JP2023068451A - 乗物用内装材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】乗物用内装材がアンダーカット部や板面から突出する突出部を有する場合でも、変形が生じ難く、視た目も均一で意匠材として使用可能な乗物用内装材を提供する。【解決手段】繊維および熱可塑性樹脂を含み、板状の本体部15と、本体部15から延びる延設部16と、を有する乗物用内装材の製造方法であって、プレボード12Pを加熱する加熱工程と、本体部15を成形する本体部成形部S1と、延設部16を成形する延設部成形部S2と、を有する成形型30により、プレボード12Pをプレスするプレス成形工程と、を含み、プレス成形工程において、プレボード12Pを本体部成形部S1でプレスすることで押し潰されたプレボード12Pの一部を延設部成形部S2に押し広げて充填する。【選択図】図6
Description
本明細書で開示される技術は、乗物用内装材の製造方法に関する。
従来、高剛性と軽量化の観点から、繊維および熱可塑性樹脂により形成された乗物用内装材が使用されている。このような乗物用内装材は、繊維と熱可塑性樹脂とを含むプレボードを成形型によってプレス成形することにより賦形される。また、このような乗物用内装材に成形型の型開き方向と交差する方向に凹形状となる所謂アンダーカット部や、当該乗物用内装材の板面から突出する例えばクリップ座等の突出部を設ける場合には、例えば、一対の成形型によって基材を成形した後、基材に対して繊維を含まない樹脂を射出成形することによって、アンダーカット部や突出部を基材と一体に形成する製造方法が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。
このように異なる材料から形成された部分を一体化させた乗物用内装材においては、それらの境界部で熱収縮量の差が発生するため、冷却時に変形が起こり易いという問題がある。変形を防ぐためには、変形を矯正するための治具や作業、および、設備が必要となる。また、境界部が表面から視認できる位置に設けられる場合には、見栄えが悪く、意匠性の問題から表面を表皮材で被覆する必要があった。
本明細書で開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、乗物用内装材がアンダーカット形状をなすアンダーカット部や板面から突出する突出部を有する場合でも、変形が生じ難く、視た目も均一で意匠材として使用可能な乗物用内装材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される技術は、繊維および熱可塑性樹脂を含み、板状の本体部と、前記本体部から延びる延設部と、を有する乗物用内装材の製造方法であって、繊維および熱可塑性樹脂を含むプレボードを加熱する加熱工程と、前記本体部を成形する本体部成形部と、前記本体部成形部に連なって設けられ前記延設部を成形する延設部成形部と、を有する成形型により、前記プレボードをプレスするプレス成形工程と、を含み、前記プレス成形工程において、前記プレボードを前記本体部成形部でプレスすることで押し潰された前記プレボードの一部を前記延設部成形部に押し広げて充填することを特徴とする。
上記構成によれば、乗物用内装材が延設部を有する場合でも、本体部と延設部とを同材料で構成することができるから、本体部と延設部との境界部に熱収縮量の差による変形が生じ難い。したがって、変形を矯正するための治具や作業が不要となり、製造設備や作業の手間およびコストが削減できる。また、本体部と延設部との間に材料の違いによる境界部が無くなるため、本体部と延設部との境界部が視認できる位置(意匠面)に設けられる場合でも、成形された乗物用内装材の表面をそのまま意匠面として使用することが可能となる。つまり、表皮材を省略することができる。さらに、従来は樹脂のみで形成していた延設部を繊維と熱可塑性樹脂とで構成することができるから、延設部の強度を従来より向上させることができる。
前記プレボードのうち、当該プレボードが前記本体部成形部にプレス成形される際に前記延設部成形部に隣接して配置される部分は、他の部分より肉厚な厚肉部とされていてもよい。
上記構成によれば、プレボードがプレス成形される際に、厚肉部が形成されない構成と比較して、プレボードが延設部成形部に向けて押し広げられ易くなる。また、延設部の隅々まで充填され易くなる。
前記厚肉部は、前記プレボードのうち、前記乗物用内装材の意匠面となる面の反対面が突出する状態とされることで他の部分より肉厚に形成されていてもよい。
上記構成によれば、厚肉部が乗物用内装材の意匠面側に突出する状態とされる構成と比較して、プレボードがプレスされる際に厚肉部が意匠面に与える影響を少なくすることができる。つまり、より均一で美しい意匠面を提供することができる。
前記プレボードのうち、当該プレボードが前記本体部成形部にプレス成形される際に前記延設部成形部に隣接して配置される部分は、他の部分より繊維および熱可塑性樹脂の密度が高い高密度部とされていてもよい。
上記構成によれば、高密度部は、プレボードがプレス成形されて延設部成形部に押し広げられることにより、密度が低下して高密度部以外の部分と近い密度になる。つまり、本体部と延設部との密度の差が縮小することで、熱収縮量の差が小さくなるとともに、視た目の差も小さくなる。
前記延設部は、少なくとも一部に、前記成形型の型開き方向と交差する方向に延びて型開きを阻害するアンダーカット部を有していてもよい。
上記構成によれば、乗物用内装材がアンダーカット部を有する場合でも、乗物用内装材全体を同じ材料で形成することができる。つまり、変形が生じ難く、視た目も均一で意匠材として使用可能な乗物用内装材を提供することができる。
前記成形型は、前記延設部成形部の少なくとも一部に前記アンダーカット部を成形するアンダーカット部成形部を備えており、前記アンダーカット部成形部の少なくとも一部は、型開き方向と交わる方向にスライドするスライド型により構成されており、前記プレス成形工程の後に、前記成形型を型開きするとともに前記スライド型をスライドさせて、前記乗物用内装材を型抜きする離脱工程を含んでもよい。
上記構成によれば、プレス成形により成形されたアンダーカット部を有する乗物用内装材を脱型可能である。
前記アンダーカット部は、前記本体部の外周縁部に形成されていてもよい。また、前記アンダーカット部は、乗物用ドアトリムのうち窓枠の下端部を形成するアッパーボードの上端部に形成されていてもよい。
また、前記アンダーカット部は、前記乗物用内装材における意匠面の裏面に突出して設けられた突状部の先端側に形成されていてもよい。
本明細書で開示される技術によれば、乗物用内装材がアンダーカット形状をなすアンダーカット部や板面から突出する突出部を有する場合でも、変形が生じ難く、視た目も均一で意匠材として使用可能な乗物用内装材を提供することができる。
<実施形態1>
実施形態1を図1から図8によって説明する。本実施形態では、乗物用内装材として、車両用のドアトリム10を構成するトリムボード11のアッパーボード12を例示する。なお、以下の説明においては、図1の左側を車両の前方、右側を車両の後方、上側を上方、下側を下方とする。また、図6におけるX方向を車室外側(裏面側)、X方向と反対方向を車室内側(表面側、意匠面側)、Y方向を上方、Y方向と反対側を下方として説明する。
実施形態1を図1から図8によって説明する。本実施形態では、乗物用内装材として、車両用のドアトリム10を構成するトリムボード11のアッパーボード12を例示する。なお、以下の説明においては、図1の左側を車両の前方、右側を車両の後方、上側を上方、下側を下方とする。また、図6におけるX方向を車室外側(裏面側)、X方向と反対方向を車室内側(表面側、意匠面側)、Y方向を上方、Y方向と反対側を下方として説明する。
図1に示すように、ドアトリム10は、トリムボード11を主体として構成されている。トリムボード11は、例えば、アッパーボード12、ミドルボード20、および、ロアボード21によって分割構成されている。また、トリムボード11は、ドアインサイドハンドルを取り付けるための取付孔22、ドアポケット23、アームレスト24を備える。
アッパーボード12は、トリムボード11の主面(乗員と対向する面)に沿うように略上下方向に延在する内側壁部13と、内側壁部13の上端から車室外側に向かう形で延びる上壁部14と、を有する。上壁部14の車両前端部における車室外側の縁部は、アッパーボード12をプレス成形する際の型開き方向(車室内外方向、X方向)と交差する方向に凹形状となる、つまり、内巻き形状となるアンダーカット部16とされている。
より具体的には、上壁部14の前端部分は、図7に示すように、内側壁部13の上端から斜め上方に向かって延び、その後、僅かに斜め下方に向けて延びる内巻き形状とされている。以下、アッパーボード12のうち、内側壁部13および内側壁部13の上端から斜め上方に向かって延びる部分をボード本体部(本体部の一例)15とし、ボード本体部15の上端から斜め下方に向けて延びる内巻き形状の部分をアンダーカット部(延設部の一例)16として説明する。なお、ボード本体部15の前端部分は、図7に示すように、内側壁部13と上壁部14との間に形成される角部が、車室内側に向かって突出する鋭角状をなしている。
トリムボード11(アッパーボード12)は、繊維および熱可塑性樹脂を含む材料から形成されている。トリムボード11に用いられる繊維としては、例えば、木質繊維やケナフ等の靭皮植物繊維などが用いられるが、繊維の種類はこれに限定されない。例えば、繊維としてガラス繊維や炭素繊維などを用いてもよい。また、トリムボード11において、繊維は、バインダーとしての熱可塑性樹脂により結着されている。トリムボード11に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を例示することができる。本実施形態のトリムボード11は、ケナフおよびポリプロピレンから形成されている。
次に、アッパーボード12を成形するための成形型30について説明する。成形型30は、図6に示すように、水平方向(X方向)に並んで対向配置されるキャビ型31およびコア型35(一対の型)を備える。キャビ型31およびコア型の少なくとも一方は図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)と接続されており、相対的に接近又は離間させることが可能となっている。つまり、キャビ型31およびコア型35は型閉じおよび型開きが可能な構成となっている。なお、本実施形態では、キャビ型31およびコア型35の開閉方向が水平方向である構成を例示しているが、これに限定されず、例えば、キャビ型31およびコア型35の開閉方向が上下方向であってもよい。
コア型35は、複数の型によって分割構成されている。コア型35は、アッパーボード12(ボード本体部15およびアンダーカット部16)の裏面に倣う形状の成形面36を有している。コア型35は、キャビ型31との対向面である成形面36がキャビ型31に向かって突き出す形状をなしている。コア型35のうち、少なくとも上記アンダーカット部16の裏面に対応する部分は、スライド型37Aにより構成されている。またコア型35は、アンダーカット部16の表面に倣う形状の成形面38も有している。つまりコア型35は、アンダーカット部16の表裏の面を成形面36および成形面38により成形可能な溝状の空洞部を有している。以下、この空洞部を、アンダーカット部成形空間(延設部成形部、アンダーカット部成形部の一例)S2とする(図7参照)。
一方、キャビ型31は、コア型35との対向面である成形面32が、コア型35の形状に対応して凹む形状をなしている。キャビ型31の成形面32は、アッパーボード12のうち、アンダーカット部16を除く部分、すなわち、ボード本体部15の表面(意匠面)に倣う形状をなしている。
図7に示す型閉じ状態では、キャビ型31およびコア型35の間にアッパーボード12のボード本体部15を成形するための本体部成形空間(本体部成形部の一例)S1が形成される。つまり本体部成形空間S1は、キャビ型31の成形面32とコア型35の成形面36とで囲まれた空間である。これにより、キャビ型31およびコア型35でプレボード12Pをプレスすると、プレボード12Pが本体部成形空間S1の形状に対応する形に圧縮される。つまり、キャビ型31によってアッパーボード12の表面(意匠面)側が賦形されるとともに、コア型35によって裏面側が賦形されることにより、所定形状のボード本体部15が成形される構成となっている。なお、ボード本体部15の板厚、すなわち、型閉じ状態におけるキャビ型31およびコア型35の離間距離は、後述するプレボード12Pの薄肉部12P2の板厚よりも小さいものとされる。
キャビ型31およびコア型35が型閉じされた状態において、上述したコア型35のアンダーカット部成形空間S2は、本体部成形空間S1と連なっている。アンダーカット部成形空間S2により形成されたアンダーカット部16は、型開き時にスライド型37A、37Bが型開き方向(X方向)と交差する方向に移動することで、型抜きが可能となっている。
次に、本実施形態のアッパーボード12の製造方法について説明する。本実施形態のアッパーボード12の製造方法は、厚肉部12P3を有するプレボード12Pを形成するプレボード形成工程と、プレボード12Pを加熱する加熱工程と、加熱された状態のプレボード12Pをキャビ型31およびコア型35でプレス成形してアッパーボード12を形成するプレス成形工程と、形成されたアッパーボード12を脱型する離脱工程と、を備える。
<プレボード形成工程>
プレボード形成工程では、まず、図2に示すように、繊維と熱可塑性樹脂とからなる繊維マットを、一対の平坦なプレス型40によって加熱プレスする。これにより、繊維マットが圧縮されると共に、繊維マットに含まれる熱可塑性樹脂が溶融することで互いの接触面において混ざり合う。その後、繊維マットに含まれる熱可塑性樹脂が冷却固化することで、平坦なプレボード12P0が成形される。
プレボード形成工程では、まず、図2に示すように、繊維と熱可塑性樹脂とからなる繊維マットを、一対の平坦なプレス型40によって加熱プレスする。これにより、繊維マットが圧縮されると共に、繊維マットに含まれる熱可塑性樹脂が溶融することで互いの接触面において混ざり合う。その後、繊維マットに含まれる熱可塑性樹脂が冷却固化することで、平坦なプレボード12P0が成形される。
本実施形態のプレボード12Pは、外周縁に沿った部分の一部に板厚が他の部分より肉厚に形成された厚肉部12P3を備える。厚肉部12P3は、図3に示すように、平坦なプレボード12P0の一部に、該プレボード12P0と同材料、同密度で形成されたプレボード片12P1を重ね合わせ、加熱して貼り合わせることにより形成される(図4参照)。つまり、厚肉部12P3は、プレボード12Pの板面の一方側に突出する形態とされる。この厚肉部12P3の位置や寸法は、後述するように、アッパーボード12のアンダーカット部16の位置および大きさに合わせて適宜調節される。なお、プレボード12Pのうち厚肉部12P3以外の部分を、薄肉部12P2と称することとする。
<加熱工程>
アッパーボード12をプレス成形する際には、まず、プレボード12Pをヒーター45によって加熱する(図5参照)。これにより、プレボード12Pが軟化状態となる。
アッパーボード12をプレス成形する際には、まず、プレボード12Pをヒーター45によって加熱する(図5参照)。これにより、プレボード12Pが軟化状態となる。
<プレス成形工程>
次に、加熱されて軟化した状態のプレボード12Pを、キャビ型31およびコア型35の間に、その板面が型閉じ方向(X方向)と垂直に交わる姿勢(Y方向に延びる姿勢)となるように配置する(図6参照)。この時、プレボード12Pは、厚肉部12P3の薄肉部12P2からの突出方向がコア型35(アッパーボード12の裏面)側に向く方向となるように配置される。またプレボード12Pは、厚肉部12P3がアンダーカット部成形空間S2に最も近い位置となるように配置される。
次に、加熱されて軟化した状態のプレボード12Pを、キャビ型31およびコア型35の間に、その板面が型閉じ方向(X方向)と垂直に交わる姿勢(Y方向に延びる姿勢)となるように配置する(図6参照)。この時、プレボード12Pは、厚肉部12P3の薄肉部12P2からの突出方向がコア型35(アッパーボード12の裏面)側に向く方向となるように配置される。またプレボード12Pは、厚肉部12P3がアンダーカット部成形空間S2に最も近い位置となるように配置される。
その後、キャビ型31およびコア型35を型閉じすることで、プレボード12Pをキャビ型31およびコア型35の各成形面32,36,38によってプレス成形する(図7参照)。プレボード12Pは型閉じに伴って内側壁部13と上壁部14との境界部から上端部および下端部に向けて成形面32,36に沿うように徐々に折り曲げられられるとともに圧縮され、本体部成形空間S1の形状に倣う形状に成形される。
また、型閉じに伴って、本体部成形空間S1のうちアンダーカット部成形空間S2に隣接した位置にプレボード12Pの厚肉部12P3が配され、厚肉部12P3は押し潰されつつアンダーカット部成形空間S2の内部に押し広げられる。この時、プレボード12Pは軟化状態とされているとともに、厚肉部12P3により嵩が十分に確保されているから、アンダーカット部成形空間S2の隅々にまで押し広げられて充填される。なお、プレボード12Pにおける厚肉部12P3の位置および寸法は、アンダーカット部16の位置および大きさに合わせて、アンダーカット部成形空間S2を充填可能に予め調節されている。
また、成形型30に加熱装置を設け、プレス成形時にプレボード12Pを再加熱することもできる。そのような構成とした場合には、プレボード12Pを構成する熱可塑性樹脂が液状になる温度まで(プレボード12Pの形状を保ち難い柔らかさとなる温度まで)昇温することが可能となり、もって、アンダーカット部成形空間S2の隅々にまで繊維および溶融した熱可塑性樹脂を充填させ易くなる。
その後、軟化した熱可塑性樹脂が冷却固化するまで、成形型30が型閉じした状態を維持する。
<離脱工程>
成形されたアッパーボード12が冷却し、熱可塑性樹脂が固まったら、キャビ型31およびコア型35を型開きし(図8参照)、スライド型37A、37Bをスライド移動させることで、アッパーボード12を成形型30から脱型する。このようにして、アンダーカット部16がボード本体部15と同種類の材料で一体に形成されたアッパーボード12が完成する。
成形されたアッパーボード12が冷却し、熱可塑性樹脂が固まったら、キャビ型31およびコア型35を型開きし(図8参照)、スライド型37A、37Bをスライド移動させることで、アッパーボード12を成形型30から脱型する。このようにして、アンダーカット部16がボード本体部15と同種類の材料で一体に形成されたアッパーボード12が完成する。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態のアッパーボード12の製造方法は、繊維および熱可塑性樹脂を含むプレボード12Pを加熱する加熱工程と、ボード本体部15を成形する本体部成形空間S1と、本体部成形空間S1に連なって設けられアンダーカット部16を成形するアンダーカット部成形空間S2と、を有する成形型30により、プレボード12Pをプレスするプレス成形工程と、を含み、プレス成形工程において、プレボード12Pを本体部成形空間S1内にプレスすることで押し潰されたプレボード12Pの一部をアンダーカット部成形空間S2内に押し広げて充填する、製造方法である。
上記構成によれば、アッパーボード12が成形型30の型開き方向(X方向)と交差する方向に延びて型開きを阻害するアンダーカット部16を有する場合でも、ボード本体部15とアンダーカット部16とを同材料で構成することができるから、ボード本体部15とアンダーカット部16との境界部に熱収縮量の差による変形が生じ難い。したがって、変形を矯正するための治具や作業が不要となり、製造設備や作業の手間およびコストが削減できる。また、ボード本体部15とアンダーカット部16との間に材料の違いによる境界部が無くなるため、成形されたアッパーボード12の表面をそのまま意匠面として使用することが可能となる。つまり、表皮材を省略することができる。さらに、従来は樹脂のみで形成していたアンダーカット部を繊維と熱可塑性樹脂とで構成することができるから、アンダーカット部16の強度を従来より向上させることができる。
また、プレボード12Pのうち、当該プレボード12Pが本体部成形空間S1内にプレス成形される際にアンダーカット部成形空間S2に隣接して配置される部分は、他の部分より肉厚な厚肉部12P3とされている。
上記構成によれば、プレボード12Pがプレス成形される際に、厚肉部12P3が形成されない構成と比較して、プレボード12Pがアンダーカット部成形空間S2に向けて押し広げられ易くなる。また、アンダーカット部成形空間S2の隅々まで充填され易くなる。
また、厚肉部12P3は、プレボード12Pのうち、アッパーボード12の意匠面となる面の反対面が突出する状態とされることで他の部分より肉厚に形成されている。
上記構成によれば、厚肉部12P3がアッパーボード12の意匠面側に突出する状態とされる構成と比較して、プレボード12Pがプレスされる際に厚肉部12P3が意匠面に与える影響を少なくすることができる。つまり、より均一で美しい意匠面を提供することができる。
また、成形型30は型開き方向と交わる方向にスライドするスライド型37A、37Bを備えており、アンダーカット部成形空間S2の少なくとも一部は、スライド型37Aにより構成されており、プレス成形工程の後に、成形型30を型開きするとともにスライド型37A,37Bをスライドさせて、アッパーボード12を型抜きする離脱工程を含んでいる。
上記構成により、プレス成形により成形されたアンダーカット部16を有するアッパーボード12の脱型が可能となる。
また、アンダーカット部16は、ボード本体部15の外周縁部に形成されている。より具体的には、アンダーカット部16は、ドアトリム10の窓枠の下端部を形成するアッパーボード12の上端部に形成されている。このように、本実施形態の製造方法によれば、アンダーカット部16がボード本体部15と同種類の材料で一体に形成されたアッパーボード12が製造可能である。
<実施形態2>
上記実施形態1では、プレボード12Pに厚肉部12P3を設け、厚肉部12P3を押し潰すことによりアンダーカット部成形空間S2内にプレボード12Pを押し広げる構成を示したが、本実施形態では、厚肉部12P3の代わりに、プレボード112Pのうち、当該プレボード112Pが本体部成形空間S1内にプレス成形される際にアンダーカット部成形空間S2に隣接して配置される部分に、他の部分より繊維および熱可塑性樹脂の密度が高い高密度部112P5を設ける構成としたところが相違している。このような高密度部112P5は、例えば、プレボード形成工程において、平坦なプレボード12P0の一部に、該プレボード12P0と同材料、同密度で形成されたプレボード片12P1を重ね合わせ、加熱プレスして、均一な板厚のプレボード112Pとすることで形成することができる。なお、プレボード112Pのうち高密度部112P5以外の部分を、低密度部112P4と称することとする。
上記実施形態1では、プレボード12Pに厚肉部12P3を設け、厚肉部12P3を押し潰すことによりアンダーカット部成形空間S2内にプレボード12Pを押し広げる構成を示したが、本実施形態では、厚肉部12P3の代わりに、プレボード112Pのうち、当該プレボード112Pが本体部成形空間S1内にプレス成形される際にアンダーカット部成形空間S2に隣接して配置される部分に、他の部分より繊維および熱可塑性樹脂の密度が高い高密度部112P5を設ける構成としたところが相違している。このような高密度部112P5は、例えば、プレボード形成工程において、平坦なプレボード12P0の一部に、該プレボード12P0と同材料、同密度で形成されたプレボード片12P1を重ね合わせ、加熱プレスして、均一な板厚のプレボード112Pとすることで形成することができる。なお、プレボード112Pのうち高密度部112P5以外の部分を、低密度部112P4と称することとする。
このようなプレボード112Pを使用した場合には、高密度部112P5は、プレボード112Pがプレス成形されてアンダーカット部成形空間S2内に押し広げられることにより、密度が低下して高密度部112P5以外の部分(低密度部112P4)と近い密度になる。つまり、ボード本体部15とアンダーカット部16との密度の差が縮小することで、熱収縮量の差が小さくなるとともに、視た目の差も小さくなる。
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
本明細書に開示される技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、乗物用内装材としてドアトリム10を構成するアッパーボード12を例示したが、これに限定されない。乗物用内装材としては、インストルメントパネル、ラゲージトリム、パッケージトレイ等ドアトリム以外の車両用内装材を構成するものであってもよい。
(2)上記実施形態では、予め加熱したプレボード12Pを成形型30に配置してプレス成形する形態を示したが、加熱工程およびプレス成形工程を同時に行う構成としたり、上述したように、加熱工程の後、プレス成形時に再び加熱する構成としてもよい。プレス成形時に加熱を行う場合、プレボード中の熱可塑性樹脂の流動性がより高くなる温度まで加熱することが可能となるため、アンダーカット部の隅々にまで繊維及び熱可塑性樹脂が行き渡り易くなる。
(3)上記実施形態では、ボード本体部15から内巻き形状に延びるアンダーカット部16を有するアッパーボード12を開示したが、図10に示すように、ボード本体部115から型開き方向(X方向)に沿って真っ直ぐに延びる延設部116を有するアッパーボード112についても、上記実施形態と同様に形成することができる。つまり、成形型130のキャビ型131とコア型135とにより構成された本体部成形空間S11内にプレボード12Pをプレスすることで押し潰されたプレボード12Pの一部を延設部成形空間S12内に押し広げて充填することにより形成することができる。
(4)上記実施形態では、アッパーボード12の外周縁部に設けられたアンダーカット部16を例示したが、アンダーカット部はこれに限定されない。例えば、本体部の意匠面の裏面に突出する突状部に形成されたアンダーカット部にも、本明細書に開示された製造方法を適用することができる。そのような車両用内装材は、例えば図11に示すように、成形型230のキャビ型231と、成形面236の中央部に設けられて断面T字状をなす突状部成形空間S3およびアンダーカット部成形空間S4を有するコア型235とでプレボード212Pをプレス成形し、厚肉部212P3を突状部成形空間S3およびアンダーカット部成形空間S4内に押し広げることにより形成することができる。
(5)上記実施形態では、プレボード12P,112Pに厚肉部12P3あるいは高密度部112P5を設け、厚肉部12P3あるいは高密度部112P5を押し潰すことにより、アンダーカット部成形空間S2、S4内にプレボード12P,112Pを押し広げる構成を示したが、厚肉部自体を高密度部で形成したプレボードを使用することもできる。
(6)上記実施形態では、コア型35,235が複数の型によって分割されている構成を例示したが、コア型の分割の態様は適宜変更可能であり、要は、アンダーカット部16が型抜き可能な構成であればよい。
10:ドアトリム、11:トリムボード、12:アッパーボード(車両用内装材)、12P,112P,212P:プレボード、12P3,212P3:厚肉部、15:ボード本体部(本体部)、16:アンダーカット部、30,130,230:成形型、31,131,231:キャビ型、32,36,38,236:成形面、35,135,235:コア型、37A,37B:スライド型、112P4:低密度部、112P5:高密度部、S1,S11:本体部成形空間(本体部成形部)、S2,S4:アンダーカット部成形空間(延設部成形部、アンダーカット部成形部)、S3:突状部成形空間(本体部成形部)、S12:延設部成形空間(延設部成形部)
Claims (9)
- 繊維および熱可塑性樹脂を含み、板状の本体部と、前記本体部から延びる延設部と、を有する乗物用内装材の製造方法であって、
繊維および熱可塑性樹脂を含むプレボードを加熱する加熱工程と、
前記本体部を成形する本体部成形部と、前記本体部成形部に連なって設けられ前記延設部を成形する延設部成形部と、を有する成形型により、前記プレボードをプレスするプレス成形工程と、を含み、
前記プレス成形工程において、前記プレボードを前記本体部成形部でプレスすることで押し潰された前記プレボードの一部を前記延設部成形部に押し広げて充填する、乗物用内装材の製造方法。 - 前記プレボードのうち、当該プレボードが前記本体部成形部にプレス成形される際に前記延設部成形部に隣接して配置される部分は、他の部分より肉厚な厚肉部とされている、請求項1に記載の乗物用内装材の製造方法。
- 前記厚肉部は、前記プレボードのうち、前記乗物用内装材の意匠面となる面の反対面が突出する状態とされることで他の部分より肉厚に形成されている請求項2に記載の乗物用内装材の製造方法。
- 前記プレボードのうち、当該プレボードが前記本体部成形部にプレス成形される際に前記延設部成形部に隣接して配置される部分は、他の部分より繊維および熱可塑性樹脂の密度が高い高密度部とされている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の乗物用内装材の製造方法。
- 前記延設部は、少なくとも一部に、前記成形型の型開き方向と交差する方向に延びて型開きを阻害するアンダーカット部を有している請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の乗物用内装材の製造方法。
- 前記成形型は、前記延設部成形部の少なくとも一部に前記アンダーカット部を成形するアンダーカット部成形部を備えており、
前記アンダーカット部成形部の少なくとも一部は、型開き方向と交わる方向にスライドするスライド型により構成されており、
前記プレス成形工程の後に、前記成形型を型開きするとともに前記スライド型をスライドさせて、前記乗物用内装材を型抜きする離脱工程を含む、請求項5に記載の乗物用内装材の製造方法。 - 前記アンダーカット部は、前記本体部の外周縁部に形成されている請求項5または請求項6に記載の乗物用内装材の製造方法。
- 前記アンダーカット部は、乗物用ドアトリムのうち窓枠の下端部を形成するアッパーボードの上端部に形成されている請求項7に記載の乗物用内装材の製造方法。
- 前記アンダーカット部は、前記乗物用内装材における意匠面の裏面に突出して設けられた前記延設部の先端側に形成されている、請求項5または請求項6に記載の乗物用内装材の製造方法。
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- 2021-11-02 JP JP2021179586A patent/JP2023068451A/ja active Pending
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