JP6011124B2 - 非接触及び接触共用icカード、非接触及び接触共用icカードの製造方法 - Google Patents
非接触及び接触共用icカード、非接触及び接触共用icカードの製造方法 Download PDFInfo
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(1)被覆付導線やエッチング加工にて形成されたアンテナコイルが埋め込まれたカード基板を作製する。
なお、アンテナの両端部の端子は、ICチップ実装基板と安定的な接続を可能とするとともに、材料費を抑え、生産性をよくするために、一般的には、ICチップ実装基板に設けられたアンテナ接続用端子と略同一サイズの略プレート状にしている。また、被覆付導線アンテナの場合には、両端部を連続的に狭ピッチで折畳んで、略プレート状に形成する。このため、被覆付導線アンテナは、両端部の形成時間が長く、両端部の端子サイズを大きくすると線長が長くなるので、更に形成時間が長くなり、また高コストになる。これらを防止するために、被覆付導線アンテナは、端子サイズを極力小さなサイズにするのが技術常識である。
第2の発明は、第1の発明の非接触及び接触共用ICカードにおいて、前記導電プレート(33,34,233−1,234−1,233−2,234−2,533,534)は、このICカードの表面(2a)を法線方向から見たときに、設置領域が少なくとも前記ICチップ実装基板のコーナ部である基板コーナ部(12a,12b,12d,12e)に重複すること、を特徴とする非接触及び接触共用ICカードである。
第3の発明は、第1の発明の非接触及び接触共用ICカードにおいて、このICカードは、表面(2a)の法線方向から見たときに、外形が長方形であり、前記導電プレート(334−1,334−2d,334−2e,334−3d,334−3e)は、このICカードの表面を法線方向から見たときに、長辺方向内側(X2)の設置領域のみが、前記ICチップ実装基板のコーナ部である基板コーナ部(12d,12e)に重複すること、を特徴とする非接触及び接触共用ICカードである。
第4の発明は、第1の発明の非接触及び接触共用ICカードにおいて、このICカードは、表面(2a)を法線方向から見たときに、外形が長方形であり、導電プレート(433−1,434−1,433−2,434−2)は、このICカードの表面を法線方向から見たときに、短辺方向内側(Y1)の設置領域のみが、前記ICチップ実装基板のコーナ部である基板コーナ部(12b,12e)に重複すること、を特徴とする非接触及び接触共用ICカードである。
第7の発明は、第1から第6までのいずれかの発明の非接触及び接触共用ICカードにおいて、このICカードの表面(12a)を法線方向から見たときに、前記ICチップ実装基板(12)の外側の領域であって前記導電プレート及びカード基材からなる領域(A2)の剛性は、前記ICチップ実装基板が実装されている領域(A1)の剛性よりも低く、カード基材のみの領域(A3)の剛性よりも高いこと、を特徴とする非接触及び接触共用ICカードである。
以下、図面等を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態のICカード1の平面図及び断面図である。
図1(a)は、ICカード1の平面図(上面2a(表面)を法線方向から見た図)である。
図1(b)は、ICカード1の断面図(図1(a)に示すb−b部矢視断面図)である。
図2は、ICカード1の平面図、断面図の拡大図である。
図2(a)は、ICモジュール10近傍の拡大図(図1(a)の矢印a部拡大図)である。
図2(b)は、上層3及び下層4の当接面で切断した断面図(図2(c)、図2(d)のb−b部断面図)である。
図2(c)は、ICモジュール10の中心線を通る面での断面図(図2(a)、図2(a)のc−c部断面図)である。
図2(d)は、導電プレート33とコイル端23との溶接箇所33a,33bでの断面図(図2(a)、図2(a)のd−d部断面図)である。
各図は、内部構成を説明するために、内部に収容された電気部品等は、適宜透視して示す。また、以下の説明において、ICカード1の外部接触端子14が設けられた面を上面2aとし、また、外部接触端子14を左側X1に配置したときの配置を基準に、左右方向X(長辺方向)、縦方向Y(短辺方向)、厚さ方向Z(積層方向)を規定する。実施形態では、カード表面等を法線方向から見た図を適宜平面図といい、また、平面図における形状を適宜平面形状という。
図1に示すように、ICカード1は、カード基材2、ICモジュール10、アンテナ20、導電プレート33,34を備える。また、説明は省略するが、ICカード1は、必要に応じて、ホログラム、磁気ストライプ、エンボス情報部、サインパネル等が設けられる。
カード基材2は、上層3及び下層4から構成される。上層3及び下層4は、ICカード1の厚さ方向Zの上側Z2及び下側Z1に配置されたシート部材である。上層3及び下層4は、PET、PET−G、PVC等の樹脂シート材を用いることができる。上層3は、単一のシート材により形成された単層構造でも、複数のシート材を積層した多層構造であってもよい。同様に、下層4は、単層構造でも、多層構造でもよい。
上層3及び下層4は、導電プレート33,34の設置領域以外では、上層3の下面及び下層4の上面が直接接合される。この接合は、例えば、接着材による接着、加熱及び加圧による熱溶着、超音波溶着等の手法を用いる。
ICモジュール10は、ICチップ11、外部接触端子14及び基板側接続部13を有する実装基板12(ICチップ実装基板)を備える。
図2に示すように、ICチップ11は、実装基板12の下面に実装され、樹脂11b等によって封止(パッケージ)されている。
ICチップ11は、外部接触端子14を介して外部機器との間で接触通信を行う機能と、アンテナ20を介して外部機器との間で非接触通信を行う機能とを備える非接触及び接触共用のものである。
接触通信の主な機能は、例えば、国内及び海外のクレジット会員情報、銀行口座情報等の記憶、及びこれらの情報の認証や書き換え等である。一方、非接触通信の主な機能は、例えば、交通機関での定期券等の情報の記憶、及び改札の出入時におけるこれらの情報の認証等である。
基板側接続部13は、実装基板12の下面に形成された導電性を有するプレートである。基板側接続部13は、金ワイヤ等の接続配線11aを介してICチップ11に接続されるとともに、導電性ペースト(導電性接着剤)30を介してアンテナ20の導電プレート33,34に接続されている。基板側接続部13は、平面形状において、実装基板12の左側X1及び右側X2に、左右対称に配置されている。
外部接触端子14は、例えば、銅板に金メッキを施したものであり、ICカード1の他の構成部品よりも剛性が高い。
アンテナ20は、導線の周囲を、絶縁体により形成された被覆によって覆った被覆付導線21により形成される。ICカード1は、被覆付導線21を用いることにより、形成加工費を例えばエッチング等に比較して安価にできる。アンテナ20は、基材2内に埋設されている。
コイル部22は、被覆付導線21がコイル状(渦巻き状)に巻かれ(図1の例では、約3巻)、実際に上記通信機能を奏する部分である。
導電プレート33,34とコイル部22の両端23,24とは、溶接によって接続されている。このため、導電プレート33は、溶接の加工性をよくするために、例えば、銅合金に銀メッキを加工して形成される。
導電プレート33とコイル端23との溶接箇所33a,33b(接続部)は、コイル端23の位置ずれ及び接続外れを防止するために、縦方向Yの上下2箇所に設けられている。導電プレート34及びコイル端23も同様に、溶接箇所34a,34b(接続部)で溶接される。
また、溶接箇所33a,33b,34a,34bは、ICモジュール収容穴15を形成する際に力が加わらないように、ICモジュール収容穴15よりも外側に設けられる。
導電プレート33,34は、ICカード1の剛性向上の観点からカード基材2よりも剛性の高い材料により形成することが望ましく、銅の他には、例えばアルミニウム等の金属材料が望ましい。また、後述するように、導電プレート33,34が設置されている領域(後述する導電プレート設置領域A2)は、カード基材2の剛性を向上するように、構造設計されている。
貫通孔33c,34cは、導電プレート33,34を厚さ方向Zに貫通している。
図2(b)に示すように、平面図における貫通孔33c,34cの設置領域は、コイル端設置領域A6、アンテナ端子露出領域A7以外の領域である。
コイル端設置領域A6は、導電プレート33,34の左右方向外側の領域であり、アンテナ20のコイル端23,24が設置される領域である。コイル端設置領域A6及び貫通孔33c,34cを重ならないように配置する理由は、溶接箇所33a,33bにおいて、コイル端23,24及び導電プレート33,34を安定して溶接するためである。
アンテナ端子露出A7は、カード切削加工により、導電プレート33,34の左右方向内側の領域の一部を半円状に露出させた部分である。アンテナ端子露出A7では、導電プレート33,34及び基板側接続部13間が、導電性ペースト30を介して電気的に接続される。アンテナ端子露出A7及び貫通孔33c,34cを重ならないように配置する理由は、凹部領域A7での導電性ペースト30との接続面積を大きくして、導電プレート33,34及び基板側接続部13間を、安定して接続するためである。
図3(図3−1、図3−2)は、第1実施形態のICカード1の製造工程を説明する平面図及び断面図であり、ICモジュール10近傍を示す図である。
図3(a)において、図3(a1)は、平面図である。図3(a2)は、断面図(図3(a)のa2−a2部矢視断面図)である。図3(b)から図3(d)も同様である。
また、図3(a3)は、断面図(図3(a)のa3−a3部矢視断面図)である。
ICカード1は、以下の工程に従って製造される。なお、以下の工程は、最も簡単な構成のICカード1を説明するものであり、磁気ストライプ、ホログラム等を設ける場合には、これらの設置工程を別途設ける。
アンテナ形成工程は、以下の工程に従う。
(1)図3(a)に示すように、平面形状がH型の導電性を有する板部材35を、上層3の下面に積層する。板部材35は、後述するように、導電プレート33,34に加工される部材である。板部材35の両端部の縦部分35a,35bは、導電プレート33,34に対応する部分である。板部材35は、縦部分35a,35bと、これらを連結する連結部35cとによって一体的に形成される。連結部35cの左右方向Xの長さは、下段凹部15b(図3(c)参照)とほぼ同じ大きさである。
この板部材35を、連結部35cが、ICモジュール10のICチップ11を埋設するICモジュール収容穴15の下段凹部15b(図3(c)参照)の予定形成範囲を、左右方向Xに横切るように配置する。
(2)抜き加工前の状態の上層3の下面に、コイル部22を熱圧着によって埋設する(図1(b)参照)。
なお、図3(a2)に示すように、板部材35が設けられている領域では、コイル部22の両端23,24を、板部材35の下面に配置する。
(3)板部材35の縦部分35a,35bにコイル部22の両端23,24を、溶接箇所33a,33b,34a,34bで溶接し接続する。
カード積層工程は、以下の工程に従う。
(1)図3(a)に示すように、上層3に下層4を積層する。
(2)上層3と、下層4とを熱圧着により接着する。
このとき、板部材35の設置領域以外では、上層3の下面、下層4の上面の当接面が、熱圧着により直接接合される。
一方、導電プレート33,34の設置領域では、上層3、下層4が板部材35を介して積層されるものの、貫通孔33c,34c内で、上層3の下面、下層4の上面の当接面が直接接合される。
ここで、上層3及び板部材35は、異種の材料である為、熱圧着の相性が悪く、接合強度が弱く、同様に、下層4及び導電プレート33,34は、熱圧着の相性が悪い。この場合でも、貫通孔33c,34c内では、上層3及び上層4が熱溶融し、接合されるので、板部材35、つまり、導電プレート33,34を上層3及び上層4内に、くさびのように挟みこんで固着することができる。
なお、この工程では、必要に応じて、上層3の上面、下層4の下面に印刷保護シート(図示せず)を重ね合わせて、一体化させる。これにより、カード基材2(抜き加工前)が形成される。
アンテナ20を埋設したカード基材2を、打ち抜き加工によってカード形状に形成する。
図3(b)に示すように、カード基材2の一部をミリング加工等の手段で切削して、ICモジュール収容穴15のうち実装基板12を収容する上段凹部15aを形成する。上段凹部15aは、12mm×13mm×深さ200μmである。
(下段凹部形成工程)
図3(c)に示すように、カード基材2を板部材35よりも深く切削して、ICモジュール収容穴15のうちICチップ11を収容する下段凹部15bを形成すると同時に、板部材35の連結部35cを一緒に切削して(図3(c)のハッチング領域参照)、板部材35を導電プレート33,34の形状に加工する。下段凹部15bは、8.5mm(縦方向Y)×8.5mm(左右方向X)×深さ650μmである。
図3(d)に示すように、上段凹部15aの底部を、カード基材2の上層3のうち基板側接続部13に対応する部分を板部材35まで切削して、導電プレート33,34の一部が厚さ方向Zの上側Z2に露出するように、切削凹部15cを切削加工する。切削凹部15cは、φ3mm、深さ400μmの半円状である。
なお、上記上段凹部形成工程から導電プレート露出工程までの順番は、最終的にICモジュール収容穴15が形成されるように、適宜入れ替えてもよい。例えば、下段凹部形成工程の次に、上段凹部形成工程を設けてもよい。
ICモジュール搭載工程は、以下の工程に従う。
(1)切削凹部15c内に露出した導電プレート33,34に導電性ペースト30を塗布する(図2(c)参照)。
(2)ICモジュール10に絶縁性接着剤を付着させてICモジュール収容穴15に収容し、熱圧等を印加することにより、ICモジュール10とカード基材2とを一体化する。なお、導電プレート33,34と基板側接続部13とは、導電性ペースト30によって接続される。
以上により、ICカード1を製造できる。
図4は、第1実施形態のICカード1及び従来のICカード100に外力が加わり屈曲した状態を説明する図である。
図4(a)は、ICカードに外力が加わり屈曲する状態を説明する斜視図である。
図4(b)は、第1実施形態のICカード1のICモジュール10近傍における屈曲状態を説明する断面図である。
図4(c)は、従来のICカード100のICモジュール近傍における屈曲状態を説明する断面図である。
実装基板領域A1:実装基板12つまりICモジュール10と、導電プレート33,34と、カード基材2とから形成される領域。
導電プレート設置領域A2:導電プレート33,34と、カード基材2とから形成される領域。
カード基材領域A3:カード基材2のみから形成される領域。
導電プレート設置領域A2は、導電プレート33,34がカード基材2に埋め込まれた状態になるため、カード基材2のみのカード基材領域A3よりも剛性が高くなる。なお、導電プレート33,34をカード基材2よりも剛性の高い材料により形成した場合には、導電プレート設置領域A2の剛性を、カード基材領域A3よりも剛性を確実に高くできる。また、導電プレート設置領域A2は、実装基板領域A1よりも剛性が低くなるようにバランスよく構造設計されている。
つまり、ICモジュール10近傍は、剛性が「実装基板領域A1>導電プレート設置領域A2>カード基材領域A3」となるように、構造設計されている。
このような、変形状態は、導電プレート33,34の設置領域が実装基板12の左辺12c、右辺12f及び四隅を覆っているので(図2(a)、図2(b)参照)、左右方向XにおいてICモジュール10を含む全ての断面形状に当てはまる。つまり、図2(a)、図2(b)に示すように、領域A5を通る全ての左右方向Xの断面形状に当てはまる。これにより、カード基材2に発生するカード基材2自体の損傷、つまり内部、上面2a及び下面2bに発生する亀裂等を防止できる。特に、カード基材2のICモジュール10の左側X1の周辺及び右側X2の周辺における亀裂を防止でき、カード耐久性を向上できる。
また、従来のICカード100は、湾曲するときの角度θ100が大きいためアンテナ120に大きなストレスが加わる。さらに、亀裂100cが発生すると、その近傍でのアンテナ120に局部的により大きなストレスが加わる。これにより、従来のICカード100は、アンテナ120の損傷が発生しやすく、外部機器との安定した非接触通信ができなくなる場合があった。
従来のカード101,102と、本実施形態のICカード1の繰り返し屈曲試験について説明する。
図5は、比較試験1に使用した従来のICカード101,102と、実施形態のICカード1の平面図である。
図6は、比較試験1の試験結果を示す表である。
この試験では、従来のICカード101,102と、実施形態のICカード1の繰り返し屈曲試験を行い、カード基材2の上面及び下面の損傷と、アンテナ20の機能異常を確認した。
・厚さ300μmのポリエステル系基材シートに対して、被覆付導線(φ110μmの銅線)を加熱工法により略カード大サイズの約3回巻きのループ状になるように埋め込みを行った。
・アンテナ側接続部の形態及びサイズ:
・従来例1のICカード101(アンテナ側接続部小):図5(a)に示すように、各アンテナ側接続部123−1,124−1を縦5mm×横6mmの略プレート状になるように被覆付導線をピッチ0.3mmで計20回連続的に折り曲げた。
・従来例2のICカード102(アンテナ側接続部中):図5(b)に示すように、各アンテナ側接続部123−2,124−2を縦9mm×横6mmの略プレート状になるように被覆付導線をピッチ0.3mmで計20回連続的に折り曲げた。
・実施形態対応のICカード1(アンテナ側接続部大):図5(c)に示すように、各アンテナの両端23,24に縦16.5mm×横6mmの導電プレート33,34を溶接し、接続した。
図5(d)に示すように、ICカード1の左右端を保持して、カード中心に厚さ方向の上下方向に交互に負荷を加えた。片側の振幅を30mm、全幅60mmとして、各30枚について、屈曲回数3000回の折り曲げ試験を行った。
そして、500回毎にカード基材2のカード外観(上面及び下面)の損傷を確認した。
実施形態のICカード1は、図6に示すように、3000回まで、カード基材に亀裂が発生しなかった。
一方、従来例1のICカード101は、図6に示すように、2500回で全てのカード基材に亀裂が発生した。同様に、従来例2のICカード102は、2500回で60%のカード基材に亀裂が発生した。
さらに、ICカード1は、導電プレート33,34を用いることにより、従来例1,2のような被覆付導線アンテナの両端部を略プレート状に形成する工程が不要となり、形成時間の短縮化が図れ、アンテナ形成コストが安価となる。
なお、ICカード1は、導電プレート33,34の外形を大きくすれば、カード基材全体の剛性を向上できるので、カード基材の亀裂発生の低減を期待できる。
比較例のカード103と、本実施形態のICカード1の繰り返し屈曲試験について説明する。比較試験2では、導電プレート33,34の貫通孔33c,34cの有無にともなう効果を確認する。
図7は、比較試験2に使用した比較例のカード103の導電プレート133−3,1334−3近傍の構成を説明する図(図2(b)に相当する図)である。
図8は、比較試験2の試験結果を示す表である。
比較試験2で用いる実施形態のICカード1は、上記比較試験1で使用したものと同様である。
図7に示すように、比較例のカード103は、導電プレート133−3,134−3に貫通孔が設けられていない点が、ICカード1とは異なる。なお、説明は、省略するが、比較例のカード103についても、比較試験1を行なったが、ICカード1と同様に、カード基材の損傷がなかった。
比較試験2では、比較試験1と同様な繰り返し屈曲試験を行い、モジュール基板の浮きの発生率、非接触通信の異常の発生率を確認した。
試験結果:
実施形態のICカード1は、図8の表1に示すように、3000回まで、モジュール基板のカード基材2からの浮きがなかった。また、表2に示すように、3000回まで非接触での機能動作が可能であり、つまりアンテナ20の機能異常が発生しなかった。
一方、比較例のICカード103は、表1に示すように、2000回で10%のカードに、モジュール基板のカード基材からの浮きが発生し、3000回ですべてのカードに、モジュール基板のカード基材からの浮きが発生した。また、表2に示すように、2000回で3%のカードで通信異常が発生し、3000回で40%のカードで通信異常が発生した。
これは、モジュール基板のカード基材からの浮きが発生にともない、導電プレートとコイル端との溶接箇所の剥離、導電プレート又は基板側接続部からの導電性ペーストの剥離、アンテナの断線等が発生したためと考えられる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、第1実施形態から導電プレートの形状を変更したものである。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図9は、第2実施形態のICカード201−1,201−2の平面図(図2(c−1)に相当する図)である。
図9では、導電プレート233−1,234−1の貫通孔の図示は、省略した。
ICカード201−1は、製造時の下段凹部形成工程において、下段凹部15bを形成すると同時に、図9(a)に破線のハッチングで示すように、板部材235−1のうち下段凹部15bに重複する範囲を切削する。つまり、板部材235−1は、連結部235c−1と、縦部分235a−1,235b−1の下段凹部15bに重複する範囲とが切削され、図9(a)に実線のハッチングで示すように、導電プレート233−1,234−1に加工される。
板部材235−2は、製造時の下段凹部形成工程において、図9(b)に破線のハッチングで示すように、板部材235−2のうち下段凹部15bに重複する範囲を切削する。つまり、板部材235は、連結部235c−2の下段凹部15bに重複する範囲が切削され、縦部分235a−2,235b−2と、連結部235cの残存部分とからなる導電プレート233−2,234−2に加工される。
また、ICカード201−1,205−2は、第1実施形態と同様に、1枚の板部材235−1,235−2を積層すればよいので、積層工程を容易にでき、また、部品点数を削減できるので、低コストである。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図10は、第3実施形態のICカード301−1,301−2,301−3のICモジュール10周辺の平面図である。
図10では、導電プレート334−1,334−2d,334−2e,334−3d,334−3eの貫通孔の図示は、省略した。
図10(a)に示すように、ICカード301−1は、長辺方向内側つまり右側X2の導電プレート334−1のみが設けられ、導電プレート334−1の設置領域が、右側X2(カード内側)の基板コーナ部12d,12e,右辺12f(外側の辺)に重複する。
ここで、ICカード301−1の曲率は、内側に至る程大きくなる。例えば、図4に示すように、内側(右側X2)の導電プレート設置領域A2−2及びカード基材領域A3−2は、外側(左側X1)の導電プレート設置領域A2−1及びカード基材領域A3−1よりも曲率が大きくなる。
このため、ICカード301−1は、内側の導電プレート334−1のみを基板コーナ部12d,12e,右辺12fに重複するように形成することにより、屈曲によって力が加わりやすい内側の基板コーナ部12d,12e,右辺12f近傍の剛性を向上できる。これにより、ICカード301−1は、前述した損傷、剥離等の発生を防止できるとともに、コスト増加を抑えることができる。
ここで、基板コーナ部12d,12e近傍は、右辺12f中央よりも、屈曲によって力が加わりやすい。
このため、ICカード301−2は、屈曲によって力がより加わりやすい基板コーナ部12d,12e近傍の剛性を向上して、前述した損傷、剥離等の発生を防止できるとともに、コスト増加を一層抑えることができる。
ICカード301−3は、下段凹部形成工程において、第2実施形態と同様に、下段凹部15bを形成すると同時に、板部材345の連結部345cを切削できる。これにより、ICカード301−3は、導電プレート334−3d,334−3eが2つに分かれていても、第2実施形態と同様に、製造工程を簡単にでき、低コストである。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図11は、第4実施形態のICカード401−1,401−2のICモジュール10周辺の平面図である。
図11では、導電プレート33−1,434−1の貫通孔の図示は、省略した。
ここで、前述したように、ICカード401−1は、短辺方向よりも長辺方向に曲がりやすく、同一の力を加えた場合の変位は、短辺方向よりも長辺方向の方が大きい。しかし、同一の変位を加えた場合の曲率は、長辺方向よりも短辺方向の方が大きい。この場合には、実装基板12周辺に加わる力は、長辺方向よりも短辺方向の方が大きくなる。また、短辺方向において、実装基板12の外側のコーナ部12a,12d周辺よりも内側の基板コーナ部12b,12e周辺に対して、より大きな力がかかる。
従って、実装基板12の内側の基板コーナ部12b,12e周辺の剛性を向上することにより、ICカード401−1に力がかかりやすいこの領域の損傷、剥離等の発生を効果的に防止できるとともに、導電プレート433−1,434−1のサイズを小さくできるため、コスト増加を抑えることができる。
この場合にも、下段凹部形成工程において、第2実施形態と同様に、下段凹部15bを形成すると同時に、板部材435の連結部435cを切削できるので、製造工程を簡単にでき、低コストである。
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図12は、第5実施形態のICカード501の製造工程、比較例のICカード105の製造工程を説明する図である。
なお、第5実施形態は、アンテナ520を下層4(アンテナ形成層)側に形成する例を示すが、前述した実施形態と同様に上層3(他の基材)側に形成してもよい。また、以下の説明において、主に、右側X2部分の構成、工程について説明するが、左側X1部分についても同様な構成、工程である。
図12(a)は、下層4に板部材535を積層した状態の図である。
図12(a1)は、ICモジュール収容穴15の予定範囲近傍の平面図である。
図12(a2)は、ICモジュール収容穴15の中央断面図(図12(a1)のa2−a2部矢視断面図)である。
図12(a3)は、板部材535の下端535aを通る断面図(図12(a1)のa3−a3部矢視断面図)である。
図12(b)は、アンテナ520のアンテナ側接続部523,524を配置した状態の図である。
図12(c)は、ICモジュール収容穴15を形成した状態の図である(右側X2部分のみ示す)。
図12(b1)から図12(b3)及び図12(c1)から図12(c3)は、図12(a1)から図12(a3)に対応する範囲の平面図、断面図である。
図12(a1)、図12(b1)は、ICモジュール収容穴15の上段凹部15a、下段凹部15bを形成する予定線を破線で示す。
図12(d)は、比較例のアンテナ120−5のアンテナ側接続部124−5を配置した状態の図(図12(b1)に対応する図)である。
板部材535は、矩形の外側の辺(縁部)をICモジュール収容穴15に向けて内側に切り欠いたような形状をしている。板部材535は、縦方向Yに対称である。このため、右側X2及び左側X1の板部材535は、表裏反転させるか、回転させることにより共通で用いることができるので、コストを削減できる。
導電プレート534は、下端535a及び上端535b(2つの端部)、端部接続部535cを備える。
下端535a及び上端535bは、板部材535の縦方向下側Y1の範囲、及び上側Y2の範囲を、形成する部分である。
端部接続部535cは、下端535a及び上端535bを接続する部分である。端部接続部535cは、外側(右側X2)の辺を切り欠く切り欠き535dが形成されている。端部接続部535cの外側(右側X2)の縁部535eは、ICモジュール収容穴15よりも外側(右側X2)に位置するような大きさである。切り欠き535dは、ICモジュール収容穴15には、重複しない程度の大きさである。
ICカード501の製造方法は、以下の工程に従う。
(板部材積層工程)
図12(a)に示すように、板部材535を、ICモジュール収容穴15の予定範囲の右側X2の縁部に重複するように、下層4に積層する。このICモジュール収容穴15は、ICチップ11(図1参照)及び実装基板12(図1参照)を有するICモジュール10(図1参照)を埋設する穴である。板部材535は、接着剤等により、下層に貼り付けされる。
図12(b)に示すように、アンテナ520のアンテナ側接続部524を、板部材535上に配置する。アンテナ側接続部524は、縦方向Yに平行に配置され、板部材535の上端535b及び下端535aを通って、切り欠き535dを跨ぐように配置される。アンテナ側接続部524の縦方向下側Y1の先端は、下端535aからはみ出るように配置される。
図12(b)に示すように、アンテナ側接続部524を加熱、加圧、超音波などを印加して、切り欠き535dを跨ぐ範囲と、上端535bから縦方向上側Y2に出た範囲、下端535aから縦方向下側Y1に出た範囲の3箇所の範囲で、下層4に埋設する。なお、この工程では、コイル部(図1に示すコイル部22参照)も同時に、下層4に埋設する。
図12(b2)は、アンテナ側接続部524が切り欠き535dを跨ぐ範囲の断面図であるが、アンテナ側接続部524が下端535aから縦方向下側Y1に出た下端外側範囲Saと、アンテナ側接続部524が上端535bから縦方向上側Y2に出た上端外側範囲Sbについても、下層4に埋設される。
このため、下端535a上のアンテナ側接続部524は、縦方向下側Y1及び上側Y2の両側で保持されるような形態になる。つまり、下端535a上のアンテナ側接続部524は、切り欠き535d内及び下端外側範囲Saで保持されることになる。同様に、上端535b上のアンテナ側接続部524は、両側、つまり切り欠き535d内及び上端外側範囲Sbで保持されることになる。
これにより、下端535a上のアンテナ側接続部524、上端535b上のアンテナ側接続部524は、フリーな部分の距離が短くなり、撓みが抑制される。このため、アンテナ側接続部524は、外側(右側X2)や内側に撓むことが抑制される。
なお、アンテナ側接続部524の撓みは、板部材535の大きさが大きくなり、下端535a及び下端535aの縦方向Yの長さが大きくなる程、アンテナ側接続部524のうちフリーになる長さが大きくなるため、発生しやすくなる。この場合であっても、切り欠き535dの大きさを大きくして、下端535a及び上端535bの長さ縦方向Yの長さが小さくすれば、この撓みを抑制できる。
アンテナ側接続部524を、板部材535上に固定する。アンテナ側接続部524及び板部材535は、スポット溶接等によって板部材535に固定され、かつ、電気的に接続される。固定箇所は、下端535a上の範囲536a及び上端535b上の範囲536bの少なくとも2箇所である。なお、前述したように、アンテナ側接続部524の撓みが抑制されるので、作業者は、固定時の作業性を向上できる。
図12(c)に示すように、下層4に上層3を積層する。
カード積層工程は、第1実施形態とほぼ同様である。
図12(c)に示すように、ICモジュール収容部形成を形成する。
ICモジュール収容部形成工程は、第1実施形態の上段凹部形成工程、下段凹部形成工定、導電プレート露出工程と同様に行われる。
なお、下段凹部形成工程において、板部材535は、下段凹部15bに重複する範囲(図12(b1)にハッチングで示す範囲)が同時に切削され、板部材535が導電プレート534の形状に加工される。
一方、図12(d)に示すように、比較例のアンテナ側接続部124−5のように、撓みによってICモジュール収容部の予定範囲に侵入してしまうと、アンテナ側接続部124−5は、上段凹部形成工程、下段凹部形成工程において切削されてしまう。この場合には、アンテナ側接続部124−5は、断線したり、板部材との固定部に機械的な力が加わることによる接続不良等の問題が発生する可能性がある。
本実施形態のアンテナ側接続部524は、ICモジュール収容部の予定線内に侵入することが抑制されるので、このような問題の発生を抑制できる。
なお、外側又は内側の板部材535は、第2実施形態と同様に、連結部235c−1,235c−2で連結してもよい。
また、板部材535は、第3実施形態と同様に、外側及び内側のいずれかに設けてもよい。
2 カード基材
3 上層
4 下層
10 ICモジュール
11 ICチップ
12 実装基板
13 基板側接続部
15 ICモジュール収容穴
15a 上段凹部
15b 下段凹部
15c 切削凹部
20 アンテナ
22 コイル部
23,24,523,524 アンテナ側接続部
33,34,233−1,234−1,233−2,234−2,334−1,334−2d,334−2e,334−3d,334−3e,433−1,434−1,433−2,434−2,533,534 導電プレート
33c,34c,533c,534c 貫通孔
235c−1,235c−2,345c,435c 連結部
235−1,235−2,345,435,535 板部材
A1 実装基板領域
A2 導電プレート設置領域
A3 カード基材領域
Claims (8)
- アンテナを用いて外部との間で無線通信、及び外部接触端子を用いて外部との間で接触通信を行うICチップを備える非接触及び接触共用ICカードであって、
前記アンテナは、被覆付導線により形成され、両端部に電気的な接続部であるアンテナ側接続部をそれぞれ備え、
前記ICチップが実装され、両端部に電気的な接続部である基板側接続部をそれぞれ有するICチップ実装基板と、
前記アンテナの両端にそれぞれ設けられ、このICカードの表面を法線方向から見たときに前記ICチップ実装基板の対向する2つの辺に重なるように配置され、前記アンテナの両端が前記ICチップ実装基板の対向する2つの辺に沿った方向に渡って延びるように配置され、前記アンテナ側接続部に電気的に接続する2つの導電プレートと、
前記導電プレートと前記基板側接続部とを電気的に接続する導電性接続材料と、
このICカードを形成するシート基材である第1層及び第2層とを備え、
前記導電プレートは、前記アンテナ側接続部及び前記導電性接続材料の設置領域以外の領域に設けられた複数の貫通孔を備え、
前記第1層及び前記第2層は、前記導電プレートの設置領域では、前記複数の貫通孔内で、当接面が接合されていること、
を特徴とする非接触及び接触共用ICカード。 - 請求項1に記載の非接触及び接触共用ICカードにおいて、
前記導電プレートの前記ICチップ実装基板の前記対向する2つの辺に沿った方向の長さは、前記ICチップ実装基板の前記対向する2つの辺の長さよりも大きいこと、
を特徴とする非接触及び接触共用ICカード。 - 請求項1又は請求項2に記載の非接触及び接触共用ICカードにおいて、
前記導電プレートは、このICカードの表面を法線方向から見たときに、設置領域が少なくとも前記ICチップ実装基板のコーナ部である基板コーナ部に重複すること、
を特徴とする非接触及び接触共用ICカード。 - 請求項1に記載の非接触及び接触共用ICカードにおいて、
前記導電プレートは、このICカードの表面を法線方向から見たときに、2つの端部と、前記2つの端部を接続する端部接続部の外側の縁部を内側に向けて切り欠くように設けられた切り欠き部とを有し、
前記アンテナ側接続部は、
このICカードの表面を法線方向から見たときに、前記切り欠きを跨ぐように配置されて、前記導電プレートに対して前記2つの端部に接続され、
アンテナを形成するアンテナ形成層のうち、前記切り欠きを跨ぐ範囲と、前記2つの端部から外側に出た2つの範囲との3箇所の範囲に埋設されていること、
を特徴とする非接触及び接触共用ICカード。 - 請求項3又は請求項4に記載の非接触及び接触共用ICカードにおいて、
前記導電プレートは、前記設置領域が、前記基板側接続部の外側の辺の一部に重複するように形成されていること、
を特徴とする非接触及び接触共用ICカード。 - 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の非接触及び接触共用ICカードにおいて、
このICカードの表面を法線方向から見たときに、前記導電プレートと前記アンテナとの接続部のうち少なくとも1つは、前記ICチップ及び前記ICチップ実装基板を有するICモジュールを埋設するICモジュール収容部よりも外側に形成されていること、
を特徴とする非接触及び接触共用ICカード。 - 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の非接触及び接触共用ICカードの製造方法において、
このICカードの表面を法線方向から見たときに、2つの前記導電プレートに一体に設けられ、前記ICチップ及びICチップ実装基板を有するICモジュールを埋設するICモジュール収容部を形成する予定範囲を横切って連結する連結部を有する導電性を有する板部材を、積層方向において、カード基材の層間に挟んで積層するカード積層工程と、
前記カード基材を前記板部材よりも深く切削して、前記ICモジュール収容部のうち前記ICチップを収容する下段凹部を形成すると同時に、前記連結部を切削して、前記板部材を前記導電プレートの形状に加工する下段凹部形成工程と、
前記カード基材を前記板部材まで切削して、前記ICモジュール収容部のうち前記基板側接続部に対応する部分を形成して、前記導電プレートの一部が上側に露出するように加工する導電プレート露出工程とを備えること、
を特徴とする非接触及び接触両用ICカードの製造方法。 - 請求項4に記載の非接触及び接触共用ICカードの製造方法において、
このICカードの表面を法線方向から見たときに、前記切り欠きを有し前記導電プレートに加工される板部材を、前記ICチップ及びICチップ実装基板を有するICモジュールを埋設するICモジュール収容部の予定範囲の縁部に重複するように、前記アンテナ形成層に積層する板部材積層工程と、
前記アンテナ側接続部を、前記板部材上に配置するアンテナ側接続部配置工程と、
前記アンテナ側接続部を、前記アンテナ形成層の表面のうち、前記切り欠きを跨ぐ範囲と、前記2つの端部から外側に出た2つの範囲との3箇所の範囲に埋設するアンテナ側接続部埋設工程と、
前記アンテナ側接続部を、前記板部材上に固定するアンテナ側接続部固定工程と、
前記アンテナ形成層の前記表面に他の基材を積層するカード積層工程と、
前記ICモジュールを埋設するICモジュール収容部を形成すると同時に、前記板部材を切削して、前記導電プレートの形状に加工するICモジュール収容部形成工程とを備えること、
を特徴とする非接触及び接触両用ICカードの製造方法。
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