JP2022012776A - 成形構造体、成形構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材と樹脂成形部との接合部の外周において、熱収縮率の差に起因する段差が生じる事態を抑制することが可能な成形構造体を提供する。【解決手段】繊維及び熱可塑性樹脂を含み、板状をなす基材30と、基材30の端面から延設される形で当該基材30の端面に射出成形された樹脂成形部40と、を備え、端面のうち樹脂成形部40との接合部は、基材30の板面に対して傾斜している成形構造体である。接合部は、基材30の一方の面から他方の面にわたって一方向に傾斜している。【選択図】図10
Description
本明細書で開示される技術は、成形構造体、成形構造体の製造方法に関する。
従来、繊維と熱可塑性樹脂とを含む板状の基材の端面に対して樹脂成形部が延設された成形構造体が知られている。下記特許文献1には、一対の成形型によって基材を所定形状に成形した後、基材の端面に溶融樹脂を射出成形することで、樹脂成形部が延設された成形構造体を製造する方法が記載されている。
このような成形構造体において、樹脂成形部は、繊維と熱可塑性樹脂とからなる基材と比較して熱収縮率が大きいため、射出成形後の冷却過程において、基材よりも大きく熱収縮する。すなわち、基材と樹脂成形部との接合部の外周において、熱収縮率の差に起因する段差が生じる事態が懸念される(図11参照)。このような段差は、完成した成形構造体の意匠性を低下させるという問題がある。
本明細書で開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、基材と樹脂成形部との接合部の外周において、熱収縮率の差に起因する段差が生じる事態を抑制することが可能な成形構造体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される成形構造体は、繊維及び熱可塑性樹脂を含み、板状をなす基材と、前記基材の端面から延設される形で当該基材の前記端面に射出成形された樹脂成形部と、を備え、前記端面のうち前記樹脂成形部との接合部は、前記基材の板面に対して傾斜している。
一般的に樹脂成形部は、繊維を含む基材と比較して、熱収縮率が大きいものとされる。つまり、基材及び樹脂成形部が冷却固化する過程で、樹脂成形部が基材よりも大きく収縮する結果、基材と樹脂成形部との接合部の外周に段差が生じる事態が懸念される。上記構成では、接合部を基材の板面に対して傾斜させることによって、基材と樹脂成形部との収縮量の差を傾斜状の接合部に沿って基材の延在方向に分散させることができるから、従来のように接合部が板面に対して垂直な面とされる場合と比較して、接合部の外周の板厚方向における収縮量の差を小さくすることができる。つまり、接合部における基材および樹脂成形部の板厚方向の収縮量の急激な変化を回避することができるから、基材と樹脂成形部との接合部の外周に大きな段差が生じる事態を抑制することができる。また、これにより、成形構造体に段差発生に伴う皺やヨレ等の変形が起きることを抑制することができる。
上記成形構造体において、接合部は、基材の一方の面から他方の面にわたって一方向に傾斜していてもよい。このような構成によれば、傾斜面を板厚方向の一部に設ける構成や、複数の方向に傾斜する複数の傾斜面を組み合わせて設ける構成と比較して、接合部の外周において段差がより生じ難くなる。また、傾斜面を形成する工程において、従来板面に対して垂直に切断していた構成を単に斜めに切断するだけでよいから、作業が簡易である。
樹脂成形部は、基材に対してアンダーカット形状に形成されていてもよい。このような構成によれば、アンダーカット形状を有しながら軽量な成形構造体とすることができる。
また、成形構造体は乗物用内装材であり、基材の接合部は、乗物室内側が先細りとなる方向に傾斜していてもよい。成形構造体が乗物用内装材である場合、樹脂成形部を成形するための溶融樹脂は、意匠面となる乗物室内側の面を美しく保つために、乗物室外側の面から供給されることが想定される。上記構成によれば、乗物室外側の面から供給された溶融樹脂は、同じく乗物車室外側(溶融樹脂供給側)に配された傾斜状の接合部に沿って、隅々まで円滑に流動することができる。仮に接合部が乗物室外側が先細りとなる方向に傾斜している場合には、乗物室外側から供給された溶融樹脂は、乗物室外側の面から乗物室内側に配された傾斜状の接合部に回り込むように流れ込むことになり、流動性が劣ることとなる。その結果、充填不良が懸念される。また、このように接合部が乗物室内側が先細りとなる方向に傾斜している場合には、乗物室外側の面から供給された溶融樹脂の射出圧は傾斜状の接合部によって徐々に和らげられることとなり、射出圧によって基材の接合部付近に皺やヨレ等の変形が起きることを抑制することができる。
また、本明細書で開示される成形構造体の製造方法は、繊維及び熱可塑性樹脂を含み、板状をなす基材と、前記基材の端面から延設される形で当該基材の前記端面に射出成形された樹脂成形部と、を備える成形構造体の製造方法であって、 前記繊維および前記熱可塑性樹脂を含むマットをプレス型によって熱プレスしてプレボードを成形するプレボード成形工程と、前記プレボードの端面のうち少なくとも前記樹脂成形部との接合部を前記プレボードの板面に対して傾斜するようにカットするカット工程と、前記カット工程を経た前記プレボードを成形型により熱プレスして前記基材を成形する基材成形工程と、前記基材の前記端面及び前記成形型によって構成された成形空間に溶融樹脂を射出することで、前記基材の前記端面と接合された状態の前記樹脂成形部を成形する樹脂成形部成形工程と、前記基材および前記樹脂成形部を冷却する冷却工程と、を順に実行するものである。
上記の製造方法によれば、加熱・冷却工程を経る場合でも、熱収縮率の差に伴う基材と樹脂成形部との収縮量の差を、傾斜状の接合部に沿って基材の延在方向に分散させることができるから、基材と樹脂成形部との接合部の外周に大きな段差が生じる事態を抑制することができる。
また、樹脂成形部は、スライド機構を備えない成形型に対して型開き不能なアンダーカット形状部分を備えていてもよい。成形構造体がアンダーカット形状部分を備える場合、基材の端面に射出成形によって容易にアンダーカット形状部分を形成することができるが、一方で、異なる材質間の熱収縮率の差に起因する段差が生じることが懸念される。上記構成によれば、接合部が傾斜状にカットされることにより、上述したように、接合部の外周に大きな段差が生じる事態を抑制することができる。
また、溶融樹脂を、基材の一対の板面のうち傾斜状の接合部が配される板面側から射出する構成としてもよい。このような構成によれば、射出された溶融樹脂は、傾斜状の接合部に沿って隅々まで円滑に流動することができる。また、溶融樹脂の射出圧は傾斜状の接合部によって徐々に和らげられることとなり、射出圧によって基材の接合部付近に皺やヨレ等の変形が起きることを抑制することができる。
本発明によれば、基材と樹脂成形部との接合部の外周において、熱収縮率の差に起因する段差が生じる事態を抑制することが可能な成形構造体を提供することができる。
一実施形態を図1から図10によって説明する。本実施形態では、成形構造体として車両用のピラーガーニッシュ20を例示する。ピラーガーニッシュ20は、車室の側壁に配設されているセンターピラー(Bピラー、図示せず)に対して車室内側から取り付けられる車両用内装材(乗物用内装材の一例)である。なお、以下の説明においては、図1の左側を車両の前方、右側を車両の後方、上側を上方、下側を下方とする。また、ピラーガーニッシュ20のうち車室内側に配される面を表面20A、車室外側に配される面を裏面20Bとして説明する。
ピラーガーニッシュ20は、図1および図2に示すように、車両前後方向に延在して乗員と対向する面を構成する主壁部22と、主壁部22の車両前後方向における両端部において車室外側に向けて立ち上がる一対の側壁部(前方側壁部23および後方側壁部24)と、を備える。前方側壁部23および後方側壁部24の、主壁部22からの立ち上がり方向における先端部(車室外側の端部)は、アンダーカット形状をなすように内側(互いに近づく方向)に向けて屈曲している(図3参照)。すなわち、板状の主壁部22を板厚方向(図3の図示上下方向)に挟み込む、スライド機構を備えない上下の成形型に対して、前方側壁部23および後方側壁部24の先端部(車室外側の端部)は型開き不能な形状をなしている。
主壁部22は、上下方向に長い板状をなし、その中央部には、スライドプレート(図示せず)を車室内側に露出されるための開口部25が形成されている。主壁部22の下端部には、センターピラーに取り付けるための一対の取付片26が設けられている。主壁部22の上端部の裏面20B(車室外側の面)には、図2に示すように、クリップ座47が車室外側に突出する形で形成されている。クリップ座47は、図示しないクリップを保持することが可能な構成となっており、このクリップはセンターピラーに対して取り付けられる。また、前方側壁部23および後方側壁部24の各裏面20Bには、上下方向に並ぶ複数の補強リブ48が形成されている。
ピラーガーニッシュ20は、図2及び図3に示すように、繊維及び熱可塑性樹脂を含む部分である基材30と、熱可塑性樹脂によって形成された樹脂成形部40と、を備える。なお、図2においては、ピラーガーニッシュ20のうち、樹脂成形部40を網掛けで図示している。基材30はプレス成形によって成形され、樹脂成形部40は射出成形によって成形される。なお、ピラーガーニッシュ20は、基材30および樹脂成形部40を表面20A(車室内側の面)から覆う表皮材をさらに備えていてもよい。
基材30に用いられる繊維としては、例えば、ケナフ繊維が用いられるが、繊維の種類はこれに限定されない。基材30に用いられる繊維として、木質繊維、熱可塑性樹脂繊維、ガラス繊維や炭素繊維などを用いてもよい。また、基材30において、繊維は、バインダーとしての熱可塑性樹脂により結着されている。基材30に用いられるバインダーとしての熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリエステル系樹脂を例示することができる。一方、樹脂成形部40に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンを例示することができるが、これに限定されるものではない。なお、基材30及び樹脂成形部40に用いられる熱可塑性樹脂は、それぞれ異なる材質であってもよいし、同じ材質であってもよい。
基材30は、板状をなす基材側板状部31を備えており、この基材側板状部31は、主壁部22の大部分(上端部以外の部分)を構成する基材側主壁部32と、前方側壁部23の大部分(上端部及び側端部以外の部分)を構成する基材側前方側壁部33と、後方側壁部24の大部分(上端部及び側端部以外の部分)を構成する基材側後方側壁部34と、を備える。基材側前方側壁部33は、基材側主壁部32に対して屈曲する形で基材側主壁部32の車両前端部(図3では右側)から車室外側に立ち上がる形態をなしている。また、基材側後方側壁部34は、基材側主壁部32に対して屈曲する形で基材側主壁部32の車両後端部(図3では左側)から車室外側に立ち上がる形態をなしている。
一方、樹脂成形部40は、図2の網掛けで示すように、板状をなす成形部側板状部41、クリップ座47、補強リブ48を構成するものとされる。成形部側板状部41は、ピラーガーニッシュ20における下端以外の端部(上端部及び車室外側の端部)を構成するものとされる。具体的には、成形部側板状部41は、主壁部22の上端部を構成する成形部側主壁部42と、前方側壁部23の上端部を構成する成形部側前方側壁部43と、後方側壁部24の上端部を構成する成形部側後方側壁部44と、前方側壁部23における車室外側の端部の大部分を構成する前方延設部45と、後方側壁部24における車室外側の端部の大部分を構成する後方延設部46と、を備える。
樹脂成形部40の成形部側主壁部42は、その表裏の板面が、基材側主壁部32の表裏の板面と面一に連なるように、基材側主壁部32の上端面(接合部)に対して接合されている。成形部側前方側壁部43は、その表裏の板面が、基材側前方側壁部33の表裏の板面と面一に連なるように、基材側前方側壁部33の上端面(接合部)に対して接合されている。さらに、成形部側後方側壁部44は、その表裏の板面が、基材側後方側壁部34の表裏の板面と面一に連なるように、基材側後方側壁部34の上端面(接合部)に対して接合されている。
樹脂成形部40の前方延設部45は、基材側前方側壁部33の車室外側の端面33Aに沿うように、成形部側前方側壁部43から下方に向かって延びている。この前方延設部45は、その表裏の板面が、基材側前方側壁部33の表裏の板面と面一に連なるように、基材側前方側壁部33の端面33A(接合部)に対して接合されている(図3参照)。
また同様に、後方延設部46は、基材側後方側壁部34の車室外側の端面34Aに沿うように、成形部側後方側壁部44から下方に向かって延びている。この後方延設部46は、その表裏の板面が、基材側後方側壁部34の表裏の板面と面一に連なるように、基材側後方側壁部34の端面34A(接合部)に対して接合されている(図3参照)。
すなわち、成形部側板状部41の表裏の板面は、基材側板状部31の表裏の板面と面一に連なるように、基材30の端面から延設される形で基材30の端面に連なっている。
なお、前方延設部45および後方延設部46の車室外側の端部(接合部とは反対側の端部)は、内側(互いに近づく方向)に向けて屈曲しており(図3参照)、基材30に対してアンダーカット形状をなしている。つまり、ピラーガーニッシュ20のアンダーカット形状部分は、樹脂成形部40の一部分により構成されている。
さて、本実施形態において、上述した基材側前方側壁部33および基材側後方側壁部34の端面33A,34Aは、基材側前方側壁部33および基材側後方側壁部34(基材側板状部31)の板面に対して傾斜した傾斜面とされている。詳細には、前方延設部45が接合された基材側前方側壁部33の端面33Aおよび後方延設部46が接合された基材側後方側壁部34の端面34Aは、図3に示すように、各基材側側壁部33,34の外周側(表面20A側、車室内側)が先細りとなる方向に傾斜した傾斜面とされている。これらの傾斜面は、各基材側側壁部33,34の表面20Aから裏面20Bまでの全体にわたって傾斜角度が同一とされた、すなわち、一方向に傾斜した面とされている。
樹脂成形部40の熱収縮率は、基材30の熱収縮率よりも大きいものとされる。なお、基材30の熱収縮率は、例えば、1000分の1であり、樹脂成形部40の熱収縮率は、例えば、1000分の15である。基材30および樹脂成形部40の各熱収縮率の値は上述したものに限定されない。なお、ここで言う熱収縮率とは、後述する方法による成形時に基材30および樹脂成形部40が冷却固化する際の寸法の収縮率である。例えば、熱収縮率が「1000分の1」とは、1000mmの全長の基材30が成形時の冷却固化に伴って、1mmだけ縮むことを意味する。
次に本実施形態のピラーガーニッシュ20を成形するための成形装置50について説明する。成形装置50は、図6に示すように、射出装置61と、成形型51と、を備える。射出装置61は、例えば、スクリュータイプのものとされ、本実施形態では上型52に設けられている。上型52及び下型56は対向配置され、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって接近又は離間させることが可能となっている。これにより、上型52及び下型56の型閉じ及び型開きが可能な構成となっている(図6および図7参照)。なお、本実施形態の上型52は、コア型53と、コア型53に対して略上下方向にスライド可能な一対のスライド型54とによって構成されている。
上型52は、下型56との対向面である成形面52Aが下型56に向かって突き出す形状をなしている。また、下型56は、上型52との対向面である成形面56Aが、上型52の形状に対応して凹む形状をなしている。下型56は、図7に示す型閉じ状態では、上型52に対して、基材30の板厚に等しい距離だけ離間して対向配置される。つまり、型閉じ状態では、上型52と下型56との間には、基材30を成形するための基材成形空間S1が形成される。これにより、上型52及び下型56でプレボード30Pをプレスすると、プレボード30Pが基材成形空間S1の形状に対応する形に圧縮される。つまり、上型52によってピラーガーニッシュ20の裏面20B側が賦形されるとともに、下型56によって表面20A側が賦形されることにより、所定形状の基材30が成形される構成となっている。なお、基材30の板厚、すなわち、型閉じ状態における上型52および下型56の離間距離は、プレボード30Pの板厚よりも小さいものとされる。
また、型閉じ状態における上型52と下型56との間には、基材成形空間S1に配された基材30の端部に位置するように、樹脂成形部40を成形するための成形部成形空間S2が基材成形空間S1と連なって形成される。
図6から図8に示すように、上型52(コア型53およびスライド型54)の成形面52Aには、外部へ開口する複数の溝状の樹脂供給路55が形成されている。これら樹脂供給路55は、コア型53の内部に設けられた樹脂射出口であるゲート62に通じており、型閉じ状態において、射出装置61から樹脂供給路55に対して溶融樹脂が射出可能とされている。すなわち、溶融樹脂は基材30の裏面側から供給されるようになっている。樹脂供給路55は成形部成形空間S2に連通しており、樹脂供給路55内に射出された溶融樹脂は、樹脂供給路55を通じて、成形部成形空間S2内に射出されるようになっている。
次にピラーガーニッシュ20の製造方法の一例について説明する。本実施形態のピラーガーニッシュ20の製造方法は、プレボード30Pを成形するプレボード成形工程と、プレボード30Pを所定の寸法にカットするカット工程と、プレボード30Pを加熱するとともに、上型52および下型56によってプレス成形して基材30を形成する基材成形工程と、成形部成形空間S2に溶融樹脂を射出することで基材30と接合する形で樹脂成形部40を成形する樹脂成形部成形工程と、冷却工程と、を備える。
<プレボード成形工程>
プレボード成形工程では、図4に示すように、繊維と熱可塑性樹脂とからなる繊維マットを、一対の平坦なプレス型70によって加熱プレスする。これにより、繊維マットが圧縮されると共に、繊維マットに含まれる熱可塑性樹脂が溶融することで互いの接触面において混ざり合う。その後、繊維マットに含まれる熱可塑性樹脂が冷却固化することで、プレボード30Pが成形される。
プレボード成形工程では、図4に示すように、繊維と熱可塑性樹脂とからなる繊維マットを、一対の平坦なプレス型70によって加熱プレスする。これにより、繊維マットが圧縮されると共に、繊維マットに含まれる熱可塑性樹脂が溶融することで互いの接触面において混ざり合う。その後、繊維マットに含まれる熱可塑性樹脂が冷却固化することで、プレボード30Pが成形される。
<カット工程>
カット工程では、プレボード30Pを所定の寸法にカットする。なお、カットする際に、樹脂成形部40が接合される部分においては、図5に示すように、カット面(プレボード30Pの端面)がプレボード30Pの板面に対して所定の角度で傾斜するように、斜めにカットする。この結果、カット面は、プレボード30Pの一方の面から他方の面の全体にわたって一方向に傾斜した状態とされる。
カット工程では、プレボード30Pを所定の寸法にカットする。なお、カットする際に、樹脂成形部40が接合される部分においては、図5に示すように、カット面(プレボード30Pの端面)がプレボード30Pの板面に対して所定の角度で傾斜するように、斜めにカットする。この結果、カット面は、プレボード30Pの一方の面から他方の面の全体にわたって一方向に傾斜した状態とされる。
<基材成形工程>
基材成形工程では、まず、プレボード30Pを図示しないヒータによって加熱する。これにより、プレボード30Pが軟化状態となる。その後、図6に示すように、軟化状態となっているプレボード30Pを、上型52および下型56の間に配置する。この時、プレボード30Pの端面のうち傾斜したカット面(接合部)が上型52側を向くように配置する。続いて、図7に示すように、上型52および下型56を型閉じすることで、プレボード30Pを上型52および下型56の各成形面52A,56Aによってプレス成形する。これにより、プレボード30Pが基材成形空間S1の形状に倣う形状となり、基材30が成形される。この状態において、基材30の端面のうち樹脂成形部40との接合部となる基材側前方側壁部33の端面33A、基材側主壁部32の上端面、および基材側後方側壁部34の端面34Aは、外周側(表面20A側)が先細りとなる方向に傾斜している。
基材成形工程では、まず、プレボード30Pを図示しないヒータによって加熱する。これにより、プレボード30Pが軟化状態となる。その後、図6に示すように、軟化状態となっているプレボード30Pを、上型52および下型56の間に配置する。この時、プレボード30Pの端面のうち傾斜したカット面(接合部)が上型52側を向くように配置する。続いて、図7に示すように、上型52および下型56を型閉じすることで、プレボード30Pを上型52および下型56の各成形面52A,56Aによってプレス成形する。これにより、プレボード30Pが基材成形空間S1の形状に倣う形状となり、基材30が成形される。この状態において、基材30の端面のうち樹脂成形部40との接合部となる基材側前方側壁部33の端面33A、基材側主壁部32の上端面、および基材側後方側壁部34の端面34Aは、外周側(表面20A側)が先細りとなる方向に傾斜している。
<樹脂成形部成形工程>
樹脂成形部成形工程では、図8に示すように、上型52および下型56によって基材30が挟持された状態で、射出装置61によりゲート62から溶融樹脂(例えばポリプロピレン等)を樹脂供給路55に射出する。樹脂供給路55に射出された溶融樹脂は、樹脂供給路55を通じて、成形部成形空間S2内に射出される。成形部成形空間S2に溶融樹脂が充填される過程では、溶融樹脂が基材30との接触箇所(樹脂供給路55の開口部および端面33A,34A等)において基材30の繊維の内部へと浸透し、基材30内部の軟化した熱可塑性樹脂と混ざり合って渾然一体となる(混融される)。
樹脂成形部成形工程では、図8に示すように、上型52および下型56によって基材30が挟持された状態で、射出装置61によりゲート62から溶融樹脂(例えばポリプロピレン等)を樹脂供給路55に射出する。樹脂供給路55に射出された溶融樹脂は、樹脂供給路55を通じて、成形部成形空間S2内に射出される。成形部成形空間S2に溶融樹脂が充填される過程では、溶融樹脂が基材30との接触箇所(樹脂供給路55の開口部および端面33A,34A等)において基材30の繊維の内部へと浸透し、基材30内部の軟化した熱可塑性樹脂と混ざり合って渾然一体となる(混融される)。
なおこの時、基材30の裏面20B側に配された樹脂供給路55から成形部成形空間S2内に射出された溶融樹脂は、内周側に傾斜している基材30の端面33A,34A等、すなわち、射出側が傾斜面とされた基材30の端面33A,34A等に沿って流動し、成形部成形空間S2内の隅々まで円滑に充填される。
<冷却工程>
樹脂成形部成形工程の後、溶融樹脂が冷却固化されることで、成形部成形空間S2に充填された溶融樹脂は、基材30と接合された樹脂成形部40となる。具体的には、樹脂成形部40の成形部側前方側壁部43は、基材側前方側壁部33の上端面に対して接合された状態で成形され、成形部側主壁部42は、基材側主壁部32の上端面に対して接合された状態で成形され、成形部側後方側壁部44は、基材側後方側壁部34の上端面に対して接合された状態で成形される。また、前方延設部45は、基材側前方側壁部33の端面33Aに対して接合された状態で成形され、樹脂成形部40の後方延設部46は、基材側後方側壁部34の端面34Aに対して接合された状態で成形される。このようにして基材30と樹脂成形部40とが一体的に形成されることで、ピラーガーニッシュ20が完成する。その後、図9に示すように、下型56およびスライド型54を相対的に下方に移動させて、ピラーガーニッシュ20におけるアンダーカット部分(例えば延設部45,46)を型抜き可能な状態とすることで、ピラーガーニッシュ20を型抜きする。なお、図3および図9の符号49は、樹脂供給路55内に充填されて冷却固化されたリブを表している。
樹脂成形部成形工程の後、溶融樹脂が冷却固化されることで、成形部成形空間S2に充填された溶融樹脂は、基材30と接合された樹脂成形部40となる。具体的には、樹脂成形部40の成形部側前方側壁部43は、基材側前方側壁部33の上端面に対して接合された状態で成形され、成形部側主壁部42は、基材側主壁部32の上端面に対して接合された状態で成形され、成形部側後方側壁部44は、基材側後方側壁部34の上端面に対して接合された状態で成形される。また、前方延設部45は、基材側前方側壁部33の端面33Aに対して接合された状態で成形され、樹脂成形部40の後方延設部46は、基材側後方側壁部34の端面34Aに対して接合された状態で成形される。このようにして基材30と樹脂成形部40とが一体的に形成されることで、ピラーガーニッシュ20が完成する。その後、図9に示すように、下型56およびスライド型54を相対的に下方に移動させて、ピラーガーニッシュ20におけるアンダーカット部分(例えば延設部45,46)を型抜き可能な状態とすることで、ピラーガーニッシュ20を型抜きする。なお、図3および図9の符号49は、樹脂供給路55内に充填されて冷却固化されたリブを表している。
次に本実施形態の作用効果について説明する。図11に示すように、熱収縮率の異なる2種類の樹脂材料(基材30および樹脂成形部40)が接合されている従来の構成では、成形時に冷却固化する過程で、熱収縮率がより大きい樹脂成形部40がより収縮する結果、基材30と樹脂成形部40との接合部の外周に段差ができる。
このような問題に対し、本実施形態のピラーガーニッシュ20は、繊維及び熱可塑性樹脂を含み、板状をなす基材30と、基材30の端面から延設される形で当該基材30の端面に射出成形された樹脂成形部40と、を備え、端面のうち樹脂成形部40との接合部は、基材30の板面に対して傾斜している構成とした。
このような構成では、接合部を基材30の板面に対して傾斜させることによって、基材30と樹脂成形部40との収縮量の差をその傾斜面に沿って基材30の延在方向に分散させることができるから、従来のように接合部が板面に対して垂直な面とされる場合と比較して、接合部の外周の板厚方向における収縮量の差を小さくすることができる。つまり、接合部における基材30および樹脂成形部40の板厚方向の収縮量の急激な変化を回避することができるから、基材30と樹脂成形部40との接合部の外周に大きな段差が生じる事態を抑制することができる。また、これにより、ピラーガーニッシュ20に段差発生に伴う皺やヨレ等の変形が起きることを抑制することができる。
また、接合部は、基材30(ピラーガーニッシュ20)の表面20Aから裏面20Bの全体にわたって同一角度で一方向に傾斜している。このような構成によれば、傾斜面を板厚方向の一部に設ける構成や、複数の方向に傾斜する複数の傾斜面を組み合わせて設ける構成と比較して、接合部の外周において段差がより生じ難くなる。また、傾斜面を形成する工程において、従来板面に対して垂直に切断していた構成を単に斜めに切断するだけでよいから、作業が簡易である。
また、樹脂成形部40は、基材30に対してアンダーカット形状に形成されている。このような構成によれば、アンダーカット形状を有しながら軽量なピラーガーニッシュ20とすることができる。
また、ピラーガーニッシュ20の基材30の接合部は、外周側(表面20A側、車室内側)が先細りとなる方向に傾斜している。樹脂成形部40を成形するための溶融樹脂は、意匠面となる車室内側の面を美しく保つために、車室外側の面から供給される。上記構成によれば、車室外側の面(裏面20B)から供給された溶融樹脂は、車室外側に配された傾斜状の接合部に沿って、隅々まで円滑に流動することができる。仮に接合部が車室外側が先細りとなる方向に傾斜している場合には、車室外側から供給された溶融樹脂は、車室外側の面から車室内側に配された傾斜状の接合部に回り込むように流れ込むことになり、流動性が劣ることとなる。その結果、充填不良が懸念される。
また、本実施形態のように接合部が車室内側が先細りとなる方向に傾斜している場合には、車室外(裏面20B)側から供給された溶融樹脂の射出圧は傾斜状の接合部によって徐々に和らげられることとなり、射出圧によって基材30の接合部付近に皺やヨレ等の変形が起きることを抑制することができる。
また、本実施形態のピラーガーニッシュ20の製造方法は、繊維および熱可塑性樹脂を含むマットをプレス型70によって熱プレスしてプレボード30Pを成形するプレボード成形工程と、プレボード30Pの端面のうち樹脂成形部40との接合部を基材30の板面に対して傾斜するようにカットするカット工程と、カット工程を経たプレボード30Pを成形型51により熱プレスして基材30を成形する基材成形工程と、基材30の端面及び成形型51によって構成された成形部成形空間S2に溶融樹脂を射出することで、基材30の端面と接合された状態の樹脂成形部40を成形する樹脂成形部成形工程と、基材30および樹脂成形部40を冷却する冷却工程と、を順に実行する製造方法である。
このような製造方法によれば、加熱・冷却工程を経る場合でも、熱収縮率の差に伴う基材30と樹脂成形部40との収縮量の差を、傾斜面に沿って基材30の延在方向に分散させることができるから、基材30と樹脂成形部40との接合部の外周に大きな段差が生じる事態を抑制することができる。
また、樹脂成形部40は、スライド機構を備えない成形型に対して型開き不能なアンダーカット形状部分を備えている。ピラーガーニッシュ20がアンダーカット形状部分を備える場合、基材30の端面に射出成形によって容易にアンダーカット形状部分を形成することができるが、一方で、異なる材質間の熱収縮率の差に起因する段差が生じることが懸念される。上記製造方法によれば、接合部を傾斜状とすることにより、接合部の外周に大きな段差が生じる事態を抑制することができる。
また、溶融樹脂は、基材30の裏面20B側から射出される。このような構成によれば、射出された溶融樹脂は、傾斜状の端面に沿って隅々まで円滑に流動することができる。また、溶融樹脂の射出圧は傾斜状の端面によって徐々に和らげられることとなり、射出圧によって基材30の接合部付近に皺やヨレ等の変形が起きることを抑制することができる。
このように、本実施形態のピラーガーニッシュ20によれば、基材30と樹脂成形部40との接合部の外周において、熱収縮率の差に起因する段差が生じる事態を抑制することが可能である。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、成形構造体として断面U字形状のピラーガーニッシュ20を例示したが、これに限定されない。成形構造体としては、ドアトリムを構成するボード部材(アッパーボード等)、インストルメントパネル、ラゲージトリム、パッケージトレイ等の車両用内装材であってもよい。また、成形構造体は、断面U字形状のものに限らず、平坦な板状であってもよい。さらに、成形構造体は、車両以外の乗物に搭載される内装材(乗物用内装材)であってもよく、内装材以外の部材であってもよい。
(2)上記実施形態では、接合部(端面33A,34A)は基材30の表面20Aから裏面20Bの面の全体にわたって一方向に傾斜した傾斜状とされた構成を示したが、傾斜する方向は一方向に限らず、異なる傾斜面を組み合わせた構成であったり、一部に傾斜面が形成される構成としてもよい。要は、接合部の外周に大きな段差ができることが抑制される構成であれば、上記実施形態に限るものではない。
(3)上記実施形態では、接合部を含む端面の全体が傾斜面とされた構成を示したが、端面のうち、接合部の範囲だけを傾斜させる構成も本発明に含まれる。
(4)上記実施形態では、樹脂成形部40は基材30に対してアンダーカット形状に形成されている構成を示したが、必ずしもアンダーカット形状でなくてもよい。
20…ピラーガーニッシュ(成形構造体、乗物用内装材)、20A…表面(一方の面)、20B…裏面(他方の面)、22…主壁部、23…前方側壁部、24…後方側壁部、30…基材、30P…プレボード、32…基材側主壁部、33…基材側前方側壁部、33A…端面(接合部)、34…基材側後方側壁部、34A…端面(接合部)、40…樹脂成形部
Claims (7)
- 繊維及び熱可塑性樹脂を含み、板状をなす基材と、
前記基材の端面から延設される形で当該基材の前記端面に射出成形された樹脂成形部と、を備え、
前記端面のうち前記樹脂成形部との接合部は、前記基材の板面に対して傾斜している成形構造体。 - 前記接合部は前記基材の一方の面から他方の面にわたって一方向に傾斜している請求項1に記載の成形構造体。
- 前記樹脂成形部は前記基材に対してアンダーカット形状に形成されている請求項1または請求項2に記載の成形構造体。
- 当該成形構造体は、乗物用内装材であり、
前記基材の前記接合部は、乗物室内側が先細りとなる方向に傾斜している請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の成形構造体。 - 繊維及び熱可塑性樹脂を含み、板状をなす基材と、前記基材の端面から延設される形で当該基材の前記端面に射出成形された樹脂成形部と、を備える成形構造体の製造方法であって、
前記繊維および前記熱可塑性樹脂を含むマットをプレス型によって熱プレスしてプレボードを成形するプレボード成形工程と、
前記プレボードの端面のうち少なくとも前記樹脂成形部との接合部を前記プレボードの板面に対して傾斜するようにカットするカット工程と、
前記カット工程を経た前記プレボードを成形型により熱プレスして前記基材を成形する基材成形工程と、
前記基材の前記端面及び前記成形型によって構成された成形空間に溶融樹脂を射出することで、前記基材の前記端面と接合された状態の前記樹脂成形部を成形する樹脂成形部成形工程と、
前記基材および前記樹脂成形部を冷却する冷却工程と、
を順に実行する成形構造体の製造方法。 - 前記樹脂成形部は、スライド機構を備えない成形型に対して型開き不能なアンダーカット形状部分を備えている請求項5に記載の成形構造体の製造方法。
- 前記溶融樹脂を前記基材の一対の板面のうち傾斜状の前記接合部が配される板面側から射出する請求項5または請求項6に記載の成形構造体の製造方法。
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JP2020114852A JP2022012776A (ja) | 2020-07-02 | 2020-07-02 | 成形構造体、成形構造体の製造方法 |
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2020
- 2020-07-02 JP JP2020114852A patent/JP2022012776A/ja active Pending
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