以下に、本発明に係る標本観察装置の実施形態及び実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。
本実施形態の標本観察装置は、光源ユニットと、照明光学系と、観察光学系と、光検出素子と、走査ユニットと、保持部材と、画像処理装置と、を備え、光源ユニットから出射された光は、照明光学系に入射し、照明光学系によって、光スポットが形成され、光スポットが形成された位置から、観察光学系に光が入射し、観察光学系から出射された光は、光検出素子で受光され、走査ユニットは、光スポットと保持部材とを相対的に移動させ、光検出素子は、2次元アレイ状に配置された複数の光電変換素子を有し、照明光学系の瞳位置と共役な位置に、観察光学系の瞳と光検出素子とが位置し、画像処理装置は、所定の画像とフィルタとに基づいて、標本の画像を生成し、所定の画像は、保持部材に標本が載置されているときに、光検出素子から出力された信号に基づく画像であり、フィルタは、第1領域と、第2領域と、を有し、第1領域における値は、第2領域における値よりも大きいことを特徴とする。
本実施形態の標本観察装置の具体的な構成は、後述する。本実施形態の標本観察装置では、様々な観察方法による画像を生成できる。画像の生成では、光検出素子から出力された信号を利用する。
光検出素子から出力される信号は、標本から観察光学系に入射した光を光検出素子で受光することで得られる。そこで、標本に照射される照明光と、標本から観察光学系に入射する光(以下、「結像光」という)について説明する。
第1の状態における照明光と結像光の関係について説明する。図1は、第1の状態における照明光の様子と結像光の様子を示す図である。第1の状態では、標本の表面が平坦で、標本の表面の法線(以下、「面の法線」という)が光軸と平行になっている。
図1に示すように、照明光学系1と観察光学系2は、両者がステージ3を挟んで対向するように配置されている。照明光学系1は、遮光部材4とコンデンサレンズ5とを有する。観察光学系2は対物レンズ6を有する。対物レンズ6は絞り7を有する。
遮光部材4には、例えば、矩形状の金属板が用いられる。遮光部材4は、遮光領域4aと透過領域4bとで構成されている。遮光領域4aは金属板で形成されている。透過領域4bには何も存在しない。
透過領域4bは、遮光部材4の中央部に形成されている。遮光部材4は、中央部が光軸10を含むように配置されている。よって、遮光領域4aには光軸10は含まれていないが、透過領域4bには光軸10が含まれている。
遮光部材4が光路中に配置されることで、照明光LIL1は、遮光領域4aで遮光される光と透過領域4bを通過する光とに分かれる。照明光LIL1では、光軸と直交する面内において光強度の分布が均一になっているものとする。
遮光部材4に、透明板が用いられても良い。この場合、例えば、遮光塗料の塗布や、遮光部材の貼付によって、遮光領域4aが形成される。一方、透過領域4bには、遮光塗料の塗布や遮光部材の貼付は行わない。よって、透過領域4bには、透明板のみが存在することになる。
絞り7は、遮光部7aと透過部7bとを有する。絞り7には、例えば、円形の金属板や透明板が用いられる。絞り7に金属板が用いられた場合、遮光部7aは金属板で、透過部7bは金属板に形成された孔である。絞り7に透明板が用いられた場合、遮光塗料の塗布や、遮光部材の貼付によって、遮光部7aが形成される。透過部7bには透明板のみが存在する。
絞り7は、対物レンズ6の瞳と光学的に等価である。よって、絞り7の位置に、光束の通過を制限する部材、例えば、上述の金属板や透明板が存在していなくても良い。
ステージ3の上には、標本8が載置されている。標本8と対物レンズ6との間は、液浸媒質9(以下「浸液9」という)で満たされている。ここでは、標本8は屈折率がnの液体、浸液9は屈折率がn’の液体としている。また、n>n’である。
照明光LIL1は平行な光束であって、光束中に光軸10が含まれるように形成されている。照明光LIL1は、照明光学系1の光路を標本8に向かって進行する。照明光学系1の光路中には、遮光部材4とコンデンサレンズ5が配置されている。
照明光LIL1は、遮光領域4aで遮光される光と透過領域4bを通過する光とに分かれる。遮光部材4は、透過領域4bが光軸10を含むように配置されている。そのため、遮光領域4aには光軸10は含まれていない。透過領域4bを通過したとき、照明光LIL2の領域の形状は円形になる。
遮光部材4の位置は、コンデンサレンズ5と対物レンズ6によって、絞り7の位置と共役になっている。
透過領域4bを通過した照明光LIL2は、コンデンサレンズ5に入射する。コンデンサレンズ5に入射した照明光LIL2は、コンデンサレンズ5で集光される。コンデンサレンズ5からは、照明光LIL3が出射する。照明光LIL3は、標本8上の観察点11に入射する。これにより、観察点11が照明される。
照明光LIL3は、標本8を透過する。上述のように、第1の状態では、面の法線が光軸と平行になっている。面の法線が光軸と平行な状態では、標本の表面は傾斜していない。標本の表面が傾斜していない場合、照明光LIL3のうちで光軸10上を進む光線(以下「中心光線LILC」という)は、標本8の表面で屈折されない。
標本8から出射した光(以下、「結像光LIM1」という)は、対物レンズ6に到達する。対物レンズ6に到達した結像光LIM1は、全て対物レンズ6に入射する。対物レンズ6に入射した結像光LIM1は、遮光部7aで遮られることなく、絞り7を通過する。
図2は、第1の状態における結像光の様子を示す図である。図2に示すように、結像光LIM1の面積は、透過部7bの面積よりも小さくなっている。結像光LIM1は透過部7bの内側に位置している。
また、第1の状態では、標本8の表面が傾斜していない。この場合、中心光線LILCは標本8の表面で屈折されない。そのため、結像光LIM1のうちで中心光線LILCに対応する光線(以下、「中心光線LIMC」という)も、光軸10上を進む。中心光線LIMCを結像光LIM1の中心とみなすと、第1の状態では、結像光LIM1の中心は光軸10と一致する。
図2は、結像光LIM1を撮影したときの様子を示している。結像光LIM1の撮影では、例えば、絞り7の位置に光検出素子が配置される。光検出素子は、絞り7の位置と共役な位置に配置されていても良い。
絞り7は、対物レンズ6の瞳と光学的に等価である。よって、光検出素子は、対物レンズ6の瞳位置に配置されていることになる。更に、遮光部材4の位置は、コンデンサレンズ5と対物レンズ6によって、絞り7の位置と共役になっている。よって、光検出素子は、コンデンサレンズ5の瞳位置と共役な位置に配置されている。
光検出素子は、複数の光電変換素子を有する。複数の光電変換素子は、2次元アレイ状に配置されている。光検出素子としては、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが用いられる。
図2における四角の枠は、撮影領域を示している。図2では、撮影領域は正方形であるが、正方形に限られない。例えば、撮影領域は長方形でも良い。また、図2では、透過部7bの外縁は、撮影領域に内接している。しかしながら、透過部7bの外縁は、撮影領域と交差していても、撮影領域の外側に位置していても良い。
結像光の撮影では、結像光よりも広い範囲が撮影される。よって、撮影で得られた画像には、結像光の画像(以下、「画像ILight」という)と、結像光以外の画像(以下、「画像IOut」という)が含まれている。結像光の周りには、光は存在しない。よって、画像IOutの明るさは、画像ILightの明るさに比べて暗くなる。しかしながら、図2では、見易さのために、結像光LIM1の方を暗く描いている。
次に、第2の状態における照明光と結像光の関係について説明する。図3は、第2の状態における照明光の様子と結像光の様子を示す図である。第2の状態では、標本の表面は平坦であるが、面の法線が光軸と非平行になっている。
図3に示すように、面の法線12と光軸10とのなす角はθsであるので、標本8の表面は傾斜角θsで傾斜していることになる。角度の正負は、光軸10を基準にして、反時計周りの方向に面の法線12が位置する場合を正、時計周りの方向に面の法線12が位置する場合を負とする。第2の状態では、θsは正の値である。
第2の状態でも、第1の状態と同様に照明が行われる。照明光LIL3は標本8上の観察点11に入射する。これにより、観察点11が照明される。
照明光LIL3は、標本8を透過する。上述のように、第2の状態では、面の法線が光軸と非平行になっている。面の法線が光軸と非平行な状態では、標本の表面が傾斜している。標本の表面が傾斜している場合、中心光線LILCは、標本8の表面で屈折される。
標本8から出射した結像光LIM1は、対物レンズ6に到達する。対物レンズ6に到達した結像光LIM1は、全て対物レンズ6に入射する。対物レンズ6に入射した結像光LIM1は、遮光部7aで遮られることなく、絞り7を通過する。
図4は、第2の状態における結像光の様子を示す図である。図4に示すように、結像光LIM1の面積は、透過部7bの面積よりも小さくなっている。結像光LIM1は透過部7bの内側に位置している。
また、第2の状態では、標本8の表面が傾斜角+θsで傾斜している。この場合、中心光線LILCは、標本8の表面で屈折される。そのため、中心光線LIMCは、光軸10から離れる方向に進む。その結果、第2の状態では、結像光LIM1の中心は光軸10と一致しない。
図2と図4との比較から分かるように、第2の状態における結像光LIM1の中心は、第1の状態における結像光LIM1の中心よりも、光軸10から離れる方向にシフトしている。また、第2の状態では、シフトする方向は、紙面内の右方向になっている。
次に、第3の状態における照明光と結像光の関係について説明する。図5は、第3の状態における照明光の様子と結像光の様子を示す図である。第3の状態では、標本の表面は平坦であるが、面の法線が光軸と非平行になっている。
図5に示すように、面の法線12と光軸10とのなす角はθsであるので、標本8の表面は傾斜角θsで傾斜している面のことになる。ただし、第2の状態とは異なり、第3の状態ではθsは負の値になっている。
第3の状態でも、第1の状態と同様に照明が行われる。照明光LIL3は標本8上の観察点11に入射する。これにより、観察点11が照明される。
照明光LIL3は、標本8を透過する。上述のように、第3の状態では、面の法線が光軸と非平行になっている。面の法線が光軸と非平行な状態では、標本の表面が傾斜している。標本の表面が傾斜している場合、中心光線LILCは、標本8の表面で屈折される。
標本8から出射した結像光LIM1は、対物レンズ6に到達する。対物レンズ6に到達した結像光LIM1は、全て対物レンズ6に入射する。対物レンズ6に入射した結像光LIM1は、遮光部7aで遮られることなく、絞り7を通過する。
図6は、第3の状態における結像光の様子を示す図である。図6に示すように、結像光LIM1の面積は、透過部7bの面積よりも小さくなっている。結像光LIM1は透過部7bの内側に位置している。
また、第3の状態では、標本8の表面が傾斜角−θsで傾斜している。この場合、中心光線LILCは、標本8の表面で屈折される。そのため、中心光線LIMCは、光軸10から離れる方向に進む。その結果、第3の状態では、結像光LIM1の中心は光軸10と一致しない。
図2と図6との比較から分かるように、第3の状態における結像光LIM1の中心は、第1の状態における結像光LIM1の中心よりも、光軸10から離れる方向にシフトしている。また、第3の状態では、シフトする方向は、紙面内の左方向になっている。
第1の状態、第2の状態及び第3の状態のいずれにおいても、観察光学系2から出射する際、結像光LIM1は平行光束になっている。そして、第2の状態と第3の状態では、結像光LIM1は、光軸10から離れる方向に平行移動する。
上述のように、結像光を光検出素子で撮影することで、画像ILightが得られる。結像光の撮影には、保持部材に標本が載置されているときに行う撮影と、保持部材に標本が載置されていないときに行う撮影と、がある。
保持部材に標本が載置されているときに行う撮影では、所定の画像が得られる。所定の画像は、保持部材に標本が載置されているときに、光検出素子から出力された信号に基づく画像である。
結像光の撮影では、結像光よりも広い範囲が撮影される。よって、所定の画像には、画像ILightと画像IOutとが含まれている。
画像ILightと画像IOutは、各々、複数の画素で形成されている。各画素は、結像光の明るさに応じた値を有している。画像ILightにおいて各画素の値を足し合わせたときの合計値(以下、「合計値Isum」という)は、結像光の明るさを表していると言える。所定の画像は、保持部材に標本が載置されているときに得た画像である。よって、合計値Isumは、標本上の一点の情報を表していると言える。
ただし、第1の状態、第2の状態及び第3の状態では、標本上の一点しか照明されていない。そのため、標本8全体の情報を得られない。
図1に示すように、照明光LIL3は、観察点11に集光される。観察点11には、照明光学系1によって、光スポットが形成される。標本8は、ステージ3上に載置されている。ステージ3は、保持部材である。
観察点11には、標本8が位置している。そこで、走査ユニットで、光スポットと保持部材とを相対的に移動させる。このようにすると、観察点11と標本8とを、相対的に移動させることができる。その結果、標本8全体の情報が得られる。走査ユニットについては、後述する。
図7Aは、相対移動の例を示す図である。この例では、光スポット13を固定した状態で、ステージ3を移動させている。これにより、標本8全体の情報が得られる。
図7Bは、結像光の様子を示す図である。図7Bには、位置Paでの結像光の様子、位置Pbでの結像光の様子、及び位置Pcでの結像光の様子が示されている。この結像光は、光スポット13で標本8を照明したときに、標本8から出射した光である。
図7Bから分かるように、標本8の表面の傾斜に応じて、撮影領域における結像光の位置が変化する。この位置の変化を利用して、様々な観察方法による画像を生成できる。
画像の生成について説明する。本実施形態の標本観察装置では、所定の画像とフィルタとに基づいて、標本の画像が生成される。標本の画像の生成は、例えば、画像処理装置で行えば良い。
所定の画像とフィルタは、複数の画素を有する。例えば、所定の画像の明るさが256階調で表される場合、ゼロから255までの間の数値が、各画素に設定される。フィルタについても、同様である。第1領域の明るさと第2領域の明るさが256階調で表される場合、ゼロから255までの間の数値が、第1領域の各画素と第2領域の各画素に設定される。
フィルタは、第1領域と、第2領域と、を有する。第1領域における値は、第2領域における値よりも大きい。第1領域における値と第2領域における値は、フィルタの数値である。
フィルタの画素数は、所定の画像の画素数と等しい。また、フィルタのアスペクト比は、所定の画像のアスペクト比と等しい。よって、フィルタの各画素と所定の画像の各画素は、一対一で対応している。
標本の画像の生成は、画像処理装置で行われる。画像処理装置では、所定の画像とフィルタとに基づいて、標本の画像が生成される。フィルタは、現像用のフィルタ画像である。すなわち、フィルタは、所定の画像から標本の画像を生成するために用いられる画像である。
フィルタの各画素と所定の画像の各画素は、一対一で対応している。そこで、一対一で対応する画素ごとに、所定の画像の値とフィルタの値との積を求める。これにより、新たな画像(以下、「積画像」という)が得られる。積画像にも、画像ILightに対応する画像(以下、「画像ISLight」という)と、画像IOutに対応する画像と、が含まれている。
上述のように、合計値Isumは、標本上の一点の情報を表している。よって、画像ISLightの値から求めた合計値も(以下、「合計値ISsum」という)、標本上の一点の情報を表している。ただし、画像ISLightの生成には、フィルタが用いられている。そのため、合計値ISsumは、フィルタの影響を受ける。
合計値ISsumは、標本上の一点の情報を表している。そして、合計値ISsumは、フィルタの影響を受ける。よって、標本上の一点の情報は、フィルタの影響を受ける。
標本の画像は、標本上の一点の情報の集合体である。上述のように、標本上の一点の情報は、フィルタの影響を受ける。よって、標本の画像は、フィルタの影響を受ける。言い換えると、使用するフィルタが異なると、生成される標本の画像も異なる。
本実施形態の標本観察装置では、第1領域は、円形の領域で、第2領域は、第1領域の外側に位置していることが好ましい。
第1のフィルタについて説明する。図8は、第1のフィルタを示す図である。フィルタ14は、顕微鏡の明視野画像に対応する画像(以下、「画像ISBRI」という)の生成に用いられる。
フィルタ14は、第1領域14aと、第2領域14bと、を有する。第1領域14aは、円形の領域である。第2領域14bは、第1領域14aの外側に位置している。第1領域14aの大きさは、画像ILightの大きさに基づいて設定されている。
第1領域14aと第2領域14bは、各々、複数の画素を有する。画素に設定できる値の範囲は、予め決められている。第1領域14aの各画素には、同じ値が設定されている。第2領域14bの各画素にも、同じ値が設定されている。
ただし、第1領域14aの画素に設定されている値と、第2領域14bの画素に設定されている値は異なる。第1領域14aの画素に設定されている値は、第2領域14bの画素に設定されている値よりも大きい。
図9Aは、所定の画像を示す図である。図9Bは、フィルタを示す図である。図9Cは、所定の画像とフィルタとを重ねた画像である。
図9Aは、図7Bと同一の図である。図9Aには、紙面の左側から順に、位置Paでの結像光の画像(以下「画像IPa」という)、位置Pbでの結像光の画像(以下「画像IPb」という)、及び位置Pcでの結像光の画像(以下「画像IPc」という)が示されている。
画像IPa、画像IPb、及び画像IPcは、図7Aに示す光スポット13から生じた結像光を撮影した画像である。よって、画像IPa、画像IPb、及び画像IPcでは、形と大きさの各々が、3つの画像で同一になる。
また、図7Aでは、標本8は、無色透明な物体である。よって、画像IPa、画像IPb、及び画像IPcでは、各画素における値が、3つの画像で同一になる。
図9Bに示すように、積画像の取得では、3つの所定の画像の各々に、同一のフィルタ、すなわち、フィルタ14が用いられる。
図9Cには、画像IPa’、画像IPb’、及び画像IPc’が示されている。画像IPa’は、画像IPaの画像のうち、第1領域14a内に位置する画像である。画像IPb’は、画像IPbの画像のうち、第1領域14a内に位置する画像である。画像IPc’は、画像IPcの画像のうち、第1領域14a内に位置する画像である。
フィルタ14では、第1領域14aは、画像IPaの全体、画像IPbの全体、及び画像IPcの全体を含む大きさに設定されている。そのため、図9Cに示すように、画像IPa’の形と大きさは、画像IPaと同一である。画像IPb’の形と大きさは、画像IPbと同一である。画像IPc’の形と大きさは、画像IPcと同一である。
このように、フィルタ14を用いると、画像IPa’の面積、画像IPb’の面積、及び画像IPc’の面積は、3つの画像で同一になる。
3つの所定の画像とフィルタ14とから、3つの積画像が得られる。3つの積画像は、各々、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcを有する。画像ISPaは、画像IPa’に対応する画像である。画像ISPb’は、画像IPb’に対応する画像である。画像ISPcは、画像IPc’に対応する画像である。
画像IPa’、画像IPb’、及び画像IPc’では、各画素における値は、3つの画像で同一である。そして、積画像の取得に用いるフィルタも、同一である。よって、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、各画素における値は3つの画像で同一になる。
また、フィルタ14を用いると、上述のように、画像IPa’の面積、画像IPb’の面積、及び画像IPc’の面積は、3つの画像で同一になる。よって、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、面積は3つの画像で同一になる。
上述のように、合計値ISsumは、標本上の一点の情報を表している。画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、面積と各画素における値の各々が、3つの画像で同一である。そのため、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、画像から求めた合計値は、3つの画像で同一になる。
画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、光スポットの照射位置における位相量は、画像ISPaと画像ISPbとで異なり、また、画像ISPbと画像ISPcとで異なっている。画像ISPaと画像ISPcとでは、位相量は同じだが、位相が変化する方向が異なる。
合計値が3つの画像で同一ということは、フィルタ14を用いた場合、標本が無色透明な物体だと、位相量の変化や位相が変化する方向を、明るさの変化として検出できないということを意味している。
顕微鏡による明視野観察でも、標本が無色透明な物体の場合、位相量の変化や位相が変化する方向を、明るさの変化として検出できない。よって、フィルタ14を用いることで、顕微鏡の明視野画像と同じような画像を生成できる。
本実施形態の標本観察装置では、第1領域は、半円形の領域で、第2領域は、第1領域の外側に位置していることが好ましい。
第2のフィルタについて説明する。図10は、第2のフィルタを示す図である。フィルタ15は、顕微鏡の偏射照明画像に対応する画像(以下、「画像ISOBL」という)の生成に用いられる。
フィルタ15は、第1領域15aと、第2領域15bと、を有する。第1領域15aは、半円形の領域である。第2領域15bは、第1領域15aの外側に位置している。第1領域15aの大きさは、画像ILightの大きさに基づいて設定されている。
第1領域15aと第2領域15bは、各々、複数の画素を有する。画素に設定できる値の範囲は、予め決められている。第1領域15aの各画素には、同じ値が設定されている。第2領域15bの各画素にも、同じ値が設定されている。
ただし、第1領域15aの画素に設定されている値と、第2領域15bの画素に設定されている値は異なる。第1領域15aの画素に設定されている値は、第2領域15bの画素に設定されている値よりも大きい。
図11Aは、所定の画像を示す図である。図11Bは、フィルタを示す図である。図11Cは、所定の画像とフィルタとを重ねた画像である。
図11Aは、図7Bと同一の図である。図11Aには、画像IPa、画像IPb、及び画像IPcが示されている。画像IPa、画像IPb、及び画像IPcについては、説明を省略する。
図11Bに示すように、積画像の取得では、3つの所定の画像の各々に、同一のフィルタ、すなわち、フィルタ15が用いられる。
図11Cには、画像IPa’、画像IPb’、及び画像IPc’が示されている。画像IPa’は、画像IPaの画像のうち、第1領域15a内に位置する画像である。画像IPb’は、画像IPbの画像のうち、第1領域15a内に位置する画像である。画像IPc’は、画像IPcの画像のうち、第1領域15a内に位置する画像である。
フィルタ15では、第1領域15aは、画像IPaの一部、画像IPbの一部、及び画像IPcの一部を含む大きさに設定されている。そのため、図11Cに示すように、画像IPa’の形と大きさは、画像IPaと異なる。画像IPb’の形と大きさは、画像IPbと異なる。画像IPc’の形と大きさは、画像IPcと異なる。
また、第1領域15aに対する位置が、画像IPa、画像IPb、及び画像IPcの各々で、異なる。そのため、フィルタ15を用いると、画像IPa’の面積、画像IPb’の面積、及び画像IPc’面積は、3つの画像で異なる。
3つの所定の画像とフィルタ15とから、3つの積画像が得られる。3つの積画像は、各々、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcを有する。
画像IPa’、画像IPb’、及び画像IPc’では、各画素における値は、3つの画像で同一である。そして、積画像の取得に用いるフィルタも、同一である。よって、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、各画素における値は3つの画像で同一になる。
ただし、フィルタ15を用いると、上述のように、画像IPa’の面積、画像IPb’の面積、及び画像IPc’の面積は、3つの画像で異なる。よって、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでも、面積は3つの画像で異なる。
上述のように、合計値ISsumは、標本上の一点の情報を表している。画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、各画素における値は3つの画像で同一であるが、面積は3つの画像で異なる。そのため、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、画像から求めた合計値は、3つの画像で異なる。
画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、光スポットの照射位置における位相量は、画像ISPaと画像ISPbとで異なり、また、画像ISPaと画像ISPcとで異なっている。画像ISPaと画像ISPcとでは、位相量は同じだが、位相が変化する方向が異なる。
合計値が3つの画像で異なるということは、フィルタ15を用いた場合、標本が無色透明な物体では、位相量の変化や位相が変化する方向を、明るさの変化として検出できるということを意味している。
顕微鏡による偏射照明観察でも、標本が無色透明な物体の場合、位相量の変化や位相が変化する方向を、明るさの変化として検出できる。よって、フィルタ15を用いることで、顕微鏡の偏射照明画像と同じような画像を生成できる。
図11Aに示す所定の画像と、図9Aに示す所定の画像は、図7Aに示す光スポット13によって得られた画像である。これは、本実施形態の標本観察装置では、画像ISOBLの生成と画像ISBRIの生成とで、照明状態が同じであることを意味している。このように、本実施形態の標本観察装置では、画像ISBRIの生成の際に用いる照明と同じ照明で、画像ISOBLが生成できる。
図12は、結像光の画像のシフト量と明るさとの関係を示すグラフである。このグラフは、フィルタ15を用いたときのグラフである。
図1に示すように、コンデンサレンズ5には、遮光部材4が配置されている。画像ILightは、透過領域4bを通過する光の画像である。よって、横軸は、コンデンサレンズ5に配置された開口のシフト量と見なすことができる。一方、縦軸の明るさは、画像ILightと、フィルタの第1領域との重なりから求めることができる。
フィルタ15を用いると、図11Cに示すように、画像IPa’の面積は、画像IPb’の面積よりも小さくなり、画像IPb’の面積は画像IPc’の面積よりも小さくなる。
よって、図7Aに示す標本8の画像では、位置Paでの明るさは、位置Pbでの明るさに比べて暗く、位置Pbでの明るさは、位置Pcでの明るさに比べて暗い。すなわち、位置Pa、位置Pb、位置Pcの順で、明るさが明るくなる。
図12に示すグラフでは、例えば、シフト量S1のときの明るさが、位置Paにおける明るさに対応する。シフト量S2のときの明るさが、位置Pbにおける明るさに対応する。シフト量S3のときの明るさが、位置Pcにおける明るさに対応する。
図13は、第2のフィルタの変形例1を示す図である。フィルタ15’も、画像ISOの生成に用いられる。フィルタ15’は、フィルタ15を90度回転させた画像である。
フィルタ15’では、フィルタ15と直交する方向における位相の変化を、明るさの変化として検出できる。
図14は、第2のフィルタの変形例2を示す図である。フィルタ15”も、画像ISOの生成に用いられる。
フィルタ15”では、第2領域が、領域15b1と、領域15b2と、を有する。フィルタ15”では、第1領域15aに設定された値が最も大きく、領域15b2に設定された値が最も小さい。
例えば、フィルタ15では、第2領域15bに、最小値としてゼロが設定されているとする。この場合、画像ILightが第2領域15bに位置すると、画像ISLightの値はゼロになる。
これに対して、フィルタ15”では、領域15b2に最小値としてゼロが設定される。この場合、ゼロより大きい値が、領域15b1に設定される。そのため、画像ILightが領域15b1に位置しても、画像ISLightの値はゼロにはならない。その結果、位相の変化を明るさの変化として検出できる範囲が広くなる。
図15は、結像光の画像のシフト量と明るさとの関係を示すグラフである。このグラフは、フィルタ15”を用いたときのグラフである。図12に示すグラフに比べると、明るさの変化が大きくなっている。そのため、SN比の高い画像を生成できる。
本実施形態の標本観察装置では、フィルタは、第3領域を有し、第1領域は、円環形の領域で、第2領域は、第1領域の外側に位置し、第3領域は、第1領域の内側に位置していることが好ましい。
第3のフィルタについて説明する。図16は、第3のフィルタを示す図である。フィルタ16は、顕微鏡のIVC画像に対応する画像(以下、「画像ISIVC」という)の生成に用いられる。
フィルタ16は、第1領域16aと、第2領域16bと、を有する。フィルタ16は、更に、第3領域16cを有する。
第1領域16aは、円環形の領域である。第2領域16bは、第1領域16aの外側に位置している。第3領域16cは、第1領域16aの内側に位置している。第3領域16cは、円形の領域である。第1領域16aの位置と大きさは、画像ILightの大きさに基づいて設定されている。
第1領域16aの位置と大きさ適切に設定されると、第1の状態では、画像ILightの外縁は、第1領域16aに含まれている。すなわち、画像ILightの外縁は、第3領域16cよりも外側で、且つ第2領域16bよりも内側に位置する。
第1領域16aと第2領域16bは、各々、複数の画素を有する。画素に設定できる値の範囲は、予め決められている。第1領域16aの各画素には、同じ値が設定されている。第2領域16bの各画素にも、同じ値が設定されている。
ただし、第1領域16aの画素に設定されている値と、第2領域16bの画素に設定されている値は異なる。第1領域16aの画素に設定されている値は、第2領域16bの画素に設定されている値よりも大きい。
第3領域16cも、複数の画素を有する。画素に設定できる値の範囲は、予め決められている。第3領域16cの各画素には、同じ値が設定されている。
第1領域16aの画素に設定されている値と、第3領域16cの画素に設定されている値は異なる。第1領域16aの画素に設定されている値は、第3領域16cの画素に設定されている値よりも大きい。
第2領域16bの画素に設定されている値と第3領域16cの画素に設定されている値は、同じであっても、異なっていても良い。また、第2領域16bの画素に設定されている値は、第3領域16cの画素に設定されている値よりも大きくても、小さくても良い。
図17Aは、所定の画像を示す図である。図17Bは、フィルタを示す図である。図17Cは、所定の画像とフィルタとを重ねた画像である。
図17Aは、図7Bと同一の図である。よって、図17Aには、画像IPa、画像IPb、及び画像IPcが示されている。画像IPa、画像IPb、及び画像IPcについては、説明を省略する。
図17Bに示すように、積画像の取得では、3つの所定の画像の各々に、同一のフィルタ、すなわち、フィルタ16が用いられる。
図17Cには、画像IPa’、画像IPb’、及び画像IPc’が示されている。画像IPa’は、画像IPaの画像のうち、第1領域16a内に位置する画像である。画像IPb’は、画像IPbの画像のうち、第1領域16a内に位置する画像である。画像IPc’は、画像IPcの画像のうち、第1領域16a内に位置する画像である。
フィルタ16では、第1領域16aは、画像IPaの一部、画像IPbの一部、及び画像IPcの一部を含む大きさに設定されている。そのため、図17Cに示すように、画像IPa’の形と大きさは、画像IPaと異なる。画像IPb’の形と大きさは、画像IPbと異なる。画像IPc’の形と大きさは、画像IPcと異なる。
また、第1領域16aに対する位置が、画像IPa、画像IPb、及び画像IPcの各々で、異なる。ただし、画像IPaの位置と画像IPcの位置は、画像IPbの位置に対して対称である。そのため、フィルタ16を用いると、画像IPb’の面積は、画像IPa’の面積や画像IPc’の面積と異なるが、画像IPa’の面積と画像IPc’の面積は同じである。
3つの所定の画像とフィルタ16とから、3つの積画像が得られる。3つの積画像は、各々、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcを有する。
画像IPa’、画像IPb’、及び画像IPc’では、各画素における値は、3つの画像で同一である。そして、積画像の取得に用いるフィルタも、同一である。よって、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、各画素における値は3つの画像で同一になる。
ただし、フィルタ16を用いると、上述のように、画像IPb’の面積は、画像IPa’の面積や画像IPc’の面積と異なるが、画像IPa’の面積と画像IPc’の面積は同じである。よって、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでも、画像ISPbの面積は、画像ISPaの面積や画像ISPcの面積と異なるが、画像ISPaの面積と画像ISPcの面積は同じである。
上述のように、画像ISLightの値から求めた合計値は、標本上の一点の情報を表している。画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、各画素における値は3つの画像で同一である。しかしながら、画像ISPbと画像ISPaとで面積は異なり、画像ISPbと画像ISPcとで面積は異なり、画像ISPaと画像ISPcとで面積は同じになる。
そのため、画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、画像から求めた合計値は、画像ISPbと画像ISPaとで異なり、画像ISPbと画像ISPcとで異なり、画像ISPaと画像ISPcとで同じになる。
画像ISPa、画像ISPb、及び画像ISPcでは、光スポットの照射位置における位相量は、画像ISPaと画像ISPbとで異なり、また、画像ISPaと画像ISPcとで異なっている。画像ISPaと画像ISPcとでは、位相量は同じだが、位相が変化する方向が異なる。
合計値が画像ISPbと画像ISPaとで異なり、画像ISPbと画像ISPcとで異なり、画像ISPaと画像ISPcとで同じになるということは、フィルタ16を用いた場合、標本が無色透明な物体では、位相の変化は明るさの変化として検出できるが、位相が変化する方向は明るさの変化として検出できないということを意味している。
顕微鏡によるIVC観察でも、標本が無色透明な物体の場合、位相の変化は明るさの変化として検出できる。また、IVC観察では、位相が変化する方向は、明るさの変化として検出しない。そのため、IVC観察では、方向性のない像が得られる。よって、フィルタ16を用いることで、顕微鏡のIVC画像と同じような画像を生成できる。
図17Aに示す所定の画像と、図9Aに示す所定の画像は、図7Aに示す光スポット13によって得られた画像である。これは、本実施形態の標本観察装置では、画像ISIVCの生成と画像ISBRIの生成とで、照明状態が同じであることを意味している。このように、本実施形態の標本観察装置では、画像ISBRIの生成の際に用いる照明と同じ照明で、画像ISIVCが生成できる。
図18は、結像光の画像のシフト量と明るさとの関係を示すグラフである。このグラフは、フィルタ16を用いたときのグラフである。
フィルタ16を用いると、図17Cに示すように、画像IPb’の面積は、画像IPa’の面積や画像IPc’の面積よりも小さくなる。また、画像IPa’の面積と画像IPc’の面積は等しい。
よって、図7Aに示す標本8の画像では、位置Pbでの明るさは、位置Paでの明るさや位置Pcで明るさに比べて暗い。また、位置Paでの明るさと位置Pcで明るさが等しい。
本実施形態の標本観察装置では、第1領域は、第2領域の外側に位置し、第2領域は、円形の領域であることが好ましい。
第4のフィルタについて説明する。図19は、第4のフィルタを示す図である。フィルタ17は、顕微鏡の暗視野画像に対応する画像(以下、「画像ISDAR」という)の生成に用いられる。
フィルタ17は、第1領域17aと、第2領域17bと、を有する。第1領域17aは、第2領域17bの外側に位置している。第2領域17bは、円形の領域である。第2領域17bの大きさは、画像ILightの大きさに基づいて設定されている。
第1領域17aと第2領域17bは、各々、複数の画素を有する。画素に設定できる値の範囲は、予め決められている。第1領域17aの各画素には、同じ値が設定されている。第2領域17bの各画素にも、同じ値が設定されている。
ただし、第1領域17aの画素に設定されている値と、第2領域17bの画素に設定されている値は異なる。第1領域17aの画素に設定されている値は、第2領域17bの画素に設定されている値よりも大きい。
図20は、散乱光が発生する様子を示す図である。標本8が散乱面、又は散乱物質を有する場合、照明光LIL3は標本8で散乱される。その結果、散乱光が発生する。散乱光は、様々な方向に発生する。
図20に示す散乱光LDIFは、結像光LIM1の開口数で決まる角度よりも大きい角度の散乱光である。散乱光LDIFは、結像光LIM1の外側に位置している。この場合、所定の画像には、画像ILightと、散乱光の画像と、が含まれる。
散乱光の画像は、画像ILightの外側に位置している。そこで、第2領域17bの大きさを、画像ILightの大きさと略一致させる。そして、所定の画像の値とフィルタ17の値との積を求める。
積画像には、画像ISLightが含まれている。しかしながら、第2領域17bの画素に設定されている値は、第1領域17aの画素に設定されている値よりも小さい。そのため、積画像から画像ISLightが取り除かれる。その結果、散乱光の画像に対応する画像のみが得られる。この画像の値から求めた合計値は、散乱光を表している。
顕微鏡による暗視野観察でも、標本が散乱面、又は散乱物質を有する場合、を有する場合、散乱光を検出できる。よって、フィルタ17を用いることで、顕微鏡の暗視野画像と同じような画像を生成できる。
図示を省略するが、画像ISDARの生成に用いられる所定の画像は、図9Aに示す所定の画像と同じく、画像IPa、画像IPb、及び画像IPcを有する。図9Aにおける画像IPa、画像IPb、及び画像IPcは、図7Aに示す光スポット13によって得られた画像である。これは、本実施形態の標本観察装置では、画像ISDARの生成と画像ISBRIの生成とで、照明状態が同じであることを意味している。このように、本実施形態の標本観察装置では、画像ISBRIの生成の際に用いる照明と同じ照明で、画像ISDARが生成できる。
本実施形態の標本観察装置では、照明光学系の瞳位置に位相膜が配置され、第1領域は、観察光学系の瞳位置における位相膜の像の領域に対応し、第2領域は、第1領域の内側に位置する領域であり、第1領域の外側に位置する領域は、第3領域であることが好ましい。
図16に示すフィルタ16は、顕微鏡の位相差画像に対応する画像(以下、「画像ISPHA」という)の生成に利用できる。
上述のように、画像ISIVCの生成では、第1領域16aの位置と大きさは、画像ILightの大きさに基づいて設定されている。一方、画像ISPHAの生成では、照明光学系の瞳位置に、位相膜が配置されている。そのため、第1領域16aの位置と大きさは、位相膜の位置と大きさに基づいて設定される。
観察光学系の瞳位置には、位相膜の像が形成される。よって、第1領域は、観察光学系の瞳位置における位相膜の像の領域に対応する。また、第2領域は、第1領域の内側に位置する領域である。第1領域の外側に位置する領域は、第3領域である。第1領域における値は、第3領域における値よりも大きい。
このように、画像ISIVCの生成に用いられるフィルタ16と、画像ISPHAの生成に用いられるフィルタ16は、異なる。以下の説明でも、フィルタ16が用いられているが、フィルタ16は画像ISPHAの生成に用いられる画像である。
図21は、位相膜を配置したときの照明光の様子と結像光の様子を示す図である。図1と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
図21に示すように、透過領域4bに、位相膜18が配置されている。この場合、照明光LIL2には、位相膜18を通過した照明光LIL2Pと、位相膜18を通過しない照明光LIL2Nと、が含まれている。照明光LIL2Pでは、照明光LIL2Nに比べてλ/4だけ位相が進んでいる。
照明光LIL2は、コンデンサレンズ5に入射する。コンデンサレンズ5からは、照明光LIL3が出射する。照明光LIL3は、標本8上の観察点11に入射する。観察点11出射した結像光LIM1は、対物レンズ6に到達する。
対物レンズ6に到達した結像光LIM1は、全て対物レンズ6に入射する。対物レンズ6に入射した結像光LIM1は、絞り7を通過する。結像光LIM1には、位相膜18を通過した結像光LIM1Pと、位相膜18を通過しない結像光LIM1Nと、が含まれている。
図22Aは、0次回折の結像光の様子を示す図である。図22Bは、1次回折の結像光の様子を示す図である。
結像光LIM1Pと結像光LIM1Nは、共に、標本8で回折されない光、すなわち、0次回折光である。0次回折光では、位置PDに結像光LIM1Pが到達する。結像光LIM1Pは、位相膜18を通過した光である。よって、結像光LIM1Pでは、結像光LIM1Nに比べてλ/4だけ位相が進んでいる。
結像光LIM1PDと結像光LIM1NDは、共に、標本8で回折された光、例えば、1次回折光である。1次回折光では、位置PDに結像光LIM1NDが到達する。結像光LIM1NDは、位相膜18を通過していない光である。ただし、標本8で回折されている。よって、結像光LIM1NDでは、結像光LIM1Nに比べてλ/4だけ位相が遅れている。
結像光LIM1Pと結像光LIM1NDは、同時に、位置PDに到達する。位置PDでは、結像光LIM1Pと結像光LIM1NDとが干渉する。この場合、結像光LIM1Pと結像光LIM1NDとの位相差はλ/2になるので、干渉光は暗くなる。干渉光の明暗は、位相の変化によって生じる。
位相膜18の形状が円環の場合、位置PDと同じ位置が複数生じる。位置PDと同じ位置は円環状に分布する。フィルタ16では、第1領域16aは、円環形の領域である。よって、第1領域16aが位置PDを含むように、第1領域16aの領域を決定する。このようにすることで、干渉光の明暗を検出できる。
干渉光の明暗は、位相の変化によって生じる。位相膜とフィルタ16を用いた場合、標本が無色透明な物体では、位相量の変化や位相が変化する方向を、明るさの変化として検出できるということを意味している。
顕微鏡による位相差観察でも、標本が無色透明な物体の場合、位相量の変化を明るさの変化として検出できる。よって、位相膜とフィルタ16を用いることで、顕微鏡の位相差画像と同じような画像を生成できる。
1次回折光の明るさは、0次回折光の明るさに比べて暗い。位相膜18には吸収膜も設けられている。0次回折光が吸収膜を通過することで、0次回折光の明るさを、1次回折光の明るさとほぼ同じにできる。よって、干渉光のコントラストを高くできる。
顕微鏡による位相差観察では、対物レンズに位相膜が配置され、照明光学系には位相膜に適したリングスリットが配置されている。位相膜の大きさは、対物レンズの倍率で異なる。そのため、顕微鏡による位相差観察では、対物レンズを交換すると、場合によっては、リングスリットの交換が必要になる。
これに対して、本実施形態の標本観察装置では、照明光学系に位相膜が配置されている。そのため、対物レンズに位相膜が配置されている必要がない。その結果、本実施形態の標本観察装置では、明視野観察に用いる対物レンズを使用できる。
また、本実施形態の標本観察装置では、対物レンズを交換すると、位相膜の像の位置と大きさが変化する。この場合も、フィルタを、位相膜の像の位置と大きさに適した画像に変更するだけで良い。
本実施形態の標本観察装置では、第1領域は、最大明るさの3%以上、30%以下の範囲の明るさで決まり、最大明るさは、照明光学系の瞳の像における最大の明るさであり、照明光学系の瞳の像は、観察光学系の瞳位置に形成されていることが好ましい。
上述のように、遮光部材4の位置は、コンデンサレンズ5と対物レンズ6によって、絞り7の位置と共役になっている。よって、絞り7の位置に、位相膜18の像が形成される。第1領域16aは、位相膜18の像に基づいて設定すれば良い。第1領域16aは、第1領域16aと第2領域16bとの境界(以下、「第1境界」という)、及び第2領域16bと第3領域16cとの境界(以下、「第2境界」という)で決まる。
第1領域は、最大明るさの3%以上、30%以下の範囲の明るさで決めることができる。例えば、最大明るさの20%となる値を持つ画素を、第1境界を表す画素と、第2境界を表す画素にすれば良い。
第1境界を表す画素の値と第2境界を表す画素の値は、異なっていても良い。例えば、最大明るさの5%となる値を持つ画素を、第1境界を表す画素とし、最大明るさの25%となる値を持つ画素を、第2境界を表す画素とすることができる。
最大明るさは、照明光学系の瞳の像における最大の明るさである。照明光学系の瞳の像は、観察光学系の瞳位置に形成されている。よって、最大の明るさは、観察光学系の瞳位置における明るさである。
遮光部材4の位置に位相膜18が配置されている場合、観察光学系の瞳位置には、位相膜18の像が形成されている。よって、最大の明るさは、位相膜18の像の明るさに基づいて設定しても良い。
位相膜の像の明るさが均一でない場合は、位相膜の像における最大の明るさを基準にして、第1領域を設定できる。例えば、上述の2つの境界は、以下の条件を満足れば良い。
0.03≦I/Imax≦0.3
ここで、
Iは、境界上の点における明るさ、
Imaxは、位相膜の像における最大の明るさ、
である。
本実施形態の標本観察装置では、画像処理装置は、光スポットと保持部材との相対位置に応じて、フィルタを変化させることが好ましい。
位相差観察方法は、生細胞の観察に適した観察方法の一つである。生細胞の観察は、容器に培養液や保存液を満たした状態で行われる。
図23Aは、容器の中央における光の屈折を示す図である。図23Bは、容器の周辺における光の屈折を示す図である。図23Aと図23Bには、光軸と平行な光が容器を通過する様子が示されている。
容器19の中央では、液面は平坦である。容器19の中央では、光は屈折されること無く、容器19から出射する。
容器19の面積が小さい場合、容器19の中央で液面が平坦であっても、容器19の周辺部では、液面は中央に比べて高くなる。容器19の面積が小さい場合、液面は凹面になる。そのため、容器19の周辺は、光は屈折されて容器19から出射する。
光スポットが容器19の中央に位置する場合、光は屈折されない。そのため、図22Aに示すように、位置PDに結像光LIM1Pが到達する。一方。光スポットが容器19の周辺に位置する場合、光は屈折される。この場合、位置PDには結像光LIM1Pが到達しない。
そのため、このままでは、中央に位置する標本では画像ISPHAを生成できるが、周辺に位置する標本では、画像ISPHAを生成できない。
そこで、光スポットと保持部材との相対位置に応じて、フィルタを変化させる。例えば、第1領域の形状や位置を変化させる。このようにすることで、画像ISPHAを、標本全体で生成できる。
本実施形態の標本観察装置では、画像処理装置は、フィルタを複数有し、複数のフィルタの中から、観察方法に応じて一つのフィルタを選択し、選択されたフィルタを用いて標本の画像を生成することが好ましい。
上述のように、フィルタでは、第1領域と第2領域とで、領域の形状や領域の位置を異ならせることで、様々な観察方法による画像を生成できる。そこで、フィルタを、予め複数用意しておく。
このようにすることで、複数のフィルタの中から、観察方法に応じて一つのフィルタを選択することで、所望の観察方法による画像を生成できる。
「観察方法に応じて」とは、明視野観察方法、偏射照明観察方法、インバージョンコントラスト観察方法、暗視野観察方法、位相差観察方法などの観察方法の切り替えに応じて、フィルタを変えるということである。
本実施形態の標本観察装置について説明する。図24は、本実施形態の標本観察装置の構成を示す図である。標本観察装置20は、例えば、正立型顕微鏡であって、光源26と、照明光学系21と、観察光学系22と、保持部材23と、検出素子24と、処理装置25と、を備える。照明光学系21は、コンデンサ27を有する。観察光学系22は、対物レンズ30を有する。対物レンズの30の内部には、対物レンズの瞳31が位置している。光源26は、光源ユニットである。検出素子24は、光検出素子である。
コンデンサ27には、コンデンサレンズ28と開口部材29とが設けられている。ここでは、コンデンサレンズ28と開口部材29とが、一体でコンデンサ27に保持されている。しかしながら、コンデンサレンズ28と開口部材29を、それぞれ別々に保持しても良い。開口部材29には、金属板が用いられている。
光源26から、照明光LIL1が出射する。照明光LIL1は平行な光束であるが、略平行な光束であっても良い。光源26から出射した照明光LIL1は、コンデンサ27に入射する。照明光LIL1は、開口部材29に入射する。
開口部材29は、遮光部29aと透過部29bとを有する。透過部29bの大きさは、照明光LIL1の光束径よりも小さい。そのため、照明光LIL1の一部の光束は遮光部29aで遮光され、残りの光束が透過部29bを通過する。透過部29bからは照明光LIL2が出射する。透過部29bの大きさは、照明光LIL1の光束径と同じであっても良い。
開口部材29は、コンデンサレンズ28よりも光源26側に位置している。そして、透過部29bは、観察光学系22の瞳を通過する照明光の領域の面積が、観察光学系22の瞳の面積よりも小さくなるように、設定されている。
照明光LIL2は、コンデンサレンズ28に入射する。照明光LIL2は、コンデンサレンズ28で集光される。コンデンサレンズ28から照明光LIL3が出射する。照明光LIL3は、保持部材23に到達する。
保持部材23は、照明光学系21と観察光学系22との間に配置されている。保持部材23上には、標本32が載置されている。標本32は、保持部材23で保持されている。
照明光学系21から出射した照明光LIL3は、標本32に照射される。標本32に照射された照明光LIL3は、標本32を透過する。標本32からは、結像光LIM1が出射する。
標本32を出射した結像光LIM1は、観察光学系22に入射する。結像光LIM1は対物レンズ30に入射して、対物レンズの瞳31を通過する。
対物レンズの瞳31を通過した結像光LIM1は、観察光学系22から出射する。観察光学系22から出射した結像光LIM1は、検出素子24によって受光される。
このように、標本観察装置20では、光源26から出射された光は、照明光学系21に入射する。照明光学系21によって、光スポットが形成される。光スポットが形成された位置から、観察光学系22に光が入射する。記観察光学系21から出射された光は、検出素子24で受光される。
検出素子24からの信号は、処理装置25に送信される。処理装置25では、上述のように、所定の画像とフィルタとに基づいて、標本の画像が生成される。
標本観察装置20では、標本32の表面の傾斜の有無に関係なく、観察光学系22から出射する際、結像光LIM1は平行光束になっている。そして、標本32の表面に傾斜がある場合、結像光LIM1は、光軸33から離れる方向に平行移動する。
よって、結像光LIM1が平行光束になっている位置であれば、検出素子24はどの位置に配置しても良い。すなわち、検出素子24は、観察光学系22の瞳位置や、観察光学系22の瞳位置と共役な位置に配置しなくても良い。
標本観察装置20では、結像光LIM1の領域の面積は、対物レンズの瞳31の面積よりも小さくなっている。よって、結像光LIM1が光軸33から離れる方向にシフトしても、結像光LIM1の領域の形状は変化しない。すなわち、標本32の表面に傾斜がない場合と傾斜がある場合とで、結像光LIM1の領域の形状は同じである。
本実施形態の標本観察装置では、光検出素子は、複数の光電変換素子で構成されていることが好ましい。
このようにすることで、所定の照明領域の位置を算出することができる。検出素子24としては、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサがある。
本実施形態の標本観察装置では、光検出素子は、観察光学系の瞳位置に配置されていることが好ましい。
図25は、本実施形態の標本観察装置の構成を示す図である。図24と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
標本観察装置40は、検出素子41を有する。検出素子41は光検出素子であって、対物レンズの瞳31の位置に配置されている。対物レンズの瞳31は、観察光学系22の瞳でもある。よって、標本観察装置40では、検出素子41は、観察光学系22の瞳位置に配置されていることになる。これにより、観察光学系の瞳位置で、結像光LIM1を受光することができる。
本実施形態の標本観察装置では、光検出素子は、観察光学系の瞳と共役な位置に配置されていることが好ましい。
図26は、本実施形態の標本観察装置の構成を示す図である。図24と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
標本観察装置50は、リレー光学系51を有する。リレー光学系51は、レンズ52とレンズ53とを有する。レンズ52とレンズ53とによって、レンズ52と処理装置25との間に、対物レンズの瞳31の像が形成される。検出素子24は、対物レンズの瞳31の像位置に配置されている。
対物レンズの瞳31の像は、観察光学系22の瞳の像でもある。よって、標本観察装置50では、検出素子24は、観察光学系22の瞳と共役な位置に配置されていることになる。これにより、観察光学系の瞳と共役な位置で、結像光LIM1を受光することができる。
本実施形態の標本観察装置は、光軸と直交する面内で、光スポットと保持部材とを相対的に移動させる走査ユニットを有することが好ましい。走査ユニットは、光源ユニットから光スポットが形成される位置までの間に配置できる。
このようにすることで、標本の複数の位置における情報を算出することができる。
図27は、本実施形態の標本観察装置の構成を示す図である。図24と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
標本観察装置60は、走査ユニットとして、走査機構61を有する。走査機構61は、第1のステージ61a、第2のステージ61b及びベース61cで構成されている。第2のステージ61bは、ベース61c上に位置する。ベース61cには、第2のステージ61bを移動させる機構が設けられている。第1のステージ61aは、第2のステージ61b上に位置する。第2のステージ61bには、第1のステージ61aを移動させる機構が設けられている。
第1のステージ61aと第2のステージ61bは、互いに直交する方向に移動する。例えば、第1のステージ61aは紙面内の左右方向に移動し、第2のステージ61bは紙面と直交する方向に移動する。このようにすることで、照明光と標本との相対的な移動を、標本の移動によって行うことができる。
標本観察装置60では、照明光LIL3は、常に、光軸33上に集光している。そこで、第1のステージ61aに標本32を載置して、第1のステージ61aと第2のステージ61bを移動させる。このようにすると、標本32の表面の様々な場所が、照明光LIL3の集光点を横切っていく。その結果、標本32の複数の位置における情報を算出することができる。
第1のステージ61aの移動や第2のステージ61bの移動は手動で行えるが、電動で行った方が良い。各ステージの移動を電動で行うことで、各ステージの移動や位置決めを、高速且つ正確に行なうことができる。このようなことから、標本観察装置60では、第1の駆動素子62と第2の駆動素子63とが、走査機構61に設けられている。第1の駆動素子62と第2の駆動素子63としては、例えば、ステッピングモータがある。
第1の駆動素子62は、第2のステージ61bに設けられている。第1の駆動素子62によって、第1のステージ61aを移動させることができる。第2の駆動素子63は、ベース61cに設けられている。第2の駆動素子63によって、第2のステージ61bを移動させることができる。
標本観察装置60でも、標本32の表面の傾斜の有無に関係なく、観察光学系22から出射する際、結像光LIM1は平行光束になっている。そして、標本32の表面に傾斜がある場合、結像光LIM1は、光軸33から離れる方向に平行移動する。
よって、結像光LIM1が平行光束になっている位置であれば、検出素子24はどの位置に配置しても良い。すなわち、検出素子24は、観察光学系22の瞳位置や、観察光学系22の瞳位置と共役な位置に配置しなくても良い。
本実施形態の標本観察装置では、走査ユニットは、照明光を移動させる駆動装置を有することが好ましい。
図28は、本実施形態の標本観察装置の構成を示す図である。図26と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
標本観察装置70は、走査ユニットとして、走査機構71を有する。走査機構71は、第1の光偏向素子と第2の光偏向素子とで構成されている。第1の光偏向素子や第2の光偏向素子としては、例えば、ガルバノスキャナ、ポリゴンミラー及び音響光学偏向素子(AOD)がある。
標本観察装置70では、第1の光偏向素子と第2の光偏向素子の各々に、ガルバノスキャナが用いられている。図28では、第1のガルバノスキャナのミラー(以下、「第1のミラー71a」という)と、第2のガルバノスキャナのミラー(以下、「第1のミラー71b」という)と、が図示されている。
光源26から出射した照明光LIL1は、第1のミラー71aに入射する。照明光LIL1は、第1のミラー71aで反射される。続いて、照明光LIL1は、第2のミラー71bに入射する。照明光LIL1は、第2のミラー71bで反射される。
第1の光偏向素子では、第1のミラー71aの向きを変えることで、照明光LIL1の偏向が行われる。第2の光偏向素子では、第2のミラー71bの向きを変えることで、照明光LIL1の偏向が行われる。
第1の光偏向素子は、回転軸が紙面と平行となるように配置されている。第2の光偏向素子は、回転軸が紙面と垂直となるように配置されている。よって、第1のミラー71aの向きと第2のミラー71bの向きを変えることで、照明光LIL1は、直交する2つの方向に偏向される。このようにすることで、照明光と標本との相対的な移動を、照明光の移動によって行うことができる。
第2の光偏向素子から出射した照明光LIL1は、リレー光学系72に入射する。リレー光学系72は、アフォーカル光学系である。リレー光学系72は、レンズ72aとレンズ72bとで構成されている。リレー光学系72から出射した照明光LIL1は、ミラー73で反射された後、コンデンサ27に入射する。
第1のミラー71aと第2のミラー71bとの間には、不図示のリレー光学系が配置されている。リレー光学系によって、第1のミラー71aの位置と第2のミラー71bの位置とが共役になっている。
第2のミラー71bの位置は、リレー光学系72によって、照明光学系21の瞳の位置と共役になっている。よって、照明光LIL1の偏向は、透過部29bの位置で行なわれていると見なすことができる。図28では、偏向された照明光LIL1が点線で示されている。
標本観察装置70では、標本32’の位置は固定されている。そこで、第1のミラー71aの向きと第2のミラー71bの向きを、変化させる。このようにすることで、標本32’の表面の様々な場所を、照明光LIL3の集光点が横切っていく。その結果、標本32’の複数の位置における情報を算出することができる。
標本観察装置70では、光軸33上や、光軸33から離れた位置(以下、「軸外位置」という)に、照明光LIL3が照射される。
照明光LIL3が光軸33上に照射された場合、実線で示すように、光軸33上から結像光LIM1が出射する。この結像光LIM1は、標本32の表面に傾斜が無い場合、光軸33と交差しない。そのため、対物レンズ30よりも検出素子24側では、光軸33上のどの位置でも、結像光LIM1の中心は対物レンズ30の光軸33と一致している。
一方、照明光LIL3が軸外位置に照射された場合、破線で示すように、軸外位置から結像光LIM1が出射する。この結像光LIM1は、標本32’の表面に傾斜が無い場合であっても、光軸33と交差する。そのため、対物レンズ30よりも検出素子24側では、光軸33上の位置によっては、結像光LIM1の中心が光軸33と一致しない。このような位置に検出素子24を配置すると、算出した情報は誤ったものになる。
このようなことから、標本観察装置70では、検出素子24は、観察光学系22の瞳位置、又は、観察光学系22の瞳位置と共役な位置に配置することが好ましい。瞳位置又は瞳位置と共役な位置では、標本32’の表面に傾斜が無い場合であっても、軸外位置から出射した結像光LIM1の中心と光軸33とが一致する。よって、正確な情報を算出することができる。
第1のミラー71aと第2のミラー71bとの間にリレー光学系72が配置されている場合、第1のミラー71aの位置、第2のミラー71bの位置、及び照明光学系21の瞳の位置が共役になる。この場合、照明光学系21の瞳の位置で、第1のミラー71aによる偏向と、第2のミラー71bによる偏向が行われていると見なすことができる。
よって、図28に示すように、光軸33上から出射した結像光LIM1の中心と、軸外位置から出射した結像光LIM1の中心は、検出素子24の位置では、光軸33と一致する。
第1のミラー71aと第2のミラー71bとの間に、リレー光学系72を配置しなくても良い。この場合、第1のミラー71aと第2のミラー71bとは近接して配置されている。
2つのミラーが近接して配置されている場合、リレー光学系72によって、第2のミラー71bの位置を照明光学系21の瞳の位置と共役にすると、第1のミラー71aの位置と照明光学系21の瞳の位置とは共役にならない。
この場合、第2のミラー71bによる偏向は、照明光学系21の瞳の位置で行われる。しかしながら、第1のミラー71aによる偏向は、照明光学系21の瞳の位置からずれた位置で行われる。そのため、検出素子24の位置では、光軸33上から出射した結像光LIM1の中心は光軸33と一致するが、軸外位置から出射した結像光LIM1の中心は光軸33と一致しなくなる。
軸外位置から出射した結像光LIM1の位置と、中心は光軸33とのずれ量は、偏向角に応じて変化する。偏向角の変化は、光スポットと保持部材との相対位置の変化である。
このように、本実施形態の標本観察装置では、光スポットと保持部材との相対位置に応じて、フィルタを変化させることができる。よって、2つのミラーが近接して配置されている場合であっても、正確な情報を算出できる。
本実施形態の標本観察装置では、照明光学系は、光源とコンデンサレンズとの間に、光学部材を有し、光学部材は、レンズで構成されていることが好ましい。
図29は、照明光学系の例を示す図である。図24と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
照明光学系110は、光源26とコンデンサレンズ28との間に、光学部材を有する。光学部材はレンズ111で構成されている。光源26は点光源である。レンズ111の焦点位置が光源26の発光点と一致するように、光源26とレンズ111とが位置決めされている。
図24に示す標本観察装置20では、光源26とコンデンサレンズ28との間に、開口部材29が配置されている。そして、開口部材29に、照明光LIL1が照射されている。このとき、照明光LIL1の照射面積は、透過部29bの面積よりも広くなっている。そのため、開口部材29において、照明光の光量損失が生じる。
照明光LIL1の照射面積を、透過部29bの面積と略等しくすることで、照明光の光量損失を防止することができる。更に、開口部材29の配置を省略することができる。
照明光学系110では、照明光LIL2の径と一致するように、レンズ111の焦点位置が設定されている。そのため、照明光の光量損失が発生せず、しかも、開口部材を必要としない。また、レンズ111の焦点位置を変えることで、照明光LIL2の径を変えることができる。
照明光学系110では、光源26とレンズ111との間に、更に、別のレンズが配置されていても良い。この場合、別のレンズで、点光源の像を形成する。そして、点光源の像から出射した光を、レンズ111で平行光束に変換すれば良い。
また、レンズ111とコンデンサ27との間に、アフォーカルズーム光学系が配置されていても良い。このようにすることで、照明光LIL2の径を変えることができる。
本実施形態の標本観察装置では、光源は、レーザ光源であり、照明光学系は、光源と光学部材との間に、光ファイバを有することが好ましい。
図30は、照明光学系の別の例を示す図である。図29と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
照明光学系120は、光源26とコンデンサレンズ28との間に、光学部材を有する。光学部材はレンズ111で構成されている。更に、光源26から出射したレーザ光は、光ファイバ121に入射する。レーザ光は光ファイバ121内を進行して、光ファイバ121の出射端122から出射する。
光ファイバ121がシングルモードファイバの場合、出射端122には点光源が形成されている。そこで、レンズ111の焦点位置が出射端122と一致するように、出射端122とレンズ111とが位置決めされている。その結果、上述の照明光学系110と同じ効果を得ることができる。
照明光学系120では、光ファイバ121とレンズ111との間に、更に、別のレンズが配置されていても良い。この場合、別のレンズで、点光源の像を形成する。そして、点光源の像から出射した光を、レンズ111で平行光束に変換すれば良い。
また、レンズ111とコンデンサ27との間に、アフォーカルズーム光学系が配置されていても良い。このようにすることで、照明光LIL2の径を変えることができる。
(付記項1)
走査ユニットは、光源ユニットから光スポットが形成される位置までの間に配置されていることを特徴とする。
(付記項2)
フィルタとは別のフィルタを有し、
別のフィルタは、第1領域と、第2領域と、を有し、
第1領域の形状は、フィルタと別のフィルタとで異なり、
第2領域の形状は、フィルタと別のフィルタとで異なることを特徴とする。