[第1実施形態]
以下に第1実施形態におけるモータ100について説明するとともに、モータ100に用いられている端子構造及びモータ100の製造方法について説明する。
モータ100は、携帯電話機などに搭載されるカメラのレンズを駆動させる用途に用いられるものである。
まず始めに本実施形態におけるモータ100の構成について図1ないし図3を用いて説明する。図1はモータ100の外観を示す図である。図2はモータ100の構成を示す分解斜視図である。図3は樹脂突起4cを示す図である。
モータ100は、図1に示すように、図示しないレンズユニットを保持するレンズホルダ4と、モータ100の外装の一部をなすヨーク6と、線材5aからなるコイル5と、磁力を有する磁石7と、外部と接続可能でコイル5に給電するための内プレート2と、レンズホルダ4を下方から付勢する下板バネ3と、レンズホルダ4を上方から付勢する上板バネ8と、上部に他部品を配置可能なロアケース1と、ロアケース1上に配置された他部品を保持するトップカバー9とを備えている。
また、コイル5とヨーク6と磁石7とにより、レンズホルダ4を駆動させる駆動部10を構成し、内プレート2と下板ばね3とにより、コイル5に給電する給電端子20を構成する。
ロアケース1は、図2に示すように、合成樹脂材からなり、矩形の板状に形成されている。中央には円形の開口1aが形成されている。
内プレート2は、図2に示すように、金属板からなる。内プレート2は対称形状の2つの部品からなり、隣り合わせて配置することで、中央にロアケース1の開口1aよりも大径な開口2aを有し、環状となるように形成されている。なお、内プレート2を構成する一方の部品と他方の部品とは電気的な導通はない。
下板ばね3は、図2に示すように、金属板からなる。下板ばね3は対称形状の2つの部品からなり、隣り合わせて配置することで、中央に内プレート2の開口2aと略同径の開口3aを有し、環状となるように形成されている。なお、下板ばね3を構成する一方の部品と他方の部品とは電気的な導通はない。また、下板ばね3には、弾性を有するばね部3bが開口2aの形状に沿うように形成されている。
また、給電端子20も対称形状の2つのユニットからなり、内プレート2の一方の部品と下板ばね3の一方の部品とから給電端子20を構成する一方のユニットが形成され、内プレート2の他方の部品と下板ばね3の他方の部品とから給電端子20を構成する他方のユニットが形成される。
レンズホルダ4は、図2に示すように、合成樹脂材からなり、筒状に形成されている。筒状に形成されたレンズホルダ4は、略八角形の外周面と円形の内周面とを有する筒部4aと、筒部4aの一端側の外周面から径方向外側に突出した鍔部4bとを備えている。なお、レンズホルダ4を形成している合成樹脂材は、一般的な半田付け温度(220〜260度)では溶融しない程度の耐熱性を有している。
なお、鍔部4bの裏面(筒部4aが形成される側に対向する面)には、図3に示すように、柱状に突出した樹脂突起4cが2個設けられている。
また、筒部4aの内周面には雌ネジ部4dが形成されており、図示しないレンズを備えたレンズユニットが雌ネジ部4dにネジ留めして装着される。
コイル5は、図2に示すように、導線である線材5aからなり、断面が八角形の筒状に線材5aを巻回して形成されている。なお、図2には詳細を図示していないが、線材5aを巻回する方向は、筒状に形成されたコイル5の中心軸の周囲を周回する方向である。また、線材5aは、表面が非導電性の皮膜で覆われている導線である。皮膜で覆われた導線であるので、巻回したときに、隣り合う線材5a同士が電気的に導通しないようになっている。
また、筒状に形成されたコイル5の筒の中心軸方向の長さ寸法は、レンズホルダ4の筒部4aの長さ寸法よりも短く形成されている。
ヨーク6は、図2に示すように、金属板からなり、筒状に形成されている。ヨーク6は、外形が八角形で中央部に開口6dを有した天面6aと、天面6aの外周端に連続して設けられ外周面を形成する外ヨーク6bと、外ヨーク6bに対向して天面6aの内周端に連続して設けられ、外ヨーク6bに離間して対向するように形成された内ヨーク6cとを有する。なお、天面6aの外形が成す八角形は、長さの異なる2種類の辺が交互に並んで配置された八角形である。
外ヨーク6bには、天面6aの外周形状である八角形を形成する長さの長い辺を含む面と、長さの短い辺を含む面とがある。内ヨーク6cは、天面6aの外周形状を形成する八角形の長さの短い辺を含む外ヨーク6bの面に対向する位置に合計して4個形成され、それぞれ離間して設けられている。
磁石7は、長方形の板状に形成されており、一方の面にS極が着磁され、他方の面にN極が着磁されている。
上板ばね8は、図2に示すように、金属板からなり、中央にヨーク6の開口6d部分よりも小径な開口8aを有し、環状に形成された板ばねである。
トップカバー9は、図2に示すように、合成樹脂材からなり、中央に円形の開口9cを有する矩形の天板9aと、天板9aの四隅から下方に向けて延びる4つの脚部9bとを有している。
次にモータ100の構造について図2及び図4を用いて説明する。図4はモータ100の構造を示す断面図である。
図2及び図4に示すように、内プレート2と下板ばね3とは、内プレート2の上に下板ばね3を重ねて配置されている。
重ねて配置された内プレート2と下板ばね3とは電気的に導通し、コイル5に給電するための給電端子20を形成する。
重ねて配置された内プレート2と下板ばね3とは、ロアケース1の上に重ねて保持される。ただし、下板ばね3のばね部3bは、外力により上下方向に撓むことができる。
筒状に形成されたコイル5は、その内側にレンズホルダ4の筒部4aが配置され、底面がレンズホルダ4の鍔部4bの上面に支持されると共に、内周面がレンズホルダ4の筒部4aに部分的に支持され、コイル5の中心軸とレンズホルダ4の中心軸とが一致した状態でレンズホルダ4に保持される。
なお、筒部4aとコイル5とは、筒部4aがコイル5を部分的に支持している箇所以外は離間している。
また、レンズホルダ4の鍔部4bの下面と下板ばね3の上面とが向き合うように、レンズホルダ4は下板ばね3の上に配置される。
ヨーク6において、内ヨーク6cと対向している部分の外ヨーク6bの内側面には、磁石7が内ヨーク6cから離間するとともに一方の磁極面を外ヨーク6bに接触した状態で保持されている。
磁石7を内部に保持したヨーク6は、内プレート2、下板ばね3及びレンズホルダ4を内包するように、ロアケース1の上に配置される。
このとき、外ヨーク6bの磁石7が保持された面は、ロアケース1の四隅に対応する位置に配置されるとともに、内ヨーク6cはレンズホルダ4の筒部4aとコイル5との間にできた隙間に配置され、コイル5は磁石7と内ヨーク6cとの間にできた隙間に配置される。
このようにコイル5、ヨーク6及び磁石7が同じ高さの位置に配置されることで、駆動部10が構成される。
上板ばね8は、図4に示すように、ヨーク6の天面6aの上に配置される。
トップカバー9は、脚部9bがロアケース1の四隅に対応するように、上板ばね8を介してヨーク6に被せて配置される。
このようにしてモータ100は構成される。
なお、線材5aの巻き始めと巻き終わりでそれぞれ樹脂突起4cに巻きつけられている。
コイル5を形成する線材5aの巻き始め側の末端部は、レンズホルダ4の一方の樹脂突起4cに巻きつけることで保持され、コイル5を形成する線材5aの巻き終わり側の末端部は、レンズホルダ4の他方の樹脂突起4cに巻きつけることで保持されている。以下、線材5aが巻きつけられる樹脂突起4cが線材5aの巻き終わり側の末端部を保持する端子構造について、図8ないし図10を用いて説明する。
図8は樹脂突起4cが線材5aを把持した状態を示す図である。図9は図8の断面B−Bを示す図であり、樹脂突起4cと把持部5bとの状態を示す断面図である。
図10は工程P5を実施後の半田付けの状態を示す図であり、図10(a)は半田付けの状態を示す上面図であり、図10(b)は図10(a)に記載の断面C−Cを示す断面図である。
レンズホルダ4には、コイル5の端部が巻きつけられる樹脂突起4cが2個設けられている。コイル5を形成する線材5aの、コイル5の巻き始め側の端部は、一方の樹脂突起4cに巻きつけることで保持されている。
コイル5を形成している線材5aの、コイル5の巻き終わり側の端部は、図8に示すように、他方の樹脂突起4cの根元側から他方の樹脂突起4cの先端側に向かって巻きつけられ、他方の樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aの一部が、他方の樹脂突起4cの溶融して固化した一部に把持されている。なお、本実施形態においては、線材5aは他方の樹脂突起4cの先端側(線材5aの巻き終わり側)で把持されている。
線材5aの、他方の樹脂突起4cに把持されている把持部5bは、図9に示すように、線材5aの断面の全周の少なくとも半分以上が他方の樹脂突起4cに把持されている。なお、把持部5bにおいて、他方の樹脂突起4cと線材5aとは化学的な結合はしていない。
また、本実施形態においては、後述するヒーターHが線材5aに当接した箇所から、線材5aに沿って一番近い他方の樹脂突起4cの角の近傍で、線材5aは他方の樹脂突起4cにより巻き終わり側の1巻き部分の一部だけ把持されている。
また、他方の樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aは、把持部5bに残して切断されている。
他方の樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aは、線材5aの表面を覆う皮膜の一部が剥がされている。なお、本実施形態においては、線材5aの他方の樹脂突起4cに巻きつけられた部分の皮膜はすべて剥がされている。
他方の樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aと他方の給電端子20とは、電気的に導通するように係合されている。なお、同様に、一方の樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aの一部は皮膜が剥されており、線材5aの皮膜が剥された一部と一方の給電端子20とは、電気的に導通するように係合されている。これにより、給電端子20を外部の電源に接続することで、コイル5に電流を流すことが可能となる。
また、本実施形態においては、給電端子20は下板ばね3と内プレート2とから構成されているため、図10に示すように、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aと下板ばね3のばね部3bとを半田付けし、下板ばね3を介して線材5aと内プレート2とは、電気的に導通するように係合されている。
次にモータ100の動作について図4を用いて説明する。
モータ100は、図示しないレンズユニットをレンズホルダ4の雌ネジ部4dにネジ留めする様に装着し、図4に示すZ1方向及びZ2方向に移動させることができる。
磁石7が外ヨーク6bに固定され、磁石7の内方側の磁極面と対向した位置に内ヨーク6cが配置されることで磁気回路が形成されるとともに、磁石7と内ヨーク6cとの間にコイル5を配置されることで、駆動部10は構成される。
駆動部10では、磁石7の磁極面に発生した磁束がコイル5を通過して内ヨーク6cに向かうように形成される。この状態でコイル5に通電すると、駆動部10に光軸方向(Z1−Z2方向)の電磁力が発生する。また、コイル5を流れる電流の向きを変えることで電磁力の向きを変えることができる。
コイル5に電流を流すことで駆動部10に発生する電磁力により、モータ100は、図示しないレンズユニットをレンズホルダ4と一体にして、Z1方向またはZ2方向のどちらの方向にでも移動させることが可能となる。
次にモータ100の製造方法について図5ないし図12を用いて説明する。図5は、工程P2を実施後の樹脂突起4cと線材5aとの状態を示す図であり、図5(a)は樹脂突起4cと線材5aとの状態を示す上面図であり、図5(b)は樹脂突起4cと線材5aとの状態を示す側面図である。
図6は、工程P3において線材5aを加熱する方法を示す図であり、図6(a)は線材5aを加熱する方法を示す上面図であり、図6(b)は線材5aを加熱する方法を示す側面図である。
図7は、工程P3において樹脂突起4cに線材5aを把持させる方法を示す図であり、図7(a)は樹脂突起4cに線材5aを把持させる方法を示す上面図であり、図7(b)は樹脂突起4cに線材5aを把持させる方法を示す側面図である。
図11は、モータ100の製造方法を示すフロー図である。
図12は、線材5aの巻き始め側における、樹脂突起4cへの線材5aの巻きつけ方を示した図であり、図12(a)は線材5aの最初の一巻きの仕方を示す図であり、図12(b)は線材5aの二巻き目以降の巻き方を示す図であり、図12(c)は線材5aの巻き始め側の余分な部分を切断した状態を示す図である。
モータ100の製造方法は、図11に示すように、線材5aを巻回してコイル5を形成する工程P1と、線材5aを樹脂突起4cに巻きつける工程P2と、線材5aを樹脂突起4cに把持させる工程P3と、線材5aを切断する工程P4と、線材5aと内プレート2とを半田付けする工程P5と、を有する。
以下、各工程について説明する。工程P1では、例えば、まず始めにレンズホルダ4の筒部4aの周囲に筒部4aの一部が露出するように筒状の治具を被せる。その後、レンズホルダ4の一方の樹脂突起4cに、例えば、図12(a)に示すように、線材5aを樹脂突起4cに一巻きだけ巻きつけ、その後図12(b)に示すように、その一巻きした線材5aに対して交差するように上に重ねて、一方の樹脂突起4cの外周に線材5aを巻きつける。このように線材5aを一方の樹脂突起4cに巻きつけることで、線材5aの巻き始め側の末端部は緩むことなく保持される。さらに一方の樹脂突起4cへの巻きつけが緩まないように線材5aを引っ張りながら、筒状の治具の外周及び露出した筒部4aの一部に巻回する。その後、筒状の治具を抜き取ることで、筒部4aの周囲にコイル5を筒状に形成されることとなる。
工程P2では、コイル5の巻き終わり側で延出した状態で残されている線材5aを他方の樹脂突起4cに巻きつける。他方の樹脂突起4cへの線材5aの巻きつけは、他方の樹脂突起4cの根元側から先端側に向けて線材5aを密に巻きつけていく。工程P2が終了すると、図5に示すような状態になる。
次に線材5aを他方の樹脂突起4cに把持させる工程P3を実施する。工程P3では、図6に示すように、他方の樹脂突起4cに巻きつけられ、巻き終わり側に延出された線材5aにヒーターHを当接させ、線材5aに熱を加える。このとき、線材5aの他方の樹脂突起4cへの巻きつけが緩まないように、線材5aには巻き終わり方向(図6に示す矢印A方向)へ引っ張る力が加えられている。なお、矢印A方向へ線材5aを引っ張る力は、線材5aが破断しないように、線材5aの材質にあわせて調整の必要がある。
ヒーターHは、例えば、設定温度が520℃に設定され、線材5aに1秒間熱を加えた後に、線材5aから離間する。ヒーターHの設定温度520℃は、樹脂突起4cを形成する合成樹脂材の融点よりも高い温度である。
ヒーターHが線材5aに当接している間に、ヒーターHの熱が伝導した線材5aは、矢印A方向へ引っ張る力が掛かっていることから、図7に示すように、線材5aは他方の樹脂突起4cの当接している部分を溶融させながら樹脂突起4cに食い込み、ヒーターHが離間すると、溶融後に冷めて固化した他方の樹脂突起4cに線材5aの食い込んだ部分(把持部5b)が把持される。
把持部5bは、図9に示すように、線材5aの全周の少なくとも半分以上を他方の樹脂突起4cに把持されることが望ましい。本実施形態において、ヒーターHは温度520℃、線材5aとの当接時間を1秒と設定しているが、把持部5bにおいて線材5aの全周の少なくとも半分以上を他方の樹脂突起4cに把持された状態にするには、他方の樹脂突起4cの材質や線材5aの材質にあわせて、ヒーターHの設定温度やヒーターHと線材5aとの当接時間などを最適化する必要がある。
工程P3を実施すると、他方の樹脂突起4cに巻きつけた線材5aの一部は他方の樹脂突起4cの溶融して固化した一部に把持された状態となり、次に線材5aを切断する工程P4を実施する。
工程P4は、工程P3において図7に示す矢印A方向に加えていた力よりも強い力で矢印A方向に引っ張り、線材5aの切断を行なう。
図7に示す矢印A方向に引っ張られた線材5aは、図8に示すように、把持部5bを残して切断され、把持部5bが線材5aの末端部となっている。また、巻き始め側の線材5aの端部も、同様にして引っ張ることで、図12(c)に示すように、最初の一巻きが重ねて巻かれた線材5aから巻き始め側で露出している部分で切断されている。
工程P4を実施すると、線材5aは巻き始め側及び巻き終り側ともに樹脂突起4cに巻きつけ保持された状態となり、次に線材5aと下板ばね3(給電端子20)とを半田付けする工程P5を実施する。
工程P5は、線材5aの皮膜部が剥がされた部分と下板ばね3(給電端子20)とが半田付けされる工程である。本実施形態においては、給電端子20は内プレート2と下板ばね3とから構成されている。そのため、図10に示すように、半田Sにより隣り合う線材5a同士を半田付けするとともに、線材5aと下板ばね3のばね部3bとを半田付けして、下板ばね3を介して内プレート2と電気的に導通する構造としている。このとき、樹脂突起4cは一般的な半田付け温度(220〜260度)では溶融しない程度の耐熱性を有ししているため、樹脂突起4cが溶融して把持部5bの把持が緩んでしまうことはない。なお、コイル5の巻き始め側の端部は一方の給電端子20と電気的に導通し、コイル5の巻き終わり側の端部は他方の給電端子と電気的に導通している。
また、本実施形態においては、給電端子20との半田付けを容易にするために、樹脂突起4cに巻きつけられた部分の線材5aの皮膜部はすべて剥がされている。
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
本実施形態の端子構造では、導線である線材5aを巻き始めと巻き終わりでそれぞれ樹脂突起4cに巻きつける端子構造において、線材5aの巻き終わり側の一部が、樹脂突起4cの一部により把持されて把持部5bを形成し、線材5aは、巻き終わり側において、把持部5bを残して切断されている構造とした。
これにより、線材5aの巻き終わり側の一部が、把持部5bとして樹脂突起4cの一部に把持されることで、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aが緩むことを抑制することができるという効果を奏する。また、把持部5bが線材5aの末端部となるように切断することで、線材5aの切断残りが少なくなり、振動などにより切断残りが動くことで他の箇所と接触して短絡してしまうなどの不具合を抑制することができるという効果を奏する。
また、線材5aの巻き終わり側の一部のみが樹脂突起4cに把持されている構造のため、樹脂突起4cに覆われる(把持される)把持部5bの面積を小さくすることができ、他の構成部品と電気的に導通可能な範囲を大きくとることができるという効果を奏する。
本実施形態の端子構造では、線材5aは、巻き終わり側において、樹脂突起4cに巻きつけられた部分の一部が樹脂突起4cの溶融して固化した一部で把持されている構造とした。
これにより、樹脂突起4cに線材5aを保持する為の部品や接着剤などが不要となるとともに、レンズホルダ4が小型化された場合でも樹脂突起4cに線材5aを保持することができるという効果を奏する。
本実施形態の端子構造では、線材5aは、表面が非導通性の皮膜で覆われており、線材5aの樹脂突起4cに巻きつけられた部分は、それぞれ線材5aの表面を覆う皮膜の一部が剥がされている構造とした。
これにより、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aの表面の皮膜部の一部を剥がすことで、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aの部分で外部との電気的な接続が可能になるという効果を奏する。
また、本実施形態においては、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aの全ての部分の皮膜部を剥がしている為、電気的な接続が可能な面積が大きくなり、より容易に外部との電気的な接続が可能となる。特に、外部との電気的接続を半田付けで行なう場合には、線材5aの皮膜がなくなることで半田の濡れ性が良くなる為、より容易に電気的な接続が可能となるという効果を奏する。
本実施形態のモータ100では、コイル5と、磁石7と、外部に接続可能でコイル5に給電するための給電端子20(内プレート2と下板ばね3)とを有し、コイル5は導線である線材5aを巻回して形成されているとともに、線材5aの巻き始めと巻き終わりでそれぞれ樹脂突起4cに巻きつけられて構成されており、線材5aの巻き終わり側の一部が、樹脂突起4cの溶融して固化した一部により把持され、線材5aの巻き始め及び巻き終わりの一部と給電端子20とが電気的に導通するように係合されている構造とした。
これにより、線材5aの巻き終わり側の一部が、樹脂突起4cの溶融して固化した一部により把持されていることで、線材5aの巻き終わり側においては、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aが緩むことが無くなり、線材5aが緩むことにより発生する短絡などの不具合を抑制するとともに、半田付けなどによる線材5aと下板ばね3との係合を容易に行なうことができるという効果を奏する。
なお、線材5aの巻き始め側は、前述の通り、樹脂突起4cに線材5aを一巻きだけ巻きつけ、その一巻きした線材5aに対して交差するように上に重ねて、樹脂突起4cの外周に線材5aを巻きつけているため、樹脂突起4cに巻きつけた線材5aは緩むことはない。
本実施形態のモータ100では、線材5aは、表面が非導通性の皮膜で覆われており、線材5aは、巻き終わり側において、樹脂突起4cに把持された把持部5aを有し、把持部5bを残して切断されているとともに、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5cの巻き始め及び巻き終わりの一部は、線材5aの表面を覆う皮膜の一部が剥がされており、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aの皮膜を剥がされた部分と給電端子20とが電気的に導通するように半田付けされている構造とした。
これにより、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5cの皮膜の一部が剥がされていることで、より容易に線材5aと下板ばね3(給電端子20)との半田付けが行なえるとともに、樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aは、隣り合う線材5a同士が半田により繋ぎ止められるため、さらに巻きつけられた線材5aは緩み難くなり、より安定して動作するモータを提供することができるという効果を奏する。
本実施形態のモータの製造方法では、表面に皮膜を有する導線である線材5aを巻回してコイル5を形成する工程P1と、巻き終わりにおいて、線材5aを樹脂突起4cに巻きつける工程P2と、線材5aの巻き終わりを樹脂突起4cの溶融して固化した一部に把持させる工程P3と、線材5aを切断する工程P4と、線材5aと給電端子20とを半田付けする工程P5と、を有する製造工程とした。
これにより、線材5aは樹脂突起4cに巻きつけられるとともに、線材5aの一部を樹脂突起4cに把持させているため、工程P3以降の工程を実施する際に樹脂突起4cに巻きつけた線材5aが緩むことがなくなり、作業性が向上する。特に、工程P3において線材5aと下板ばね3(給電端子20)とを半田付けする際には、線材5aが緩むことなく樹脂突起4cに巻きつけられているため、緩みでできる隙間に半田が流れ込むことなどもなく、半田付けを容易に行なうことができる、という効果を奏する。
また、本実施形態のモータの製造方法では、工程P3において、ヒーターHを線材5aに当接させて加熱し、その熱で樹脂突起4cの一部を溶融し、溶融後に固化して線材5aを樹脂突起4cで把持させる方法とした。
これにより、樹脂突起4cを溶融させすぎることなく、樹脂突起4cに線材5aを保持可能な最小限の範囲のみ溶融させることができる。また、ヒーターHには樹脂突起4cの溶けカスが付着しないので、メンテナンスが容易であると共に、付着していた樹脂突起4cの溶けカスが脱落したりや溶かした際に樹脂突起4cの溶けカスが飛び散ることで、モータ100内に入り込むことを防止することができるという効果を奏する。
また、本案件においては、樹脂突起4cに巻きつけた部分の線材5aはすべての部分の皮膜部が剥がされているため、半田付けを行なうことで隣り合う線材5a同士が半田により繋ぎ止められるため、さらに巻きつけられた線材5aは緩み難くなり、工程P4以降の作業性が向上するという効果を奏する。
[第2実施形態]
以下に第2実施形態におけるモータ200について説明するとともに、モータ200に用いられている端子構造及びモータ200の製造方法について説明する。モータ200は、第1実施形態におけるモータ100と比べて端子構造に違いがある以外は同じ構成である。したがって、以下の説明においてはモータ100と同じ構成の部分については詳細な説明は割愛するとともに、モータ100と同じ構成部品の名称および符号はモータ100で用いたものを用いて説明する。
まず始めに本実施形態におけるモータ200の構成について説明する。モータ200の外観図や分解斜視図を図示しないが、モータ200は、図1および図2に示す第1実施形態におけるモータ100と同じ構成部品である、レンズホルダ4と、ヨーク6と、コイル5と、磁石7と、内プレート2と、下板バネ3と、上板バネ8と、ロアケース1と、トップカバー9とを備えている。また、モータ200における各構成部品同士の位置関係も図4に示すモータ100と同じである。
なお、モータ200においても、コイル5を形成する線材5aの巻き始めと巻き終わりとはそれぞれレンズホルダ4に設けられた樹脂突起4cに巻きつけて保持されているが、線材5aの巻き終わり側の末端部における保持方法がモータ100とは異なっている。以下、線材5aが巻きつけられる樹脂突起4cが線材5aの巻き終わり側の末端部を保持する端子構造について、図9および図13を用いて説明する。
図13は、第2実施形態における工程P2を実施後の樹脂突起4cと線材5aとの状態を示す図であり、図13(a)は樹脂突起4cと線材5aとの状態を示す上面図であり、図13(b)は樹脂突起4cと線材5aとの状態を示す側面図である。
本実施形態においては、樹脂突起4cは切断部4eを有しているが、図13に示すように四角柱状に形成された樹脂突起4cの角の一つが切断部4eを兼ねているため、第2実施形態で用いられているレンズホルダ4は、第1実施形態で用いられているレンズホルダ4と同じものである。
線材5aの、コイル5の巻き終わり側の端部は、図17に示すように、他方の樹脂突起4cの根元側から他方の樹脂突起4cの先端側に向かって巻きつけられ、他方の樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aの一部が、他方の樹脂突起4cの溶融して固化した一部に把持されている。なお、本実施形態においては、線材5aは他方の樹脂突起4cの先端側(線材5aの巻き終わり側)で把持されている。
線材5aの、他方の樹脂突起4cに把持されている把持部5bは、図9に示す第1実施形態の場合と同様に、線材5aの断面の全周の少なくとも半分以上が他方の樹脂突起4cに把持されている。なお、把持部5bにおいて、他方の樹脂突起4cと線材5aとは化学的な結合はしていない。
また、他方の樹脂突起4cに巻きつけられた線材5aは、把持部5bのある樹脂突起4cの角よりも線材の巻き終わり側に位置する隣の角である切断部4eの位置まで巻きつけられて、切断部4eの位置で切断されている。なお、樹脂突起4cの外周に沿った切断部4eと把持部5bとの間の距離は、把持部5bから巻き終り側に向かった場合の距離が、把持部5bから巻き始め側に向かった場合の距離よりも短い。
次にモータ200の製造方法について図11および図13ないし図17を用いて説明する。
図14は、第2実施形態における工程P3において線材5aを加熱する方法を示す図であり、図14(a)は線材5aを加熱する方法を示す上面図であり、図14(b)は線材5aを加熱する方法を示す側面図である。
図15は、第2実施形態における工程P3において樹脂突起4cに線材5aを把持させる方法を示す図であり、図15(a)は樹脂突起4cに線材5aを把持させる方法を示す上面図であり、図15(b)は樹脂突起4cに線材5aを把持させる方法を示す側面図である。
図16は、第2実施形態における工程P4において樹脂突起4cが線材5aを把持し、線材5aがさらに樹脂突起4c巻き付けられた状態を示す図であり、図16(a)は線材5aがさらに樹脂突起4c巻き付けられた状態を示す上面図であり、図16(b)は線材5aがさらに樹脂突起4c巻き付けられた状態を示す側面図である。
図17は、第2実施形態における工程P4において線材5aが切断された状態を示す図であり、図17(a)は線材5aが切断された状態を示す上面図であり、図17(b)は線材5aが切断された状態を示す側面図である。
モータ200の製造方法は、図11に示すモータ100の製造方法と同様に、線材5aを巻回してコイル5を形成する工程P1と、線材5aを樹脂突起4cに巻きつける工程P2と、線材5aを樹脂突起4cに把持させる工程P3と、線材5aを切断する工程P4と、線材5aと内プレート2とを半田付けする工程P5と、を有する。ただし、工程P2ないし工程P4の詳細部分でモータ100の製造方法と違う点がある。
以下、モータ100の製造方法と違う点がある工程P3および工程P4についてのみ説明する。工程P2では、コイル5の巻き終わり側で延出した状態で残されている線材5aを他方の樹脂突起4cに巻きつける。他方の樹脂突起4cへの線材5aの巻きつけは、他方の樹脂突起4cの根元側から先端側に向けて線材5aを密に巻きつけていく。ここで、図13に示すY1方向側はレンズホルダ4の中心側(筒部4aの開口側(図2参照))であり、Y2方向側はレンズホルダ4の外方側(鍔部4bの外周端部側(図2および図3参照))である。工程P2が終了すると、樹脂突起4cに対する線材5aの巻き終わりは、Y1方向側で、かつコイル5の巻き終わり側にある樹脂突起4cの角の位置となる。
次に線材5aを他方の樹脂突起4cに把持させる工程P3を実施する。工程P3では、図14に示すように、他方の樹脂突起4cに巻きつけられ、巻き終わり側に延出された線材5aにヒーターHを当接させ、線材5aに熱を加える。このとき、線材5aの他方の樹脂突起4cへの巻きつけが緩まないように、線材5aには巻き終わり方向(図6に示す矢印D方向)へ引っ張る力が加えられている。なお、矢印D方向へ線材5aを引っ張る力は、線材5aが破断しないように、線材5aの材質にあわせて調整の必要がある。
ヒーターHが線材5aに当接している間に、ヒーターHの熱が伝導した線材5aは、矢印D方向へ引っ張る力が掛かっていることから、図15に示すように、線材5aは他方の樹脂突起4cの当接している部分を溶融させながら樹脂突起4cに食い込み、ヒーターHが離間すると、溶融後に冷めて固化した他方の樹脂突起4cに線材5aの食い込んだ部分(把持部5b)が把持される。
工程P3を実施すると、他方の樹脂突起4cに巻きつけた線材5aの一部は他方の樹脂突起4cの溶融して固化した一部に把持された状態となり、次に線材5aを切断する工程P4を実施する。
工程P4では、図15に示す状態から、図16に示すように、線材5aを把持部5bのある樹脂突起4cの角よりも線材5aの巻き終わり側に位置する隣の角である切断部4eの位置までさらに巻きつける。さらに、図17に示すように、線材5aが切断部4eに接触可能な矢印E方向に引っ張り、線材5aが切断部4eに接触した状態で、工程P3において図15に示す矢印D方向に加えていた力よりも強い力で矢印E方向に引っ張り、線材5aの切断を行なう。矢印E方向に引っ張られた線材5aは、切断部4eに当接していた箇所で切断され、切断部4eに当接していた箇所が線材5aの末端部となっている。
巻き始め側における樹脂突起4cへの線材5aの巻きつけ方法はモータ100の場合と同じため、それについての説明は割愛するが、工程P4を実施すると、線材5aは巻き始め側及び巻き終り側ともに樹脂突起4cに巻きつけ保持された状態となる。
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
本実施形態の端子構造では、樹脂突起4cは切断部4eを有しており、切断部4eは樹脂突起4cが溶融させられた後に固化した一部よりも線材5aの巻き終わり側に位置する構成とした。すなわち、切断部4eは線材5aの把持部5bよりも線材の巻き終わり側に位置する構成とした。
このような構成にすることで、引っ張られた線材5aは切断部4eに当接した箇所に応力が集中し、線材5aの巻き終り側の切断を切断部4eで行なうことができる。これにより、切断位置の制御が容易になり、線材5aの切断位置のバラツキが小さくなる。したがって、切断残りが大きくなり不所望な箇所に接触しショートするなどの不具合が起こり難くなるという効果を奏する。
また、本実施形態の端子構造では、樹脂突起4cの外周に沿った切断部4eと固化した一部との間の距離は、固化した一部から巻き終り側に向かった場合の距離が、固化した一部から巻き始め側に向かった場合の距離よりも短い構成とした。
このような構成にすることで、固化した一部(把持部5b)から先の線材5aの長さを短くすることができ、切断残りの長さを短くすることができる。したがって、切断残りが大きくなり不所望な箇所に接触しショートするなどの不具合がより起こり難くなるという効果を奏する。
本実施形態のモータ200では、樹脂突起4cは切断部4eを有しており、切断部4eは樹脂突起4cが溶融させられた後に固化した一部よりも外方側に位置している構造とした。
これにより、樹脂突起4cは切断部4eを有しており、切断部4eは固化した一部よりも外方側に位置している構成とした。すなわち、切断部4eを固化した一部よりも鍔部4bの外周端部に近い位置に配置している。切断部4eを固化した一部よりも外方側に配置することで、線材5aへの加熱や線材5aの巻き終り側の切断などをより容易に行なうことができ、モータ200の組立を簡易な設備で対応することができるという効果を奏する。
以上のように、本発明の実施形態に係る端子構造及び当該端子構造を用いたモータ及びモータの製造方法に関して具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば、次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
(1)第1実施形態および第2実施形態において、本実施形態に係る端子構造を、モータの端子構造として説明したが、モータの端子構造のみに限定するものではない。導線である線材を巻きつける構造を有するものであれば適用可能である。例えば、ソレノイド、インダクタ、チョークコイル、トランス、電磁リレー、電磁石、発電機、センサなどの各種電子部品や電気製品の端子構造に適用できるものである。
(2)第1実施形態および第2実施形態において、線材5aと下板ばね2とを半田付けし、下板ばね3を介して線材5aと内プレート2との電気的な導通を取る構造としたが、半田付けではなく導電性接着剤などを用いて電気的に導通を取る構造でも良い。
(3)第1実施形態および第2実施形態において、図7ないし図9において、把持部5bは線材5aの全周には形成されていない図としたが、把持部5bを線材5aの全周に設けても良い。また、樹脂突起4cに巻きつけた線材5aが、給電端子20と係合されるまでの間に緩むことがなければ、全周の半分以下の把持部5bとなっていても良い。
(4)第1実施形態および第2実施形態において、線材5aの表面の皮膜部を剥がす工程について記載していないが、線材5aを樹脂突起4cに巻きつける工程P2よりも前であれば、線材5aを巻回してコイル5を形成する工程P1の前に実施しても、工程P1の後に実施してもよい。
(5)第1実施形態および第2実施形態において、工程P3における線材5aの加熱方法は、ヒーターHを線材5aの樹脂突起4cから離間した部分に当接させる方法を取っているが、その限りではない。例えば、熱風を線材5aの適した位置に当てて加熱する方法などでもよい。
(6)第2実施形態において、切断部4eを四角柱状に形成された樹脂突起4cの角で兼用するものとしたが、そのように限定するものではない。例えば、樹脂突起4cが円柱状に形成されている場合には、線材5aの切断位置がレンズホルダ4の外方側となる位置に、別途、四角柱の角と同様の形状を持たせるなどして切断部4eを設けても良い。