JP2021079554A - 成形構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形体を成形するための溶融樹脂が基材と成形面との間に漏れる事態を抑制する。【解決手段】フィルム80を下型61が有する成形面61Aに吸引することで、成形面61Aを覆う形でフィルム80を配置すると共にフィルム80によって成形面61Aに凹設されたランナー67の開口67Aを塞ぐフィルム配置工程と、フィルム配置工程の後に行われ、成形面61Aに配されたフィルム80と上型51が有する成形面51Aとの間に、プレボードP1を配した後、加熱された状態のプレボードP1を下型61及び上型51によってプレス成形する基材成形工程と、基材成形工程の後に行われ、下型61及び上型51によってトリムボード20がプレスされた状態でランナー67に溶融樹脂を射出することで、フィルム80を介してトリムボード20と接合された状態の第2リブ22を成形する成形体成形工程と、を備える。【選択図】図6
Description
本明細書で開示される技術は、成形構造体の製造方法に関する。
従来、繊維及び熱可塑性樹脂を含む基材と、基材上に射出成形された成形体とを備える成形構造体の製造方法として、例えば下記特許文献1のものが知られている。下記特許文献1には、成形前の基材(プレボード)を成形型によってプレス成形し、その状態で成形型に形成されたキャビティ(成形空間)に溶融樹脂を射出する方法が記載されている。これにより、基材と接合した状態で成形体を成形することができる。
上記構成においては、キャビティに溶融樹脂を射出した際に、溶融樹脂が基材の内部(表面付近)に浸透し、基材の内部を通って、基材と成形型の成形面(より詳しくは成形面のうちキャビティの開口縁部)との間に漏れ出す事態が懸念される。つまり、成形体の周囲に溶融樹脂が漏れ出す事態が懸念される。溶融樹脂が漏れ出すと、漏れた分だけ成形体になる溶融樹脂の量が減ることになり、成形体の欠肉が発生する虞がある。また、漏れた溶融樹脂が冷却されて収縮する際には基材に応力が作用することから、この応力によって、基材において成形体が接合される面とは反対側の面(例えば意匠面)に凹凸が生じる事態が懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、成形体を成形するための溶融樹脂が、基材と成形面との間に漏れる事態を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される成形構造体の製造方法は、熱可塑性樹脂を含むフィルムを第1成形型が有する第1成形面に吸引することで、前記第1成形面を覆う形で前記フィルムを配置すると共に前記フィルムによって前記第1成形面に凹設されたキャビティの開口を塞ぐフィルム配置工程と、前記フィルム配置工程の後に行われ、前記第1成形面に配された前記フィルムと第2成形型が有する第2成形面との間に、繊維及び熱可塑性樹脂を含む基材を配した後、加熱された状態の前記基材を前記第1成形型及び前記第2成形型によってプレス成形する基材成形工程と、前記基材成形工程の後に行われ、前記第1成形型及び前記第2成形型によって前記基材がプレスされた状態で前記キャビティに溶融樹脂を射出することで、前記フィルムを介して前記基材と接合された状態の成形体を成形する成形体成形工程と、を備えることに特徴を有する。
成形体成形工程においてキャビティの開口はフィルムによって塞がれているため、キャビティに射出された溶融樹脂が基材に向かう事態を抑制することができる。この結果、溶融樹脂が基材と第1成形面(より詳しくは第1成形面におけるキャビティの開口縁部)との間に漏れる事態を抑制できる。なお、フィルムに含まれる熱可塑性樹脂は、基材成形工程における基材の熱や成形体成形工程における溶融樹脂の熱によって溶融することで、基材又は成形体と接合することができるため、フィルムを介して基材と成形体とが接合することができる。さらに、フィルムは、基材成形工程の前工程(フィルム配置工程)において、第1成形面に吸引されているため、予め第1成形面に倣う形状になっている。このため、基材成形工程において基材及びフィルムがプレスされる過程でフィルムに局所的に応力が集中する事態を抑制できる。これにより、フィルムが破れることを抑制できるため、フィルムによって溶融樹脂が基材に向かう事態をより確実に抑制することができる。
また、前記フィルムは、前記基材に含まれる熱可塑性樹脂と同じ種類の熱可塑性樹脂を含むと共に前記基材と接合される基材側層と、前記成形体を構成する樹脂と同じ種類の樹脂を含むと共に前記成形体と接合される成形体側層と、前記成形体を構成する樹脂よりも融点が高い樹脂を含むと共に前記基材側層と前記成形体側層の間に配される中間層と、を備え、前記フィルム配置工程では、前記成形体側層によって前記キャビティの前記開口を塞ぐものとすることができる。このようにすれば、フィルムに対する基材及び成形体の接合強度をより高くすることができる。また、中間層は、成形体を構成する樹脂よりも融点が高い樹脂を含むため、キャビティに射出された溶融樹脂の熱によって溶融し難い。このため、中間層によって、キャビティに射出された溶融樹脂が基材に向かう事態をより確実に抑制することができる。
また、前記基材成形工程では、前記第1成形型及び前記第2成形型によって、前記基材において前記開口の開口縁部と対向する箇所が、その周囲よりも薄肉状となるようにプレス成形するものとすることができる。このようにすれば、基材においてキャビティに対応する箇所の密度をより高くすることができる。これにより、仮に溶融樹脂がフィルムを通過して基材に向かった場合であっても、基材内部に溶融樹脂が浸み込み難くなる。この結果、基材の内部を通って溶融樹脂が基材上(基材と第1成形面との間)に浸み出す事態を抑制できる。
本発明によれば、成形体を成形するための溶融樹脂が、基材と成形面との間に漏れる事態を抑制することができる。
本発明の一実施形態を図1から図11によって説明する。本実施形態では、成形構造体としてドアトリム10を例示する。ドアトリム10は、車両用ドアに取り付けられるもので、図1に示すように、トリムボード20(基材)と、トリムボード20の裏面(車室外側の面、意匠面と反対側の面)に設けられたフィルム80と、射出成形によってフィルム80上に成形された成形体35(取付ボス30、第1リブ21及び第2リブ22)と、を備えている。
トリムボード20は略平板状をなし、繊維に熱可塑性樹脂であるポリプロピレンを含浸させることで構成されたマット状のプレボードP1(成形前の基材、図4参照)をプレス成形することで成形される。トリムボード20は、例えば、プレス成形によって、プレボードP1よりも板厚が小さくされており、プレボードP1よりも密度が高いものとされる。なお、トリムボード20(プレボードP1)に用いられる繊維としては、例えば、木質繊維やケナフ等の靭皮植物繊維などが用いられるが、繊維の種類はこれに限定されない。なお、トリムボード20において、ポリプロピレンは繊維を繋ぐバインダーとしての役割を果たしている。また、トリムボード20がポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート等)を含んでいてもよい。
取付ボス30(機能部品)は、例えば、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンによって形成され、図1に示すように、トリムボード20の裏面(車室外側の面)から突出する形で成形されている。取付ボス30は、フィルム80を介してトリムボード20と接合されている。取付ボス30は、円筒状をなす本体部31を有している。本体部31は、例えば、ドアトリム10に取り付けられる部品(例えば、ドアポケット、オーナメント、アームレストなど)の取付部として機能するものである。また、取付ボス30は、本体部31の基端から延びる複数の補強リブ32を有している。補強リブ32は、本体部31の強度をより高くする機能を担っている。
取付ボス30は、複数個(本実施形態では2個)設けられている。以下の説明では、2つの取付ボス30のうち一方に符号30Aを付し、他方に符号30Bを付して区別する場合がある。2つの取付ボス30A,30Bは、下型61に設けられたゲート62(図2参照)から射出された溶融樹脂によってそれぞれ成形される(詳しくは後述)。第1リブ21は、図1に示すように、直線状をなし、その一端側が取付ボス30Aと連結されている。なお、第1リブ21における取付ボス30Aとの接続部分21Aは、例えば、取付ボス30Aに向かうにつれて、その突出高さが大きくなっている。
第2リブ22は、2つの取付ボス30A,30Bを連結する形で延設されている。第1リブ21及び第2リブ22は、ゲート62から溶融樹脂を射出して取付ボス30A,30Bを射出成形する際に成形される。より詳しくは、第1リブ21及び第2リブ22は、取付ボス30A,30Bを成形する際に、溶融樹脂を流通するためのランナー66,67(図2参照、詳しくは後述)内に充填された溶融樹脂が冷却されることで形成されたもの(ランナーの跡)である。
フィルム80は、図1に示すように、例えば、トリムボード20の裏面の全面を覆うものとされる。フィルム80は、図10に示すように、基材であるトリムボード20と接合される基材側層81(トリムボード側層)と、成形体35(取付ボス30、第1リブ21及び第2リブ22)と接合される成形体側層82と、基材側層81と成形体側層82の間に配される中間層83と、を備える。基材側層81は、例えば、ポリプロピレンからなる。つまり、基材側層81は、トリムボード20に含まれる熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)と同じ種類の熱可塑性樹脂を含むものとされる。
成形体側層82は、例えば、ポリプロピレンからなる。つまり、成形体側層82は、成形体35を構成する樹脂(成形体35を成形するための溶融樹脂)と同じ種類の樹脂を含むものとされる。中間層83は、成形体35を構成する樹脂よりも融点が高い樹脂を含むものとされる。例えば、成形体35が、ポリプロピレンからなる場合、中間層83を構成する樹脂としては、例えば、ナイロンやポリエチレンテレフタレートを用いることができる。なお、基材側層81、成形体側層82及び中間層83を構成する各樹脂は、上記したものに限定されない。例えば、基材側層81、成形体側層82及び中間層83の各々は、2種類以上の材料を含むものであってもよい。基材側層81の厚さT4及び成形体側層82の厚さT5は、例えば、中間層83の厚さT6よりも大きいものとされるがこれに限定されない。なお、フィルム80の厚さは、例えば100μmで設定され、厚さT4、厚さT5、厚さT6の比は例えば4:4:2で設定されているが、これに限定されない。
本実施形態のドアトリム10は、図2に示す成形装置40を用いて製造される。成形装置40は、図2に示すように、射出装置41と、上型51及び下型61(一対の成形型)とを備えている。射出装置41は、例えば、スクリュウタイプのものとされ、本実施形態では下型61に設けられている。本実施形態では、プレボードP1を上型51及び下型61によって製品形状にプレス成形することで、トリムボード20が成形される。そして、トリムボード20を上型51及び下型61によってプレスした状態で、トリムボード20と下型61間に形成された取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67に溶融樹脂を射出することで取付ボス30A、取付ボス30B、第1リブ21、第2リブ22が成形される。
上型51は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって、下型61(固定型)に対して移動が可能な可動型とされる。上型51を下型61に対して接近離間させることで上型51及び下型61の型閉じ及び型開きが可能な構成となっている。以下の説明では、上型51及び下型61が型閉じされた状態を閉状態(図5及び図6の状態)、上型51及び下型61が型開きされた状態を開状態(図4の状態)と呼ぶものとする。
下型61(第1成形型)は、上型51との対向面である成形面61A(第1成形面)が上型51に向かって突き出す形状をなしている。また、上型51は、下型61との対向面である成形面51A(第2成形面)が、下型61の形状に対応して凹む形状をなしている。上型51は、図5に示すように、閉状態では下型61に対して、トリムボード20の板厚に等しい距離だけ離間して対向配置される。これにより、上型51及び下型61で、プレボードP1をプレスすると、プレボードP1が圧縮され、トリムボード20が成形される構成となっている。
下型61の内部には、ランナー66に対する樹脂射出口であるゲート62が設けられている。ゲート62を通じて、射出装置41からランナー66に対して溶融樹脂が射出可能な構成となっている。また、下型61には、取付ボス30Aを成形するための取付ボス成形空間S2、及び取付ボス30Bを成形するための取付ボス成形空間S3がそれぞれ形成されている。
ランナー66は、下型61において、ゲート62と取付ボス成形空間S2とを連通する形で形成されている。これにより、ランナー66を通じて射出装置41(ひいてはゲート62)から取付ボス成形空間S2内に溶融樹脂を射出することが可能な構成となっている。また、ランナー66における取付ボス成形空間S2との接続部分は、取付ボス成形空間S2に向かうにつれて、深さが大きくなっている。これにより、ランナー66から取付ボス成形空間S2に溶融樹脂が流動しやすい構成となっている。
ランナー67は、下型61において、取付ボス成形空間S2と取付ボス成形空間S3とを連通する形で形成されている。これにより、取付ボス成形空間S2に射出された溶融樹脂は、ランナー67を通じて、取付ボス成形空間S3に流通される構成となっている。このように、本実施形態においては、溶融樹脂を射出するための射出装置41を1つ備えるだけで取付ボス成形空間S2及び取付ボス成形空間S3の各々に溶融樹脂を射出することができ、より簡易な構成で2つの取付ボス30A,30Bを成形することができる。
取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67は、下型61の成形面61Aにそれぞれ凹設されている。つまり、取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67は、上型51側に開口されたキャビティ(凹部)である。なお、取付ボス成形空間S2は、取付ボス30Aの本体部31を成形するための本体部成形空間S21と、取付ボス30Aにおける各補強リブ32を成形するための複数の補強リブ成形空間S22と、を有している。また、取付ボス成形空間S3は、取付ボス30Bの本体部31を成形するための本体部成形空間S31と、取付ボス30Bにおける各補強リブ32を成形するための複数の補強リブ成形空間S32と、を有している。つまり、本体部成形空間S21,S31は、本体部31の円筒形状に対応して凹む形状をなしており、補強リブ成形空間S22,S32は、補強リブ32の板形状に対応した溝形状をなしている。
なお、図9に示すように、下型61において、成形体35に対応する箇所(図9では成形体35のうち第2リブ22に対応する箇所を示す)は、その周辺部分64よりも上型51に向かって突出する突出部63とされる。言い換えると、取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67は、突出部63の突出端面63A(成形面61Aの一部)に凹設されている。なお、ランナー67は、図9に示すように、その開口幅が上方(開口側)に向かうにつれて大きくなる形状をなしている。これにより、ランナー67から、第2リブ22の型抜きを容易に行うことができる。突出部63は、例えば、図9に示すように断面視略台形状をなしており、突出端面63Aと、突出端面63Aからそれぞれ延びる傾斜面63B,63Cとを有している。
図2に示すように、下型61の成形面61Aには、複数の吸引孔68が形成されている。各吸引孔68は、貫通方向の一端部において上型51側に開口されており、他端部において下型61の内部に形成された真空室69と接続されている。吸引孔68は、成形面61Aの全面に亘って設けられている。真空室69には、ポンプ等の空気圧供給装置70が接続されている。下型61の成形面61Aにフィルム80を配置した状態で、空気圧供給装置70を作動させることで、各吸引孔68を介してフィルム80に負圧を与えることで成形面61Aにフィルム80を吸引すること(真空引き)が可能な構成となっている。
次に、本実施形態のドアトリム10の製造方法について説明する。本実施形態におけるドアトリム10の製造方法は、フィルム80を成形面61A上に配置するフィルム配置工程と、プレボードP1をプレス成形してトリムボード20とする基材成形工程と、トリムボード20上に取付ボス30A,30Bを成形する成形体成形工程と、を備える。
<フィルム配置工程>
フィルム配置工程では、図2に示すように、下型61の成形面61A上に、加熱された状態(軟化状態)のフィルム80を配置した後、空気圧供給装置70を作動させ、下型61に形成された各吸引孔68を介してフィルム80に対して負圧を与える。これにより、図3に示すように、加熱された状態のフィルム80を成形面61Aに吸引することで、成形面61Aを覆う形でフィルム80を配置する。なお、加熱された状態のフィルム80は、冷却固化することで、成形面61Aに倣う形状に成形される。また、フィルム80は成形面61Aの全面を覆う形で配されると共に、図10に示すように、フィルム80の成形体側層82が成形面61Aと対向する形で配される。このため、フィルム配置工程では、フィルム80(より詳しくは成形体側層82)によって取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67の各開口S2A,S3A,66A,67A(図2参照)が塞がれる。
フィルム配置工程では、図2に示すように、下型61の成形面61A上に、加熱された状態(軟化状態)のフィルム80を配置した後、空気圧供給装置70を作動させ、下型61に形成された各吸引孔68を介してフィルム80に対して負圧を与える。これにより、図3に示すように、加熱された状態のフィルム80を成形面61Aに吸引することで、成形面61Aを覆う形でフィルム80を配置する。なお、加熱された状態のフィルム80は、冷却固化することで、成形面61Aに倣う形状に成形される。また、フィルム80は成形面61Aの全面を覆う形で配されると共に、図10に示すように、フィルム80の成形体側層82が成形面61Aと対向する形で配される。このため、フィルム配置工程では、フィルム80(より詳しくは成形体側層82)によって取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67の各開口S2A,S3A,66A,67A(図2参照)が塞がれる。
<基材成形工程>
フィルム配置工程の後に行われる基材成形工程(トリムボード成形工程)では、図4及び図7に示すように、加熱された状態のプレボードP1を、開状態にある上型51と下型61の間にセットする。つまり、プレボードP1は、成形面61Aに配されたフィルム80と上型51が有する成形面51Aとの間に配される。この時のプレボードP1の加熱温度は、プレボードP1を構成する熱可塑性樹脂の融点より高いものとされる。これにより、プレボードP1が軟化状態となる。
フィルム配置工程の後に行われる基材成形工程(トリムボード成形工程)では、図4及び図7に示すように、加熱された状態のプレボードP1を、開状態にある上型51と下型61の間にセットする。つまり、プレボードP1は、成形面61Aに配されたフィルム80と上型51が有する成形面51Aとの間に配される。この時のプレボードP1の加熱温度は、プレボードP1を構成する熱可塑性樹脂の融点より高いものとされる。これにより、プレボードP1が軟化状態となる。
その後、図5及び図8に示すように、上型51及び下型61を型閉じすることで、上型51と下型61によってプレボードP1がプレス成形される。また、これと同時にプレボードP1の周端部PA(外周不要部分)は両型51,61のせん断によって切除される。これにより、上型51と下型61によってトリムボード20が成形される。なお、プレボードP1がプレス成形される過程では、フィルム80の基材側層81とプレボードP1とが接触することになる。この時、基材側層81を構成する熱可塑性樹脂は、プレボードP1の熱によって溶融(又は軟化)する。そして、基材側層81及びプレボードP1を構成する熱可塑性樹脂が冷却して固化することで、基材側層81とプレボードP1とが接合された状態となる。
また、図8に示すように、上型51と下型61によるプレス成形時には、プレボードP1において突出部63に対応する箇所は、突出部63によって押圧されることで、凹部20Aとなる。つまり、トリムボード20において凹部20Aの形成箇所は、周囲に比べて厚さ(板厚)が小さくなるようにプレス成形され、その周囲の箇所に比して密度が高い高密度部24となる。例えば、トリムボード20において、ランナー67(キャビティの一例)の開口67Aの開口縁部67Bと対向する箇所(対向部25、基材において開口の開口縁部と対向する箇所)は、高密度部24の一部であり、対向部25の周囲の部分37よりも薄肉状となるようにプレス成形される。なお、図8においては、対向部25の板厚をT1で示し、周囲の部分37(一般部)の板厚をT2で示している。
<成形体成形工程>
基材成形工程の後に行われる成形体成形工程では、図6に示すように、上型51と下型61によってトリムボード20及びフィルム80がプレスされた状態で、射出装置41によりゲート62から溶融樹脂をランナー66に射出する。ランナー66に射出された溶融樹脂は、図6に示すように、ランナー66を通じて、取付ボス成形空間S2へ流動する。また、取付ボス成形空間S2内へ供給された溶融樹脂は、ランナー67を通じて、取付ボス成形空間S3に流動する。これにより、取付ボス成形空間S2及び取付ボス成形空間S3に溶融樹脂が充填される。
基材成形工程の後に行われる成形体成形工程では、図6に示すように、上型51と下型61によってトリムボード20及びフィルム80がプレスされた状態で、射出装置41によりゲート62から溶融樹脂をランナー66に射出する。ランナー66に射出された溶融樹脂は、図6に示すように、ランナー66を通じて、取付ボス成形空間S2へ流動する。また、取付ボス成形空間S2内へ供給された溶融樹脂は、ランナー67を通じて、取付ボス成形空間S3に流動する。これにより、取付ボス成形空間S2及び取付ボス成形空間S3に溶融樹脂が充填される。
その後、取付ボス成形空間S2に充填された溶融樹脂が冷却されることで、図6に示すように、取付ボス30Aがフィルム80を介してトリムボード20と接合された状態で成形される。また、取付ボス成形空間S3に充填された溶融樹脂が冷却されることで、取付ボス30Bがフィルム80を介してトリムボード20と接合された状態で成形される。また、ランナー66に充填された溶融樹脂が冷却されることで、第1リブ21がフィルム80を介してトリムボード20と接合された状態で成形される。また、ランナー67に充填された溶融樹脂が冷却されることで、第2リブ22がフィルム80を介してトリムボード20と接合された状態で成形される。この後、上型51及び下型61を開き、ドアトリム10を脱型する。これにより、ドアトリム10の製造が完了する。
なお、取付ボス成形空間S2,S3及びランナー66,67に溶融樹脂が充填される過程では、成形体側層82(図10参照)は、溶融樹脂と接触することになる。このため、フィルム80における成形体側層82を構成する熱可塑性樹脂は、溶融樹脂の熱によって溶融(又は軟化)する。そして、成形体側層82及び溶融樹脂が冷却して固化することで、成形体35と成形体側層82とが接合された状態となる。
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、成形体成形工程においてキャビティの開口(例えばランナー67の開口67A)がフィルム80によって塞がれているため、キャビティ(例えばランナー67)に射出された溶融樹脂がトリムボード20に向かう事態を抑制することができる。この結果、成形体35を構成する溶融樹脂がトリムボード20の内部を通ってトリムボード20の裏面20E上に漏れる事態、言い換えると、溶融樹脂がトリムボード20と成形面61A(より詳しくは成形面61Aにおけるキャビティの開口縁部(例えば図9のランナー67の開口縁部67B参照))との間に漏れる事態を抑制できる。つまり、図11に示すように、成形体35の周囲に溶融樹脂91が漏れる(浸み出す)事態を抑制できる。
なお、フィルム80に含まれる熱可塑性樹脂は、基材成形工程におけるトリムボード20の熱や成形体成形工程における溶融樹脂の熱によって溶融することで、トリムボード20又は成形体35と接合することができるため、フィルム80を介してトリムボード20と成形体35とが接合することができる。
また、本実施形態では、フィルム80と成形面61Aとが接触する。フィルム80は、繊維を含むトリムボード20と比べて密度が高いため、成形面61Aとの間に隙間が生じ難い。このため、フィルム80を備えていない構成(トリムボード20と成形面61Aとが接触する構成)と比べて、成形体35の周囲に溶融樹脂が漏れる事態を抑制できる。
なお、成形体35の周囲に溶融樹脂が漏れると、成形体35において欠肉が生じる事態が懸念される。また、例えばランナー67において溶融樹脂が漏れる事態(溶融樹脂が第2リブ22の周囲に漏れる事態)が生じると、それ以降のキャビティ(取付ボス成形空間S3)に流れ込む溶融樹脂の量が少なくなり、取付ボス30Bにおいて欠肉が生じる虞があるが、本実施形態では、このような事態を抑制できる。
さらに、フィルム80は、基材成形工程の前工程(フィルム配置工程)において、成形面61Aに吸引されているため、予め成形面61Aに倣う形状になっている(成形されている)。このため、基材成形工程においてプレボードP1及びフィルム80がプレスされる過程でフィルム80に局所的に応力が集中する事態を抑制できる。これにより、フィルム80が破れることを抑制できるため、フィルム80によって溶融樹脂がトリムボード20に向かう事態をより確実に抑制することができる。
また、フィルム80は、トリムボード20に含まれる熱可塑性樹脂と同じ種類の熱可塑性樹脂を含むと共にトリムボード20と接合される基材側層81と、成形体35を構成する樹脂(成形体成形工程で射出する溶融樹脂)と同じ種類の樹脂を含むと共に成形体35と接合される成形体側層82と、成形体35を構成する樹脂よりも融点が高い樹脂を含むと共に基材側層81と成形体側層82の間に配される中間層83と、を備え、フィルム配置工程では、成形体側層82によってランナー67の開口67Aを塞ぐことを行う。
このようにすれば、基材側層81とトリムボード20の接合強度、及び成形体側層82と成形体35の接合強度をより高くすることができ、フィルム80に対するトリムボード20及び成形体35の接合強度をより高くすることができる。また、中間層83は、成形体35を構成する樹脂よりも融点が高い樹脂を含むため、ランナー67に射出された溶融樹脂の熱によって溶融し難い。このため、中間層83によって、ランナー67に射出された溶融樹脂がトリムボード20に向かう事態をより確実に抑制することができる。
また、基材成形工程では、下型61及び上型51によって、トリムボード20において開口67Aの開口縁部67Bと対向する対向部25が、その周囲よりも薄肉状となる(高密度部24となる)ようにプレス成形する。このようにすれば、トリムボード20においてランナー67に対応する箇所の密度をより高くすることができる。これにより、仮にランナー67に射出された溶融樹脂がフィルム80を通過してトリムボード20に向かった場合であっても、トリムボード20内部に溶融樹脂が浸み込み難くなる。この結果、トリムボード20の内部を通って溶融樹脂がトリムボード20上(トリムボード20と成形面61Aとの間)に浸み出す事態を抑制できる。
なお、図11の比較例(フィルム80を備えていない構成)に示すように、成形体35を成形する溶融樹脂がトリムボード20の裏面20E上に浸み出すと、浸み出した溶融樹脂91の分だけ成形体35におけるトリムボード20との接合部22Aの面積が大きくなる。接合部22Aが収縮するとトリムボード20には応力が生じるが、接合部22Aの面積が大きい程、その応力は大きくなる。
これにより、接合部22Aの面積が大きいと、その収縮に起因してトリムボード20の表面20D(意匠面)に凹凸が生じることが懸念される。トリムボード20の表面20Dに凹凸が生じると、意匠性が低下してしまう。本実施形態では、トリムボード20とランナー67の間にフィルム80を介在させると共に第2リブ22の成形箇所を高密度部24とすることで、成形体35(例えば第2リブ22)を成形するための溶融樹脂がトリムボード20の裏面20E上に浸み出す(トリムボード20と成形面61Aとの間に漏れる)事態を抑制できるから、意匠性が低下する事態を抑制することができる。
なお、高密度部24の密度をより高くする(板厚をより小さくする)ことで溶融樹脂がトリムボード20の裏面20E上に浸み出す事態をより確実に抑制できる。しかしながら、トリムボード20の板厚をより小さくすると、基材成形工程において、プレボードP1の一部がキャビティ(例えばランナー67)内に侵入し易くなる。プレボードP1の一部がキャビティ内に侵入すると、キャビティの一部が塞がれてしまい、成形体成形工程における溶融樹脂の流動性が低下する事態が懸念される。本実施形態では、フィルム80を備えることで、溶融樹脂がトリムボード20の裏面20E上に浸み出すことを抑制することができる。つまり、フィルム80を備える分だけ、高密度部24の密度を低くすることが可能となる。このため、基材成形工程において、プレボードP1の一部がキャビティ内に侵入する事態を抑制できる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、成形構造体としてドアトリム10を、基材としてトリムボード20を例示したが、これに限定されない。基材としては、繊維と熱可塑性樹脂を含むものであればよく、例えば、ドアトリム10を構成するオーナメント基材、シートのバックボード、シートの機能品を隠蔽するシールド材などを例示することができる。成形構造体としては、基材に対して溶融樹脂を射出成形することで成形された成形体を備えたものであればよい。また、成形体としては、取付ボスやリブに限定されず、例えば、クリップ座などを例示することができる。また、ドアトリム10には、取付ボス30以外の部品が設けられていてもよい。
(2)取付ボス30の個数は上記実施形態で例示した数(2個)に限定されず適宜変更可能である。例えば、トリムボード20上に取付ボス30が1つのみ形成されていてもよいし、3つ以上形成されていてもよい。
(3)トリムボード20上に成形される成形体(取付ボス30、第1リブ21、第2リブ22)の形状は、上記実施形態で例示したものに限定されず適宜変更可能である。
(4)トリムボード20、フィルム80及び成形体(取付ボス30、第1リブ21、第2リブ22)の材質は上記実施形態で例示したものに限定されず適宜変更可能である。
(5)上記実施形態では、第1成形型を下型61とし、第2成形型を上型51としたが、これに限定されない。第1成形型及び第2成形型の型閉じ及び型開き方向は上下方向に限定されず、適宜変更可能である。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、成形構造体としてドアトリム10を、基材としてトリムボード20を例示したが、これに限定されない。基材としては、繊維と熱可塑性樹脂を含むものであればよく、例えば、ドアトリム10を構成するオーナメント基材、シートのバックボード、シートの機能品を隠蔽するシールド材などを例示することができる。成形構造体としては、基材に対して溶融樹脂を射出成形することで成形された成形体を備えたものであればよい。また、成形体としては、取付ボスやリブに限定されず、例えば、クリップ座などを例示することができる。また、ドアトリム10には、取付ボス30以外の部品が設けられていてもよい。
(2)取付ボス30の個数は上記実施形態で例示した数(2個)に限定されず適宜変更可能である。例えば、トリムボード20上に取付ボス30が1つのみ形成されていてもよいし、3つ以上形成されていてもよい。
(3)トリムボード20上に成形される成形体(取付ボス30、第1リブ21、第2リブ22)の形状は、上記実施形態で例示したものに限定されず適宜変更可能である。
(4)トリムボード20、フィルム80及び成形体(取付ボス30、第1リブ21、第2リブ22)の材質は上記実施形態で例示したものに限定されず適宜変更可能である。
(5)上記実施形態では、第1成形型を下型61とし、第2成形型を上型51としたが、これに限定されない。第1成形型及び第2成形型の型閉じ及び型開き方向は上下方向に限定されず、適宜変更可能である。
10…ドアトリム(成形構造体)、20…トリムボード(基材)、25…トリムボードにおいて開口縁部67Bと対向する対向部(基材において開口の開口縁部と対向する箇所)、35…成形体、51…上型(第2成形型)、51A…成形面(第2成形面)、61…下型(第1成形型)、61A…成形面(第1成形面)、67…ランナー(キャビティ)、67A…ランナーの開口(キャビティの開口)、67B…開口の開口縁部、80…フィルム、81…基材側層、82…成形体側層、83…中間層、P1…プレボード(成形前の基材)
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂を含むフィルムを第1成形型が有する第1成形面に吸引することで、前記第1成形面を覆う形で前記フィルムを配置すると共に前記フィルムによって前記第1成形面に凹設されたキャビティの開口を塞ぐフィルム配置工程と、
前記フィルム配置工程の後に行われ、前記第1成形面に配された前記フィルムと第2成形型が有する第2成形面との間に、繊維及び熱可塑性樹脂を含む基材を配した後、加熱された状態の前記基材を前記第1成形型及び前記第2成形型によってプレス成形する基材成形工程と、
前記基材成形工程の後に行われ、前記第1成形型及び前記第2成形型によって前記基材がプレスされた状態で前記キャビティに溶融樹脂を射出することで、前記フィルムを介して前記基材と接合された状態の成形体を成形する成形体成形工程と、を備える成形構造体の製造方法。 - 前記フィルムは、
前記基材に含まれる熱可塑性樹脂と同じ種類の熱可塑性樹脂を含むと共に前記基材と接合される基材側層と、
前記成形体を構成する樹脂と同じ種類の樹脂を含むと共に前記成形体と接合される成形体側層と、
前記成形体を構成する樹脂よりも融点が高い樹脂を含むと共に前記基材側層と前記成形体側層の間に配される中間層と、を備え、
前記フィルム配置工程では、前記成形体側層によって前記キャビティの前記開口を塞ぐ請求項1に記載の成形構造体の製造方法。 - 前記基材成形工程では、前記第1成形型及び前記第2成形型によって、前記基材において前記開口の開口縁部と対向する箇所が、その周囲よりも薄肉状となるようにプレス成形する請求項1又は請求項2に記載の成形構造体の製造方法。
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