図面を用いて、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブについて説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、ヘッド付サスペンション51は、サスペンション41と、サスペンション用基板1に実装されたヘッドスライダ52と、を備えている。このうちヘッドスライダ52は、後述するディスク63(図6参照)に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うためのものであり、後述するサスペンション用基板1のタング部31に接着剤を用いて接合され、ヘッド端子5に電気的に接続されている。
サスペンション41は、ベースプレート42と、ベースプレート42上に取り付けられたロードビーム43と、ロードビーム43に取り付けられたサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1に接続された一対のピエゾ素子(アクチュエータ素子)44と、を備えている。このうちベースプレート42およびロードビーム43は、いずれも、好適にはステンレスにより形成され、互いに溶接されて固定されている。
また、ロードビーム43は、サスペンション用基板1の金属支持層11(後述)に、溶接により取り付けられるようになっている。また、ロードビーム43には、サスペンション用基板1の各治具孔25(後述)に対応して、ビーム治具孔(図示せず)が設けられており、サスペンション用基板1にロードビーム43を取り付ける際に、サスペンション用基板1とロードビーム43との位置合わせを行うことができるようになっている。このロードビーム43の治具孔は、図1に示す長手方向軸線(X)上に配置されている。
ピエゾ素子44は、ヘッドスライダ52をスウェイ方向(旋回方向、図1の矢印Q方向)に変位させるためのものであり、ヘッドスライダ52の両側に配置されている。各ピエゾ素子44は、一対の電極44aと、一対の電極44a間に設けられ、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスからなる圧電材料部44bと、を有している。なお、一対の電極44aは、互いに離間して圧電材料部44bに電圧を印加した場合に所望の伸縮量を得ることが可能であれば、任意の形状とすることができる。
一対のピエゾ素子44の圧電材料部44bは、互いに180°異なる分極方向となるように形成されており、所定の電圧が印加されると、一方のピエゾ素子44が収縮すると共に、他方のピエゾ素子44が伸長するようになっている。すなわち、ピエゾ素子44は、電極44a間に所定の電圧が印加されることにより図1の矢印P方向に伸縮自在な圧電素子として構成されている。このようなピエゾ素子44は、図1に示すように、長手方向軸線(X)に沿って細長の矩形状に形成されており、その伸縮方向が、当該長手方向軸線(X)に平行となっている。また、ピエゾ素子44は、長手方向軸線(X)に対して互いに線対称に配置されており、各ピエゾ素子44の伸縮が、ヘッドスライダ52に均等に伝達されるようになっている。
次に、サスペンション用基板1について説明する。
図1に示すように、サスペンション用基板1は、ヘッドスライダ52が実装されるジンバル部2aと、FPC基板71が接続されるテール部2bと、を有している。ジンバル部2aには、ヘッドスライダ52に接続される複数のヘッド端子5が設けられ、テール部2bには、FPC基板71に接続される複数のテール端子(外部接続基板端子)6が設けられており、ヘッド端子5とテール端子6とが、後述する複数の信号配線13を介してそれぞれ接続されている。
また、サスペンション用基板1は、ピエゾ素子44の一方の電極44aに導電性接着剤48(例えば、銀ペースト)を介して接続される第1素子接続領域3aと、当該ピエゾ素子44の他方の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第2素子接続領域3bと、を有している。第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bは、ヘッドスライダ52の両側にそれぞれ配置されている。
図1および図2に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面(接続されるピエゾ素子44の側の面)に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面(ピエゾ素子44の側とは反対側の面)に設けられた配線層12と、を備えている。すなわち、サスペンション用基板1においては、金属支持層11に絶縁層10を介して配線層12が積層されており、金属支持層11の側にピエゾ素子44が配置されるようになっている。
配線層12は、複数の配線、すなわち、一対の読取配線と一対の書込配線とを含む信号配線13と、ピエゾ素子44に接続される一対の素子配線14と、を有している。このうち、信号配線13は、ヘッド端子5とテール端子6とを接続しており、この信号配線13に電気信号が流されることによって、ヘッドスライダ52がディスク63(図6参照)に対してデータの書き込みまたは読み取りを行うようになっている。また、素子配線14は、後述する第2素子接続端子16bを介してピエゾ素子44に所定の電圧を印加するようになっている。
配線層12は、第1素子接続領域3aに設けられた、ピエゾ素子44の一方の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第1素子接続端子16aを有している。第1素子接続領域3aは、ピエゾ素子44の対応する電極44aを接地するためのものであり、第1素子接続端子16aは、第1素子接続端子16aおよび絶縁層10を貫通する導電接続部(接地ビア)18を介して、金属支持層11の金属支持層本体30(後述)に電気的に接続されている。なお、導電接続部18は、ニッケルめっきにより形成することができる。
配線層12は、第2素子接続領域3bに設けられた、ピエゾ素子44の他方の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第2素子接続端子16bを有している。第2素子接続端子16bには、配線層12の素子配線14が接続され、ピエゾ素子44の対応する電極44aに、所定の電圧を印加するようになっている。
第1素子接続端子16aおよび第2素子接続端子16bは、各配線13、14と同一の材料により形成され、各配線13、14と略同一の厚さを有しており、ヘッド端子5、テール端子6および配線13、14と共に配線層12を構成している。
金属支持層11は、図3および図4に示すように、金属支持層本体30と、ヘッドスライダ52が実装され、金属支持層本体30とは離間したタング部31と、を有している。タング部31の両側に一対のアーム部32が設けられている。各アーム部32は、タング部31に沿って延びるように形成されている。タング部31に対して金属支持層本体30側とは反対側に金属支持層先端部33が設けられている。この金属支持層先端部33は、長手方向軸線(X)に対して直交する方向に延びて、タング部31およびアーム部32に連結されている。タング部31と各アーム部32との間には、ピエゾ素子44を収容する収容開口部34が設けられている。この収容開口部34は、第1素子接続領域3aから第2素子接続領域3bに延びるように、平面視で細長の矩形状に形成されている。
第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aは、金属支持層本体30に対応する位置に配置され、第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bは、金属支持層先端部33に対応する位置に配置されている。具体的には、図3(c)および図4(b)に示すように、金属支持層本体30は、第1支持部35を含み、第1素子接続端子16aは、この第1支持部35上に配置されて、当該第1支持部35に支持されている。また、金属支持層先端部33は第2支持部36を含み、第2素子接続端子16bは、この第2支持部36上に配置されて、当該第2支持部36に支持されている。なお、図3(c)および図4(b)においては、第1支持部35および第2支持部36の平面形状は、いずれもU字状になっているが、これに限られることはない。
図2に示すように、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bに、素子接続端子16a、16bに接続される導電性接着剤48を係止する係止部80がそれぞれ設けられている。具体的には、係止部80は、絶縁層10に設けられた絶縁層係止開口部81を有しており、この絶縁層係止開口部81は、対応する素子接続端子16a、16bを収容開口部34側に露出させる。また、絶縁層係止開口部81は、当該絶縁層係止開口部81に充填される導電性接着剤48を係止するようになっている。なお、素子接続端子16a、16bのうち絶縁層係止開口部81から露出された部分に、めっき層(図示せず)が形成されていることが好ましい。この場合、めっき層は、ニッケル(Ni)めっき、金(Au)めっきを順次施すことにより形成されることが好適である。
絶縁層係止開口部81の平面形状は、特に限定されるものではないが、図5(a)に示すような矩形状に形成することができる。また、図5(b)に示すように、絶縁層係止開口部81内に、ピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向に延びる係止壁82が設けられ、絶縁層係止開口部81が、係止壁82によって2つの開口領域に分離されていても良い。あるいは、図5(c)に示すように、絶縁層係止開口部81内に、ピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向に延びる島状の係止壁82が設けられるようにしても良い。このような係止壁82を設けることにより、ピエゾ素子44を接続する際、導電性接着剤48がピエゾ素子44と絶縁層10との間から周囲に流出することをより一層防止できる。なお、ここでの島状とは、係止壁82が、絶縁層10を構成する部材により連結されていない状態を意味している。また、ピエゾ素子44が伸縮する際に、導電性接着剤48が素子接続端子16a、16bまたはピエゾ素子44の電極44aから剥離されることを防止できる。なお、係止壁82は、絶縁層10と同一の材料により形成され、絶縁層10と略同一の厚さを有するようにすることができる。すなわち、係止壁82は、絶縁層10を構成しており、絶縁層10をエッチングすることにより形成することができる。
図2に示すように、各ピエゾ素子44は、導電性接着剤48により素子接続端子16a、16bに電気的に接続されている。導電性接着剤48は、絶縁層係止開口部81内に充填されている。この絶縁層係止開口部81内に充填された導電性接着剤48が、ピエゾ素子44の対応する電極44aに接続されている。
また、各ピエゾ素子44は、非導電性接着剤46により金属支持層11および絶縁層10に接合されている。この非導電性接着剤46は、導電性接着剤48を覆うように塗布されている。一般に、非導電性接着剤46は導電性接着剤48より接合力が強いため、導電性接着剤48だけでなく、非導電性接着剤46を用いることにより、ピエゾ素子44と各素子接続領域3a、3bとの接合信頼性、すなわち接続信頼性を向上させることができる。
ところで、図2に示すように、絶縁層10の配線層12の側の面に、配線層12を覆う保護層20が設けられている。ここでは、各素子接続端子16a、16bが保護層20により覆われている。なお、図1および図3においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略している。
第1素子接続領域3aと第2素子接続領域3bとの間の領域には、絶縁層10、配線層12および保護層20を貫通する貫通開口部37が形成されている。このことにより、サスペンション用基板1のジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を向上させている。
また、図1に示すように、サスペンション用基板1には、サスペンション用基板1をロードビーム43に取り付ける際に、ロードビーム43とアライメント(位置合わせ)を行うための2つの治具孔25が設けられている。各治具孔25は、長手方向軸線(X)上に配置されている。すなわち、当該長手方向軸線(X)は、各治具孔25を通っている。
次に、サスペンション用基板1の各層を構成する材料について詳細に述べる。
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜30μm、とりわけ8μm〜10μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11と各配線13、14との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
各配線13、14は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線13、14の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線13、14の厚さは、例えば1μm〜18μm、とりわけ9μm〜12μmであることが好ましい。このことにより、各配線13、14の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。なお、ヘッド端子5、テール端子6および素子接続端子16a、16bは、各配線13、14と同一の材料、同一の厚みとなっている。
金属支持層11の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、ステンレスを用いることが好適である。金属支持層11の厚さは、10μm〜30μm、とりわけ15μm〜20μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11の導電性、剛性、および弾力性を確保することができる。
保護層20の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層20の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。保護層20の厚さは、2μm〜30μm、とりわけ2〜6μmであることが好ましい。
次に、図6により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ61について説明する。図6に示すハードディスクドライブ61は、ケース62と、このケース62に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク63と、このディスク63を回転させるスピンドルモータ64と、ディスク63に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク63に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うヘッドスライダ52を含むヘッド付サスペンション51と、を有している。このうちヘッド付サスペンション51は、ケース62に対して移動自在に取り付けられており、ケース62にはヘッド付サスペンション51のヘッドスライダ52をディスク63上に沿って移動させるボイスコイルモータ65が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション51は、ボイスコイルモータ65にアーム66を介して取り付けられると共に、ハードディスクドライブ61を制御する制御部(図示せず)に接続されたFPC基板71(図1参照)に接続されている。このようにして、電気信号が、サスペンション用基板1とFPC基板71を介して、制御部とヘッドスライダ52との間で伝送されるようになっている。
次に、本実施の形態によるサスペンション用基板1をサブトラクティブ法により製造する場合について説明する。なお、アディティブ法によって製造することもできる。
まず、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層12と、を有する積層体(図示せず)を準備する。続いて、配線層12が、所望の形状にエッチングされて、配線13、14、ヘッド端子5、テール端子6および素子接続端子16a、16bが形成される。この際、金属支持層11も同様にエッチングされて収容開口部34が形成される。次に、絶縁層10上に、各配線13を覆う保護層20が形成される。続いて、絶縁層10が所望の形状にエッチングされると共に、絶縁層係止開口部81が形成される。この際、係止壁82を形成してもよい。その後、金属支持層11がエッチングされて、外形加工され、タング部31などが形成される。このようにして、本実施の形態におけるサスペンション用基板1が得られる。
次に、本実施の形態におけるサスペンション41の製造方法について説明する。
まず、ベースプレート42に、ロードビーム43を介して、上述のようにして得られたサスペンション用基板1が、溶接により取り付けられる。この場合、まず、ベースプレート42にロードビーム43が溶接により固定され、続いて、ロードビーム43に設けられたビーム治具孔(図示せず)と、サスペンション用基板1に設けられた治具孔25とにより、ロードビーム43とサスペンション用基板1とのアライメントが行われる。その後、サスペンション用基板1の金属支持層11に溶接が施されて、ロードビーム43とサスペンション用基板1が互いに接合されて固定される。
次に、ピエゾ素子44が第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bに接続される。この場合、まず、導電性接着剤48が、絶縁層係止開口部81に塗布される。続いて、ピエゾ素子44が収容開口部34に収容される。このことにより、ピエゾ素子44の電極44aが、導電性接着剤48に接続される。次に、導電性接着剤48を覆うように、非導電性接着剤46が塗布される。その後、導電性接着剤48および非導電性接着剤46を硬化する。このことにより、ピエゾ素子44が、金属支持層11および絶縁層10に接合される。
このようにして、本実施の形態によるサスペンション41が得られる。
その後、得られたサスペンション41にヘッドスライダ52が実装されて、ヘッドスライダ52がヘッド端子5に接続され、図1に示すヘッド付サスペンション51が得られる。さらに、このヘッド付サスペンション51がハードディスクドライブ61のケース62に取り付けられて、図6に示すハードディスクドライブ61が得られる。
図6に示すハードディスクドライブ61においてデータの書き込みおよび読み取りを行う際、ボイスコイルモータ65によりヘッド付サスペンション51のヘッドスライダ52がディスク63上に沿って移動し、スピンドルモータ64により回転しているディスク63に所望のフライングハイトを保って近接する。このことにより、ヘッドスライダ52とディスク63との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1とFPC基板71を介して、FPC基板71に接続されている制御部(図示せず)とヘッドスライダ52との間で電気信号が伝送される。このような電気信号は、サスペンション用基板1においては、各信号配線13によってヘッド端子5とテール端子6との間で伝送される。
ヘッドスライダ52を移動させる際、ボイスコイルモータ65が、ヘッドスライダ52の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子44が、ヘッドスライダ52の位置を微小調整する。すなわち、サスペンション用基板1の第2素子接続領域3bの側のピエゾ素子44の電極44aに、素子配線14および第2素子接続端子16bを介して所定の電圧を印加することにより、長手方向軸線(X)に沿った方向(図1の矢印P方向)に、一方のピエゾ素子44が収縮すると共に他方のピエゾ素子44が伸長する。この場合、金属支持層11のアーム部32が弾性変形し、タング部31に実装されているヘッドスライダ52がスウェイ方向(図1の矢印Q方向)に変位することができる。このようにして、ヘッドスライダ52を、ディスク63の所望のトラックに、迅速に、かつ精度良く位置合わせすることができる。とりわけ、ピエゾ素子44は、ヘッドスライダ52の両側に配置されている。このことにより、ピエゾ素子44をヘッドスライダ52に近接して配置することができ、ピエゾ素子44の伸縮力の伝達損失を低減し、ヘッドスライダ52を精度良く変位させることができる。
このように本実施の形態によれば、ピエゾ素子44の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bに、充填された導電性接着剤48を係止する係止部80がそれぞれ設けられている。このことにより、ピエゾ素子44を接続する際、導電性接着剤48が流出することを防止できる。すなわち、本実施の形態によれば、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bに、係止部80としての絶縁層係止開口部81が設けられ、当該絶縁層係止開口部81は、充填される導電性接着剤48を係止する。このことにより、ピエゾ素子44の接続時には流動性を有する導電性接着剤48が、ピエゾ素子44と絶縁層10との間から周囲に流出することを防止できる。このため、ピエゾ素子44とサスペンション用基板1との接続信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1素子接続領域3aは、金属支持層本体30に対応する位置に配置され、第2素子接続領域3bは、金属支持層11の金属支持層先端部33に対応する位置に配置されている。このことにより、ピエゾ素子44を、ヘッドスライダ52の両側に配置して、ヘッドスライダ52に近接して配置することができる。このため、ピエゾ素子44の伸縮力の伝達損失を低減し、ヘッドスライダ52を精度良く変位させることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bのいずれにも、係止部80としての絶縁層係止開口部81が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、絶縁層係止開口部81は、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bの一方のみに設けられていてもよい。この場合であっても、絶縁層係止開口部81によって、導電性接着剤48の流出を防止することができる。
また、上述した本実施の形態においては、第1素子接続領域3aが、金属支持層本体30に対応する位置に配置され、第2素子接続領域3bが、金属支持層11の金属支持層先端部33に対応する位置に配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1素子接続領域3aは、金属支持層本体30に対応する位置に配置され、第2素子接続領域3bは、タング部31に対応する位置に配置されていても良い。
例えば、図7(a)、(b)に示す形態では、金属支持層11のタング部31は、金属支持層本体30、一対のアーム部32および金属支持層先端部33と離間しており、島状に形成されている。ここでの島状とは、タング部31が、金属支持層本体30、アーム部32、金属支持層先端部33と、金属支持層11を構成する部材では連結されていないということを意味している。そして、金属支持層本体30は、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aを支持する第1支持部35を含んでいる。すなわち、第1素子接続端子16aは、第1支持部35上に配置されて当該第1支持部35に支持されている。また、タング部31は、その金属支持層先端部33側の部分に設けられた、アーム部32側に突出する突出部38と、この突出部38に設けられ、第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bを支持する第2支持部36と、を含んでいる。すなわち、第2素子接続端子16bは、第2支持部36上に配置されて当該第2支持部36に支持されている。なお、図7(b)に示すように、第2支持部36と突出部38は、タング部31のうち長手方向の中央部に配置されるようにしてもよい。図7(a)、(b)に示す形態では、タング部31は島状に形成されているため、サスペンション用基板1のジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を向上させることができ、ピエゾ素子44の伸縮によって、ヘッドスライダ52をより大きく変位させることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図8乃至図10により、本発明の第2の実施の形態におけるサスペンション用基板について説明する。
図8乃至図10に示す第2の実施の形態においては、アクチュエータ素子は配線層側に配置され、係止部が、素子接続端子に設けられた端子係止開口部を有している点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図8乃至図10において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、図8および図9に示すように、ピエゾ素子44は、素子接続端子16a、16bに対して絶縁層10とは反対側、すなわち、サスペンション用基板1の保護層20の側に配置されるようになっている。この場合、配線層12は、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面に設けられている。なお、図8においては、図面を明瞭にするために、ロードビーム43および保護層20は省略している。図9は、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bの断面を示しているが、ここでは、図面を明瞭にするために、配線13、14、後述する絶縁層10のスリット状開口部10a等は省略されている。
図10(a)〜(c)に示すように、金属支持層11は、金属支持層本体30と、ヘッドスライダ52が実装され、金属支持層本体30とは離間した島状のタング部31と、を有している。タング部31の両側には、一対のアーム部32が設けられている。各アーム部32は、タング部31に沿って延びるように形成されている。また、タング部31に対して金属支持層本体30側とは反対側に金属支持層先端部33が設けられている。金属支持層先端部33は、タング部31と離間しており、タング部31は島状になっている。ここでの島状とは、タング部31が、金属支持層本体30、アーム部32および金属支持層先端部33と、金属支持層11を構成する部材では連結されていないということを意味している。
図8および図9に示すように、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aは、金属支持層11の金属支持層先端部33に対応する位置に配置されている。すなわち、第1素子接続端子16aは、金属支持層先端部33上に配置されて、当該金属支持層先端部33に支持されている。また、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aは、第1の実施の形態と同様に、導電接続部(接地ビア)18を介して金属支持層の金属支持層先端部33に電気的に接続され、ピエゾ素子44の対応する電極44aを接地している。
第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bは、タング部31に対応する位置に配置されている。具体的には、図10に示すように、タング部31は、その金属支持層本体30の側の部分に設けられた、アーム部32の側に突出する突出部38を含んでおり、この突出部38上に、第2素子接続端子16bが配置されて当該突出部38に支持されている。この第2素子接続端子16bには、第1の実施の形態と同様に、素子配線14が接続されている。なお、本実施の形態においては、一対のピエゾ素子44に対応して、テール端子6から延びる2つの素子配線14が第2素子接続端子16bにそれぞれ接続されている例を示しているが、これに限られることはなく、テール端子6から延びる1つの素子配線14を一方の第2素子接続端子16bに接続して、当該一方の第2素子接続端子16bから他方の第2素子接続端子16bに他の配線(図示せず)を介して接続するようにしてもよい。
第1素子接続領域3aと第2素子接続領域3bとの間の領域には、金属支持層11、絶縁層10、配線層12および保護層20を貫通する貫通開口部39が形成されている。このことにより、サスペンション用基板1のジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を向上させている。なお、絶縁層10には、スリット状開口部10aが設けられており、このことにより、ピエゾ素子44の伸縮に対するジンバル部2aの可撓性を向上させている。
図9に示すように、本実施の形態においては、係止部80は、素子接続端子16a、16bに設けられた端子係止開口部83を有している。この端子係止開口部83は、端子係止開口部83に充填される導電性接着剤48を係止するようになっている。なお、図8においては、図面を明瞭にするために、端子係止開口部83は省略されている。端子係止開口部83の平面形状は、特に限定されるものではないが、図5(a)〜(c)に示す絶縁層係止開口部81の平面形状と同様の形状とすることが好適である。例えば、端子係止開口部83の平面形状は、矩形状に形成することができる(図5(a)参照)。また、端子係止開口部83内に、ピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向に延びる係止壁(図示せず)が設けられ、端子係止開口部83が、係止壁によって2つの開口領域に分離されていても良い(図5(b)参照)。あるいは、端子係止開口部83内に、ピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向に延びる島状の係止壁(図示せず)が設けられるようにしても良い(図5(c)参照)。このような係止壁を設けることにより、ピエゾ素子44を接続する際、導電性接着剤48がピエゾ素子44と素子接続端子16a、16b(あるいは保護層20)との間から周囲に流出することをより一層防止できる。また、ピエゾ素子44が伸縮する際に、導電性接着剤48が素子接続端子16a、16bまたはピエゾ素子44の電極44aから剥離されることを防止できる。なお、この場合の係止壁82は、配線層12を構成しており、配線層12をエッチングすることにより形成することができる。
図9に示すように、各ピエゾ素子44は、導電性接着剤48により素子接続端子16a、16bに電気的に接続されている。導電性接着剤48は、端子係止開口部83内に充填されている。この端子係止開口部83内に充填された導電性接着剤48が、ピエゾ素子44の対応する電極44aに接続されている。
また、各ピエゾ素子44は、非導電性接着剤46により保護層20(または素子接続端子16a、16b)に接合されている。この非導電性接着剤46は、導電性接着剤48を覆うように塗布されている。一般に、非導電性接着剤46は、導電性接着剤48より接合力が強いため、導電性接着剤48だけでなく、非導電性接着剤46を用いることにより、ピエゾ素子44と各素子接続領域3a、3bとの接合信頼性を向上させることができる。
素子接続端子16a、16bのピエゾ素子44の側の面の一部には、保護層20が形成されていることが好適である。本実施の形態においては、図8に示すように、ピエゾ素子44は、各配線13、14と重なり合い、各配線13、14上に保護層20を介して配置されるようになるため、素子接続端子16a、16b上に保護層20の一部が形成されることにより、ピエゾ素子44を安定して取り付けることができる。なお、保護層20は、導電性接着剤48との接触面積が確保できれば、端子係止開口部83内の一部に形成されていてもよい。
本実施の形態において、一対のピエゾ素子44に所定の電圧を印加すると、一方のピエゾ素子44が図8の矢印P方向に伸縮すると共に、他方のピエゾ素子44が矢印P方向に伸長する。これにより、ジンバル部2aにおける絶縁層10および配線層12が弾性変形し、タング部31に実装されているヘッドスライダ52がスウェイ方向(旋回方向Q)に変位する。
このように本実施の形態によれば、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aおよび第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bに、係止部80としての端子係止開口部83が設けられ、当該端子係止開口部83は、充填される導電性接着剤48を係止する。このことにより、ピエゾ素子44の接続時には流動性を有する導電性接着剤48が、ピエゾ素子44と素子接続端子16a、16b(または保護層20)との間から周囲に流出することを防止できる。このため、ピエゾ素子44とサスペンション用基板1との接続信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1素子接続領域3aは、金属支持層11の金属支持層先端部33に対応する位置に配置され、第2素子接続領域3bは、金属支持層11のタング部31に対応する位置に配置されている。このことにより、ピエゾ素子44を、ヘッドスライダ52の両側に配置して、ヘッドスライダ52に近接して配置することができる。このため、ピエゾ素子44の伸縮力の伝達損失を低減し、ヘッドスライダ52を精度良く変位させることができる。とりわけ、本実施の形態によれば、タング部31は島状に形成されているため、サスペンション用基板1のジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を向上させることができ、ピエゾ素子44の伸縮によって、ヘッドスライダ52をより大きく変位させることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bのいずれにも、係止部80としての端子係止開口部83が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、端子係止開口部83は、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bの一方のみに設けられていてもよい。この場合であっても、端子係止開口部83によって、導電性接着剤48の流出を防止することができる。
(第3の実施の形態)
次に、図11乃至図15により、本発明の第3の実施の形態におけるサスペンション用基板について説明する。
図11乃至図15に示す第3の実施の形態においては、係止部が、素子接続端子に設けられた端子係止凹部を有している点が主に異なり、他の構成は、図8乃至図10に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、図11乃至図15において、図8乃至図10に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図11および図12に示すように、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bは、金属支持層11のタング部31に対応する位置に配置されている。なお、図11においては、図面を明瞭にするために、ロードビーム43は省略している。また、図11および図12においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略されている。
具体的には、図12(c)に示すように、金属支持層11のタング部31は、金属支持層先端部33側に設けられるとともにアーム部32側に突出する第1突出部91と、金属支持層本体30側に設けられるとともにアーム部32側に突出する第2突出部92と、を含んでいる。そして、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aは、タング部31の第1突出部91に対応する位置に配置されている。すなわち、第1素子接続端子16aは、第1突出部91上に配置されて、当該第1突出部91に支持されている。第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bは、タング部31の第2突出部92に対応する位置に配置されている。すなわち、第2素子接続端子16bは、第2突出部92上に配置されて、当該第2突出部92に支持されている。
また、第1素子接続領域3aと第2素子接続領域3bとの間の領域には、金属支持層11、絶縁層10、配線層12および保護層20を貫通する貫通開口部39が形成されている。このことにより、サスペンション用基板1のジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を向上させることができる。
タング部31の側部には、アーム部32側に開口するタング切欠部93がそれぞれ設けられている。このタング切欠部93は、第1突出部91と第2突出部92との間に配置されている。なお、図12(c)に、タング切欠部93の平面形状がV字状である例を示しているが、これに限られることはなく、例えば円弧状など、任意の形状とすることができる。
このようにして形成されたタング部31は、ピエゾ素子44が図11に示すP方向に伸縮した際、図11および図13に示すように、金属支持層先端部33側の部分がスウェイ方向(Q方向)に変位するように、弾性変形することができる。なお、図11および図12に示すように、絶縁層10は、タング部31と金属支持層先端部33とを連結するリミッタ部10bを有しているが、このリミッタ部10bは、可撓性を有しているため、タング部31の弾性変形に追従できるようになっている。
なお、一対のタング切欠部93の間の中央部に、ロードビーム43のディンプル56が当接するようになる。ディンプル56は、タング部31を揺動自在に支持する支点として機能するものである。そして、ヘッドスライダ52とタング部31とを接合する接着剤は、このディンプル56との当接部の近傍に塗布されることが好適である。このことにより、ピエゾ素子44の伸縮時に、接着剤によってタング部31の弾性変形が阻害されることを抑制できる。
第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aは、図14(a)に示すように、導電接続部(接地ビア)18によって、金属支持層11のタング部31の第1突出部91に電気的に接続され、ピエゾ素子44の対応する電極44aを接地している。ここでは、導電接続部18は、第1素子接続端子16aと一体に構成されている例を示している。このような第1素子接続端子16aおよび導電接続部18は、アディティブ法によって好適に形成することができる。この場合、第1素子接続端子16aと導電接続部18は、第1素子接続端子16aを形成する材料により、めっきによって一体に形成することができる。また、第1素子接続端子16aには、めっき層15が形成されている。このめっき層15は、ニッケル(Ni)めっき、金(Au)めっきを順次施すことにより形成されることが好適である。なお、島状のタング部31は、図示しない接地配線によって、接地されるようになっている。また、第2素子接続領域3bは、ピエゾ素子44の対応する電極44aに、所望の電圧を印加するようになっている。このため、図14(b)に示すように、第2素子接続領域3bには導電接続部18は設けられておらず、素子配線14に接続されるようになっている。
図14(a)、(b)に示すように、本実施の形態においては、係止部80は、素子接続端子16a、16bに設けられた端子係止凹部84を有している。この端子係止凹部84は、端子係止凹部84に充填される導電性接着剤48を係止するようになっている。端子係止凹部84の平面形状は、図15に示すように円形状とすることが好適であるが、これに限られることはなく、矩形状など、任意の形状とすることができる。なお、端子係止凹部84は、ハーフエッチングによって好適に形成することができる。また、図14(a)に示す第1素子接続端子16aおよび導電接続部18をアディティブ法により形成する場合には、ハーフエッチングすることなく、第1素子接続端子16aおよび導電接続部18をめっきで形成する際に、端子係止凹部84を好適に形成することができる。
図14および図15に示すように、係止部80は、保護層20に設けられた、端子係止凹部84を外方に露出させる保護層係止切欠部85を有していてもよい。この保護層係止切欠部85は、矩形状に形成されて、後述する非導電性接着剤係止開口部86の側に開口している。言い換えると、保護層20は、素子接続端子16a、16b上において端子係止凹部84を平面視で囲むようにU字状に形成されていてもよい。この保護層係止切欠部85は、保護層係止切欠部85に充填される導電性接着剤48を係止するようになっている。
図14に示すように、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bにおいて、絶縁層10に、非導電性接着剤係止開口部86が設けられていてもよい。この非導電性接着剤係止開口部86は、ピエゾ素子44を絶縁層10に接合する非導電性接着剤46を係止するようになっている。なお、非導電性接着剤係止開口部86の平面形状は、図15に示すように矩形状またはスリット状とすることが好適であるが、これに限られることはない。スリット状にする場合には、図15に示すように、非導電性接着剤係止開口部86の長手方向をピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向にすることが好適である。このことにより、ピエゾ素子44を接続する際、非導電性接着剤46がピエゾ素子44と絶縁層10との間から周囲に流出することをより一層防止できる。また、ピエゾ素子44が伸縮する際に、非導電性接着剤46が素子接続端子16a、16bまたはピエゾ素子44の電極44aから剥離されることを防止できる。また、第1素子接続領域3aの非導電性接着剤係止開口部86は、第1素子接続端子16aよりも第2素子接続領域3bの側に配置され、第2素子接続領域3bの非導電性接着剤係止開口部86は、第2素子接続端子16bよりも第1素子接続領域3aの側に配置されている。
図14(a)、(b)に示す形態では、ピエゾ素子44は、絶縁層10上に配置されており、各ピエゾ素子44は、導電性接着剤48により素子接続端子16a、16bに電気的に接続されている。導電性接着剤48は、端子係止凹部84内に充填されている。この端子係止凹部84内に充填された導電性接着剤48が、ピエゾ素子44の対応する電極44aに接続されている。
また、各ピエゾ素子44は、非導電性接着剤46により絶縁層10に接合されている。この第1素子接続領域3aにおける非導電性接着剤46は、導電性接着剤48よりも第2素子接続領域3bの側に塗布され、第2素子接続領域3bにおける非導電性接着剤46は、導電性接着剤48よりも第1素子接続領域3aの側に塗布されている。一般に、非導電性接着剤46は、導電性接着剤48より接合力が強いため、導電性接着剤48だけでなく、非導電性接着剤46を用いることにより、ピエゾ素子44と各素子接続領域3a、3bとの接合信頼性を向上させることができる。
なお、図14(c)に示すように、ピエゾ素子44は、素子接続端子16a、16b上に配置されるようにしてもよい。この場合においても、図14(a)、(b)と同様に、ピエゾ素子44を第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bに接続することができる。
このように本実施の形態によれば、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aおよび第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bに、係止部80としての端子係止凹部84が設けられ、当該端子係止凹部84は、充填される導電性接着剤48を係止する。このことにより、ピエゾ素子44の接続時には流動性を有する導電性接着剤48が、素子接続端子16a、16b上から周囲に流出することを防止できる。とりわけ、本実施の形態によれば、係止部80が、保護層係止切欠部85を有していることにより、素子接続端子16a、16b上の導電性接着剤48が周囲に流出することをより一層防止できる。このため、ピエゾ素子44とサスペンション用基板1との接続信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1素子接続領域3aは、金属支持層11のタング部31の第1突出部91に対応する位置に配置され、第2素子接続領域3bは、金属支持層11のタング部31の第2突出部92に対応する位置に配置されている。このことにより、ピエゾ素子44を、ヘッドスライダ52の両側に配置して、ヘッドスライダ52に近接して配置することができる。このため、ピエゾ素子44の伸縮力の伝達損失を低減し、ヘッドスライダ52を精度良く変位させることができる。とりわけ、本実施の形態によれば、タング部31は島状に形成されているため、サスペンション用基板1のジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を向上させることができ、ピエゾ素子44の伸縮によって、ヘッドスライダ52をより大きく変位させることができる。さらに、本実施の形態によれば、タング部31の側部に、タング切欠部93が設けられていることにより、ジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を増大させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bにおける絶縁層10に、非導電性接着剤係止開口部86が設けられている。このことにより、ピエゾ素子44を絶縁層10に接合する非導電性接着剤46を係止することができる。ピエゾ素子44の接続時には流動性を有する非導電性接着剤46が、ピエゾ素子44と絶縁層10との間から周囲に流出することを防止できる。
なお、端子係止凹部84は、図14および図15に示す形態に限られることはない。例えば、図16(a)、(b)および図17に示すように、端子係止凹部84は、保護層20の下方に入り込むように形成されていてもよい。この場合においても、導電性接着剤48が、素子接続端子16a、16b上から周囲に流出することを防止できる。また、このような端子係止凹部84は、保護層20を形成した後に、素子接続端子16a、16bをハーフエッチングすることにより形成することができる。なお、図16(a)、(b)においては、電圧印加側の第2素子接続領域3bを示しているが、この第2素子接続端子16bに導電接続部18を設けることにより、接地側の第1素子接続領域3aを構成することができる。
また、上述した本実施の形態においては、係止部80が、保護層20に設けられた、端子係止凹部84を外方に露出させる保護層係止切欠部85を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、図18(a)、(b)および図19に示すように、係止部80が、保護層20に設けられた、端子係止凹部84を外方に露出させる保護層係止開口部を有していてもよい。ここでは、保護層係止開口部は、平面視で矩形状に形成されている。言い換えると、保護層20は、素子接続端子16a、16b上において端子係止凹部84を平面視で囲むように、矩形状に形成されている。この保護層係止開口部87は、保護層係止開口部87内に充填される導電性接着剤48を係止するようになっている。この場合、導電性接着剤48が、素子接続端子16a、16b上から周囲に流出することをより一層防止できる。なお、図18(a)、(b)においては、接地側の第1素子接続領域3aを示しているが、電圧印加側の第2素子接続領域3bも同様の構成とすることができる。
また、上述した本実施の形態においては、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bのいずれにも、係止部80としての絶縁層係止凹部84が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、絶縁層係止凹部84は、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bの一方のみに設けられていてもよい。この場合であっても、絶縁層係止凹部84によって、導電性接着剤48の流出を防止することができる。また、保護層係止凹部、保護層係止開口部87、非導電性接着剤係止開口部86についても同様である。
(第4の実施の形態)
次に、図20および図21により、本発明の第4の実施の形態におけるサスペンション用基板について説明する。
図20および図21に示す第4の実施の形態においては、係止部が、保護層に設けられた保護層係止開口部を有している点が主に異なり、他の構成は、図11乃至図15に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図20および図21において、図11乃至図15に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図20(a)、(b)および図21に示すように、係止部80は、保護層20に設けられた保護層係止開口部87を有している。言い換えると、保護層20は、素子接続端子16a、16b上において、平面視で枠状に形成されている。なお、ここでは、保護層係止開口部87は、平面視で矩形状に形成されているが、これに限られることはなく、平面視で円形状など任意の形状とすることができる。
保護層係止開口部87は、素子接続端子16a、16bを外方に露出させる。そして、保護層係止開口部87は、保護層係止開口部87内に充填される導電性接着剤48を係止するようになっている。
このように本実施の形態によれば、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aおよび第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bに、係止部80としての保護層係止開口部87が設けられ、当該保護層係止開口部87は、充填される導電性接着剤48を係止する。このことにより、ピエゾ素子44の接続時には流動性を有する導電性接着剤48が、素子接続端子16a、16b上から周囲に流出することを防止できる。このため、ピエゾ素子44とサスペンション用基板1との接続信頼性を向上させることができる。
なお、素子接続端子16a、16bには、図18および図19に示す形態とは異なり、端子係止凹部84は設けられていない。しかしながら、本実施の形態においては、上述したような保護層係止開口部87が設けられているため、素子接続端子16a、16bのピエゾ素子44の側の面が平坦状に形成されている場合であっても、導電性接着剤48を保護層係止開口部87により係止することができる。
また、上述した本実施の形態においては、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bのいずれにも、係止部80としての保護層係止開口部87が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、保護層係止開口部87は、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bの一方のみに設けられていてもよい。この場合であっても、保護層係止開口部87によって、導電性接着剤48の流出を防止することができる。
(第5の実施の形態)
次に、図22乃至図25により、本発明の第5の実施の形態におけるサスペンション用基板について説明する。
図22乃至図25に示す第5の実施の形態においては、ピエゾ素子が金属支持層に非導電性接着剤を介して接合され、金属支持層に非導電性接着剤を係止する係止部が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図22乃至図25において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図22に示すように、本実施の形態におけるロードビーム43は、ビーム基端部43aと、このビーム基端部43aにポケット45を介して揺動自在に連結されたビーム先端部43bとを有している。ピエゾ素子44は、このポケット45内に収納されるようになっている。また、ポケット45は、長手方向に沿って延び、互いに隣接する一対の細長状のポケット部45aを含み、各ポケット部45a内にピエゾ素子44が配置されている。各ポケット部45a内に配置されたピエゾ素子44は、当該ピエゾ素子44の長手方向の両端部において、サスペンション用基板1の金属支持層11により支持されている。なお、ピエゾ素子44は、当該ピエゾ素子44の全周にわたって金属支持層11により支持されるようにしてもよい。また、ロードビーム43の先端には、突片43tが形成されている。
図22および図23に示すように、一対のポケット部45aは、ロードビーム43のうち荷重曲げ部49とサスペンション用基板1のジンバル部2aに対応する領域43Aとの間の領域L内に形成されている。ここで、図23は、ベースプレート42とロードビーム43とを示している。図23に示されているように、ロードビーム43のベースプレート42側の部分に、ベースプレート42側からヘッドスライダ52側へ向って下方へ折れ曲がる荷重曲げ部49が設けられている。この荷重曲げ部49とジンバル部2aに対応する領域43Aとの間の領域Lに一対の細長状のポケット部45aが配置されている。そして、このように配置されたポケット部45aにピエゾ素子44が収納される。このことにより、ロードビーム43のうちヘッドスライダ52の近傍にピエゾ素子44を配置することができ、ピエゾ素子44の伸縮力の伝達損失を低減させることができる。すなわち、ロードビーム43のビーム基端部43aに対してビーム先端部43bを旋回方向に変位させ、ヘッドスライダ52を精度よく変位させることができる。
また、図22および図24に示すように、サスペンション用基板1とロードビーム43とは、互いに溶接部55において溶接されている。また、ロードビーム43には、サスペンション用基板1のタング部31を揺動自在に支持する支点となるディンプル56が設けられている。
本実施の形態においては、サスペンション用基板は、ピエゾ素子44に導電性接着剤48を介して接続される一対の素子接続領域3を有している。各素子接続領域3において、金属支持層11に、ポケット部45aに対応して貫通孔11aが形成されている。また、素子配線14に接続された素子接続端子16が設けられている。絶縁層10には、素子接続端子16をピエゾ素子44の側に露出させる絶縁層開口部95が設けられ、金属支持層11には、金属枠体部17が設けられている。この金属枠体部17は、貫通孔11a内に配置されている。このうち、金属枠体部17は、素子接続端子16をピエゾ素子44の側に露出させる金属支持層開口部96を含んでいる。絶縁層開口部95および金属支持層開口部96に導電性接着剤48が充填されて、素子接続端子16とピエゾ素子44とが電気的に接続されるようになっている。なお、金属枠体部17は、金属支持層11と同一の材料により形成され、金属支持層11と略同一の厚さを有している。すなわち、金属枠体部17は、金属支持層11を構成しており、金属支持層11をエッチングすることにより形成することができる。
素子接続端子16のうち絶縁層開口部95により露出された部分には、めっき層15が設けられている。めっき層15は、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されて形成されている。このことにより、素子接続端子16の露出された面が腐食することを防止している。なお、このめっき層15の厚さは、0.1μm〜4.0μmであることが好ましい。
ところで、図25(a)に示すように、ピエゾ素子44は、非導電性接着剤46を介して、金属支持層11のピエゾ素子44の側の面(絶縁層10の側とは反対側)の面に接合されている。すなわち、ポケット部45a内には、非導電性接着剤46が充填され、この充填された非導電性接着剤46にピエゾ素子44が接合されている。これにより、ピエゾ素子44の伸縮力をロードビーム43に効率良く伝達させることができる。また、ピエゾ素子44は、金属支持層11に非導電性接着剤46を介して接合されて支持されている。また、一方の非導電性接着剤46を覆ってロードビーム43とピエゾ素子44とを導通させる導電性接着剤48が塗布されている。この場合、ロードビーム43はピエゾ素子44に対して接地用配線として機能する。
金属支持層11に、金属支持層11に接合される非導電性接着剤46を係止する係止部80が設けられている。本実施の形態においては、係止部80は、金属支持層11に設けられた金属支持層係止凹部88を有している。金属支持層係止凹部88は、ピエゾ素子44の長手方向の両端部に対応する位置に配置されて、金属支持層係止凹部88に充填される非導電性接着剤46を係止するようになっている。金属支持層係止凹部88の平面形状は、特に限定されるものではないが、例えば、ピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向に延びるようなスリット状に形成してもよい。このことにより、ピエゾ素子44を接続する際、非導電性接着剤46が、ピエゾ素子44と金属支持層11との間から周囲に流出することをより一層防止できるとともに、ピエゾ素子44が伸縮する際、非導電性接着剤46が金属支持層11またはピエゾ素子44の電極44aから剥離されることを防止できる。
このように本実施の形態によれば、金属支持層11に、非導電性接着剤46を係止する係止部80として金属支持層係止凹部88が設けられている。このことにより、金属支持層係止凹部88に充填される非導電性接着剤46は、金属支持層係止凹部88によって係止される。このことにより、ピエゾ素子44の接続時には流動性を有する非導電性接着剤46が、金属支持層11のピエゾ素子44を支持する部分から周囲に流出することを防止できる。このことにより、ピエゾ素子44とサスペンション用基板1との接合信頼性を向上させることができる。
なお、係止部80は、図25(a)に示すような形態に限られることはなく、図25(b)に示すような形態とすることもできる。すなわち、係止部80は、金属支持層11に設けられた金属支持層係止開口部89を有するようにしてもよい。この金属支持層係止開口部89は、金属支持層係止開口部89に充填される非導電性接着剤46を係止するようになっている。このような金属支持層係止開口部89の平面形状は、特に限定されるものではないが、例えば、上述した金属支持層係止凹部88と同様なスリット状に形成することもでき、あるいは、図5(a)〜(c)に示すような絶縁層係止開口部81と同様な形状とすることもできる。
また、上述した本実施の形態においては、ピエゾ素子44の長手方向の両端部に、係止部80としての金属支持層係止凹部88が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、金属支持層係止凹部88は、ピエゾ素子44の長手方向の一方の端部のみに設けられていてもよい。この場合であっても、金属支持層係止凹部88によって、非導電性接着剤46の流出を防止することができる。また、金属支持層係止開口部89ついても同様である。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、上述した実施の形態を、部分的に、適宜組み合わせることも可能である。