JP5985979B2 - 液封防振装置 - Google Patents
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Description
なお、本願において径方向とは原則として弾性仕切部材の径方向をいうものとする。また、リリーフバルブは、弾性仕切部材の外周円に沿ってその周方向へ長く形成されるので、外周円の周方向に沿う方向をリリーフバルブの長手方向ということにする。後述する従来例についても同様である。
図中の拡大部はリリーフバルブ130部分の断面図であり、この断面において、リリーフバルブ130は、剛性枠部120から径方向外方かつ主液室170側へ向かって斜め上がりにリーク通路150内へ延出している。
キャビテーション発生条件になると、主液室170側が負圧になるため、リーク通路150内の液体が副液室180側からリリーフバルブ130を上方へ押し上げて開き、リリーフバルブ開の状態となり、液体は副液室180側から主液室170へリークして流入し、主液室170の液圧を上昇させてキャビテーションの発生を阻止する。
図16は仕切部材200の平面図であり、弾性仕切部材100を支持する金属製等の円形の剛性部材210を有し、中央に開口部220が形成され、この開口部220の周囲に環状の固定部230が設けられ、この固定部230に剛性枠部120が固定されている。剛性枠部120に囲まれた弾性可動膜110が開口部220から見えている。
固定部230の外周側には、円弧状のバルブ開口240が、固定部230の同心円上に90°間隔で形成され、ここに各リリーフバルブ130が臨んでいる。
しかしながら、長手方向端部は剛性が高いため曲がりにくくなり、剛性枠部120との間に間隙を形成し、リリーフバルブ130の開放が不十分になる不完全作動部190が形成される。また、リリーフバルブ130の長手方向端部を除く部分はバルブ長が一定であり、ほぼ一様な剛性をなすため、その中でも最も相対的に剛性が低い長手方向中間部が剛性枠部120へ押しつけられるように最初に変形し、剛性枠部120に当接すると、次に、この当接した長手方向中間部と長手方向端部の中間部が変形して剛性枠部120へ押しつけられる。したがって、変形が周方向へ波打ち状になり、不完全作動部190が分散して発生し、不完全作動部190の発生箇所が増大する。このため、全体として不完全作動部190となる部分が広がり、開口面積が少なくなる。
バルブ開放率F=S/E=164/263=約62%
程度となる。バルブ開放率Fが大きいほど、リリーフバルブ130を有効に活用していることになり、バルブ性能を示す指標になる。
そこで本願発明は、上記要請の実現を目的とする。
弾性仕切部材(30)に、主液室(22)の内圧変動を吸収する弾性可動膜(32)と、外周部へ配置されたリリーフバルブ(36)とを一体に設け、このリリーフバルブ(36)で前記仕切部材(20)に前記主液室(22)と副液室(24)を連通して設けられているリーク通路(40)を開閉するものにおいて、
前記弾性可動膜(32)は、曲線部(P)と直線部(Q)とによって形成される非円形で環状の剛性枠部(34)にて囲まれて非円形をなすとともに、
前記直線部(Q)より外側部分に、前記リリーフバルブ(36)を前記弾性仕切部材(30)の外周に沿って長手形状に設けたことを特徴とする。
前記弾性可動膜(32)は前記一対の直線部(Q)を有する二面幅形状をなすことを特徴とする。
また、直線部(Q)より外側部分に、リリーフバルブ(36)を弾性仕切部材(30)の外周に沿って長手形状に設けることができる。
このため、従来例のように、外周部側のリリーフバルブと内周側の弾性可動膜を同心円状に配置する場合と異なり、弾性可動膜(32)の面積を十分に大きくすることができる。しかも、リリーフバルブ(36)の基部を直線部(Q)とすることにより、リリーフバルブ(36)の初期面積を大きくしバルブ開放率も大きくすることができる。したがって、リリーフバルブ(36)を一体に設けても、弾性可動膜(32)の面積を可及的に大きくでき、低動バネ化を実現できる。
このため、長手方向中間部側の開放面積を大きくするとともに、長手方向端部側は不完全作動部を少なくすることができるので、全長において開放し易くなり、バルブ開放率が向上する。
しかも、長手方向中間部を最も早いタイミングで開き易くすることができるので、これによってもキャビテーションを効果的に防止できる。
したがって、リリーフバルブ(36)の長手方向端部におけるバルブ角を大きくするとともに、長手方向中間部におけるバルブ長を長くすることで、リリーフバルブ(36)の開放を速くすることが可能になり、小さい圧力でリリーフバルブ(36)を迅速に作動させ、キャビテーションの発生を低減させることができる。
そのうえ、曲げ溝(52)に直線部(Q)と平行する直線状部分を設けたので、この直線状部分より径方向外方のリリーフバルブ(36)におけるバルブ長を可変にすることができる。
図1は、本実施形態に係るエンジンマウント10の縦断面(図2の1−1線断面)であり、図2はエンジンマウント10の平面図、図3は仕切部材20を主液室22側から示す平面図である。
なお本願において、上下・左右の各方向は、図1において、エンジンマウント10の中心軸線Lに沿って図の上下方向を上下、軸直交方向を左右とする。また、中心軸線Lに沿うZ方向を主たる振動の入力方向ということにする。
インシュレータ16は略円錐台状をなす防振主体の弾性体であり、内側に第2の取付金具14で囲まれた空間が設けられ、その開口はダイヤフラム18で閉じられて密閉空間をなすとともに、この密閉空間内に非圧縮性の液体が封入されて液室が形成されている。
仕切部材20は、外周部に設けられた中空リング状のオリフィス形成部26と、その内側に設けられた弾性仕切部材30とを備える。
オリフィス形成部26には、減衰オリフィス28が主液室22と副液室24を連通して設けられ、所定の低周波大振幅振動で液柱共振して、高減衰を得るようになっている。
環状固定部29eは二面幅形状をなし、この二面幅部の外周側にバルブ開口29jが設けられている。バルブ開口29jは主液室22と後述するリーク通路40を連通する。29mは減衰オリフィス28の主液室側開口である。
第2の取付金具14の内周面には、インシュレータ16の一部から連続する薄肉のシール部16aが一体化され、オリフィス形成部26及び固定リング18aの外周部と第2の取付金具14の内周面との間にも介在し、液体のシール及び振動の遮断を行っている。
図4は弾性仕切部材30の平面図、図5は斜視図、図6は側面図、図7は図4の7−7線断面図、図8は図4の8−8線断面図、図9は図4の9−9線断面図である。
なお、図4に示すように、弾性仕切部材30の中心Oで交わる直交2軸をX及びYとし、X軸及びY軸に沿う方向をX方向及びY方向とする。
剛性枠部34は、一対の直線部Q間における外周円Rの円弧部Pにも設けられる。円弧部Pも対向位置に設けられて一対をなす。
34aは、剛性枠部34の上下面に突出して一体に形成されるシール突起であり、このシール突起34aは全周にわたって連続する環状をなしている。
したがって、リリーフバルブ36は、周長が略1/4円弧もしくはそれより短い比較的小さなものである。しかし、二面幅形状を利用してリリーフバルブ(36)を、各直線部Qの外側となる対向位置に一対で設けることができるので、十分な開放面積を確保できる。
先端縁部54の周方向両端部はリリーフバルブ36の長手方向端部54aをなし、この部分は、剛性枠部34の直線部Qへ接続する。長手方向端部54aの内側はアール状をなして、曲げ溝52の長さ方向両端部52a外側から直線部Qへ接続する。
したがって、弾性仕切部材30の径方向におけるリリーフバルブ36の幅であるバルブ長VLは、周方向で変化し、長手方向中間部におけるもの(図のX軸上のもの)が最長となり、長手方向端部54aのうち直線部Qへ接続する部分はほぼ0となる。
このライン36aは曲げ溝52の深さ変化も示し、バルブ長(本図では、ライン36aとシール面56の上面間の距離)が長手方向中間部へ向かって次第に長くなるように変化していることが判る。
したがって、長手方向端部では、図9に示すように、バルブ長は最小、バルブ角は最大となり、リリーフバルブ36が開くときの曲がりを最小にする。
シール面56の内周側部分は、先端縁部54の幅W2で、本体部58と段差をなして立ち上がっている。
一方、下部34cは曲げ溝52の溝幅W1程度の肉厚が増加されて厚肉であり、t3と曲げ溝52の幅W1の合計(t3+W1)と同程度もしくはこれよりも大きくなる(t4≧t3+W1)。
このようにすることで、本体部58の剛性を調整し、主液室22から副液室24側へ押されてシール面56が内壁部27へ押しつけられたとき変形しにくい程度の剛性を確保し、かつ副液室24から主液室22へ押し上げられたときキャビテーション発生条件となる所定の液圧で、図11に示すように、リリーフバルブ36が曲げ溝52を起点に内側(上部34b側)へ曲がり易くなるように設定される。
すなわち、リリーフバルブ36の本体部58における肉厚を比較的大きくすることにより、剛性を高くして、リリーフバルブ36全体が局部変形せずに変形できるようにしている。このようにリリーフバルブ36を高剛性にしても、長いバルブ長VLの設定や曲げ溝52等を設けることにより、開き易くなっている。
また、リリーフバルブ36の本体部58の肉厚t5は弾性可動膜32のt1よりも小さくなっている。但し、この肉厚関係は、仕様により任意に変更できる。
このように、バルブ角θ3が最も大きくなるリリーフバルブ36の長手方向端部は、僅かな変形でも開くようになる。
この図から明らかなように、最大変位量Dは大きくなり、バルブ開放面積Sは十分に大きくなっている。なお、変位量はリリーフバルブ36の開き量であってバルブ長に対応し、長手方向中間部が最も大きくなって最大変位量Dとなり、長手方向端部に向かって次第に減少する。また、開放面積も長手方向中間部から長手方向端部に向かって次第に減少するように変化している。
したがって、リリーフバルブ36が開き易くなっていることが明らかである。
このようにすると、弾性可動膜32は直線部Qと円弧部Pで囲まれた非円形(二面幅形状)のものとなる。従来のものは、弾性仕切部材の外径が同じ場合、仮想線R1で示す同心円状部分を剛性枠部とし、その径方向外方部分にリリーフバルブを設けるから、弾性可動膜部分は仮想線R1で示す同心円の内側部分となって、その面積は本実施形態のものより小さくなる。すなわち、本実施形態の弾性可動膜32は従来のものと比べて、より大きな面積にすることができる。
本実施形態に係るエンジンマウントを車両に搭載した場合において、シェイク振動のような、低周波大振幅振動が入力すると、弾性可動膜32の剛性を予めこの振幅で弾性変形しないように調整しておくことにより、主液室22の液体は減衰オリフィス28を介して副液室24との間で流動し、減衰オリフィス28により液柱共振を生じて高減衰を実現する。
また、リリーフバルブ36は,図10に示すように、シール面56が内壁部27へ密着した状態を維持し、リークを防ぐため、高減衰を可能にする。
このとき、弾性可動膜32を二面幅形状とし、部分的に弾性仕切部材30の外周部にまで形成できる。
すなわち、リリーフバルブ36の長手方向中間部は、バルブ長が最長となり、バルブ剛性は最低となるから、この部分におけるリリーフバルブ36は小さな圧力でも開くことができるようになり、開くタイミングが早くなる。
したがって、図12に示すように、リリーフバルブ36の最大開放時には、剛性が高い長手方向端部54aでも僅かな変形で開くことができ、不完全作動部Gが少なくなる。
なお、不完全作動部Gの減少は曲げ溝52の端部52aを内側へ曲げることにより、長手方向端部54aが曲がるときの抵抗を少なくすることによっても実現されている。
その結果、リーク時の流通抵抗を低減させて、キャビテーションの発生を低減させることができる。
しかも、リリーフバルブ36の基部をほぼ直線部Qで形成したので、基部が弧状に長く形成される場合と比べてスムースにかつ長手方向両端部まで開きやすくなる。
このため、図15に示す従来例のように、リリーフバルブ130を弾性可動膜110の外側へ同心円状に配置することにより、弾性可動膜110の面積を小さくしてしまったり、逆に、弾性仕切部材100を大径にしてしまうようなことがなくなる。
このように、直線部Qの数は任意に設定できる。
なお、図14のA〜Dについて、各弾性可動膜32の周囲は非円環状の剛性枠部34で縁取られていることに変わりはない。
また、エンジンマウント以外でも、例えば、サスペンションマウント等の各種液封防振装置に適用することが可能である。
すなわち、曲げ溝52が直線部を有することにより、平面視でリリーフバルブ36は、内側の直線部と外側の円弧部とに囲まれた切片状をなし、この直線部から円弧部までの距離がバルブ長をなすので、バルブ長が可変構造となる。
Claims (7)
- 内部に設けられた液室を主液室(22)と副液室(24)に区画する仕切部材(20)に、主液室(22)と副液室(24)を連通する減衰オリフィス(28)と弾性仕切部材(30)を設けた液封防振装置であって、
弾性仕切部材(30)に、主液室(22)の内圧変動を吸収する弾性可動膜(32)と、外周部へ配置されたリリーフバルブ(36)とを一体に設け、このリリーフバルブ(36)で前記仕切部材(20)に前記主液室(22)と副液室(24)を連通して設けられているリーク通路(40)を開閉するものにおいて、
前記弾性可動膜(32)は、曲線部(P)と直線部(Q)とによって形成される非円形で環状の剛性枠部(34)にて囲まれて非円形をなすとともに、
前記直線部(Q)より外側部分に、前記リリーフバルブ(36)を前記弾性仕切部材(30)の外周に沿って長手形状に設けたことを特徴とする液封防振装置。 - 請求項1において、前記弾性仕切部材(30)は円形をなし、前記曲線部は前記弾性仕切部材(30)の外周円(R)の一部に相当する円弧部(P)をなし、前記直線部(Q)は、前記外周円(R)の弦をなすことを特徴とする液封防振装置。
- 請求項1又は2において、前記リリーフバルブ(36)のバルブ長が、リリーフバルブ(36)の長手方向中間部側ほど長くなるように変化することを特徴とする液封防振装置。
- 請求項3において、前記リリーフバルブ(36)は、前記主液室(22)へ向かって拡開するように前記弾性可動膜(32)の径方向外方へ延出し、このリリーフバルブ(36)の開き角度であるバルブ角が、長手方向中間部に向かって次第に小さくなるように変化することを特徴とする液封防振装置。
- 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記リリーフバルブ(36)の基部には、曲げ溝(52)が設けられ、この曲げ溝(52)は前記主液室(22)へ向かって開放されるとともに、前記直線部(Q)と平行する直線状部分を有することを特徴とする液封防振装置。
- 請求項5において、前記曲げ溝(52)は長さ方向両端部(52a)が前記弾性可動膜(32)側へ曲がっていることを特徴とする液封防振装置。
- 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記直線部(Q)は、前記弾性仕切部材(30)の中心(O)を挟んで対向位置に平行して一対で設けられ、
前記弾性可動膜(32)は前記一対の直線部(Q)を有する二面幅形状をなすことを特徴とする液封防振装置。
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