JP6000869B2 - 塗布型磁気記録媒体、磁気記録装置、および磁気記録方法 - Google Patents

塗布型磁気記録媒体、磁気記録装置、および磁気記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、塗布型磁気記録媒体、これを含む磁気記録装置、およびこれを用いる磁気記録方法に関するものである。詳しくは、ハードディスクドライブ(HDD)に比べ耐熱性に劣るにもかかわらず熱アシスト記録への適用が可能な塗布型磁気記録媒体、これを含む磁気記録装置、およびこれを用いる磁気記録方法に関するものである。
記録情報量の増加により、磁気記録媒体には常に高密度記録が要求されている。高密度記録化を達成するためには磁性体を微粒子化する必要がある。しかし、磁性体の粒子サイズを小さくすると磁性体が磁化方向を保とうとするエネルギー(磁気エネルギー)が熱エネルギーに抗することが困難となり、いわゆる熱揺らぎにより記録の保持性が低下してしまい、磁気エネルギーが熱エネルギーに負けて記録が消失する現象が無視できなくなってくる。
この点について説明すると、磁化の熱的安定性に関する指標として「KuV/kT」が知られている。Kuは磁性体の異方性定数、V(以下において、「Vact」とも記載する。)は粒子体積(活性化体積)、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁気エネルギーKuVを熱エネルギーkTに対して大きくすることで熱揺らぎの影響を抑えることができるが、粒子体積V、即ち磁性体の粒子サイズ、は高密度記録化のために小さくする必要がある。上記の通り磁気エネルギーはKuとVとの積であるため、Vが小さい領域で磁化エネルギーを高めるためにはKuを大きくすればよいことになる。しかし、高い結晶磁気異方性を有する磁性体は、スイッチング磁界が増大するため保磁力が高く、記録に大きな外部磁場が必要となり記録性に劣る。つまり、磁性粒子のKuを高めるほど、情報の書き込みは困難となる。
以上説明したように、高密度記録化、熱的安定性、書き込み容易性の3つの特性を満たすことはきわめて困難であり、これは磁気記録のトリレンマと呼ばれ、今後更なる高密度記録化を進めるうえで大きな課題となっている。
近年、ハードディスクドライブ(HDD)の分野では、トリレンマを解決するための手段として、記録ヘッドにより磁性層の記録部を加熱して保磁力Hcを低下させ書き込み容易性を確保する記録方式(熱アシスト記録)が提案されている。
ただし、特許文献1には、熱アシスト記録の実用の困難性に鑑み、熱アシスト記録によらず、磁性体の保磁力を組成調整により制御することが開示されている。
他方、特許文献2には、熱アシスト記録を塗布型磁気記録媒体に適用することが提案されている。
特開2008−60293号公報 特開2003−77115号公報
上記の通り、特許文献2には、塗布型磁気記録媒体に熱アシスト記録によって記録を行うことが提案されている。しかし実際には現在当分野では、熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体は、実用レベルに至ることは不可能と考えられている。これは、塗布型磁気記録媒体は、支持体や各種の層が、HDDを構成する材料(無機物、金属、ガラス等)よりも耐熱性に劣る有機物から構成されているため、熱アシスト記録時の加熱に耐えることができないと考えられているためである。
しかるに、塗布型磁気記録媒体は、HDDのような蒸着型磁気記録媒体と比べて化学的安定性に優れるため、長期間高い信頼性をもって情報を記録するための大容量データストレージ用として有用な磁気記録媒体である。このように有用な塗布型磁気記録媒体に熱アシスト記録を適用することができれば、トリレンマを克服し、より一層の高容量・高密度記録化を実現することが可能となる。
そこで本発明の目的は、熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体の実用化を可能とするための手段を提供することにある。
熱アシスト記録は磁性層のHcを加熱により下げることで書き込み容易性を確保する記録方式である。したがって、熱アシスト記録時に加熱すべき部分は磁性層である。しかし熱アシスト記録時に媒体に加えられる熱が、磁性層の下層側部分にも及んでしまうと、塗布型磁気記録媒体ではそれら部分は耐熱性に劣る有機物から構成されるため、媒体の変形およびこれによる走行安定性の低下を引き起こすこととなる。
これに対し本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、非磁性有機物支持体と磁性層との間に磁性層よりも熱伝導率の低い層を遮熱層として設けることにより、塗布型磁気記録媒体を熱アシスト記録へ適用することが可能になることを新たに見出した。これは、上記遮熱層によって、熱アシスト記録時に媒体に加えられる熱が磁性層の下層側に及ぶことを抑制することができるからである。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]非磁性有機物支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有し、かつ、
前記非磁性有機物支持体と磁性層との間に、磁性層よりも熱伝導率の低い遮熱層を有する熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[2]前記非磁性有機物支持体と遮熱層との間に、遮熱層よりも熱伝導率が高い層であって、非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を有する[1]に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[3]前記磁性層と遮熱層との間に、磁性層よりも熱伝導率の高い熱拡散層を有する[1]または[2]に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[4]前記熱拡散層は、金属粒子と結合剤とを含む層である[3]に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[5]前記遮熱層は、中空無機粒子と結合剤とを含む層である[1]〜[4]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[6]前記無機粒子は、中空シリカ粒子である[5]に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[7]前記磁性層の結合剤は、前記非磁性層の結合剤よりも高いガラス転移温度を有する結合剤である[1]〜[6]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[8]前記非磁性層は、熱アシスト記録時の磁性層の加熱温度よりも低いガラス転移温度を有する結合剤である[1]〜[7]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[9]前記非磁性層の結合剤は、100℃未満のガラス転移温度を有する結合剤である[1]〜[8]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[10]前記強磁性粉末は、強磁性フェライト粉末である[1]〜[9]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[11]前記強磁性粉末は、25℃での保磁力が318kA/m(4000Oe)以上である[1]〜[10]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[12]前記強磁性粉末は、ε−酸化鉄である[1]〜[11]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[13]前記強磁性粉末は、(−796A/m)/℃(−10Oe/℃)以下の保磁力Hcの温度依存性を示す[1]〜[12]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
[14][1]〜[13]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体と、
熱アシスト記録用磁気記録ヘッドと、
を含む磁気記録装置。
[15]前記熱アシスト記録用磁気ヘッドは、磁性層上の記録部を100℃以上に加熱する[14]に記載の磁気記録装置。
[16][1]〜[13]のいずれかに記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体に、熱アシスト記録用磁気ヘッドにより熱アシスト記録を行うことを含む磁気記録方法。
[17]前記熱アシスト記録用磁気ヘッドにより、磁性層上の記録部を100℃以上に加熱することを含む[16]に記載の磁気記録方法。
本発明によれば、高容量データストレージ用媒体として有用な塗布型磁気記録媒体をトリレンマ克服に寄与する熱アシスト記録に適用することが可能となる。
図1は、実施例において磁気テープの加熱に用いた光学系の概略説明図である。
[熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体]
本発明は、非磁性有機物支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有し、かつ、前記非磁性有機物支持体と磁性層との間に、磁性層よりも熱伝導率の低い遮熱層を有する熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体(以下、単に「磁気記録媒体」または「塗布型磁気記録媒体」ともいう。)に関する。本発明の磁気記録媒体は、非磁性有機物支持体と、強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層との間に、磁性層よりも熱伝導率の低い遮熱層を有する。この遮熱層によって、熱アシスト記録時に記録ヘッドから磁性層に加えられる熱が、磁性層の下層側に及ぶことを抑制することができる。したがって、熱アシスト記録時に、磁性層の下層側、例えば、非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層や非磁性有機物支持体が熱の影響を受けて変形することや、変形により走行安定性が低下することを防ぐことができる。こうして本発明によれば、高容量データストレージ用媒体として有用な塗布型磁気記録媒体を、熱アシスト記録に適用することが可能となる。
以下、本発明の磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
非磁性有機物支持体
本発明の磁気記録媒体は、塗布型磁気記録媒体であって、支持体として有機物を材料とする非磁性支持体を有する。非磁性有機物支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリベンゾオキサプールなどの公知のフィルムを使用することができる。中でも、ポリエチレンナフタレートなどの高強度支持体を用いることが好ましい。本発明では、熱アシスト記録時に媒体に加えられる熱が磁性層の下層側に及ぶことを遮熱層によって抑制することができるため、支持体材料としてアラミド(登録商標)のような高価な耐熱性樹脂を使用することなく、熱アシスト記録時の支持体の変形を抑制ないし防止することができる。その他、本発明に使用可能な非磁性有機物支持体の詳細については、例えば、特開2010−061763号公報段落0037〜0041を参照することができる。
磁性層
磁性層には、強磁性粉末と結合剤が含まれ、任意に各種添加剤が含まれ得る。強磁性粉末としては、高密度記録化のために微粒子化しても高い熱的安定性を示すことができる高Ku磁性体を用いることが好ましい。高Ku磁性体としては、FePt等の貴金属、NdFeB等の希土類、Fe162のような窒化物、および六方晶フェライト、ε−酸化鉄等の強磁性フェライトを挙げることができる。ただし前述の通り、高Ku磁性体は保磁力が高く情報の書き込みが困難である。これに対し、本発明の塗布型磁気記録媒体への記録は熱アシスト記録により行われるため、磁性体として高Ku磁性体である強磁性フェライト粉末を使用することで高密度記録化と熱的安定性を両立しつつ、熱アシスト記録により書き込み容易性を確保することができる。
強磁性粉末としては、粒子サイズが8〜30nmであって高密度記録用磁気記録媒体の磁性体として好適な微粒子磁性体を用いることが好ましい。上記粒子サイズは、より好ましくは8〜20nmの範囲である。ここで、本発明において粒子サイズとは、以下の方法により測定した値をいうものとする。
日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。粒子が集合した粉体については、500個の粒子のサイズを測定し、それら粒子サイズの平均値を粒子サイズ(平均粒子サイズ)とする。
なお、本発明において、磁性体等の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
また、該粉体の平均針状比は、上記測定において粉体の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粉体の(長軸長/短軸長)の値の算術平均を指す。ここで、短軸長とは、上記粉体サイズの定義で(1)の場合は、粉体を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚さ乃至高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。
形状異方性は(2)、(3)、(1)の順に大きくなる。磁化容易軸を面内に配向させる場合には形状異方性を単純に大きくできる方を選択することが、微粒子化の観点から好ましい。一方、垂直記録用に磁化容易軸を面に対し垂直に配向する場合には、塗布等の流動配向の観点を加味すべきであるため、(2)、(1)、(3)の順に好ましくなっていく。一方、後述するε−酸化鉄は、熱的安定性の観点から、(3)の形態をとることが好ましく、球形をとることがより好ましい。また、粉体サイズ測定において、標準偏差/平均値をパーセント表示したものを粒度分布の変動係数と定義する。
強磁性粉末としては、熱的安定性の観点から上述の各種高Ku磁性体を使用することが好ましい。強磁性粉末の磁気的特性として、熱的安定性に優れる高Ku磁性体の保磁力Hcは、25℃において、通常318kA/m(4000Oe)以上であり、好ましくは318〜1592kA/m(4000〜20000Oe)の範囲である。また、温度を挙げることにより保磁力が低下する性質を有する磁性体は、熱アシスト記録に好適である。この点から好ましい粒子特性としては、保磁力Hcの温度依存性が大きいこと、詳しくは、後述の方法で測定される保磁力Hcの温度依存性の絶対値が大きいほど(値が小さいこと)、好ましくは(−796A/m)/℃(−10Oe/℃)以下、例えば(−19104A/m)/℃(−240Oe/℃)〜(−796A/m)/℃(−10Oe/℃)であること、より好ましくは(−11940A/m)/℃(−150Oe/℃)〜(−796A/m)/℃(−10Oe/℃)であること、を挙げることができる。
高Ku磁性体の中でも、価格、空気中での安定性等の観点からは、六方晶フェライト、ε−酸化鉄等の強磁性フェライト粉末を使用することがより好ましい。特に、熱干渉を比較的受けにくいことから熱アシスト記録に適する磁性体であるε−酸化鉄を用いることが好ましい。
ε−酸化鉄の調製方法としては、ゲーサイトから作製する方法、逆ミセル法等が知られており、本発明でもそれら公知の方法を用いてε−酸化鉄を調製し、磁性層用強磁性粉末として使用することができる。または、市販のε−酸化鉄を使用することもできる。
以下に、一例として、逆ミセル法によるε−酸化鉄の調製方法について説明する。
逆ミセル法によるε−酸化鉄の調製は、
(1)ε−酸化鉄の前駆体である鉄塩粒子(以下、「前駆体粒子」ともいう。)の作製工程;
(2)好ましくはゾル−ゲル法による、焼結防止剤による前駆体粒子の被覆工程;
(3)焼結防止剤に被覆された前駆体粒子の加熱焼成工程;
(4)加熱焼成により前駆体粒子が転換することで得られたε−酸化鉄の粒子表面からの焼結防止剤の除去工程、
を含むことができる。
工程(1)では、逆ミセル法によりミセル溶液から前駆体の鉄塩粒子を析出させることができる。より詳しくは、鉄の水溶性塩を溶解した水溶液に、界面活性剤および水と混ざり合わない有機溶媒を添加しW/Oエマルジョンを形成し、これにアルカリを加えることで鉄塩を析出させる。例えば界面活性剤と水との混合比により、析出する鉄塩の粒子サイズをコントロールすることができる。後述するように焼結防止剤によって前駆体粒子を被覆した後に加熱焼成を行うことで、ε−酸化鉄粒子が焼結し粗大粒子となることを防ぐことができる。したがって、最終的に得られるε−酸化鉄粒子の粒子サイズは、主にここで析出する鉄塩粒子の粒子サイズによって制御することができる。
上記水溶性塩としては、鉄の硝酸塩、塩化物等を挙げることができ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水等を挙げることができる。また、ε−酸化鉄は、Feの一部を他の元素に置換することで磁気特性を制御することができる。置換元素としては、Al、Ga、In、Co、Ni、Mn、Zn、Ti等を挙げることができる。このような置換型のε−酸化鉄も、本発明において磁性層の強磁性粉末として使用することができる。逆ミセル法により置換型ε−酸化鉄を得る場合には、工程(1)においてミセル溶液に置換元素の化合物(硝酸塩、水酸化物等)を添加すればよい。
工程(2)は、工程(3)において粒子同士が焼結し粗大粒子化することを防ぐために、加熱焼成前に前駆体粒子表面に焼結防止剤を被覆する工程である。前駆体粒子表面に焼結防止剤を均一に被覆する観点からは、ゾル−ゲル法により前駆体粒子表面に焼結防止剤を被覆させることが好ましい。
焼結防止剤としては、Si化合物、Y化合物等を用いることができる。焼結防止効果および加熱焼成後の除去の容易性の観点からは、Si酸化物により前駆体粒子を被覆することが好ましい。例えば、工程(1)において前駆体粒子が析出した溶液にアルコキシシラン等のシラン化合物を添加すると、シラン化合物の加水分解物であるシリカ(SiO2)を、前駆体粒子表面に被着させることができる。上記シラン化合物としては、ゾル−ゲル法によりシリカを形成可能なオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いることが、より好ましい。
焼結防止剤により被覆した前駆体粒子は、工程(3)の前に前駆体粒子表面から未反応物(上記のシラン化合物等)を除去するために洗浄に付すこともできる。洗浄は、水、有機溶媒、またはそれらの混合溶媒を用いて行うことができる。
以上のように焼結防止剤により被覆された前駆体粒子は、必要に応じて、溶液からの取り出し、洗浄、乾燥、粉砕等の処理を施した後に、工程(3)の加熱焼成に付される。粉砕することにより、焼成を均一に行うことができ、また焼成後の焼結防止剤の除去が容易になる。
工程(3)における加熱焼成は、例えば500〜1500℃の雰囲気温度で行うことができる。例えば空気中で上記雰囲気温度で前駆体粒子を加熱焼成することにより、酸化反応等により、前駆体粒子をε−酸化鉄に転換することができる。
通常、焼成後の粒子の表面には焼結防止剤が残留しているため、工程(4)を行い焼結防止剤を除去する。焼結防止剤の種類によって除去方法は適宜選択することができる。例えば、前述のシリカは水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液に粒子を浸漬する方法(アルカリ洗浄)またはフッ酸(HF)等により、溶解除去することができる。フッ酸は取扱いが容易ではないため、アルカリ洗浄が好ましく用いられる。
以上説明した逆ミセル法によるε−酸化鉄粒子の調製については、後述の実施例も参照できる。
磁性層には、強磁性粉末とともに結合剤が含まれる。磁性層の結合剤としては、塗布型磁気記録媒体の磁性層に使用される公知の結合剤を用いることができる。具体的には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などから単独または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂である。これらの樹脂は、後述する非磁性層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010−24113号公報段落[0029]〜[0031]を参照できる。また、上記樹脂とともにポリイソシアネート系硬化剤を使用することも可能である。
磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して使用することができる。
非磁性層
本発明の塗布型磁気記録媒体は、非磁性有機物支持体と磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有することができる。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2010−24113号公報段落[0036]〜[0039]を参照できる。
非磁性層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。また、非磁性層にはカーボンブラックや有機質粉末を添加することも可能である。それらについては、例えば特開2010−24113号公報段落[0040]〜[0042]を参照できる。
走行耐久性向上の観点からは、磁性層は高強度であることが好ましい。このためには、磁性層の結合剤としてはガラス転移温度が高い結合剤を使用することが好ましい。これに対し、非磁性層はカレンダ成形性を高めカレンダ処理により磁性層表面の平滑性を向上するためには、非磁性層の結合剤としては、ガラス転移温度の比較的低い結合剤を使用することが好ましい。したがって、走行耐久性とカレンダ成形性を両立する観点からは、磁性層の結合剤のガラス転移温度は、非磁性層の結合剤のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。また、カレンダ成形性向上の観点からは、非磁性層の結合剤としては、ガラス転移温度が100℃未満の結合剤を使用することが好ましい。走行安定性とカレンダ成形性の両立の観点からは、非磁性層の結合剤のガラス転移温度は、30℃以上100℃未満であることが好ましく、40℃以上90℃以下であることがより好ましく、50℃以上80℃以下であることが更に好ましい。一方、磁性層の結合剤のガラス転移温度は、走行耐久性の観点からは100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、結合剤樹脂の溶剤溶解性の観点からは、170℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。
なお本発明における結合剤のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点をいい、例えば以下の方法によって測定された値である。
アラミドベース(旭化成株式会社製)に結合剤のポリマー溶液を膜厚30μmになるように塗布し、140℃/真空3時間乾燥させる。このフィルムを3.35mm×60.0mmの大きさに打ち抜き、ガラス転移温度測定サンプルを作製する。作製したサンプルについて、バイブロン動的粘弾性装置:Model RHE0-2000(TOYO BACDWIN)を用いて動的粘弾性測定を行い、損失弾性率(E'')の変曲点温度をガラス転移温度とする。
後述する遮熱層は、熱アシスト記録時に加えられる熱が磁性層の下層側に及ぶことを防ぐ役割を果たす層である。非磁性層に熱が及ぶことを防ぐためには、磁性層と非磁性層との間に、遮熱層を設けることが好ましい。特に、上記の通り、非磁性層にはガラス転移温度の低い結合剤(低Tg結合剤)を使用することが好ましいが、非磁性層に使用する結合剤のガラス転移温度が低いほど、非磁性層は熱により変形しやすくなる。したがって、磁性層と非磁性層との間に遮熱層を設けることは、本発明の塗布型磁気記録媒体が低Tg結合剤を含む非磁性層を有する場合に有効である。また、熱アシスト記録時の磁性層の加熱温度が、非磁性層の結合剤のガラス転移温度よりも高い場合には、遮熱層なしでは熱アシスト記録時に非磁性層がより一層変形しやすくなるため、このような場合にも磁性層と非磁性層との間に遮熱層を設けることは有効である。
遮熱層
非磁性有機物支持体と磁性層との間、好ましくは磁性層と非磁性層との間に設けられる遮熱層は、磁性層よりも熱伝導率の低い層である。このような層が遮熱層として存在することにより、熱アシスト記録時に磁性層に加えられる熱が磁性層の下層側に及ぶことを抑制ないし防止することができる。磁性層の下層側が熱による影響を受けることを効果的に防止する観点からは、遮熱層の熱伝導率は、5W/(m・K)未満であることが好ましく、2W/(m・K)以下であることがより好ましい。一方、熱アシスト記録においては、加熱しつつ記録を行った領域の温度が早期に下がることが、漏れ磁場の影響を低減する観点からは好ましい。この点からは、遮熱層の熱伝導率は、0.01W/(m・K)以上であることが好ましい。なお磁性層の熱伝導率は、通常12W/(m・K)以上、例えば12〜20W/(m・K)程度であり、後述する非磁性層の熱伝導率は、通常10W/(m・K)未満、例えば3W/(m・K)以上9W/(m・K)以下である。本発明における各層の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法、定常熱流法、熱線法等の公知の方法で測定することができる。また、各層の熱伝導率は、各層の構成物質の熱伝導率および構成物質の占める比率から算出することも可能であり、後述の実施例の熱伝導率はこの方法により求めた値である。
本発明の磁気記録媒体は塗布型磁気記録媒体であり、磁性層や、任意に形成される非磁性層は塗布層として形成される。塗布型磁気記録媒体の製造工程を大きく変更せずに遮熱層を形成するためには、遮熱層も塗布層として形成することが好ましい。具体的には、熱伝導率の低い材料(遮熱材料)を結合剤と混合して塗布液を作製し、この塗布液を非磁性有機物支持体上に直接、または非磁性層等の他の層を介して塗布し乾燥させることにより、塗布層として遮熱層を形成することができる。遮熱層に関しては、熱伝導率の調整の容易性の観点からは、層内に空気を含ませることにより熱伝導率を下げることが好ましい。この点からは、空間(中空構造)を含むことで空気を取り込んだ層が遮熱層として好適である。即ち、前記遮熱層は、空気を含む層であることが好ましい。膜強度を維持しつつ中空構造を含む層とするためには、遮熱層を形成するための材料として、粒子内部に空間(中空構造)を有する中空粒子を用いることが好ましい。中空粒子の粒子内部の空間は、殻で閉塞されていることが、より優れた遮熱効果を得ることができるため好ましい。中空粒子の殻部分は無機物質であっても有機物質であってもよいが、遮熱層の膜強度の観点からは、無機物質であることが好ましい。中空無機物質を構成する無機物質としては、シリカ、アルミナ等を挙げることができ、遮熱効果の点からはシリカが好ましい。粒子強度と遮熱効果を両立する観点からは、中空粒子の殻部分の厚さは、1〜2nm程度であることが好ましい。一方、中空部分が大きいほど多くの空気を取り込むことができるため、遮熱効果の点からは好ましい。したがって遮熱効果の観点からは、中空粒子の粒径は大きいことが好ましく、例えば80nm以上であることが好適である。一方、遮熱層に含まれる粒状物質の粒子サイズが遮熱層の厚さよりも大きいと、粒子が層から突出することにより媒体の表面平滑性は低下する場合がある。したがって、遮熱層から粒子を突出させないように、中空粒子としては、遮熱層の厚さ以下の粒子サイズのものを使用することが好ましい。磁気記録媒体の総厚は、特にテープ状媒体については、記録容量の点からは薄いほど好ましい。この点からは、遮熱層は500nm以下の厚さとすることが好ましい。したがって、遮熱層に含まれる中空粒子の粒子サイズは、500nm以下であることが好ましい。遮熱材料としては、公知の方法で調製したもの、または市販品を用いることができる。
遮熱層形成用塗布液は、遮熱材料、結合剤、および任意に分散剤、潤滑剤等の添加剤、溶媒等を混合して調製することができる。遮熱層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層または非磁性層に関する公知技術を適用することができる。なお中空粒子の中には、比較的強度の低いものがあるため、そのような粒子を中空構造を維持しつつ高度に分散するためには、後述の実施例に示すように、ビーズ等の分散メディアを用いずに、水圧等により圧力を加えて分散を行う高圧処理によって、中空粒子の分散処理を行うことが好ましい。
熱拡散層
本発明の塗布型磁気記録媒体は、磁性層と遮熱層との間に、磁性層よりも熱伝導率の高い熱拡散層を有することもできる。熱アシスト記録時に磁性層に加えられた熱を熱拡散層によって拡散させる結果、深さ方向に対する温度低下が大きくなる効果を得ることができる。更に遮熱層により熱を遮断することにより、熱アシスト記録時に磁性層に加えられた熱が、磁性層の下層側に及ぶことを、より効果的に防ぐことができる。
また、熱アシスト記録は、記録ヘッドにより磁性層の記録部を加熱して保磁力Hcを低下させ書き込み容易性を確保する記録方式であるが、この加熱によって情報を記録する記録部に隣接する領域も加熱してしまうと、隣接部分で熱揺らぎが起こりやすくなる。また、記録後も記録部が熱を保持したままでは、記録部において熱揺らぎが発生してしまう。したがって、記録部を局所的に加熱するためには、加えられた熱が隣接領域に広がらずに素早く放熱されることが好ましい。この点から、磁性層の下層に熱拡散層を設け、磁性層に加えられる熱の拡散を促進することは有効である。
熱の拡散を効果的に促進するためには、熱拡散層の熱伝導率は50W/(m・K)以上であることが好ましく、80W/(m・K)以上であることがより好ましい。一方、より少ないエネルギーによって熱アシスト記録時に記録部を所望の温度にするためには、熱拡散層の熱伝導率は400W/(m・K)以下であることがより好ましい。
遮熱層について前述した理由と同様の理由から、熱拡散層も塗布層として形成することが好ましい。具体的には、熱伝導率の高い材料(熱拡散材料)を結合剤と混合して塗布液を作製し、この塗布液を遮熱層表面に塗布し乾燥させることにより、塗布層として熱拡散層を形成することができる。熱拡散材料としては、放熱効果の点から、金属材料が好ましく、Cu粒子、Ag粒子等を用いることがより好ましい。熱拡散材料の粒子サイズは、熱拡散材料の分散性の点からは5nm以上であることが好ましい。一方、先に遮熱層について記載した理由から、熱拡散材料の粒子サイズは、熱拡散層の厚さ以下であることが好ましく、例えば500nm以下であることが好適である。また、上層の磁性層の表面平滑性を維持する観点からは、熱拡散材料の粒度分布の変動係数が低い(粒度分布の均一性が高い)ことが好ましい。この点から、熱拡散材料としては、粒度分布の変動係数が10%以下のものを使用することが好ましく、5%以下、例えば3〜5%の範囲であることが、より好ましい。熱拡散材料としては、公知の方法で調製したもの、または市販品を用いることができる。
熱拡散層形成用塗布液は、熱拡散材料、結合剤、および任意に分散剤、潤滑剤等の添加剤、溶媒等を混合して調製することができる。熱拡散層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層または非磁性層に関する公知技術を適用することができる。
層構成
本発明の塗布型磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性有機物支持体の厚みが、好ましくは3〜80μmである。磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には10〜150nmであり、好ましくは20〜120nmであり、より好ましくは30〜100nmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
非磁性層の厚みは、例えば0.1〜3.0μmであり、0.3〜2.0μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることが更に好ましい。なお、本発明における磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明における磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT以下または抗磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
遮熱層の厚さは、熱アシスト記録時に磁性層に加えられる熱が磁性層の下層側に及ぶことをより効果的に防止する観点からは、100nm以上であることが好ましく、100nm〜500nmの範囲であることがより好ましい。
熱拡散層の厚さは、より優れた放熱効果を得る観点からは、100nm以上であることが好ましく、100nm〜500nmの範囲であることがより好ましい。
バックコート層
本発明では、非磁性有機物支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。バックコート層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
製造工程
磁性層、非磁性層、遮熱層、熱拡散層等の本発明の塗布型磁気記録媒体の各層を形成するための塗布液を製造する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末、非磁性粉末、遮熱材料、熱拡散材料、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、各層形成用塗布液を分散させるには、ガラスビーズやその他のビーズを用いることができる。このような分散メディアとしては、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。磁気記録媒体の製造方法の詳細については、例えば特開2010−24113号公報段落[0051]〜[0057]を参照できる。
以上説明した本発明の塗布型磁気記録媒体は、熱アシスト記録に用いられる。先に説明したように、当分野では従来、実用レベルで、塗布型磁気記録媒体を熱アシスト記録に適用することは不可能と考えられていた。これに対し本発明によれば、磁性層と非磁性有機物支持体との間に、前述の遮熱層、更には熱拡散層を設けることにより、塗布型磁気記録媒体を熱アシスト記録に適用することが可能となる。こうして本発明によれば、熱アシスト記録用磁気記録媒体の実用化を実現し、高Ku磁性体を含む塗布型磁気記録媒体における磁気記録のトリレンマを克服することができる。
[磁気記録装置、磁気記録方法]
更に本発明は、
本発明の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体と、熱アシスト記録用磁気記録ヘッドと、を含む磁気記録装置;および、
本発明の記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体に、熱アシスト記録用磁気ヘッドにより熱アシスト記録を行うことを含む磁気記録方法、
に関する。
本発明の磁気記録装置および磁気記録方法に用いられる塗布型磁気記録媒体の詳細は、先に説明した通りである。
熱アシスト記録用磁気記録ヘッドとは、磁性層の記録部を局所的に加熱しつつ当該記録部に記録磁界を印加することで記録ビットを形成することが可能な磁気記録ヘッドであり、その構成自体は既に当分野において広く知られている。加熱手段としては、近接場光等のレーザー光を照射可能な光源を用いることができる。なお本発明では、記録磁界を印加する際の磁性層の記録部表面の温度をもって、熱アシスト記録時の磁性層の加熱温度とする。書き込み容易性を高める観点からは、熱アシスト記録時の磁性層の加熱温度は、100℃以上、例えば100〜200℃以下であることが好ましい。これに対し、前述のように非磁性層の結合剤のガラス転移温度は、カレンダ成形性向上の観点からは低いことが望ましく、100℃未満であることが好ましい。一方で、熱アシスト記録時の磁性層の加熱温度は、上記の通り、100℃以上であることが好ましい。このように、熱アシスト記録時の磁性層の加熱温度よりも、非磁性層の結合剤のガラス転移温度が低い場合には、何ら対策を施さなければ熱アシスト記録時に磁性層に加えられた熱により非磁性層が変形することが懸念される。これに対し本発明では、前述の遮熱層、更には熱拡散層を設けることにより、非磁性層の変形を抑制することができる。
本発明では、市販の、または公知の方法で作製した熱アシスト記録用磁気ヘッドを、何ら制限なく用いることができる。なお磁気ヘッドには、記録ヘッドとともに再生ヘッドが備えられていることが通常である。高密度記録された磁気信号を高感度再生するためには、再生ヘッドとして、磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)を含む磁気ヘッドが好ましい。なお有機物から構成される塗布型磁気記録媒体は、HDD等の蒸着型磁気記録媒体と比べて温まりにくい傾向がある。したがって、記録部への磁界印加時に記録部を所望の温度に到達させるためには、磁界印加に先行してレーザー光の照射を開始することが、好ましい。他方、温まりにくく冷めにくいという有機物の性質から、塗布型磁気記録媒体によれば、熱アシスト記録時に記録部を所望の温度にするために加えるエネルギーを蒸着型磁気記録媒体と比べて小さくできること、隣接ビットへの熱干渉を低減できること、等が期待される。
本発明の磁気記録装置および磁気記録方法については、熱アシスト記録を採用する点以外、塗布型磁気記録媒体への磁気記録に関する公知技術を、何ら制限なく適用することができる。
以上説明した本発明によれば、熱アシスト記録を塗布型磁気記録媒体へ適用することにより磁気記録のトリレンマを克服し、より一層の高容量・高密度記録化を実現することができる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。以下に記載の「部」、「%」は、「質量部」、「質量%」を示す。なお以下に記載の室温とは25℃±1℃であり、特記しない限り、各操作は室温で行った。
調製例1:ε−酸化鉄の合成
〔手順1:ミセル溶液の作製〕
ミセル溶液Iおよびミセル溶液IIの2種類のミセル溶液を、以下の方法で作製し た。
(1)ミセル溶液Iの作製
硝酸鉄(III)9水和物10.46g、臭化セチルトリメチルアンモニウム123.7gに純水207.9gを添加した後、n−オクタン439.8g、1−ブタノール101.2gを添加し撹拌し溶解した。
(2)ミセル溶液IIの作製
臭化セチルトリメチルアンモニウム123.7gに10%アンモニア水178.5g、n−オクタン439.8g、1−ブタノール101.2を添加し撹拌し溶解した。
〔手順2:前駆体粒子の析出〕
ミセル溶液Iにミセル溶液IIを撹拌しながら滴下した。滴下終了後、混合液を30分間撹拌し続けた。
〔手順3:焼結防止剤による前駆体粒子の被覆〕
手順2で得られた混合液には、前駆体粒子である水酸化鉄Fe(OH)2が析出している。当該混合液を撹拌しながら、当該混合液にテトラエトキシシラン(TEOS)を48.9g加えた。約1日そのまま、撹拌し続けた。これにより、TEOSが加水分解し、混合液中の前駆体粒子表面にシリカが被着する。
〔手順4:洗浄〕
手順3で得られた溶液を分液ロートに入れ、純水、エタノールの1:1混合液を200ml加え、静置し、赤褐色の部分とそれ以外の部分に分かれるのを待ち、赤褐色の部分以外を捨てた。この操作を3回繰返した後、遠心分離機にセットして遠心分離処理した。この処理で得られた沈殿物を回収した。回収された沈殿物をクロロホルムとエタノールの混合溶液を用いて再分散し、遠心分離を行い得られた沈殿物を回収した。
〔手順5:加熱焼成〕
手順4で得られた沈殿物を風乾により乾燥した後、乳鉢で粉砕した。その後、アルバック理工製イメージ炉で1L/minで空気を送りながら炉内温度を1025℃として2時間加熱処理を施した。これにより、焼結防止剤であるシリカが付着したε−酸化鉄粒子が得られる。
〔手順6:焼結防止剤の除去〕
手順5により得られたシリカ付着したε−酸化鉄粒子1gを5Nの水酸化ナトリウム水溶液25ccの中に入れ、70℃の温度で超音波をかけながら4時間処理し、その後、一昼夜撹拌した。こうして、ε−酸化鉄粒子表面からシリカを除去した。
その後、水洗、遠心分離を繰返し、上澄み液のpHが8未満になるまで洗浄を行った後、風乾により乾燥させてε−酸化鉄粒子を得た。得られた粒子がε−酸化鉄であることは、PANalytical社製X’Pert PRO(線源CuKα線、電圧45kV、電流40mA)による粉末X線回折分析により確認した。
磁気特性の評価方法
調製例1で得られたε−酸化鉄粒子について、25℃での(残留)保磁力Hcおよび飽和磁化Msを、玉川製作所製超伝導振動式磁力計VSM(外部磁場4.5T)により測定した。同社製温度制御装置を用い、0℃、45℃での保磁力Hcも測定した。
また、保磁力の温度依存性を、以下の方法により求めた。
キューリー点(Tc)を、玉川製作所製超伝導振動式磁力計VSM(外部磁場4.5T)で着磁を行った後、東英工業製振動試料型磁力計VSM−5で同社製温度制御装置を用い残留磁化の温度依存性を求め、残留磁化が零となる温度として求めたところ、235℃であった。キューリー点においては保磁力Hcが零である。キューリー点、0℃、25℃、45℃について、温度に対する保磁力Hcをプロットした結果から最小二乗法により求めた直線の傾きを、保磁力の温度依存性の指標とする。調製例1で得られたε−酸化鉄粒子の保磁力の温度依存性は、(−1512A/m)/℃(−19Oe/℃)であった。
活性化体積Vact、(動的)保磁力H0、結晶磁気異方性Ku、Ku×Vact/kTについては、東英工業製VSM−5および同社製着磁機で着磁時間を変え測定することにより求めた。
以上の評価によって得られた結果を、表1に示す。Ku×Vact/kTは、磁性粒子の熱的安定性の指標であって、この値が60以上であると熱的安定性が高いと判断することができる。Ku×Vact/kTが大きいほど熱的安定性の観点からは好ましくその上限は特に限定されるものではない。例えば100程度の高い値を示す磁性粒子を磁性層の強磁性粉末として用いることも可能である。ただし、熱的安定性の高い磁性粒子ほどHcが高くなり情報の書き込みは困難となる。本発明では、このような熱的安定性に優れる磁性粒子の書き込み困難性を、熱アシスト記録を採用することで解決することができる。
(動的)保磁力H0は、室温では表1に示す値であり、キューリー点235℃では零となると考えられる。従って、記録磁界1194kA/m(15000Oe)で記録するには、記録部を150℃にすべきである。
調製例2:熱拡散層用粒子(Cu粒子)の作製
高純度N2ガス中で下記の操作を行った。
NaBH4(和光純薬製)0.76gを水(脱酸素:0.1mg/リットル以下)16mlに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT(和光純薬製)10.8gとデカン(和光純薬製)80mlとオレイルアミン(東京化成製)2mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I)を調製した。
塩化銅(CuCl2・2H2O)(和光純薬製)0.133gを水(脱酸素)12mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT(和光純薬製)5.4gとデカン(和光純薬製)40mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
逆ミセル溶液(I)を22℃でオムニミキサー(ヤマト科学製)で高速攪拌しながら、逆ミセル溶液(II)を瞬時に添加した。10分後、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃に昇温して60分間熟成した。
オレイン酸(和光純薬製)2mlを添加して、室温まで冷却した。冷却後大気中に取出した。逆ミセルを破壊するために、水100mlとメタノール100mlとの混合溶液を添加して水相と油相とに分離した。油相側に合金粒子が分散した状態が得られた。油相側を水600mlとメタノール200mlとの混合溶液で5回洗浄した。
その後、メタノールを1100ml添加して合金粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させた。上澄み液を除去して、ヘプタン(和光純薬製)20mlを添加して再分散した。
さらに、メタノール100ml添加による沈降とヘプタン20ml分散との沈降分散を2回繰り返して、最後にヘプタン5mlを添加して、水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)が2のPt粒子を含有する合金粒子含有液を調製した。この後、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と記載する。):シクロヘキサノンの6:4の溶媒に溶媒置換した。
得られた粒子について、体積平均粒径および粒度分布は、TEM(日立製作所製透過型電子顕微鏡:加速電圧300kV)により撮影した粒子を計測して統計処理して求めたところ、平均粒径は4.2nm、粒度分布の変動係数は5%であった。
調製例3:遮熱層用粒子(中空シリカ)分散液の作製
日鉄鉱業株式会社製中空シリカ「シリナックス」(粒子サイズ80〜100nm)を東洋高圧株式会社製超高圧処理装置で100MPaの静水圧をかけることで0.25質量%のエタノール物を作製した。
これをMEK:シクロヘキサノンの6:4の溶媒に溶媒置換し中空シリカ分散液を得た。
実施例1、2:磁気テープの作製
(1)磁性層塗布液処方
磁性粉末:100部
ポリウレタン樹脂(ガラス転移温度:150℃):15部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系
−SO3Na=400eq/ton
α−Al23(粒子サイズ0.15μm):4部
板状アルミナ粉末(平均粒径:50nm):0.5部
ダイヤモンド粉末(平均粒径:60nm):0.5部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm):1部
シクロヘキサノン:110部
メチルエチルケトン:100部
トルエン:100部
ブチルステアレート:2部
ステアリン酸:1部
(2)非磁性層塗布液処方
非磁性無機質粉体:75部
α−酸化鉄
表面処理剤:Al23、SiO2
長軸径:0.15μm
タップ密度:0.8
針状比:7
BET比表面積:52m2/g
pH8
DBP吸油量:33g/100g
カーボンブラック:25部
DBP吸油量:120ml/100g
pH:8
BET比表面積:250m2/g
揮発分:1.5%
ポリウレタン樹脂(ガラス転移温度:70℃):22部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系
−SO3Na=200eq/ton
フェニルホスホン酸:3部
シクロヘキサノン:140部
メチルエチルケトン:170部
ブチルステアレート:2部
ステアリン酸:1部
(3)遮熱層塗布液処方
調製例3で作製した中空シリカ分散液:75部(中空シリカ換算)
ポリウレタン樹脂:22部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系
−SO3Na=200eq/ton
フェニルホスホン酸:3部
シクロヘキサノン:140部
メチルエチルケトン:170部
ブチルステアレート:2部
ステアリン酸:1部
(4)熱拡散層塗布液処方
調製例2で作製したCu粒子:75部
ポリウレタン樹脂:22部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系
−SO3Na=200eq/ton
フェニルホスホン酸:3部
シクロヘキサノン:140部
メチルエチルケトン:170部
ブチルステアレート:2部
ステアリン酸:1部
(5)バックコ−ト層塗布液処方
カーボンブラック(平均粒径:25nm):40.5部
カーボンブラック(平均粒径:370nm):0.5部
硫酸バリウム:4.05部
ニトロセルロース:28部
ポリウレタン樹脂(SO3Na基含有):20部
シクロヘキサノン:100部
トルエン:100部
メチルエチルケトン:100部
(6)各層形成用塗布液の調製
上記処方の磁性層塗布液、非磁性層塗布液、バックコート層塗布液、熱拡散層塗布液のそれぞれについて、各成分をオープンニーダーで240分間混練した後、ビ−ズミルで分散した(磁性層塗布液および熱拡散層塗布液は1440分、非磁性層塗布液は720分、バックコート層塗布液は720時間)。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製コロネート3041)をそれぞれ4部加え、更に20分間撹拌混合したあと、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過した。その後、磁性層塗布液に対して、日立ハイテク製 冷却遠心分離機 himac CR−21Dで回転数10000rpnmとして30分間、遠心分離処理を行い、凝集物を除去する分級処理を行った。
遮熱層塗布液は、中空シリカの形状保持のため、調製例4と同様の高圧処理により分散した分散液を溶媒置換した後、スリーワンモーターにより撹拌し塗布液を作製した。
(7)磁気テープの作製
得られた非磁性層塗布液を乾燥後の厚さが表2記載の厚さになるように、厚さ5μmのポリエチレンナフタレート(PEN)支持体(WYKO社製HD2000で測定した平均表面粗さRa=1.5nm)上に塗布した後、100℃で乾燥させて非磁性層を形成した。非磁性層を形成した支持体原反に70℃24時間の熱処理を施した後、実施例1、2では、非磁性層表面に遮熱層塗布液を乾燥後の厚さが0.5μmになるように塗布した。その後、100℃で乾燥させて遮熱層を形成した。
次いで、実施例2では、形成した遮熱層表面に、熱拡散層塗布液を乾燥後の厚さが0.5μmになるように塗布した。その後、100℃で乾燥させて熱拡散層を形成した。
上記分級処理後の磁性層塗布液を、乾燥後に100nmの厚さとなるように遮熱層(実施例1)、熱拡散層(実施例2)、または非磁性層(比較例1)表面にウェットオンドライ塗布した後、100℃で乾燥させた。磁性層を設けた面と反対の支持体表面に、バックコート層塗布液を塗布、乾燥させて厚さ0.5μmのバックコート層を形成した。
その後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで速度100m/min、線圧350kg/cm、温度100℃で表面平滑化処理を行った後、1/2インチ幅にスリットして磁気テ−プを作製した。
評価方法
(1)遮熱層、熱拡散層形成による効果の確認試験
図1に概略を示す光学系を作製し、実施例、比較例の磁気テープの記録部相当領域の磁性層表面温度を、室温において記録磁界1194kA/m(15000Oe)で記録するために求められる温度として先に記載した150℃に加熱した。この加熱に要したレーザーパワーを、みずほ情報総研株式会社製DeviceMeister(登録商標)−LPを用いFDTD法(時間領域差分法)によりレーザ光の反射吸収計算から求めた。
熱アシスト記録において上記加熱により、100℃、80℃となる深さ(磁性層表面からの深さ)をシミュレーションにより求めた。具体的には、レーザーのスポット径はガウシアンビーム系を想定し1/e2強度点、即ち13.5%強度で390nmとし、記録時のテープ走行速度は7m/sとして、3次元熱伝導方程式を有限差分法(陽解法)により解くことで求めた。
(2)熱伝導率の測定
上記の各層の熱伝導率を、構成物質の熱伝導率および比率から求めた結果を表3に示す。
評価結果
実施例1、2では、比較例1と比べて、熱アシスト記録時の加熱により所定温度(100℃、80℃)に昇温される深さ方向位置が浅い。このことは、実施例1では遮熱層により、実施例2では遮熱層および熱拡散層により、熱アシスト記録時の加熱により加えられた熱が、磁性層の下層に及ぶことを抑制できたことを意味している。
また、実施例1は、遮熱層なしの比較例1と比べて、熱アシスト記録時に記録部を所望の温度にするために加えるエネルギー(レーザーパワー)は小さかった。これは、遮熱層が存在するため媒体に加えられた熱が逃げにくいことが理由と考えられる。なお実施例1の磁気テープに比較例1と同じレーザーパワーで加熱を行ったところ、磁性層表面に穴が開く現象が確認されたが、これは上記の通り媒体に加えられた熱が逃げにくいためと推察される。
一方、実施例2において記録に要したレーザーパワーが実施例1と比べて高い理由は、熱拡散層を有する場合、当該層を持たない場合と比べて熱アシスト記録時に記録部を所望の温度にするために加えるエネルギーは相対的に高くなることにある。
以上の結果から、低エネルギーでの熱アシスト記録を優先するためには遮熱層のみを設けることが好ましく、熱アシスト記録のために加えられた熱による磁性層の下層の昇温をより効果的に抑制するためには、遮熱層と熱拡散層の両層を設けることが好ましいことが確認できる。
本発明は、高密度記録用磁気記録媒体の製造分野において有用である。

Claims (15)

  1. 非磁性有機物支持体上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有し
    記非磁性有機物支持体と磁性層との間に、磁性層よりも熱伝導率の低い遮熱層を有し、
    前記磁性層と遮熱層との間に、磁性層よりも熱伝導率の高い熱拡散層を有し、
    前記非磁性有機物支持体と遮熱層との間に、遮熱層よりも熱伝導率が高い層であって、非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を有し、
    前記熱拡散層の熱伝導率は50W/(m・K)以上400W/(m・K)以下であり、
    前記遮熱層の熱伝導率は0.01W/(m・K)以上5W/(m・K)未満であり、かつ
    前記非磁性層の熱伝導率は3W/(m・K)以上10W/(m・K)未満である熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体
  2. 前記熱拡散層は、金属粒子と結合剤とを含む層である請求項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  3. 前記遮熱層は、中空無機粒子と結合剤とを含む層である請求項1または2に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  4. 前記中空無機粒子は、中空シリカ粒子である請求項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  5. 前記磁性層の結合剤は、前記非磁性層の結合剤よりも高いガラス転移温度を有する結合剤である請求項1〜のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  6. 前記非磁性層の結合剤は、熱アシスト記録時の磁性層の加熱温度よりも低いガラス転移温度を有する結合剤である請求項1〜のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  7. 前記非磁性層の結合剤は、100℃未満のガラス転移温度を有する結合剤である請求項1〜のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  8. 前記強磁性粉末は、強磁性フェライト粉末である請求項1〜のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  9. 前記強磁性粉末は、ε−酸化鉄である請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  10. 前記強磁性粉末は、25℃での保磁力が318kA/m(4000Oe)以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  11. 前記強磁性粉末は、(−796A/m)/℃(−10Oe/℃)以下の保磁力Hcの温度依存性を示す請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体と、
    熱アシスト記録用磁気ヘッドと、
    を含む磁気記録装置。
  13. 前記熱アシスト記録用磁気ヘッドは、磁性層上の記録部を100℃以上に加熱する請求項12に記載の磁気記録装置。
  14. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用塗布型磁気記録媒体に、熱アシスト記録用磁気ヘッドにより熱アシスト記録を行うことを含む磁気記録方法。
  15. 前記熱アシスト記録用磁気ヘッドにより、磁性層上の記録部を100℃以上に加熱することを含む請求項14に記載の磁気記録方法。
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