成する外側筒状部材をプリプレグからなる繊維強化樹脂製として、その外側筒状部材の外周面に転写凹部106を形成してもよい。この場合、外側筒状部材を変更することで操作ナット14の意匠を容易に変更することができる。尚、内側筒状部材の外周面全体を外側筒状部材で覆う構成としてもよいし、内側筒状部材の外周面の一部を外側筒状部材で覆う構成としてもよい。
尚、上記実施形態では、ベースリング部18とパッド部19とを一体的に形成したが、これらを別体構成としてもよい。また、係止凸部39をキー部20,21,22,23と共に合計四箇所形成したが、キー部20,21,22,23とは別の位置に係止凸部39を形成してもよく、係止凸部39を全周に亘って形成して環状としてもよい。係止凸部39を環状に形成する場合には周方向の所定箇所にスリットを形成して操作ナット14への取り付け時に径方向に変形しやすいようにすることが好ましい。このように連結体17の構成は種々設計変更可能である。
また、筒状フード16についても種々の設計変更が可能であって、上記実施形態では合計五層の強化繊維層を備えていたが、層数は任意であり、少なくとも二層備えていればよい。使用するプリプレグの仕様も任意であるが、縦横貼り合わせ材からなるプリプレグを使用することが好ましい。また、バイアス材からなるプリプレグを一枚使用し、縦横貼り合わせ材からなるプリプレグを一枚以上使用することが好ましい。上述したように最外層に主に意匠用として設けた強化繊維層は省略してもよく、これに代えて例えばバイアス材からなるプリプレグを最外層に使用してもよい。更に、切欠部60を二箇所形成したが、一箇所のみ形成してもよく、また、脚保持部56の形状等によってはこれを省略したり、あるいは、V字状の切欠部60に代えて切り込み(スリット)のみを形成してもよい。このようにプリプレグについても種々の形状とすることができる。
また、上記実施形態ではリールシート本体29に固定フード部12を一体的に形成したが、固定フードをリールシート本体29とは別体に形成してもよく、その場合にはその固定フードに上述したような構成の筒状フード16を用いてもよい。更に、その固定フードの外周面に上述したような転写凹部106を形成してもよい。また、竿本体11を筒状部材としてその外周面に転写凹部106を形成してもよい。筒状部材をプリプレグから形成する場合、プリプレグを上述したような一回巻きとせずに二回巻き以上としてもよい。
尚、スピニングリールを取り付けるためのリールシート10について説明したが、両軸リールを取り付けるためのリールシート10にも適用可能である。