JP7085381B2 - 防水シート - Google Patents
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Description
そこで、特許文献2においては、防水シートに有孔管を設けておき、前記空洞が生じたときは、充填剤を有孔管から吐出して空洞を埋めることが提案されている。
本発明は、かかる事情に鑑み、二次覆工コンクリートの特に地山側の表面強度(以下適宜「背面強度」と称す)を増強でき、かつトンネル掘削断面の増大を抑えながら二次覆工コンクリートの天端部に空洞が形成されるのを防止可能な防水シートを提供することを目的とする。
水の透過を阻止する防水層と、
前記防水層における一次覆工コンクリート側の面に積層され、水を通す排水層と、
前記防水層における二次覆工コンクリート側の面に積層され、水を吸って蓄える吸水層と、を備えたことを特徴とする。
前記吸水した吸水層は、好ましくは膨潤ゲル化される。該吸水層が防水層と二次覆工コンクリートとの間の密閉空間に介在される。このため、吸水層から水分の蒸発が遅延される。したがって、二次覆工コンクリートの乾燥が緩慢になる。この結果、二次覆工コンクリートの背面強度が向上される。
地山からの湧水が、一次覆工コンクリートを透過して防水シートまで達したときは、排水層に沿って排水できるとともに、防水層によって二次覆工コンクリート側ひいてはトンネル内への漏水を防止できる。
仮に、防水シートの防水層に穴が開いて地山からの湧水が前記穴から漏れようとした場合、吸水層が該湧水を吸収することでトンネル内への漏水防止手段の一端を担うことが期待される。
当該防水シートは、比較的簡単な構造であるから安価に作製することができる。これによって、施工コストを節減できる。
吸水層は、防水シートの実質的に全域に設けられていることが好ましい。「実質的に全域」とは、吸水層が防水シートのほぼ全域に分布されていれば足り、例えば、隣接する防水シートどうしの継ぎ足し部分においては、どちらか片方の防水シートにだけ吸水層があればよく、他方の防水シートには吸水層が無くてもよいとの趣旨である。
前記吸水性繊維が、セルロース繊維、ポリエステル繊維又はアクリル繊維であることが好ましい。
セルロース繊維は、天然セルロース繊維でもよく、再生セルロース繊維でもよく、合成セルロース繊維でもよい。具体的には、セルロース繊維として、レーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジック、キュプラ、テンセル、綿、麻などが挙げられる。
前記吸水性繊維として、カシミヤ、モヘア、その他の獣毛繊維を用いてもよい。
さらには前記吸水層として、新聞紙、雑誌その他の古紙やティッシュペーパーを用いてもよい。そうすると、吸水層を安価に作製できる。
前記吸水層が、前記吸水性繊維集合体からなるシートの片面又は両面に積層された嵩高性(バルキー性)に富む合成繊維シートを、更に含んでいてもよい。
前記吸水層が、乾式難燃パルプ不織布を更に含み、該乾式難燃パルプ不織布が、前記吸水性繊維集合体からなるシートと前記合成繊維シートとの間、又は前記吸水性繊維集合体からなるシートにおける前記合成繊維シートが設けられた片面とは反対側の面に設けられていてもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、共重合ポリアミド、共重合ポリエステルなどが挙げられる。
前記バインダが、ホットメルト接着剤であってもよい。ホットメルト接着剤としてホットメルト不織布を用いてもよい。
コンクリート接合層と二次覆工コンクリートとは、好ましくは物理的に密着される。
仮に、防水シートの防水層に穴が開いていたり二次覆工コンクリートにクラックが生じたりしても、コンクリート接合層と二次覆工コンクリートとが密着されているために、防水層の前記穴から二次覆工コンクリートの前記クラックまでの水の通りを阻止できる。したがって、トンネル内への漏水を一層確実に防止できる。
前記埋入部及び充填空間部が、それぞれ前記コンクリート接合層の実質的に全域に分布されていることが好ましい。「前記コンクリート接合層の実質的に全域に分布」とは、埋入部及び充填空間部がそれぞれコンクリート接合層のほぼ全域に分布されていれば足り、例えば、隣接する防水シートどうしの継ぎ足し部分においては、どちらか片方の防水シートにだけ埋入部及び充填空間部があればよく、他方の防水シートには埋入部及び充填空間部が無くてもよいとの趣旨である。
前記コンクリート接合層は、不織布又は網状体であることが好ましい。不織布の繊維材又は網状体の網材が、埋入部となる。不織布又は網状体の空隙や網目が、充填空間部となる。不織布又は網状体からなるコンクリート接合層の場合、吸水層による二次覆工コンクリートの乾燥遅延効果を十分に確保できる。
前記コンクリート接合層が、シート部と、前記シート部の二次覆工コンクリート側の面の実質的に全域に分布するように形成された凸部分とを含んでいてもよい。凸部分が、埋入部となる。シート部における凸部分以外の凹んだ部分が、充填空間部となる。シート部には、吸水層による二次覆工コンクリートからのブリージング水の吸収作用及び二次覆工コンクリートの乾燥遅延作用を確保する通孔が形成されていてもよい。
<第1実施形態>
図1に示すように、トンネル1は、地山2側の一次覆工コンクリート3と、トンネル内側の二次覆工コンクリート4を含む。一次覆工コンクリート3から地山2にロックボルト5が打設されている。一次覆工コンクリート3と二次覆工コンクリート4との間に防水シート10が張設されている。
排水層12は、緩衝層としての機能をも有している。
なお、詳細な図示は省略するが、防水シート10の側端部においては、隣接する防水シート10との継ぎ足しのために、防水層11と排水層12が互いに分離されてフリーになっている。
セルロース繊維は、パルプ、綿、麻その他の天然セルロース繊維でもよく、レーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジック、キュプラ、テンセルその他の再生セルロース繊維でもよく、半合成セルロース繊維、合成セルロース繊維でもよい。
獣毛繊維としては、カシミヤ、モヘアなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、共重合ポリアミド、共重合ポリエステルなどが挙げられる。
なお、バインダは、ホットメルト接着剤であってもよい。ホットメルト接着剤としてホットメルト不織布を用いてもよい。
吸水性繊維の原材料がシート状のパルプなどである場合には、細かく離解(解繊)させてベースシート上に広く堆積させ、吸水性繊維の集合体のウエブを形成する。
該吸水性繊維の集合体に前記粉状又は粒状の分散体を混ぜる。分散体は、吸水性繊維集合体の内部に万遍なく分散させておく。
続いて、吸水性繊維の集合体と分散体の混合物を加熱する。これによって分散体が溶融され、吸水性繊維集合体の隣接する繊維どうしが溶融分散体を介して接着される。これによって、吸水シート13aが形成される。
その後、冷却されることによって、溶融分散体が固化し、溶融固化物となる。
合成繊維シート13bは、例えばポリエチレンとポリプロピレンの複合繊維にて構成され、密度0.01g/cm3~0.1g/cm3程度、厚さ0.2mm~5mm程度であり、嵩高性(バルキー性)に富んでいる。
パルプ不織布シート13cは、難燃性であることが好ましい。パルプ不織布シート13cを、吸水シート13aの製造時における前記ベースシートとして用いてもよい。
吸水シート13aの片面に合成繊維シート13bが積層され、吸水シート13aの反対側の面にパルプ不織布シート13cが積層されている。これらシート13a,13b,13cは、ホットメルト接着剤や熱融着によって接合されている。
吸水シート13aの片面又は両面にパルプ不織布シート13cを介して合成繊維シート13bを積層してもよい。
図1に示すように、地山2を発破や機械掘りで掘削し、掘削面に沿って支保工(図示省略)を建て込み、一次覆工コンクリート3を吹き付け、ロックボルト5を地山2に打ち込む。
続いて、防水シート10を一次覆工コンクリート3の内周面に張設する。このとき、排水層12を一次覆工コンクリート3側に向け、吸水層13をトンネル内側へ向ける。一定の間隔で釘を打ち付けて、防水シート10を一次覆工コンクリート3に止める。
複数の防水シート10を用意し、各防水シート10をトンネル1の横断方向(周方向)に張り渡す。かつトンネル1の縦断方向(図1の紙面と直交する軸方向)に順次防水シート10を継ぎ足す。図示は省略するが、隣接する防水シート10,10の防水層11,12の端部どうしは、溶融接合させて一体化する。
防水シート10の吸水層13の厚みは、特許文献1の有孔管の直径と比べると十分に小さくできる。したがって、トンネル掘削断面を大きくする必要がなく、掘削及びモルタル充填のための材料、設備、人、時間を削減できる。
固化前の二次覆工コンクリート4は水分を含むことで流動性に富む。コンクリートが固化するに必要な水以外に、流動性を高めるために入れた水は余剰水となる。余剰水はセメントとの比重の違いによって浮き上がり、ブリージング水となる。該ブリージング水は、防水シート10の吸水層13に吸収される。これによって、天端部における防水シート10と二次覆工コンクリート4との界面に空洞が形成されるのを防止できる。
前記ブリージング水を吸った吸水層13は膨潤ゲル化される。なお、吸水層13は一次覆工側及び二次覆工側から圧力を受けるから、吸水層13の厚みは吸水の前後ひいては膨潤ゲル化の前後でほとんど変わらない。
仮に、防水層11に穴が開いて地山2からの湧水が前記穴から漏れようとした場合、吸水層13が該湧水を吸収することでトンネル1内への漏水防止手段の一端を担うことが期待される。更には、吸水層13が吸水によって膨潤ゲル化されて圧力を生じることで湧水を遮断することも期待できる。
防水シート10は、比較的簡単な構造であるから安価に作製することができる。したがって、施工コストを節減できる。
<第2実施形態>
図4及び図5は、本発明の第2実施形態を示したものである。
図4に示すように、第2実施形態の防水シート10Bは、コンクリート接合層20を更に含む。コンクリート接合層20は、吸水層13における二次覆工コンクリート4側の面に積層されている。
なお、立体的な網状体に代えて、平面的な網状体を用いてもよい。
吸水層13とコンクリート接合層20とは、例えば溶着によって接合されている。接合手段としては、溶着に限られず、ホットメルト樹脂等の接着剤を用いた接着等を適用してもよい。
仮に、防水シート10の防水層11に穴が開いたり二次覆工コンクリート4にクラックが生じたりしても、コンクリート接合層20と二次覆工コンクリート4とが密着されることで、前記穴からクラックまでの水の通りを阻止できる。湧水が吸水層13を透過したとしても、コンクリート接合層20と二次覆工コンクリート4とが密着されているために、前記クラックまで水が伝わるのを阻止できる。これによって、トンネル内への漏水を一層確実に防止できる。
コンクリート接合層が、シート部と、前記シート部の二次覆工コンクリート4側の面の実質的に全域に分布するように形成された凸部分とを含んでいてもよい。凸部分が、埋入部となる。シート部における凸部分以外の凹んだ部分が、充填空間部となる。シート部には、吸水層による二次覆工コンクリート4からのブリージング水の吸収作用及び二次覆工コンクリート4の乾燥遅延作用を確保する通孔が形成されていてもよい。
例えば、吸水層13として、新聞紙、雑誌その他の古紙やティッシュペーパーを用いてもよい。そうすると、吸水層13を安価に作製できる。
2 地山
3 一次覆工コンクリート
4 二次覆工コンクリート
5 ロックボルト
10 防水シート
11 防水層
12 排水層
13 吸水層
13a 吸水シート
13b 合成繊維シート
13c パルプ不織布シート
20 コンクリート接合層
21 網材
22 網目
23 交差部
Claims (7)
- トンネルの一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に張設される防水シートであって、
水の透過を阻止する防水層と、
前記防水層における一次覆工コンクリート側の面に積層され、水を通す排水層と、
前記防水層における二次覆工コンクリート側の面に積層され、水を吸って蓄えるとともに膨潤ゲル化される吸水層と、を備えたことを特徴とする防水シート。 - 前記吸水層が、吸水性繊維の集合体と、前記吸水性繊維どうしを接着するバインダとを含むことを特徴とする請求項1に記載の防水シート。
- 前記吸水性繊維が、セルロース繊維であることを特徴とする請求項2に記載の防水シート。
- 前記バインダが、熱可塑性樹脂を含有する多数の粒状又は粉状の分散体の溶融固化物を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の防水シート。
- 前記バインダが、ホットメルト接着剤を含むことを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の防水シート。
- 前記吸水層が、前記吸水性繊維を20~90重量部、前記バインダを80~10重量部含むことを特徴とする請求項2~5の何れか1項に記載の防水シート。
- 前記吸水層における二次覆工コンクリート側の面には前記二次覆工コンクリートと接合されるコンクリート接合層が積層され、前記コンクリート接合層は、埋入部と、前記埋入部によって画成された充填空間部を有し、前記埋入部が前記二次覆工コンクリート内に埋入され、かつ前記充填空間部に前記二次覆工コンクリートが充填されることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の防水シート。
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