以下に、添付図面を参照して、本発明にかかるミルペーシング制御装置およびミルペーシング制御方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかるミルペーシング制御装置の一構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態にかかるミルペーシング制御装置1は、各種情報を入力する入力部2と、ミルペーシング制御に関する情報等を表示する表示部3と、ミルペーシング制御に必要な各種情報を記憶する記憶部4と、ミルペーシング制御を実現するための各種演算処理を行う演算処理部5と、ミルペーシング制御を実行する制御部6とを備える。
なお、図1には、本実施の形態にかかるミルペーシング制御装置1の制御対象である熱間圧延ライン11の一構成例も図示されている。この熱間圧延ライン11は、加熱ラインA1、粗圧延ラインA2、および仕上圧延ラインA3を組み合わせて構成される。加熱ラインA1には、各圧延材を加熱する加熱炉13が設置される。粗圧延ラインA2は、加熱ラインA1の後段のラインであり、この粗圧延ラインA2には、加熱炉13によって加熱された圧延材(図1に示す圧延材20)を粗圧延する粗圧延装置14が設置される。仕上圧延ラインA3は、粗圧延ラインA2の後段のラインであり、この仕上圧延ラインA3には、圧延温度に対応して圧延速度を変化させつつ粗圧延後の圧延材を仕上圧延する仕上圧延装置15等が設置される。
一方、ミルペーシング制御装置1において、入力部2は、キーボードおよびマウス等の入力デバイスを用いて実現され、操作者の入力操作に対応して各種情報を制御部6に入力する。なお、入力部2による入力情報として、例えば、設定圧延速度および圧延速度の加速率等の圧延条件、圧延材毎に予め決められる適切な圧延材温度範囲等の圧延材諸元、仕上圧延装置15に許容される圧延速度および圧延温度の各上下限等の設備仕様、ミルペーシング制御に必要な演算処理に用いる各種パラメータ、圧延時の摩擦に関する情報、圧延材厚さおよび圧延材成分等の変形抵抗に関する圧延材情報、および過去の圧延実績等が挙げられる。
表示部3は、制御部6によって表示指示された各種情報を表示する。具体的には、表示部3は、入力部2による入力情報、ミルペーシング制御に関する演算処理結果等のミルペーシング制御に有用な各種情報を表示する。
記憶部4は、制御部6によって記憶指示された情報を記憶し、読み出し指示された記憶情報を制御部6に送信する。具体的には、記憶部4は、熱間圧延ライン11のミルペーシング制御に用いられる温度モデル4a、熱間圧延ライン11の操業情報4b、入力部2による入力情報等を記憶する。
温度モデル4aは、仕上圧延装置15による圧延速度の増減変化に対応して圧延材温度が増減変化する現象をモデル化した物理モデルである。温度モデル4aは、熱間圧延ライン11のミルペーシング制御において、仕上圧延装置15の出側の圧延材温度を予測するために用いられる。一方、操業情報4bは、熱間圧延ライン11における圧延材毎の圧延条件および過去の圧延実績等の熱間圧延操業に関する情報である。
演算処理部5は、材温度予測部5a、圧延時間予測部5b、および判定処理部5cを有し、記憶部4内の温度モデル4aを用いて、圧延材毎に仕上圧延装置15による圧延時間を予測する演算処理を行う。材温度予測部5aは、温度モデル4aに基づいて、仕上圧延装置15の入側における圧延材予測温度から、仕上圧延装置15の出側における圧延材温度を予測する。圧延時間予測部5bは、材温度予測部5aによって予測された圧延材予測温度をもとに、仕上圧延装置15による現圧延処理の最高圧延速度を算出し、この算出した最高圧延速度をもとに、仕上圧延装置15による圧延時間を圧延材毎に予測する。判定処理部5cは、上述した圧延材温度の予測および圧延時間の予測に必要な各判定処理を各々行う。
制御部6は、ミルペーシング制御装置1の機能を実現するためのプログラム等を記憶するメモリおよびこのメモリ内のプログラムを実行するCPU等を用いて実現される。制御部6は、ミルペーシング制御装置1の各構成部、すなわち、入力部2、表示部3、記憶部4、および演算処理部5の各動作を制御し、且つ、これらの各構成部との電気信号の入出力を制御する。また、制御部6は、熱間圧延ライン11のミルペーシング制御として、演算処理部5による圧延時間の予測結果をもとに、加熱炉13からの圧延材抽出タイミングを制御する。
ここで、上述したミルペーシング制御装置1の制御対象である熱間圧延ライン11の概略構成および圧延工程の概略について説明する。熱間圧延ライン11には、上述したように、加熱炉13、粗圧延装置14、および仕上圧延装置15が設置される。また、熱間圧延ライン11には、図1に示すように、搬送装置11、温度計16,18、およびスケールブレーカー17が設置される。この熱間圧延ライン11において、加熱炉13は、搬送装置12の搬送上流側に配置され、粗圧延装置14は、加熱炉13に比して搬送装置12の搬送下流側に配置され、仕上圧延装置15は、粗圧延装置14に比して搬送装置12の搬送下流側に配置される。また、仕上圧延装置15の入側には、温度計16およびスケールブレーカー17が配置され、仕上圧延装置15の出側には、温度計18が配置される。なお、スケールブレーカー17は、温度計16と仕上圧延装置15との間に配置される。
搬送装置12は、複数の搬送ロール等を用いて実現され、加熱炉13から抽出された圧延材20を搬送する。この搬送装置12によって搬送される圧延材20は、加熱炉13から粗圧延装置14および仕上圧延装置15をこの順に通って、仕上圧延装置15の後段に搬送される。
加熱炉13は、各圧延材を順次加熱して搬送装置12に投入する。搬送装置12は、加熱炉13から抽出された圧延材20を粗圧延ラインA2内に搬送する。なお、この加熱炉13からの次の圧延材21の圧延材抽出タイミングは、上述したミルペーシング制御装置1の制御部6によって制御される。
粗圧延装置14は、圧延機群14aを有し、加熱炉13から抽出された圧延材20を粗圧延する。具体的には、圧延機群14aは、複数スタンドの圧延機からなる。圧延機群14aは、これら複数スタンドの圧延機の各圧延ロールによって、圧延材20を上下(および水平)方向から挟圧し、これによって、圧延材20を粗圧延する。なお、粗圧延装置14による圧延材20の圧延速度等の圧延条件は、圧延材20の厚みおよび成分等の材料に関する諸元に対応して、所定の管理装置(図示せず)によって設定される。
粗圧延装置14によって粗圧延された圧延材20は、搬送装置12によって仕上圧延ラインA3内に搬送される。仕上圧延ラインA3において、圧延材20は、温度計16によって温度測定される。温度計16は、測定した圧延材20の温度を所定の管理装置(図示せず)に送信する。ここで、この圧延材20の温度(実測値)が、仕上圧延装置15に許容される規制温度範囲を超過していれば、搬送装置12は、管理装置からの指示に基づき、温度計16の位置に圧延材20を停止させる。搬送装置12は、圧延材20の温度が仕上圧延装置15の規制温度範囲以内になるまで圧延材20の搬送を停止する。圧延材20の温度が仕上圧延装置15の規制温度範囲以内になれば、搬送装置12は、圧延材20の搬送を再開する。
その後、圧延材20は、搬送装置12によって、スケールブレーカー17の位置に搬送される。スケールブレーカー17は、圧延材20の表面に生じたスケールを除去する。このスケール除去後の圧延材20は、搬送装置12によって仕上圧延装置15内に搬送される。
仕上圧延装置15は、加熱炉13によって加熱され且つ粗圧延装置14によって粗圧延された圧延材20を仕上圧延する。図2は、仕上圧延装置の概略構成の一例を示す模式図である。図1,2に示すように、仕上圧延装置15は、圧延機群15aを有し、圧延材20の温度の増減変化に対応して圧延速度をリアルタイムに増減変化させつつ、圧延材20を所望の厚みに仕上圧延する。
圧延機群15aは、例えば図2に示すように、7スタンドの圧延機15a−1〜15a−7からなる。圧延機群15aは、圧延機15a−1〜15a−7の各圧延ロールによって、圧延材20を上下方向から挟圧する。この場合、圧延材20は、図2の実線矢印に示すように、圧延機15a−1〜15a−7の各圧延ロール間を通りつつ、圧延機15a−1〜15a−7によって、所望の厚みまで連続的に仕上圧延される。
ここで、圧延機群15aによる圧延材20の圧延速度は、圧延材20の厚みおよび成分等の材料に関する諸元に対応して、所定の管理装置(図示せず)によって初期的に設定される。圧延機群15aは、この初期的に設定された圧延速度(以下、初期圧延速度という)で圧延材20の仕上圧延を開始する。その後、圧延機群15aは、圧延機15a−1〜15a−7に許容される規制温度範囲以内に圧延材20の温度を維持しつつ、可能な限り高速の圧延速度で圧延材20を圧延する。この場合、圧延機群15aによる圧延材20の圧延速度は、圧延材20の温度が規制温度範囲の上限に達するまで、または、その他の設備上の制約速度に達するまで加速し、圧延材20の温度が規制温度範囲を超過する以前に加速停止する。この圧延速度の加速によって、圧延材20の温度は高温化し、この圧延速度の加速停止によって、圧延材20の温度は保持または低下する。なお、このような圧延機群15aの圧延速度は、圧延機15a−1〜15a−7の間において互いに同じである。
上述したように仕上圧延装置15によって仕上圧延された圧延材20は、搬送装置12によって、仕上圧延ラインA3の後工程のラインに搬送される。その際、仕上圧延後の圧延材20は、仕上げ圧延装置15の出側に配置された温度計18によって、温度測定される。温度計18は、測定した圧延材20の温度を所定の管理装置(図示せず)に送信する。この管理装置は、温度計18による測定温度、すなわち、仕上げ圧延装置15の出側における圧延材20の実測温度が圧延機15a−1〜15a−7に許容される規制温度範囲以内になるように、仕上圧延装置15を制御する。仕上圧延装置15は、この管理装置の制御に基づいて、圧延速度を変化させる。
つぎに、上述したミルペーシング制御に用いる温度モデル4aについて説明する。図3は、本実施の形態におけるミルペーシング制御に用いる温度モデルの概念を示す模式図である。図3に示す温度モデル概念図は、図1に示した仕上圧延ラインA3に対応する。すなわち、図3において、圧延材モデル30は、仕上圧延装置15によって仕上圧延される圧延材20に対応する。ミル入側温度基準点31は、仕上圧延装置15の入側の温度計16に対応し、ミル出側温度基準点40は、仕上圧延装置15の出側の温度計18に対応する。スケールブレーカーモデル32は、上述したスケールブレーカー17に対応し、圧延機モデル33〜39は、仕上圧延装置15の圧延機群15a、すなわち、図2に示す圧延機15a−1〜15a−7に各々対応する。なお、圧延機15a−1〜15a−7の圧延方向(図2の実線矢印参照)は、図3に示す太線矢印と同方向である。
圧延材モデル30は、仕上圧延ラインA3内の各装置の位置関係に対応して、図3に示すような複数のゾーンに区分けされる。具体的には、圧延材モデル30において、ミル入側温度基準点31からスケールブレーカーモデル32までのゾーンは、空冷ゾーンB1として区分けされる。スケールブレーカーモデル32のゾーンは、スケールブレーカーゾーンB2として区分けされ、スケールブレーカーモデル32から圧延機モデル33までのゾーンは、空冷ゾーンB3として区分けされる。圧延機モデル33〜39の各ゾーンは、圧延機ゾーンB4,B6,B8,B10,B12,B14,B16として各々区分けされる。圧延機モデル33,34間のゾーンは、空冷ゾーンB5として区分けされ、圧延機モデル34,35間のゾーンは、空冷ゾーンB7として区分けされる。圧延機モデル35,36間のゾーンは、空冷ゾーンB9として区分けされ、圧延機モデル36,37間のゾーンは、空冷ゾーンB11として区分けされる。圧延機モデル37,38間のゾーンは、空冷ゾーンB13として区分けされ、圧延機モデル38,39間のゾーンは、空冷ゾーンB15として区分けされる。圧延機モデル39からミル出側温度基準点40までのゾーンは、空冷ゾーンB17として区分けされる。
また、上述した圧延機ゾーンB4,B6,B8,B10,B12,B14,B16の各々は、水冷ゾーンとロール接触ゾーンとに区分けされる。具体的には、圧延機ゾーンB4は、圧延方向に向かって、水冷ゾーンB4aと、ロール接触ゾーンB4bと、水冷ゾーンB4cとに区分けされる。これと同様に、圧延機ゾーンB6は、圧延方向に向かって、水冷ゾーンB6aと、ロール接触ゾーンB6bと、水冷ゾーンB6cとに区分けされ、圧延機ゾーンB8は、圧延方向に向かって、水冷ゾーンB8aと、ロール接触ゾーンB8bと、水冷ゾーンB8cとに区分けされる。圧延機ゾーンB10は、圧延方向に向かって、水冷ゾーンB10aと、ロール接触ゾーンB10bと、水冷ゾーンB10cとに区分けされ、圧延機ゾーンB12は、圧延方向に向かって、水冷ゾーンB12aと、ロール接触ゾーンB12bと、水冷ゾーンB12cとに区分けされる。圧延機ゾーンB14は、圧延方向に向かって、水冷ゾーンB14aと、ロール接触ゾーンB14bと、水冷ゾーンB14cとに区分けされ、圧延機ゾーンB16は、圧延方向に向かって、水冷ゾーンB16aと、ロール接触ゾーンB16bと、水冷ゾーンB16cとに区分けされる。
ここで、空冷ゾーンB1,B3,B5,B7,B9,B11,B13,B15,B17は、圧延材20が空気接触しているゾーンである。このようなゾーンにおいて、圧延材20は、空冷される。すなわち、空冷ゾーンB1,B3,B5,B7,B9,B11,B13,B15,B17において、空冷に起因する抜熱量Qa1〜Qa9が生じる。一方、スケールブレーカーゾーンB2は、スケールブレーカー17によって圧延材20の表面からスケールを除去するゾーンであり、圧延材20は、スケールブレーカー17のロール等と接触している。このようなゾーンにおいて、ロール接触による吸熱等のスケール除去処理に起因する抜熱量Qbrが生じる。
また、圧延機ゾーンB4において、水冷ゾーンB4a,B4cは、圧延材20の圧延処理時に圧延材20に対して冷却水(ストリップクーラント)が噴射されるゾーンである。このようなゾーンにおいて、圧延材20は、冷却水と接触して水冷される。すなわち、水冷ゾーンB4a,B4cにおいて、水冷に起因する抜熱量Qw1,Qw2が生じる。このことは、残りの圧延機ゾーンB6,B8,B10,B12,B14,B16においても同様である。すなわち、水冷ゾーンB6a,B6c,B8a,B8c,B10a,B10c,B12a,B12c,B14a,B14c,B16a,B16cにおいて、水冷に起因する抜熱量Qw3〜Qw14が生じる。
さらに、圧延機ゾーンB4において、ロール接触ゾーンB4bは、圧延機15a−1の圧延ロールと圧延材20とが接触するゾーンである。このロール接触ゾーンB4bにおいて、圧延材20は、圧延機15a−1の圧延ロールによって上下方向から挟圧されつつ、圧延される。このようなゾーンにおいて、圧延材20は、圧延ロールとの接触に起因して吸熱されるとともに、圧延加工に起因する摩擦熱および加工熱が加えられる。すなわち、ロール接触ゾーンB4bにおいて、圧延材20と圧延ロールとの接触に起因する抜熱量Qr1と、摩擦熱および加工熱等の加熱量Qm1とが生じる。このことは、残りの圧延機ゾーンB6,B8,B10,B12,B14,B16においても同様である。すなわち、ロール接触ゾーンB6b,B8b,B10b,B12b,B14b,B16bにおいて、ロール接触に起因する抜熱量Qr2〜Qr7と、摩擦熱および加工熱等の加熱量Qm2〜Qm7とが生じる。
なお、上述した抜熱量Qa1〜Qa9,Qw1〜Qw14,Qr1〜Qr7,Qbrは、各ゾーンにおける圧延材20の通過時間の増加に伴って増加し、この通過時間の減少に伴って減少する。すなわち、抜熱量Qa1〜Qa9,Qw1〜Qw14,Qr1〜Qr7,Qbrは、圧延機15a−1〜15a−7による圧延材20の圧延速度vの減少に伴って増加し、この圧延速度vの増加に伴って減少する。
本実施の形態におけるミルペーシング制御に用いる温度モデル4aは、図3に示す圧延材モデル30内の全ゾーンの累積抜熱量をもとに、ミル入側温度基準点31における圧延材モデル30の温度から、ミル出側温度基準点40における圧延材モデル30の温度を予測するものである。ここで、この累積抜熱量は、図3に示すミル入側温度基準点31からミル出側温度基準点40に至るまでの圧延材モデル30内の各ゾーンの抜熱量を累積した値である。また、ミル入側温度基準点31における圧延材モデル30の温度は、仕上圧延装置15の入側における圧延材20の予測温度(以下、ミル入側予測温度という)である。このミル入側予測温度は、加熱炉13による加熱後の圧延材20の温度実績値に基づいて予測される。ミル出側温度基準点40における圧延材モデル30の温度は、仕上圧延装置15の出側における圧延材20の予測温度(以下、ミル出側予測温度という)である。
具体的には、抜熱量Qa1〜Qa9,Qw1〜Qw14,Qr1〜Qr7,Qbrを、圧延材20の単位体積部分が圧延材モデル30の各ゾーン通過時に奪われる単位時間あたりの熱量(負の値)とし、加熱量Qm1〜Qm7を、圧延材20の単位体積部分が圧延材モデル30の各ゾーン通過時に与えられる単位時間あたりの熱量(正の値)とする。また、圧延材20の単位体積部分のゾーン滞在時間をtとする。この場合、温度モデル4aは、ミル出側予測温度FDTを算出する数式モデルとして、圧延材20の比熱Cを用い、次式(1)のように表される。
この式(1)において、ゾーン滞在時間tは、圧延材モデル30における各ゾーンの圧延方向の長さと圧延速度vとによって決まる変数であり、具体的には、ゾーンの圧延方向の長さを圧延速度vによってゾーン毎に除することにより、算出される。例えば、図3に示したロール接触ゾーンB4bにおけるゾーン滞在時間tは、ロール接触ゾーンB4bの圧延方向の長さLと圧延速度vとを用い、次式(2)によって算出される。
t=L/v ・・・(2)
また、式(1)において、熱量Qは、仕上圧延装置15の入側において圧延材20の単位体積部分がもつ総熱量であり、ミル入側予測温度をもとに算出される。一方、抜熱量Qa1〜Qa9,Qw1〜Qw14,Qr1〜Qr7,Qbrおよび加熱量Qm1〜Qm7は、圧延材20の厚みおよび成分等の材料に関する諸元とミル入側予測温度とを用いて、予測される。したがって、温度モデル4aは、上述した圧延速度vおよびミル入側予測温度を決定することによって、圧延材20のミル出側予測温度を算出できる。
なお、上述した抜熱量Qa1〜Qa9,Qw1〜Qw14,Qr1〜Qr7,Qbrおよび加熱量Qm1〜Qm7は、圧延材モデル30における各ゾーンの圧延方向の長さに依存し、例えば、これら各ゾーンの長さの増加に伴って増加する。この圧延材モデル30における各ゾーンの圧延方向の長さは、図1に示した仕上圧延ラインA3内の各設備の位置関係に対応して決まる。
具体的には、空冷ゾーンB1の長さは、温度計16とスケールブレーカー17との間隔によって決まり、空冷ゾーンB3の長さは、スケールブレーカー17と圧延機15a−1との間隔によって決まる。空冷ゾーンB5の長さは、圧延機15a−1,15a−2の間隔によって決まり、空冷ゾーンB7の長さは、圧延機15a−2,15a−3の間隔によって決まる。空冷ゾーンB9の長さは、圧延機15a−3,15a−4の間隔によって決まり、空冷ゾーンB11の長さは、圧延機15a−4,15a−5の間隔によって決まる。空冷ゾーンB13の長さは、圧延機15a−5,15a−6の間隔によって決まり、空冷ゾーンB15の長さは、圧延機15a−6,15a−7の間隔によって決まる。空冷ゾーンB17の長さは、圧延機15a−7と温度計18との間隔によって決まる。
また、水冷ゾーンB4a,B4c,B6a,B6c,B8a,B8c,B10a,B10c,B12a,B12c,B14a,B14c,B16a,B16cの各長さは、ストリップクーラント噴射幅等によって決まる。ロール接触ゾーンB4b,B6b,B8b,B10b,B12b,B14b,B16bの各長さは、圧延材20の圧下率や圧延ロールの直径等によって決まる。
つぎに、本発明の実施の形態にかかるミルペーシング制御方法について説明する。図4は、本発明の実施の形態におけるミルペーシング制御に必要な圧延時間を予測する演算処理の処理フローを示すフローチャートである。本実施の形態にかかるミルペーシング制御方法では、仕上圧延装置15による圧延速度の増減変化に対応して圧延材20の温度が増減変化する現象をモデル化した温度モデル4aを用い、圧延材20のミル入側予測温度から、圧延材20のミル出側予測温度を算出し、このミル出側予測温度をもとに、仕上圧延装置15による圧延時間を予測する予測演算処理を行う。ついで、この予測演算処理による予測圧延時間をもとに、加熱炉13からの圧延材抽出タイミングを制御する。
詳細には、図4に示すように、ミルペーシング制御装置1の演算処理部5(図1参照)は、まず、ミルペーシング制御のための基礎情報を読み出す(ステップS101)。このステップS101において、演算処理部5は、記憶部4に格納された操業情報4bの中から、圧延材20のミル入側予測温度と、仕上圧延装置15による初期圧延速度と、仕上圧延装置15に許容される圧延速度の上限(以下、上限速度という)および下限(以下、下限速度という)と、仕上圧延装置15による圧延速度の加速率とを読み出す。
つぎに、演算処理部5は、圧延材20のミル入側予測温度が仕上圧延装置15の規制温度範囲以内であるか否かを判定する(ステップS102)。このステップS102において、判定処理部5cは、ステップS101において読み出した基礎情報のうちのミル入側予測温度と規制温度範囲とを比較し、この比較結果に基づいて、ミル入側予測温度が規制温度範囲以内であるか否かを判定する。なお、このミル入側予測温度は、加熱炉13から圧延材20を抽出した時点における圧延材20の温度実測値に基づいて予測される。また、この規制温度範囲は、仕上圧延装置15の設備仕様に基づいて定められる。
判定処理部5cによって、ミル入側予測温度が規制温度範囲以内であると判定された場合(ステップS102,Yes)、演算処理部5は、仕上圧延装置15による圧延材20の上限速度での圧延材20のミル出側温度を予測する(ステップS104)。このステップS104において、材温度予測部5aは、記憶部4に格納された温度モデル4aを読み出す。材温度予測部5aは、この上限速度を圧延材20の圧延速度vとして仮決定し、この仮決定した上限速度を温度モデル4a(式(1)参照)に代入する。材温度予測部5aは、この温度モデル4aを用いて、仕上圧延ラインA3全体における圧延材20の累積抜熱量を予測し、この予測した累積抜熱量をもとに、圧延材20のミル出側予測温度を算出する。この算出されたミル出側予測温度が、上述した上限速度での圧延材20のミル出側温度の予測値である。
一方、判定処理部5cによって、ミル入側予測温度が規制温度範囲外であると判定された場合(ステップS102,No)、演算処理部5は、このミル入側予測温度を規制上限温度に変更する(ステップS103)。このステップS103における規制上限温度は、上述した仕上圧延装置15の規制温度範囲内における最高温度である。その後、演算処理部5は、上述したステップS104の処理を実行する。
つぎに、演算処理部5は、圧延材20のミル出側予測温度が仕上圧延装置15の規制温度範囲以内であるか否かを判定する(ステップS105)。このステップS105において、判定処理部5cは、上述したステップS104において予測されたミル出側予測温度と仕上圧延装置15の規制温度範囲とを比較し、この比較結果に基づいて、ミル出側予測温度が規制温度範囲以内であるか否かを判定する。
判定処理部5cによって、ミル出側予測温度が規制温度範囲以内であると判定された場合(ステップS105,Yes)、演算処理部5は、圧延材20が上限速度で圧延されると判断して、仕上圧延装置15による圧延材20の圧延時間を予測し(ステップS106)、本処理を終了する。このステップS106において、圧延時間予測部5bは、圧延材20の圧延速度として予測される上限速度と、仕上圧延ラインA3のライン長さL2(図1参照)とをもとに、除算処理等を行って、圧延材20の予測圧延時間を算出する。
一方、判定処理部5cによって、ミル出側予測温度が規制温度範囲外であると判定された場合(ステップS105,No)、演算処理部5は、仕上圧延装置15の出側における規制温度範囲(以下、ミル出側規制温度範囲という)を満たす上限速度を算出する(ステップS107)。
このステップS107において、演算処理部5は、ステップS101において読み出した基礎情報のうちの初期圧延速度と加速率とをもとに、仕上圧延装置15による圧延材20の仮上限速度を算出する。ついで、材温度予測部5aは、この算出された仮上限速度を圧延速度vとして温度モデル4aに代入し、この温度モデル4aを用いて、圧延材20のミル出側予測温度を算出する。この算出されたミル出側予測温度がミル出側規制温度範囲以内である場合、演算処理部5は、この算出した仮上限速度を、ミル出側規制温度範囲を満たす上限速度とする。
一方、このミル出側予測温度がミル出側規制温度範囲外である場合、演算処理部5は、上述した初期圧延速度と加速率とをもとに、仕上圧延装置15による圧延材20の仮上限速度を算出し直す。この再度の仮上限速度算出処理において、このミル出側予測温度がミル出側規制温度範囲を超過する場合、演算処理部5は、前回算出した仮上限速度に比して高速の仮上限速度を算出する。このミル出側予測温度がミル出側規制温度範囲を下回る場合、演算処理部5は、前回算出した仮上限速度に比して低速の仮上限速度を算出する。材温度予測部5aは、この算出し直された仮上限速度を圧延速度vとして温度モデル4aに代入し、この温度モデル4aを用いて、圧延材20のミル出側予測温度を再度算出する。この算出されたミル出側予測温度がミル出側規制温度範囲以内である場合、演算処理部5は、この算出した仮上限速度を、ミル出側規制温度範囲を満たす上限速度とする。演算処理部5は、このミル出側予測温度がミル出側規制温度範囲以内になるまで、上述した再度の仮上限速度算出処理およびミル出側予測温度算出処理を繰り返し実行する。
つぎに、演算処理部5は、上述したミル出側規制温度範囲を満たす上限速度算出値が仕上圧延装置15の下限速度以下であるか否かを判定する(ステップS108)。このステップS108において、判定処理部5cは、上述したステップS107において算出された上限速度算出値とステップS101において読み出された基礎情報のうちの下限速度とを比較し、この比較結果に基づいて、この上限速度算出値が下限速度以下であるか否かを判定する。
判定処理部5cによって、上限速度算出値が下限速度以下であると判定された場合(ステップS108,Yes)、演算処理部5は、圧延材20の圧延速度が下限速度以下にならないと判断して、仕上圧延装置15による圧延材20の圧延時間を予測し(ステップS109)、本処理を終了する。このステップS109において、圧延時間予測部5bは、圧延材20の圧延速度が下限速度であると予測し、この予測した下限速度と、仕上圧延ラインA3のライン長さL2とをもとに、除算処理等を行って、圧延材20の予測圧延時間を算出する。
一方、判定処理部5cによって、上限速度算出値が下限速度を超過すると判定された場合(ステップS108,No)、演算処理部5は、ミル出側規制温度範囲を満たす上限速度まで圧延材20の圧延速度が加速すると判断して、仕上圧延装置15による圧延材20の圧延時間を予測し(ステップS110)、本処理を終了する。このステップS110において、圧延時間予測部5bは、圧延材20の圧延速度がステップS107による上限速度算出値と同値であると予測し、この上限速度算出値と、仕上圧延ラインA3のライン長さL2とをもとに、除算処理等を行って、圧延材20の予測圧延時間を算出する。
演算処理部5は、上述したステップS101〜S110の各処理工程を適宜実行することによって、圧延速度の予測演算処理を達成する。演算処理部5は、このような予測演算処理を圧延材毎に繰り返し実行する。
上述したように圧延時間の予測演算処理が実行された後、制御部6は、この予測演算処理による圧延時間予測結果として、ステップS106、ステップS109、またはステップS110によって算出された予測圧延時間を演算処理部5から取得する。制御部6は、この取得した予測圧延時間をもとにミルペーシング制御を行い、これによって、圧延材同士の干渉が発生しない最短の抽出タイミングでの圧延材抽出を加熱炉13に行わせる。
詳細には、このミルペーシング制御において、制御部6は、まず、図1に示した加熱ラインA1から仕上圧延ラインA3までの距離(すなわち粗圧延ラインA2のライン長さL1)と、搬送装置12による圧延材搬送速度とをもとに、圧延材20に後続する次の圧延材21が加熱炉13から仕上圧延ラインA3に到達するまでの時間を算出する。ついで、制御部6は、この算出した時間と、演算処理部5から取得した予測圧延時間とをもとに、加熱炉13から圧延材21を抽出する抽出タイミングを算出する。その後、制御部6は、この算出した抽出タイミングに加熱炉13内の圧延材21が搬送装置12側へ抽出されるように、加熱炉13を制御する。
このように制御部6によって抽出タイミングを制御された加熱炉13は、先行する圧延材20と次の圧延材21とを干渉させない最短の時間間隔で、加熱後の圧延材21を抽出する。この結果、圧延材温度に対応して圧延速度を変化させる仕上圧延装置15を備えた熱間圧延ライン11において、加熱炉13からの圧延材抽出を能率よく行えるとともに、ライン上における圧延材間隔として、圧延材同士が干渉しない最短の間隔を圧延材毎に実現できる。
つぎに、本発明の実施の形態にかかるミルペーシング制御装置1およびミルペーシング制御方法によるミルペーシング制御の精度について説明する。図5は、本発明の実施の形態における温度モデルによる圧延材温度の予測精度を示す模式図である。図6は、従来技術のミルペーシング制御における圧延時間の予測精度を示す模式図である。図7は、本発明のミルペーシング制御における圧延時間の予測精度を示す模式図である。なお、図5には、温度モデル4aを用いて算出した圧延材予測温度と、この圧延材予測温度に対応する圧延材実績温度との相関関係を示す散布図が図示されている。また、図6,7には、縦軸に、度数として圧延材数(スラブ数)をとり、横軸に、ミルペーシング制御における圧延時間の予測値と実績値との誤差時間をとったヒストグラムが図示されている。
まず、本実施の形態における温度モデル4aによる圧延材温度の予測精度の観点から、本発明によるミルペーシング制御の精度を評価する。本評価においては、厚みおよび成分等の材料特性が圧延材20と略同様な圧延材サンプルを準備し、この圧延材サンプルについて、まず、温度モデル4aを用いて圧延材サンプルのミル出側温度を予測した。ついで、この温度予測後の圧延材サンプルを熱間圧延ライン11に実際に流して、温度計18による圧延材サンプルのミル出側温度の実績値を測定した。なお、相当数(例えば、15,000サンプル以上)の圧延材サンプルについて、このような評価を実施した。また、本評価において、加工発熱や摩擦発熱等の圧延材サンプルに加わる加熱量は、学習によって補完した。
本評価によって、図5の散布図に示すような結果が得られた。なお、図5において、温度モデル4aによる圧延材予測温度は、圧延材20のミル出側予測温度に相当し、温度計18による圧延材実績温度は、圧延材20のミル出側実測温度に相当する。図5に示すように、本評価において、温度モデル4aによる圧延材予測温度と温度計18による圧延材実績温度との予測誤差は、σ=20℃という良好な結果となった。すなわち、上述した温度モデル4aは、圧延材温度に対応してリアルタイムに圧延速度を変化させる仕上圧延装置15を対象にしても、本発明によるミルペーシング制御の実現に十分な程度に、圧延材サンプルのミル出側温度を精度よく予測できることが確認できた。なお、本評価において、温度モデル4aは、集中定数系のモデルであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、差分法または有限要素法を用いたモデルであってもよい。
つぎに、上述した温度モデル4aによるミル出側予測温度に基づいた圧延時間の予測精度の観点から、本発明によるミルペーシング制御の精度を評価する。本評価においては、従来法による圧延時間の予測精度と本発明による圧延時間の予測精度とを比較した。なお、圧延材サンプルの厚みおよび成分等の材料特性は、従来法による評価と本発明の方法による評価との間において、ほぼ同様とした。また、本評価に用いるラインは、図1に示した熱間圧延ライン11に統一した。
従来法によるミルペーシング制御機能を用いた場合、圧延時間の予測精度は、次のようになった。具体的には、従来法では、上述した圧延速度vを加味せず、コイル状に巻き取られる圧延材の予測コイル長、圧延後の圧延材の命令(目標)板厚、圧延材のミル出側温度目標値等を項とした回帰式に基づいて、仕上圧延装置15による圧延材サンプル(スラブ)の圧延時間を予測した。
従来法による圧延時間の予測精度を評価した結果、図6に示すように、圧延時間の予測値と実績値との予測誤差は、σ=4.8秒となった。このような従来法による予測誤差では、圧延材温度に対応してリアルタイムに圧延速度を変化させる仕上圧延装置15の圧延時間の予測精度として不足である。すなわち、従来法のミルペーシング制御機能では、このような圧延法を用いる仕上圧延装置15に対する圧延時間の予測誤差が過度に大きい。これは、上述したように、従来法において圧延時間の予測に用いる回帰式に、仕上圧延装置15における圧延速度vの変化が考慮されていないためである。
ここで、上述したような予測精度の従来法に基づいてミルペーシング制御を行っても、熱間圧延ライン11内において圧延材同士が干渉する可能性がある。この圧延材同士の干渉を回避するためには、本発明による最短ピッチに比して、加熱炉13からの圧延材抽出タイミングを延長せざるを得ない。この結果、加熱炉13からの圧延材抽出を能率よく行えないことは勿論、圧延能率の向上も期待できない。
これに対し、本発明におけるミルペーシング制御機能では、上述した式(1)に示される温度モデル4aを用いてミル出側予測温度を算出し、この算出したミル出側予測温度をもとに、仕上圧延装置15による圧延材サンプルの圧延時間を予測した。その結果、図7に示すように、圧延時間の予測値と実績値との予測誤差は、上述した従来法の場合に比して低い誤差時間、具体的には、σ=3.7秒という良好なものになった。これは、上述した温度モデル4aによるミル出側温度の予測が、圧延材温度に対応してリアルタイムに圧延速度を変化させる仕上圧延装置15に十分順応しているためである。このような圧延時間の予測精度を実現可能な本発明のミルペーシング制御によれば、熱間圧延ライン11内において圧延材同士を干渉させることなく、加熱炉13からの圧延材抽出タイミングを最短ピッチに制御できる。この結果、本発明によれば、加熱炉13からの圧延材抽出を能率よく行えるとともに、仕上圧延装置15等の設備の上流側において圧延材20が停滞する時間(以下、設備アイドリング時間という)の延長を防止でき、この結果、圧延能率を向上できることが確認された。
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、仕上圧延装置による圧延速度の増減変化に対応して圧延材の温度が増減変化する現象をモデル化した温度モデルを用いて、圧延材のミル入側予測温度から圧延材のミル出側温度を予測し、この予測したミル出側温度をもとに、仕上圧延装置による圧延時間を予測するように構成している。また、この予測した圧延時間をもとに、加熱炉からの圧延材抽出タイミングを制御している。
このため、たとえ圧延材温度の増減変化に対応してリアルタイムに圧延速度を変化させる仕上圧延装置を予測対象とした場合であっても、上述した温度モデルを用いて、この仕上圧延装置の出側における圧延材のミル出側予測温度を実績値に比して精度よく算出できる。これによって、如何なる圧延速度パターンの圧延工程についても、圧延速度パターンに対応して圧延材の圧延時間を精度よく予測できることから、圧延速度が一定である圧延方式は勿論、圧延材の温度に対応してリアルタイムに圧延速度を変化させる圧延方式の場合であっても、精度良く圧延時間を予測できる。この結果、加熱炉からの圧延材抽出タイミングを、熱間圧延ライン内において圧延材同士が干渉しない最短ピッチに制御可能なミルペーシング制御を実現できる。
このようなミルペーシング制御によって、加熱炉からの圧延材抽出タイミングの延長を防止できるとともに、圧延材同士の干渉を発生させずに加熱炉から圧延材を能率良く抽出できる。この結果、熱間圧延ライン内における設備アイドリング時間の延長を防止できることから、熱間圧延ラインの圧延能率を向上できるとともに、熱間圧延製品を効率よく製造でき、さらには、用役費を削減することができる。
また、本発明の実施の形態では、ミル出側予測温度に対応して可能な限り高速の圧延速度をもとに、圧延材の圧延時間を予測しているので、圧延工程において許容される最高の圧延材温度に達するまで加速する圧延速度での圧延時間を精度よく予測できる。この結果、仕上圧延装置に許容される最高の圧延速度の圧延工程を行いつつ、この最高の圧延速度に適合した最短の圧延材抽出タイミングで加熱炉から圧延材を抽出できることから、加熱炉からの圧延材抽出能率の向上と熱間圧延ラインにおける圧延能率の向上とを一層促進できる。
なお、上述した実施の形態では、仕上圧延装置15に対応する温度モデル4aを用いてミルペーシング制御を行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、圧延材温度の予測対象の圧延装置は、圧延材温度の増減変化に対応して圧延速度を変化させる圧延法の装置であればよく、例えば、この圧延法を粗圧延装置に適用していれば、この粗圧延装置を圧延材温度の予測対象としてもよい。
また、上述した実施の形態では、7スタンドの圧延機15a−1〜15a−7を有する仕上圧延装置15を例示したが、これに限らず、仕上圧延装置15は、1以上の圧延機を有する圧延装置であればよい。また、仕上圧延装置15の各圧延機の圧延ロール数等の設備形態は、圧延工程に対応して必要なものにすればよい。すなわち、本発明において、仕上圧延装置15の圧延スタンド数および設備形態は、特に問われない。
さらに、上述した実施の形態では、仕上圧延装置15による圧延時間を予測する際に用いる圧延速度は、圧延機15a−1〜15a−7に共通の圧延速度にしていたが、これに限らず、圧延時間予測時の圧延速度は、仕上圧延装置15内の上流側の圧延機による圧延速度であってもよいし、下流側の圧延機による圧延速度であってもよいし、これらの中間の圧延機による圧延速度であってもよい。あるいは、この圧延速度は、これらを適宜組み合わせたものであってもよいし、仕上圧延装置15における平均の圧延速度であってもよい。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、圧延材20,21は、鉄鋼材であってもよいし、銅またはアルミニウム等の鉄鋼材以外の金属材であってもよい。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。