JP2014190401A - 流体封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低周波大振幅振動に対する防振性能を十分に確保しつつ、中周波中振幅振動と高周波小振幅振動とに対してそれぞれ異なるデバイスによる防振性能を各別に効果的に得ることのできる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】流体封入式防振装置10において、薄肉部分62と厚肉部分64を有するゴム弾性膜56が仕切部材40に組み付けられており、薄肉部分62には可動ゴム膜が構成されていると共に、可動ゴム膜の弾性変形量を制限するストッパ部80,82が仕切部材40に設けられている一方、厚肉部分64には連通流路86が形成されており、連通流路86には弾性突片94が一体形成されて、弾性突片94が弾性変形して連通流路86を遮断する振幅依存型の弁手段が構成されており、更に、仕切部材40に対するゴム弾性膜56の周方向の位置決め手段が構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】流体封入式防振装置10において、薄肉部分62と厚肉部分64を有するゴム弾性膜56が仕切部材40に組み付けられており、薄肉部分62には可動ゴム膜が構成されていると共に、可動ゴム膜の弾性変形量を制限するストッパ部80,82が仕切部材40に設けられている一方、厚肉部分64には連通流路86が形成されており、連通流路86には弾性突片94が一体形成されて、弾性突片94が弾性変形して連通流路86を遮断する振幅依存型の弁手段が構成されており、更に、仕切部材40に対するゴム弾性膜56の周方向の位置決め手段が構成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、内部に封入された流体の共振作用等を利用して防振効果を得ることのできる流体封入式防振装置に係り、特に、異なる周波数域の振動に対してそれぞれ有効な防振効果を得ることの出来る流体封入式防振装置に関する。
従来から、自動車のパワーユニットと車両ボデーのような振動伝達系を構成する部材間に介装されてそれらの部材を相互に防振連結する防振装置の一種として、特開昭57−9340号公報(特許文献1)等に示されている如き流体封入式の防振装置が知られている。かかる流体封入式防振装置は、第一の取付金具と第二の取付金具を本体ゴム弾性体で連結すると共に、本体ゴム弾性体の変形で振動が入力される受圧室と可撓性膜で容積変化が許容された平衡室とをオリフィス通路で連通せしめた構造とされている。
ところで、このような流体封入式防振装置では、オリフィス通路を通じての流体流動作用に基づく防振効果の発揮される周波数域が予めチューニングされた特定周波数域に限られることから、広い周波数域の振動に対して有効な防振特性を得難い。このような問題に対して、従来では、特開昭61−59035号公報(特許文献2)に示されているように負圧を利用して流体室の壁ばね剛性を変更制御することで防振特性を切り替えたり、特開平8−21480号公報(特許文献3)に示されているようにアクチュエータ駆動の切換弁で異なる周波数域にチューニングされた複数のオリフィス通路を選択的に切換制御することで防振特性を切り替えることが、提案されている。
しかしながら、これら特許文献2や特許文献3に示された従来構造の流体封入式防振装置では、負圧源への接続制御又はオリフィス通路の切換制御のために切換弁とそれを作動させるアクチュエータや制御装置が必要となることから、装置の複雑化や大形化が避けられず、特性の切換制御も難しいという問題があった。
そこで、本出願人は、受圧室と平衡室との間において、オリフィス通路よりも高周波チューニングされた流体流路を設けると共に、振動入力時に惹起される封入流体の流体圧や流動圧などの流体作用を利用して流体流路を開閉する特定構造の弾性突片からなる弁手段を採用した新規な構造の流体封入式防振装置を提案した。具体的には、特開2011−256930号公報(特許文献4)や特開2010−196719号公報(特許文献5)に開示のものが、それである。このような弁手段を採用することにより、アクチュエータや制御装置を必要とすることなく、入力される振動の振幅に依存して弾性突片が弾性変形することにより、入力振動に応じて流体流路が開閉されて防振性能が切り換えられることとなる。
ところが、自動車用エンジンマウント等の防振装置では、装着された自動車等に応じて要求特性が異なっており、特定の高度な要求特性に対して、上述の特許文献4,5で開示した流体封入式防振装置では、未だ十分に対応し難い場合もあった。例えば、特許文献4に開示した流体封入式防振装置では、受圧室の液圧吸収機構を構成する可動ゴム膜に流体流路と弁手段を設けたことにより、少ない部品点数と簡単な構造をもって弁手段による防振特性の切換構造が実現可能となるが、弁手段の開閉作動について精度や安定性の更なる向上を要求される場合があった。また、特許文献5に開示した流体封入式防振装置では、流体流路上で可動ゴム膜と弁手段とを直列的に設けたことにより、可動ゴム膜への圧力作用の安定化に伴う防振性能の向上が図られるが、可動ゴム膜と弁手段との両方で制限されることとなる流体流路を通じての流体流動量について、その増大による防振性能の更なる向上を要求される場合があった。
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、オリフィス通路を通じての流体の共振作用に基づく低周波大振幅振動に対する防振性能を十分に確保しつつ、中周波中振幅振動と高周波小振幅振動とに対してそれぞれ異なるデバイスによる防振性能を各別に効果的に得ることのできる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
本発明の第一の態様の特徴とするところは、 第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体で連結されていると共に、該第二の取付部材で支持された仕切部材の各一方の側に該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と変形容易な可撓性膜で壁部の一部が構成された平衡室とが形成されてそれぞれ非圧縮性流体が封入されており、該仕切部材の外周部分を周方向に延びて形成されたオリフィス通路によって該受圧室と該平衡室が相互に連通された流体封入式防振装置において、薄肉部分と厚肉部分を有するゴム弾性膜が前記仕切部材において前記オリフィス通路よりも内周側に位置する中央部分に組み付けられており、該ゴム弾性膜の薄肉部分には、外周縁部が該仕切部材で挟圧保持されることにより各一方の面に及ぼされる該受圧室と該平衡室との圧力差に基づく弾性変形が許容される可動ゴム膜が構成されていると共に、該可動ゴム膜の板厚方向両側に対向配置されて該可動ゴム膜の弾性変形量を制限するストッパ部が該仕切部材に設けられている一方、該ゴム弾性膜の厚肉部分には、該受圧室と該平衡室を連通する連通流路が形成されて前記オリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされており、該ゴム弾性膜の厚肉部分が該連通流路の形成部分の周囲において該仕切部材で厚さ方向に挟圧保持されていると共に、該連通流路の開口縁部には開口方向に突出する弾性突片が一体形成されて、該連通流路を流動せしめられる流体作用で該弾性突片が弾性変形して該連通流路を遮断する振幅依存型の弁手段が構成されており、更に、該厚肉部分が該薄肉部分の周上で部分的に外周側に突出して形成されていることにより、該ゴム弾性膜を該仕切部材に組み付ける際における該仕切部材に対する該ゴム弾性膜の周方向の位置決め手段が構成されている流体封入式防振装置にある。
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置では、防振デバイスとして受圧室と平衡室との間に、オリフィス通路と連通流路と可動ゴム膜とを並列的に設けて、これら3つの防振デバイスに対して受圧室と平衡室の圧力が何れも直接的に作用せしめられるようにした。その上で、連通流路において、オリフィス通路よりも高周波数域にチューニングすると共に、弾性突片からなる振幅依存型の弁手段を設ける一方、可動ゴム膜において、弾性変形量を制限するストッパ部を設けた。
これにより、本態様の流体封入式防振装置では、複数種類の振動に対して、例えば以下の如き優れた防振性能をそれぞれ得ることができる。低周波大振幅振動に対しては、連通流路が弁手段で遮断されると共に、可動ゴム膜がストッパ部への当接で変形拘束されて、オリフィス通路を通じての流体流動量が大きく確保されることによって優れた防振性能が発揮される。また、中周波中振幅振動に対しては、連通流路と並列で設けられて連成されるオリフィス通路が実質的に遮断状態とされると共に、可動ゴム膜がストッパ部への当接で変形拘束されて、連通流路を通じての流体流動量が十分に確保されることによって優れた防振性能が発揮される。更にまた、高周波小振幅振動に対しては、オリフィス通路が実質的な遮断状態に維持されると共に、連通流路が反共振作用で実質的に遮断状態とされる一方、可動ゴム膜の弾性変形に基づく受圧室の液圧吸収作用が効果的に発揮されることにより優れた防振性能が発揮される。
特に本態様の流体封入式防振装置では、スペース的に限られた仕切部材において、その外周部分を利用して通路長を周方向に大きく確保することで防振デバイスの一つであるオリフィス通路を十分な通路長をもって形成すると共に、可動ゴム膜と弁手段付きの流体通路とを単一のゴム弾性膜で形成することにより、仕切部材の中央部分に優れたスペース効率をもって二つの防振デバイスを設け得たのである。
また、本態様の流体封入式防振装置では、オリフィス通路と連通流路と可動ゴム膜との3つの防振デバイスが並設されており、これら3つの防振デバイスに対して受圧室と平衡室の圧力が何れも直接的に作用せしめられて、各防振デバイスが受圧室と平衡室との間での相対的な圧力差を利用して相互に独立して機能し得る。それ故、複数の防振デバイスを直列的に配置した場合のように防振機能の相互間での制限作動が回避されて、各防振デバイスによる所期の防振効果がそれぞれ効果的に発揮されることとなる。
しかも、単一のゴム弾性膜に薄肉部分と厚肉部分を設けて、それら薄肉部分と厚肉部分とによって、各一つの防振デバイスを巧く構成し得た。即ち、薄肉部分を利用することにより、高周波小振幅の振動入力時に受圧室の圧力変動を速やかに解消させて低ばね特性を発揮する可動ゴム膜を巧く構成し得た。また、連通流路を厚肉部分に形成すると共に、かかる厚肉部分を仕切部材で挟圧保持させて変形拘束したことにより、可動ゴム膜の弾性変形が厚肉部分まで伝達されることで連通流路が変形して流路形状が変化してしまったり弾性突片が変形して弁作動が不安定になる等の不具合が効果的に防止されて、目的とする防振効果が一層安定して発揮され得る。
加えて、本態様の流体封入式防振装置では、単一のゴム弾性膜に可動ゴム膜と弁手段付きの連通流路とを設けたことにより、可動ゴム膜の外周縁部と連通流路の周囲とに対して仕切部材の挟圧保持力を一層安定して確実に及ぼすことができる。特に、ゴム弾性膜の外周形状が大型化することで、仕切部材に対するゴム弾性膜ひいては可動ゴム膜や弁手段付きの連通流路の組付時における位置決め精度が向上されると共に、ゴム弾性膜や弁手段付きの連通流路に対して大きな流体圧が作用した場合の仕切部材に対する位置ずれも相乗効果的に抑えられて、目的とする防振性能の信頼性と安定性の向上も図られ得る。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る流体封入式防振装置であって、前記ゴム弾性膜の前記薄肉部分が円板形状とされている一方、該薄肉部分の周上で部分的に前記厚肉部分が外周側に突出して一体形成されていると共に、該厚肉部分において前記連通流路が該薄肉部分の周方向に向かって直線状に延びるスリット状とされており、該スリット状の該連通流路の対向壁部の一方の側に前記弾性突片が形成されて対向壁部の他方の側に向かって倒れるように弾性変形するようになっているものである。
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置では、スリット状の連通流路を採用したことで、連通流路の有効断面積をスリット長さ方向で大きな自由度をもって調節することが出来ると共に、弁手段を構成する弾性突片をスリット長さ方向に延びる略平板形状とすることにより、流体作用による弾性変形に基づく弁機能を十分に確保しつつ弾性突片を大形化することができる。
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る流体封入式防振装置において、前記仕切部材には、前記ゴム弾性膜の前記連通流路の開口部に対応する位置に開口窓が形成されており、該開口窓に対して前記弾性突片が入り込んで配置されているものである。
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置では、仕切部材における開口窓の周囲でゴム弾性膜の厚肉部分に対する挟圧保持力を十分に確保しつつ、開口窓によって弾性突片の弁作動が安定して確保され得る。なお、弾性突片の変形量を開口窓の周縁部に対する当接によって制限して弾性突片の耐久性の向上を図ることも可能であるし、弾性突片の開口窓の周縁部に対する干渉を完全に回避することで弾性突片の磨耗や損傷を防止することも可能である。
本発明の第四の態様は、前記第一〜三の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記ゴム弾性膜における前記ストッパ部への当接面において、最大外幅寸法よりも突出長さ寸法が大きくされたヒゲ状弾性突起が複数本突出して一体形成されているものである。
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置では、特徴的な構造をもって形成されたヒゲ状弾性突起において、ストッパ部への当接初期のばね特性を十分に柔らかくしつつ、曲げや座屈の変形が容易に生ぜしめられることにより、当接後の圧縮変形による急激なばね特性の立ち上がりが回避され、ゴム弾性膜のストッパ部への当接に際しての衝撃や打音に対する優れた緩衝作用が発揮される。特に、かかるヒゲ状弾性突起は、当接初期のばね特性を十分に柔らかくできると共に、当接後の曲げや座屈の変形によって、弾性変形のストロークを低ばね特性のもとで大きく得ることも可能になる。これにより、ヒゲ状弾性突起の当接初期では、当接状態下でも、高周波小振幅振動入力時におけるゴム弾性膜の弾性変形に基づく液圧吸収作用が効果的に発揮される共に、中周波中振幅振動や低周波大振幅振動の入力時には、ヒゲ状弾性突起の優れた緩衝作用によりゴム弾性膜のストッパ部への当接に伴う打音や衝撃が効果的に軽減または回避され得る。
なお、ヒゲ状弾性突起は、初期形状が湾曲されていることにより、又は初期状態でストッパ部へ当接することで湾曲変形されていることにより、振動が入力されていない状態下でも湾曲して突出していることが望ましい。これにより、ヒゲ状弾性突起におけるストッパ部への当接初期段階での低ばね特性が一層効果的に且つ安定して実現され得る。
また、ヒゲ状弾性突起では、最大外幅寸法が基端部分に設定されて、先端部の外幅寸法が最小となる形状が好適に採用される。これにより、ストッパ部への当接初期の低ばね特性を一層安定して得ることができると共に、ヒゲ状弾性突起の成形も容易となる。
更にまた、ヒゲ状弾性突起においてストッパ部への当接緩衝作用や耐久性等を一層有利に得るためには、縦横比(突出長さ寸法/最大外幅寸法)を1.5以上に設定することが望ましく、より好適には2.0以上に設定される。また、好適にはヒゲ状弾性突起の最大外幅寸法が2.0mm以下とされ、より好適には1.5mm以下とされる。
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に係る流体封入式防振装置において、前記ゴム弾性膜の少なくとも一方の面において、前記ヒゲ状弾性突起の突出先端部が前記ストッパ部に対して予め当接されているものである。
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置では、ヒゲ状弾性突起による弾性変形に基づいてゴム弾性膜による液圧吸収機能を確保しつつ、ヒゲ状弾性突起による緩衝作用が一層効果的に発揮され得る。特にヒゲ状弾性突起がストッパ部に対して予め当接した状態でゴム弾性膜が配置されていることにより、ゴム弾性膜の変形量の増大に際してのばね特性の変化が一層効果的に軽減又は回避されて、ゴム弾性膜の弾性変形が一層安定して発現され得る。
本発明の第六の態様は、前記第一〜五の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記可動ゴム膜の少なくとも一方の側に、前記受圧室または前記平衡室に向かって延びる流体流路が形成されており、該流体流路が前記連通流路よりも更に高周波数域にチューニングされているものである。
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置では、連通流路のチューニング周波数より更に高周波域の振動に対して、可動ゴム膜の弾性変形に基づく受圧室の液圧吸収作用に加えて、可動ゴム膜の弾性変形時に流体流路を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果も発揮されることとなり、防振性能の更なる向上が図られ得る。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置では、オリフィス通路と弁手段付き連通流路と可動ゴム膜との3つの防振デバイスを並設して受圧室と平衡室の圧力を何れも直接的に作用せしめたことにより、複数の防振デバイスを直列的に配置した場合のように防振機能の相互間での制限作動が回避されて、各防振デバイスによる所期の防振効果がそれぞれ効果的に発揮され得る。
しかも、単一のゴム弾性膜に薄肉部分と厚肉部分を設けて薄肉部分の外周縁部と厚肉部分を仕切部材で挟圧保持せしめたことにより、それら薄肉部分と厚肉部分とによって弁手段付き連通流路と可動ゴム膜との二つの防振デバイスを巧く構成し、全体として仕切部材への組付作業性と組付位置精度の向上を図りつつ、弁手段付き連通流路と可動ゴム膜との間での弾性変形の伝達を効果的に防止して各デバイスによる防振効果を有効に安定して発揮せしめ得たのである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の一実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16で相互に弾性連結された構造とされている。そして、第一の取付部材12がパワーユニットに対してボルト固定されて取り付けられる一方、第二の取付部材14が車両ボデーに対してブラケットを介して取り付けられることにより、かかるエンジンマウント10によってパワーユニットが車両ボデーに防振連結されて支持されるようになっている。なお、以下の説明において上下方向とは、原則としてマウント中心軸方向で略主たる振動入力方向とされる、図1中の上下方向を言う。
本実施形態では、第一の取付部材12は、全体として小径の略円柱形状とされている。そして、かかる円柱の軸方向中間部分には、外周側に延び出す円環板形状のフランジ部18が一体形成されている。また、第一の取付部材12の上端面には、中心軸上を上下に延びて、上面に開口するボルト穴20が形成されている。
一方、本実施形態の第二の取付部材14は、全体として薄肉大径の略円筒形状とされている。そして、かかる円筒の軸方向中間部分には段差部22が設けられており、この段差部22に対して上側が大径筒部24とされている一方、下側が小径筒部26とされている。
これらの第一の取付部材12と第二の取付部材14が同心円状に、且つ第一の取付部材12が第二の取付部材14に対して上方に離隔配置された状態で、これらの両取付部材12,14が本体ゴム弾性体16により弾性連結されている。詳細には、本実施形態の本体ゴム弾性体16は厚肉大径の略円錐台形状とされている。そして、本体ゴム弾性体16の中央部分には、その小径側端面から軸方向に差し入れられた第一の取付部材12が加硫接着されている。一方、本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周面には、第二の取付部材14の大径筒部24が加硫接着されている。なお、本実施形態の本体ゴム弾性体16は、第一の取付部材12と第二の取付部材14とを備える一体加硫成形品とされている。
さらに、本体ゴム弾性体16の大径側端面の中央部分には、逆向きの略すり鉢形状の大径凹所28が形成されている。また、本体ゴム弾性体16の下端外周縁部からは下方に延び出すシールゴム層30が一体形成されており、このシールゴム層30が、第二の取付部材14における小径筒部26の内周面の略全体を覆うように固着されている。なお、本体ゴム弾性体16とシールゴム層30の境界には段差面32が形成されており、この段差面32の上側である大径凹所28の内面寸法に対して、段差面32の下側であるシールゴム層30の内面寸法が大径とされている。
また、第二の取付部材14の下側開口部には可撓性膜34が取り付けられており、この可撓性膜34により第二の取付部材14の下側開口部が覆蓋されている。本実施形態の可撓性膜34は、全体として薄肉円形のゴム膜とされており、弾性変形が容易に許容されるように弛みを有している。
可撓性膜34の外周端部には、円筒形状の固定金具36が固着されており、この固定金具36が小径筒部26の下側開口部に内挿固定されている。そして、固定金具36が、シールゴム層30を介して第二の取付部材14に対して流体密に嵌着固定されることにより、第二の取付部材14の下側開口部が可撓性膜34で覆蓋されている。
これにより、本体ゴム弾性体16と可撓性膜34の対向面間には、密閉された流体室38が形成されており、この流体室38に非圧縮性流体が封入されている。封入される非圧縮性流体としては、何等限定されるものではないが、例えば水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等の何れもが好適に採用され得る。なお、後述する流体の流動作用に基づいた防振効果を有効に得るために、かかる非圧縮性流体は0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
また、かかる流体室38内には、仕切部材40が第二の取付部材14に支持されて収容配置されている。この仕切部材40は軸直角方向に広がっており、かかる仕切部材40により流体室38が上下に二分されている。即ち、仕切部材40を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される受圧室42が形成されている。一方、仕切部材40を挟んだ下側には、壁部の一部が可撓性膜34で構成されて、可撓性膜34の変形によって容積変化が容易に許容される平衡室44が形成されている。
なお、両室42,44への非圧縮性流体の充填は、例えば非圧縮性流体中で第二の取付部材14に対して仕切部材40と固定金具36を嵌め入れた後に、第二の取付部材14に縮径加工を施すことにより、受圧室42および平衡室44の形成と同時に行われ得る。特に、本実施形態では、第二の取付部材14の下端周縁部に内向きの環状係止部が一体形成されており、互いに軸方向で重ね合わされた仕切部材40と固定金具36が、本体ゴム弾性体16の段差面32と環状係止部との間で軸方向で位置決めされている。
仕切部材40は、全体として厚肉の略円板形状とされており、図2,3にも示されているように、仕切部材本体46と底板部材48を含んで構成されている。仕切部材本体46は厚肉の略円板形状とされており、仕切部材本体46の下面に対して、薄肉の略円板形状とされた底板部材48が重ね合わされて固着されている。
かかる仕切部材本体46には、外周面を周方向で1周に満たない長さで延びる周溝50が形成されている。この周溝50の一方の端部は、仕切部材本体46の外周面を上方に向かって延びる上側連通路51を通じて、仕切部材本体46の上面に開口されている。また、周溝40の他方の端部は、仕切部材本体46と底板部材48に跨がって両外周面を下方に向かって延びる下側連通路52を通じて、仕切部材40の下面に開口されている。
そして、仕切部材40が第二の取付部材14に組み付けられて、周溝50や上下の連通路51,52がシールゴム層30で覆蓋されることにより、受圧室42と平衡室44を連通するオリフィス通路54が仕切部材40の外周部分を周方向に延びて形成されている。
また、仕切部材40において、外周のオリフィス通路54を内周側に外れた中央部分にはゴム弾性膜56が組み付けられている。本実施形態では、仕切部材本体46の下面中央に設けられた収容凹部58が底板部材48で覆蓋されることにより、仕切部材40内に収容空所60が形成されており、この収容空所60にゴム弾性膜56が収容配置されている。
ゴム弾性膜56は、図4〜6にも示されているように、全体として略板形状とされており、板厚寸法の異なる薄肉部分62と厚肉部分64とをもって一体形成されている。特に本実施形態では、薄肉部分62が円板形状とされており、その外周側に所定幅で広がって周方向に略円弧板形状で半周弱の長さで延びるようにして厚肉部分64が形成されている。
薄肉部分62は、略一定厚さで広がる円板形状とされていると共に、外周縁部には全周に亘って延びる厚肉環状のリム部65が設けられている。厚肉部分64は、薄肉部分62のリム部65と略同じ厚さ寸法で形成されており、リム部65から外周側に一体的に広がっている。
また、収容凹部58は、ゴム弾性膜56の外周形状と対応する内周形状をもって形成されており、ゴム弾性膜56が嵌め入れられて外周面を位置決めされた状態で組み付けられている。更にまた、収容凹部58の深さ寸法は、ゴム弾性膜56における薄肉部分62のリム部65や厚肉部分64の厚さ寸法と略同じか僅かに小さくされている。そして、収容凹部58の上底面と底板部材48との間で、薄肉部分62のリム部65と厚肉部分64が厚さ方向に挟圧保持されている。
なお、薄肉部分62のリム部65と厚肉部分64には、リム部65やゴム弾性膜56の外周部分を周方向に延びるシールリップ66が表裏両面に突設されており、収容凹部58の上底面と底板部材48とに対して密着されるようになっている。また、厚肉部分64の表裏両面には、複数の弾性突起67が全体に分散して突設されており、これらの弾性突起67の圧縮変形作用により、厚肉部分64が収容凹部58の上底面と底板部材48との間で一層安定して締付保持されるようになっている。
また、薄肉部分62の収容領域を形成する仕切部材本体46の収容凹部58と底板部材48には、リム部65の内周側に沿って周方向に延びる円環形状をもって、相互に対向方向に向かって突出する環状の位置決め突部68a,68bが形成されている。そして、これら位置決め突部68a,68bが、リム部65の内周側に嵌まり込むと共に、厚肉部分64が薄肉部分62から突出する形状をもって、仕切部材40に対してゴム弾性膜56が周方向で位置決めされており、薄肉部分62が展張状態に保持されるようになっている。更に、本実施形態ではゴム弾性膜56の薄肉部分62により可動ゴム膜が構成されている。
また、本実施形態の仕切部材本体46には、周溝50が形成された外周部分を内周側に外れた中央部分において、上方に開口する中央凹部69が形成されている。なお、中央凹部69は、仕切部材40におけるゴム弾性膜56の配設領域の略全体に亘る大きさをもって形成されている。
そして、中央凹部69の底壁部には、ゴム弾性膜56の薄肉部分62と対応する位置に中央貫通孔70が貫通形成されており、ゴム弾性膜56の上側において、中央貫通孔70により受圧室42と収容空所60が連通されている。また、底板部材48には、ゴム弾性膜56の薄肉部分62と対応する位置に底板貫通孔72が貫通形成されており、ゴム弾性膜56の下側において、底板貫通孔72により平衡室44と収容空所60が連通されている。
そして、ゴム弾性膜56における薄肉部分62の上面には、中央貫通孔70を通じて受圧室42の液圧が及ぼされている一方、薄肉部分62の下面には、底板貫通孔72を通じて平衡室44の液圧が及ぼされている。これら受圧室42と平衡室44の相対的な圧力差に基づいて、ゴム弾性膜56の薄肉部分62が弾性変形可能とされており、ゴム弾性膜56の厚さ方向への弾性変形に伴って、中央貫通孔70と底板貫通孔72を通じての流体流動が生ぜしめられるようになっている。
なお、中央貫通孔70と底板貫通孔72は、何れも、複数に分割された分割孔構造とされている。本実施形態では、中央貫通孔70と底板貫通孔72が、何れも、周方向に1/4周弱の大きさで広がる略扇形状をもって4つに分割されており、周方向で隣り合う分割孔の間を通って径方向に延びる仕切枠部80,82が設けられている。かかる仕切枠部80,82は、ゴム弾性膜56の薄肉部分62に対して上下方向に所定距離を隔てて対向位置しており、薄肉部分62が弾性変形した際に当接されて弾性変形量を制限する上下のストッパ部が構成されている。
また、本実施形態では、中央凹部69の底壁中央部分における中央貫通孔70の形成領域の外周部分が、中央凹部69の底面から受圧室42内へ所定高さで突出する筒状部83とされている。そして、本実施形態では、薄肉部分62の上方において、中央貫通孔70を含んで受圧室42に延びる流体流路85が形成されており、筒状部83の突出高さを調節することで流体流路85の長さが調節可能とされている。
さらに、本実施形態のゴム弾性膜56には、薄肉部分62におけるストッパ部(仕切枠部)80,82との対向領域に多数のヒゲ状弾性突起84が一体的に突出形成されている。これら複数のヒゲ状弾性突起84は、ゴム弾性膜56の上下両面で、上側ストッパ部80と下側ストッパ部82に向かって突出している。
かかるヒゲ状弾性突起84は、最大外幅寸法に比べて突出長さ寸法が大きな長細形状で十分に柔らかくされている。なお、このヒゲ状弾性突起84の最大外幅寸法は、ヒゲ状弾性突起84の基端部に設定されることが好ましく、それに加えて、ヒゲ状弾性突起84の先端部における外幅寸法が最小とされることが好ましい。また、かかるヒゲ状弾性突起84の縦横比(突出長さ寸法/最大外幅寸法)は1.5以上とされることが好ましく、より好適には2.0以上に設定される。更に、ヒゲ状弾性突起84の最大外幅寸法は2.0mm以下とされることが好ましく、より好適には1.5mm以下とされる。
また、本実施形態では、ヒゲ状弾性突起84の自由状態での突出長さ寸法が、可動ゴム膜(薄肉部)62と上下ストッパ部80,82の離隔距離に比べて僅かに大きくされている。これにより、ヒゲ状弾性突起84の突出先端部が上下ストッパ部80,82に対して、予め当接した状態で、仕切部材40にゴム弾性膜56が組み付けられている。
このようなヒゲ状弾性突起84をゴム弾性膜56の、特に可動ゴム膜62上に採用することにより、可動ゴム膜62が弾性変形して上下ストッパ部80,82に打ち当たる際に、ヒゲ状弾性突起84が緩衝作用を発揮して打音の発生が抑えられる。特に、ヒゲ状弾性突起84が上下ストッパ部80,82に対して予め当接した状態で配置されていることにより、ヒゲ状弾性突起84におけるばね特性の急激な変化も抑えられて、ヒゲ状弾性突起84の緩衝作用が一層効果的に発揮され得る。
一方、ゴム弾性膜56の厚肉部分64には、厚さ方向に貫通する連通流路86が形成されていると共に、厚肉部分64を挟圧保持する仕切部材本体46と底板部材48には、連通流路86に対応する部分に開口窓としての上側窓部90と下側窓部92が形成されている。即ち、厚肉部分64は、連通流路86の周囲が仕切部材本体46と底板部材48との間で挟圧保持されており、連通流路86が上下の窓部90,92を通じて受圧室42と平衡室44に接続されて、それら受圧室42と平衡室44との間での流体流動が連通流路86を通じて許容されるようになっている。
また、連通流路86は、所定幅で略直線的に延びるスリット状の開口をもって形成されている。本実施形態では、薄肉部分62の外周側で周方向に離隔位置した二カ所において、それぞれ薄肉部分62の略接線方向に延びる二つの連通流路86,86が設けられている。
更にまた、各連通流路86の開口縁部には、開口方向に突出する弾性突片94が、厚肉部分64に対して一体形成されている。これにより、連通流路86を非圧縮性流体が流動する際に、かかる流体作用で弾性突片94が弾性変形させられて、連通流路86を閉塞する振幅依存型の弁手段が構成されている。
特に本実施形態では、連通流路86の上下の各開口周縁部において、スリット幅方向で対向位置する対向壁部の一方から開口方向の外方に向かって突出する弾性突片が形成されている。即ち、図3,6に示されているように、連通流路86の下側開口縁部には、図中の左側の壁部から上方に突出する弾性突片94と、連通流路86の上側開口縁部には、他方の対向壁部側に形成されて下方に突出する弾性突片94が形成されている。これらの上下の弾性突片94,94は、連通流路86の開口縁部に沿って直線状に形成されており、先端部分が突出方向に位置する上下窓部90,92に入り込む突出長さ寸法で形成されている。
なお、各弾性突片94において、連通流路86とは反対側に位置する弾性突片94の背後には、弾性突片94の全長に亘って延びる溝状凹部95が形成されている。この溝状凹部95によって弾性突片94の高さ寸法が実質的に大きくされて、弾性突片94の変形自由度が大きくされて弾性特性も調節されている。また、各弾性突片94の先端部分は、窓部90,92を貫通して受圧室42または平衡室44内に突出されていても良い。
ここにおいて、これら上下の弾性突片94は、非圧縮性流体の流体流動に伴い弾性変形されるようになっている。即ち、振動入力時に受圧室42と平衡室44との圧力差で連通流路86を通じて流動せしめられる流体の圧力が弾性突片94に及ぼされることにより、かかる弾性突片94が連通流路86の開口部側に向かって倒れるように弾性変形して対岸側の縁部に当接することで、連通流路86が閉塞され得るようになっている。また、かかる連通流路86の上下各開口縁部には、弾性突片94が倒れて当接する部分に緩衝突条96が一体形成されており、弾性突片94の当接に伴う打音や衝撃が軽減されるようになっている。
上述の如き構造とされた仕切部材40を備えるエンジンマウント10では、受圧室42と平衡室44を連通する3つの流路として、オリフィス通路54、流体流路85、連通流路86が、受圧室42と平衡室44の間に並列的に形成されている。それぞれの流路54,85,86において防振対象となる周波数は、各流路を流動せしめられる流体の共振周波数として把握される。かかる周波数は、各流路54,85,86の通路断面積(A)と通路長(L)との比によって設定され得て、オリフィス通路54に比べて連通流路86が高周波数域にチューニングされていると共に、連通流路86に比べて流体流路85がより高周波数域にチューニングされている。更に、本実施形態では、オリフィス通路54の周波数がシェイク振動に対応した10〜15Hz程度にチューニングされている一方、連通流路86がアイドリング一次振動に対応した20〜50Hz程度にチューニングされていると共に、流体流路85が走行こもり音振動に対応した100Hz程度にチューニングされている。
かかる構造とされたエンジンマウント10に対して、シェイク振動のような低周波大振幅振動が入力されると、連通流路86が弾性突片94で遮断されると共に、流体流路85では、可動ゴム膜62が上下ストッパ部80,82への当接で拘束されて実質的に遮断状態とされる。その結果、連通流路86や流体流路85を通じての受圧室42の圧力の逃げが防止されて、受圧室42と平衡室44の間に大きな圧力差が生ぜしめられることとなり、オリフィス通路54を通じての流体流動量の増大が図られる。それ故、オリフィス通路54を流動せしめられる流体の共振作用に基づく高減衰作用で、低周波大振幅振動に対する優れた防振効果が発揮されるのである。
また、エンジンマウント10に対して、アイドリング振動のような中周波中振幅振動が入力されると、オリフィス通路54と連通流路86が並設されていると共に、オリフィス通路54が入力振動よりも低周波数域にチューニングされていることから、連通流路86において優先的に流体流動が惹起されて、オリフィス通路54は実質的に遮断状態とされる。一方、流体流路85では、可動ゴム膜62が上下ストッパ部80,82への当接で拘束されて実質的に遮断状態とされる。その結果、オリフィス通路54や流体流路85を通じての受圧室42の圧力の逃げが防止されて、受圧室42と平衡室44の間に大きな圧力差が生ぜしめられることとなり、連通流路86を通じての流体流動量の増大が図られる。それ故、連通流路86を流動せしめられる流体の共振作用に基づく低動ばね作用で、中周波中振幅振動に対する優れた防振効果が発揮されるのである。
また一方、エンジンマウント10に対して、走行こもり音振動のような高周波小振幅振動が入力されると、かかる入力振動がオリフィス通路54のチューニング周波数域から高周波側へ大きく外れていることからオリフィス通路54を通じての流体流動が殆ど惹起されず、オリフィス通路54は実質的に遮断状態とされる。一方、連通流路86は流体の反共振作用により実質的に遮断状態とされる。かかる状態下、受圧室42に惹起される圧力変動は、流体流路85を通じての流体流動を伴って、可動ゴム膜(薄肉部)62の弾性変形に基づく液圧吸収作用で吸収軽減されることとなり、低動ばね化が図られて高周波小振幅振動に対する優れた防振効果が発揮されるのである。
特に、上述の如きエンジンマウント10では、仕切部材40の外周側にオリフィス通路54を設けて大きな流路長を確保する一方、流体流路85と連通流路86を仕切部材40の内周側に設けると共に、流体流路85を構成する可動ゴム膜62と連通流路86を構成する弾性突片94とを単一のゴム弾性膜56で形成したことにより、3つの防振機構を仕切部材40内に優れたスペース効率と簡単な構造をもって巧く配置することが可能とされる。
また、単一のゴム弾性膜56に薄肉部分62と厚肉部分64を形成して、薄肉部分62の外周縁部であるリム部65と厚肉部分64を厚さ方向で強固に挟圧保持せしめたことにより、可動ゴム膜62と弾性突片94を、相互の影響を回避して効率的に配設可能と為し得た。しかも、薄肉部分62の外周上で部分的に突出する厚肉部分64を設けたことにより、ゴム弾性膜56の仕切部材40への組付け等に際して、厚肉部分64を周方向における位置決め手段として利用して、誤組付けの防止や組付後の位置決め信頼性の向上などが効果的に実現され得る。
さらに、本実施形態では、円形状の薄肉部分62の外周側を略周方向で略接線方向に直線的に延びるスリット状の連通流路86を採用したことにより、スリット幅方向の一方の開口縁部において弾性突片94を直線的に配置して形成することが出来る。これにより、連通流路86を流動せしめられる流体圧を弾性突片94に効率的に及ぼすことが可能になり、目的とする振幅依存型の弁手段が、一層優れた応答速度や開閉作動精度等をもって容易に実現可能となる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明は上述の解決手段や実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜に修正,改良などを加えた態様で実施され得る。
例えば、可動ゴム膜62の上下面に形成されているヒゲ状弾性突起84は必須ではなく、上下面の一方に形成されている態様や両面共に形成されていない態様が採用されても良いし、薄肉部分62の全面に亘って形成されていても良い。または、ヒゲ状弾性突起84に代えて、或いは加えて、緩衝突起等が採用されても良い。
また、厚肉部分64やそこに形成される連通流路86は、その具体的形状や大きさ、数などを、要求される防振特性やマウントサイズ等を考慮して適宜に変更設定することができる。
更にまた、前記実施形態では、弾性突片として上方に延びる突片94と下方に延びる突片94が採用されていたが、何れか片方のみとされても良い。
また、各流路54,85,86の流路形態や断面積,流路長等は目的とする防振特性等に応じて適宜変更可能である。例えば、流体流路85は、筒状部83の突出高さ寸法を変更することにより流路長を変更可能であるし、連通流路86は、厚肉部分64の厚さ寸法や弾性突片94の突出寸法を変更することにより流路長を変更可能である。更に、仕切部材40において中央凹部69や筒状部83を設けることなく、流体流路85や連通流路86を仕切部材40の上面に直接に開口形成しても良い。また、弾性突片94は、開口窓90,92に至らない突出寸法で形成されても良い。
さらに、中周波中振幅振動の入力状態下において、可動ゴム膜62が上下のストッパ部80,82に当接しなくても良い。その場合は、中周波数域の比較的広い範囲に亘ってブロードな防振特性を得ることが可能になる。
また、本発明に係る流体封入式防振装置は、エンジンマウントとしてのみ用いられるものではなく、例えば、ボデーマウントやサブフレームマウント、デフマウント等にも適用可能である。
10:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、12:第一の取付部材、14:第二の取付部材、16:本体ゴム弾性体、34:可撓性膜、40:仕切部材、42:受圧室、44:平衡室、46:仕切部材本体、48:底板部材、54:オリフィス通路、56:ゴム弾性膜、62:薄肉部分(可動ゴム膜)、64:厚肉部分、65:リム部(薄肉部分の外周縁部)、80:上側仕切枠部(ストッパ部)、82:下側仕切枠部(ストッパ部)、84:ヒゲ状弾性突起、85:流体流路、86:連通流路、90:上側窓部(開口窓)、92:下側窓部(開口窓)、94:弾性突片
Claims (6)
- 第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体で連結されていると共に、該第二の取付部材で支持された仕切部材の各一方の側に該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と変形容易な可撓性膜で壁部の一部が構成された平衡室とが形成されてそれぞれ非圧縮性流体が封入されており、該仕切部材の外周部分を周方向に延びて形成されたオリフィス通路によって該受圧室と該平衡室が相互に連通された流体封入式防振装置において、
薄肉部分と厚肉部分を有するゴム弾性膜が前記仕切部材において前記オリフィス通路よりも内周側に位置する中央部分に組み付けられており、
該ゴム弾性膜の薄肉部分には、外周縁部が該仕切部材で挟圧保持されることにより各一方の面に及ぼされる該受圧室と該平衡室との圧力差に基づく弾性変形が許容される可動ゴム膜が構成されていると共に、該可動ゴム膜の板厚方向両側に対向配置されて該可動ゴム膜の弾性変形量を制限するストッパ部が該仕切部材に設けられている一方、
該ゴム弾性膜の厚肉部分には、該受圧室と該平衡室を連通する連通流路が形成されて前記オリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされており、該ゴム弾性膜の厚肉部分が該連通流路の形成部分の周囲において該仕切部材で厚さ方向に挟圧保持されていると共に、該連通流路の開口縁部には開口方向に突出する弾性突片が一体形成されて、該連通流路を流動せしめられる流体作用で該弾性突片が弾性変形して該連通流路を遮断する振幅依存型の弁手段が構成されており、
更に、該厚肉部分が該薄肉部分の周上で部分的に外周側に突出して形成されていることにより、該ゴム弾性膜を該仕切部材に組み付ける際における該仕切部材に対する該ゴム弾性膜の周方向の位置決め手段が構成されていることを特徴とする流体封入式防振装置。 - 前記ゴム弾性膜の前記薄肉部分が円板形状とされている一方、該薄肉部分の周上で部分的に前記厚肉部分が外周側に突出して一体形成されていると共に、該厚肉部分において前記連通流路が該薄肉部分の周方向に向かって直線状に延びるスリット状とされており、該スリット状の該連通流路の対向壁部の一方の側に前記弾性突片が形成されて対向壁部の他方の側に向かって倒れるように弾性変形するようになっている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
- 前記仕切部材には、前記ゴム弾性膜の前記連通流路の開口部に対応する位置に開口窓が形成されており、該開口窓に対して前記弾性突片が入り込んで配置されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
- 前記ゴム弾性膜における前記ストッパ部への当接面において、最大外幅寸法よりも突出長さ寸法が大きくされたヒゲ状弾性突起が複数本突出して一体形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
- 前記ゴム弾性膜の少なくとも一方の面において、前記ヒゲ状弾性突起の突出先端部が前記ストッパ部に対して予め当接されている請求項4に記載の流体封入式防振装置。
- 前記可動ゴム膜の少なくとも一方の側に、前記受圧室または前記平衡室に向かって延びる流体流路が形成されており、該流体流路が前記連通流路よりも更に高周波数域にチューニングされている請求項1〜5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
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