JP2019074173A - 流体封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】防振特性の切替時に異音の発生を回避しながら、小振幅領域においても防振特性を精度良く切り替えることができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供すること。【解決手段】第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されており、内部に非圧縮性流体が封入された複数の流体室56,58が形成されていると共に、それら複数の流体室56,58を相互に連通する連通流路62が設けられている流体封入式防振装置10において、互いに重ね合わされた流路形成部材34,36間で狭窄された狭窄部54を含んで連通流路62が形成されている。【選択図】図2
Description
本発明は、振動伝達系を構成する部材を相互に防振連結する防振装置に係り、特に内部に非圧縮性流体が封入された流体室を備える流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材に装着されて、それら振動伝達系を構成する部材を防振連結する防振装置の一種として、内部に非圧縮性流体が封入された流体室を備える流体封入式防振装置が知られている。流体封入式防振装置は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、内部に非圧縮性流体が封入された複数の流体室を備えていると共に、それら流体室が連通流路によって相互に連通された構造を有している。
ところで、流体封入式防振装置には、入力振動の振幅に応じて連通流路の連通と遮断を切り替えることによって、防振特性を入力振動に応じて切り替える構造が採用される場合がある。具体的には、例えば、特開2006−64069号公報(特許文献1)のように、可動板構造を備える流体封入式防振装置が知られている。即ち、特許文献1では、連通流路の流路上に設けられた収容空所内に微小変位可能な状態で配設される可動板によって、小振幅振動の入力時には可動板の変位によって連通流路が連通状態とされる一方、大振幅振動の入力時には可動板が収容空所の壁面に押し付けられて連通流路が遮断されるようになっている。
しかし、特許文献1のような可動板構造は、可動板が収容空所内にフロート状態で配設されていることから、大振幅振動の入力によって可動板が収容空所の壁面に当接する際に、打音が発生する場合があった。
そこで、特開2005−155807号公報(特許文献2)のように、流体室を仕切る仕切部材によって外周部分を弾性的に支持された可動膜構造を備える流体封入式防振装置も提案されている。このような可動膜構造では、小振幅振動の入力時には可動膜の弾性変形によって連通流路が実質的な連通状態とされる一方、大振幅振動の入力時には可動膜の弾性変形量の限界を利用して連通流路が実質的な遮断状態とされることから、打音の発生が問題になり難い。
ところが、特許文献2のような可動膜構造では、連通流路の連通と遮断が可動膜の弾性変形を利用して切り替えられることから、連通流路を遮断状態とするためには、ある程度の大きさの弾性変形が必要であり、小振幅領域において連通流路の連通と遮断を精度よく切り替えることは難しかった。
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、防振特性の切替時に異音の発生を回避しながら、小振幅領域においても防振特性を精度良く切り替えることができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明者らは、検討と実験によって、連通流路の開口面積を十分に小さくすることで、小振幅振動の入力時に連通流路を通じた流体流動が生ぜしめられる一方、大振幅振動の入力時には、連通流路が実質的に目詰まりして、連通流路を通じた流体流動が制限されるとの知見を得た。しかしながら、流体室を仕切る仕切部材などに対して成形時や成形後に連通流路を形成しようとすると、金型や工具の最小寸法などが影響して連通流路を十分に小さな開口面積で形成することが難しかったことから、本発明を為すに至った。
すなわち、本発明の第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されており、内部に非圧縮性流体が封入された複数の流体室が形成されていると共に、それら複数の流体室を相互に連通する連通流路が設けられている流体封入式防振装置において、互いに重ね合わされた流路形成部材間で狭窄された狭窄部を含んで前記連通流路が形成されていることを、特徴とする。
このような第一の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、互いに重ね合わされた流路形成部材の相対位置を調節するなどして、それら流路形成部材間で狭窄された狭窄部の面積を調節することにより、連通流路の実質的な流路断面積を大きな自由度で設定することができる。特に、狭窄部の面積を従来の後加工などでは難しい程に小さく設定することも可能となる。それ故、流体室に対して常時開放された状態で設けられた連通流路によって、小振幅振動の入力時には、流体室間において連通流路を通じた流体流動が生ぜしめられることで、低動ばねによる振動絶縁作用などの目的とする防振効果が発揮される一方、大振幅振動の入力時には、連通流路を通じた流体流動が狭窄部において制限されることにより、小振幅振動の入力時とは異なる防振特性を得ることができる。
しかも、連通流路の連通状態と遮断状態が、入力振動の振幅に応じて切り替えられることから、可動板のような打音の発生や、可動膜のような切替えの時間的遅れなどが問題にならず、入力振動に応じた防振特性の速やかな切替えが、異音を生じることなく実現される。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された流体封入式防振装置において、互いに重ね合わされた前記流路形成部材が何れも円板形状とされており、それら流路形成部材の周方向での相対的な向きに応じて前記狭窄部の面積が調節されるものである。
第二の態様によれば、互いに重ね合わされた状態の流路形成部材の外形に影響を及ぼすことなく、流路形成部材の周方向での相対的な向きによって、狭窄部の面積を調節することができる。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記狭窄部が複数形成されているものである。
第三の態様によれば、狭窄部を複数形成することによって、各狭窄部の面積を小さくしながら、狭窄部の面積の総和を大きくすることが可能となって、それら複数の狭窄部を含む連通流路の実質的な流路断面積を大きく設定することができる。それ故、入力振動の振幅に応じた連通流路の連通と遮断の切替えを実現しながら、小振幅振動の入力時には、連通流路を通じた流体流動による防振効果を有利に得ることができる。
しかも、複数の狭窄部を設けて連通流路の実質的な流路断面積を大きくすることにより、連通流路を通じた流体流動による防振効果がより高周波の振動にも発揮されて、広い周波数域の振動に対して有効な防振性能を実現することができる。
本発明の第四の態様は、第三の態様に記載された流体封入式防振装置において、細長い断面形状を有する複数の前記狭窄部が前記流路形成部材においてそれぞれ内周側から外周側へ向けて長手となるように配置されていると共に、互いに重ね合わされた該流路形成部材が何れも円板形状とされており、それら流路形成部材の周方向での相対的な向きに応じて該狭窄部の面積が調節されるものである。
第四の態様によれば、複数の狭窄部が流路形成部材の内周側から外周側へ向けて長手となるように周方向に並んで配置されることで、流路形成部材の周方向での相対的な向きによって、複数の狭窄部の周方向幅寸法を同時に変更して、それら複数の狭窄部の面積を調節することができる。
しかも、狭窄部が細長い形状とされていることにより、狭窄部の周方向幅寸法を小さく設定しながら、狭窄部の長手方向の寸法は大きくすることができる。それ故、幅狭な狭窄部であっても開口面積を比較的に大きく得ることができて、連通流路を設けることによる防振性能を高周波の振動に対しても有効に発揮させながら、入力振動の振幅に応じた防振特性の切替えを有効に実現することができる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記狭窄部が細長い形状とされていると共に、該狭窄部の幅寸法が2mmより小さくされているものである。
第五の態様によれば、連通流路を構成する狭窄部の幅寸法が2mmより小さくされていることで、連通流路において小振幅振動入力時の連通状態と大振幅振動入力時の遮断状態とが有効に切り替えられる。しかも、狭窄部が互いに重ね合わされた流路形成部材間で狭窄されて形成されていることから、従来の工具による切削などでは形成し難かった幅寸法が2mmより小さい幅狭な狭窄部を、容易に形成することができる。
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、互いに重ね合わされた前記流路形成部材を相互に位置決めして前記狭窄部の面積を規定する位置決め部が設けられているものである。
第六の態様によれば、流路形成部材を位置決め部によって相互に位置決めすることで、それら流路形成部材で狭窄された狭窄部の面積を規定することができて、小さな開口面積の狭窄部を含む連通流路を安定して得ることができる。
本発明の第七の態様は、第一〜第六の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記流路形成部材が互いに重ね合わされる第一の流路形成部材と第二の流路形成部材を含んでおり、該第一の流路形成部材を貫通する連通孔が形成されていると共に、該連通孔の開口が該第二の流路形成部材によって部分的に覆われることで前記狭窄部が形成されているものである。
第七の態様によれば、第一の流路形成部材の形成時や後加工によって形成可能な連通孔の開口を、第二の流路形成部材によって部分的に覆って狭窄することにより、従来の型成形や後加工などでは形成し難いほどに小さな狭窄部であっても、簡単に得ることができる。
本発明によれば、互いに重ね合わされた流路形成部材の相対位置を調節するなどして、それら流路形成部材間で狭窄された狭窄部の面積を調節することにより、連通流路の実質的な流路断面積を大きな自由度で設定することができて、狭窄部の面積を極めて小さく設定することも可能となる。それ故、小振幅振動の入力時には、流体室間において連通流路を通じた流体流動が生ぜしめられることで、低動ばねによる振動絶縁作用などの目的とする防振効果が発揮される一方、大振幅振動の入力時には、連通流路を通じた流体流動が制限されることにより、小振幅振動の入力時とは異なる防振特性を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1,2には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、軸方向である図1中の上下方向を言う。
より詳細には、第一の取付部材12は、金属などで形成された高剛性の部材であって、中央部分を上下に延びて上面に開口するねじ穴18が形成されていると共に、外周面に突出するフランジ部20が設けられている。
第二の取付部材14は、薄肉大径の略円筒形状を有する高剛性の部材であって、上部が上方へ向けて拡径されていると共に、上端部が外周へ突出するフランジ状とされている。
そして、第一の取付部材12が第二の取付部材14の上方に配置されて、それら第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、全体として略円錐台形状を有しており、小径側の端部が第一の取付部材12に加硫接着されていると共に、大径側の端部の外周面が第二の取付部材14に加硫接着されて、第一の取付部材12と第二の取付部材14を備える一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体16には、大径側の端面に開口する凹所22が形成されており、第二の取付部材14の内周面を覆うシールゴム層24が、凹所22の開口周縁部から下方へ延び出して一体形成されている。
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品には、可撓性膜26が取り付けられている。可撓性膜26は、略円形ドーム状を有する薄肉のゴム膜であって、撓み変形や伸縮変形が許容されている。更に、可撓性膜26の外周面には環状の固定部材28が固着されており、固定部材28が第二の取付部材14の下端部分の内周へ差し入れられた状態で、第二の取付部材14が縮径加工されることにより、固定部材28が、第二の取付部材14の内周面に対して、シールゴム層24を介して流体密に嵌着される。なお、本実施形態では、第二の取付部材14の縮径加工に際して、第二の取付部材14の下端部が固定部材28よりも下側で内周側へ折り曲げられて、第二の取付部材14の端部が固定部材28に対して上下に重なり合っており、固定部材28の第二の取付部材14から下方への抜けが防止されている。
このように固定部材28が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に固定されることにより、第二の取付部材14の下側開口部が、可撓性膜26によって流体密に閉塞されている。そして、本体ゴム弾性体16と可撓性膜26の軸方向対向面間には、外部から隔てられた流体封入領域30が形成されており、非圧縮性流体が封入されている。流体封入領域30に封入される非圧縮性流体は、特に限定されないが、好適には、例えば、水やエチレングリコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液などの低粘性の液体が採用される。
また、流体封入領域30には、仕切部材32が配設されている。仕切部材32は、図3〜5にも示すように、全体として厚肉の略円板形状を有しており、図6に示すように、第一の流路形成部材としての仕切部材本体34と、第二の流路形成部材としての調節部材36とが、組み合わされた構造を有している。
仕切部材本体34は、図7,8にも示すように、全体として厚肉の略円板形状を有しており、図7,8に破線で示すように、下面に開口する円形の下側凹部38を備えている。また、仕切部材本体34の外周面には、周方向に延びる周溝40が形成されており、周溝40の一方の端部が仕切部材本体34の上面に開口していると共に、他方の端部が仕切部材本体34の下面に開口している。
さらに、仕切部材本体34には、複数の連通孔42が形成されている。この連通孔42は、図8に示すように、細長い断面で上下に直線的に貫通するスリット状とされており、仕切部材本体34において内周側から外周側へ向けて長手となる開口を有している。本実施形態では、連通孔42の開口の長手方向が仕切部材本体34の径方向とされていると共に、連通孔42の開口の周方向両縁部がそれぞれ仕切部材本体34の径方向に延びていることで、外周部分の幅寸法が内周部分の幅寸法よりも大きい略扇形の孔形状を有している。連通孔42は、仕切部材本体34の径方向中間部分において、仕切部材本体34の周方向で略等間隔に複数が配置されており、本実施形態では、10個の連通孔42が仕切部材本体34の周方向で相互に離れて設けられている。
更にまた、仕切部材本体34には、複数の連結突部44が一体形成されている。連結突部44は、小径の略円柱形状を有しており、連通孔42よりも外周側において仕切部材本体34の上面に突出している。本実施形態では、10個の連結突部44が周方向で略等間隔に配置されている。
一方、調節部材36は、図6,9に示すように、全体として薄肉の略円板形状とされており、外周端部を上下に貫通する切欠き状の接続溝46が形成されていると共に、外周端部を上下に貫通する切欠き状の位置決め溝48,48が、径方向で相互に対向する位置に形成されている。
さらに、調節部材36には、複数の調節窓50が形成されている。この調節窓50は、図9に示すように、細長い断面で上下に直線的に貫通するスリット状とされており、調節部材36において内周側から外周側へ向けて長手となる開口を有している。本実施形態では、調節窓50の開口の長手方向が調節部材36の径方向とされていると共に、調節窓50の開口の周方向両縁部がそれぞれ調節部材36の径方向に延びていることで、外周部分の幅寸法が内周部分の幅寸法よりも大きい略扇形の孔形状を有している。調節窓50は、調節部材36の径方向中間部分において、調節部材36の周方向で略等間隔に複数が配置されており、本実施形態では、10個の調節窓50が調節部材36の周方向で相互に離れて設けられている。また、本実施形態の調節窓50は、仕切部材本体34の連通孔42と略同じ孔形状とされていると共に、周方向で隣り合う調節窓50,50の周方向の距離が、連通孔42の周方向の幅寸法以上とされている。
更にまた、調節部材36には、上下に貫通する複数の連結穴52が形成されている。連結穴52は、周方向に延びる長孔とされており、調節窓50よりも外周側で且つ接続溝46および位置決め溝48,48よりも内周側に形成されている。本実施形態では、10個の連結穴52が周方向で略等間隔に配置されている。
かくの如き構造とされた仕切部材本体34と調節部材36は、仕切部材本体34の上面に調節部材36が重ね合わされた状態で相互に固定されている。即ち、調節部材36は、仕切部材本体34の上面に対して、仕切部材本体34の連結突部44が調節部材36の連結穴52に挿通された状態で重ね合わされる。そして、連結突部44が高周波溶着などの手段で溶着されることにより、仕切部材本体34と調節部材36が上下に重ね合わされた状態で相互に固定されて、仕切部材32が構成されている。
ここにおいて、図4,5に示すように、仕切部材本体34の連通孔42と調節部材36の調節窓50が、周方向で部分的に上下に重なり合っており、連通孔42の上側の開口が調節窓50を通じて部分的に上方へ開放されている。換言すれば、連通孔42の上側の開口は、調節部材36によって部分的に覆われており、調節部材36で覆われない調節窓50の形成部分において上方へ開放されている。そして、仕切部材本体34と調節部材36が重ね合わされることによってスリット状に狭窄された狭窄部54が、連通孔42と調節窓50の連通部分に形成されている。本実施形態では、各複数の連通孔42と調節窓50が互いに独立して設けられていることによって、複数の狭窄部54が仕切部材32の周方向に並んで互いに独立して形成されている。
本実施形態の狭窄部54は、図10に拡大して示すように、周方向幅寸法tが径方向長さ寸法lに対して十分に小さくされて、細長いスリット状とされている。狭窄部54の周方向幅寸法tは、限定されるものではないが、好適には2mmよりも小さくされて、より望ましくは1mm以下とされる。更に、狭窄部54の周方向幅寸法tは、0.01mm以上であることが望ましい。また、狭窄部54の周方向幅寸法tは、好適には、狭窄部54の径方向長さ寸法lの1/10以下とされる。
また、狭窄部54の周方向幅寸法tは、仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きによって規定されており、狭窄部54の面積がそれら仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きによって規定されている。本実施形態では、仕切部材本体34と調節部材36を図示しない治具にセットして組み合わせる際に、仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きが、位置決め溝48によって位置決めされることにより、狭窄部54の周方向幅寸法tが精度よく設定されるようになっている。このように、本実施形態では、流路形成部材である仕切部材本体34と調節部材36を相互に位置決めする位置決め部が、位置決め溝48,48によって構成されている。
なお、調節部材36の連結穴52は、仕切部材本体34の連結突部44に比して周方向寸法が大きくされていることから、連結突部44や連結穴52の周方向での形成位置に誤差などがあったとしても、仕切部材本体34と調節部材36を周方向で適切な向きに組み合わせることが可能とされている。
このようなスリット状の狭窄部54は、仕切部材32の内周側から外周側に向けて長手となるように形成されており、本実施形態では、仕切部材32の径方向中間部分において径方向で直線的に延びるように形成されて、複数が周方向に並んで放射状に配されている。
このように、仕切部材本体34と調節部材36を固定して形成された仕切部材32は、図1に示すように、流体封入領域30において略軸直角方向へ広がるように配設される。即ち、仕切部材32は、可撓性膜26が組み付けられる前の第二の取付部材14へ差し入れられて、上面の外周端部が本体ゴム弾性体16の下面に重ね合わされると共に、下面の外周端部が可撓性膜26に固着された固定部材28の上面に重ね合わされて、軸方向で位置決めされている。更に、仕切部材32の外周面は、第二の取付部材14の縮径加工によって、第二の取付部材14の内周面にシールゴム層24を介して押し付けられており、第二の取付部材14と仕切部材32の径方向間がシールゴム層24によって流体密に封止されている。
また、流体封入領域30が仕切部材32によって上下に二分されており、仕切部材32よりも上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される受圧室56が形成されていると共に、仕切部材32よりも下側には、壁部の一部が可撓性膜26で構成されて、振動入力時に容積変化によって内圧変動が抑えられる平衡室58が形成されている。本実施形態のエンジンマウント10では、非圧縮性流体を封入された複数の流体室が、受圧室56と平衡室58で構成されている。
さらに、仕切部材32における周溝40と接続溝46の外周側の開口が、シールゴム層24で覆われた第二の取付部材14によって覆われることにより、受圧室56と平衡室58を相互に連通するオリフィス通路60が形成されている。オリフィス通路60は、通路断面積と通路長さの比によって、流動流体の共振周波数(チューニング周波数)が設定されており、本実施形態ではエンジンシェイクに相当する10Hz前後の低周波にチューニングされている。
更にまた、受圧室56と平衡室58は、狭窄部54を含んで構成された連通流路62によっても相互に連通されている。連通流路62は、オリフィス通路60よりも通路長さが短くされていることによって、連通流路62を通じて流動する流体の共振周波数、換言すれば連通流路62のチューニング周波数は、オリフィス通路60よりも高周波に設定されており、本実施形態では、アイドリング振動に相当する15Hz〜40Hz程度の中乃至高周波にチューニングされている。なお、連通流路62は、狭窄部54において狭窄されているが、狭窄部54の径方向長さ寸法lが大きくされていると共に、複数の狭窄部54が設けられていることによって、複数の狭窄部54を含む連通流路62の通路断面積は十分に大きく確保されている。
このような構造とされたエンジンマウント10は、例えば、第一の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、車両に装着されて、パワーユニットと車両ボデーがエンジンマウント10を介して防振連結される。
そして、エンジンマウント10の車両への装着状態で、第一の取付部材12と第二の取付部材14の間にエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が軸方向に入力されると、受圧室56と平衡室58との間の相対的な圧力変動によって、オリフィス通路60を通じた流体流動が生ぜしめられて、流体の流動作用に基づいた防振効果が発揮される。
大振幅振動の入力時には、狭窄部54を有する連通流路62は、実質的に目詰まり状態となって、連通流路62を通じた受圧室56と平衡室58の間の流体流動が制限されることから、連通流路62を通じた液圧の逃げが防止される。その結果、受圧室56の内圧変動が大きくなって、オリフィス通路60を通じて流動する流体量が効率的に得られることから、オリフィス通路60による流体の流動作用に基づいた防振効果を有利に得ることができる。
特に本実施形態では、狭窄部54の周方向幅寸法tが2mmより小さくされていることから、大振幅振動の入力時に連通流路62を通じた流体流動が有効に制限されて、オリフィス通路60による防振効果が有効に発揮される。更に、狭窄部54の周方向幅寸法tが1mm以下とされることによって、エンジンシェイクに相当する大振幅振動の入力に対して、連通流路62を通じた流体流動をより効果的に制限することができる。
一方、第一の取付部材12と第二の取付部材14の間にアイドリング振動に相当する中乃至高周波の小振幅振動が入力されると、入力振動よりも低周波にチューニングされたオリフィス通路60は、反共振によって実質的に目詰まりする。ここにおいて、受圧室56と平衡室58の間では、連通流路62を通じた流体流動が生ぜしめられることから、受圧室56の密閉による高動ばね化が回避されて、低動ばねによる振動絶縁作用などの防振効果が発揮される。
本実施形態では、狭窄部54の周方向幅寸法tが0.01mm以上とされていることから、小振幅振動の入力時には、連通流路62を通じた流体流動が生ぜしめられて、目的とする防振効果が有効に発揮される。
このように、本実施形態のエンジンマウント10によれば、連通流路62の受圧室56側の開口が、一部を調節部材36で覆われることで、開口面積が十分に小さい狭窄部54とされている。これにより、受圧室56と平衡室58を常時連通する態様で設けられる連通流路62であっても、大振幅振動の入力時には実質的な遮断状態とされると共に、小振幅振動の入力時には連通状態とされる。従って、エンジンマウント10の防振特性が、入力振動の振幅に応じて切り替えられて、優れた防振性能を実現することができる。
しかも、エンジンマウント10は、連通流路62の連通状態と遮断状態を切り替えるために従来のような可動板や可動膜を利用しないことから、切替時の打音や時間的な遅れなども生じず、より優れた性能を実現することができる。
また、本実施形態では、仕切部材本体34と調節部材36が何れも軸方向視で略円形の外周形状を有していると共に、連通流路62を構成する狭窄部54の面積が、仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きによって調節されている。それ故、設定される狭窄部54の面積に関わらず、仕切部材32の外形が略一定に保たれて、仕切部材32の外径寸法の変化が防止されることから、エンジンマウント10の大径化などを防ぐことができる。
さらに、仕切部材本体34において複数の連通孔42が周方向に並んで配置されていると共に、調節部材36において複数の調節窓50が周方向に並んで配置されていることから、仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きを調節することで、複数の狭窄部54の周方向幅寸法tを同時に調節することができる。
更にまた、仕切部材本体34において、細長い孔形状の連通孔42が、仕切部材本体34の径方向で長手となるように略放射状に配置されていると共に、調節部材36において、細長い孔形状の調節窓50が、調節部材36の径方向で長手となるように略放射状に配置されている。それ故、仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きを調節することで、狭窄部54の径方向長さ寸法lを大きく確保しながら、狭窄部54の周方向幅寸法tを小さく設定することができる。このように、狭窄部54が細長い形状とされていることにより、狭窄部54の開口面積が確保されると共に、大振幅振動の入力時には、連通流路62が狭窄部54において幅方向で狭窄されていることによって、連通流路62を通じた流体流動を制限される。
加えて、連通孔42,42の周方向間の距離が、調節窓50の周方向幅寸法以上とされていると共に、調節窓50,50の周方向間の距離が、連通孔42の周方向幅寸法以上とされている。これにより、仮に狭窄部54の周方向幅寸法tを小さく設定しても、1つの連通孔42が2つの調節窓50,50に跨って配置されることがないと共に、1つの調節窓50が2つの連通孔42,42に跨って配置されることがない。
なお、本実施形態のエンジンマウント10では、仕切部材本体34の連通孔42と調節部材36の調節窓50が、それぞれ狭窄部54よりも大きな周方向幅寸法を有していると共に、調節部材36の連結穴52が仕切部材本体34の連結突部44よりも大きな周方向寸法を有しており、更に調節部材36の接続溝46が仕切部材本体34の周溝40の受圧室56側端部よりも大きな周方向寸法を有している。これらにより、仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きを適宜に変更することが可能とされており、狭窄部54の周方向幅寸法を調節して、連通流路62の連通状態と遮断状態が切り替えられる振幅の閾値や、連通流路62を通じた流体流動によって発揮される防振効果などを、要求される防振性能に応じて調節することができる。
具体的には、例えば、図11に示す仕切部材64のように、第一の実施形態の狭窄部54よりも大きな周方向幅寸法を設定された狭窄部66を、第一の実施形態と同一構造の仕切部材本体34および調節部材36によって形成することもできる。従って、要求特性の異なる車両に採用される複数種類の流体封入式防振装置を、共通の部品によって実現することなども可能になる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、連通孔42および調節窓50の孔形状は、特に限定されるものではない。更に、連通孔42および調節窓50は、狭窄部54の面積を効率的に得るために、長孔であることが望ましいが、円形や正方形などの孔形状を採用することもできる。
さらに、連通孔42と調節窓50は、何れも、2つ以上の複数であっても良いし、1つだけであっても良い。更に、調節窓50は必須ではなく、例えば、調節部材の外周端部によって連通孔42の開口が部分的に覆われるようにすれば、孔形状の調節窓は必要とされない場合もある。
更にまた、前記実施形態では、仕切部材32の内周側から外周側へ向けて直線的に延びるスリット状の狭窄部54を例示したが、狭窄部54は、平面視において湾曲した形状であっても良い。例えば、仕切部材32の径方向に対する周方向の傾斜角度が、仕切部材32の内周側から外周側へ向けて次第に大きくなるように、仕切部材32の内周側から外周側へ向けて湾曲しながら延びていても良いし、渦巻状に湾曲して周方向に延びていても良い。なお、狭窄部54を形成する連通孔42と調節窓50も、平面視において湾曲形状とされ得る。また、狭窄部は、略一定の幅寸法である必要はなく、部分的に異なる幅寸法であっても良い。
また、仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きは、例えば、狭窄部54の周方向幅寸法tに応じた隙間ゲージを、連通孔42の周方向一方の縁部と調節窓50の周方向他方の縁部との間に差し入れることによって設定することもできる。
また、狭窄部54の面積は、必ずしも仕切部材本体34と調節部材36の周方向での相対的な向きによって調節されるものではなく、例えば、仕切部材本体34と調節部材36の軸直角方向での相対的な位置によって調節されるようになっていても良い。
また、前記実施形態では、流路形成部材が、第一の流路形成部材としての仕切部材本体34と、第二の流路形成部材としての調節部材36とによって構成された構造を説明したが、流路形成部材は必ずしも2つの部品で構成されるものに限定されず、3つ以上の部品が重ね合わされて構成されていても良い。具体的には、例えば、仕切部材本体34の下側に調節部材36と略同じ構造の第二の調節部材を設けて、連通孔42の下側の開口が第二の調節部材によって部分的に覆われるようにもできる。これにより、1つの連通流路上に複数の狭窄部を直列的に形成することも可能である。
本発明において、オリフィス通路60は必須ではなく、省略することもできる。また、オリフィス通路60は、必ずしも仕切部材32の外周部分に設けられるものに限定されない。更に、チューニング周波数が相互に異なる2つ以上のオリフィス通路を備える構造にも、本発明は好適に適用され得る。
前記実施形態では、複数の流体室が受圧室56と平衡室58で構成された構造について説明したが、例えば、複数の流体室が何れも振動入力時に内圧変動が惹起される受圧室とされた構造も採用することができる。
また、前記実施形態では、所謂お椀型の流体封入式防振装置を例示したが、例えば、インナ軸部材とアウタ筒部材を本体ゴム弾性体によって軸直角方向で弾性連結すると共に、それらインナ軸部材とアウタ筒部材の軸直角方向間に複数の流体室を備えた筒形の流体封入式防振装置に本発明を適用することもできる。
10:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、12:第一の取付部材、14:第二の取付部材、16:本体ゴム弾性体、32,64:仕切部材、34:仕切部材本体(第一の流路形成部材)、36:調節部材(第二の流路形成部材)、42:連通孔、50:調節窓、54,66:狭窄部、56:受圧室(流体室)、58:平衡室(流体室)、62:連通流路
Claims (7)
- 第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されており、内部に非圧縮性流体が封入された複数の流体室が形成されていると共に、それら複数の流体室を相互に連通する連通流路が設けられている流体封入式防振装置において、
互いに重ね合わされた流路形成部材間で狭窄された狭窄部を含んで前記連通流路が形成されていることを特徴とする流体封入式防振装置。 - 互いに重ね合わされた前記流路形成部材が何れも円板形状とされており、それら流路形成部材の周方向での相対的な向きに応じて前記狭窄部の面積が調節される請求項1に記載の流体封入式防振装置。
- 前記狭窄部が複数形成されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
- 細長い断面形状を有する複数の前記狭窄部が前記流路形成部材においてそれぞれ内周側から外周側へ向けて長手となるように配置されていると共に、互いに重ね合わされた該流路形成部材が何れも円板形状とされており、それら流路形成部材の周方向での相対的な向きに応じて該狭窄部の面積が調節される請求項3に記載の流体封入式防振装置。
- 前記狭窄部が細長い形状とされていると共に、該狭窄部の幅寸法が2mmより小さくされている請求項1〜4の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
- 互いに重ね合わされた前記流路形成部材を相互に位置決めして前記狭窄部の面積を規定する位置決め部が設けられている請求項1〜5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
- 前記流路形成部材が互いに重ね合わされる第一の流路形成部材と第二の流路形成部材を含んでおり、該第一の流路形成部材を貫通する連通孔が形成されていると共に、該連通孔の開口が該第二の流路形成部材によって部分的に覆われることで前記狭窄部が形成されている請求項1〜6の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
Priority Applications (1)
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JP2017201858A JP2019074173A (ja) | 2017-10-18 | 2017-10-18 | 流体封入式防振装置 |
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JP (1) | JP2019074173A (ja) |
-
2017
- 2017-10-18 JP JP2017201858A patent/JP2019074173A/ja active Pending
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