本発明のある態様にかかる実施形態の作用効果を説明する。なお、本実施形態の作用効果を具体的に説明するに際しては、具体的な例を示して説明することになる。しかし、それらの例示される態様はあくまでも本発明に含まれる態様のうちの一部に過ぎず、その態様には数多くのバリエーションが存在する。したがって、本発明は例示される態様に限定されるものではない。
実施形態の標本観察装置及び標本観察方法について説明する。以下の各実施形態の標本観察装置及び標本観察方法は、明視野観察の状態で用いられるものである。本実施形態における明視野観察では、蛍光観察のように、励起フィルタ、ダイクロイックミラー、吸収フィルタからなる蛍光ミラーユニットは用いられない。よって、明視野観察の状態では、標本が無色透明の場合、標本像を形成する光(以下、適宜、「結像光」という)の波長帯域は、標本を照明する光(以下、適宜、「照明光」という)の波長帯域のうちの一部と一致しているか、又は結像光の波長帯域と照明光の波長帯域とは一致している。
また、本実施形態の標本観察装置及び標本観察方法における明視野観察では、位相差観察における位相膜や、微分干渉観察における微分干渉プリズムは用いられない。また、本実施形態における明視野観察では、変調コントラスト観察における変調器は用いられない。
本実施形態の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサレンズと、開口部材と、を有し、観察光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を有し、開口部材は、遮光部と、透過部と、を有し、開口部材は、遮光部が照明光学系の光軸を含むように配置され、透過部は、遮光部の外縁よりも外側に位置し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成されることを特徴とする。
本実施形態の標本観察装置について、図1を用いて説明する。図1は本実施形態の標本観察装置の構成を示す図である。
標本観察装置100は、例えば、正立型顕微鏡であって、照明光学系と観察光学系とを備える。照明光学系は、光源1と、コンデンサレンズ4と、開口部材5とを有する。なお、必要に応じて、照明光学系は、レンズ2やレンズ3を有する。一方、観察光学系は、対物レンズ8と結像レンズ10とを有する。
光源1から出射した光は、レンズ2とレンズ3を通過して、コンデンサレンズ4に到達する。コンデンサレンズ4には、開口部材5が設けられている。ここでは、コンデンサレンズ4と開口部材5とが、一体で構成されている。しかしながら、開口部材5とコンデンサレンズ4とを、それぞれ別体で構成しても良い。
開口部材5について説明する。開口部材の構成を図2に示す。(a)は不透明な部材で構成された開口部材を示し、(b)は透明な部材で構成された開口部材を示している。
図2(a)に示すように、開口部材5は、遮光部5a1と透過部5bとを有する。更に、開口部材5は遮光部5a2を有する。遮光部5a1と5a2は不透明な部材、例えば、金属板で構成されている。透過部5bは金属板に形成された空隙(孔)である。
開口部材5では、遮光部5a1を保持するために、遮光部5a1と遮光部5a2との間に接続部5a3が3つ形成されている。そのため、透過部5bは3つに分かれている。透過部5bの各々形状は略扇状(離散的な輪帯形状)になっている。なお、接続部5a3の数は3つに限定されない。
開口部材5は、遮光部5a1が照明光学系の光軸を含むように配置されている。また、遮光部5a1の外縁5cは、照明光学系の光軸から所定の距離だけ離れた位置にある。よって、開口部材5に入射した照明光は、光束の中心が遮光部5a1によって遮光される。ここで、遮光部5a1と透過部5bとの境が、遮光部5a1の外縁5cになる。
遮光部5a2は、遮光部5a1や透過部5bよりも外側(光軸から離れる方向)に位置している。ここで、透過部5bと遮光部5a2との境が、遮光部5a2の内縁5dになる。
透過部5bは、遮光部5a1の外縁5cよりも外側に位置している。ここで、遮光部5a1と透過部5bとの境が、透過部5bの内縁になる。また、透過部5bと遮光部5a2との境が、透過部5bの外縁になる。よって、5cは、遮光部5a1の外縁と透過部5bの内縁とを示し、5dは、遮光部5a2の内縁と透過部5bの外縁とを示している。
また、図2(b)に示すように、開口部材5’は、遮光部5’a1と透過部5’bとを有する。更に、開口部材5’は遮光部5’a2を有する。遮光部5’a1、5’a2及び透過部5’bは透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。遮光部5’a1と5’a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部5’bには何も塗布されていない。よって、透過部5’bはガラス板そのものである。
開口部材5’では、透過部5’bの形状は円環になっている。これは、遮光部5’a2を保持する必要が無いからである。そのため、開口部材5’では、遮光部5’a1と遮光部5’a2との間に接続部は形成されていない。
なお、開口部材5’と開口部材5との主な違いは、材料と接続部の有無である。よって、遮光部5’a1、5’a2及び透過部5’bについての詳細な説明は省略する。
なお、開口部材5の遮光部5a2と接続部5a3や開口部材5’の遮光部5’a2は、必ずしも必要ではない。例えば、照明光の光束径(直径)を、透過部5bの外縁や透過部5’bの外縁と一致させるようにすれば良い。
以上のように、開口部材5、5’は遮光部5a1、5’a1と透過部5b、5’bとを備えている。よって、開口部材5、5’からは、略円環状又は円環状(以下、適宜、「円環状」という)の照明光が出射する。
図1に戻って説明を続ける。開口部材5と光源1とは共役な関係になっている。よって、光源1から出射した照明光は、開口部材5の位置で集光する。すなわち、開口部材5の位置に光源1の像が形成される。
開口部材5から出射した照明光は、コンデンサレンズ4に入射する。ここで、開口部材5の位置は、コンデンサレンズ4の焦点位置(あるいは、コンデンサレンズ4の瞳位置)と一致している。そのため、コンデンサレンズ4から出射する照明光は、平行光になる。また、透過部の形状が円環状になっているので、照明光の形状も円環状になる。そのため、コンデンサレンズ4から出射する照明光は、観察光学系の光軸(照明光学系の光軸)と交差するように出射する。
コンデンサレンズ4から出射した照明光は、標本7に到達する。標本7は保持部材6上に載置されている。標本7は、例えば細胞であって、無色透明である。
標本7を透過した光、すなわち、結像光は顕微鏡対物レンズ8(以下、適宜、「対物レンズ」という)に入射する。この対物レンズ8は、例えば、明視野観察用の顕微鏡対物レンズである。よって、対物レンズ8の光路中にはレンズが存在するだけで、位相板や変調板のように光の強度や位相を変化させる光学部材は存在していない。
対物レンズ8から出射した結像光は、結像レンズ10に入射する。そして、結像レンズ10を出射した結像光によって、像位置11に標本7の像が形成される。
図1に示すように、標本7を透過した平行光は、対物レンズの瞳9に集光する。このように、対物レンズの瞳9と開口部材5とは共役な関係になっている。よって、対物レンズの瞳9の位置に開口部材5の像が形成される。
対物レンズの瞳9と開口部材5の像との関係について説明する。なお、以下の説明では、開口部材として、図2(b)に示す開口部材5’が用いられているものとする。
図3は、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係を示す図であって、標本が存在しない場合を示している。(a)は標本位置における光の屈折の様子を示す図、(b)は対物レンズの瞳と開口部材の像との関係を示す図、(c)は対物レンズの瞳を通過する光束の様子を示す図である。なお、標本が存在しない場合には、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合が含まれる。
また、図4は、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係を示す図であって、標本が存在する場合を示している。(a)は標本位置における光の屈折の様子を示す図、(b)は対物レンズの瞳と開口部材の像との関係を示す図、(c)は対物レンズの瞳を通過する光束の様子を示す図である。なお、標本が存在する場合とは、標本の表面が傾斜している(非平坦になっている)場合である。よって、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合は、標本が存在する場合に含まれない。
標本が存在しない場合、図3(a)に示すように、保持部材6へ入射する光と保持部材6から出射する光とは、光の進行方向が同じになる。その結果、対物レンズの瞳位置に形成される開口部材の像は、図3(b)に示すようになる。なお、符号9で示す円(円周)は対物レンズの瞳の外縁で、円(円周)の内側が対物レンズの瞳になる。
図3(b)に示すように、透過部の像20の形状は円環で、遮光部の像21の形状は円で、対物レンズの瞳9の形状は円である。そして、透過部の像20と、遮光部の像21と、対物レンズの瞳9とが同心状になっている。また、透過部の像20の中心と、遮光部の像21の中心と、対物レンズの瞳9の中心とは一致している。遮光部の像21は、例えば、図2における遮光部5a1や5’a1の像である。
ここで、透過部の像20の中心とは、透過部の外縁の像20aを形作る円の中心のことである(透過部の像20は円環なので、透過部の像20の中心は、透過部の内縁の像20bを形作る円の中心でもある)。
そして、透過部の内縁の像20bは、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側(光軸に近づく方向)に位置している。また、透過部の外縁の像20aは、対物レンズの瞳9の外縁よりも外側(光軸から離れる方向)に位置している。このように、本実施形態の標本観察装置では、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像20bが形成され、対物レンズの瞳9の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像20aが形成される。
ここで、対物レンズの瞳9の外縁よりも外側の光は、対物レンズの瞳9を通過しない(対物レンズ8から出射しない)。よって、対物レンズの瞳9を通過する光束の領域は、図3(c)に示すように、透過部の内縁の像20bから対物レンズの瞳9の外縁までの間の領域になる。そして、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
一方、標本が存在する場合、図4(a)に示すように、保持部材6へ入射する光と標本から出射する光とは、光の進行方向が異なる。その結果、対物レンズの瞳位置に形成される開口部材の像は、図4(b)に示すようになる。なお、図4(b)においても、符号9で示す円(円周)は対物レンズの瞳の外縁で、円(円周)の内側が対物レンズの瞳になる。
図4(b)に示すように、透過部の像20の形状は円環で、遮光部の像21の形状は円で、対物レンズの瞳9の形状は円である。ただし、透過部の像20及び遮光部の像21と、対物レンズの瞳9とは同心状になっていない。また、透過部の像20の中心及び遮光部の像21の中心と、対物レンズの瞳9の中心とは一致していない。すなわち対物レンズの瞳9の中心に対して、透過部の像20の中心及び遮光部の像21の中心は紙面内の左方向にずれている。
また、対物レンズの瞳9を通過する光束の領域は、図4(c)に示すように、透過部の内縁の像20bから対物レンズの瞳9の外縁までの間の領域になる。そして、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
ここで、図4(b)では、透過部の内縁の像20bは、対物レンズの瞳9の外縁の内側に位置している。言い換えると、図4(b)では、遮光部の像21は、対物レンズの瞳9の外縁の内側に位置している。これは、標本の表面の傾斜が小さいからである。一方、標本が存在しない場合でも、遮光部の像21は、対物レンズの瞳9の外縁の内側に位置している。そのため、標本が存在する場合であっても、標本の表面の傾斜が小さいと、標本像の明るさは、標本が存在しない場合と同じになる。
しかしながら、標本の表面の傾斜が更に大きくなると、対物レンズの瞳9の中心に対する透過部の像20の中心のずれ(以下、適宜、「透過部の像のずれ」という)が更に大きくなる。この場合、後述(図7)するように、透過部の内縁の像20bの一部が、対物レンズの瞳9の外縁よりも外側に位置するようになる。また、透過部の外縁の像20aの一部が、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側に位置するようになる。言い換えると、遮光部の像21の一部が、対物レンズの瞳9の外縁の外側に位置する。その結果、対物レンズの瞳9を通過する光束の領域は大きく変化する。すなわち、標本が存在しない場合と、標本像の明るさが異なる。
このように、本実施形態の標本観察装置では、対物レンズの光軸と交差するように、所定の幅の光束を標本に照射して標本の観察を行う方法であって、所定の幅の光束のうち、最も内側の光が対物レンズの瞳の外縁よりも内側を通過し、所定の幅の光束のうち、最も外側の光が対物レンズの瞳の外縁よりも外側を通過するようにして、標本の観察を行う方法を用いている。
これにより、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、透過部の像のずれの変化に変換される。そして、透過部の像のずれの変化によって、対物レンズの瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
しかも、本実施形態の標本観察装置では、変調コントラスト法のように変調器を用いる必要がない。そのため、変調器に対する開口部材の位置調整が不要になる。その結果、開口部材の位置調整が簡素になる。更に、変調器を用いないことで、対物レンズは明視野観察法の対物レンズを使用できる。よって、同じ対物レンズで、様々な観察方法(例えば、明視野観察や、蛍光観察や、偏光観察等の観察方法)が手軽に行える。
また、陰影の発生方向は、対物レンズの瞳9に対する透過部の像20のずれの方向で決まるが、透過部の像のずれの方向は制限されない。そのため、本実施形態の標本観察装置では、陰影の発生方向が限定されない。
また、本実施形態における、対物レンズを備える標本観察装置用の開口部材は、標本観察装置の照明光学系に配置され、遮光部と、透過部と、を有し、透過部は遮光部の外縁よりも外側に位置し、透過部は、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に透過部の内縁の像が形成され、かつ、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成できるように形成されている。
このような対物レンズを備える標本観察装置用の開口部材を、標本観察装置に適用する場合、対物レンズに応じたリング状の照明光を対物レンズに照射することができる。また、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に透過部の内縁の像が形成され、かつ、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成されるため、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。
本実施形態の標本観察装置における観察結果の例を図5に示す。図5は、細胞の電子画像である。図5に示すように、本実施形態の標本観察装置によれば、無色透明な細胞の輪郭や内部構造を明瞭に観察できる。
また、本実施形態の標本観察装置では、対物レンズの瞳位置における遮光部の像の面積は、対物レンズの瞳の面積の50%以上であることが好ましい。
このようにすることで、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
なお、対物レンズの瞳の50%範囲を遮光できない場合、透過部の内縁の像20bから対物レンズの瞳9の外縁までの間隔が広くなり過ぎる。この場合、透過部の像20のずれがある場合とずれがない場合とで、対物レンズの瞳9を通過する光束の量に差がつきにくくなくなる。そのため、標本における形状の変化を明暗の変化として検出することが困難になる。その結果、陰影のある標本像を得ることが困難になる。あるいは、標本像のコントラストが悪くなってしまう。
なお、対物レンズの瞳位置における遮光部の像の面積は、対物レンズの瞳の面積の70%以上が良い。更に、対物レンズの瞳位置における遮光部の像の面積は、対物レンズの瞳の面積の85%以上がなお良い。
また、本実施形態の標本観察装置では、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
R0×β<Rob<R1×β (1)
ここで、
R0は、観察光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R1は、観察光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
Robは、対物レンズの瞳の半径、
βは、対物レンズの焦点距離をコンデンサレンズの焦点距離で割った値、
である。
条件式(1)を満足することで、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
図6は、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係を示す図である。ここで、図6(a)に、光軸から透過部の内縁までの長さR0、光軸から透過部の外縁までの長さR1及び対物レンズの瞳の半径Robの関係を示している。
図6(a)に示すように、R0、R1及びRobの関係は、R0×β<Rob、Rob<R1×βになっている。R0×β<Robとなるようにすることで、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成される。また、Rob<R1×βとなるようにすることで、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成される。その結果、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。
なお、開口部材の形状は、軸対称な形状であることが好ましい。このようにすることで、陰影の発生方向が限定されない。
なお、軸対称な形状としては、例えば、円や多角形がある。遮光部の形状を円とし、透過部の形状を円環とすると、R0は円環の内縁の半径、R1は円環の外縁の半径である。また、遮光部の形状を多角形とし、透過部の形状を環状の多角形とすると、R0は透過部の内側の多角形に内接する円の半径、R1は透過部の外側の多角形に外接する円の半径である。
また、本実施形態の標本観察装置では、対物レンズの瞳位置において、透過部の像の中心は、対物レンズの瞳の中心と一致することが好ましい。
このようにすることで、陰影の発生方向が限定されない。
また、本実施形態の標本観察装置では、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
(Rob−R0×β)/(R1×β−Rob)<1 (2)
ここで、
R0は、観察光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R1は、観察光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
Robは、対物レンズの瞳の半径、
βは、対物レンズの焦点距離をコンデンサレンズの焦点距離で割った値、
である。
条件式(2)を満足することで、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
図6(b)は対物レンズの瞳に対する開口部材の像のずれを示す図である。図6(b)では、対物レンズの瞳の中心に対して、開口部材の像の中心がずれている。このずれ量をΔ、対物レンズの瞳を通過する光束の領域(面積)をSで示している。なお、図6(b)では、遮光部の像(例えば、図3に示す遮光部の像21)の形状が円で、透過部の像の形状が円環で、しかも両者が同心状になっている。このような場合、透過部の像のずれは、対物レンズの瞳の中心に対する開口部材の像の中心のずれと等しい。よって、図6(b)におけるずれ量Δは、透過部の像のずれ量でもある。
図6(b)において、ずれ量Δを変化させると、面積Sも変化する。そこで、ずれ量Δを変化させて、そのときの面積Sを求めた結果を図7に示す。図7において(a)は、対物レンズの瞳に対する開口部材の像のずれ量と、対物レンズの瞳を通過する光束の量との関係を示すグラフ、(b)〜(d)は、対物レンズの瞳に対する開口部材の像のずれを示す図である。ここで、(b)はずれがない場合、(c)はずれが少ない場合、(d)はずれが多い場合、を示す。
図7(a)では、R0×β=0.97×Rob、R1×β=1.15×Robで、計算を行っている。また、透過部の透過率は100%にしている。また、図7(a)において、横軸の数値は、ずれ量Δを対物レンズの瞳の半径Robで規格化している。また、縦軸の数値は、ずれ量Δが0のときの面積(π(Rob 2−(R0×β)2))で規格化している。
なお、面積Sは対物レンズの瞳を通過する光束の範囲を示している。よって、面積Sは光束の量Iに置き換えることができる。そこで、図7(a)では、縦軸の変数としてIを用いている。
標本が存在しない場合(あるいは、標本の表面が平坦な場合)、ずれ量Δは0である。この場合、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係はAのようになる(図7(b))。よって、矢印Aで示すように、光束の量Iは1になる。
次に、標本が存在する場合、ずれ量Δは0でない。ここで、標本の表面の傾斜が小さいと、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係はBのようになる(図7(c))。しかしながら、AとBとでは、遮光部の像の位置は対物レンズの瞳内において異なっているものの、どちらも、対物レンズの瞳の外縁の内側に遮光部の像が位置している。そのため、矢印Bで示すように、光束の量Iは1になる。
一方、標本の表面の傾斜が大きいと、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係はCのようになる。この場合、遮光部の像の一部が対物レンズの瞳の外側に位置する状態になる(図7(d))。そのため、矢印Cで示すように、光束の量Iは1よりも大きくなる。
このように、本実施形態の標本観察装置では、矢印Bから矢印Cまでの間で、ずれ量Δの変化に応じて光束の量Iが変化する。そのため、本実施形態の標本観察装置によれば、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
なお、本実施形態において、「対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成される」には、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、図7(b)が示すように、透過部の内縁の像が全部含まれる場合のみならず、図7(c)が示すように、透過部の内縁の像が一部含まれる場合も含まれる。
なお、(Rob−R0×β)が大きくなりすぎると、条件式(2)を満足しなくなる。この場合、遮光部の像の大きさが小さくなりすぎる。そのため、矢印Aから矢印Bまでの間が長くなってしまう。この場合、標本における細やかな形状の変化(傾斜の変化)を、明暗の変化として検出することが難しくなる。
また、(R1×β−Rob)が小さくなり過ぎると、条件式(2)を満足しなくなる。この場合、透過部の外縁の像から対物レンズの瞳の外縁までの間隔が狭くなりすぎる。ずれ量Δが大きくなると、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に円環状の遮光部(例えば、図2(b)の遮光部5’a2)が位置するようになる。そのため、対物レンズの瞳を通過する光束が少なくなる。その結果、標本像が暗くなる。
また、本実施形態の標本観察装置では、以下の条件式(3)、(4)を満足することが好ましい。
0.7≦(R0×β)/Rob<1 (3)
1<(R1×β)/Rob≦2 (4)
ここで、
R0は、観察光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R1は、観察光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
Robは、対物レンズの瞳の半径、
βは、対物レンズの焦点距離をコンデンサレンズの焦点距離で割った値、
である。
条件式(3)の下限値を下回ると、透過部の内縁の像から対物レンズの瞳の外縁までの間隔が広くなり過ぎる。この場合、ずれ量Δが0の場合と0でない場合とで、対物レンズの瞳を通過する光束の量に差がつきにくくなくなる。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することが困難になる。その結果、陰影のある標本像を得ることが困難になる。あるいは、標本像のコントラストが悪くなってしまう。
条件式(3)の上限値を上回ると、透過部の像が、常に対物レンズの瞳の外側に位置する。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することができない。よって、条件式(3)の上限値を上回ることはない。
条件式(4)の下限値を下回ると、透過部の像が、対物レンズの瞳の内側に位置する。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することが困難になる。よって、条件式(4)の下限値を下回ることはない。
条件式(4)の上限値を上回らないようにすることで、対物レンズの有効口径よりも外側の部分を通過する光束を少なくできる。そのため、フレアやゴーストの発生を防止できる。
なお、条件式(3)に代えて、以下の条件式(3’)を満足すると良い。
0.8≦(R0×β)/Rob<1 (3’)
さらに、条件式(3)に代えて、以下の条件式(3”)を満足するとなお良い。
0.9≦(R0×β)/Rob<1 (3”)
なお、条件式(4)に代えて、以下の条件式(4’)を満足すると良い。
1<(R1×β)/Rob≦1.5 (4’)
さらに、条件式(4)に代えて、以下の条件式(4”)を満足するとなお良い。
1<(R1×β)/Rob≦1.3 (4”)
また、条件式(3)、(3’)、(3”)において、上限値を、0.99、更には0.98とすることが好ましい。また、条件式(4)、(4’)、(4”)において、下限値を、1.01や1.05、更には1.10とすることが好ましい。
また、本実施形態の標本観察装置では、透過部における透過率は場所によって異なることが好ましい。また、以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
Tin<Tout (5)
ここで、
Tinは、透過部の内縁近傍における透過率、
Toutは、透過部の外側近傍における透過率、
である。
上述のように、透過部の全ての場所で透過率が同じ場合、ずれ量Δが変化しても光束の量Iが変化しない状態(図7、矢印Aから矢印Bまでの間)が生じる。そこで、透過部における透過率を場所によって異ならせることが好ましい。また、このとき、以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
Tin<Tout (5)
ここで、
Tinは、透過部の内縁近傍における透過率、
Toutは、透過部の外側近傍における透過率、
である。
条件式(5)を満足することで、ずれ量Δが変化しても光束の量Iが変化しない状態を少なくすることができる。その結果、標本におけるより細やかな形状の変化(傾斜の変化)を、明暗の変化として検出することができる。
図8は、対物レンズの瞳と開口部材の像の関係を示す図であって、(a)は標本が存在しない場合、(b)は標本が存在する場合を示している。図8では図示を省略しているが、開口部材は、透過率は場所によって異なる透過部を有している。
標本が存在しない場合、図8(a)に示すように、透過部の像30の形状は円環で、対物レンズの瞳9の形状は円である。そして、透過部の像30と対物レンズの瞳9とが同心状になっている。また、透過部の像30の中心と対物レンズの瞳9の中心とは一致している。
透過部の像30は、領域31と領域32とからなる。領域31は、対物レンズの瞳9の外縁から透過部の外縁の像30aまでの間の領域である。また、領域32は、透過部の内縁の像30bから対物レンズの瞳9の外縁までの間の領域である。そして、領域31を形成する開口部材5の透過部の透過率が、領域32を形成する開口部材5の透過部の透過率よりも高くなっている。
標本が存在しない場合、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側には、領域32のみが位置する状態になる。よって、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
一方、標本が存在する場合、図8(b)に示すように、透過部の像30と対物レンズの瞳9とは同心状になっていない。また、透過部の像30の中心と対物レンズの瞳9の中心は一致していない。すなわち、対物レンズの瞳9の中心に対して、透過部の像30の中心が紙面内の左方向にずれている。
この場合、領域32の一部は、対物レンズの瞳9の外縁よりも外側に位置する。一方、領域31の一部が、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側に位置する。その結果、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側には、領域31と領域32とが位置する。よって、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
上述のように、標本が存在しない場合は、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側に、領域32のみが位置する。一方、標本が存在する場合は、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側に、領域31と領域32とが位置する。そのため、標本が存在しない場合と標本が存在する場合とで、標本像の明るさに差が生じる。
標本が存在する場合、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側では、領域31の占める割合が増え、領域32の占める割合が減る。よって、標本像の明るさは、標本が存在する場合の方が、標本が存在しない場合よりも明るくなる。
また、標本が存在しない場合と標本が存在する場合のいずれにおいても、遮光部の像は、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側に位置している。それにもかかわらず、上述のように、標本が存在しない場合と標本が存在する場合とで、標本像の明るさに差が生じる。
ずれ量Δを変化させて、そのときの面積Sを求めた結果を図9に示す。図9において(a)は、対物レンズの瞳に対する開口部材の像のずれ量と、対物レンズの瞳を通過する光束の量との関係を示すグラフ、(b)〜(d)は、対物レンズの瞳に対する開口部材の像のずれを示す図である。ここで、(b)はずれがない場合、(c)はずれが少ない場合、(d)はずれが多い場合、を示す。
図9(a)では、R0×β=0.97×Rob、R1×β=1.15×Robで、計算を行っている。また、透過部は2つの領域に分かれており、内側の領域(透過率が低い領域32、図8)の透過率を50%、外側の領域(透過率が高い領域31、図8)の透過率を100%にしている。また、図9(a)において、横軸と縦軸の数値は規格化されている。
また、図9においても、対物レンズの瞳と開口部材の像の関係を示す図をA(図9(b))、B(図9(c))、C(図9(d))で示している。これらの図は、図7における対物レンズの瞳と開口部材の像の関係を示す図(A、B、C)に対応するものなので、詳細な説明は省略する。
図7(a)と図9(a)とを比較すると分かるように、透過部における透過率が場所によって異なる開口部材では、矢印Aから矢印Bまでの間においても、ずれ量Δの変化に応じて光束の量Iが変化する。したがって、本実施形態の観察装置によれば、標本における細やかな形状の変化(傾斜の変化)を、明暗の変化として検出することができる。
なお、標本が存在しない場合、対物レンズの瞳9の内側に位置する透過部(透過率が低い領域32、図8)の透過率は、図9(b)〜(d)では50%で、図7(b)〜(d)では100%である。このように、ずれがない場合の透過率は、図9(b)の方が図7(b)よりも小さい。そのため、標本像の明るさは、図9(b)の方が図7(b)よりも暗くなる。
透過率が場所によって異なる透過部を有する開口部材の別の例を示す。図10は、開口部材の構成を示す図であって、(a)は透過部の透過率が連続的に変化している開口部材を示し、(b)は透過部の透過率がステップ状に変化している開口部材を示している。
図10(a)に示すように、開口部材50は、遮光部50a1と透過部50bとを有する。更に、開口部材50は遮光部50a2を有する。遮光部50a1、50a2及び透過部50bは透明な部材、例えば、ガラス板で構成されている。遮光部50a1と50a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。
一方、透過部50bでは、透過率が連続的に変化している。そのために、透過部50bには、例えば、透過率が連続的に変化する反射膜(吸収膜)が形成されている。ここで、透過率が変化する方向は、中心から周辺(遮光部50a1側から遮光部50a2側)に向かう方向である。また、透過率は、中心から周辺に向かって、透過率が徐々に大きくなるように変化している。
また、図10(b)に示すように、開口部材51は、遮光部51a1と透過部51bとを有する。更に、開口部材51は遮光部51a2を有する。遮光部51a1、51a2及び透過部51bは透明な部材、例えば、ガラス板で構成されている。遮光部51a1と51a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。
一方、透過部51bでは、透過率がステップ状に変化する領域と、透過率が一定の領域を有している。ここで、透過率がステップ状に変化する領域は遮光部51a1側に位置し、透過率が一定の領域は遮光部51a2側に位置している。透過率がステップ状に変化する領域では、遮光部51a1の中心を軸とした円周に沿って、透過率が100%の領域と透過率が0%の領域とが交互に形成されている。また、透過率が一定の領域は透過率が100%になっている。透過率が100%の領域と透過率が0%の領域の境界は矩形状になっているが、鋸歯状や正弦状であっても良い。また、各領域の透過率は、上述の値に限られない。
開口部材50や開口部材51では、透過部における透過率が場所によって異なる。したがって、このような開口部材を用いた本実施形態の観察装置によれば、標本における細やかな形状の変化(傾斜の変化)を、明暗の変化として検出することができる。
また、本実施形態の標本観察装置では、光源を複数有し、複数の光源が透過部に配置されていることが好ましい。この場合、図1において、光源1とレンズ2、3とを省略することができる。
図11は、開口部材の構成を示す図であって、複数の光源が透過部に配置されている場合を示している。図11に示すように、開口部材53は、遮光部53a1と透過部53bとを有する。更に、開口部材53は遮光部53a2を有する。遮光部53a1、53a2及び透過部53bは透明な部材、例えば、ガラス板で構成されている。遮光部53a1と53a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。
一方、透過部53bには複数の光源、例えば、LED53cが配置されている。図11では、複数のLED53cを円環状に2列配置している。このようにすると、発光させる列の数を変化させることで、透過部の大きさ(幅)を変えることができる。また、LED53cの明るさを異ならせることで、透過部における透過率を場所によって異ならせることができる。
なお、本実施形態の標本観察装置は、端的に言えば、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、複数の光源と、コンデンサレンズと、を有し、観察光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を有し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、複数の光源の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、複数の光源の外縁の像が形成される。
また、遮光部53a1にもLED53cを配置しても良い。遮光部53a1に配置したLED53cを消灯させたり点灯させたりすることで、観察方法に応じた照明が行える。
また、本実施形態の標本観察装置では、開口部材とは別の開口部材を有し、開口部材と別の開口部材とを移動させる移動機構を有することが好ましい。
このようにすることで、透過部の像の大きさや位置を変化させることができる。すなわち、開口部材を異なる開口部材に変更することで、光軸から透過部の内縁までの長さR0や光軸から透過部の外縁までの長さR1を、自由に変化させることができる。そのため、標本に応じて、陰影が最も良く発生するような照明状態を作り出すことができる。
さらに、位相差用対物レンズを使用する場合は以下の効果がある。照明開口に位相差観察用のリングスリットを用いれば位相差観察ができ、図2に示す開口部材を用いることで、本実施形態の標本観察装置による観察ができる。つまり、対物レンズを交換することなく、本実施形態の標本観察装置による観察と位相差観察とができる。なお、微分干渉観察やホフマンモジュレーションコントラスト観察などの方法でも、同様に対物レンズを交換することなく、本実施形態の標本観察装置による観察とこれらの観察ができる。
また、本実施形態の標本観察装置では、観察光学系は開口部材を有し、開口部材は対物レンズの瞳位置、あるいは対物レンズの瞳位置と共役な位置に配置されていることが好ましい。
このようにすることで、透過部の像に対して、対物レンズの瞳の大きさを変化させることができる。そのため、標本に応じて、陰影を最も良く発生するようにできる。
また、ビネッティング(口径食)が生じると、標本の中心から出射して標本像の中心に到達する光束(以下、適宜、「軸上光束」という)と、標本の周辺から出射して標本像の周辺に到達する光束(以下、適宜、「軸外光束」という)とで、光束の大きさに違いが生じる。通常、ビネッティングが生じると、軸上光束の形状が円であるのに対して、軸外光束の形状は略楕円になる。
そのため、軸外光束において、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に透過部の像が形成される、という状態が生じる。そうすると、ズレ量△と光束の量Iの関係は、標本像の中心と周辺とで異なる。
そこで、観察光学系に開口部材を配置することで、ビネッティングを小さくすることができる。このようにすると、軸外光束の形状を円にすることができる。そのため、軸外光束においても、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成される。その結果、ズレ量△と光束の量Iの関係は、標本像の周辺においても中心と同じ関係になる。よって、中心から周辺にわたって明るさのむらがない標本像が得られる。
なお、ビネッティングの小さい対物レンズを用いても同様の効果が得られる。ビネッティングの小さい対物レンズでは、ビネッティングの大きい対物レンズに比べて、レンズの外径が大きいレンズが用いられる。この場合、軸外光束の径と軸上光束の径との差が、少なくなる。その結果、中心から周辺にわたって明るさのむらがない標本像が得られる。このようなことから、ビネッティングの小さい対物レンズを用いることが好ましい。
また、本実施形態の標本観察装置では、光源は単色光源であるか、又は照明光学系は波長選択手段を有することが好ましい。
照明光の波長域を狭くできるので、瞳の色収差の発生を抑制できる。そのため、標本像のコントラストを良くすることができる。
また、上述の本実施形態の標本観察装置と、以下に述べる本実施形態の標本観察装置では、画像処理装置を備えることが好ましい。
更にコントラストの良い画像が得られる。また、標本の画像を単色で得た場合、標本の画像を観察に適した色に変換できる。
図12は、本実施形態の別の標本観察装置の構成を示す図である。なお、図1と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
標本観察装置110は、開口部材5と開口部材54とを備えている。開口部材5と開口部材54は、移動機構55に保持されている。移動機構55としては、例えば、スライダーやターレットがある。移動機構55がスライダーの場合、開口部材5と開口部材54は、観察光学系の光軸と直交する方向に移動する。移動機構55がターレットの場合、開口部材5と開口部材54は、観察光学系の光軸と平行な軸を中心に回転する。
このように、本実施形態における、対物レンズを備える標本観察用の開口部材は、標本観察装置の照明光学系に配置され、第1の開口部材と、第2の開口部材と、を備え、第1の開口部材と、第2の開口部材と、は異なる開口であることが好ましい。そして、第1の開口部材の透過部は、第1の対物レンズの瞳の外縁よりも内側に透過部の内縁の像が形成され、かつ、第1の対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、第1の開口部材の透過部の外縁の像が形成できるように形成されていることが好ましい。なお、第1の開口部材と第2の開口部材とで開口が異なるとは、透過部の位置や大きさが、第1の開口部材と第2の開口部材とで異なるということである。
また、第2の開口部材は、第1の開口部材に対応する第1の対物レンズと、異なる倍率を有する第2の対物レンズに対応する透過部を有してもよい。すなわち、第2の開口部材の透過部は、第2の対物レンズの瞳の外縁よりも内側に透過部の内縁の像が形成され、かつ、第2の対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、第2の開口部材の透過部の外縁の像が形成できるように形成されていることが好ましい。
また、第2の開口部材により明視野観察する場合には、第2の開口部材は、中央に透過部を有する構成であってもよい。また、第2の開口部材により第1の対物レンズを用いて位相差観察する場合には、第2の開口部材は、第1の開口部材の透過部の直径よりも小さい直径を有する透過部を備える構成であってもよい。
また、本実施形態における、対物レンズを備える標本観察用の開口部材は、更に第3の開口部材を備え、第2の開口部材が、位相差観察用の透過部を有し、第3の開口部材が、明視野観察用の透過部を有してもよい。
このように、本実施形態における、対物レンズを備える標本観察用の開口部材によれば、様々な観察方法に応じた照明光を対物レンズに照射することができる。これにより、第1の開口部材を用いて観察する際、標本の注目すべき領域があった場合に、開口部材を変更することで、当該領域について、位相差観察することや、明視野観察することが容易となる。
なお、開口部材は、透過部の透過領域を可変にする透過領域可変部を備えてもよい。透過領域可変部は、例えば、液晶シャッターで構成しても良い。このようにすれば、1つの開口で、開口部材5と開口部材54とを実現できる。また、この場合、移動機構が不要になる。
また、標本観察装置110では、対物レンズの瞳9の位置に、開口部材56が設けられている。なお、図12では、見易さのために、対物レンズの瞳9の位置と開口部材56の位置を離して描いている。
また、標本観察装置110では、照明光学系の光路、例えば、光源1とレンズ2と間に波長選択素子57が挿脱可能になっていても良い。光源1が白色光の場合、波長範囲の広い光が光源1から出射する。そこで、波長選択素子57を光路中に挿入することで、白色光よりも波長範囲の狭い光を照明光として取り出すことができる。なお、光源1を単色光源1’にしても良い。
また、標本観察装置110は、撮像素子58と画像処理装置59を備えていても良い。撮像素子58は、例えば、CCDやCMOSである。撮像素子58は像位置11に配置される。撮像素子58で撮像した標本像は、画像処理装置59に送られる。画像処理装置59では、コントラスト強調、ノイズ除去、色変換等の処理が行えるようになっている。
ところで、顕微鏡対物レンズはテレセントリック光学系である。そのため、コンデンサレンズもテレセントリック光学系になっている。従って、コンデンサレンズの瞳位置は、コンデンサレンズの前側焦点位置になる。ここで、上述のように、本実施形態の標本観察装置では、コンデンサレンズ4の焦点位置(前側焦点位置)に開口部材を配置している。これにより、コンデンサレンズの瞳位置において、照明光の中心部を遮光している。しかしながら、照明光の中心部を遮光する位置は、厳密にコンデンサレンズの瞳位置である必要は無く、コンデンサレンズの瞳位置近傍であれば良い。
ここで、開口部材とコンデンサレンズの瞳位置とのずれ(光軸方向のずれ)が大きくなると、透過部の像も対物レンズの瞳からずれていく。例えば、開口部材がコンデンサレンズの瞳位置と一致している場合、透過部の最も内側を通過する光線(以下、適宜、「光線Lin」という)は、対物レンズの瞳の内側に到達する。ところが、開口部材がコンデンサレンズの瞳位置からずれていくと、光線Linは、対物レンズの瞳の内側から外側に向かうようになる。すなわち、透過部の像が対物レンズの瞳からずれていく。
また、対物レンズを変えると、観察範囲が変化する。観察範囲が変化すると、光線Linの光軸に対する角度も変化する。この角度が変化すると、対物レンズの瞳に到達する光線Linの位置が変化する。すなわち、透過部の像が対物レンズの瞳からずれていく。その結果、陰影の発生が変化してしまう。
そこで、開口部材とコンデンサレンズの瞳位置とのずれの許容範囲は、観察範囲の変化を考慮して設定することになる。本実施形態の標本観察装置では、瞳位置近傍の範囲(許容範囲)は、コンデンサレンズの焦点距離の20%以内であることが望ましい。この範囲であれば、標本の中心と周辺とで、陰影の発生方向や発生量の違いを小さくできる。なお、瞳位置近傍の範囲は、コンデンサレンズの焦点距離の10%以内であればなお良い。
上述のように、本実施形態の標本観察装置では、標本の表面の傾きに応じて、標本から出射する光の向きが変化する。この様子を図13に示す。図13において、(a)は標本の表面の傾きと、標本から出射する光の向きとの関係を示すグラフ、(b)は計算に用いたモデルを示す図、(c)〜(f)は標本のモデルを示す図である。
図13(b)に示すように、水61で満たされたガラス容器60の内側に、標本62が保持されている状態で、計算が行われている。この状態で、光軸と平行に光線を入射させていく。光線の入射は光軸上から始め、徐々に光軸から離れる方向に光線の入射位置を移動させる。光軸から最も離れた位置が標本の端になる。
また、標本の形状のモデルの数は、扁平状のものから半球状のものまで、合計で4つである。標本の高さをa、横幅をbとしたとき、図13(c)に示すモデルはb/a=1(半球)、図13(d)に示すモデルはb/a=1.41、図13(e)に示すモデルはb/a=2、図13(f)に示すモデルはb/a=4となっている。
また、図13(a)のグラフにおいて、横軸は、光線の入射位置である。0が光軸上(標本の中央)、1が光軸から最も離れた位置(標本の端)である。また、縦軸は振れ角であって、ガラス容器60から出射した光線と光軸とのなす角度である。
図13(a)に示すように、いずれのモデルにおいても、標本の周辺部に向かうほど、表面の傾きが大きくなる。よって、振れ角も、標本の周辺部に向かうほど大きくなっている。また、標本の形状が半球に近くなるほど、表面の傾きが大きくなる。よって、振れ角も、標本の形状が半球に近くなるほど大きくなっている。
また、本実施形態の標本観察装置では、開口部材は1つの透明な部材で構成され、透明な部材の一方の面に遮光部が形成され、一方の面もしくは他方の面に外側遮光部が形成され、外側遮光部は、遮光部よりも外側に位置していることが好ましい。
図14は開口部材の構造を示す図であって、(a)は上面図、(b)は断面図であって、遮光部を片面だけに形成した図、(c)は断面図であって、遮光部を両面に形成した図である。なお、図14(a)に示す開口部材の上面図は、図2(b)に示す開口部材の上面図と同じなので、構造の説明は省略する。
図14(b)は、図14(a)のXX’における断面図である。ここで、図14(b)では、開口部材5’の片面だけに遮光部が形成されている。透明な部材5’eは、例えば、ガラス板や樹脂板である。開口部材5’では、透明な部材5’eの上面5’fだけに、遮光部5’a1と遮光部5’a2とが形成されている。一方、透明な部材5’eの下面5’gには何も形成されていない。透過部5’bは、遮光部5’a1と遮光部5’a2との間に形成されている。
図14(c)も、図14(a)のXX’における断面図である。ここで、図14(c)では、開口部材5’の両面に遮光部が形成されている。図14(c)に示す開口部材5’では、透明な部材5’eの上面5’fに遮光部5’a2だけが形成されている。一方、透明な部材5’eの下面5’gに遮光部5’a1だけが形成されている。透過部5’bは、上面5’fの遮光部5’a2と下面5’gの遮光部5’a1との間に形成されている。
なお、図14(b)と図14(c)のいずれにおいても、遮光部5’a1は、照明光学系の光軸を含むように配置されている。一方、遮光部5’a2は外側遮光部であって、遮光部5’a1よりも外側に位置している。
また、本実施形態の標本観察装置では、開口部材は複数の透明な部材で構成され、複数の透明な部材のうち、1つの透明な部材に遮光部が形成され、他の1つの透明な部材に外側遮光部が形成され、外側遮光部は、遮光部よりも外側に位置していることが好ましい。
図15は開口部材の構造を示す図であって、(a)は2つの透明な部材で構成された開口部材を示す断面図、(b)は2つの不透明な部材で構成された開口部材を示す上面図である。
図15(a)では、開口部材70は、第1の透明な部材71と第2の透明な部材75とを有する。第1の透明な部材71では、上面72だけに遮光部73が形成され、下面74には何も形成されていない。また、第2の透明な部材75では、上面76には何も形成されておらず、下面77だけに遮光部78が形成されている。透過部79は、上面72の遮光部73と下面77の遮光部78との間に形成されている。
遮光部78は、照明光学系の光軸を含むように配置されている。一方、遮光部73は外側遮光部であって、遮光部78よりも外側に位置している。なお、第1の透明部材71の遮光部73は、上面72のみに形成されても、下面74のみに形成されてもよい。また、第2の透明部材75の遮光部78は、上面76のみに形成されても、下面77のみに形成されてもよい。
また、本実施形態の標本観察装置では、開口部材は複数の不透明な部材で構成され、複数の不透明な部材のうち、1つの不透明な部材は遮光部を有し、他の1つの透明な部材は外側遮光部を有し、外側遮光部は、遮光部よりも外側に位置していることが好ましい。
図15(b)では、開口部材80は、第1の不透明な部材81と第2の不透明な部材84とを有する。第1の不透明な部材81と第2の不透明な部材84は、例えば、金属板である。第1の不透明な部材81は、図2(a)の開口部材5と同じなので、構造の説明は省略する。
第1の不透明な部材81は、遮光部82と透過部83とを有する。なお、透過部83の幅(径方向の幅)は十分に広くなっている。一方、第2の不透明な部材84は透過部85を有する。ここで、透過部85の直径は、遮光部82の直径よりも大きく、透過部83の外縁の直径よりも小さくなっている。第1の不透明な部材81と、第2の不透明な部材84と、を互いの中心が略同一軸上になるように、平行に配置することで、透過部86は、遮光部82と透過部85の外縁との間に、略円環状に形成される。
遮光部82は、照明光学系の光軸を含むように配置されている。一方、第2の不透明な部材84の略円環状の領域は外側遮光部であって、遮光部82よりも外側に位置している。
ところで、対物レンズの瞳径は対物レンズによって異なる。そのため、開口部材が1種類だと、対物レンズによっては、対物レンズの瞳の面内において、開口部材の像が所望の位置に投影されない場合がある。すなわち、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に透過部の内縁の像が形成されなくなる可能性や、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に透過部の外縁の像が形成されなくなる可能性がある。このようなことから、対物レンズに適した開口部材が用いられるようにすることが好ましい。
このようなことから、本実施形態の標本観察装置は、開口部材を移動させる移動機構を有し、移動機構は、回転板と、軸部材と、を有し、回転板は複数の保持部を有することが好ましい。
図16は移動機構の構成を示す断面図であって、(a)は1つの回転板で構成された移動機構を示す図、(b)は2つの回転板で構成された移動機構を示す図、(c)は2つの回転板で構成された別の移動機構を示す図である。
図16(a)の移動機構90は、回転板91と軸部材92とを有する。回転板91は軸部材92を軸に回転する。回転板91には複数の保持部が形成されている。保持部は、凹部93と貫通孔94で構成されている。凹部93と貫通孔94は共に円形で、凹部93は貫通孔94の上側に形成されている。また、凹部93の直径は、貫通孔94の直径よりも大きい。そのため、凹部93と貫通孔94の境界には、受け面95が形成されている。
開口部材96は円形で、その直径は、凹部93の直径よりも小さく、貫通孔94の直径よりも大きくなっている。そのため、開口部材96を保持部に挿入すると、開口部材96の周辺部が受け面95に当接する。これにより、開口部材96を保持できる。また、他の保持部には、開口部材97が同様にして保持される。なお、開口部材96と開口部材97とは、透過部の幅が異なっている。
このように、透過部の幅が異なる2つの開口部材を回転板で保持しておけば、回転板を回転させることで、使用する対物レンズに適した開口部材を照明光学系中に配置することができる。なお、保持部の数は2つに限られない。保持部を3つ以上設けても良い。
なお、移動機構90では、開口部材と対物レンズが一対一で対応するため、対物レンズの数だけ開口部材を用意しなくてはならない。そのため、使用する対物レンズの数が多くなればなるほど、開口部材の種類も増えていく。
そこで、開口部材を2つの透明な部材で構成することが好ましい。例えば、図15(a)に示す第1の透明な部材71と第2の透過部材75とを、各々複数枚用意する。そして、第1の透明な部材71では、遮光部73の径を様々に変えておき、第2の透明な部材75では、遮光部78の径を様々に変えておく。そして、第1の透明な部材71と第2の透明な部材75とを、様々に組み合わせられるようにすれば良い。このようにすることで、透過部79の位置と幅を様々に変えることができる。
このようなことから、本実施形態の標本観察装置は、開口部材を移動させる移動機構を有し、移動機構は、複数の回転板と、軸部材と、を有し、各々の回転板は複数の保持部を有することが好ましい。
図16(b)に示すように、移動機構200は、第1の回転板201と、第2の回転板202と、軸部材203と、を有する。第1の回転板201と第2の回転板202は、回転板91と同じなので、構造の説明は省略する。なお、保持部の直径は、第1の回転板201と第2の回転板202とで同じになっている。
移動機構200では、第1の回転板201にも第2の回転板202にも、透明な部材が保持されている。ここで、第1の回転板201には透明な部材204と206が保持され、回転板202には透明な部材205と207が保持されている。透明な部材204と206の構造は、図15(a)における透明な部材71の構造と同様で、透明な部材の片面の周辺部に遮光部が形成されている。透明な部材205と207の構造は、図15(a)における透明な部材75の構造と同様で、透明な部材の片面の中央部に遮光部が形成されている。
透明な部材204と透明な部材206とでは、周辺部に形成された遮光部の径が異なる。また、透明な部材205と透明な部材207とでは、中央部に形成された遮光部の径が異なる。
移動機構200では、1つの回転板に設けられた保持部の数は、移動機構90と同じく2つである。しかしながら、4つの透明な部材が用いられているため、これらの組み合わせによって、4種類の開口部材が実現できる(透明な部材204と205、透明な部材204と207、透明な部材206と205、透明な部材206と207)。
その結果、移動機構200においても、回転板を回転させることで、使用する対物レンズに適した開口部材を照明光学系中に配置することができるが、加えて、開口部材の数を増やすことなく様々な対物レンズに対応できる。なお、保持部の数は2つに限られない。保持部を3つ以上設けても良い。
なお、移動機構200では、透明な部材の挿脱を回転板の上面側から行う。そのため、第2の回転板202において透明な部材の挿脱を行う際は、第1の回転板201と第2の回転板202とを離しておく必要がある。このようなことから、移動機構200では、第1の回転板201と第2の回転板202の少なくとも一方を、軸部材203の軸方向に沿って移動できるようになっている。ただし、このような移動は省略できた方が好ましい。
このようなことから、本実施形態の標本観察装置は、開口部材を移動させる移動機構を有し、移動機構は、複数の回転板と、軸部材と、を有し、各々の回転板は複数の保持部を有し、保持部の直径が、各々の回転板で異なることが好ましい。
図16(c)に示すように、移動機構210は、第1の回転板211と、第2の回転板212と、軸部材213と、を有する。第1の回転板211と第2の回転板212の構造は、第1の回転板201と第2の回転板202の構造と同じである。ただし、移動機構210では、保持部の直径が、第1の回転板211と第2の回転板212とで異なっている。
第1の回転板211の保持部は、凹部214と貫通孔215で構成されている。凹部214と貫通孔215は共に円形で、凹部214は貫通孔215の上側に形成されている。また、凹部214の直径は、貫通孔215の直径よりも大きい。
第2の回転板212の保持部は、凹部216と貫通孔217で構成されている。凹部216と貫通孔217は共に円形で、凹部216は貫通孔217の上側に形成されている。また、凹部216の直径は、貫通孔217の直径よりも大きいが、貫通孔215の直径よりも小さくなっている。
そのため、第2の回転板212における透明な部材219の挿脱は、第1の回転板211側から、貫通孔215を介して行うことができる。このとき、第1の回転板211と第2の回転板212を近接させたままにしておくことができる。また、透明な部材218の挿脱は、透明な部材219の挿脱の終了後に行う。
このように、移動機構210においても、回転板を回転させることで、使用する対物レンズに適した開口部材を照明光学系中に配置することができ、しかも、開口部材の数を増やすことなく様々な対物レンズに対応できる。更に、回転板を軸部材の方向に移動させずに、透明な部材の挿脱が容易に行える。なお、保持部の数は2つに限られない。保持部を3つ以上設けても良い。
なお、対物レンズの取り付けや開口部材取り付けでは、取り付け位置に関して機械的な誤差を含む。そのため、対物レンズの瞳の面内において、開口部材の像が所望の位置に投影されない場合がある。
このようなことから、本実施形態の標本観察装置では、移動機構は、3つの支持部材を有し、3つの支持部材で開口部材を支持することが好ましい。
支持部材としては、例えば、1つのバネと、2つのねじがある。バネとねじは、各々の長手方向の軸が、保持部の中心で交差するように配置される。回転板には、バネやねじを格納するための空間が形成されている。開口部材の側面の一点にバネを当接させ、他の2点にねじを当接させる。そして、2つのねじを前後させることで、開口部材を保持部内で移動させることができる。
このようにすることで、対物レンズの瞳の面内において、開口部材の像を所望の位置に投影することができる。すなわち、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成される。
なお、開口部材の位置の調整は、対物レンズの瞳を観察することで行える。そのために、レンズを移動する機構やレンズを挿脱する機構を観察光学系に設け、対物レンズの瞳が観察できるようにしておくことが好ましい。
対物レンズの瞳を観察しながら、開口部材の位置の調整を行う場合、遮光部が対物レンズの瞳の中心に位置するように調整を行う。このような調整だと、高い精度で調整が行えない可能性がある。
このようなことから、本実施形態の標本観察装置では、開口部材は位置調整用のマークを有し、マークは少なくとも遮光部に設けられていることが好ましい。マークは、例えば、開口部材の中心の遮光部に施された微小開口である。マークが対物レンズの瞳中心に位置するように開口部材を位置調整する。
図14(b)に示す開口部材5’の場合は、遮光部5’a1にマークを設ければ良い。図14(c)に示す開口部材5’の場合も、遮光部5’a1にマークを設ければ良い。
また、図15(a)に示す開口部材70の場合は、図14(c)に示す開口部材5’の場合と同じように、遮光部78にマークを設ければよい。更に、透明な部材71に、遮光部78に設けたマークの位置と対応する位置に、マークを設ければなお良い。透明な部材71に設けるマークは、微小の吸収物質である。まず、透明な部材71上のマークと遮光部78のマークとを一致させるように、透明な部材71と透明な部材75の位置を調整する。次に、上記マークが対物レンズの瞳中心に位置するように開口部材を位置調整する。
本実施形態の標本観察装置では、開口部材は不透明な部材で構成され、透過部は、不透明な部材に形成された複数の開口を有することが好ましい。ここで、開口は微小開口であっても良い。開口又は微小開口の直径は同一であっても、異なっていても良い。また、開口又は微小開口の配列はランダムであっても、規則的であっても良い。
図17は開口部材の構成を示す図であって、(a)は上面図、(b)は透過部の拡大図であって、微小開口の直径を同一にしたときの図、(c)は透過部の拡大図であって、微小開口の直径を異ならせたときの図である。
図17(a)に示すように、開口部材220は、遮光部221、遮光部222及び透過部223を有する。遮光部221と遮光部222は不透明な部材、例えば、金属板である。透過部223は、遮光部221と遮光部222との間に形成されている。
図17(b)に示すように、透過部223は、複数の微小開口224で構成されている。微小開口224は、金属板に形成された空隙(孔)である。微小開口224は、金属板にレーザを照射して形成することができる。図17(b)では、微小開口224の直径はいずれも同一である。
このようにすることで、透過部223を簡便に形成することができる。また、微小開口224の直径や密度を変えることで、様々な透過率を有する透過部223を得ることができる。
なお、図17(b)では、微小開口の位置はランダムになっているが、微小開口の位置を規則的にしても良い。あるいは、複数の微小開口を1つの群とし、その群が特定のパターンで繰り返して配置されているようにしても良い。また、図17(b)では、微小開口は2列になっているが、1列でもよく、3列以上であっても良い。
また、微小開口の直径を異ならせても良い。図17(c)は、微小開口の直径を異ならせた場合である。図17(c)に示すように、透過部225は、複数の微小開口226、227及び228で構成されている。ここで、微小開口の直径は、内側から外側に向かって大きくなっている。
このようにすることで、透過率が変化する透過部223を簡便に形成することができる。また、微小開口226、227及び228の直径や密度を変えることで、透過率の変化の度合いを様々に変えることができる。
上述のように、図2(a)に示す開口部材5や図2(b)に示す開口部材5’を用いた標本観察装置では、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。しかしながら、例えば、無色透明な標本と染色された標本とを、同時に(同一視野内で)観察しなければならない場合もある。
このような場合、染色された標本では、染色に応じた色や濃淡によって照明光が減衰されてしまう。そのため開口部材5や開口部材5’を用いた標本観察装置では、染色された標本の標本像が暗くなってしまい、染色された標本を明瞭に観察できない可能性がある。そのため、無色透明な標本と染色された標本の両方を良好に観察できるようにすることが好ましい。
このようなことから、本実施形態の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサレンズと、開口部材と、を有し、観察光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を有し、開口部材は、減光部と、透過部と、を有し、開口部材は、減光部が照明光学系の光軸を含むように配置され、透過部は、減光部の外縁よりも外側に位置し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成されることを特徴とする。
図18は開口部材の構成を示す図であって、(a)は透明な部材に減光部を設けた開口部材を示す図、(b)は減光フィルタに開口部を設けた開口部材を示す図、(c)は不透明な部材に微小開口を設けた開口部材を示す図である。
図18(a)に示すように、開口部材230は、減光部231、遮光部232及び透過部233を有する。なお、遮光部232は、必ずしも必要ではない。開口部材230では、減光部231が照明光学系の光軸を含むように配置されている。また、透過部233は、減光部231の外縁よりも外側に位置している。
減光部231、遮光部232及び透過部233は透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。減光部231では、例えば、減光膜(薄膜)がガラス板上に形成されている。また、遮光部232は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部233には何も塗布されていない。よって、透過部233はガラス板そのものである。なお、開口部材230では、減光部231と透過部233とが接しているが、両者の間に遮光部を設けても良い。
開口部材230に入射した照明光は、透過部233では減光されないが、減光部231で減光される。開口部材230からは、円環状の照明光と円形の照明光とが出射する。ここで、円形の照明光は円環状の照明光よりも暗くなっている。開口部材230を用いると、無色透明な標本にも染色された標本にも、円環状の照明光と円形の照明光が照射される。なお、円形の照明光は、明視野観察時の照明光と同じである。
無色透明な標本では、円環状の照明光によって、陰影のある標本像(以下、適宜、陰影像とする)が形成される。一方、円形の照明光では、陰影像は形成されず、一定の明るさの光が像位置に到達する。その結果、標本像は、一定の明るさの光と陰影像とが重なったものになる。ただし、円形の照明光は、円環状の照明光よりも暗くなっている。よって、一定の明るさの光が陰影像に重なっても、陰影像のコントラストはそれほど低下しない。このようなことから、無色透明な標本については、陰影のある標本像を得ることができる。
一方、染色された標本では、円環状の照明光によって、陰影像が形成される。このとき、陰影像には、陰影が付くだけではなく、染色に応じた色や濃淡も加わる。一方、円形の照明光では、陰影像は形成されず、染色に応じた色や濃淡を持つ標本像(以下、適宜、濃淡像という)が形成される。その結果、標本像は、陰影像と濃淡像とが重なったものになる。ただし、円環状の照明光は、染色に応じた色や濃淡によって減衰される。よって、陰影像が濃淡像に重なっても、濃淡像のコントラストはそれほど低下しない。このようなことから、染色された標本については、染色に応じた色や濃淡を持つ標本像を得ることができる。
以上のように、開口部材230を用いることで、無色透明な標本と染色された標本の両方を良好に観察することができる。
図18(b)は、開口部材の別の例である。図18(b)に示すように、開口部材240は、減光部241、遮光部242及び透過部243を有する。減光部241と遮光部242は減光フィルタで構成されている。また、透過部243は、減光フィルタに形成された空隙(孔)である。
図18(c)は、開口部材の別の例である。図18(c)に示すように、開口部材250は、減光部251、遮光部252及び透過部253を有する。ここで、開口部材250の構造は、図17(a)に示す開口部材220の構造と同様であるが、開口部材250では、開口部材220の遮光部221が減光部251になっている点で相違する。減光部251は、開口部材220の遮光部221に複数の微小開口を形成したものである。
このように、開口部材240や開口部材250は、開口部材230と同様に減光部を備えている。よって、開口部材240や開口部材250を用いることで、無色透明な標本と染色された標本の両方を良好に観察することができる。
なお、本実施形態の標本観察装置では、以下の条件式(6)を満足することが好ましい。
0.01<(ST×TT)/(SND×TND)<100 (6)
ここで、
SNDは、減光部の面積、
TNDは、減光部における透過率(%)、
STは、透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域の面積、
TTは、透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域における透過率(%)、
である。
条件式(6)を満足することで、無色透明な標本と染色された標本の両方を良好に観察することができる。なお、透過率は平均透過率であって、どの場所でも透過率が同じ場合は任意の場所での透過率、場所によって透過率が異なる場合は、各場所の透過率の平均である。
条件式(6)の下限値を下回ると、透過部から出射する照明光の光量が相対的に少なくなるので、陰影像が暗くなりすぎる。あるいは、減光部から出射する照明光の光量が相対的に多くなるので、陰影像のコントラストが低下する。その結果、無色透明な標本の観察が困難になる。
条件式(6)の上限値を上回ると、減光部から出射する照明光の光量が相対的に少なくなるので、濃淡像が暗くなりすぎる。その結果、染色された標本の観察が困難になる。
なお、条件式(6)に代えて、以下の条件式(6’)を満足すると良い。
0.03<(ST×TT)/(SND×TND)<30 (6’)
さらに、条件式(6)に代えて、以下の条件式(6”)を満足するとなお良い。
0.1<(ST×TT)/(SND×TND)<10 (6”)
上述のように、図2(a)示す開口部材5や図2(b)に示す開口部材5’を用いた標本観察装置では、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。しかしながら、表面の傾斜が異なる標本を、同時に(同一視野内で)観察しなければならない場合もある。
このような場合、標本の表面の傾斜によっては、使用している開口部材では、十分に陰影のある標本像が得られない場合がある。そのため、表面の傾斜が異なる標本がある場合であっても、無色透明な標本を観察できることが好ましい。
そこで、本実施形態の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサレンズと、開口部材と、を有し、観察光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を有し、開口部材は、遮光部と、第1の透過部と、第2の透過部と、を有し、開口部材は、第1の透過部が照明光学系の光軸を含むように形成され、遮光部は、第1の透過部の外縁よりも外側に位置し、第2の透過部は、遮光部の外縁よりも外側に位置し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、第2の透過部の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、第2の透過部の外縁の像が形成されることを特徴とする。
図19は、中心に透過部を有する開口部材の構成を示す図である。開口部材260は、第1の遮光部261、第2の遮光部262、第1の透過部263及び第2の透過部264を有する。なお、第2の遮光部262は、必ずしも必要ではない。開口部材260では、第1の透過部263が照明光学系の光軸を含むように形成され、第1の遮光部261は、第1の透過部263の外縁よりも外側に位置し、第2の透過部264は、第1の遮光部261の外縁よりも外側に位置している。
第1の遮光部261、第2の遮光部262、第1の透過部263及び第2の透過部264は透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。第1の遮光部261や第2の遮光部262は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、第1の透過部263や第2の透過部264には何も塗布されていない。よって、第1の透過部263や第2の透過部264はガラス板そのものである。開口部材260は、図2(b)に示す開口部材5’の遮光部5a1の中心に第1の透過部263を設けたものになる。
開口部材260では、第1の透過部263を通過した照明光の形状は円形であるので、明視野観察時の照明光の形状と同じになる。
ところで、明視野観察において、照明光の光束径を変化させると、照明光のコヒーレンス度(コヒーレンシー)が変化する。照明光のコヒーレンス度は、像のコントラストや、分解能や鮮明さに影響を及ぼす。照明光の光束径を細くすると、照明光のコヒーレンス度は高くなる。その結果、像のコントラストが高くなるので、例えば、無色透明な標本であってもコントラストを有する像(以下、適宜、コヒーレント照明像という)が得られる。このコヒーレント照明像は明視野像と同一ではないが、明視野像に類似した像になる。
なお、上述のコヒーレント照明像には、コヒーレント照明で得られた像だけでなく、部分的コヒーレント照明で得られた像も含まれる。一方、明視野像は部分的コヒーレント照明で得られる像である。このように、コヒーレント照明像と明視野像とは、互いに部分的コヒーレント照明で得られた像を含むが、コヒーレント照明像の方が明視野像に比べてよりコヒーレントな照明光で得られた像になっている点で相違する。
開口部材260では、第1の透過部263の直径は、第1の遮光部261の直径よりも小さくなっている。この場合、第1の透過部263を通過した照明光の光束径は、第1の遮光部261が存在しない場合の光束径より小さくなる。そのため、第1の透過部263を通過した照明光は、コヒーレンス度の高い光になっている。
そのため、開口部材260を用いると、円環状の照明光によって陰影像が形成され、円形の照明光によってコヒーレント照明像が形成される。その結果、標本像は、陰影像とコヒーレント照明像とが重なったものになる。ここで、第2の透過部264の幅が標本の表面の傾斜に適合していると、陰影像とコヒーレント照明像とが重なった標本像が得られる。一方、第2の透過部264の幅が標本の表面の傾斜に適合していない場合、陰影が十分にある標本像は得られないものの、コントラストを有する標本像は得られる。よって、観察視野内にある無色透明な標本を観察することができる。
以上のように、開口部材260を用いることで、無色透明な標本において、陰影のある標本像とコントラストを有する標本像が得られる。また、陰影のある標本像を観察できない場合であっても、観察視野内にある無色透明な標本を観察することができる。また、無色透明な標本の輪郭を陰影のある標本像で観察し、無色透明な標本の内部をコヒーレント照明像で観察することができる。
なお、本実施形態の標本観察装置では、以下の条件式(7)を満足することが好ましい。
0.01<(ST2×TT2)/(ST1×TT1)<100 (7)
ここで、
ST1は、第1の透過部の面積、
TT1は、第1の透過部における透過率(%)、
ST2は、第2の透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域の面積、
TT2は、第2の透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域における透過率(%)、である。
条件式(7)を満足することで、無色透明な標本において、陰影のある標本像とコヒーレント照明像が得られる。なお、透過率は平均透過率であって、どの場所でも透過率が同じ場合は任意の場所での透過率、場所によって透過率が異なる場合は、各場所の透過率の平均である。
条件式(7)の下限値を下回ると、第2の透過部から出射する照明光の光量が相対的に少なくなるので、陰影像が暗くなりすぎる。あるいは、第1の透過部から出射する照明光の光量が相対的に多くなるので、陰影像のコントラストが低下する。その結果、無色透明な標本において、陰影のある標本像を得ることが困難になる。また、照明光のコヒーレンス度が低下するので、コヒーレント照明像においてコントラストが低下する。
条件式(7)の上限値を上回ると、第1の透過部から出射する照明光の光量が相対的に少なくなるので、コヒーレント照明像が暗くなりすぎる。その結果、無色透明な標本において、明るいコヒーレント照明像を得ることが困難になる。
なお、条件式(7)に代えて、以下の条件式(7’)を満足すると良い。
0.03<(ST2×TT2)/(ST1×TT1)<30 (7’)
さらに、条件式(7)に代えて、以下の条件式(7”)を満足するとなお良い。
0.1<(ST2×TT2)/(ST1×TT1)<10 (7”)
また、本実施形態の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサレンズと、開口部材と、を有し、観察光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を有し、開口部材は、第1の遮光部と、第2の遮光部と、第1の透過部と、第2の透過部と、を有し、開口部材は、第1の遮光部が照明光学系の光軸を含むように配置され、第1の透過部は、第1の遮光部の外縁よりも外側に位置し、第2の遮光部は、第1の透過部の外縁よりも外側に位置し、第2の透過部は、第2の遮光部の外縁よりも外側に位置し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、第2の透過部の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、第2の透過部の外縁の像が形成されることを特徴とする。
図20は開口部材の構成を示す図である。開口部材270は、第1の遮光部271、第2の遮光部272、第3の遮光部273、第1の透過部274及び第2の透過部275を有する。なお、第3の遮光部273は、必ずしも必要ではない。開口部材270では、第1の遮光部271が照明光学系の光軸を含むように配置され、第1の透過部274は、第1の遮光部271の外縁よりも外側に位置し、第2の遮光部272は、第1の透過部274の外縁よりも外側に位置し、第2の透過部275は、第2の遮光部272の外縁よりも外側に位置している。
第1の遮光部271、第2の遮光部272、第3の遮光部273、第1の透過部274及び第2の透過部275は透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。第1の遮光部271や、第2の遮光部272や第3の遮光部273は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、第1の透過部274や第2の透過部275には何も塗布されていない。よって、第1の透過部274や第2の透過部275はガラス板そのものである。開口部材270は、図2(b)に示す開口部材5’の遮光部5’a1に第1の透過部274を設けたものになる。
開口部材270では、第1の透過部274が位相差観察用の照明リングになる。そのため、開口部材270を用いることで、位相差用の顕微鏡対物レンズによる観察が可能になる。この場合、内側の円環状の照明光によって位相差像が形成され、外側の円環状の照明光によって陰影像が形成される。その結果、標本像は、陰影像と位相差像とが重なったものになる。また、上述のように、第2の透過部275の幅が標本の表面の傾斜に適合していな場合、陰影が十分にある標本像は得られないが、位相差像が得られる。よって、観察視野内にある無色透明な標本を観察することができる。
以上のように、開口部材270を用いることで、無色透明な標本において、陰影のある標本像と位相差像が得られる。また、陰影のある標本像が観察できない場合であっても、観察視野内にある無色透明な標本を観察することができる。
なお、本実施形態の標本観察装置では、以下の条件式(8)を満足することが好ましい。
0.01<(SOUT×TOUT)/(SIN×TIN×T1ob)<100 (8)
ここで、
SINは、第1の透過部の面積、
TINは、第1の透過部における透過率(%)、
T1obは、対物レンズの位相膜における透過率(%)、
SOUTは、第2の透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域の面積、
TOUTは、第2の透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域における透過率(%)、
である。
条件式(8)を満足することで、無色透明な標本において、陰影のある標本像と位相差像が得られる。なお、透過率は平均透過率であって、どの場所でも透過率が同じ場合は任意の場所での透過率、場所によって透過率が異なる場合は、各場所の透過率の平均である。
条件式(8)の下限値を下回ると、第2の透過部から出射する照明光の光量が相対的に少なくなるので、陰影像が暗くなりすぎる。あるいは、第1の透過部から出射する照明光の光量が相対的に多くなるので、陰影像のコントラストが低下する。その結果、無色透明な標本において、陰影のある標本像を得ることが困難になる。また、第1の透過部274の対物レンズの瞳位置での像が、位相差用対物レンズの位相板よりも大きくなるため、位相像のコントラストが低下する。
条件式(8)の上限値を上回ると、第1の透過部から出射する照明光の光量が相対的に少なくなるので、位相差像が暗くなりすぎる。その結果、無色透明な標本において、位相差像を得ることが困難になる。
なお、条件式(8)に代えて、以下の条件式(8’)を満足すると良い。
0.03<(SOUT×TOUT)/(SIN×TIN×T1ob)<30 (8’)
さらに、条件式(8)に代えて、以下の条件式(8”)を満足するとなお良い。
0.1<(SOUT×TOUT)/(SIN×TIN×T1ob)<10 (8”)
また、明瞭な標本像を得るためには、色むらの少ない照明を行うことが好ましい。
また、本実施形態の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサ部と、開口部材と、を有し、観察光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を有し、開口部材は、遮光部と、透過部と、を有し、開口部材は、遮光部が照明光学系の光軸を含むように配置され、透過部は、遮光部の外縁よりも外側に位置し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成されることを特徴とする。
図21は、本実施形態の標本観察装置の照明光学系に、反射光学系を用いた構成を示す図である。なお、観察光学系は図1と同じなので、図示を省略している。
照明光学系280は、光源1と、コンデンサ部281と、開口部材282と、を有する。コンデンサ部281は、円錐ミラー283と凹面ミラー284とを有する。なお、必要に応じて、照明光学系280は、レンズ2やレンズ3を有する。
光源1から出射した光は、レンズ2とレンズ3を通過して、コンデンサ部281に入射する。ここで、開口部材282の位置は、コンデンサ部281の焦点位置(あるいは、コンデンサ部281の瞳位置)と一致している。そのため、円錐ミラー283に入射した照明光は、円錐ミラー283と凹面ミラー284で反射され、平行光となってコンデンサ部281から出射する。
また、開口部材282の透過部の形状が円環状になっているので、照明光の形状も円環状になる。そのため、コンデンサ部281から出射する照明光は、観察光学系の光軸(照明光学系の光軸)と交差するように出射する。コンデンサ部281から出射した照明光は、標本7に到達する。
このように、本実施形態の標本観察装置では、照明光に反射光学系を用いているため、照明光学系における色収差の発生を抑えることができる。その結果、色ムラが少ない照明ができる。
図22は、本実施形態の標本観察装置の照明光学系に、別の反射光学系を用いた構成を示す図である。なお、観察光学系は図1と同じなので、図示を省略している。
照明光学系290は、光源1と、コンデンサ部291と、を有する。コンデンサ部291は、開口部材292と、円錐ミラー293と、凹面ミラー294と、を有する。なお、必要に応じて、照明光学系290は、レンズ2やレンズ3を有する。
照明光学系290では、開口部材292が、円錐ミラー293の反射面に設けられている。照明光学系290における技術的意義は、照明光学系280における技術的意義と同じなので、詳細な説明は省略する。
なお、コンデンサ部281やコンデンサ部291は、コンデンサレンズと切り替え可能になっていても良い。このようにすることで、様々な観察方法に対応することができる。
また、本実施形態の標本観察装置は、画像処理装置を備え、複数の画像から合成画像を生成することが好ましい。
図23は、画像処理の一例であって、(a)は第1の位置における標本の電子画像、(b)は第2の位置における標本の電子画像、(c)は2つの電子画像を加算したときの画像である。2つの電子画像は、いずれも本実施形態の標本観察方法で取得した電子画像である。
細胞は厚みを持つため、対物レンズとの相対距離を変化させることで、様々なところにピントが合った電子画像が得られる。図23(a)は第1の位置における標本の電子画像であって、中央上の細胞にピントが合ったときの電子画像である。この電子画像では、中央上の細胞内部のコロニーが明瞭になっている。
図23(a)は第2の位置における標本の電子画像であって、標本を、第1の位置よりも20μm対物レンズから遠ざけたときの電子画像である。この電子画像は、中央下の細胞にピントが合ったときの電子画像である。この電子画像では、中央下の細胞内部のコロニーが明瞭になっている。
図23(a)では、中央上の細胞内部のコロニーは明瞭だが、中央下の細胞内部のコロニーは明瞭ではない。一方、図23(b)では、中央上の細胞内部のコロニーは明瞭ではないが、中央下の細胞内部のコロニーは明瞭である。そこで、図23(a)の電子画像と図23(b)の電子画像を加算する。このようにすると、図23(c)に示すように、中央上の細胞内部のコロニーも、中央下の細胞内部のコロニーも明瞭になる。すなわち、焦点深度の深い電子画像を得ることができる。なお、図23(a)の電子画像と図23(b)の電子画像の加算に際しては、各電子画像におけるオフセット成分を減算して、適切な明るさの電子画像を得ている。また、必要に応じて、コントラストを調整しても良い。
また、対物レンズとの相対距離を一定にしておいて、異なる波長で電子画像を取得しても良い。色収差によって、対物レンズとの相対距離が異なる電子画像が得られる。
また、電子画像の加算を行う代わりに、電子画像の減算を行っても良い。図24は、画像処理の一例であって、(a)は第1の位置における標本の電子画像、(b)は第2の位置における標本の電子画像、(c)は2つの電子画像を減算したときの電子画像である。2つの電子画像は、いずれも本実施形態の標本観察方法で取得した電子画像である。
なお、図24(a)の電子画像から図24(b)の電子画像を減算するに際しては、各画像にオフセット成分を加算して、適切な明るさの画像を得ている。また、必要に応じて、コントラストを調整しても良い。
また、2つの異なる標本観察方法で取得した電子画像を加算しても良い。図25は、画像処理の一例であって、(a)は本実施形態の標本観察方法で取得した標本の電子画像、(b)は位相差観察法で取得した標本の電子画像、(c)は2つの電子画像を加算したときの画像である。
本実施形態の標本観察方法と位相差観察法とを用いると、無色透明な標本において、陰影のある標本像(図25(a))と位相差像(図25(b))が得られる。ここで、図2(a)に示す透過部5bの幅が標本の表面の傾斜に適合していない場合、陰影が十分にある標本像は得られないが、位相差像が得られる。よって、観察視野内にある無色透明な標本を観察することができる。なお、上述のように、図25(a)の電子画像と図25(b)の電子画像の加算に際しては、各電子画像におけるオフセット成分を減算して、適切な明るさの電子画像を得ている。また、必要に応じて、コントラストを調整しても良い。
なお、開口部材5や開口部材5’の説明では、開口部材5の遮光部5a2と接続部5a3や開口部材5’の遮光部5’a2は、必ずしも必要ではないと述べた。開口部材5において、遮光部5a2と接続部5a3を設けない場合、透過部5bの外縁が物理的に存在しなくなる。
また、開口部材5’において、遮光部5’a2を設けない場合、透過部5’bの外縁として、透明部材の外縁が物理的に存在する。しかしながら、光学的には、透過部5’bと透明部材の外縁の外側とは実質的に同じである。よって、透過部5’bの外縁が物理的に存在しているとは言い難い。また、遮光部5’a1だけを透明部材に形成した場合は、開口部材5と同様に、透過部5’bの外縁が物理的に存在しなくなる。
このように、遮光部5a2と接続部5a3を設けない場合や遮光部5’a2を設けない場合、対物レンズの瞳9の位置において、透過部の外縁の像を規定することが難しい。
ここで、透過部は光が通過する領域である。そうすると、開口部材5や開口部材5’に入射する光束の径は有限であるから、開口部材5や開口部材5’を通過した後の光束では、光束の最も外側に位置する光線が透過部の外縁の代わりになる。そこで、光束の最も外側に位置する光線が透過部5bの外縁や透過部5’bの外縁を通過するように、光束の径を設定すれば良い。すなわち、対物レンズの瞳9の位置において、光束の最も外側に位置する光線が対物レンズの瞳9の外縁よりも外側に位置するようになっていれば良い。
また、以下の遮光部(I)〜(III)については、図18(a)に示すような減光部231にしても良い。
(I) 第1の遮光部261(図19)。
(II) 第1の遮光部271と第2の遮光部272(図20)。
(III)開口部材282と開口部材292における遮光部(図21、22)。
また、図21におけるコンデンサ部281は、反射面を含む構成になっている。
また、開口部材は照明光学系に配置されているので、条件式(1)〜(4)におけるR0とR1の各々は、照明光学系の光軸から測った距離ということもできる。
また、本実施形態の標本観察装置では、上述のように、照明光学系に、第1の開口部材と第2の開口部材とを配置することができる。ここで、第1の開口部材は、第1の遮光部又は減光部と、第1の透過部と、を有する。また、第2の開口部材は、第2の遮光部又は減光部と、第2の透過部と、を有する。
このような標本観察装置では、対物レンズとして、様々な種類の対物レンズを使用することができる。使用できる対物レンズとしては、例えば、瞳位置に位相膜を有する位相差用対物レンズがある。位相差用対物レンズを用いる場合、第2の開口部材は、位相差用対物レンズの位相膜と共役な位置に、透過部を有することが好ましい。
また、第1の開口部材については、位相差用対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成され、位相差用対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成されるようにしておく。
このようにすることで、第1の開口部材を用いることで陰影像が得られ、第2の開口部材を用いることで位相差像が得られる。
また、第1の開口部材と、第2の開口部材と、を備え、第1の対物レンズとして位相差用対物レンズを用いる場合、本実施形態の標本観察装置は、以下の条件式(9)を満足することが好ましい。
0.01<(S1×T1)/(S2×T2×Tob)<100 (9)
ここで、
S1は、第1の透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域の面積、
T1は、第1の透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域における透過率(%)、
S2は、第2の透過部の面積、
T2は、第2の透過部における透過率(%)、
Tobは、第1の対物レンズの位相膜における透過率(%)
である。
上述のように、第1の開口部材を用いることで陰影像が得られ、第2の開口部材を用いることで位相差像が得られる。ここで、条件式(9)を満足することで、陰影像と位相差像の明るさが略同じになる。そのため、目視による観察では、開口部材を切り替えて観察方法を変えても、見やすい像が得られる。また、撮像装置による撮像では、2つの像で明るさが略同じなので撮像が容易になる。
なお、条件式(6)〜(9)における「透過部のうち、対物レンズの瞳を通過する領域」とは、詳しくは「透過部を通過した光のうち、対物レンズの瞳を通過する光の領域」のことである。
また、本実施形態の別の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサレンズと、を有し、観察光学系は、対物レンズと、開口部材と、結像レンズと、を有し、開口部材は、遮光部又は減光部と、透過部と、を有し、開口部材は、遮光部又は減光部が観察光学系の光軸を含むように配置され、透過部は、遮光部又は減光部の外縁よりも外側に位置し、透過部の内縁と透過部の外縁との間に、コンデンサレンズの瞳の外縁の像が形成されることを特徴とする。
図26は本実施形態の別の標本観察装置の構成を示す図である。標本観察装置300は、例えば、正立型顕微鏡であって、照明光学系と観察光学系とを備える。照明光学系は、光源1と、コンデンサレンズ4と、を有する。なお、必要に応じて、照明光学系は、レンズ2やレンズ3や開口部材301を有する。一方、観察光学系は、対物レンズ8と、開口部材302と、結像レンズ10とを有する。
光源1から出射した光は、レンズ2とレンズ3を通過して、コンデンサレンズ4に到達する。コンデンサレンズ4に入射した光は、円形の光束となってコンデンサレンズ4から出射する。
なお、照明光学系中に、開口部材301を配置しても良い。このようにすることで、光束の径を変えることができる。以下の説明では、照明光学系中に開口部材301を配置した構成を用いて説明する。なお、図26に示す構成では、開口部材301とコンデンサレンズ4とが、一体で構成されている。しかしながら、開口部材301とコンデンサレンズ4とを、それぞれ別体で構成しても良い。
開口部材301と光源1とは共役な関係になっている。よって、光源1から出射した照明光は、開口部材301の位置で集光する。すなわち、開口部材301の位置に光源1の像が形成される。
開口部材301から出射した照明光は、コンデンサレンズ4に入射する。ここで、開口部材301の位置は、コンデンサレンズ4の焦点位置(あるいは、コンデンサレンズ4の瞳位置)と一致している。そのため、コンデンサレンズ4の1点から出射した照明光は、平行光になる。また、開口部材301の透過部の形状が円形になっているので、照明光の形状も円形になる。
コンデンサレンズ4から出射した照明光は、標本7に到達する。標本7は保持部材6上に載置されている。標本7は、例えば細胞であって、無色透明である。
標本7を透過した光、すなわち、結像光は対物レンズ8に入射する。この対物レンズ8は開口部材302を備えている。開口部材302は、対物レンズの瞳位置に配置されている。また、開口部材は透過部の形状が円環状になっている。
対物レンズ8から出射した結像光は、結像レンズ10に入射する。そして、結像レンズ10を出射した結像光によって、像位置11に標本7の像が形成される。
図26に示すように、標本7を透過した平行光は、対物レンズの瞳位置に集光する。対物レンズ8の瞳位置には開口部材302が配置されている。よって、開口部材301と開口部材302とは共役な関係になっている。なお、開口部材301の位置はコンデンサレンズ4の瞳位置でもあるので、コンデンサレンズ4の瞳と開口部材302とは共役な関係になる。その結果、開口部材302の位置に、コンデンサレンズ4の瞳の像が形成される。
図27は、開口部材の構成を示す図であって、(a)は照明光学系に配置された開口部材を示す図、(b)は観察光学系に配置された開口部材を示す図である。
照明光学系に配置された開口部材301は、コンデンサレンズ4の瞳位置に配置されている。図27(a)に示すように、開口部材301は、透過部301aと遮光部301bとを有する。透過部301aは円形である。遮光部301bは透過部301aの外側に位置している。
一方、観察光学系に配置された開口部材302は、対物レンズ8の瞳位置に配置されている。図27(b)に示すように、開口部材302は、遮光部302a1、遮光部302a2及び透過部302bを有する。ここで、開口部材302の構造は、図2(b)に示した開口部材5’の構造と同じなので、開口部材302の構造の説明は省略する。なお、遮光部302a1は減光部材で構成しても良い。
ここで、開口部材301の透過部301aの外縁の像、すなわち、コンデンサレンズ4の瞳の外縁の像(以下、適宜、外縁像とする)は、図26に示すように、開口部材302の位置に形成されている。図28、29はこの様子を示している。
図28は、コンデンサレンズの瞳の像と開口部材との関係を示す図であって、標本が存在しない場合を示している。(a)は標本位置における光の屈折の様子を示す図、(b)はコンデンサレンズの瞳の像と開口部材との関係を示す図である。なお、標本が存在しない場合には、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合が含まれる。
また、図29は、コンデンサレンズの瞳の像と開口部材との関係を示す図であって、標本が存在する場合を示している。(a)は標本位置における光の屈折の様子を示す図、(b)はコンデンサレンズの瞳の像と開口部材との関係を示す図である。なお、標本が存在する場合とは、標本の表面が傾斜している(非平坦になっている)場合である。よって、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合は、標本が存在する場合に含まれない。
標本が存在しない場合、図28(a)に示すように、保持部材6へ入射する光と保持部材6から出射する光とは、光の進行方向が同じになる。その結果、対物レンズの瞳位置、すなわち、開口部材302の位置に形成されるコンデンサレンズの瞳の像は、図28(b)に示すようになる。なお、符号309で示す円(円周)は外縁像で、円(円周)の内側がコンデンサレンズの瞳の像になる。
図28(b)に示すように、透過部320の形状は円環で、遮光部321の形状は円で、外縁像309の形状は円である。そして、透過部320と、遮光部321と、外縁像309とが同心状になっている。また、透過部320の中心と、遮光部321の中心と、外縁像309の中心とは一致している。
ここで、透過部320の中心とは、透過部の外縁320aを形作る円の中心のことである(透過部320は円環なので、透過部320の中心は、透過部の内縁320bを形作る円の中心でもある)。
外縁像309は、透過部の内縁320bよりも外側(光軸から離れる方向)に位置すると共に、透過部の外縁320aよりも内側(光軸に近づく方向)に位置している。このように、本実施形態の標本観察装置では、透過部の内縁320bと透過部の外縁320aとの間に、コンデンサレンズの瞳の外縁の像309が形成される。
ここで、外縁像309よりも外側の光は、開口部材301の遮光部301bで遮光されているので、透過部320を通過しない(対物レンズ8から出射しない)。よって、透過部320を通過する光束の領域は、透過部の内縁320bから外縁像309までの間の領域になる。そして、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
標本が存在する場合、図29(a)に示すように、保持部材6へ入射する光と標本から出射する光とは、光の進行方向が異なる。その結果、開口部材302の位置に形成されるコンデンサレンズの瞳の像は、図29(b)に示すようになる。なお、図29(b)においても、符号309で示す円(円周)は外縁像で、円(円周)の内側がコンデンサレンズの瞳の像になる。
図29(b)に示すように、透過部320の形状は円環で、遮光部321の形状は円で、外縁像309の形状は円である。ただし、透過部320及び遮光部321と、外縁像309とは同心状になっていない。また、透過部320の中心及び遮光部321の中心と、外縁像309の中心とは一致していない。すなわち、透過部320の中心及び遮光部321の中心に対して、外縁像309の中心は紙面内の左方向にずれている。
図29(b)においても、外縁像309よりも外側の光は、開口部材301の遮光部301bで遮光されているので、透過部320を通過しない(対物レンズ8から出射しない)。よって、透過部320を通過する光束の領域は、透過部の内縁320bから外縁像309までの間の領域になる。そして、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
ここで、外縁像309は、透過部の内縁320bよりも外側に位置している。言い換えると、図29(b)では、遮光部321は、外縁像309の内側に位置している。これは、標本の表面の傾斜が小さいからである。一方、標本が存在しない場合でも、遮光部321は、外縁像309の内側に位置している。そのため、標本が存在する場合であっても、標本の表面の傾斜が小さいと、標本像の明るさは、標本が存在しない場合と同じになる。
しかしながら、標本の表面の傾斜が更に大きくなると、透過部320の中心に対する外縁像309の中心のずれが更に大きくなる。この場合、外縁像309の一部が、透過部の内縁320bよりも内側に位置するようになる。また、外縁像309の一部が、透過部の外縁320aよりも外側に位置するようになる。言い換えると、外縁像309の一部が、遮光部321の内側に位置する。その結果、透過部320を通過する光束の領域は大きく変化する。すなわち、標本が存在しない場合と、標本像の明るさが異なる。
ところで、標本観察装置100では、対物レンズの瞳9に対して開口部材の透過部20の像がずれる。これに対して、標本観察装置300では、透過部320に対してして外縁像309がずれる。ここで、透過部320とコンデンサレンズの瞳とは、光学的に共役な関係になっている。そのため、コンデンサレンズの瞳位置を基準にすると、標本観察装置300においても、コンデンサレンズの瞳に対して透過部320の像がずれていることになる。
このように、標本観察装置300におけるずれの現象と標本観察装置100におけるずれの現象は、光学系の瞳に対して透過部の像がずれるという点で同じである。よって、標本観察装置300においても、図7(a)に示すように、偏心した量、すなわち、ずれ量Δに応じて対物レンズを通過する光量が増加する。
以上のように、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、コンデンサレンズの瞳の像のずれの変化に変換される。そして、コンデンサレンズの瞳の像のずれの変化によって、観察光学系に設けた透過部を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を結像光の明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
また、陰影の発生方向は、透過部320に対する外縁像309のずれの方向で決まるが、外縁像309のずれの方向は制限されない。そのため、本実施形態の標本観察装置では、陰影の発生方向が限定されない。
また、本実施形態の標本観察装置では、所定の透過部を有する開口部材を照明光学系に配置し、所定の透過部の透過率が、中心から周辺に向かって徐々に変化することが好ましい。更に、透過率は、中心から周辺に向かって徐々に小さくなることが好ましい。
図27(a)に示した開口部材301では、透過部301aの全ての場所で透過率が同じである。そのため、対物レンズ8から出射する光束の量は、図7に示すように、AからBまでの間で変化しない。このようなことから、所定の透過部を有する開口部材を照明光学系に配置することが好ましい。図30は、所定の透過部を有する開口部材を示す図である。
図30に示すように、開口部材330は、透過部330aと、遮光部330bと、を有する。ここで、透過部330aでは、透過率が、中心から周辺に向かって徐々に変化している。なお、透過率は、中心から周辺に向かって徐々に小さくなることが好ましい。
このようにすることで、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、コンデンサレンズの瞳の像のずれの変化に変換される。そして、コンデンサレンズの瞳の像のずれの変化によって、観察光学系に設けた透過部を通過する光束の量に変化が生じる。しかも、コンデンサレンズの瞳の像のずれが少しであっても、観察光学系に設けた透過部を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を、結像光の明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影像を得ることができる。
また、開口部材302の構造は、図27(b)に示した構造に限られない。例えば、以下の開口部材(I)〜(V)の構造を、開口部材302に持たせても良い。
(I) 開口部材5(図2(a))。
(II) 開口部材(図8)。
(III)開口部材50、51(図10)。
(IV) 開口部材230、240、250(図18)。
(V) 開口部材260(図19)。
(II)や(III)の開口部材の構造を開口部材302に持たせることで、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、コンデンサレンズの瞳の像のずれの変化に変換される。そして、コンデンサレンズの瞳の像のずれの変化によって、観察光学系に設けた透過部を通過する光束の量に変化が生じる。しかも、コンデンサレンズの瞳の像のずれが少しであっても、観察光学系に設けた透過部を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を、結像光の明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影像を得ることができる。
また、(IV)の開口部材の構造を開口部材302に持たせることで、無色透明な標本と染色された標本の両方を良好に観察することができる。
また、(V)の開口部材の構造を開口部材302に持たせることで、無色透明な標本において、陰影像とコントラストを有する標本像が得られる。また、陰影像を観察できない場合であっても、観察視野内にある無色透明な標本を観察することができる。また、無色透明な標本の輪郭を陰影像で観察し、無色透明な標本の内部をコヒーレント照明像で観察することができる。
また、本実施形態の標本観察装置では、遮光部又は減光部の面積は、コンデンサレンズの瞳の像の面積の50%以上であることが好ましい。
このようにすることで、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
なお、コンデンサレンズの瞳の像の50%範囲を遮光できない場合、透過部の内縁320bからコンデンサレンズの瞳の像の外縁までの間隔が広くなり過ぎる。この場合、透過部320のずれがある場合とずれがない場合とで、透過部320を通過する光束の量に差がつきにくくなくなる。そのため、標本における形状の変化を明暗の変化として検出することが困難になる。その結果、陰影のある標本像を得ることが困難になる。あるいは、標本像のコントラストが悪くなってしまう。
なお、遮光部321の面積は、コンデンサレンズの瞳の像の面積の70%以上が良い。更に、遮光部321の面積は、コンデンサレンズの瞳の像の面積の85%以上がなお良い。
また、本実施形態の標本観察装置は、以下の条件式(10)を満足することが好ましい。
R’0<Roc×β<R’1 (10)
ここで、
R’0は、観察光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R’1は、観察光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
Rocは、コンデンサレンズの瞳の半径、
βは、対物レンズの焦点距離をコンデンサレンズの焦点距離で割った値、
である。
条件式(10)を満足することで、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
また、本実施形態の標本観察装置では、透過部の位置において、コンデンサレンズの瞳像の中心は、透過部の中心と一致することが好ましい。
このようにすることで、陰影の発生方向が限定されない。
また、本実施形態の標本観察装置は、以下の条件式(11)を満足することが好ましい。
(Roc×β−R’0)/(R’1−Roc×β)<1 (11)
ここで、
R’0は、観察光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R’1は、観察光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
Rocは、コンデンサレンズの瞳の半径、
βは、対物レンズの焦点距離をコンデンサレンズの焦点距離で割った値、
である。
条件式(11)を満足することで、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
なお、(Roc×β−R’0)が大きくなりすぎると、条件式(11)を満足しなくなる。この場合、遮光部の大きさが小さくなりすぎる。そのため、図7(a)の矢印Aから矢印Bまでの間が長くなってしまう。この場合、標本における細やかな形状の変化(傾斜の変化)を、明暗の変化として検出することが難しくなる。
また、(R’1−Roc×β)が小さくなり過ぎると、条件式(11)を満足しなくなる。この場合、透過部の外縁から外縁像までの間隔が狭くなりすぎる。ずれ量Δ’が大きくなると、外縁像よりも内側に円環状の遮光部(例えば、図27(b)の遮光部302a2)が位置するようになる。そのため、対物レンズの瞳を通過する光束が少なくなる。その結果、標本像が暗くなる。なお、ずれ量Δ’は、コンデンサレンズの瞳の像の中心と開口部材の中心との差である。
また、本実施形態の標本観察装置は、以下の条件式(12)、(13)を満足することが好ましい。
0.7≦R’0/(Roc×β)<1 (12)
1<R’1/(Roc×β)≦2 (13)
ここで、
R’0は、観察光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R’1は、観察光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
Rocは、コンデンサレンズの瞳の半径、
βは、対物レンズの焦点距離をコンデンサレンズの焦点距離で割った値、
である。
条件式(12)の下限値を下回ると、透過部の内縁から外縁像までの間隔が広くなり過ぎる。この場合、ずれ量Δ’が0の場合と0でない場合とで、対物レンズの瞳を通過する光束の量に差がつきにくくなくなる。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することが困難になる。その結果、陰影のある標本像を得ることが困難になる。あるいは、標本像のコントラストが悪くなってしまう。
条件式(12)の上限値を上回ると、透過部が、常にコンデンサレンズの瞳の像の外側に位置する。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することができない。よって、条件式(12)の上限値を上回ることはない。
条件式(13)の下限値を下回ると、透過部が、コンデンサレンズの瞳の像の内側に位置する。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することが困難になる。よって、条件式(13)の下限値を下回ることはない。
条件式(13)の上限値を上回らないようにすることで、透過部よりも外側の部分を通過する光束を少なくできる。そのため、フレアやゴーストの発生を防止できる。
なお、条件式(12)に代えて、以下の条件式(12’)を満足すると良い。
0.8≦R’0/(Roc×β)<1 (12’)
さらに、条件式(12)に代えて、以下の条件式(12”)を満足するとなお良い。
0.9≦R’0/(Roc×β)<1 (12”)
なお、条件式(13)に代えて、以下の条件式(13’)を満足すると良い。
1<R’1/(Roc×β)≦1.5 (13’)
さらに、条件式(13)に代えて、以下の条件式(13”)を満足するとなお良い。
1<R’1/(Roc×β)≦1.3 (13”)
また、本実施形態の標本観察装置では、透過部における透過率は場所によって異なることが好ましい。
上述のように、透過部の全ての場所で透過率が同じ場合、ずれ量Δ’が変化しても光束の量Iが変化しない状態(図7、矢印Aから矢印Bまでの間)が生じる。そこで、透過部における透過率を場所によって異ならせることが好ましい。このようにすることで、ずれ量Δ’が変化しても光束の量Iが変化しない状態を、少なくすることができる。
透過部における透過率が場所によって異なる開口部材の構造は、図8や図10に示されている。これらの図における開口部材の構造を、開口部材302に持たせれば良い。
また、本実施形態の標本観察装置は、以下の条件式(14)を満足することが好ましい。
T’in<T’out (14)
ここで、
T’inは、透過部の内縁近傍における透過率、
T’outは、透過部の外側近傍における透過率、
である。
条件式(14)を満足することで、ずれ量Δ’が変化しても光束の量Iが変化しない状態を少なくすることができる。その結果、標本におけるより細やかな形状の変化(傾斜の変化)を、明暗の変化として検出することができる。
また、本実施形態の標本観察装置では、開口部材は不透明な部材で構成され、透過部は、不透明な部材に形成された複数の開口を有することが好ましい。
図17に示す開口部材220では、透過部が不透明な部材に形成された複数の開口を有する。この開口部材220の構造を、開口部材302に持たせれば良い。なお、この場合の開口部材302の技術的意義は、開口部材220の技術的意義と同様なので詳細な説明は省略する。
このように、本実施形態の標本観察装置によれば、透過部223を簡便に形成することができる。また、微小開口224の直径や密度を変えることで、様々な透過率を有する透過部223を得ることができる。また、透過率の変化の度合いを様々に変えることができる。
また、本実施形態の標本観察装置は、以下の条件式(15)を満足することが好ましい。
0.01<(S’T×T’T)/(S’ND×T’ND)<100 (15)
ここで、
S’NDは、減光部の面積、
T’NDは、減光部における透過率(%)、
S’Tは、コンデンサレンズの瞳を通過した光のうち、透過部を通過する光の領域の面積、
T’Tは、コンデンサレンズの瞳を通過した光のうち、透過部を通過する光の領域における透過率(%)、
である。
条件式(15)を満足することで、無色透明な標本と染色された標本の両方を良好に観察することができる。なお、透過率は平均透過率であって、どの場所でも透過率が同じ場合は任意の場所での透過率、場所によって透過率が異なる場合は、各場所の透過率の平均である。
条件式(15)の下限値を下回ると、透過部から出射する結像光の光量が相対的に少なくなるので、陰影像が暗くなりすぎる。あるいは、減光部から出射する結像光の光量が相対的に多くなるので、陰影像のコントラストが低下する。その結果、無色透明な標本の観察が困難になる。
条件式(15)の上限値を上回ると、減光部から出射する結像光の光量が相対的に少なくなるので、濃淡像が暗くなりすぎる。その結果、染色された標本の観察が困難になる。
なお、条件式(15)に代えて、以下の条件式(15’)を満足すると良い。
0.03<(S’T×T’T)/(S’ND×T’ND)<30 (15’)
さらに、条件式(15)に代えて、以下の条件式(15”)を満足するとなお良い。
0.1<(S’T×T’T)/(S’ND×T’ND)<10 (15”)
また、本実施形態の別の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサレンズと、を有し、観察光学系は、対物レンズと、開口部材と、結像レンズと、を有し、開口部材は、遮光部又は減光部と、第1の透過部と、第2の透過部と、を有し、開口部材は、第1の透過部が観察光学系の光軸を含むように形成され、遮光部又は減光部は、第1の透過部の外縁よりも外側に位置し、第2の透過部は、遮光部又は減光部の外縁よりも外側に位置し、第2の透過部の内縁と第2の透過部の外縁との間に、コンデンサレンズの瞳の外縁の像が形成されることを特徴とする。
図19に示す開口部材260では、第1の透過部が照明光学系の光軸を含むように形成されている。この開口部材260の構造を、開口部材302に持たせれば良い。なお、この場合の開口部材302の技術的意義は、開口部材260の技術的意義と同様なので詳細な説明は省略する。
このように、本実施形態の標本観察装置によれば、無色透明な標本において、陰影のある標本像とコントラストを有する標本像が得られる。また、陰影のある標本像を観察できない場合であっても、観察視野内にある無色透明な標本を観察することができる。また、無色透明な標本の輪郭を陰影のある標本像で観察し、無色透明な標本の内部をコヒーレント照明像で観察することができる。
また、本実施形態の標本観察装置は、以下の条件式(16)を満足することが好ましい。
0.01<(S’T2×T’T2)/(S’T1×T’T1)<100 (16)
ここで、
S’T1は、第1の透過部の面積、
T’T1は、第1の透過部における透過率(%)、
S’T2は、コンデンサレンズの瞳を通過した光のうち、第2の透過部を通過する光の領域の面積、
T’T2は、コンデンサレンズの瞳を通過した光のうち、第2の透過部を通過する光の領域における透過率(%)、
である。
条件式(16)を満足することで、無色透明な標本において、陰影のある標本像とコヒーレント照明像が得られる。なお、透過率は平均透過率であって、どの場所でも透過率が同じ場合は任意の場所での透過率、場所によって透過率が異なる場合は、各場所の透過率の平均である。
条件式(16)の下限値を下回ると、第2の透過部から出射する結像光の光量が相対的に少なくなるので、陰影像が暗くなりすぎる。あるいは、第1の透過部から出射する結像光の光量が相対的に多くなるので、陰影像のコントラストが低下する。その結果、無色透明な標本において、陰影のある標本像を得ることが困難になる。また、照明光のコヒーレンス度が低下するので、コヒーレント照明像においてコントラストが低下する。
条件式(16)の上限値を上回ると、第1の透過部から出射する結像光の光量が相対的に少なくなるので、コヒーレント照明像が暗くなりすぎる。その結果、無色透明な標本において、明るいコヒーレント照明像を得ることが困難になる。
なお、条件式(16)に代えて、以下の条件式(16’)を満足すると良い。
0.03<(S’T2×T’T2)/(S’T1×T’T1)<30 (16’)
さらに、条件式(16)に代えて、以下の条件式(16”)を満足するとなお良い。
0.1<(S’T2×T’T2)/(S’T1×T’T1)<10 (16”)
また、本実施形態の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサレンズと、照明側開口部材と、を有し、観察光学系は、対物レンズと、観察側開口部材と、結像レンズと、を有し、照明側開口部材は、帯状の透過部を複数有し、観察側開口部材は、帯状の透過部と同数の透過部を有し、透過部の外形と帯状の透過部の外形とは、相似形であって、帯状の透過部と透過部の各々は、対をなす帯状の透過部と透過部が、互いの中心が共役になるように配置され、透過部の外縁よりも内側に、帯状の透過部の内縁の像が形成され、透過部の外縁よりも外側に、帯状の透過部の外縁の像が形成されることを特徴とする。
図1に示した標本観察装置100では、照明光学系に1つの透過部を有する開口部材が配置されている。一方、観察光学系に開口部材は配置されていないが、対物レンズの瞳が開口部材の透過部の役割を果たしている。よって、観察光学系にも、1つの透過部を有す開口部材が配置されていることになる。このように、標本観察装置100では、照明光学系と観察光学系は、共に1つの透過部を有する。
これに対して、本実施形態の標本観察装置では、照明光学系と観察光学系の両方に、開口部材を配置している。ここで、照明光学系には照明側開口部材が配置され、観察光学系には観察側開口部材が配置されている。そして、照明側開口部材と観察側開口部材は、共に複数の透過部を有している。図31は、複数の透過部を有する開口部材を示す図であって、(a)は照明側開口部材を示す図、(b)は観察側開口部材を示す図である。
照明側開口部材340は、図31(a)に示すように、遮光部340a1と透過部340bとを有する。更に、開口部材340は遮光部340a2を有する。遮光部340a1、340a2及び透過部340bは透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。遮光部340a1と340a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部340bには何も塗布されていない。よって、透過部340bはガラス板そのものである。
遮光部340a1の形状は円である。一方、透過部340bの形状は帯状で、具体的には円環になっている。
照明側開口部材340では、遮光部340a1が複数形成されている。そのため、透過部340bも複数生成されている。具体的には、4つの透過部340bが形成されている。そして、4つの透過部340bは、2次元状に配置されている。照明側開口部材340は、標本観察装置100(図1)の開口部材5の位置に配置されている。
一方、観察側開口部材350は、図31(b)に示すように、遮光部350aと透過部350bとを有する。遮光部350aと透過部350bは透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。遮光部350aは、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部350bには何も塗布されていない。よって、透過部350bはガラス板そのものである。
ここで、透過部350bの外形は、透過部340bの外形と相似形になっている。具体的には、透過部340bの外形は円なので、透過部350bの外形も円になっている。
観察側開口部材350では、透過部350bが複数形成されている。具体的には、4つの透過部350bが形成されている。そして、4つの透過部350bは、2次元状に配置されている。観察側開口部材350は、標本観察装置100(図1)の対物レンズの瞳9の位置に配置されている。
また、1つの透過部340bと1つの透過部350bは、対をなしている。そして、1対の透過部340bと透過部350bとは、互いの中心が共役になるように配置されている。例えば、照明側開口部材340の右上の透過部340bと、観察側開口部材350の左下の透過部350bとが対をなしている。また、左下の透過部350bの位置に、右上の透過部340bの像が形成されたとき、左下の透過部350bの中心と右上の透過部340bの像とは一致する。
また、透過部350bの外縁よりも内側に、透過部340bの内縁の像が形成され、透過部350bの外縁よりも外側に、透過部340bの外縁の像が形成される。そのため、図3〜図7で説明した作用効果が、1対の透過部340bと透過部350bを用いた場合にも同様に生じる。
その結果、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、透過部の像のずれの変化に変換される。そして、透過部の像のずれの変化によって、対物レンズの瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
更に、本実施形態の標本観察装置では、対物レンズの瞳の周辺を通過する光だけでなく、対物レンズの瞳の中心を通過する光も結像に寄与することになる。そのため、より明るい陰影像を得ることができる。
例えば、図31(a)において、遮光部340a1の半径をra、透過領域の幅をΔb、透過領域の面積をSMとする。一方、図28(b)において、遮光部321半径を3×ra、透過領域の幅をΔb、透過領域の面積をSsとする。なお、透過領域は、透過部を通過する光束の領域であって、図28(b)では、透過部の内縁320bから外縁像309までの間の領域になる。
この場合、面積SMと面積SSは、それぞれ以下のようになるので、SM>SSになる。
SM=4×π×{(ra+Δb)2−ra 2}=8πraΔb−4πΔb
SS=π{(3×ra+Δb)2−(3×ra)2}=6πraΔb−πΔb
このように、開口部材における透過部を複数設けることで、透過部が1つの場合に比べて、透過部を通過する結像光の光量を増やすことができる。そのため、より明るい陰影像を得ることができる。
また、本実施形態の標本観察装置は、照明光学系と、観察光学系と、を備え、照明光学系は、光源と、コンデンサレンズと、開口部材と、を有し、観察光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を有し、開口部材は、遮光部と、透過部と、を有し、開口部材は、遮光部が照明光学系の光軸を含むように配置され、遮光部は、所定の波長域の光を遮光する特性を有し、透過部は、遮光部の外縁よりも外側に位置し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成され、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成されることを特徴とする。
図2に示した開口部材5,5’では、光源から出射した光は、遮光部5a1や5’a1で遮光される。ここで、遮光部5a1や5’a1は、全ての波長の光を遮光する。そのため、開口部材5,5’を用いた場合は、陰影像のみが得られる。
これに対して、本実施形態の標本観察装置では、照明光学系に配置した開口部材の遮光部は、所定の波長域の光を遮光する特性を有する。図32は、所定の波長域の光を遮光する特性を有する開口部材を示す図である。
開口部材360は、図32に示すように、遮光部360a1と透過部360bとを有する。更に、開口部材360は遮光部360a2を有する。遮光部360a1、360a2及び透過部360bは透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。遮光部360a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部360bには何も塗布されていない。よって、透過部360bはガラス板そのものである。開口部材360は、遮光部360a1が照明光学系の光軸を含むように配置されている。
一方、遮光部360a1は、所定の波長域の光を遮光する特性を有する。そのために、遮光部360a1には、例えば、光学多層膜が形成されている。この光学多層膜は、例えば、緑色の波長域の光を透過し、それ以外の波長の光を反射する。
この開口部材360を、標本観察装置100(図1)の開口部材5の位置に配置する。そして、照明光として、例えば、赤色の波長域の光を開口部材360に入射させる。この場合、赤色の光は透過部360bを透過するが、遮光部360a1では反射される。その結果、円環状になった赤色の光が、コンデンサレンズ4から出射する。
コンデンサレンズ4から出射した赤色の光は、対物レンズの瞳9に到達し、ここに、透過部360bの像を形成する。ここで、対物レンズの瞳9の外縁よりも内側に、透過部360bの内縁の像が形成され、対物レンズの瞳9の外縁よりも外側に、透過部360bの外縁の像が形成される。そのため、図3〜図7で説明した作用効果が、開口部材360を用いた場合にも同様に生じる。
その結果、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、透過部の像のずれの変化に変換される。そして、透過部の像のずれの変化によって、対物レンズの瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
一方、照明光として、例えば、緑色の波長域の光を開口部材360に入射させる。この場合、緑色の光は透過部360bと遮光部360a1の両方を透過する。その結果、円形の緑色の光が、コンデンサレンズ4から出射する。コンデンサレンズ4から出射した緑色の光の形状は、明視野観察時の照明光の形状と同じになる。よって、緑色の波長域の光を用いた場合は、明視野観察が行える。
なお、所定の波長域の光を照明光として得るには、所定の波長域の光を透過する光学フィルタを白色光源とコンデンサレンズの間に配置すれば良い。また、発光波長域が異なるLEDを複数配置し、このうちの1つのLEDを、所定の波長域の光を発光するLEDにすれば良い。
このように、本実施形態の標本観察装置によれば、照明光の波長を変えることで、陰影像による観察と明視野像による観察とが行える。
また、本実施形態の標本観察装置は、光源と、光学系と、物体を保持する保持部材と、を有し、光学系は、第1の光学系と、第2の光学系と、を有し、第1の光学系と第2の光学系は、保持部材を挟んで対向して配置され、第1の光学系は開口部材を有し、開口部材の透過部の像が、第2の光学系の瞳位置に形成されるように、光学系は構成され、透過部の像は、物体で生じた屈折によって、第2の光学系の瞳に対して偏心し、偏心によって、第2の光学系の瞳を通過する光量が増加することを特徴とする。
第1の光学系を照明光学系とし、第2の光学系を観察光学系とした場合、本実施形態の標本観察装置の構成は、図1に示す標本観察装置100の構成になる。一方、第1の光学系を観察光学系とし、第2の光学系を照明光学系とした場合、本実施形態の標本観察装置の構成は、図26に示す標本観察装置300の構成になる。
標本観察装置100では、図4(b)に示すように、開口部材の透過部20の像が、対物レンズの瞳9の位置に形成される。そして、透過部20の像は、標本で生じた屈折によって、対物レンズの瞳9に対して偏心する。その結果、図7(a)に示すように、偏心した量、すなわち、ずれ量Δに応じて対物レンズを通過する光量が増加する。
次に、標本観察装置300では、図29(b)に示すように、コンデンサレンズの瞳の像が、開口部材の透過部320の位置に形成される。そして、コンデンサレンズの瞳の像は、標本で生じた屈折によって、透過部320に対して偏心する。
ここで、上述のように、透過部320とコンデンサレンズの瞳とは、光学的に共役な関係になっている。そのため、透過部320の像が、コンデンサレンズの瞳に対して偏心するということもできる。その結果、図7(a)に示すように、偏心した量、すなわち、ずれ量Δに応じて対物レンズを通過する光量が増加する。
以上のように、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、透過部の像のずれの変化に変換される。そして、透過部の像のずれの変化によって、対物レンズの瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
また、陰影の発生方向は、透過部の像と光学系の瞳とのずれの方向で決まるが、透過部の像のずれの方向は制限されない。そのため、本実施形態の標本観察装置では、陰影の発生方向が限定されない。
また、本実施形態の標本観察装置では、透過部の像と第2の光学系の瞳とが、共に回転対称な形状であることが好ましい。
このようにすることで、第2の光学系の瞳と開口部材の位置とのずれの許容量を大きくすることができる。第2の光学系の瞳に対する開口部材の位置合わせが容易になる。なお、回転対称となる軸は、例えば、照明光学系の光軸や観察光学系の光軸である。
上述のように、本実施形態の標本観察装置は、画像処理装置を備えることが好ましい。図33は、画像処理装置を備えた標本観察装置の構成を示す図である。
標本観察装置400は、本体部410と、照明光学系420と、観察光学系430と、撮像装置440と、画像処理装置450と、を備える。
本体部410は、光源411と、ステージ412と、レボルバ413と、を備える。照明光学系420は、各種の光学フィルタ421と、視野絞り422と、ミラー423と、レンズ424と、開口部材425と、コンデンサレンズ426と、を備える。観察光学系430は、対物レンズ431と、結像レンズ433と、接眼レンズ434と、を備える。また、対物レンズ431の近傍には、対物レンズの瞳432が位置している。
本体部410には、光源411が接続されている。光源411を出射した照明光は、照明光学系420に入射してコンデンサレンズ426に到達する。ここで、開口部材425は、コンデンサレンズ426の瞳位置に配置されている。また、開口部材425には、例えば、図2(a)に示した開口部材5が用いられている。
コンデンサレンズ426の上方には、ステージ412が配置されている。また、ステージ412上に標本460が載置されている。更に、ステージ412の上方にはレボルバ413が位置し、レボルバ413に対物レンズ431が保持されている。
コンデンサレンズ426から出射した照明光は、標本460に照射される。標本460からの光は、対物レンズ431に入射する。ここで、対物レンズの瞳432と開口部材425は共役な関係になっている。よって、対物レンズの瞳432の位置に、開口部材425の像が形成される。
ここで、標本観察装置400では、対物レンズ431の瞳の外縁よりも内側に、開口部材425の透過部の内縁の像が形成され、対物レンズ431の瞳の外縁よりも外側に、開口部材425透過部の外縁の像が形成されるようになっている。
そのため、標本460における形状の変化(傾斜の変化)に応じて、対物レンズ431を出射する結像光の光量が変化する。これにより、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
対物レンズ431を出射した結像光は、結像レンズ433によって集光され、集光位置に標本460の像が形成される。標本観察装置400では、結像レンズ433に続いてプリズムが配置されている。このプリズムによって、結像光の一部は接眼レンズ434側に反射される。その結果、接眼レンズ434の近傍に、標本の光学像435が形成される。なお、接眼レンズ434による観察を行わない場合は、プリズムを光路外に移動させても良い。
一方、プリズムを通過した結像光は、撮像装置440に入射する。撮像装置440は撮像素子441を備えている。結像レンズ433によって、撮像素子441上に標本460の光学像が形成され、これにより標本460の光学像の撮像が行われる。このようにして、陰影のある標本画像が得られる。なお、結像レンズ433と撮像素子441との間に、光学系を配置しても良い。この場合、結像レンズ433とこの光学系によって、撮像素子441上に標本460の光学像が形成される。
また、撮像装置440には、カメラコントローラ442と、ビデオボード443と、が接続されている。また、カメラコントローラ442とビデオボード443は、共に画像処理装置450に接続されている。
撮像の制御は、カメラコントローラ442によって行われる。また、カメラコントローラ442の制御は、画像処理装置450によって行われる。なお、カメラコントローラ442の制御を、他の機器、例えばコンピュータによって行っても良い。また、撮像装置440から出力された画像信号は、ビデオボード443を介して画像処理装置450に入力される。画像処理装置450では、様々な電気的な処理が行われる。処理結果は、表示装置451に表示される。
標本観察装置が画像処理装置を備えることで、様々な画像処理を行うことができる。画像処理の例を次に説明する。
また、本実施形態の標本観察装置は、観察光学系側に配置された撮像装置を有し、画像処理装置は、領域分離部と、解析部と、を有し、領域分離部は、撮像装置により取得した画像の全領域を、所定の条件に合致する特定領域と、特定領域以外の非特定領域と、に分離し、解析部は、特定領域の画像を解析して、特定領域に関する情報を取得することが好ましい。
本実施形態の標本観察装置は領域分離部を有し、領域分離部は、撮像装置により取得した画像の全領域を、所定の条件に合致する特定領域と、特定領域以外の非特定領域と、に分離する。そこで、コロニーの存在の有無を所定の条件とした場合について説明する。
この場合、特定の領域はコロニーが存在する領域(以下、適宜、コロニー領域とする)になり、非特定領域はコロニー領域以外の領域(以下、適宜、背景領域とする)になる。よって、領域分離部は、取得した画像の全領域を、コロニー領域と背景領域とに分離する。
コロニー領域の分離方法については、様々な方法がある。以下、最もシンプルな分離方法について説明する。撮像装置により取得した画像の全領域には、コロニー領域と背景領域とが存在する。一般に、コロニー領域には、背景領域に比べて、様々な形状を持つ構造が存在する。そのため、形状の変化の周期はコロニー領域では短く、背景領域では長い。また、形状の変化の変化量はコロニー領域では大きく、背景領域では小さい。
そのため、標本における形状の変化を明るさの変化として検出した画像では、濃淡あるいは明暗の周期(以下、適宜、輝度変化の周期とする)はコロニー領域では短く、背景領域では長い。すなわち、輝度変化の周期が短い領域の多くがコロニー領域に存在し、輝度変化の周期が短い領域の多くが背景領域に存在する。一方、輝度変化の大きさは、検出方法によって異なる。
そこで、輝度変化の大きさや周期の違いに着目し、例えば、以下の手順1〜3を用いてコロニー領域を検出することができる。図34は本実施形態の標本観察装置で得られた標本の電子画像であって、(a)は原画像、(b)はエッジ検出フィルタを適用した後の画像である。また、図35は本実施形態の標本観察装置で得られた標本の電子画像であって、(a)は2値化処理を行った後の画像、(b)はモフォロジー処理を行った後の画像である。
ここで、原画像は撮像装置により取得した画像であって、画像処理等が実施されていない画像である。図34(a)に示す原画像では、比較的大きなコロニーが画像の中央に3つ存在し、その周囲に4つ存在している。
手順1では、原画像に対してエッジ検出フィルタを適用する。エッジ検出フィルタによって、設定された閾値よりも大きい輝度変化が生じている画素のみが抽出される。その結果、図34(a)に示す原画像は、図34(b)に示すように、エッジが強調された画像(以下、適宜、エッジ検出画像とする)になる。
図34(b)に示すエッジ検出画像では、中央に存在するコロニーが、白い線で囲まれている様子が分かる。また、3つの領域の周囲に存在する4つのコロニーについても、白い線で囲まれている様子が分かる。
なお、エッジ強度は輝度値の勾配であって、これは、隣り合う2つの画素における輝度値の差の大きさを表す。輝度値の差が大きいほど、輝度の変動が大きくなる。そこで、輝度の変動に関して閾値を設けることで、輝度の変動が大きい領域と、画素と輝度の変動の小さい領域と、を区別することができる。エッジ強度の大小の区別は、公知のエッジ検出フィルタを用いれば良い。公知のエッジ検出フィルタとしては、例えば、Sobelフィルタ、Prewittフィルタ、Laplacianフィルタ等がある。
手順2では、エッジ検出画像に対して2値化処理を行う。2値化処理においても、閾値が設定されている。2値化処理では、閾値よりも大きい輝度の画素に、最大輝度の値が設定される。通常、最大輝度の値が設定された画素は、画像上では白で表示される。一方、閾値よりも小さい輝度の画素には、最小輝度の値が設定される。最大輝度の値が設定された画素は、画像上では黒で表示される。その結果、図34(b)に示すエッジ検出画像は、図35(a)に示すように、白黒で表された画像(以下、2値化画像とする)になる。
図35(a)に示す2値化画像では、7つのコロニーの全てにおいて、白い線で囲まれている領域の内部も、エッジ検出画像よりも広い範囲が白で表されている。よって、エッジ検出画像と比べると、2値化画像ではコロニー領域がより明確に分かる。
2値化処理を行った画像では、特定領域と非特定領域の一方が白色で表示され、他方が黒色で表示されていることが好ましい。しかしながら、図35(a)に示す2値化画像では、本来、白色で表示されるコロニー領域に、黒色の領域が存在している。また、本来、黒色で表示される背景領域に、白色の領域が存在している。
コロニー領域内における黒色の領域は、例えば、コロニー領域内での輝度変化が局所的に緩やかであった領域である。また、背景領域における白の領域は、例えば、小さなゴミにより輝度の変動が大きくなった領域である。
そこで、手順3では、2値化画像に対してモフォロジー処理を行う。モフォロジー処理では、領域の膨張処理、収縮処理、膨張と収縮を組み合わせた処理(オープニング、クロージング処理)を複数回行う。膨張処理では、2値化した白黒画像内の図形を、1画素分膨らませる処理が行われる。収縮処理では、2値化した白黒画像内の図形を、1画素分縮める処理が行われる。
2値化画像に対して、この処理を行うことで、コロニー領域における黒領域の穴埋めや、背景領域における白領域の削除を行うことができる。その結果、図35(a)に示す2値化画像は、図35(b)に示すように、コロニー領域と背景領域とが明確に分離された画像(以下、適宜、領域分離画像とする)になる。
図35(b)に示す領域分離画像では、7つのコロニーの全てにおいて、コロニー領域全体が白で表されている。また、7つのコロニー領域以外の小さなコロニー領域も、全体が白で表されている。また、背景領域は黒で表されている。よって、2値化画像に比べると、コロニー領域の形状がより正確に整えられると共に、コロニー領域と背景領域とを明確に分離されている。
領域分離部による処理が終わると、その処理結果を用いて、解析部による処理が行われる。解析部では、特定領域の画像の解析と特定領域に関する情報の取得とが行われる。特定領域に関する情報としては、コロニー領域の数や、画像全体の領域に対するコロニー領域の占有率、例えば面積占有率がある。
本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても陰影像を得ることができるが、陰影像は、位相差観察でも得ることができる。
図36は位相差観察で得られた標本の電子画像であって、(a)は原画像、(b)はエッジ検出フィルタを適用した後の画像である。図36(a)における標本の画像と図34(a)における標本の画像は、同じ場所における画像である。
図34(a)における陰影像と図36(a)における位相差像とでは、共にコロニーの間に長細い組織が多数存在している。ここで、長細い組織と背景とのコントラストについ陰影像と位相差像とを比較すると、長細い組織と背景とのコントラストは、陰影像に比べて位相差像の方が大きい。
そのため、エッジ検出画像を比べると、図34(b)と図36(b)に示すように、背景領域における白い線の数は、陰影像に比べて位相差像の方が圧倒的に多い。このように、位相差像では背景領域における白い線の数が多いことから、背景領域の特定が陰影像に比べて困難になり易い。その結果、位相差像では、2値化処理やモフォロジー処理において、処理回数の増加や処理の複雑化が予想される。
このように、本実施形態の標本観察装置で取得した標本の電子画像は、位相差観察で得られた標本の電子画像に比べて、背景領域内でのコントラスト変化が小さいという特徴を有する。そのため、特定領域と非特定領域の分離を容易に行うことができる。
また、本実施形態の標本観察装置では、所定の時間間隔で画像の取得を行い、複数の画像から、特定領域に関する情報の径時的変化を取得することが好ましい。
例えば、一定の時間間隔で画像の取得を行う。このようにして取得した画像は、時系列画像(タイムラプス画像)と呼ばれる。時系列画像を解析することで、例えば、コロニーに関する情報の径時的変化を得ることができる。
また、本実施形態の開口部材は、対物レンズを備える標本観察装置の照明光学系に配置可能な開口部材であって、開口部材は、減光部と、透過部と、を有し、透過部は、減光部の外縁よりも外側に位置し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成されるように、かつ、対物レンズの瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成されるように、透過部が形成されたことを特徴とする。
このような開口部材を用いることで、無色透明な標本と染色された標本の両方を良好に観察することができる。
また、本実施形態の開口部材では、対物レンズを備える標本観察装置の照明光学系に配置可能な開口部材であって、開口部材には、照明光学系の光軸を含むように形成された透過部が形成され、透過部の外縁よりも外側に位置する遮光部を備え、遮光部は外縁を有し、対物レンズの瞳の外縁よりも内側に遮光部の外縁の像が形成されるように、遮光部の外縁が形成されることが好ましい。
また、本実施形態の標本観察装置は、光源と、光学系と、物体を保持する保持部材と、を有し、光学系は、第1の光学系と、第2の光学系と、を有し、第1の光学系と第2の光学系は、保持部材を挟んで対向して配置され、第1の光学系は光学部材を有し、光学部材は、所定の照明光を形成し、所定の照明光の像が、第2の光学系の瞳位置に形成されるように、光学系は構成され、所定の照明光の像は、物体で生じた屈折によって、第2の光学系の瞳に対して偏心し、偏心によって、第2の光学系の瞳を通過する光量が増加することを特徴とする。
上述のように、開口部材5、5’を照明光学系の光路に配置すると、開口部材5、5’から円環状の照明光が出射する。この時、出射した照明光は、照明光の一部の領域が遮光された状態になっている。所定の照明光とは、このような状態の照明光である。よって、所定の照明光では、照明光の一部の領域が遮光された状態になっている。所定の照明光は、以下のようにして得ても良い。
図37は、照明光の一部の領域が遮光された状態を説明するための図であって、(a)はアキシコンプリズムの図、(b)はアキシコンプリズムの配置例を示す図、(c)は照明光の集光状態を示す図である。
アキシコンプリズム532は光学部材であって、図37(a)に示すように、二つの光学面を有する。一方の光学面は円錐面532aで、他方の光学面は平面532bである。平面532bは、円錐面532aに対向している。また、平面532bは、その光学面が円錐の中心軸に対して垂直になるように設けられている。
図37(b)に示すように、アキシコンプリズム532は、照明光学系520の光路中に配置されている。具体的には、アキシコンプリズム532は、レンズ524とレンズ525との間に配置されている。光源533から出射した照明光は、レンズ524で平行光に変換され、アキシコンプリズム532に入射する。平面532bに対して垂直に入射した平行光は、円錐面532aで光軸方向に屈折される。
円錐面532aから出射した照明光は、アキシコンプリズム532からある程度離れた位置で光軸と交差する。光軸と交差した後は、照明光は光軸から離れるように進む。その結果、レンズ525には、円環状の照明光が入射する。円環状の照明光はレンズ525によって、例えば瞳位置Pconに集光される。
瞳位置Pconに集光した照明光は、コンデンサレンズ23に入射する。ここで、瞳位置Pconはコンデンサレンズ23の焦点位置と一致している。よって、照明光は平行光となって、コンデンサレンズ23から出射する。この平行光によって、対物レンズの焦点位置528にある標本が照明される。
図37(b)に示すように、瞳位置Pconでは、円環状の照明光は光軸から離れた位置に集光するが、光軸の近傍には集光しない。この場合、図37(c)に示すように、観察光学系の光軸と直交する面内では、照明光全体の領域534は、領域534aと領域534bとに分かれる。そして、コンデンサレンズの瞳の外縁535よりも内側に、領域534aが形成されている。領域534aでは照明光は集光していない。よって、領域534aは遮光領域になる。このように、アキシコンプリズム532を用いることで、照明光の一部の領域が遮光される。一方、円環状の照明光は、コンデンサレンズの瞳の外縁535の内側と外側に集光する。領域534bは、照明光を透過する領域である。
なお、アキシコンプリズム532を用いた場合、光源から出射した光は全て屈折されるので、照明光は物理的に遮光されていない。しかしながら、コンデンサレンズの瞳全体を照明光が透過している状態を基準にすると、図37(c)に示すように、コンデンサレンズの瞳の中心部に照明光が存在しない領域534aが形成される。よって、アキシコンプリズム532を用いた場合においても、照明光の一部の領域が遮光されている、と言うことができる。
なお、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形例をとることができる。例えば、図1と図12、図21、図22、図26及び図33では、正立型顕微鏡を用いて本発明の標本観察装置を説明した。しかしながら、本発明の標本観察装置は倒立型顕微鏡であっても良い。すなわち、本発明は倒立型顕微鏡にも適用できる。