JP5985979B2 - 液封防振装置 - Google Patents

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Description

この発明は、液封防振装置に設けられたキャビテーション防止用のリリーフバルブに係り、特に、液室を主液室と副液室とに区画する円形の弾性仕切部材に対してその外周部へリリーフバルブを一体に設けたものに関する。
なお、本願において径方向とは原則として弾性仕切部材の径方向をいうものとする。また、リリーフバルブは、弾性仕切部材の外周円に沿ってその周方向へ長く形成されるので、外周円の周方向に沿う方向をリリーフバルブの長手方向ということにする。後述する従来例についても同様である。
エンジンマウントのような液封防振装置において、主液室と副液室を区画する仕切部材に弾性可動膜を設けて、主液室の内圧を吸収するようにするとともに、弾性可動膜の外周にリリーフバルブを一体に設け、キャビテーションを発生させるような過大振幅振動の入力により主液室がキャビテーションを発生するような負圧になるキャビテーション発生条件になったとき、リリーフバルブを開いて、副液室の液体を主液室へ急速にリークさせて主液室の液圧を高め、キャビテーションを防止するようにしたものは公知である。
図15は、このような弾性仕切部材100の平面視であり、弾性仕切部材100は円形をなし、仕切部材の剛性部分に嵌合保持される。弾性仕切部材100の中央部に弾性可動膜110が設けられ、その外周に厚肉の剛性枠部120を同心円状に設け、ここで弾性可動膜110の外周部を固定するようになっている。弾性仕切部材100の径方向において、剛性枠部120の外方にはリリーフバルブ130が一体に設けられている。リリーフバルブ130の剛性枠部120に対する開き角θは長手方向で一定になっている。
リリーフバルブ130は、弾性可動膜110の外周部に周方向へ適当間隔で複数設けられ(この例では4個)、剛性枠部120の外側に沿って形成された主液室側へ開放された曲げ溝140により、剛性枠部120に対して曲がり易くなっている。
図中の拡大部はリリーフバルブ130部分の断面図であり、この断面において、リリーフバルブ130は、剛性枠部120から径方向外方かつ主液室170側へ向かって斜め上がりにリーク通路150内へ延出している。
リーク通路150は、弾性仕切部材100を嵌合保持する仕切部材の剛性部分に設けられて主液室170と副液室180を連通する通路であり、リリーフバルブ130の先端がリーク通路内壁部160へ密接することにより閉じられ、リリーフバルブ130が弾性変形して曲がり、先端がリーク通路内壁部160から離れると、開放されて主液室170と副液室180が連通するようになっている。前記キャビテーション発生条件未達時(通常時)のリーク通路150は閉じられている。
キャビテーション発生条件になると、主液室170側が負圧になるため、リーク通路150内の液体が副液室180側からリリーフバルブ130を上方へ押し上げて開き、リリーフバルブ開の状態となり、液体は副液室180側から主液室170へリークして流入し、主液室170の液圧を上昇させてキャビテーションの発生を阻止する。
図16は仕切部材200の平面図であり、弾性仕切部材100を支持する金属製等の円形の剛性部材210を有し、中央に開口部220が形成され、この開口部220の周囲に環状の固定部230が設けられ、この固定部230に剛性枠部120が固定されている。剛性枠部120に囲まれた弾性可動膜110が開口部220から見えている。
固定部230の外周側には、円弧状のバルブ開口240が、固定部230の同心円上に90°間隔で形成され、ここに各リリーフバルブ130が臨んでいる。
特開2009−52675号公報
図17は、リリーフバルブ130が開いたときの状態を示す。リリーフバルブ130は剛性枠部120へ向かって曲がるように弾性変形し、長手方向中間部では、先端部側が剛性枠部120へ当接して開き状態になり、リーク通路150を開放する。
しかしながら、長手方向端部は剛性が高いため曲がりにくくなり、剛性枠部120との間に間隙を形成し、リリーフバルブ130の開放が不十分になる不完全作動部190が形成される。また、リリーフバルブ130の長手方向端部を除く部分はバルブ長が一定であり、ほぼ一様な剛性をなすため、その中でも最も相対的に剛性が低い長手方向中間部が剛性枠部120へ押しつけられるように最初に変形し、剛性枠部120に当接すると、次に、この当接した長手方向中間部と長手方向端部の中間部が変形して剛性枠部120へ押しつけられる。したがって、変形が周方向へ波打ち状になり、不完全作動部190が分散して発生し、不完全作動部190の発生箇所が増大する。このため、全体として不完全作動部190となる部分が広がり、開口面積が少なくなる。
図中のAは、閉じている状態におけるリリーフバルブ130の外周部輪郭、Bは開いたときの状態における外周部輪郭である。このAとBの間の面積(ハッチング部C)が開放面積となる。Dはリリーフバルブ130が開くときの最大変位量である。最大変位量は長手方向中間部に生じる。
例えば、バルブ開放面積をSとしたとき、S=164mm程度に設定する場合がある。この設定において、図中の拡大部Kに示すように、リリーフバルブ130が閉じているときの面積である初期面積をEとすれば、この例ではE=263mm 程度となり、
バルブ開放率F=S/E=164/263=約62%
程度となる。バルブ開放率Fが大きいほど、リリーフバルブ130を有効に活用していることになり、バルブ性能を示す指標になる。
ところで、バルブ性能向上のためには、リリーフバルブ130の初期面積を大きくして、開いたときにおける開放面積を大きくすることが考えられる。しかし、弾性仕切部材100が一定の条件下で、リリーフバルブ130の初期面積を大きくすると、弾性可動膜110の面積を相対的に小さくすることになり、低動バネ化を損なうことになる。すなわち、リリーフバルブ130の初期面積Eの拡大と弾性可動膜110の面積の拡大とは両立できない。しかも、図17における剛性枠部120は、円弧状をなしてリリーフバルブ130側へ入り込んでいるので、リリーフバルブの初期面積が小さくなり、バルブ開放率もより小さくなってしまう。このため、バルブ開放率が高くかつバルブ性能がよいにもかかわらず、弾性可動膜110の面積を大きくして低動バネ化できるように小型化可能なリリーフバルブが求められる。
そこで本願発明は、上記要請の実現を目的とする。
上記課題を解決するため請求項1の発明は、内部に設けられた液室を主液室(22)と副液室(24)に区画する仕切部材(20)に、主液室(22)と副液室(24)を連通する減衰オリフィス(28)と弾性仕切部材(30)を設けた液封防振装置であって、
弾性仕切部材(30)に、主液室(22)の内圧変動を吸収する弾性可動膜(32)と、外周部へ配置されたリリーフバルブ(36)とを一体に設け、このリリーフバルブ(36)で前記仕切部材(20)に前記主液室(22)と副液室(24)を連通して設けられているリーク通路(40)を開閉するものにおいて、
前記弾性可動膜(32)は、曲線部(P)と直線部(Q)とによって形成される非円形で環状の剛性枠部(34)にて囲まれて非円形をなすとともに、
前記直線部(Q)より外側部分に、前記リリーフバルブ(36)を前記弾性仕切部材(30)の外周に沿って長手形状に設けたことを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、請求項1において、前記弾性仕切部材(30)は円形をなし、前記曲線部は前記弾性仕切部材(30)の外周円(R)の一部に相当する円弧部(P)をなし、前記直線部(Q)は、前記外周円(R)の弦をなすことを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2において、前記リリーフバルブ(36)の長さであるバルブ長が、リリーフバルブ(36)の長手方向中間部側ほど長くなるように変化することを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項3において、前記リリーフバルブ(36)が、前記主液室(22)へ向かって拡開するように前記弾性可動膜(32)の径方向外方へ延出し、このリリーフバルブ(36)の開き角度であるバルブ角が、長手方向中間部に向かって次第に小さくなるように変化することを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記リリーフバルブ(36)の基部には、曲げ溝(52)が設けられ、この曲げ溝(52)は前記主液室(22)へ向かって開放されるとともに、前記直線部(Q)と平行する直線状部分を有することを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項5において、前記曲げ溝(52)の長さ方向両端部(52a)が前記弾性可動膜(32)側へ曲がっていることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、請求項1〜6のいずれか1項において、前記直線部(Q)が、前記弾性仕切部材(30)の中心(O)を挟んで対向位置に平行して一対で設けられ、
前記弾性可動膜(32)は前記一対の直線部(Q)を有する二面幅形状をなすことを特徴とする。
請求項1によれば、弾性可動膜(32)とリリーフバルブ(36)を弾性仕切部材(30)へ一体に設けるとともに、弾性可動膜(32)を囲む剛性枠部(34)を曲線部(P)と直線部(Q)とによって形成される非円形で環状のものとし、この剛性枠部(34)を固定することにより、非円形をなす弾性可動膜(32)の周囲を固定することができ、弾性可動膜(32)は、剛性枠部(34)の内側に形成され、非円形形状になる。
また、直線部(Q)より外側部分に、リリーフバルブ(36)を弾性仕切部材(30)の外周に沿って長手形状に設けることができる。
このため、従来例のように、外周部側のリリーフバルブと内周側の弾性可動膜を同心円状に配置する場合と異なり、弾性可動膜(32)の面積を十分に大きくすることができる。しかも、リリーフバルブ(36)の基部を直線部(Q)とすることにより、リリーフバルブ(36)の初期面積を大きくしバルブ開放率も大きくすることができる。したがって、リリーフバルブ(36)を一体に設けても、弾性可動膜(32)の面積を可及的に大きくでき、低動バネ化を実現できる。
請求項2によれば、弾性仕切部材(30)は円形とし、この外周円(R)の弦をなす直線部(Q)を設けることにより、外周円(R)の一部に相当する円弧部(P)と弦をなす直線部(Q)による非円環状の剛性枠部(34)を形成できる。また、弾性可動膜(32)を切り欠き円状や二面幅形状の非円形にすることができる。
請求項3によれば、弾性可動膜(32)の径方向におけるリリーフバルブ(36)の長さであるバルブ長が、リリーフバルブ(36)の長手方向中間部側ほど長くなるように変化するので、バルブ剛性も長手方向中間部側が次第に低下するように変化させることができる。
このため、長手方向中間部側の開放面積を大きくするとともに、長手方向端部側は不完全作動部を少なくすることができるので、全長において開放し易くなり、バルブ開放率が向上する。
その結果、バルブ性能が向上するので、流通抵抗を低減してキャビテーションを低減させることができるとともに、バルブ開放率が大きくなるに応じてリリーフバルブ(36)を小型化できることになり、弾性可動膜(32)を大きくしても所定の性能を維持してリリーフバルブ(36)を弾性可動膜(32)と一体に設けることができる。
しかも、長手方向中間部を最も早いタイミングで開き易くすることができるので、これによってもキャビテーションを効果的に防止できる。
請求項4によれば、リリーフバルブ(36)を主液室(22)へ向かって拡開するように形成し、バルブ角を長手方向中間部に向かって次第に小さくなるように変化させたので、バルブ長は長手方向中間部に向かって次第に長くなる。
したがって、リリーフバルブ(36)の長手方向端部におけるバルブ角を大きくするとともに、長手方向中間部におけるバルブ長を長くすることで、リリーフバルブ(36)の開放を速くすることが可能になり、小さい圧力でリリーフバルブ(36)を迅速に作動させ、キャビテーションの発生を低減させることができる。
請求項5によれば、リリーフバルブ(36)の基部に前記主液室(22)へ向かって開放される曲げ溝(52)を設けたので、この曲げ溝(52)を基点としてリリーフバルブ(36)を曲げ易くすることができる。
そのうえ、曲げ溝(52)に直線部(Q)と平行する直線状部分を設けたので、この直線状部分より径方向外方のリリーフバルブ(36)におけるバルブ長を可変にすることができる。
請求項6によれば、曲げ溝(52)の長さ方向両端部52aを内側へ曲げたので、曲げ時の障害となる不完全作動部を少なくし、最もバルブ剛性が高くなる長手方向端部を開き易くすることができる。
請求項7によれば、弾性可動膜(32)を二面幅形状としたので、弾性仕切部材(30)における二面幅形状の外方部分を利用してリリーフバルブ(36)を対向位置に一対で設けることができ、一対のリリーフバルブ(36)により、十分な開放面積を確保できる。
本実施形態に係るエンジンマウントの縦断面図 上記エンジンマウントの平面図 仕切部材の平面図 上記エンジンマウントにおける弾性仕切部材の平面図 上記弾性仕切部材の斜視図 上記弾性仕切部材の側面図 図4の7−7線断面図 図4の8−8線断面図 図4の9−9線断面図 リリーフバルブの拡大断面図 リリーフバルブの開き状態を示す図 リリーフバルブの開放面積を説明する図 本願発明のバルブ性能を示すグラフ 本願発明の原理図 従来例に係る弾性仕切部材の平面図 従来例に係る仕切部材の平面図 従来例におけるリリーフバルブの開放面積を説明する図
以下、自動車のエンジンマウントとして構成された液封防振装置を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るエンジンマウント10の縦断面(図2の1−1線断面)であり、図2はエンジンマウント10の平面図、図3は仕切部材20を主液室22側から示す平面図である。
なお本願において、上下・左右の各方向は、図1において、エンジンマウント10の中心軸線Lに沿って図の上下方向を上下、軸直交方向を左右とする。また、中心軸線Lに沿うZ方向を主たる振動の入力方向ということにする。
これらの図において、例えば、エンジン(振動源、図示省略)側へ取付けられる第1の取付金具12と、車体(振動被伝達側部材、図示省略)側へ取付けられる円筒状をなす第2の取付金具14と、これらを弾性的に連結するゴム等の弾性部材からなるインシュレータ16を備える。
インシュレータ16は略円錐台状をなす防振主体の弾性体であり、内側に第2の取付金具14で囲まれた空間が設けられ、その開口はダイヤフラム18で閉じられて密閉空間をなすとともに、この密閉空間内に非圧縮性の液体が封入されて液室が形成されている。
この液室内は、平面視円形の仕切部材20でインシュレータ16側の主液室22と、ダイヤフラム18側の副液室24とに区画されている。
仕切部材20は、外周部に設けられた中空リング状のオリフィス形成部26と、その内側に設けられた弾性仕切部材30とを備える。
オリフィス形成部26には、減衰オリフィス28が主液室22と副液室24を連通して設けられ、所定の低周波大振幅振動で液柱共振して、高減衰を得るようになっている。
仕切部材20は、上側部材20aと下側部材20bとに上下分割され、これらを上下合わせしたものであり、外周側にオリフィス形成部26が形成され、オリフィス形成部26より内側には、オリフィス形成部26の内壁部27に周囲を囲まれた空間が形成され、この空間を弾性仕切部材30の収容部としている。弾性仕切部材30の収容部は、上下を上側部材20aと下側部材20bで覆われ、それぞれに形成された開口部29c及び29dにより主液室22及び副液室24を連通している。弾性仕切部材30の収容部内は、弾性仕切部材30によって上下に区画されている。
弾性仕切部材30は、中央部の弾性可動膜32と、その外周部に設けられる厚肉の剛性枠部34と、さらにこの剛性枠部34の外周側に形成された副液室24へ向かって開放された略V字状断面をなすリリーフバルブ36とで構成されている。
図3に示すように、上側部材20aは円形の金属板であり、中央に変位規制部29aが設けられている。この変位規制部29aには開口部29cが設けられ、この開口部29cを囲んで環状固定部29e及び格子状固定部29gが設けられている。環状固定部29eは変位規制部29aの周囲を囲むように形成される。格子状固定部29gは環状固定部29eの内側へ格子状をなして一体に形成される。
環状固定部29e及び格子状固定部29gは、変位規制部29aに複数の開口部29cを開口形成したときの残部として形成される部分に相当する。
環状固定部29eは二面幅形状をなし、この二面幅部の外周側にバルブ開口29jが設けられている。バルブ開口29jは主液室22と後述するリーク通路40を連通する。29mは減衰オリフィス28の主液室側開口である。
下側部材20bも底面視形状は上側部材20aとほぼ同様であり、図1に断面を示すように、中央に変位規制部29bが設けられ、この変位規制部29bに開口部29dが設けられている。さらに開口部29dを囲んで環状固定部29f及び格子状固定部29hが設けられている。また、バルブ開口29kが設けられ、副液室24とリーク通路40を連通している。減衰オリフィス28の副液室側開口は、図示されない部分に形成され、副液室24と連通している。
再び図1において、剛性枠部34は、環状固定部29e及び29fで上下から挟持固定される。また、弾性可動膜32は、外周部の剛性枠部34を固定されることにより、主液室22の液圧変化を受けて弾性変形自在であり、弾性変形時における変位量は格子状固定部29g及び29hで所定範囲に規制されている。
弾性可動膜32は、開口部29c及び29dを通して主液室22及び副液室24の液体が流動することにより弾性変形して、主液室22の内圧変動を吸収するようになっている。また、弾性可動膜32の弾性変形に伴って、弾性仕切部材30の収容部における弾性可動膜32の上面側部分と主液室22との間を液体が開口部29cを通して流動することにより、比較的高周波数側となる所定の周波数にて液柱共振をおこなう。以下、この共振をホール共振ということにする。ホール共振は開口部29cを通した液体流動による液柱共振を意味する。
固定部29e及び29fとオリフィス形成部26の内壁部27との間には、主液室22と副液室24を連通するリーク通路40が設けられ、リリーフバルブ36で開閉される。リリーフバルブ36の先端が、リーク通路40に臨む内壁部27の壁面へ密着することにより閉じ状態となり、リーク通路40は主液室22と副液室24の間が遮断される。
リリーフバルブ36の先端が内壁部27から離れて剛性枠部34側へ曲がると、開放状態となり、リーク通路40は主液室22と副液室24を連通し、副液室24から主液室22へ液体をリークを可能にする。リーク通路40はバルブ開口29jで主液室22と連通し、バルブ開口29kで副液室24と連通する。
ダイヤフラム18の外周部は、金属製でリング状をなす固定リング18aに一体化されている。固定リング18aはオリフィス形成部26の底部に当接し、第2の取付金具14の下端部14dを内側へ折り曲げてカシメることにより、オリフィス形成部26を位置決め固定している。
第2の取付金具14の内周面には、インシュレータ16の一部から連続する薄肉のシール部16aが一体化され、オリフィス形成部26及び固定リング18aの外周部と第2の取付金具14の内周面との間にも介在し、液体のシール及び振動の遮断を行っている。
第2の取付金具14は上部が絞られて小径部14aをなし、この小径部14aと下方の大径部14bとの間に段差部14cが設けられ、この段差部14cにより、オリフィス形成部26の上部が位置決めされる。
次に、弾性仕切部材30について詳述する。
図4は弾性仕切部材30の平面図、図5は斜視図、図6は側面図、図7は図4の7−7線断面図、図8は図4の8−8線断面図、図9は図4の9−9線断面図である。
なお、図4に示すように、弾性仕切部材30の中心Oで交わる直交2軸をX及びYとし、X軸及びY軸に沿う方向をX方向及びY方向とする。
図4において、弾性仕切部材30の平面視形状は全体として円形をなし、その外周により形成される外周円をRとする。この外周円Rはその弦をなす直線部Qで区画され、中心O側部分が弾性可動膜32をなし、直線部Qより径方向外方側の略三日月状をなす部分(切片部分)にリリーフバルブ36が設けられている。
直線部Qは外周円の対向位置に設けられた平行する一対の直線部であり、この直線部Qが剛性枠部34の一部をなす。本願においては、このように、円の一部を一対の平行する直線部Qで区画する形状を2面幅形状ということにする。
剛性枠部34は、一対の直線部Q間における外周円Rの円弧部Pにも設けられる。円弧部Pも対向位置に設けられて一対をなす。
直線部Qと円弧部Pは環状に連続する厚肉部をなし、弾性可動膜32を囲んでいる。但し、剛性枠部34は非円環状をなし、内側の弾性可動膜32は、一対の円弧部Pと直線部Qとで外周を囲まれた平面視非円形形状をなしている。本願においてはこの形状も2面幅形状ということにする。
また、環状とは、ループ状に閉じられた状態を意味し、円環状及び非円環状を問わないものとする。
34aは、剛性枠部34の上下面に突出して一体に形成されるシール突起であり、このシール突起34aは全周にわたって連続する環状をなしている。
弾性可動膜32の表面には、固定部29g及び29h(図1)にて挟持される厚肉突部32aが中心部に上下へ突出して設けられ、その周囲に同心円状をなす環状リブ32b及び32cが上下へ突出して設けられている。
リリーフバルブ36は、弾性仕切部材30の外周部で、剛性枠部34の直線部Qよりも径方向外方部分に形成されている。すなわちリリーフバルブ36は、弾性仕切部材30のうち、剛性枠部34を二面幅とすることにより、この直線部Qによって区切られた外周円Rの残余部分(切片部分)を利用して設けられ、リリーフバルブ36の外周は弾性仕切部材30の外周円R上にある。
但し、厳密には閉じたときのシール性を確保するため、外周円Rよりも若干径方向外方へ張り出している(図3参照)。
したがって、リリーフバルブ36は、周長が略1/4円弧もしくはそれより短い比較的小さなものである。しかし、二面幅形状を利用してリリーフバルブ(36)を、各直線部Qの外側となる対向位置に一対で設けることができるので、十分な開放面積を確保できる。
リリーフバルブ36の剛性枠部34と接続する基部には、リリーフバルブ36の曲げ起点をなす曲げ溝52が形成されている。この曲げ溝52は、剛性枠部34の直線部Qに沿うY方向へ略直線状に形成され、その長さ方向両端部52aは内側(直線部Q方向)へ曲がりながら、次第に狭くなってやがて消失するようになっている(図4参照)。
リリーフバルブ36の外周部先端は、平坦で比較的幅広な先端縁部54をなす。
先端縁部54の周方向両端部はリリーフバルブ36の長手方向端部54aをなし、この部分は、剛性枠部34の直線部Qへ接続する。長手方向端部54aの内側はアール状をなして、曲げ溝52の長さ方向両端部52a外側から直線部Qへ接続する。
また、曲げ溝52は深さが変化しており、長手方向中間部がもっとも深くなり、長手方向端部へ向かって次第に浅くなるように変化している。
したがって、弾性仕切部材30の径方向におけるリリーフバルブ36の幅であるバルブ長VLは、周方向で変化し、長手方向中間部におけるもの(図のX軸上のもの)が最長となり、長手方向端部54aのうち直線部Qへ接続する部分はほぼ0となる。
図4及び5に示すように、リリーフバルブ36は、剛性枠部34における直線部Qの外方に一段低くなって一体に形成されている。
図6に示すように、リリーフバルブ36の剛性枠部34の下部34cに接続する基部のうち、副液室側へ面した部分を示すライン36aは、長手方向中間部が曲率の大きな曲線をなし、長手方向端部側は曲率が小さくなるように急変化している。
このライン36aは曲げ溝52の深さ変化も示し、バルブ長(本図では、ライン36aとシール面56の上面間の距離)が長手方向中間部へ向かって次第に長くなるように変化していることが判る。
図7〜9に示すように、リリーフバルブ36は、長手方向端部から中央部へ向かって、バルブ長が次第に長くなるように変化するが、このバルブ長の変化は曲げ溝52の深さ変化及びバルブ角変化構造によって実現されている。すなわち、バルブ角θ(図10:詳細後述)として、図7のものをθ1、図8のものをθ2、図9のものをθ3とすれば、θ1<θ2<θ3となり、長手方向端部へ向かって次第に増大する。すなわち、バルブ角変化構造になっている。
このようにすることで、バルブ長も変化させ、長手方向中間部で最長となるように変化させることができる。しかも、バルブ角を変化させることにより、バルブ長が変化しても、リリーフバルブ36の先端部の高さを一定にすることができる。
したがって、長手方向端部では、図9に示すように、バルブ長は最小、バルブ角は最大となり、リリーフバルブ36が開くときの曲がりを最小にする。
また、図7に示すように、弾性可動膜32の一般肉厚t1(厚肉突部32a,リブ32b,リブ32cを除く部分の肉厚)は、剛性枠部34の高さ方向の肉厚t2よりも小さくなっている。このことは、弾性可動膜32が周囲の剛性枠部34よりも薄肉をなして主液室の内圧変動を弾性変形により吸収し易くなっていること、逆に、剛性枠部34は厚肉で弾性可動膜32の外周部を固定するに足る剛性部をなすことを意味する。
図10は、リリーフバルブ36部分の拡大断面図であり、図11はリリーフバルブ36の開き状態を示す断面図である。リリーフバルブ36は、図10に示すように、主液室22へ向かって開放された略V字状断面をなす凹部50を囲んで形成され、剛性枠部34から主液室22へ向かって斜め上がりに径方向外方へ拡開するように、弾性仕切部材30と一体に形成されている。
リリーフバルブ36の先端部は、リーク通路40に臨む内壁部27へ当接する部分がシール面56をなす。シール面56は、内壁部27への着座状態において、内壁部27と平行でかつ中心軸線Lとも平行な面をなす。シール面56の高さHは、リリーフバルブ36の先端部における剛性に影響し、閉じたときにおける内壁部27との密着を強くし、キャビテーション発生条件未達時(通常時)における、振幅が比較的大きくかつ過大振幅振動よりは小さな大振幅振動に対してもリークを防ぎ、高減衰を維持できる程度の剛性が得られるように調整されている。
シール面56の内周側部分は、先端縁部54の幅W2で、本体部58と段差をなして立ち上がっている。
剛性枠部34は、曲げ溝52の底部より上方の上部34bと、曲げ溝52の底部より下方の下部34cとからなり、それぞれの肉厚をt3、t4としたとき、上部34bの肉厚t3は、曲げ溝52を設けたことにより薄くなる。
一方、下部34cは曲げ溝52の溝幅W1程度の肉厚が増加されて厚肉であり、t3と曲げ溝52の幅W1の合計(t3+W1)と同程度もしくはこれよりも大きくなる(t4≧t3+W1)。
下部34cの肉厚t4を大きくすれば、それだけリリーフバルブ36の剛性が高くなって曲がりにくくなり、特に、主液室の液圧により図の下方へ変形しにくくなるので、通常時におけるリークをより確実に防ぐことができる。
但し、リリーフバルブ36の剛性が高くなると、キャビテーション発生条件時においてリリーフバルブ36が曲がりにくくなるので、上記肉厚t3、t4及び溝幅W1の関係は、通常時におけるリーク防止に要求される剛性の程度と、キャビテーション発生条件時におけるリリーフバルブ36の曲がり易さとのバランスにより適宜設定される。
したがって、キャビテーション発生条件時におけるリリーフバルブ36の曲がり易さを、通常時におけるハイレベルなリーク防止に対する要請よりも優先させる場合には、上記の逆の関係(t4<t3+W1)に設定することもできる。
すなわち、曲げ溝52に臨む外壁53に対して、下部34cの外壁59は、同じ程度(外壁53を下方へ延長した線と重なる程度)かそれよりもさらに径方向外側に位置するようになっている。
このようにすることで、本体部58の剛性を調整し、主液室22から副液室24側へ押されてシール面56が内壁部27へ押しつけられたとき変形しにくい程度の剛性を確保し、かつ副液室24から主液室22へ押し上げられたときキャビテーション発生条件となる所定の液圧で、図11に示すように、リリーフバルブ36が曲げ溝52を起点に内側(上部34b側)へ曲がり易くなるように設定される。
なお、この例におけるリリーフバルブ36の本体部58の肉厚t5は、t3より大きく、t4より小さい(t3<t5<t4)。
すなわち、リリーフバルブ36の本体部58における肉厚を比較的大きくすることにより、剛性を高くして、リリーフバルブ36全体が局部変形せずに変形できるようにしている。このようにリリーフバルブ36を高剛性にしても、長いバルブ長VLの設定や曲げ溝52等を設けることにより、開き易くなっている。
また、リリーフバルブ36の本体部58の肉厚t5は弾性可動膜32のt1よりも小さくなっている。但し、この肉厚関係は、仕様により任意に変更できる。
図10に示すように、リリーフバルブ36における本体部58の下面と、下部34cの外壁59とのなす角をバルブ角θとする。このバルブ角θは、図7〜9について前述したように、長手方向中間部が最も小さく、長手方向端部へ向かって次第に大きくなるように変化し、リリーフバルブ36の長手方向端部はバルブ角θ3と最も大きくなり、リリーフバルブ36は僅かに拡開する直立に近い状態となり、バルブ長は最短となる。
このように、バルブ角θ3が最も大きくなるリリーフバルブ36の長手方向端部は、僅かな変形でも開くようになる。
図11はリリーフバルブ36の開放状態を示す。キャビテーション発生条件になり、主液室22が一時的に負圧になると、主液室22側からの吸引及び液圧差が大きくなった副液室24側の液圧により、リリーフバルブ36が押し上げられ、本体部58が曲げ溝52を起点にして上部34b側へ曲がるため、シール面56が内壁部27から離れ、リーク通路40を開放する。このため、副液室24の液体が主液室22へ急速にリークされ、主液室22の内圧を上昇させて負圧を解消させ、キャビテーションを防止する。
図12は、リリーフバルブ36の開放状態及びバルブ開放率を説明する図である。この図は、平面視において、リリーフバルブ36の開いた状態を示し、リリーフバルブ36は、まず最も剛性が低くなっている長手方向中間部で変形が開始される。リリーフバルブ36の剛性は長手方向端部へ向かって次第に増大するから、リリーフバルブ36の開きは、液圧の増加に応じて、長手方向中間部から長手方向端部へ向かって次第に拡大し、剛性が最も高い長手方向端部の開きは最も遅くなる。
しかし、バルブ長は、長手方向中間部が最長で長手方向端部が最短となるように周方向へ変化しているから、変形量は長手方向中間部が最大で長手方向端部が最小となり、最大開放時には、ほぼ周方向全体が曲がり、剛性枠部34の上部34bにおける直線部Qへ重なるように接近し、ほぼ均一に開口する。
このとき、リリーフバルブ36の先端縁部54は、長手方向端部54a近傍部において、上部34bとの間に若干の間隙を残して不完全作動部Gをなす。この部分は、リリーフバルブ36の長手方向端部が高剛性になることにより、不可避的に発生する。
しかし、本願発明においては、長手方向端部54aが当初からバルブ角を大きく設定されて、あまり拡開せずに直立に近い状態をなし、かつバルブ長も最短であるため、僅かな変形量で開くことができるようになっている。このため、不完全作動部Gは従来例(図17の符号190)と比べて僅かであり、その分だけ開口面積を大きくすることができる。
なお、不完全作動部Gに、曲げ溝52の長さ方向端部52aの一部が見えているが、この長さ方向端部52aは予め内側へ曲がって逃げている部分であるため、長手方向端部54aの変形を容易にして、不完全作動部Gの発生を少なくすることに貢献している。
図中のAはリリーフバルブ36の閉じ状態、Bは開き状態である。AB間のハッチングで示す領域Cがバルブ開放部分であり、この部分の面積がバルブ開放面積Sである。
この図から明らかなように、最大変位量Dは大きくなり、バルブ開放面積Sは十分に大きくなっている。なお、変位量はリリーフバルブ36の開き量であってバルブ長に対応し、長手方向中間部が最も大きくなって最大変位量Dとなり、長手方向端部に向かって次第に減少する。また、開放面積も長手方向中間部から長手方向端部に向かって次第に減少するように変化している。
ここで、図中の拡大部に示すように、閉じた状態におけるバルブ初期面積をEとすれば、具体的な数値例として、S=138mm、E=163mm 程度が可能である。この場合、バルブ開放率F=S/E=約85%となり、開放率が高くなる。
したがって、リリーフバルブ36が開き易くなっていることが明らかである。
なお、従来例に比べ、バルブ初期面積Eが小さくなっているが、リリーフバルブ36を小さくしても、リリーフバルブ36のほぼ全長を開くことができるようになり、最大開放時の不完全作動部Gを少なくすることができる。このためバルブ開放率が高くなり、バルブ性能が向上する。したがって、弾性可動膜32の面積を拡大することにより、リリーフバルブ36を比較的小型にしても、バルブ開放面積を比較的大きくすることができ、十分にキャビテーション防止効果が得られることを示している。
図13はバルブ性能を示すグラフであり、縦軸にはキャビテーション発生条件時において主液室に発生する負圧(MPa)、横軸にリリーフバルブの開放面積(mm2;平方ミリメートル)をとってある。なお、グラフにおける負圧の目盛り及び以下の説明における負圧は絶対値とする。本願発明に係るリリーフバルブは、併せて示す従来例と比較すると明らかなように、小さな負圧から開き、負圧の増加に応じて開放面積が徐々に拡大し、所定の負圧(図では0.02MPa近傍)から急激に開放面積が拡大する。この急拡大部の変化は従来例と同様であるが、開放面積はより大きくなる。
したがって、本願発明のリリーフバルブは、比較的小さな圧力(負圧)の早いタイミングで開放を開始でき、しかも当初はゆっくり開くことによって、周方向全体を開放させることができるとともに、その後は急激に開放面積を大きくできることを意味し、キャビテーション防止に好適な優れたバルブ性能を発揮することを示す。
図14は弾性可動膜32の面積拡大について原理的に示す図である。直線部の数に応じてA〜Dの例を示す。例えば、図14のBは直線部を2本設けて二面幅にした例であり、本実施形態に係るものである。この図において、弾性仕切部材30は平面視円形をなし、その外周部は外周円Rをなす。この外周円Rに弦としての直線部Qを設け、この直線部Qで区画された中心O側を弾性可動膜32とし、直線部Qより径方向外方側の弧で囲まれた略三日月状の切片部分にリリーフバルブ36を設ける。
弾性可動膜32の周囲は、直線部Qと外周円の部分円弧である円弧部Pからなる非円環状の剛性枠部34で縁取られている。
このようにすると、弾性可動膜32は直線部Qと円弧部Pで囲まれた非円形(二面幅形状)のものとなる。従来のものは、弾性仕切部材の外径が同じ場合、仮想線R1で示す同心円状部分を剛性枠部とし、その径方向外方部分にリリーフバルブを設けるから、弾性可動膜部分は仮想線R1で示す同心円の内側部分となって、その面積は本実施形態のものより小さくなる。すなわち、本実施形態の弾性可動膜32は従来のものと比べて、より大きな面積にすることができる。
特に、円弧部Pは弾性仕切部材30の外周部に相当するから、弾性可動膜32の周囲に剛性枠部34を設けても、弾性可動膜32は円弧部Pに向けて径方向に面積を十分に拡大することができる。その結果、リリーフバルブ36を弾性仕切部材30の外周部へ一体に設けたにもかかわらず、弾性可動膜32の面積を十分に確保して低動バネ化することができる。
なお、この直線部Qの数は任意であり、図14のAのように1本だけでなく、図14のBにおける2本、図14のCにおける3本、図14のDにおける4本等、自由に設定できる。直線部Qの数を増やすとリリーフバルブ36の1個当たりの面積が小さくなるが、逆に数を増やすことができるので、全体としての開放面積を大きくすることも可能である。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態に係るエンジンマウントを車両に搭載した場合において、シェイク振動のような、低周波大振幅振動が入力すると、弾性可動膜32の剛性を予めこの振幅で弾性変形しないように調整しておくことにより、主液室22の液体は減衰オリフィス28を介して副液室24との間で流動し、減衰オリフィス28により液柱共振を生じて高減衰を実現する。
また、リリーフバルブ36は,図10に示すように、シール面56が内壁部27へ密着した状態を維持し、リークを防ぐため、高減衰を可能にする。
こもり音のような高周波小振幅振動が入力すると、減衰オリフィス28が目詰まりして、主液室22の内圧が上がるため、弾性可動膜32が弾性変形してこれを吸収し、低動バネを実現する。
このとき、弾性可動膜32を二面幅形状とし、部分的に弾性仕切部材30の外周部にまで形成できる。
次に、過大振幅振動が入力すると、キャビテーション発生条件になり、バルブ開放率が向上してバルブ性能が高くなっているリリーフバルブ36は、図11に示すように、副液室24側の液圧によりリリーフバルブ36が押し上げられて開き、リーク通路40を開放し、副液室24から主液室22へ液体を急速にリークさせ、主液室22の内圧を上昇させて負圧を解消することにより、キャビテーションを防止する。
しかも、リリーフバルブ36は図13に示すようにバルブ性能が向上している。このバルブ性能の向上は、まず、バルブ角を長手方向中間部に向かって次第に小さくなるように変化させることで、バルブ長を長手方向中間部に向かって次第に長くなるように変化させることによって実現される。
すなわち、リリーフバルブ36の長手方向中間部は、バルブ長が最長となり、バルブ剛性は最低となるから、この部分におけるリリーフバルブ36は小さな圧力でも開くことができるようになり、開くタイミングが早くなる。
また、リリーフバルブ36の長手方向端部は、図9に示すように、バルブ角θ3を最大にして直立に近い状態としつつバルブ長L3を最小とすることにより、開放時における曲げ量自体を少なくて済むように設定しているため、僅かに曲がる程度の変形でも開放できることになり、不完全作動部G(図12)を少なくすることができる。
したがって、図12に示すように、リリーフバルブ36の最大開放時には、剛性が高い長手方向端部54aでも僅かな変形で開くことができ、不完全作動部Gが少なくなる。
このため、リリーフバルブ36の開放時における曲がりの障害となる不完全作動部Gを少なくして、リリーフバルブ36を長手方向端部54aまで開放させることができる。
なお、不完全作動部Gの減少は曲げ溝52の端部52aを内側へ曲げることにより、長手方向端部54aが曲がるときの抵抗を少なくすることによっても実現されている。
さらに、バルブ長をリリーフバルブ36の長手方向中間部から長手方向端部54aへ向かって次第に短くなるように変化させることにより、リリーフバルブ36の剛性を、長手方向中間部から長手方向端部54aへ向かって次第に高くなるように変化させたので、最初に長手方向中間部を小さな圧力で開かせ、この部分を開放の先導部とし、その後の圧力上昇に応じて長手方向端部54aへ向かって開かせて開放部を拡大させることができ、長手方向全体をスムーズに開放させることが可能になった。
したがって、大振幅振動に対してリークを防ぎ、高減衰を維持できる程度の剛性に設定しても、キャビテーション発生条件になると、長手方向中間部を素早く開いて迅速なリークを実現することにより、キャビテーションの原因となる気泡の発生を可及的に少なくすることができる。
また、バルブ長を長手方向中間部に向かって次第に長くなるように変化させたので、バルブ剛性を長手方向中間部に向かって次第に低下するよう変化させ、長手方向中間部側の開放面積を大きくするとともに、長手方向端部側は不完全作動部を少なくすることができるようになる。このため、ほぼ全長で均一に開かせることができる。
その結果、リーク時の流通抵抗を低減させて、キャビテーションの発生を低減させることができる。
そのうえ、リリーフバルブ36は長手方向中間部を先導部として長手方向端部へ向かって次第に開くようにしたので、全長において開放し易くなり、不完全作動部Gの発生箇所も長手方向端部だけの微少部分となって少なくなる。
しかも、リリーフバルブ36の基部をほぼ直線部Qで形成したので、基部が弧状に長く形成される場合と比べてスムースにかつ長手方向両端部まで開きやすくなる。
さらに、弾性可動膜32を非円形にしてその一部を弾性仕切部材30の外周部の一部まで拡大することにより、弾性可動膜32の面積を十分に大きくできるため、十分な低動バネを実現できる。
このため、図15に示す従来例のように、リリーフバルブ130を弾性可動膜110の外側へ同心円状に配置することにより、弾性可動膜110の面積を小さくしてしまたり、逆に、弾性仕切部材100を大径にしてしまうようなことがなくなる。
このとき、弾性仕切部材30の外周部に、円弧部Pの一部と直線部Qで構成した非円環状で厚肉の剛性枠部34を設け、これを弾性可動膜32の周囲を囲んで一体に形成したので、この剛性枠部34を固定することにより、非円形をなす弾性可動膜32の周囲を固定することができる。
また、リリーフバルブ36は、円弧部Pの延長となる円弧と直線部Qからなる外周円Rの切片部分に相当するから、図15に示すような円弧状に形成される場合よりは、リリーフバルブ36の開きを大きくすることができるので、バルブ開放率が向上し、バルブ性能が向上する。しかも、リリーフバルブ36が切片状をなすことによって、長手方向における長さを短くしても、リリーフバルブ36における所定の初期面積を確保できるから、リリーフバルブ36の長手方向における長さを短くして比較的短いものとすることができ、所定のバルブ性能を維持しつつもリリーフバルブ36を小型化できる。
したがって、弾性可動膜32の面積拡大とリリーフバルブ36の初期面積拡大を両立させることができる。また、弾性可動膜32の面積を従来同等とすれば、リリーフバルブ36を弾性仕切部材30の外周部へ弾性可動膜32と一体に設け、かつその初期面積を所定に確保しつつも、仕切部材20を小型化できる。
このため、弾性可動膜32とリリーフバルブ36を一体に設けた弾性仕切部材30において、リリーフバルブ36のバルブ開放率を向上させ、バルブ性能を高くして小型化を可能にすることにより、弾性可動膜32の面積拡大による低動バネ特性の向上と、バルブ性能向上によるキャビテーション防止の確実化という両立しにくい目的を同時に達成させることができる。
なお、本願発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、弾性可動膜32は必ずしも二面幅にする必要がなく、図14のAに示すように、直線部Qを1本だけ外周円Rの弦として用いることにより、この直線部Qで区画された中心O側を切り欠き円形状の弾性可動膜32とし、直線部Qより径方向外方側の弧で囲まれた三日月状の切片部分にリリーフバルブ36を設けてもよい。このようしても、弾性可動膜32は直線部Qと円弧部Pで囲まれた非円形の大きな面積を有するものとすることができる。
また、図14のCは、直線部Qを3本にした例であり、三日月状の切片部分は3個形成され、それぞれに計3個のリリーフバルブ36が設けられる。弾性可動膜32は3本の直線部Qと円弧部Pで囲まれた略三角形をなす非円形の大きな面積を有するものとなる。
図14のDは、直線部Qを4本にした例であり、三日月状の切片部分は4個形成され、それぞれに計4個のリリーフバルブ36が設けられる。弾性可動膜32は4本の直線部Qと円弧部Pで囲まれた略四角形をなす非円形の大きな面積を有するものとなる。
このように、直線部Qの数は任意に設定できる。
さらに、必ずしも円弧部Pではなく、楕円弧や、さらには円弧や楕円弧以外の種々な曲線からなる曲線部とし、これと直線部Qとを組み合わせたものでもよい。
なお、図14のA〜Dについて、各弾性可動膜32の周囲は非円環状の剛性枠部34で縁取られていることに変わりはない。
また、エンジンマウント以外でも、例えば、サスペンションマウント等の各種液封防振装置に適用することが可能である。
また、バルブ長の変化はバルブ角を変化させなくても実現できる。例えば、曲げ溝52に直線部Qと平行する直線部分を設けることによっても実現できる。
すなわち、曲げ溝52が直線部を有することにより、平面視でリリーフバルブ36は、内側の直線部と外側の円弧部とに囲まれた切片状をなし、この直線部から円弧部までの距離がバルブ長をなすので、バルブ長が可変構造となる。
20:仕切部材、22:主液室、24:副液室、26:オリフィス形成部、28:減衰オリフィス、27:内壁部、30:弾性仕切部材、32:弾性可動膜、34:剛性枠部、36:リリーフバルブ、40:リーク通路、52:曲げ溝、P:円弧部、Q:直線部

Claims (7)

  1. 内部に設けられた液室を主液室(22)と副液室(24)に区画する仕切部材(20)に、主液室(22)と副液室(24)を連通する減衰オリフィス(28)と弾性仕切部材(30)を設けた液封防振装置であって、
    弾性仕切部材(30)に、主液室(22)の内圧変動を吸収する弾性可動膜(32)と、外周部へ配置されたリリーフバルブ(36)とを一体に設け、このリリーフバルブ(36)で前記仕切部材(20)に前記主液室(22)と副液室(24)を連通して設けられているリーク通路(40)を開閉するものにおいて、
    前記弾性可動膜(32)は、曲線部(P)と直線部(Q)とによって形成される非円形で環状の剛性枠部(34)にて囲まれて非円形をなすとともに、
    前記直線部(Q)より外側部分に、前記リリーフバルブ(36)を前記弾性仕切部材(30)の外周に沿って長手形状に設けたことを特徴とする液封防振装置。
  2. 請求項1において、前記弾性仕切部材(30)は円形をなし、前記曲線部は前記弾性仕切部材(30)の外周円(R)の一部に相当する円弧部(P)をなし、前記直線部(Q)は、前記外周円(R)の弦をなすことを特徴とする液封防振装置。
  3. 請求項1又は2において、前記リリーフバルブ(36)のバルブ長が、リリーフバルブ(36)の長手方向中間部側ほど長くなるように変化することを特徴とする液封防振装置。
  4. 請求項3において、前記リリーフバルブ(36)は、前記主液室(22)へ向かって拡開するように前記弾性可動膜(32)の径方向外方へ延出し、このリリーフバルブ(36)の開き角度であるバルブ角が、長手方向中間部に向かって次第に小さくなるように変化することを特徴とする液封防振装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記リリーフバルブ(36)の基部には、曲げ溝(52)が設けられ、この曲げ溝(52)は前記主液室(22)へ向かって開放されるとともに、前記直線部(Q)と平行する直線状部分を有することを特徴とする液封防振装置。
  6. 請求項5において、前記曲げ溝(52)は長さ方向両端部(52a)が前記弾性可動膜(32)側へ曲がっていることを特徴とする液封防振装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記直線部(Q)は、前記弾性仕切部材(30)の中心(O)を挟んで対向位置に平行して一対で設けられ、
    前記弾性可動膜(32)は前記一対の直線部(Q)を有する二面幅形状をなすことを特徴とする液封防振装置。
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