しかしながら、特許文献1に示すような引出部の剛性が高い場合、引出部によって素子接続部がピエゾ素子の伸縮に追従することが妨げられる。この場合、素子接続部とピエゾ素子とを接合している導電性接着剤からなる導電性接着部に応力が負荷され、導電性接着部が、素子接続部およびピエゾ素子の少なくとも一方から剥離される可能性が生じる。このため、素子接続部とピエゾ素子との接続信頼性に問題が生じ得る。
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、サスペンション用基板に導電性接着剤を介して接続されるアクチュエータ素子との接続信頼性を向上させることができるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブを提供することを目的とする。
本発明は、第1の解決手段として、アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、基板本体と、前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、前記引出部は、絶縁層と、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側とは反対側の面に設けられた配線層と、を有し、前記引出部における前記絶縁層は、前記基板本体の側に設けられた絶縁本体側端部と、前記素子接続部の側に設けられた絶縁素子側端部と、前記絶縁本体側端部と前記絶縁素子側端部との間に設けられた絶縁幅狭部と、を有し、前記絶縁幅狭部は、前記絶縁本体側端部および前記絶縁素子側端部より幅が狭くなっていることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
なお、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記絶縁幅狭部は、平面視でくびれるように形成されているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記絶縁幅狭部は、前記引出部の中央部に設けられているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記引出部における前記絶縁層は、前記絶縁本体側端部から前記絶縁幅狭部に向かって徐々に幅が狭くなっていると共に、前記絶縁素子側端部から前記絶縁幅狭部に向かって徐々に幅が狭くなっているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記引出部における前記配線層は、前記基板本体の側に設けられた配線本体側端部と、前記素子接続部の側に設けられた配線素子側端部と、前記配線本体側端部と前記配線素子側端部との間に設けられた配線幅狭部と、を有し、前記配線幅狭部は、前記配線本体側端部および前記配線素子側端部より幅が狭くなっていると共に、前記絶縁幅狭部に対応する位置に設けられているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記配線幅狭部は、平面視でくびれるように形成されているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記引出部における前記配線層は、前記配線本体側端部から前記配線幅狭部に向かって徐々に幅が狭くなっていると共に、前記配線素子側端部から前記配線幅狭部に向かって徐々に幅が狭くなっているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記引出部における前記配線層は、直線状に形成されているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記引出部において、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面は露出されているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記素子接続部は、前記絶縁層と前記配線層とを有し、前記絶縁層は、前記引出部の少なくとも一部に設けられ、前記素子接続部における前記絶縁層の厚さより薄い薄肉部を有しているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記絶縁層の前記薄肉部は、前記引出部の全体にわたって形成されているようにしてもよい。
また、上述した第1の解決手段によるサスペンション用基板において、前記薄肉部の前記配線層の側の面は、前記素子接続部における前記絶縁層の前記配線層の側の面と同一平面上に配置されているようにしてもよい。
本発明は、第2の解決手段として、アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、基板本体と、前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、前記素子接続部および前記引出部は、絶縁層と、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側とは反対側の面に設けられた配線層と、を有し、前記引出部において、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面は露出され、前記絶縁層は、前記引出部の少なくとも一部に設けられ、前記素子接続部における前記絶縁層の厚さより薄い薄肉部を有していることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
なお、上述した第2の解決手段によるサスペンション用基板において、前記絶縁層の前記薄肉部は、前記引出部の全体にわたって形成されているようにしてもよい。
また、上述した第2の解決手段によるサスペンション用基板において、前記薄肉部の前記配線層の側の面は、前記素子接続部における前記絶縁層の前記配線層の側の面と同一平面上に配置されているようにしてもよい。
また、上述した第2の解決手段によるサスペンション用基板において、前記引出部における前記配線層は、前記基板本体の側に設けられた配線本体側端部と、前記素子接続部の側に設けられた配線素子側端部と、前記配線本体側端部と前記配線素子側端部との間に設けられた配線幅狭部と、を有し、前記配線幅狭部は、前記配線本体側端部および前記配線素子側端部より幅が狭くなっているようにしてもよい。
本発明は、第3の解決手段として、アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、基板本体と、前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、前記引出部は、配線層を有し、前記引出部における前記配線層は、当該引出部の少なくとも一部に設けられた、前記アクチュエータ素子の側に露出される露出面を有していることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
なお、上述した第3の解決手段によるサスペンション用基板において、前記露出面は、前記引出部の全体にわたって設けられているようにしてもよい。
また、上述した第3の解決手段によるサスペンション用基板において、前記引出部における前記配線層は、前記基板本体の側に設けられた配線本体側端部と、前記素子接続部の側に設けられた配線素子側端部と、前記配線本体側端部と前記配線素子側端部との間に設けられた配線幅狭部と、を有し、前記配線幅狭部は、前記配線本体側端部および前記配線素子側端部より幅が狭くなっているようにしてもよい。
本発明は、ベースプレートと、前記ベースプレートに、ロードビームを介して取り付けられた上述した前記サスペンション用基板と、前記ベースプレートおよび前記ロードビームの少なくとも一方に接合されると共に、前記サスペンション用基板の前記素子接続部に前記導電性接着剤を介して接続された前記アクチュエータ素子と、を備えたことを特徴とするサスペンションを提供する。
本発明は、上述した前記サスペンションと、前記サスペンションに実装された前記ヘッドスライダと、を備えたことを特徴とするヘッド付サスペンションを提供する。
本発明は、上述した前記ヘッド付サスペンションを備えたことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
本発明によれば、導電性接着剤を介して接続されるアクチュエータ素子との接続信頼性を向上させることができる。
図1乃至図14を用いて、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブについて説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、サスペンション用基板1は、基板本体2と、基板本体2の両側方に配置された一対の素子接続部3であって、ピエゾ素子44に導電性接着剤(例えば、銀ペースト)を介して接続される一対の素子接続部3と、を備えている。このうち、基板本体2は、ヘッドスライダ52(図11参照)が実装されるヘッド部2aと、FPC基板71(図11参照)が接続されるテール部2bと、を有している。ヘッド部2aには、ヘッドスライダ52に接続される複数のヘッド端子5が設けられ、テール部2bには、FPC基板71に接続される複数のテール端子(外部接続基板端子)6が設けられており、ヘッド端子5とテール端子6とが、後述する複数の信号配線13を介してそれぞれ接続されている。各素子接続部3は、引出部4を介して基板本体2に連結されている。
サスペンション用基板1は、図2に示すように、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面(図9および図10参照)に設けられた金属支持層11と、絶縁層10のピエゾ素子44の側とは反対側の面に設けられた配線層12と、を有している。そして、絶縁層10上には、配線層12を覆う保護層20が設けられていることが好ましい。より具体的には、本実施の形態におけるサスペンション用基板1の基板本体2および素子接続部3は、金属支持層11と絶縁層10と配線層12と保護層20とが積層された層構成を有している。しかしながら、引出部4は、金属支持層11が設けられていない層構成、すなわち、絶縁層10と配線層12と保護層20とが積層された層構成となっており、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面は露出されている。なお、図1および後述する図4においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略している。
図1に示すように、配線層12は、複数の配線、すなわち、一対の読取配線と一対の書込配線とを含む信号配線13と、ピエゾ素子44に接続される一対の素子配線14と、を有している。このうち、信号配線13は、ヘッド端子5とテール端子6とを接続しており、この信号配線13に電気信号が流されることによって、ディスク63(図12参照)に対してデータの書き込みまたは読み取りを行うようになっている。また、素子配線14は、後述する素子接続端子16を介してピエゾ素子44に電圧を印加するようになっている。
一対の素子接続部3は、いずれも平面視で略円形状に形成されている。また、各素子接続部3において、配線層12は、ピエゾ素子44に導電性接着剤を介して電気的に接続される円形状の素子接続端子16を有している。各素子接続端子16は、配線層12の素子配線14にそれぞれ接続されている。また、素子接続端子16は、各配線13、14と同一の材料からなり、各配線13、14と略同一の厚さを有しており、ヘッド端子5、テール端子6および配線13、14と共に配線層12を構成している。
図2および図3に示すように、金属支持層11は、素子接続部3に設けられたリング状の金属枠体部17を有している。金属枠体部17は、基板本体2における金属支持層11を構成する金属支持層本体部分11aと分離されている。また、絶縁層10は、素子接続部3に設けられたリング状の絶縁枠体部18を有している。
金属支持層11の金属枠体部17は、当該金属枠体部17を貫通する金属支持層貫通孔32を形成している。また、絶縁層10の絶縁枠体部18は、金属支持層貫通孔32に対応して、当該絶縁枠体部18を貫通する絶縁層貫通孔33を形成している。このようにして、配線層12の素子接続端子16のピエゾ素子44側の面が、金属支持層貫通孔32および絶縁層貫通孔33により露出されるようになっている。すなわち、金属支持層貫通孔32および絶縁層貫通孔33により、素子接続端子16のピエゾ素子44の側の面を露出させる注入孔31が構成されている。そして、本実施の形態においては、素子接続端子16は、絶縁層貫通孔33上に設けられており、注入孔31の金属支持層貫通孔32および絶縁層貫通孔33に、導電性接着剤が注入されるようになっている。
素子接続端子16の絶縁層貫通孔33において露出された面に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されて、めっき層15が形成されている。このことにより、素子接続端子16の露出された面が腐食することを防止している。なお、このめっき層15の厚さは、0.1μm〜4.0μmであることが好ましい。
図4に示すように、各引出部4は、読取配線および書込配線などの信号配線13に沿って形成された基板本体2と、平面視で略円形状の素子接続部3とを連結する部分であって、図5に示すように、金属支持層11を構成する部分が形成されることなく、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面が露出された部分である。このように金属支持層11を構成する部分が形成されていないことにより、引出部4は、基板本体2よりもサスペンション用基板1に対して垂直方向(図1および図4における紙面の垂直方向)の柔軟性を有するように構成されている。
また、引出部4は、平面視で、ピエゾ素子44の伸縮方向(図6、図11の矢印P)に直交する方向に延びている。具体的には、引出部4は、平面視で、矩形状のピエゾ素子44の伸縮方向に沿う側縁に直交している。すなわち、本実施の形態においては、ピエゾ素子44は、ロードビーム43の長手方向軸線(X)に沿って配置されて、その伸縮方向が長手方向軸線(X)に平行になっており、引出部4は、長手方向軸線(X)に直交する方向に延びるように形成されている。このことにより、ピエゾ素子44が伸縮した際、引出部4に、その長手方向の応力が負荷されることを抑制できる。すなわち、引出部4の幅方向に比べて剛性が著しく高い長手方向に、応力が負荷されることを抑制することができる。このため、素子接続部3は、ピエゾ素子44の伸縮にスムーズに追従することができ、素子接続部3とピエゾ素子44とを接合している第2導電性接着部48に応力が負荷されることを抑制できる。
図4に示すように、引出部4における絶縁層10は、基板本体2の側に設けられた絶縁本体側端部35aと、素子接続部3の側に設けられた絶縁素子側端部35bと、絶縁本体側端部35aと絶縁素子側端部35bとの間に設けられた絶縁幅狭部35cと、を有している。このうち絶縁幅狭部35cは、絶縁本体側端部35aおよび絶縁素子側端部35bより幅が狭くなっている。ここで、幅とは、引出部4の長手方向(図4におけるY方向)に直交する方向の寸法を意味している。
本実施の形態においては、絶縁幅狭部35cは、平面視でくびれるように形成されている。また、絶縁幅狭部35cは、引出部4の中央部に設けられている。さらに、引出部4における絶縁層10は、絶縁本体側端部35aから絶縁幅狭部35cに向かって徐々に幅が狭くなっていると共に、絶縁素子側端部35bから絶縁幅狭部35cに向かって徐々に幅が狭くなっている。すなわち、本実施の形態においては、引出部4における絶縁層10のヘッド部2aの側の側縁35dが、ヘッド部2aの側に開口するような平面視で凹状(より具体的にはV字状)に形成され、テール部2bの側の側縁35eが、テール部2bの側に開口するような平面視で凹状(より具体的にはV字状)に形成されている。なお、絶縁本体部分10a、絶縁本体側端部35a、絶縁幅狭部35c、絶縁素子側端部35bおよび絶縁枠体部18は、後述するようにエッチングによって一体に形成されている。
引出部4における配線層12の素子配線14は、基板本体2の側に設けられた配線本体側端部36aと、素子接続部3の側に設けられた配線素子側端部36bと、配線本体側端部36aと配線素子側端部36bとの間に設けられた配線幅狭部36cと、を有している。このうち配線幅狭部36cは、配線本体側端部36aおよび配線素子側端部36bより幅が狭くなっている。
また、配線幅狭部36cは、平面視でくびれるように形成されている。また、配線幅狭部36cは、絶縁幅狭部35cに対応する位置、すなわち、引出部4の中央部に設けられている。さらに、絶縁層10と同様に、引出部4における配線層12の素子配線14は、配線本体側端部36aから配線幅狭部36cに向かって徐々に幅が狭くなっていると共に、配線素子側端部36bから配線幅狭部36cに向かって徐々に幅が狭くなっている。すなわち、本実施の形態においては、引出部4における素子配線14のヘッド部2aの側の側縁36dが、ヘッド部2aの側に開口するような平面視で凹状(より具体的にはV字状)に形成され、テール部2bの側の側縁36eが、テール部2bの側に開口するような平面視で凹状(より具体的にはV字状)に形成されている。なお、基板本体2における素子配線14の素子配線本体部分14a、配線本体側端部36a、配線幅狭部36c、配線素子側端部36bおよび素子接続端子16は、後述するようにエッチングによって一体に形成されている。
ところで、引出部4における保護層20は、絶縁層10および素子配線14と同様にしてくびれるように形成されていてもよいが、直線状に形成されていてもよく、素子配線14を覆うように形成されていれば、任意の形状とすることができる。例えば、図示しないが、絶縁層10や配線層12と同様にして、引出部2における保護層20が、基板本体2の側に設けられた保護本体側端部と、素子接続部3の側に設けられた保護素子側端部と、保護本体側端部と保護素子側端部との間に設けられた保護幅狭部と、を有し、保護幅狭部が、保護本体側端部および保護素子側端部より幅が狭くなっているように形成してもよい。
図2および図5に示すように、絶縁層10は、引出部4に設けられ、基板本体2または素子接続部3における絶縁層10の厚さより薄い薄肉部38を有している。本実施の形態においては、薄肉部38の素子配線14の側の面が、基板本体2および素子接続部3における絶縁層10の配線層12の側の面と同一平面上に配置され、薄肉部38は、絶縁層10を、ピエゾ素子44の側からハーフエッチングして除去することにより形成されている。この場合、薄肉部38のピエゾ素子44の側の面は、素子接続部3における絶縁層10のピエゾ素子44の側の面に対応する位置(薄肉部38が形成されていない場合の引出部4における絶縁層10の下面の位置)より配線層12の側に配置される。なお、同一とは、厳密に同一という意味に限られることはなく、同一とみなすことができる程度の製造誤差等を含む意味として用いている。
本実施の形態においては、図2に示すように、薄肉部38は、引出部4の全体にわたって形成されている。言い換えると、引出部4における絶縁層10の厚さは、基板本体2における絶縁層10の絶縁層本体部分10aおよび絶縁枠体部18の厚さよりも薄くなっている。
また、図1に示すように、基板本体2には、サスペンション用基板1をロードビーム43に取り付ける際に、ロードビーム43とアライメント(位置合わせ)を行うための2つの治具孔25が設けられている。各治具孔25は、長手方向軸線(X)上に配置されている。すなわち、当該長手方向軸線(X)は、各治具孔25を通っている。
次に、サスペンション用基板1の各層を構成する材料について詳細に述べる。
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜30μm、とりわけ8μm〜10μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11と各配線13、14との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
各配線13、14は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線13、14の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線13、14の厚さは、例えば1μm〜18μm、とりわけ9μm〜12μmであることが好ましい。このことにより、各配線13、14の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。なお、ヘッド端子5、テール端子6および素子接続端子16は、各配線13、14と同一の材料、同一の厚みからなっている。
金属支持層11の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、ステンレスを用いることが好適である。金属支持層11の厚さは、10μm〜30μm、とりわけ15μm〜20μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11の導電性、剛性、および弾力性を確保することができる。
保護層20の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層20の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。保護層20の厚さは、2μm〜30μm、とりわけ2〜6μmであることが好ましい。
次に、図6乃至図10を用いて、本実施の形態によるサスペンション41について説明する。図6に示すサスペンション41は、ベースプレート42と、ベースプレート42上に取り付けられ、サスペンション用基板1の金属支持層11を保持するロードビーム43と、上述のサスペンション用基板1と、ベースプレート42およびロードビーム43の少なくとも一方に接合されると共に、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されたピエゾ素子44と、を有している。
このうちベースプレート42は、ステンレスからなり、図7に示すように、サスペンション用基板1のヘッド部2aの側に配置されたヘッド側プレート42aと、テール部2bの側に配置されたテール側プレート42bと、ヘッド側プレート42aとテール側プレート42bとを連結した可撓部42cと、を有している。また、ベースプレート42は、ピエゾ素子44を収容する収容開口部42dを有している。この収容開口部42dは、ヘッド側プレート42a、テール側プレート42bおよび可撓部42cにより形成されている。
ロードビーム43は、ベースプレート42と同様にステンレスからなり、図6および図7に示すように、サスペンション用基板1のヘッド部2aの側に配置されたヘッド側ビーム43aと、テール部2bの側に配置されたテール側ビーム43bと、ヘッド側ビーム43aとテール側ビーム43bとを連結した可撓部43cと、を有している。また、ロードビーム43は、ピエゾ素子44の素子接続部3の側の面を露出させる露出開口部43dを有している。この露出開口部43dは、ヘッド側ビーム43a、テール側ビーム43bおよび可撓部43cにより形成されている。
本実施の形態においては、このようにして形成されたベースプレート42およびロードビーム43にピエゾ素子44が接合されている。すなわち、図10に示すように、ピエゾ素子44は、ベースプレート42の収容開口部42dに収容されて、ベースプレート42に接合されると共に、ロードビーム43のベースプレート42の側の面に接合されている。このことにより、ピエゾ素子44を、ベースプレート42およびロードビーム43の厚さ方向において、これらの中心付近に配置させることができ、ピエゾ素子44の伸縮力を、損失させることを抑制し、ベースプレート42およびロードビーム43に効率良く伝達することができる。また、図9および図10に示すように、サスペンション用基板1の素子接続部3は、ロードビーム43の露出開口部43dを介してピエゾ素子44に接続されている。
また、ロードビーム43には、サスペンション用基板1の各治具孔25に対応して、ビーム治具孔(図示せず)が設けられており、サスペンション用基板1にロードビーム43を取り付ける際に、サスペンション用基板1とロードビーム43との位置合わせを行うことができるようになっている。このロードビーム43の治具孔は、長手方向軸線(X)上に配置されている。そして、ロードビーム43とサスペンション用基板1とが溶接により固定されるようになっている。
ピエゾ素子44は、電圧が印加されることにより、図6および図11の矢印P方向に伸縮する圧電素子として構成されており、ヘッドスライダ52をスウェイ方向(旋回方向、図6および図11の矢印Q方向)に移動させるためのものである。各ピエゾ素子44は、図8に示すように、互いに対向する一対の電極44aと、一対の電極44a間に介在され、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスからなる圧電材料部44bと、を有している。一対のピエゾ素子44の圧電材料部44bは、互いに180°異なる分極方向となるように形成されており、所定の電圧が印加されると、一方のピエゾ素子44が収縮すると共に、他方のピエゾ素子44が伸長するようになっている。このようなピエゾ素子44は、図6に示すように、ロードビーム43の長手方向軸線(X)に沿って配置されており、その伸縮方向が、当該長手方向軸線(X)に平行となっている。また、ピエゾ素子44は、長手方向軸線(X)に対して互いに線対称に配置されており、各ピエゾ素子44の伸縮が、ヘッドスライダ52に均等に伝達されるようになっている。
図10に示すように、各ピエゾ素子44は、非導電性接着剤からなる非導電性接着部46を介してベースプレート42およびロードビーム43に接合されている。この非導電性接着部46は、後に詳述する第1非導電性接着部46a、第2非導電性接着部46bおよび第3非導電性接着部46cを含んでいる。ピエゾ素子44の一方(サスペンション用基板1とは反対側)の電極44aは、図7および図10に示すように、導電性接着剤からなる第1導電性接着部47を介してベースプレート42のヘッド側プレート42aに電気的に接続されている(なお、第1導電性接着部47は、テール側プレート42bに電気的に接続されてもよく、あるいは、一方のピエゾ素子44からベースプレート42の可撓部42cを介して他方のピエゾ素子44に延びるように一体に形成されてもよい)。また、ピエゾ素子44の他方(サスペンション用基板1の側)の電極44aは、図9および図10に示すように、導電性接着剤からなる第2導電性接着部48を介して素子接続部3に接合されると共に電気的に接続されている。すなわち、素子接続部3における注入孔31の金属支持層貫通孔32および絶縁層貫通孔33に導電性接着剤が注入されて第2導電性接着部48が形成され、ピエゾ素子44が第2導電性接着部48を介して素子接続部3に接合されると共に、ピエゾ素子44の当該他方の電極44aが、第2導電性接着部48を介して配線層12の素子接続端子16に電気的に接続されている。
次に、図11により、本実施の形態におけるヘッド付サスペンション51について説明する。図11に示すヘッド付サスペンション51は、上述したサスペンション41と、サスペンション用基板1のヘッド端子5に接続されたヘッドスライダ52と、を有している。
次に、図12により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ61について説明する。図12に示すハードディスクドライブ61は、ケース62と、このケース62に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク63と、このディスク63を回転させるスピンドルモータ64と、ディスク63に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク63に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うヘッドスライダ52を含むヘッド付サスペンション51と、を有している。このうちヘッド付サスペンション51は、ケース62に対して移動自在に取り付けられており、ケース62にはヘッド付サスペンション51のヘッドスライダ52をディスク63上に沿って移動させるボイスコイルモータ65が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション51は、ボイスコイルモータ65にアーム66を介して取り付けられると共に、ハードディスクドライブ61を制御する制御部(図示せず)に接続されたFPC基板71(図11参照)に接続されている。このようにして、電気信号が、サスペンション用基板1とFPC基板71を介して、制御部とヘッドスライダ52との間で伝送されるようになっている。
次に、本実施の形態によるサスペンション用基板1をサブトラクティブ法により製造する場合について説明する。
まず、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層12と、を有する積層体(図示せず)を準備する。続いて、配線層12が、所望の形状にエッチングされて、配線13、14、ヘッド端子5、テール端子6および素子接続端子16が形成される。この際、金属支持層11も同様にエッチングされて金属支持層貫通孔32が形成される。また、この際、引出部4における絶縁層10を露出させるための開口部(図示せず)が形成される。次に、絶縁層10上に、各配線13を覆う保護層20が形成される。続いて、絶縁層10が所望の形状にエッチングされると共に、絶縁層貫通孔33を含む絶縁枠体部18が形成される。この際、上述した金属支持層11の開口部から、引出部4における絶縁層10がハーフエッチングされて薄肉部38が形成される。その後、金属支持層11がエッチングされて、外形加工され、金属枠体部17が形成される。このようにして、所望の形状の引出部4を含む本実施の形態におけるサスペンション用基板1が得られ、図4に示すような引出部4の形状であっても、容易に作製することができる。
次に、本実施の形態におけるサスペンション41の製造方法について説明する。
まず、図13(a)に示すように、ベースプレート42に、ロードビーム43を介して、サスペンション用基板1が、溶接により取り付けられる。この場合、まず、ベースプレート42にロードビーム43が溶接により固定され、続いて、ロードビーム43に設けられたビーム治具孔(図示せず)と、サスペンション用基板1に設けられた治具孔25とにより、ロードビーム43とサスペンション用基板1とのアライメントが行われる。その後、サスペンション用基板1の金属支持層11に溶接が施されて、ロードビーム43とサスペンション用基板1が互いに接合されて固定される。
続いて、ロードビーム43のうちピエゾ素子44が接合される部分に、非導電性接着剤が塗布されて、第1非導電性接着部46が形成される(図13(b)参照)。この場合、まず、非導電性接着剤は、ヘッド側ビーム43aおよびテール側ビーム43bのピエゾ素子44に接合される部分にそれぞれ塗布されて第1非導電性接着部46aが形成される。その後、形成された第1非導電性接着部46aに紫外線(UV)が照射されて、第1非導電性接着部46aを硬化(UVキュア)させる。このことにより、ピエゾ素子44のサスペンション用基板1の側の電極44aがロードビーム43に接触することを防止し、ロードビーム43とピエゾ素子44との短絡を防止することができる。なお、この際、第1非導電性接着部46aをUVキュアさせることなく、以下に示す第2非導電性接着部46bを形成してもよい。
第1非導電性接着部46aが形成された後、当該第1非導電性接着部46a上に非導電性接着剤が塗布されて第2非導電性接着部46bが形成される(図13(c)参照)。
第2非導電性接着部46bが形成された後、サスペンション用基板1の注入孔31を構成する金属支持層貫通孔32および絶縁層貫通孔33に、所定量の導電性接着剤48aが注入される(図14(a)参照)。
導電性接着剤48aが注入された後、素子接続部3にピエゾ素子44が接合される(図14(b)参照)。この場合、ピエゾ素子44は、ベースプレート42の収容開口部42dに収容され、素子接続部3を押し上げるようにして第2非導電性接着部46bに接合される。このことにより、導電性接着剤48aが、金属枠体部17とピエゾ素子44との間で平面方向に広がり、導電性接着剤48aと金属枠体部17との接触面積および導電性接着剤48aとピエゾ素子44との接触面積が増大する。このようにして、第2導電性接着部48が形成され、素子接続部3とピエゾ素子44とが接合される。なお、この後、ピエゾ素子44とヘッド側プレート42aとの間、および、ピエゾ素子44とテール側プレート42bとの間から、第2非導電性接着部46bに紫外線を照射して、第2非導電性接着部46bを硬化(UVキュア)させてもよい。
素子接続部3にピエゾ素子44が接合された後、ピエゾ素子44とヘッド側プレート42aとの間、および、ピエゾ素子44とテール側プレート42bとの間に非導電性接着剤が封入されて、第3非導電性接着部46cが形成される(図14(c)参照)。このことにより非導電性接着部46が形成される。なお、この際、ピエゾ素子44と可撓部42cとの間にも非導電性接着剤を封入してもよい。その後、形成された第3非導電性接着部46cに紫外線が照射されて、第3非導電性接着部46cを硬化(UVキュア)させる。
第3非導電性接着部46cが形成された後、ピエゾ素子44とベースプレート42のヘッド側プレート42aとの境界部分に導電性接着剤が塗布されて、ピエゾ素子44とヘッド側プレート42aとを電気的に接続する第1導電性接着部47が形成される(図14(d)参照)。
その後、非導電性接着部46の第1非導電性接着部46a、第2非導電性接着部46bおよび第3非導電性接着部47b、第1導電性接着部47並びに第2導電性接着部48を加熱処理して硬化(加熱キュア)させる。このようにして、ピエゾ素子44が実装された図6に示すサスペンション41が得られる。すなわち、素子接続部3とピエゾ素子44とを導電性接着剤を用いて電気的に接続することができ、ピエゾ素子44の実装工程が煩雑化されることを抑制し、ピエゾ素子44が実装された図6に示すサスペンション41を容易に作製することができる。
このサスペンション41のヘッド端子5に、ヘッドスライダ52が接続されて図11に示すヘッド付サスペンション51が得られる。さらに、このヘッド付サスペンション51がハードディスクドライブ61のケース62に取り付けられて、図12に示すハードディスクドライブ61が得られる。
図12に示すハードディスクドライブ61においてデータの書き込みおよび読み取りを行う際、ボイスコイルモータ65によりヘッド付サスペンション51のヘッドスライダ52がディスク63上に沿って移動し、スピンドルモータ64により回転しているディスク63に所望のフライングハイトを保って近接する。このことにより、ヘッドスライダ52とディスク63との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1とFPC基板71を介して、FPC基板71に接続されている制御部(図示せず)とヘッドスライダ52との間で電気信号が伝送される。このような電気信号は、サスペンション用基板1においては、各信号配線13によってヘッド端子5とテール端子6との間で伝送される。
ヘッドスライダ52を移動させる際、ボイスコイルモータ65が、ヘッドスライダ52の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子44が、ヘッドスライダ52の位置を微小調整する。すなわち、サスペンション用基板1の素子接続部3の側のピエゾ素子44の電極44aに、素子配線14および素子接続端子16を介して所定の電圧を印加することにより、長手方向軸線(X)に沿った方向(図6および図11の矢印P方向)に、一方のピエゾ素子44が収縮すると共に他方のピエゾ素子44が伸長する。この場合、ベースプレート42の可撓部42bとロードビーム43の可撓部43cとが弾性変形し、ロードビーム43の先端側に位置するヘッドスライダ52がスウェイ方向(旋回方向Q)に移動することができる。このようにして、ヘッドスライダ52を、ディスク63の所望のトラックに、迅速に、かつ精度良く位置合わせすることができる。
このように本実施の形態によれば、引出部4における絶縁層10は、絶縁本体側端部35aおよび絶縁素子側端部35bよりも幅が狭い絶縁幅狭部35cを有している。このことにより、引出部4の柔軟性(とりわけ、長手方向軸線(X)の方向の柔軟性)を増大させることができる。このため、電圧が印加されたピエゾ素子44が長手方向軸線(X)の方向に伸縮する場合、ピエゾ素子44の伸縮が引出部4によって阻止されることを抑制でき、ピエゾ素子44の伸縮に素子接続部3がスムーズに追従することができる。また、この場合、素子接続部3がピエゾ素子44の伸縮にスムーズに追従するため、素子接続部3とピエゾ素子44とを接合している第2導電性接着部48に負荷される応力を低減すると共に、第2導電性接着部48が、素子接続部3またはピエゾ素子44から剥離することを防止できる。この結果、導電性接着剤を介して接続されるピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、絶縁幅狭部35cが、平面視でくびれるように形成されている。このことにより、引出部4の柔軟性を増大させて、ピエゾ素子44の伸縮に素子接続部3がより一層スムーズに追従することができ、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性をより一層向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、絶縁幅狭部35cは引出部4の中央部に設けられている。このことにより、引出部4における絶縁層10にかかる応力が集中して負荷されることを抑制できる。さらに、絶縁層10が、絶縁本体側端部35aから絶縁幅狭部35cに向かって徐々に幅が狭くなると共に、絶縁素子側端部35bから絶縁幅狭部35cに向かって徐々に幅が狭くなっている。このことにより、引出部4における絶縁層10にかかる応力集中をより一層抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、引出部4における配線層12の素子配線14は、配線本体側端部36aおよび配線素子側端部36bよりも幅が狭い配線幅狭部36cを有している。このことにより、引出部4の柔軟性をより一層増大させることができ、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性をより一層向上させることができる。また、本実施の形態によれば、配線幅狭部36cが、平面視でくびれるように形成されている。このことにより、引出部4の柔軟性をより一層増大させて、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性をより一層向上させることができる。また、本実施の形態によれば、配線幅狭部36cが引出部4の中央部に設けられ、配線本体側端部36aから配線幅狭部36cに向かって徐々に幅が狭くなると共に、配線素子側端部36bから配線幅狭部36cに向かって徐々に幅が狭くなっている。このことにより、引出部4における素子配線14にかかる応力集中を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、素子接続部3の絶縁枠体部18に連結された絶縁素子側端部35bは、絶縁幅狭部35cより幅が広くなっている。このことにより、絶縁枠体部18と絶縁素子側端部35bとの間で変形または破断が生じることを防止できる。さらに、本実施の形態によれば、素子接続部3の素子接続端子16に連結された配線素子側端部36bは、配線幅狭部36cより幅が広くなっている。このことにより、素子接続端子16と配線素子側端部36bとの間で変形または破断が生じることを防止できる。
また、本実施の形態によれば、基板本体2の絶縁本体部分10aに連結された絶縁本体側端部35aは、絶縁幅狭部35cより幅が広くなっている。このことにより、絶縁本体部分10aと絶縁本体側端部35aとの間で変形または破断が生じることを防止できる。さらに、本実施の形態によれば、基板本体2における素子配線14の素子配線本体部分14aに連結された配線本体側端部36aは、配線幅狭部36cより幅が広くなっている。このことにより、素子配線本体部分14aと配線本体側端部36aとの間で変形または破断が生じることを防止できる。
また、本実施の形態によれば、引出部4における絶縁層10は、薄肉部38を有している。このことにより、引出部4の柔軟性を増大させることができる。このため、素子接続部3とピエゾ素子44とを接合している第2導電性接着部48に負荷される応力を低減すると共に、第2導電性接着部48が、素子接続部3またはピエゾ素子44から剥離することを防止できる。この結果、導電性接着剤を介して接続されるピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、上述したように、引出部4における絶縁層10が薄肉部38を有していることにより、引出部4は、サスペンション用基板1に対して垂直方向(図1および図4の紙面に垂直な方向)の柔軟性を増大させることができる。このため、ピエゾ素子44が非導電性接着部46から剥離されることを抑制できる。すなわち、図14(b)に示すようにピエゾ素子44が素子接続部3に接合される際、ピエゾ素子44は素子接続部3を押し上げるようにして第2非導電性接着部46bに接合される。このため、この押し上げる力に対する素子接続部3の反発力により、ピエゾ素子44には第2非導電性接着部46bから剥離される方向への力(図14(b)において下方に向く力)が負荷される傾向にある。しかしながら、上述したように、本実施の形態によれば、引出部4の柔軟性が増大していることにより、素子接続部3の当該反発力を低減することができる。このため、ピエゾ素子44が非導電性接着部46から剥離することを防止でき、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。とりわけ、本実施の形態によれば、薄肉部38は、引出部4の全体にわたって形成されていることから、引出部4の柔軟性をより一層増大させることができる。また、本実施の形態によれば、薄肉部38の素子配線14の側の面が、素子接続部3における絶縁層10の配線層12の側の面と同一平面上に配置されている。この場合、素子配線14を基板本体2から素子接続部3にわたって同一平面上に形成することができ、引出部4の柔軟性をより一層増大させることができる。なお、絶縁幅狭部35c(および配線幅狭部36c)によっても、引出部4は、サスペンション用基板1に対して垂直方向の柔軟性を増大させることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、引出部4における絶縁層10が絶縁幅狭部35cを有すると共に、引出部4における配線層12の素子配線14が、配線幅狭部36cを有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図15に示すように、引出部4における絶縁層10は絶縁幅狭部35cを有するが、引出部4における配線層12の素子配線14は、直線状に形成されていてもよい。すなわち、引出部4における絶縁層10が平面視でくびれるように形成されているが、素子配線14は、直線状に形成されていてもよい。この場合においても、一般的に銅により形成される素子配線14よりも剛性が高いポリイミド等により形成される絶縁層10の剛性を低減させることができ、絶縁幅狭部35cによって引出部4の柔軟性を増大させて、引出部4の柔軟性を増大させることができる。
また、本実施の形態においては、絶縁幅狭部35cが平面視でくびれるように形成されている例について説明したが、これに限られることはない。例えば、引出部4における絶縁層10のヘッド部2aの側の側縁35dおよびテール部2bの側の側縁35eのうちの一方が凹状に形成されていなくてもよい。この場合においても、絶縁層10が、絶縁本体側端部35aおよび絶縁素子側端部35bより幅が狭い絶縁幅狭部35cを有していることにより、引出部4の柔軟性を増大させることができる。引出部4における素子配線14についても同様に、配線幅狭部36cが平面視でくびれるように形成されている場合に限られることはなく、引出部4における素子配線14のヘッド部2aの側の側縁36dおよびテール部2bの側の側縁36eのうちの一方が凹状に形成されていなくてもよい。
また、本実施の形態においては、絶縁幅狭部35cが、引出部4の中央部に設けられ例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、絶縁幅狭部35cは、絶縁本体側端部35aと絶縁素子側端部35bとの間に配置されていれば、引出部4の任意の位置に配置させてもよい。
また、本実施の形態においては、引出部4における絶縁層10が、絶縁本体側端部35aから絶縁幅狭部35cに向かって徐々に幅が狭くなっていると共に、絶縁素子側端部35bから絶縁幅狭部35cに向かって徐々に幅が狭くなっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、絶縁層10が、絶縁本体側端部35aおよび絶縁素子側端部35bより幅が狭い絶縁幅狭部35cを有していれば、引出部4における絶縁層10の形状は任意とすることができる。引出部4における素子配線14についても同様に、配線本体側端部36aおよび配線素子側端部36bより幅が狭い配線幅狭部36cを有していれば、引出部4における素子配線14の形状は任意とすることができる。
また、本実施の形態においては、引出部4において、絶縁本体側端部35aと絶縁素子側端部35との間に1つの絶縁幅狭部35cが設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、絶縁本体側端部35aと絶縁素子側端部35との間に複数の絶縁幅狭部35cが設けられるようにしてもよい。この場合、互いに隣り合う絶縁幅狭部35cの間には、当該絶縁幅狭部35cより幅が大きい部分が形成されるようにすればよい。配線層12の素子配線14についても同様に、配線本体側端部36aと配線素子側端部36bとの間に複数の配線幅狭部36cが設けられるようにしてもよい。
また、本実施の形態においては、サブトラクティブ法によりサスペンション用基板1が作製されて、素子接続端子16が絶縁層貫通孔33上に設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、アディティブ法によりサスペンション用基板1が作製されて、素子接続端子16の一部が、絶縁層貫通孔33内に埋設されるようにしてもよい。この場合、金属支持層貫通孔32により素子接続端子16が露出され、導電性接着剤は、絶縁層貫通孔33内に注入されることはなく、金属支持層貫通孔32内に注入される。すなわち、導電性接着剤は、金属支持層貫通孔32および絶縁層貫通孔33により構成される注入孔31の一部(金属支持層貫通孔32)に注入される。このため、導電性接着剤の使用量を低減することができ、導電性接着剤が素子接続部3の周囲にはみ出すことを抑制できる。
また、本実施の形態においては、薄肉部38の素子配線14の側の面が、素子接続部3における絶縁層10の配線層12の側の面と同一平面上に配置されて、薄肉部38が、絶縁層10をピエゾ素子44(金属支持層11)の側からハーフエッチングして除去することにより形成される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、薄肉部38のピエゾ素子44の側の面が、素子接続部3における絶縁層10のピエゾ素子44の側の面と同一平面上に配置されて、薄肉部38が、絶縁層10を配線層12の側からハーフエッチングして除去することにより形成されるようにしてもよい。この場合、薄肉部38を有する絶縁層10上に形成される素子配線14は、素子接続部3から基板本体2にわたって、段付状に形成される。なお、このような形態は、アディティブ法によって好適に作製することができる。
また、本実施の形態においては、薄肉部38が引出部4の全体にわたって形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図16(a)、(b)に示すように、薄肉部38は、引出部4の一部であって、当該絶縁層10の全幅にわたって形成されていてもよい。この場合、薄肉部38は、絶縁幅狭部35cに対応する位置に配置されている(すなわち、平面視で絶縁幅狭部35cに重なって配置されている)ことが好ましい。このことにより、薄肉部38によって絶縁層10の剛性をより一層低減させて、絶縁層10の柔軟性をより一層増大させることができる。また、この場合、薄肉部38は、絶縁層10の全幅にわたって形成されることに限られることはなく、絶縁層10の幅方向の一部に、例えば、平面視で島状のように形成されていてもよい。
また、本実施の形態においては、絶縁層10が、引出部4に設けられた薄肉部38を有している例について説明した。しかしながら、絶縁層10が薄肉部38を有していることに限られることはない。すなわち、引出部4における絶縁層10が、絶縁層本体部分10aおよび絶縁枠体部18の厚さと略同一の厚さを有している場合であっても、引出部4における絶縁層10が絶縁幅狭部35cを有していれば、引出部4の柔軟性を増大させることができ、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、引出部4における絶縁層10が絶縁幅狭部35cを有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、引出部4における素子配線14が配線幅狭部36cを有すると共に、引出部4における絶縁層10が薄肉部38を有する場合には、当該絶縁層10は、絶縁幅狭部35cを有することなく、例えば直線状に形成されていてもよい。この場合においても、引出部4の柔軟性を増大させることができ、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。
さらに、本実施の形態においては、引出部4における配線層12の素子配線14のピエゾ素子44の側の面に、絶縁幅狭部35cを有する絶縁層10が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図17(a)、(b)に示すように、引出部4における素子配線14が、引出部4の少なくとも一部に設けられた、ピエゾ素子44の側に露出される露出面81を有するようにしてもよい。すなわち、引出部4の少なくとも一部に、絶縁層10が形成されないようにしてもよい。
この場合、引出部4の柔軟性を増大させることができ、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。また、この場合、引出部4は、サスペンション用基板1に対して垂直方向の柔軟性を増大させることができる。このため、ピエゾ素子44が非導電性接着部46から剥離することを防止でき、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。
露出面81は、図16に示す薄肉部38のように、素子配線14の全幅にわたって形成されていてもよく、あるいは、素子配線14の幅方向の一部に、例えば、平面視で島状のように形成されていてもよい。さらには、図17(a)、(b)に示すように、露出面81は、引出部4の全体にわたって設けられているようにしてもよい。この場合、引出部4の柔軟性をより一層増大させることができる。なお、図17(a)、(b)に示す形態においては、基板本体2における絶縁層10の絶縁本体部分10aと素子接続部3における絶縁層10の絶縁枠体部18とは、互いに分離されている。
(第2の実施の形態)
次に、図18により、本発明の第2の実施の形態におけるサスペンション用基板について説明する。
図18に示す第2の実施の形態においては、引出部に絶縁幅狭部が形成されていない点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図14に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図18において、図1乃至図14に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
すなわち、本実施の形態においては、引出部4に絶縁幅狭部35cが形成されておらず、さらに、配線幅狭部36cが形成されていない。一例として、引出部4における絶縁層10および素子配線14は、図18(a)に示すように、直線状に形成されている。
また、図18(b)に示すように、引出部4における絶縁層10は、薄肉部38を有している。この薄肉部38は、引出部4の全体にわたって形成されている。
このように本実施の形態によれば、引出部4における絶縁層10は、薄肉部38を有している。このことにより、引出部4は、サスペンション用基板1に対して垂直方向(図18の紙面に垂直な方向)の柔軟性を増大させることができる。このため、ピエゾ素子44が素子接続部3に接合される際、ピエゾ素子44が非導電性接着部46から剥離されることを抑制できる。この結果、素子接続部3と導電性接着剤により形成された第2導電性接着部48とが剥離することを防止でき、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。とりわけ、本実施の形態によれば、薄肉部38は、引出部4の全体にわたって形成されていることから、引出部4の柔軟性をより一層増大させることができる。また、本実施の形態によれば、薄肉部38の素子配線14の側の面が、素子接続部3における絶縁層10の配線層12の側の面と同一平面上に配置されている。この場合、素子配線14を基板本体2から素子接続部3にわたって同一平面上に形成することができ、引出部4の柔軟性をより一層増大させることができる。
また、本実施の形態によれば、引出部4における絶縁層10が薄肉部38を有していることにより、引出部4の長手方向軸線(X)の方向の柔軟性をも増大させることができる。このため、電圧が印加されたピエゾ素子44が長手方向軸線(X)の方向に伸縮する場合、ピエゾ素子44の伸縮が引出部4によって阻止されることを抑制でき、ピエゾ素子44の伸縮に素子接続部3がスムーズに追従することができる。また、この場合、素子接続部3がピエゾ素子44の伸縮にスムーズに追従するため、素子接続部3とピエゾ素子44とを接合している第2導電性接着部48に負荷される応力を低減すると共に、第2導電性接着部48が、素子接続部3またはピエゾ素子44から剥離することを防止できる。この結果、導電性接着剤を介して接続されるピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、薄肉部38が引出部4の全体にわたって形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、薄肉部38は、引出部4の一部であって、当該絶縁層10の全幅にわたって形成されていてもよい(図16(a)、(b)参照)。この場合においても、引出部4の柔軟性を増大させることができる。また、この場合、薄肉部38は、絶縁層10の全幅にわたって形成されることに限られることはなく、絶縁層10の幅方向の一部に、例えば、平面視で島状のように形成されていてもよい。
また、本実施の形態においては、引出部4における配線層12の素子配線14のピエゾ素子44の側の面に、薄肉部38を有する絶縁層10が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図19(a)、(b)に示すように、引出部4における素子配線14が、引出部4の少なくとも一部に設けられた、ピエゾ素子44の側に露出される露出面81を有するようにしてもよい。すなわち、引出部4の少なくとも一部に、絶縁層10が形成されないようにしてもよい。
この場合、引出部4は、サスペンション用基板1に対して垂直方向の柔軟性を増大させることができる。このため、ピエゾ素子44が非導電性接着部46から剥離することを防止でき、ピエゾ素子44と素子接続部3との接続信頼性を向上させることができる。また、この場合、引出部4の長手方向軸線(X)の方向の柔軟性をも増大させることができる。
露出面81は、図16に示す薄肉部38のように、素子配線14の全幅にわたって形成されていてもよく、あるいは、素子配線14の幅方向の一部に、例えば、平面視で島状のように形成されていてもよい。さらには、図19(a)、(b)に示すように、露出面81は、引出部4の全体にわたって設けられているようにしてもよい。この場合、引出部4の柔軟性をより一層増大させることができる。なお、図19(a)、(b)に示す形態においては、基板本体2における絶縁層10の絶縁本体部分10aと素子接続部3における絶縁層10の絶縁枠体部18とは、互いに分離されている。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。