JP5985169B2 - 防水シート - Google Patents

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Description

本発明は、地山などからの湧水を防水し、構造物を保護するための防水シートに関する。
従来、地山にトンネルを建設する場合、トンネルの一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートの間に防水シートを配し、一次覆工コンクリート側からの湧水(地中からトンネル内への湧水)が二次覆工コンクリート側へ漏水することを防止することが行われている。また、地山斜面に舗装道路を建設する場合、地山斜面と盛土との間に防水シートを配し、地山側からの湧水が盛土側へ漏水することを防止する手段が行われている。
例えば、特許文献1(特開昭63−315800号)には、シート状網状体を緩衝性シートの一面の少なくとも一部に積層すると共に、該緩衝性シートの他方の面に不透水性シートを積層してなる防水シートが開示されている。この防水シートは、土砂の多い排水をも目詰りすることなく確実に排出することができ、長期間に亘る流水性能が良好に保障されると共に、緩衝性シートの緩衝効果によりトンネル工事に際して突起物に対して不透水性シートを確実に保護し、永続的な使用を可能とする。
特許文献2(特開2000−080895号)には、酢酸ビニル含有量が30〜90重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる遮水シートが開示されている。この遮水シートは、水硬性材料などの防水材との接着性に優れていて高い遮水効果を示し、適度な柔軟性を有し、遮水工事の際の取り扱い性、作業性に優れている。
特許文献3(特開2001−115791号)には、酢酸ビニル含量(以下VA含量ともいう)が異なる2種以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、この共重合体をEVAともいう)の混合物を主成分とするトンネル用防水シートが開示されている。この防水シートは、例えばVA含量が10質量%以下の低VA含量のEVAと、従来使用中のEVAよりやや高いVA含量のEVAとをブレンドすることによって、従来使用中のEVAよりも低い平均VA含量で低温柔軟性に優れる。
特許文献4(特開平06−032950号公報)には、エチレン−酢酸ビニル共重合体又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体70重量%以上と低密度ポリエチレン30重量%以下のブレンド成分からなる重合体成分、水酸化アルミニウム、及びアルカリ土類金属酸化物からなる止水シートが開示されている。この止水シートは、優れた難着火性と高い引張強度を有し、柔軟で施工性も良好である。
特開昭63−315800号公報 特開2000−080895号公報 特開2001−115791号公報 特開平06−032950号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜3で得られたシートは、不織布と遮水シートとの接着力が乏しく、不織布と遮水シートとの間で剥離が生じないようにするため、ほぼ全面にわたり接着する必要があった。そして、不織布と遮水シートとをほぼ全面にわたり接着した防水シートは、不織布部が湧水などの導水路として機能するが、降雨などにより大量の湧水の生じた場合に、十分に排水性能を確保することができないものであった。
このような問題点を鑑みて、本発明は、不織布と遮水シートとの接着力を向上させることにより、不織布と遮水シートとが剥離し難く、不織布と遮水シートとの間を湧水が通過できる防水シートを提供する。
本発明者らは、まず、不織布と遮水シートからなり、排水機能を有する防水シートにおいて、湧水が多い場合でも排水できる防水シートの構成について検討した。そして、不織布と遮水シートとの接着部が、遮水シートと不織布間における湧水の流れを阻害することを発見し、これに着目して接着部を少なくする検討を行った。しかし、従来のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる遮水シートを用いた防水シートは、遮水シートと不織布間における接着力が弱く、そのままの状態で不織布と遮水シートとの接着部を減らすと、湧水が遮水シートと不織布の間を流れた際に、不織布が持ち上げられて、遮水シートと不織布とが剥離することが確認された。そこで、本発明者らは、接着力を向上させるために、遮水シートを構成する樹脂成分について検討し、エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリエチレンとを所定の割合ずつ含む遮水シートは、不織布の素材にかかわらず、遮水シートと不織布との接着力に優れており、不織布と遮水シートとの間を全面接着とせずとも、剥離しない防水シートを構成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、不織布の一方の表面に遮水シートが接着されてなる防水シートであって、前記遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を20質量%〜80質量%含み、ポリエチレンを20質量%〜80質量%含み、前記不織布と前記遮水シートとは、点状接着又は線状接着されてなることを特徴とする防水シートである。
本発明の防水シートは、不織布と遮水シートとが剥離し難く、不織布と遮水シートとの間に湧水などを通過させる際、効果的に排水することができる。
本発明の断面を示す概略図である。 シート状網状体を含む本発明の断面を示す概略図である。 シート状網状体の表面の一例を示す概略図である。 本発明の使用形態の一例を示す概略図である。
本発明の防水シートは、不織布の一方の表面に遮水シートが接着されてなる防水シートであって、前記遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を20質量%〜80質量%含み、ポリエチレンを20質量%〜80質量%含み、前記不織布と前記遮水シートとは、点状接着又は線状接着されてなることを特徴とする防水シートである。
本発明は、遮水シートが、エチレン−酢酸ビニル共重合体を20質量%〜80質量%含み、ポリエチレンを20質量%〜80質量%含む。かかる構成により、遮水シートは、優れた接着力を有し、不織布素材によらず不織布との接着力に優れた遮水シートを得ることができる。
本発明は、不織布と遮水シートとが、点状接着又は線状接着されてなる。従来の遮水シートを用いた防水シートは、不織布と遮水シートとの接着力が弱く、不織布と遮水シートとを点状接着又は線状接着しただけでは、湧水が不織布と遮水シートの間を通過する際に、流水圧などにより不織布と遮水シートとが剥離するという問題があった。しかし、本発明は、遮水シートと不織布との接着力に優れるので、不織布と遮水シートとを点状接着又は線状接着した構成であっても、不織布と遮水シートとが剥離し難い。
例えば、トンネル工事において、本発明の防水シートを一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に配置して用いる場合には、一次覆工コンクリート側からの湧水を、不織布と遮水シートとの間を通過させて排水することができるので、湧水が二次覆工コンクリート側に移行してコンクリートの一部にクラックが生じることがない、又は少ない。
或いは、例えば、地山斜面に舗装道路を建設する際に、本発明の防水シートを地山斜面と盛土との間に配置して用いる場合には、地山側からの湧水を不織布と遮水シートとの間を通過させて排水することができるので、盛土に湧水が移行して、土砂崩れなどが発生することがない、又は少ない。
本発明は、遮水シートを構成するポリエチレンが線状低密度ポリエチレンであることが好ましい。遮水シートを構成するポリエチレンが線状低密度ポリエチレンであると、遮水シートの引張強度が向上し、破断しにくい防水シートを得ることができる。
本発明は、不織布の他方の表面に、太さが0.1mm〜10mmの複数の連続フィラメントが不規則に交差してなるシート状網状体(以下、単に網状体又はシート状網状体ともいう)が一体化されてなることが好ましい。かかる構成のシート状網状体は、湧水などを外部へ排水するための導水路として主に機能する。
以下、本発明の防水シートについて詳細に説明する。
(不織布)
本発明の防水シートを構成する不織布は、遮水シートが、コンクリート、地山、又はシート状網状体などの凹凸部により、損傷することを防止する役割を果たす。例えば、トンネル工事において、二次覆工コンクリートを打設する場合に、防水シートに作用する打設圧によって遮水シートが損傷することを防止する。遮水シートが損傷すると、二次覆工コンクリートにクラックが発生する可能性が高くなる。また、不織布は、それ自体が導水路として機能してもよい。
不織布を構成する繊維は、あらゆる繊維を用いることができるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂などの合成樹脂から構成されてよい。なかでも、不織布を構成する繊維は耐アルカリ性と耐候性に優れる観点からポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。また、アラミド繊維や炭素繊維からなる不織布を用いることで、防水シートに引裂強度を与えることもできる。
不織布は、目付が80g/m2〜500g/m2であることが好ましい。不織布の目付が80g/m2以上であると、後述の引張強度の範囲を満たしやすくなる。また、不織布の目付が800g/m2以下であると、重くなりすぎず、施工が容易である。かかる効果をより顕著に得る観点から、不織布の目付は、100g/m2〜300g/m2であることがより好ましい。
不織布は、厚みが0.5mm〜20mmであることが好ましい。不織布の厚みが0.5mm以上であると、突起物により遮水シートを損傷させることを防止する効果がより優れる。不織布の厚みが20mm以下であると、不織布が厚み方向に破断又は剥離し難い。かかる効果をより顕著に得る観点から、不織布の厚みは、1mm〜10mmであることがより好ましい。また、不織布の厚みは、2mm以上であることが特に好ましい。不織布の厚みが2mm以上であると、湧水が不織布内を通過しやすくなり、不織布が導水路として機能する。なお、不織布の厚みは、JIS L 1096 8.5に準じて、1cm2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定する。
不織布は、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などの長繊維不織布であってもよく、又はニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布などの短繊維不織布であってよい。なかでも、不織布はスパンボンド不織布をニードルパンチ処理で交絡させた不織布であることが好ましい。かかる不織布は、上述の厚みを安価に得やすく、また、突起物から遮水シートを保護する効果により優れる。
不織布を構成する繊維は、特に限定されないが、単繊維繊度が1dtex〜100dtexであってよい。繊度が1dtex〜100dtexである繊維を用いると、後述の引張強度や引裂強度を満足する不織布を得やすい。
不織布が短繊維不織布である場合、不織布を構成する繊維は、特に限定されないが、繊維長が10mm〜200mmであることが好ましい。繊維長が10mm〜200mmであると、後述の引張強度や引裂強度を満足する不織布を得やすい。
不織布は、1種の繊維から構成されてよく、又は2以上の繊維が混綿された不織布であってもよい。また、不織布は、1層のウェブからなる単層不織布であってよく、又は2層以上のウェブが積層されてなる積層不織布であってよい。さらに不織布は単一成分の樹脂からなる繊維で構成されていてもよく、2以上の樹脂を用いた複合繊維を用いてもよい。かかる繊維の断面形状は丸型断面だけでなく、同心円型、楔状分割型、スリット状分割型、中空型、三角型、Y型、四角型など異型断面繊維であってもよい。
不織布は、遮水シートと向き合う表面に凹凸を有することが好ましい。凸部の高さは、0.5mm〜10mmであることが好ましく、1mm〜7mmであることがより好ましい。不織布の遮水シートと向き合う表面が凹凸部を有すると、不織布と遮水シートの間において、湧水が通過する空間が大きくなり、排水効率が向上する。
不織布は、JIS L 1096に準じて測定される引張強度が、500N/5cm以上であることが好ましく、700N/5cm以上であることがより好ましい。引張強度が500N/5cm以上であると、不織布が破断しにくい。引張強度の好ましい上限は3000N/5cmである。
不織布は、JIS L 1096に準じて測定される伸びが、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。伸びが40%以上であると、後述の遮水シートの伸びに追従しやすくなり、トンネルの円弧面や地山の曲斜面に沿って施工しやすい。伸びの好ましい上限は500%である。
不織布は、JIS L 1096(シングルタンク法)に準じて測定される引裂強度が、80N以上であることが好ましく、120N以上であることがより好ましい。引裂強度が80N以上であると、不織布が裂けにくい。引裂強度の好ましい上限は、500Nである。
(遮水シート)
本発明の防水シートを構成する遮水シートは、湧水がコンクリートや盛土側へ移行することを防止する役割を果たす。例えば、トンネル工事において、一次覆工コンクリート側に防水シートを張設することにより、地中側から発生した湧水が遮水シートを超えて二次覆工コンクリート側へ流れ出さないようにする。二次覆工コンクリート側に湧水が移行すると、二次覆工コンクリートにクラックが発生しやすくなり、コンクリートが崩落するおそれがある。
遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を20質量%〜80質量%含み、ポリエチレンを20質量%〜80質量%含む。かかる構成により、遮水シートの接着力が高くなり、不織布と遮水シートとを強固に接着させることが可能となる。
遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を20質量%〜80質量%含むことが必要である。遮水シート中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が20質量%以上であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂特性に起因して良好な遮水性を有する。例えば、一次覆工コンクリートやロックボルトを通過した湧水が遮水シートにより、二次覆工コンクリート側へ移行することがないので、二次覆工コンクリートにクラックが発生しにくくなる。さらには、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂特性に起因して、例えば10℃以下の低温環境下に於いても遮水シートが固くならず、施工面に対する追従性が保たれる。かかる効果をより顕著に得る観点から、遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を40質量%以上含むことが好ましい。また、遮水シート中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が80質量%以下であると、後述するポリエチレンを十分に含有させることができる。かかる効果をより顕著に得る観点から、遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を60質量%以下含むことが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が、3mol%〜50mol%であることが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量が3mol%以上であると、柔軟性に優れたシートを得ることができる。また、酢酸ビニル含有量が50mol%以下であると、防水シートを30℃以上の環境下で保管する場合であっても、遮水シート同士がくっついて一体化(ブロッキング)してしまうことがない、又は少ない。かかる効果をより顕著に得る観点から、酢酸ビニル含有量は、5mol%〜40mol%であることがより好ましく、10mol%〜30mol%であることがさらに好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、230℃におけるメルトフローレート(以下、「メルトフローレート」を、「MFR」ともいう)が1g/10分〜15g/10分であることが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが1g/10分以上であると、熱接着時に樹脂成分が流動しやすく、不織布へ絡み易くなり、不織布と遮水シートとの接着性がより向上する。また、遮水シートを生産する際に、金属ロール間に液だまり(一般にバンクとも言われる)を形成しやすく、バンク切れを起こすことがなく、生産しやすい。エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが10g/10分以下であると、熱接着時に、樹脂成分が不織布内部へ流れ過ぎて、遮水シートの強力が低下するおそれがない又は少ない。かかる効果をより顕著に得る観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRは、1.5g/10分〜10g/10分であることがより好ましい。
遮水シートは、ポリエチレンを20質量%〜80質量%含むことが必要である。遮水シート中のポリエチレンの含有量が20質量%以上であると、不織布との接着力に優れた遮水シートを得ることができる。不織布と遮水シートとの接着力が高く、不織布と強固に接着された遮水シートは、防水シートの施工中や施工後に不織布と遮水シートとが剥離することがない又は少ない。また、後述するように、不織布と遮水シートとが点状接着又は線状接着されてなる構成の防水シートを得ることが可能となる。かかる効果をより顕著に得る観点から、遮水シートは、ポリエチレンを40質量%以上含むことが好ましい。また、遮水シート中のポリエチレンの含有量が80質量%以下であると、前述のエチレン−酢酸ビニル共重合体を十分に含有させることができる。また、ポリエチレンの含有量が多過ぎると、遮水シートのしなやかさや引張強度が低下する場合がある。かかる効果をより顕著に得る観点から、遮水シートは、ポリエチレンを60質量%以下含むことが好ましい。
ポリエチレンを20質量%以上含む遮水シートが不織布との接着力に優れる理由は、明らかではないが、おそらく、ポリエチレンは酸やアルカリに強く、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの通常の有機溶媒にも難溶であるため、接着剤で接着した場合には、接着剤に含まれる有機溶媒により遮水シートが劣化し難くなるので、遮水シートと接着剤の界面が剥離しにくくなり、接着力が向上すると予想される。また、熱接着した場合には、ポリエチレンが軟化および接着しやすく、硬化後の強度が高いため、遮水シートと不織布との界面において、不織布を構成する繊維の一部を遮水シート表面に取り込みながら熱接着され、アンカー効果により接着力が向上すると予想される。
また、遮水シートは、ポリエチレンを含むことにより、温度による物性の変化を小さくすることができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、その樹脂特性に起因して、温度環境の変化により物性や接着性が変化しやすい。本発明では、エチレン−酢酸ビニル共重合体にポリエチレンを混合することにより、温度環境の変化による物性の変化を押さえることができる。
ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び線状低密度ポリエチレンのうちから1又は2以上を選択して用いることができる。高密度ポリエチレンを用いるとその樹脂特性に起因して、耐衝撃性に優れた遮水シートを得ることができる。また、低密度ポリエチレンを用いるとその樹脂特性に起因して、熱溶着性に優れた遮水シートを得ることができる。
なかでもポリエチレンは、線状低密度ポリエチレンであることが好ましい。線状低密度ポリエチレンを含む遮水シートは、特に優れた引張強度を有する。遮水シートが引張強度に優れると、遮水シートが破断し難くなる。例えば、トンネルに用いると、遮水シート破断部から湧水が二次覆工コンクリートに移行することがなく又は少ないので、二次覆工コンクリートにクラックが生じにくくなる。或いは、地山斜面の盛土工法に用いると、遮水シート破断部から湧水が盛土側に移行することがなく又は少ないので、盛土が崩れて舗装道路などが崩落し難い。
線状低密度ポリエチレンは、繰り返し単位のエチレンにα−オレフィンを1質量%〜10質量%共重合させて製造されたものであってよい。このようにして製造された線状低密度ポリエチレンは、成分中に1−ブテン、1−ヘキサン、4−メチルペンテン−1、1−オクテンなどのα−オレフィンを含む場合がある。上記α−オレフィンは、低密度ポリエチレン成分中に10質量%未満の範囲で含まれてよく、あるいは、遮水シートを構成する成分中に8質量%未満の範囲で含まれてよい。
線状低密度ポリエチレンは、密度が0.86g/cm3〜0.93g/cm3であることが好ましい。かかる密度の線状低密度ポリエチレンは、低価格で加工性にも優れる。
ポリエチレンは230℃におけるメルトフローレートが1g/10分〜10g/10分であることが好ましい。ポリエチレンのMFRが1g/10分以上であると、熱接着時に樹脂成分が流動しやすく、不織布へ絡み易くなり、不織布と遮水シートとの接着性がより向上する。また、遮水シートを生産する際に、金属ロール間に液だまり(一般にバンクとも言われる)を形成しやすく、バンク切れを起こすことがなく、生産しやすい。ポリエチレンのMFRが10g/10分以下であると、熱接着時に、樹脂成分が不織布内部へ流れ過ぎて、遮水シートの強力が低下するおそれがない又は少ない。かかる効果をより顕著に得る観点から、ポリエチレンのMFRは、1.5g/10分〜7g/10分であることがより好ましい。
遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリエチレンの他に、他の樹脂成分を30質量%以下の範囲で含んでよい。より好ましくは10質量%以下の範囲である。他の樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィン系樹脂を用いることができる。また、遮水シートは、必要に応じて、酸化防止剤や熱安定剤などを10質量%未満の量で含んでよい。
遮水シートは、厚みが0.1mm〜3mmであることが好ましく、0.3mm〜2mmであることがより好ましい。遮水シートの厚みが0.1mm〜3mmであると、施工時の取り扱い性に優れた防水シートとなる。なお、遮水シートの厚みは、JIS K 6250 8.1(A法)に従って測定する。
遮水シートは、JIS K 6773に準じて測定される20℃における引張強度が、12N/mm2以上であることが好ましく、15N/mm2以上であることがより好ましい。引張強度が10N/mm2以上であると、遮水シートが破断しにくい。引張強度の好ましい上限は、100N/mm2である。
遮水シートは、JIS K 6773に準じて測定される20℃における伸びが、500%以上であることが好ましく、600%以上であることがより好ましい。伸びが500%以上であると、防水シートをトンネルの円弧面や地山の曲斜面に沿って施工することが容易になる。伸びの好ましい上限は、1000%である。
遮水シートは、JIS K 6301に準じて測定される引裂強度が、400N/cm以上であることが好ましく、500N/cm以上であることがより好ましい。引裂強度が400N/cm以上であると、遮水シートが裂けにくい。引裂強度の好ましい上限は、2000N/cmである。
(シート状網状体)
本発明の防水シートは、不織布の他方の表面に、太さが0.1mm〜10mmの複数の連続フィラメントが不規則に交差してなるシート状網状体が一体化されてなることが好ましい。なお、不織布の他方の表面とは、不織布において、遮水シートが接着されていない表面をいう。
不織布の他方の表面にシート状網状体が一体化されてなると、シート状網状体が、湧水などを外部へ排水するための導水路として機能する。シート状網状体で構成された導水路は、コンクリートの打設や盛土の自重などにより防水シートに圧力が加わった場合でも、厚み方向に変形しにくいため、導水路が厚みを失うことがないので、より大量の湧き水を排水することができる。例えば、防水シートをトンネル工事の一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間にシート状網状体を一次覆工コンクリート側に配置して張設した場合、一次覆工コンクリート側から生じた湧水などは、不織布と遮水シートとの間に加えて、シート状網状体の空隙部を通過して、外部へ排出される。
シート状網状体は、その一部又は全部を一次覆工コンクリートや地山面に埋め込んで利用することもできる。シート状網状体の少なくとも一部を一次覆工コンクリートや地山面に埋め込むと、シート状網状体がアンカー材として機能するため、コンクリートや地山と防水シートとが剥落又は剥離し難くなる。シート状網状体の一部を一次覆工コンクリートに埋め込む場合、コンクリートに埋め込まれないシート状網状体部は導水路として機能する。また、シート状網状体の全部を一次覆工コンクリートに埋め込む場合には、不織布と遮水シートの間が導水路として機能する。
連続フィラメントの太さ(直径)は、0.1mm〜10mmであることが好ましく、0.3mm〜5mmであることがより好ましく、0.5mm〜3mmであることがさらに好ましい。連続フィラメントの太さが0.1mm以上であると、フィラメントが破断し難くなる。また、連続フィラメントの太さが10mm以下であると、連続フィラメント同士や連続フィラメントと不織布との接着交点が大きくなりすぎることがなく、網状体が適度な空隙を形成する。なお、連続フィラメントの太さは、連続フィラメントの任意の100箇所における直径を測定し、その平均値を連続フィラメントの太さとする。
連続フィラメントの断面形状は、特に限定されず、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形、Y字型、十字型など、いずれの形状であってもよい。フィラメント断面が円形状以外である場合、連続フィラメントの太さは、フィラメント断面積を測定し、この断面積と同じ面積の円に換算したときの円直径とする。
シート状網状体は、連続フィラメントで構成されてなることが好ましい。フィラメントが連続していると、フィラメントが不連続である場合と比較して、フィラメント先端が少なく、フィラメント先端が遮水シートを損傷させることがない又は少ない。
連続フィラメントを構成する成分は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂などの合成樹脂であってよい。なかでも、耐アルカリ性と耐候性に優れる観点からポリオレフィン樹脂であることが好ましい。連続フィラメントがポリオレフィン樹脂から構成されてなると、耐アルカリ性に優れた網状体となり、例えば、打設したコンクリートからアルカリ溶液が生じた場合でもシート状網状体が劣化し難い。
シート状網状体は、網状体を表面と垂直な方向からみた網目の大きさが1mm2〜1000mm2であることが好ましい。網目の大きさが1mm2以上であると、大量の湧水が発生した場合でも目詰まりし難く、排出することができる。また、網目の大きさが1000mm2以下であると、防水シートの網状体側を一次覆工コンクリートに張設した場合に、網目部において、不織布と一次覆工コンクリートとが密着して湧水の通過を阻害することがない、又は少ない。かかる効果をより顕著に得る観点から、シートに垂直な方向からみた網目の大きさは10mm2〜500mm2であることが好ましい。
なお、シート状網状体の網目の大きさは、次の手順に従って測定する。シート状網状体から幅100mm×長さ100mmの大きさの試料を作製し、試料を表面と垂直な方向からみて、試料中に存在する連続フィラメントによって囲まれた全ての網目の大きさSを測定し、S2の総和をSの総和で除算した値、すなわち、下式によって計算される値をいう。
(S1 2+S2 2+S3 2・・・+Sn 2)/(S1+S2+S3・・・+Sn
シート状網状体の網目は、複数の連続フィラメントが不規則に交差して形成される。本発明においては、シート状網状体の網目のうち、より網目の大きさが大きい網目が前述した湧水の大量排水効果を奏することに大きく影響するため、前述のような網目の大きさ(面積)の加重平均値を網目の大きさと定義している。
シート状網状体は、連続フィラメント同士の接点および交点が接着されていることが好ましい。連続フィラメント同士の接点および交点が接着されていると、防水シートにコンクリート打設による圧力などが加わっても網目構造がつぶれ難い。また、連続フィラメント同士の接点および交点は、連続フィラメントを構成する成分により接着されていることがより好ましい。連続フィラメント同士が連続フィラメントを構成する成分により接着されていると、接着交点に接着剤などによる突起状の接着点ができないので、防水シートをロール状に巻回しても、遮水シートをキズ付けることがない。
シート状網状体は、厚みが1mm〜30mmであることが好ましい。網状体の厚みが1mm以上であると、湧水中に土砂などが含まれていた場合であっても、目詰まりすることがなく、良好な通水性を得ることができる。また、網状体の厚みが30mm以下であると不織布と網状体とが剥離し難い。かかる効果をより顕著に得る観点から、シート状網状体の厚みは2mm〜10mmであることが好ましい。また、シート状網状体は、厚み方向に凸部又は凹部を有していてもよい。
シート状網状体の厚みは、防水シートからシート状網状体を剥離させた状態で、シート状網状体を2枚の厚さ3mmのアクリル板で挟み込み、1cm2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で、アクリル板間の距離を測定しシート状網状体の厚みとする。
シート状網状体は、目付が80g/m2〜1000g/m2であることが好ましい。目付が80g/m2以上であると、導水路となる空隙を形成しやすい。また、目付が1000g/m2以下であると、重くなりすぎず、例えば、コンクリート面への打設が容易である。特に、本発明の防水シートを、トンネルの内側に施工する場合には、重力に逆らって防水シートが張設されるため、単位面積当たりの質量が大きくなると、コンクリート面への打設が困難になる傾向にある。かかる効果をより顕著に得る観点から、シート状網状体の目付が100g/m2〜500g/m2であることがより好ましく、150g/m2〜400g/m2であることがさらに好ましい。
シート状網状体は、空隙率が60%〜99.9%であることが好ましい。空隙率が60%以上であると、湧水が土砂や粒子などの固形物を含む場合であっても、目詰まりすることなく、湧水を排水することができる。また、空隙率が99.9%以下であると、コンクリートの打設圧や盛土圧などにより空隙がつぶれることがない。
シート状網状体の空隙率は、シート状網状体から10cm×10cmの大きさのサンプルを作製し、このサンプルの質量W(g)を測定し、上述の厚みT(cm)、構成成分の密度ρ(g/cm3)を用いて、下式により算出して空隙率とする。
{1−W/(100×T×ρ)}×100(%)
シート状網状体は、厚み方向に凹凸を有することが好ましい。凸部の高さは、0.5mm〜10mmであることが好ましく、1mm〜7mmであることがより好ましい。シート状網状体が厚み方向に凹凸を有すると、シート状網状体と不織布とを金属ロールなどで、加圧することにより、不織布の遮水シートと向き合う表面に凹凸形状を付与することができる。
シート状網状体は、連続フィラメント同士の交点が接着され、かつ厚みが2mm以上であることが特に好ましい。かかる構成であると、例えば、トンネル工事において、一次覆工コンクリートに混合される鋼繊維やロックボルトが突出した一次覆工コンクリート面に防水シートを施工し、その上から二次覆工コンクリートを打設する場合であっても、二次覆工コンクリートの打設圧で網状体の厚みが縮小されることがないので、鋼繊維やロックボルトなどの突起部を網状体の空隙に取り込むことができるので、突起部により遮水シートが損傷することを防ぐことができる。
(防水シート)
防水シートは、不織布の一方の表面に遮水シートが点状接着又は線状接着されてなる。不織布の一方の表面に遮水シートが点状接着又は線状接着されてなると、不織布と遮水シートとの間が導水路として機能するため、多くの湧水を排水することができる。大量の湧水が発生した場合、その水圧により不織布と遮水シートの間の接着されていない部分に空間が形成され、この空間が導水路となり、効率よく排水することができる。
不織布と遮水シートとは、接着剤を介して接合されていてよく、あるいは、不織布又は遮水シートを構成する成分により熱溶着されていてよい。なかでも、不織布と遮水シートとは、ホットメルト系接着剤または熱溶着により接合されていることが好ましい。かかる構成であると、有機溶剤を含まず防水シートから有機溶剤に起因する物質が揮発することない。
点状接着又は線状接着の接着間隔は、2cm〜70cmであることが好ましい。ここで接着間隔とは、点状接着である場合、任意の接着点とそこから最も近い他の接着点との距離をいい、線状接着である場合、接着された線状部と垂直な方向に最も近い他の接着線状部との距離をいう。接着間隔が2cm以上であると、接着されていない部分に空間が形成されやすくなり、接着間隔が70cm以下であると、施工時に不織布と遮水シートとがずれ難くなり、施工が容易になる。
なかでも、不織布と遮水シートとは、ホットメルト系接着剤によって点状接着されてなり、接着間隔が10cm〜50cmであることがより好ましい。かかる構成であると、不織布と遮水シートとが剥離し難く、かつ不織布と遮水シートの間に優れた導水路を形成することができる。
不織布と遮水シートとを点状接着する場合、接着部の大きさは、1cm2〜100cm2であることが好ましい。接着部の大きさが1cm2以上であると、不織布と遮水シートとを強固に接着することができる。また、接着部の大きさが100cm2以下であると、接着部が不織布と遮水シートの間の排水を妨げることが少なく、より排水しやすい防水シートとなる。かかる効果をより顕著に得る観点から、接着部の大きさは、5cm2〜50cm2であることがより好ましい。
本発明では、点状接着又は線状接着する際、不織布を緩ませて接着することが好ましい。具体的には、不織布の接着間隔を遮水シートの接着間隔の105%〜150%として接着することが好ましい。例えば、遮水シートを30cm間隔で点接着する場合、不織布は31.5cm〜45cm間隔で点接着してよい。不織布を緩ませて接着した防水シートは、特にトンネル用防水シートに適している。
通常、トンネル内面は円弧状であるため、より円弧外側に張設される不織布がより円弧内側に張設される遮水シートよりも引っ張られる傾向にある。このとき、不織布と遮水シートとが、全面にわたり或いは、同間隔の点状又は線状に接着されていると、円弧内側に位置して伸び性が比較的高い遮水シートの伸びに引きずられて、円弧外側に位置して伸び性の比較的低い不織布が破断する場合がある。不織布と遮水シートが、不織布の接着間隔を遮水シートの接着間隔の105%〜150%として点状接着又は線状接着されてなると、防水シートに引張力が作用しても、接着間隔の差に起因する緩みにより、円弧外側の不織布に作用する引張力が緩和されるので、不織布が破断することがない又は少ない。
防水シートは、JIS K 6854−3に準じて測定されるT形剥離試験における不織布と遮水シートとの剥離強力が、150N〜1000Nであることが好ましく、180N〜600Nであることがより好ましく、200N〜400Nであることがさらに好ましい。剥離強力が150Nであると、不織布と遮水シートとの剥離がなく、施工しやすい。例えば、トンネル工事において、防水シートを天井面付近に張設する場合であっても、不織布と遮水シートとが剥離することがない。剥離強力が1000N以下であると、防水シートの端部接合において、遮水シートと不織布とを剥離させて、遮水シートを拝み合わせ溶着する場合、不織布と遮水シートとの剥離時に遮水シートに不織布の接着残渣が残ることが少ない。
防水シートは、不織布の他方の表面にシート状網状体が一体化されてなることが好ましい。不織布とシート状網状体とは、接着剤を介して一体化されていてよく、又は連続フィラメントを構成する成分により一体化されていてよい。なかでも、不織布とシート状網状体とは、連続フィラメントを構成する成分により一体化されていることが好ましく、連続フィラメントを構成する成分を融着させて一体化していることがより好ましい。不織布と網状体とが連続フィラメントを構成する成分により一体化されていると、不織布と網状体とが剥離しにくくなる。また、接着点において、連続フィラメントをフィルム化させることで、より強固に不織布と網状体を一体化することができる。
防水シートは、遮水シート面にさらに不織布が接着されてよい。かかる構成であると、二次覆工コンクリートとの接着性が向上すると共に、二次覆工コンクリートの張設時に遮水シートが損傷することを抑制することができ、さらにコンクリートと防水シートとが剥落し難くなる。遮水シート面に接着する不織布は、上述の不織布と同様の繊維を用いることができ、また、同様に点状接着又は線状接着されていてよい。
防水シートは、単位面積当たりの質量が2kg/m2以下であることが好ましく、1.5kg/m2以下であることが好ましい。防水シートの単位面積当たりの質量が2kg/m2以下であると、防水シートが軽くなり、施工が容易になる。たとえば、トンネル天井部などに張設する際にも施工が容易である。特に限定されないが、好ましい下限は、0.5kg/m2である。
本発明の防水シートは、特にトンネル用防水シートとして優れている。もっぱらトンネル工事では、トンネル内面側に防水シートが施工されるため、トンネル天井部やトンネル側面部の防水シートは、自重や展張力により、トンネル底面方向への引張力を受ける。本発明の防水シートは、不織布と遮水シートとの接着力に優れるため、このような引張力が防水シートに作用しても不織布と遮水シートとが剥離したり、防水シートが破断することが少ない。
(防水シートの製造方法)
以下に、防水シートの製造方法の一例を示す。
まず、エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリエチレンとを溶融させて、Tダイから押し出して、金属ロール間で厚みを調整し、遮水シートを得る。このとき、エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリエチレンとは、予め混合してマスターバッチ化してもよい。さらに、必要に応じて、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ヒドロキシアミン系熱安定剤などの添加剤を加えてよい。また、遮水シートは必要に応じて、延伸処理を付してもよい。
次いで、遮水シートに接着剤を点状に付着させて、不織布と貼り合わせることにより、不織布と遮水シートとが点状接着された防水シートを得る。又は、熱風溶着機などを用いて、遮水シート表面を線状に加熱溶融させて、不織布と貼り合わせることにより、不織布と遮水シートとが線状接着された防水シートを得る。なお、不織布は市販されているものを用いてよく、熱溶着は、高周波、超音波、赤外線、レーザー光線などを照射することにより行ってもよい。
なお、必要に応じて、不織布の一方の表面に予めシート状網状体を一体化しておくことで、シート状網状体を含む防水シートを得ることもできる。例えば、シート状網状体を構成する樹脂を200℃〜350℃程度に加熱して溶融し、これを紡糸金型からランダムに周動させながら押し出して、不規則に交差する連続フィラメントを金型又は捕集板上に捕集して、シート状網状体を得て、上記連続フィラメントが硬化する前に、不織布を重ねて、金属ロールやゴムロールなどで押圧することにより、不織布とシート状網状体とが一体化された中間体を得ることができる。不織布とシート状網状体とが一体化された中間体と遮水シートとを貼り合わせることにより、シート状網状体を含む防水シートを得ることができる。
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(遮水シートの引張強度)
遮水シートの引張強度は、JIS K 6773に準じて、測定温度20℃で測定した。
(遮水シートの伸度)
遮水シートの伸度は、JIS K 6773に準じて、測定温度20℃で測定した。
(遮水シートの引裂強度)
遮水シートの引裂強度は、JIS K 6301に準じて、測定温度20℃で測定した。
(EVA樹脂1)
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、商品名:EV260、三井・デュポンポリケミカル社製を準備した。以下、このエチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA樹脂1ともいう。
(EVA樹脂2)
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、商品名:P1405S、三井・デュポンポリケミカル社製を準備した。以下、このエチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA樹脂2ともいう。
(EVA樹脂3)
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、商品名:UE634、USI CORPORATION社製を準備した。以下、このエチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA樹脂3ともいう。
(EVA樹脂4)
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、商品名:UE630、USI CORPORATION社製を準備した。以下、このエチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA樹脂4ともいう。
(EVA樹脂5)
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、商品名:E260F、SAMSUNG TOTAL社製を準備した。以下、このエチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA樹脂5ともいう。
(LLDPE樹脂1)
線状低密度ポリエチレンとして、商品名:SP2040、プライムポリマー社製を準備した。以下、この線状低密度ポリエチレンをLLDPE樹脂1ともいう。
(LLDPE樹脂2)
線状低密度ポリエチレンとして、商品名:LL105、USI CORPORATION社製を準備した。以下、この線状低密度ポリエチレンをLLDPE樹脂2ともいう。
(LLDPE樹脂3)
線状低密度ポリエチレンとして、商品名:LL120、USI CORPORATION社製を準備した。以下、この線状低密度ポリエチレンをLLDPE樹脂3ともいう。
EVA樹脂1〜5、及びLLDPE樹脂1〜3の酢酸ビニル含有率、密度、230℃におけるメルトフローレート、融点を表1に示す。
Figure 0005985169
(遮水シート1〜6)
EVA樹脂1、EVA樹脂2、LLDPE樹脂1を表2に示す樹脂割合で、それぞれ混合し溶融させて、Tダイから押し出し、金属ロールで所定の厚みに圧延して遮水シート1〜6を得た。遮水シート1〜6の厚み、引張強度、伸度、引裂強度、及び比重を表2に示す。
Figure 0005985169
(遮水シート7〜10)
EVA樹脂3〜5、LLDPE樹脂1〜2を表3に示す樹脂割合で、それぞれ混合し溶融させて、Tダイから押し出し、金属ロールで所定の厚みに圧延して遮水シート7〜10を得た。遮水シート7〜10の厚み、引張強度、伸度、引裂強度、及び比重を表3に示す。
Figure 0005985169
参考例1)
ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、溶融物を孔径1mmの多数の紡糸ノズルが列設された紡糸口金から紡出し、連続フィラメントを紡糸口金の下方に設けられた高さ5mmの凸部を有する金型上に垂らしながら、金型を移動させてシート状網状体を得た。なお、シート状網状体は、連続フィラメントの太さが1mm、厚みが5mm、目付が250g/m2、網目の大きさが140mm2であった。
次いで、ポリプロピレン繊維からなり、厚みが0.5mmのスパンボンド不織布を準備し、シート状網状体を構成する連続フィラメントが完全に固化する前に、シート状網状体の上部から不織布を押し当て、加圧して、不織布とシート状網状体とを連続フィラメントによって一体化して、不織布とシート上網状体とが積層一体化された中間体を作製した。
続いて、遮水シート1の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなるホットメルト接着剤を点状に、防水シートの幅方向(CD方向)に40cm間隔で、防水シートの長さ方向(MD方向)に30cm間隔で付着させて、不織布とシート上網状体とが積層一体化された中間体の不織布面と貼り合わせて、参考例1の防水シートを得た。
参考例2)
遮水シート1に代えて遮水シート2を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、参考例2の防水シートを得た。
参考例3)
遮水シート1に代えて遮水シート3を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、参考例3の防水シートを得た。
参考例4)
遮水シート1に代えて遮水シート4を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、参考例4の防水シートを得た。
参考例5)
遮水シート1に代えて遮水シート5を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、参考例5の防水シートを得た。
(比較例1)
遮水シート1に代えて遮水シート6を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、比較例1の防水シートを得た。
参考例6)
遮水シート1に代えて遮水シート7を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、参考例6の防水シートを得た。
参考例7)
遮水シート1に代えて遮水シート8を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、参考例7の防水シートを得た。
参考例8)
遮水シート1に代えて遮水シート9を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、参考例8の防水シートを得た。
参考例9)
遮水シート1に代えて遮水シート10を用いたこと以外は、参考例1で採用した手順に従って、参考例9の防水シートを得た。
参考例10)
ポリプロピレン繊維からなり、厚みが0.5mmのスパンボンド不織布の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなるホットメルト接着剤を点状に、防水シートの幅方向(CD方向)に40cm間隔で、防水シートの長さ方向(MD方向)に30cm間隔で付着させて、不織布と遮水シート3とを接着して、参考例10の防水シートを得た。この防水シートの剥離強力は、JIS K 6854−3に準じて測定されるT形剥離試験における不織布と遮水シートとの剥離強力が229Nであり、不織布と遮水シートとが強固に接着されていた。
参考例1〜9の防水シートは、不織布と遮水シートとが強固に接着されていた。比較例1の防水シートは、不織布と遮水シートとが弱く、剥離しやすいものであった。
遮水シート1〜5及び遮水シート7〜10は、線状低密度ポリエチレンを含むため、比較例6と比べて引張強度が高い遮水シートであった。なかでも、遮水シート3〜5は、線状低密度ポリエチレンを40質量%以上含むため、非常に優れた引張強度を示した。また、遮水シート1及び4は、EVA樹脂1を50質量%含み、LLDPE樹脂を含むため、優れた伸度を示した。
本発明の防水シートは、不織布と遮水シートとが点状接着又は線状接着されているので、不織布と遮水シートとの間が、導水路として機能するため地山や地面から湧水などが発生する箇所にトンネルや舗装道路を建設する際に好ましく使用される。例えば、新オーストリアトンネル工法(NATM工法)や軽量盛土工法などに使用することができる。なかでも、本発明の防水シートは、不織布と遮水シートとの接着力に優れるため、トンネル内側の円弧面に張設しても、引張力などにより遮水シートが破断することがない又は少ないため、トンネル用防水シートとして特に適している。
1 遮水シート
2 不織布
3 シート状網状体
10 防水シート
20 連続フィラメント
22 網目
30 地山
32 ロックボルト
34 一次覆工コンクリート
36 二次覆工コンクリート
38 トンネル内空間

Claims (6)

  1. 不織布の一方の表面に遮水シートが接着されてなる防水シートであって、
    前記遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を20質量%〜80質量%含み、ポリエチレンを20質量%〜80質量%含み、
    前記不織布と前記遮水シートとは、点状接着又は線状接着されてなり、
    前記不織布を構成する繊維の一部が遮水シート表面に取り込まれ熱接着されていることを特徴とする防水シート。
  2. 前記ポリエチレンは、線状低密度ポリエチレンである請求項1に記載の防水シート。
  3. 前記不織布と前記遮水シートとの接着部の大きさが、5cm2〜50cm2である請求項1又は2に記載の防水シート。
  4. 前記不織布の接着間隔が、前記遮水シートの接着間隔の105%〜150%である請求項1〜のいずれか一項に記載の防水シート。
  5. 前記不織布の他方の表面に、太さが0.1mm〜10mmの複数の連続フィラメントが不規則に交差してなるシート状網状体が一体化されてなる請求項1〜のいずれか一項に記載の防水シート。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載のトンネル用防水シート。
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