JP7270519B2 - トンネル用防水シート - Google Patents
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特許文献2には、防水シートの片面に注入管を設けておき、アーチ天端部における当該防水シートと二次覆工コンクリートとの間に発生する空洞部に注入管から充填材を充填することが開示されている。
特許文献2の防水シートは、注入管がある程度の管径を要し、その分だけトータルの厚みが増す。このため、二次覆工コンクリートの規定巻厚を阻害しないように、トンネル掘削断面を大きくする必要がある。また、アーチ天端部の空洞を埋めるための充填材料、充填設備、人、時間を要し、コストが上昇する。
本発明は、かかる事情に鑑み、防水機能だけでなく二次覆工コンクリートの強度向上にも寄与でき、更には特別な設備や時間をかけずにアーチ天端部に空洞が形成されるのを防止可能な防水シートを提供することを目的とする。
不透水性の防水層と、
前記防水層における一次覆工側面に積層された透水性の第1排水層と、
前記防水層における二次覆工側面に積層された第2排水層と、
前記第2排水層における二次覆工側面に積層されて二次覆工コンクリートと接する透水層と、
を備え、前記第2排水層が、水を面内方向へ流通可能な面内排水路を有し、前記透水層が、厚さ方向へ貫通して前記面内排水路に連なる多数の透孔を有していることを特徴とする。
二次覆工コンクリートの打設時のブリージング水は、透水層の透孔を透過して、第2排水層の面内排水路を流下して排出される。二次覆工コンクリートのセメント粒子は、透孔を透過するのを阻止又は制限される。これによって、二次覆工コンクリートにおける背面部分(防水シート側ひいては地山側の部分)の強度を向上できる。またブリージング水が、打設中の二次覆工コンクリートの上面に溜まるのを防止でき、ひいては二次覆工コンクリートがアーチ天端部まで十分に打設されないうちに、アーチ天端部がブリージング水による水溜まりで満杯になるのを防止できる。更にその水が時間をかけて引くことで、アーチ天端部に空洞が形成されるのを防止できる。
または前記第2排水層が、前記防水層に面する基材シートと、前記基材シートの面内に分布されるとともに前記透水層へ向かって突出された多数の凸部とを有していることが好ましい。この場合、前記凸部どうし間の空間が、前記面内排水路を構成し、透水層の透孔を透過したブリージング水を排出できる。
<第1実施形態>
図1に示すように、NATMトンネル1は、地山2側の一次覆工コンクリート3と、トンネル内側の二次覆工コンクリート4を含む。一次覆工コンクリート3から地山2にロックボルト6が打設されている。
一次覆工コンクリート3と二次覆工コンクリート4との間に防水シート5が張設されている。
防水層10は、不透水性樹脂シートによって構成され、不透水性を有している。好ましくは、防水層10は、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)からなるシートによって構成されている。
防水層10の材質としては、必ずしもEVAに限られず、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの完全非極性のポリオレフィン樹脂や、PE又はPPにアクリル酸や無水マレイン酸などの極性基(カルボキシル基)をグラフト重合させて極性を持たせ、ひいては接着性を付与させた変性ポリオレフィン樹脂等を用いてもよい。
第1排水層11は、不織布によって構成され、透水性を有している。不織布の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレンなどの化学繊維、ヤシがら、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、ガラス、炭素、金属、セラミックなどの無機繊維などが挙げられ、強度等の観点からは、長繊維の化学繊維が好ましい。
第2排水層12は、不織布によって構成されている。該不織布の繊維どうし間の隙間ないしは網目が、面内排水路12bとなっている。言い換えると、第2排水層12は面内排水路12bを有している。面内排水路12bは、第2排水層12の面内全域に広がり、水を第2排水層12の面内方向(厚さ方向と直交する方向)へ流通させ得る。
第2排水層12が第1排水層11と同種の不織布であってもよく、第1排水層11とは異種の不織布であってもよい。
防水層10と第2排水層12との接合領域は、互いに重ね合わされた面の全域でもよく一部でもよい。
透水層13は、不透水性樹脂からなる基材シート13aに多数の透孔13bを形成してなる多孔シートによって構成されている。多孔シートからなる透水層13は、好ましくは水の透過を許容する一方、コンクリート粒子の透過を阻止又は制限する。
基材シート13aの樹脂材質としては、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド、ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
図2に示すように、各透孔13bは、透水層13を厚さ方向へ貫通している。透水層13の一次覆工側面への透孔13bの開口が、面内排水路12bと連なっている。
透孔13bは、例えば針部を含む電熱線を熱して、前記針部を基材シート13aに突き刺すことによって形成される。透孔13bは、好ましくは直径0.6mm~1.1mm程度、単位面積あたりの個数32000/m2~45000/m2程度、開口率3%~16%程度である。
透水層13が二次覆工コンクリート4と直接的に接している。透孔13bが、二次覆工コンクリート4に向かって開口されている。
地山2を発破や機械掘りで掘削し、掘削面に沿って支保工(図示省略)を建て込み、一次覆工コンクリート3を吹き付け、ロックボルト6を地山2に打ち込む。
続いて、防水シート5を一次覆工コンクリート3の内周面に張設する。このとき、第1排水層11を一次覆工コンクリート3側に向け、透水層13をトンネル内側へ向ける。一定の間隔で釘を打ち付けて、防水シート5を一次覆工コンクリート3に止める。
複数の防水シート5を用意し、各防水シート5をトンネル1の横断方向(周方向)に張り渡す。かつトンネル1の縦断方向(図1の紙面と直交する軸方向)に順次、防水シート5を継ぎ足す。図示は省略するが、隣接する防水シート5,5の防水層10,10の端部どうしは、溶融接合させて一体化する。
すると、二次覆工コンクリート4からのブリージング水(余剰水)が透水層13の透孔13bを透過して、第2排水層12の面内排水路12bに流れ込む。更に面内排水路12b内を防水シート5の面内方向に沿って流下して排出される。
ひいては、二次覆工コンクリート4がアーチ状空間8の天端部(以下「アーチ天端部8a」)まで十分に打設されないうちに、図4(b)において二点鎖線で示すように、アーチ天端部8aが水溜まりWbで満杯になるのを防止できる。したがって、二次覆工コンクリート4をアーチ天端部8aまで確実に打設できる。更に、前記水溜まりWbの水が時間をかけて引くことで、アーチ天端部8aに空洞が形成されるのを防止できる。
通常の防水シートを用いた場合と同じ施工手順で二次覆工コンクリート4を打設すればよく、アーチ天端部8aのための特別な充填材料、充填設備、充填時間などを要さない。したがって、施工コストの増大を回避できる。
防水シート5は比較的簡単な構造であるから安価に作製することができる。したがって、施工コストを一層節減できる。
このようにして打設された二次覆工コンクリート4のセメント強度は、NETIS KT-980126-Vのコンクリートに対し1.4倍~2.3倍の強度増大が確認された。
ブリージング水及び空気が通過した後の透孔13bにはセメントが入り込んで充填される。これによって、防水シート5の透水層13と二次覆工コンクリート4とを物理的に密着させることができ、防水シート5と二次覆工コンクリート4の間に空隙が形成されるのを回避できる。
<第2実施形態>
図5に示すように、第2実施形態の防水シート5Bにおいては、第2排水層20が、不織布に代えて樹脂シートによって構成されている。第2排水層20の樹脂材質は、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド、ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
図5に示すように、各凸部22は、基材シート21から透水層13へ向かって突出されている。凸部22の突出端部が透水層13と接している。少なくとも一部の凸部22の突出端部が、透水層13と溶着や接着等の接合手段によって接合されている。凸部22は、中実でもよく、中空部を有し、該中空部にエア等のガスが充填されていてもよい。
例えば、第2排水層12の材質として、織布が用いられていてもよい。織布の両面の凹凸及び網目によって面内排水路12bが構成されていてもよい。
第2排水層12が立体的な網状体で構成されて三次元網構造になっていてもよい。
2 地山
3 一次覆工コンクリート
4 二次覆工コンクリート
5,5B 防水シート
6 ロックボルト
7 型枠
8 アーチ状空間
8a アーチ天端部
10 防水層
11 第1排水層
12 第2排水層
12b 面内排水路
13 透水層
13a 基材シート
13b 透孔
20 第2排水層
21 基材シート
22 凸部
23 面内排水路
Claims (3)
- トンネルの一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に張設される防水シートであって、
不透水性の防水層と、
前記防水層における一次覆工側面に積層された透水性の第1排水層と、
前記防水層における二次覆工側面に積層された第2排水層と、
前記第2排水層における二次覆工側面に積層されて二次覆工コンクリートと接する透水層と、
を備え、前記第2排水層が、水を面内方向へ流通可能な面内排水路を有し、前記透水層が、厚さ方向へ貫通して前記面内排水路に連なる多数の透孔を有していることを特徴とする防水シート。 - 前記第2排水層が、不織布によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の防水シート。
- 前記第2排水層が、前記防水層に面する基材シートと、前記基材シートの面内に分布されるとともに前記透水層へ向かって突出された多数の凸部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の防水シート。
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