JP5995095B2 - 成形構造体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、成形構造体の製造方法に関する。
従来、繊維及び熱可塑性樹脂を含む基材と、基材上に射出成形された成形体とを備える成形構造体の製造方法として、例えば下記特許文献1のものが知られている。下記特許文献1には、成形前の基材(プレボード)を成形型(金型)によってプレス成形し、その状態で成形型に形成されたキャビティ(成形空間)に溶融樹脂を射出する方法が記載されている。これにより、基材上に成形体を成形することができる。
特開2010−274636号公報
成形体を成形するためのキャビティは、成形型の型面(基材との接触面)に凹設されている。このため、基材をプレス成形する際には、型面に押圧された基材の一部がキャビティ内部に入り込む事態が懸念される。基材の一部がキャビティ内部に入り込むと、キャビティに溶融樹脂を射出した際に、溶融樹脂の流動が妨げられるおそれがある。これにより、成形体の一部が成形されないなどの事態が生じ、成形体の品質が低下する事態が懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、基材をプレス成形する際に、基材の一部がキャビティ内部に入り込む事態を抑制することが可能な成形構造体の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、繊維及び熱可塑性樹脂を含む基材と、前記基材上に射出成形された成形体と、を備えた成形構造体の製造方法であって、一対のプレス型によって、前記基材における前記成形体の成形箇所が、その周囲よりも薄肉状となるように加熱プレスする加熱プレス工程と、前記加熱プレス工程の後に行われ、一対の成形型によって、前記基材をプレス成形する基材成形工程と、前記一対の成形型によって前記基材がプレスされた状態で、前記一対の成形型のうち、一方の成形型における前記基材との当接面に凹設されたキャビティに溶融樹脂を射出することで、前記成形体を前記基材と接合された状態で成形する成形体成形工程と、を備えることに特徴を有する。
本発明によれば、加熱プレス工程において、基材における成形体の成形箇所を予め薄肉状にしておくことで、基材成形工程において、当該成形箇所がプレスされる量を少なくすることができる。これにより、基材成形工程において、プレスされた基材の一部がキャビティに入り込む事態を抑制することができる。この結果、成形体成形工程においてキャビティに溶融樹脂をより確実に射出することができる。
上記構成において、前記基材成形工程においては、前記一対の成形型によって、前記基材における前記成形体の前記成形箇所の厚さを小さくするようにプレス成形するものとすることができる。
成形箇所の厚さを小さくすることで、成形箇所(基材において成形体が成形される部分)の密度をより高くすることができる。これにより、成形箇所の強度をより高くすることができる。また、当該成形箇所の密度を高くすることで、基材内部へ溶融樹脂が浸み込み難くなる。これにより、基材の内部を通って溶融樹脂が基材上(成形体が成形される面)に浸み出す事態を抑制できる。
成形体を成形する溶融樹脂が基材上に浸み出すと、成形体と基材との接合面積が大きくなる。
成形体と基材との接合面積が大きいと、溶融状態の成形体が冷却されて収縮する際には、その収縮の影響が大きくなる。例えば、成形体における基材との接合部が収縮すると、基材には応力が生じるが、接合部の面積が大きい程、その応力は大きくなる。これにより、成形体の収縮に起因して基材の意匠面に凹凸が生じることが懸念される。基材の意匠面に凹凸が生じると、意匠性が低下してしまう。本発明では、基材における成形体の成形箇所を高い密度とすることで、成形体を成形するための溶融樹脂が基材上に浸み出す事態を抑制できるから、意匠性が低下する事態を抑制することができる。
また、前記加熱プレス工程においては、前記一対のプレス型のうちいずれか一方のプレス型に設けられた突部によって、前記成形箇所の前記成形体が成形される側の面を凹ませることで前記成形箇所を薄肉状とするものとすることができる。
プレス型に突部を設けるという簡易な構成で基材における成形体の成形箇所を薄肉状にすることができる。
本発明によれば、基材をプレス成形する際に、基材の一部がキャビティ内部に入り込む事態を抑制することが可能な成形構造体の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る成形構造体を示す斜視図 図1の成形構造体を製造する製造方法及び成形型を示す断面図(トリムボードが成形される前の状態) 基材成形工程を示す断面図(図1のA−A線で切断した図に対応) 図3の状態から取付ボス成形空間に溶融樹脂を射出した状態を示す断面図(成形体成形工程を示す図) 加熱プレス工程に用いるプレス型を示す斜視図 加熱プレス工程を示す断面図(図5のC−C線で切断した図に対応) 基材成形工程において、ランナー付近を拡大して示す断面図(図3のB−B線で切断した図に対応) 基材成形工程において、プレボードをプレスした状態を示す断面図 基材成形工程の変形例を示す図 加熱プレス工程の変形例を示す図 比較例を示す断面図
本発明の一実施形態を図1ないし図8によって説明する。本実施形態では、成形構造体として、ドアトリム10を例示する。ドアトリム10(成形構造体)は、車両用ドアに取り付けられるもので、図1に示すように、トリムボード20(基材)と、トリムボード20上に射出成形された取付ボス30(機能部品)を備えている。
トリムボード20は略平板状をなし、繊維に熱可塑性樹脂であるポリプロピレンを含浸させることで構成されたマット状のプレボードP1(図2参照)をプレス成形することで成形される。トリムボード20は、例えば、プレス成形によって、圧縮(板厚を小さく)されており、プレボードP1よりも密度が高いものとされる。
なお、プレボードP1(トリムボード20)に用いられる繊維としては、例えば、木材等を解織して得た木質繊維やケナフ等の靭皮植物繊維などが用いられるが、繊維の種類はこれに限定されない。
なお、トリムボード20において、ポリプロピレンは繊維を繋ぐバインダーとしての役割を果たしている。また、トリムボード20をポリエチレンテレフタレート等のポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂と繊維との混合物にて形成してもよい。
取付ボス30は、例えば、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンによって形成され、図1に示すように、トリムボード20の裏面(車室内側の面)から突出する形で成形されている。
また、取付ボス30は、トリムボード20と接合されている。取付ボス30は、円筒状をなす本体部31を有している。本体部31は、例えば、ドアトリム10に取り付けられる部品(例えば、ドアポケット、オーナメント、アームレストなど)の取付部として機能するものである。
また、取付ボス30は、本体部31の基端(トリムボード20との接合部分付近)から延びる複数の補強リブ32を有している。補強リブ32は、トリムボード20に対する本体部31の接合強度をより高くする機能を担っている。
取付ボス30は、トリムボード20上に複数個(本実施形態では2個)形成されている。2つの取付ボス30(以下の説明では、符号30A,30Bを付す)は、下型61に設けられた一箇所のゲート62(図4参照)から射出された溶融樹脂によってそれぞれ成形される(詳しくは後述)。
また、トリムボード20の裏面には、図1に示すように、第1リブ21及び第2リブ22が形成されている。第1リブ21及び第2リブ22は、一箇所のゲート62から溶融樹脂を射出して取付ボス30A,30Bを射出成形する際に成形される。
具体的には、第1リブ21及び第2リブ22は、取付ボス30A,30Bを成形する際に、溶融樹脂を流通するためのランナー66,67(図2参照、詳しくは後述)内に充填された溶融樹脂が冷却されることで形成されたもの(ランナーの跡)である。
第1リブ21は、直線状をなし、その一端側が取付ボス30Aと連結されている。なお、第1リブ21における取付ボス30Aとの接続部分21Aは、例えば、取付ボス30Aに向かうにつれて、その突出高さが大きくなる構成となっている。
第2リブ22は、図1に示すように、2つの取付ボス30A,30Bを連結する形で延設されている。
本実施形態のドアトリム10は、図5に示すプレス型70(加熱プレス型)と、図2に示す成形装置40を用いて製造される。
具体的には、プレボードP1を一対のプレス型70,71にて加熱プレスした後、余熱によって軟化しているプレボードP1を成形装置40の上型51及び下型61によって製品形状にプレス成形する。これにより、トリムボード20が成形される。
そして、トリムボード20を上型51及び下型61によってプレスした状態で、トリムボード20と下型61間に形成された成形空間S2,S3に溶融樹脂を射出することで取付ボス30A、取付ボス30B、第1リブ21、第2リブ22が成形される。
次に一対のプレス型70,71の構成について説明する。図5に示す一対のプレス型70,71は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって、互いに型閉じ及び型開きが可能な構成となっている。
一対のプレス型70,71(プレス板、熱板)には、例えば、通電によって発熱するヒータなどの発熱手段が内蔵されている。これにより、プレス型70,71は、所定の温度に加熱可能な構成となっており、プレボードP1を加熱プレスすることができる。なお、このようなヒータは、プレス型70,71のうちいずれか一方のみに設けられていてもよい。
トリムボード20の裏面P1A(意匠面と反対側の面)と対向されるプレス型71(一方のプレス型)の型面には、プレス型70に向かって突出される突部72が設けられている。この突部72は、トリムボード20の取付ボス30A,30B、第1リブ21及び第2リブ22が成形される箇所に対応する箇所に設けられている。
次に、ドアトリム10を製造する成形装置40について説明する。本実施形態における成形装置40(射出成形装置)は、図2に示すように、射出装置41と、上型51及び下型61(一対の成形型)とを備えている。
射出装置41は、例えば、スクリュウタイプのものとされ、本実施形態では下型61に設けられている。
上型51は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって、下型61(固定型)に対して移動が可能な可動型とされる。上型51を下型61に対して接近離間させることで上型51及び下型61の型閉じ及び型開きが可能な構成となっている。
以下の説明では、上型51及び下型61が型閉じされた状態を閉状態(図3及び図4の状態)、上型51及び下型61が型開きされた状態を開状態(図2の状態)と呼ぶものとする。
下型61は、上型51との対向面61Aが上型51に向かって突き出す形状をなしている。また、上型51は、下型61との対向面51Aが、下型61の形状に対応して凹む形状をなしている。上型51は、図3に示すように、閉状態では下型61に対して、トリムボード20の板厚に等しい距離だけ離間して対向配置される。
つまり、閉状態では上型51と下型61との間にはトリムボード20を成形するための基材成形空間S1が形成される。これにより、上型51及び下型61で、プレボードP1をプレスすると、プレボードP1が基材成形空間S1の形状に対応する形に圧縮され、トリムボード20が成形される構成となっている。
下型61の内部には、ランナー66に対する樹脂射出口であるゲート62が設けられている。ゲート62を通じて、射出装置41からランナー66に対して溶融樹脂が射出可能な構成となっている。また、下型61には、取付ボス30Aを成形するための取付ボス成形空間S2、及び取付ボス30Bを成形するための取付ボス成形空間S3がそれぞれ形成されている。
ランナー66は、下型61において、ゲート62と取付ボス成形空間S2とを連通する形で形成されている。これにより、ランナー66を通じて射出装置41(ひいてはゲート62)から取付ボス成形空間S2内に溶融樹脂を射出可能な構成となっている。
また、ランナー66における取付ボス成形空間S2との接続部分は、取付ボス成形空間S2に向かうにつれて、深さが大きくなっている。これにより、ランナー66から取付ボス成形空間S2に溶融樹脂が流動しやすい構成となっている。
ランナー67(キャビティ、樹脂流通部)は、下型61において、取付ボス成形空間S2と取付ボス成形空間S3とを連通する形で形成されている。これにより、取付ボス成形空間S2に射出された溶融樹脂は、ランナー67を通じて、取付ボス成形空間S3に流通される構成となっている。
このように、本実施形態においては、溶融樹脂を射出するための射出装置41を一つ備えるだけで取付ボス成形空間S2及び取付ボス成形空間S3の各々に溶融樹脂を射出することができ、より簡易な構成で2つの取付ボス30A,30Bを成形することができる。
また、取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67は、下型61における上型51との対向面61A(一方の型における基材との当接面)にそれぞれ凹設されている。つまり、取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67は、外部へ開口されている。
また、閉状態において、上述した基材成形空間S1は、図3に示すように、取付ボス成形空間S2,S3の各々と連通されている。なお、基材成形空間S1と取付ボス成形空間S2,S3の連通部分は、トリムボード20と各取付ボス30A,30Bとの接合部分に対応している。
取付ボス成形空間S2は、取付ボス30Aの本体部31を成形するための本体部成形空間S21と、取付ボス30Aにおける各補強リブ32を成形するための複数の補強リブ成形空間S22を有している。
また、取付ボス成形空間S3は、取付ボス30Bの本体部31を成形するための本体部成形空間S31と、取付ボス30Bにおける各補強リブ32を成形するための複数の補強リブ成形空間S32を有している。
つまり、本体部成形空間S21,S31は、本体部31の円筒形状に対応して凹む形状をなしており、補強リブ成形空間S22,S32は、補強リブ32の板形状に対応した溝形状をなしている。
図7及び図8は、図3におけるB−B線で切断した断面に対応する断面図であって、ランナー67付近を示す図である。図7及び図8に示すように、下型61における上型51との対向面61A(基材との当接面)において、ランナー67の形成箇所は、上型51に向かって突出する突出部63とされる。
言い換えると、ランナー67は、突出部63の突出端面63Aを凹設することで形成されている。なお、ランナー67は、図5に示すように、その開口幅が上方(開口側)に向かうにつれて大きくなる形状をなしている。これにより、ランナー67から、第2リブ22の型抜きを容易に行うことができる。
突出部63は、図6に示すように断面視略台形状をなしており、突出端面63A及び突出端面63Aからそれぞれ延びる傾斜面63B,63Cとを有している。そして、突出部63の突出端面63Aを凹設する形でランナー67が形成されている。
なお、上述したプレス型71に形成された突部72(図6参照)は、突出部63とほぼ同じ形状(断面視略台形状)をなしているが、その突出高さH1は、突出部63の突出高さH2よりも低く設定されている。
ランナー66,67は、下型61における上型51との対向面61Aに凹設されている。つまり、ランナー66,67は上方(上型51側)に開口されている。このようなランナー66,67は、例えば、切削加工等により形成することができる。
次に、本実施形態のドアトリム10の製造方法について説明する。本実施形態におけるドアトリム10の製造方法は、プレボードP1を一対のプレス型70,71によって加熱プレスする加熱プレス工程と、プレボードP1をプレス成形してトリムボード20とする基材成形工程と、トリムボード20上に取付ボス30A,30Bを成形する成形体成形工程と、を備えている。
<加熱プレス工程>
加熱プレス工程では、図5及び図6に示すように、プレボードP1(成形前の基材)をフッ素樹脂製の一対のシート74,75の間に挟み込んだ状態で、加熱された一対のプレス型70,71によって加熱プレスする。なお、このようなシート74,75としては、例えば、テフロン(登録商標)シートを例示することができる。
これにより、プレス型70,71の熱は、シート74,75を介してプレボードP1に伝導される結果、プレボードP1は加熱される。
なお、この時のプレボードP1の加熱温度は、プレボードP1を構成する熱可塑性樹脂の融点より高いものとされる。熱可塑性樹脂として、例えば、融点が約170℃のポリプロピレンを用いた場合、プレボードP1を約230℃まで加熱する。これにより、プレボードP1が軟化状態となる。
次工程の基材成形工程では、本工程の余熱を利用して、軟化状態のプレボードP1のプレス成形を行う。プレボードP1を次工程(基材成形工程)に移す過程では、プレボードP1の温度がある程度低下する。このため、本工程においては、プレボードP1のポリプロピレンを融点よりも十分に高い温度に加熱しておき、基材成形工程において、プレボードP1の軟化状態が維持されるようにしておく。
プレス型70,71によってプレボードP1がプレスされると、プレボードP1において、突部72に押圧された箇所は、その周囲の箇所に比して、圧縮される量が多くなる。
このため、プレス型71の突部72によって、プレボードP1の裏面P1A(成形体の成形箇所が成形される側の面)は凹まされ、凹部P2が形成される。言い換えると、プレボードP1における成形体(取付ボス30A,30B、第1リブ21及び第2リブ22)の成形箇所が、その周囲よりも薄肉状となるように成形される。
プレボードP1の加熱プレスが完了した後、プレス型70,71からプレボードP1を取り外す。プレス型70,71とプレボードP1の間には、シート74,75がそれぞれ介在されているから、軟化状態のプレボードP1がプレス型70,71に張り付くことがない。このため、プレボードP1を容易にプレス型70,71から取り外すことができる。
<基材成形工程>
基材成形工程では、図2に示すように、前工程で加熱されたプレボードP1を、開状態にある上型51と下型61の間にセットする(図2及び図7の状態)。この時、図7に示すように、下型61の突出部63とプレボードP1の凹部P2とが対向するようにプレボードP1を配置する。
その後、図3及び図8に示すように、上型51及び下型61を型閉じすることで、上型51と下型61によってプレボードP1がプレス成形される。また、これと同時にプレボードP1の周端部PA(外周不要部分)は両型51,61のせん断によって切除される。これにより、上型51と下型61によってトリムボード20が成形される。
図8に示すように、上型51と下型61によるプレス成形時には、プレボードP1における突出部63に押圧される箇所(凹部P2の形成箇所)は、突出部63によって押圧されることで、その凹みの深さがさらに大きくなる。
これにより、トリムボード20において、突出部63に押圧された箇所は、凹部P2よりもさらに深さの大きい凹部(以下の説明では、凹部20Aと呼ぶ)となる。つまり、凹部20Aの形成箇所は、周囲に比べて厚さ(板厚)が小さくなるようにプレス成形され、その周囲の箇所に比して密度が高い高密度部24とされる。
また、成形されたトリムボード20は、図3に示すように、取付ボス成形空間S2,S3の開口を閉塞した状態で配されている。これにより、取付ボス成形空間S2,S3は、トリムボード20に閉塞されることで閉じた空間として形成される。
<成形体成形工程>
次に、上型51と下型61によってトリムボード20がプレスされた状態(図3の状態)で、射出装置41によりゲート62から溶融樹脂をランナー66に射出する。
ランナー66に射出された溶融樹脂は、図4に示すように、ランナー66を通じて、取付ボス成形空間S2へ流動する。また、取付ボス成形空間S2内へ供給された溶融樹脂は、ランナー67を通じて、取付ボス成形空間S3に流動する。これにより、取付ボス成形空間S2及び取付ボス成形空間S3に溶融樹脂が充填される。
取付ボス成形空間S2,S3に溶融樹脂が充填される過程においては、溶融樹脂がトリムボード20内部の軟化したポリプロピレンを上方へ押し込みつつ、この軟化したポリプロピレンに代わって繊維の内部へと浸透する。これと同時に、繊維の内部に浸透した溶融樹脂は、トリムボード20内部の軟化したポリプロピレンと混ざり合い、渾然一体となる(混融される)。
こうして、取付ボス成形空間S2,S3の双方に溶融樹脂を充填させ、その後、溶融樹脂が冷却されることで、図4に示すように、取付ボス30A,30Bがトリムボード20と接合された状態で成形される。これにより、成形体成形工程が完了する。
また、ランナー66及びランナー67に充填された溶融樹脂は、冷却されることで、トリムボード20上における第1リブ21及び第2リブ22として、それぞれ形成される。この後、上型51及び下型61を開き、取付ボス30がトリムボード20と一体的に接合された状態のドアトリム10を脱型する。これにより、ドアトリム10の製造が完了する。
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、加熱プレス工程において、プレボードP1における第2リブ22の成形箇所を予め薄肉状にしておくことで、基材成形工程において、当該成形箇所のプレスされる量を少なくすることができる。これにより、基材成形工程において、プレスされたプレボードP1の一部がランナー67に入り込む事態を抑制することができる。この結果、成形体成形工程においてランナー67(ひいては、取付ボス成形空間S3)に溶融樹脂をより確実に供給することができる。
上記効果について、図7及び図8を用いて具体的に説明する。基材成形工程において、プレボードP1は、上型51及び下型61にプレス成形されることでトリムボード20となる。下型61には、取付ボス成形空間S3に溶融樹脂を流動させるためのランナー67(樹脂流通路)が形成されている。
このため、プレボードP1がプレスされることで、プレスされたプレボードP1の一部(膨出部20B)は膨出し、ランナー67内に侵入する(図8の矢線参照)。このような、膨出部20Bがランナー67内に侵入すると、ランナー67における溶融樹脂の流動性が低下する。
成形体成形工程において、ゲート62から射出された溶融樹脂は、ランナー67を通って取付ボス成形空間S3に流動する。このため、ランナー67における溶融樹脂の流動性が低下すると、取付ボス成形空間S3に溶融樹脂が供給されにくくなる。このため、膨出部20Bの高さは、低い程好ましい。
本実施形態では、加熱プレス工程において、プレボードP1に凹部P2を予め形成することとしている。このため、基材成形工程では、凹部P2の形成箇所は、凹部P2が形成されていない場合と比べて、プレスされる量が少なくなる。この結果、膨出部20Bの高さH3を小さくすることができる。言い換えると、プレボードP1の一部(膨出部20B)がランナー67に入り込む事態を抑制することができる。
また、膨出部20Bの高さH3を小さくするためには、凹部P2の深さをより大きくすればよい。言い換えると、加熱プレス工程において凹部P2の形成箇所の板厚T1をより小さくすればよい。
これについて、具体的な数値の一例を挙げて説明する。ここでは、板厚T2が2.2mmのプレボードP1を、基材成形工程によって、高密度部24の板厚T3(図8参照)が1.0mmになるようにプレスする場合を例示する。
加熱プレス工程において凹部P2の形成箇所の板厚T1(図7参照)が、1.9mmになるようにプレスした場合、基材成形工程で生じる膨出部20Bの高さH3は、4.0mmとなった。また、板厚T1を1.6mmにした場合、膨出部20Bの高さH3は、3.3mmとなった。そして、板厚T1を1.2mmにした場合、膨出部20Bの高さH3は、2.6mmとなった。
このように、凹部P2の形成箇所の板厚T1を小さくする程、膨出部20Bの高さH3が小さくなることが確認できた。なお、ここで挙げた板厚T1、板厚T2、高さH3などの値は一例であり、これらの値に限定されるものではない。
また、基材成形工程においては、上型51及び下型61によって、プレボードP1における第2リブ22の成形箇所の板厚を小さくするようにプレス成形している。具体的には、下型61に突出部63を設けることで、第2リブ22の成形箇所をより強く押圧し、加熱プレス工程直後の板厚よりもさらに小さくなるようにしている。
第2リブ22の成形箇所の板厚を小さくすることで、その部分の密度をより高くすることができる。これにより、当該成形箇所(高密度部24)の強度をより高くすることができる。
また、当該成形箇所の密度を高くすることで、トリムボード20内部へ溶融樹脂が浸み込み難くなる。これにより、溶融樹脂がトリムボード20の内部を通って、トリムボード20の裏面P1A上に浸み出す事態を抑制できる。
図11に示すように、第2リブ22を成形する溶融樹脂がトリムボード20の裏面P1A上に浸み出すと、第2リブ22とトリムボード20との接合面積が大きくなる。
第2リブ22とトリムボード20との接合面積が大きいと、溶融状態の第2リブ22が冷却されて収縮する際には、その収縮の影響が大きくなる。例えば、第2リブ22におけるトリムボード20との接合部22A(図11の比較例参照)が収縮すると、トリムボード20には応力が生じるが、接合部22Aの面積が大きい程、その応力は大きくなる。
これにより、第2リブ22の収縮に起因してトリムボード20の表面20D(意匠面)に凹凸(例えば、図11に示す突部9参照)が生じることが懸念される。トリムボード20の表面に凹凸が生じると、意匠性が低下してしまう。本実施形態では、第2リブ22の成形箇所を高密度部24とすることで、第2リブ22を成形するための溶融樹脂がトリムボード20の裏面P1A上に浸み出す事態を抑制できるから、意匠性が低下する事態を抑制することができる。
また、突出部63によって、トリムボード20の裏面P1Aは、強く押圧されているから、成形体成形工程において、突出部63と裏面P1Aとの間に溶融樹脂が入り込む事態を抑制することができる。このため、溶融樹脂がトリムボード20の裏面P1A上に浸み出す事態をより確実に抑制することができる。
また、本実施形態では、突出部63によって、プレボードP1における第2リブ22の成形箇所の板厚を小さくするようにプレスするため、突出部63を設けていない構成と比べて、プレボードP1のプレス量は大きくなる。このため、仮に凹部P2を予め形成せずに、基材成形工程にてプレボードP1をプレスした場合には、膨出部20Bの高さがより大きくなってしまう。
本実施形態では、突出部63によってプレボードP1をプレスする方法としつつも、突出部63によってプレスされる部分(第2リブ22の成形箇所)に予め凹部P2を形成しておくことで、膨出部20Bの高さを小さくすることができ、好適である。
また、加熱プレス工程においては、プレス型71に設けられた突部72によって、プレボードP1の裏面P1Aを凹ませることで第2リブ22の成形箇所を薄肉状としている。
プレス型71に突部72を設けるという簡易な構成でプレボードP1における第2リブ22の成形箇所を薄肉状にすることができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、成形構造体としてドアトリム10を、基材としてトリムボード20を例示したが、これに限定されない。基材としては、繊維と熱可塑性樹脂を含むものであればよく、例えば、ドアトリム10を構成するオーナメント基材、シートのバックボード、シートの機能品を隠蔽するシールド材などを例示することができる。成形構造体としては、基材に対して溶融樹脂を射出成形することで成形された成形体を備えたものであればよい。また、成形体としては、取付ボスに限定されず、例えば、クリップ座などを例示することができる。また、ドアトリム10には、取付ボス30以外の部品が設けられていてもよい。
(2)取付ボス30の個数は上記実施形態で例示した数(2個)に限定されず適宜変更可能である。例えば、トリムボード20上に取付ボス30が一つのみ形成されていてもよいし、3つ以上形成されていてもよい。
(3)トリムボード20上に成形される成形体(取付ボス30、第1リブ21、第2リブ22)の形状は、上記実施形態で例示したものに限定されず適宜変更可能である。
(4)上記実施形態では、突出部63がランナー67の形成箇所に設けられている構成を例示したが、これに限定されない。例えば、突出部63がランナー66の形成箇所に設けられていてもよい。
(5)トリムボード20及び取付ボス30の材質は上記実施形態で例示したものに限定されず適宜変更可能である。
(6)上記実施形態では、上型51を可動型とし、下型61を固定型としたが、これに限定されない。なお、一対のプレス型70,71の型閉じ及び型開き方向は上下方向に限定されず、適宜変更可能である。また、一対の成形型(上記実施形態では、上型51及び下型61)の型閉じ及び型開き方向も上下方向に限定されず、適宜変更可能である。
(7)上記実施形態では、下型61に突出部63を設け、基材成形工程において、プレボードP1における第2リブ22の成形箇所の板厚を小さくするようにプレス成形したが、これに限定されない。図9に示すように、下型61に突出部63が設けられていなくてもよい。
(8)凹部P2及び突部72の形状は、上記実施形態で例示した断面視略台形状に限定されず、適宜変更可能である。図9に示すように、例えば、凹部P2を断面視長方形状としてもよい。
(9)上記実施形態では、凹部P2を形成するための突部(突部72)をプレス型71に設ける構成としたが、これに限定されない。図10に示すように、例えば、シート75に凹部P2を形成するための突部(突部172)を一体的に形成してもよい。
(10)上記実施形態では、凹部P2をプレボードP1の裏面P1Aに形成したが、これに限定されない。例えば、凹部P2をプレボードP1の表側の面(意匠面)に形成してもよい。
(11)上記実施形態では、プレス成形工程において、プレボードP1とプレス型70,71との間にフッ素樹脂製のシート74,75をそれぞれ介在させる手順を例示したが、これに限定されない。シート74,75を介在させていなくてもよく、例えば、プレス型70,71の型面にフッ素加工などを施すことで、プレス型70,71からプレボードP1を離型させ易くしてもよい。
10…ドアトリム(成形構造体)、20…トリムボード(基材)、22…第2リブ(成形体)、51…上型(一対の成形型を構成)、61…下型(一対の成形型のうち、一方の成形型)、61A…対向面(一方の成形型における基材との当接面)、67…ランナー(キャビティ)、70…プレス型、71…プレス型( 一対のプレス型のうちいずれか一方のプレス型)、72…突部、P1…プレボード(成形前の基材)、P1A…プレボードの裏面(成形箇所の成形体が成形される側の面)

Claims (3)

  1. 繊維及び熱可塑性樹脂を含む基材と、前記基材上に射出成形された成形体と、を備えた成形構造体の製造方法であって、
    一対のプレス型によって、前記基材における前記成形体との接合部とその周辺領域とを含む前記成形体の成形箇所が、その周囲よりも薄肉状となるように加熱プレスする加熱プレス工程と、
    前記加熱プレス工程の後に行われ、一対の成形型によって、前記成形箇所における前記周辺領域の厚さを小さくするように、前記基材をプレス成形する基材成形工程と、
    前記基材成形工程の後に行われ、前記一対の成形型によって前記基材がプレスされた状態で、前記一対の成形型のうち一方の成形型における前記基材との当接面に凹設されたキャビティに溶融樹脂を射出することで、前記成形体を前記成形箇所における前記接合部にて前記基材と接合された状態で成形する成形体成形工程と、を備える成形構造体の製造方法。
  2. 前記加熱プレス工程においては、前記一対のプレス型のうちいずれか一方のプレス型に設けられた突部によって、前記成形箇所の前記成形体が成形される側の面を凹ませることで前記成形箇所を薄肉状とする請求項1に記載の成形構造体の製造方法。
  3. 前記一対の成形型のうち前記成形箇所と対応する位置には、前記一方のプレス型に設けられた前記突部よりその突出高さの高い突出部が設けられ、
    前記突出部は、断面視略台形状をなし、その突出端面に凹設する形で前記キャビティが形成されており、
    前記基材成形工程においては、前記突出部によって前記成形箇所における前記周辺領域の厚さを小さくするように、前記基材をプレス成形する請求項2に記載の成形構造体の製造方法。
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