JP7158289B2 - トンネル用防水シート及びその製造方法 - Google Patents
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本発明は、かかる事情に鑑み、背面平滑型トンネルライニング工法等によるトンネル施工における二次覆工コンクリートの打設時に、防水シート内の空気を確実かつ容易に放出させることを目的とする。
不透水シート材と、
前記不透水シート材における前記一次覆工と面する背面に重ねられて接合された透水シート材と、
前記トンネルの頂部との対応部分に設けられた空気抜き路と、
を備え、前記空気抜き路が、当該防水シートの前記幅方向の一端部から他端部まで延びていることを特徴とする。
当該防水シートを含むトンネルの施工時には、二次覆工コンクリートの打設に伴って、防水シート内の空気が上昇して空気抜き路へ流入し、該空気抜き路を伝って放出される。空気抜き路が防水シートの幅方向に沿って延びているために防水シート内の空気を万遍無く放出させることができる。これによって、トンネル頂部に大きな空気溜まりが形成されるのを防止でき、二次覆工コンクリートの打設厚さを確保できる。かつ、二次覆工の構築中に空気抜き装置を封止する等の特別な作業は不要であり、通常のトンネルと同様の施工作業を行えば済む。
これによって、防水シート内の間の空気を確実に放出させることができる。
これによって、防水シートの前記幅方向の一端部から他端部まで延びる空気抜き路を形成できる。空気抜きのための専用部材を要さず、材料コストの増大を抑制できる。
これによって、トンネル頂部に空気抜き路を確実に形成でき、防水シート内の空気を空気抜き路から確実に放出させることができる。
これによって、裏込め材の充填工程の際、トンネル頂部における透水シート材に裏込め材が浸透しにくい。このため、トンネル頂部における透水シート材の内部や樹脂フィルムと透水シート材との間に空気抜き路を形成できる。
これによって、前記対応部分においては接合部が途切れることによって、空気抜き路が形成される。
<防水シート10>
図1は、本発明の第1実施形態に係るトンネル用防水シート10を示したものである。防水シート10は、3つ(複数)のシート部10aを含む。図2に示すように、各シート部10aは、一定幅の長い帯状になっている。シート部10aの長さ寸法は、トンネル1(図6)のアーチ部の周長に合わせられている。シート部10aの幅寸法は、例えば2メートル程度である。
不透水シート材11の材質としては、高い不透水性を有する樹脂が好ましく、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が挙げられる。好ましくは、不透水シート材11の材質は、EVAである。
なお、不透水シート材11と透水シート材12との接合手段は、熱溶着に限られるものではなく、接着剤を用いてもよい。
前記隣接する2つのシート部10aの透水シート材12どうしが互いに重ねられて溶着や接着などによって接合され、隣接透水材接合部22が形成されている。
各シート部10aの主接合部20とシート内継ぎ目13との間の部分における不透水シート材11と透水シート材12どうしが、溶着や接着などによって接合され、補間接合部24が形成されている。
防水シート10の幅方向の両端部においては、不透水シート材11と透水シート材12とが接合されておらず、互いに解放されている(図3参照)。
図1及び図4(b)に示すように、空気抜き路30はシート内間隙31,32の長さ方向の中央部と交差している。これによって、空気抜き路30とシート内間隙31,32とが互いに合流している。
図5に示すように、防水シート製造装置40のロール41から不透水シート材11を繰り出すとともに、ロール42から透水シート材12を繰り出す。これらシート材11,12を長さ方向に沿って順次重ね合わせるとともに、溶着ノズル43から熱風44(溶着熱)をシート材11,12の互いに重ね合わさろうとする部分どうし間に供給し、これらシート材11,12どうしを熱溶着する。これによって、主接合部20を形成する。
シート部10aの長さ方向の中央部の通過後は、溶着ノズル43を元の前進位置(図5の実線)へ前進させることで、シート材11,12どうしの溶着を再開する。溶着ノズル43からの熱風44の吹き出し量は、溶着ノズル43の進退に拘わらず一定に保持することができる。したがって、溶着ノズル43からの熱風吹き出し動作を安定させることができる。
これら接合部21~24のうち、シート材11,12どうしの接合部23,24については、防水シート10の長さ方向の中央部(トンネル頂部対応部分)で途切れさせる。これによって、隣接するシート部10aの空気抜き路30どうしが連なり、該空気抜き路30が防水シート10を幅方向に貫通する。かつ、シート内間隙31,32が空気抜き路30と連通される。
このようにして、トンネル用の防水シート10が作製される。
図6は、前記防水シート10を含むトンネル1を示したものである。NATM工法によって、地山2が掘削されてトンネル1が形成されている。トンネル1は、一次覆工3と、裏込め材4と、防水シート10と、二次覆工6を含む。地山内壁2aに一次覆工3の吹付コンクリートが吹き付けられている。一次覆工3の内周に沿って防水シート10が張設され、かつ一次覆工3と防水シート10との間にモルタル等の裏込め材4が充填されている。更に防水シート10の内周側に鉄筋コンクリートからなる二次覆工6が構築されている。防水シート10が裏込め材4と二次覆工6との間に挟まれている。
不透水シート材11は、地山2(図6)からの湧水がトンネル1内に流入するのを阻止する防水機能を担っている。
透水シート材12を構成する不織布の内部に裏込め材4の一部4bが含浸されている。これによって、防水シート10が裏込め材4とくっ付いている。透水シート材12は、裏込め材4との固着機能、排水機能、緩衝機能等を担っている。
地山2を掘削しながら、地山内壁2aに吹付コンクリートを吹き付けることによって、一次覆工3を構築する。かつ地山2にロックボルト(図示せず)を打設する。
図6(a)及び図8(a)に示すように、1枚の防水シート10の幅寸法(例えば6メートル程度)に相当する掘進スパンだけ、地山2の掘削及び一次覆工3の構築が進んだら、当該掘進スパン(以下「切羽側掘進スパンS0」)の一次覆工3の内周壁に沿うように半円筒状の裏込め用型枠7(図6(a)の二点鎖線)を設置する。裏込め用型枠7の外周面に1枚の防水シート10を張り渡す。防水シート10の不透水シート材11は裏込め用型枠7の外周面に当て、かつ透水シート材12は一次覆工3へ向ける。
切羽側掘進スパンS0の防水シート10と一次覆工3との間の隙間5における切羽側端部(図8(a)において左端部)には、妻枠7eを設ける。
なお、図8(a)においては、防水シート10の厚みが誇張されている。かつ図8(b)においては、防水シート10及び空気抜き路30の厚みが誇張されている。実際の裏込め用型枠7の外周の型面は、凹凸の無い円筒面である。
裏込め材4の充填後、裏込め用型枠7を撤去し、又は掘進前方(図8の左方)へ移送する。
防水シート10内の間隙31~33、特に合掌貼り内間隙33内には、空気層19が形成されやすい。
そして、二次覆工コンクリート6aを、二次覆工用型枠8と防水シート10との間のトンネル底部側から頂部へ向けて打設する。
さらに、該空気は、空気抜き路30内を切羽側(図8(b)において左側)へ流れ、空気抜き路30における切羽側端部30eから放出されるか、二次覆工コンクリート6aが未だ打設されていない掘進スパンの間隙31,32,33内を下降して、これら間隙31,32,33の下端部から放出される。空気抜き路30が防水シート10の幅方向(トンネル軸方向)に沿って延びているために、防水シート10内の空気を万遍無く放出させることができる。
これによって、トンネル1の頂部における防水シート10内に空気が溜まるのを防止でき、トンネル1の頂部の不透水シート材11がトンネル内周側へ膨らむのを防止できる。したがって、二次覆工コンクリートの打設厚さを確保できる。
このようにして、トンネル1が構築される。
当該防水シート10を用いたトンネル施工方法によれば、トンネル施工時に空気抜き作業や空気抜き装置の封止作業などの特別な作業は不要であり、通常のトンネルと同様にしてトンネル1を施工できる。
<第2実施形態>
図10及び図11は、本発明の第2実施形態を示したものである。
第2実施形態の防水シート10Bにおいては、透水シート材12の背面(図11において上面)におけるトンネル頂部対応部分に、空気抜き路画成部材として、帯状の樹脂フィルム50が設けられている。樹脂フィルム50の材質は、裏込め材4の透過を阻止でき、かつ所要強度を有するものであれば特に限定が無く、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などであってもよい。
なお、防水シート10Bにおいては、接合部20,23,24がトンネル頂部対応部分においても途切れることなく、防水シート10Bの長手方向に連続している。
図11に示すように、続いて、隙間5に裏込め材4を充填すると、トンネル頂部1a以外の部分においては、裏込め材4の一部4bが透水シート材12に浸み込む。一方、トンネル頂部1aにおいては、裏込め材4が樹脂フィルム50に遮られることで、透水シート材12に浸み込みにくい。また、樹脂フィルム50と透水シート材12との間にも裏込め材4が入り込みにくい。
したがって、二次覆工コンクリート6aの打設の際、防水シート10B内の合掌貼り内間隙33等の空気層19の空気を空気抜き路53から放出することができる。
図12及び図13は、本発明の第3実施形態を示したものである。
第3実施形態の防水シート10Cにおいては、透水シート材12の背面(図13において上面)におけるトンネル頂部対応部分に、空気抜き路画成部材60が設けられている。 図12に示すように、空気抜き路画成部材60は、防水シート10Cの幅方向の一端部から他端部まで延びている。空気抜き路画成部材60の幅寸法W60は、好ましくはW60=5cm~40cm程度、より好ましくはW60=10cm程度である。
なお、防水シート10Cにおいても、防水シート10Bと同様に、接合部20,23,24がトンネル頂部対応部分において途切れることなく、防水シート10Bの長手方向に連続している。
図13に示すように、続いて、隙間5に裏込め材4を充填すると、トンネル頂部1a以外の部分においては、裏込め材4の一部4bが透水シート材12に浸み込む一方で、トンネル頂部1aにおいては、裏込め材4が空気抜き路画成部材60の表層材62に遮られることで、網状体61及び透水シート材12に浸み込みにくい。
したがって、二次覆工コンクリート6aの打設の際、防水シート10C内の合掌貼り内間隙33等の空気層19の空気を空気抜き路63から放出することができる。
例えば、第1実施形態の防水シート10の製造時、トンネル頂部対応部分では溶着熱の供給を停止してもよい。
1a トンネル頂部
3 一次覆工
4 裏込め材
6a 二次覆工コンクリート
10 防水シート
10a シート部
10B,10C 防水シート
11 不透水シート材
12 透水シート材
15 シート間継ぎ目
16 合掌貼り部
19 空気層
20 主接合部
30 空気抜き路
33 合掌貼り内間隙
40 防水シート製造装置
43 溶着ノズル
44 熱風(溶着熱)
10B 防水シート
50 樹脂フィルム(空気抜き路画成部材)
53 空気抜き路
60 空気抜き路画成部材
61 網状体
62 表層材
63 空気抜き路
Claims (7)
- 幅方向をトンネル軸方向へ向け、かつ長さ方向をトンネル周方向へ向けて、トンネルの一次覆工の内周に沿って張設されるとともに前記一次覆工との間に裏込め材が充填される防水シートであって、
不透水シート材と、
前記不透水シート材における前記一次覆工と面する背面に重ねられて接合された透水シート材と、
前記トンネルの頂部との対応部分に設けられた空気抜き路と、
を備え、前記空気抜き路が、当該防水シートの前記幅方向の一端部から他端部まで延びていることを特徴とする防水シート。 - 前記空気抜き路が、前記不透水シート材と前記透水シート材との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防水シート。
- 前記不透水シート材と前記透水シート材とが前記長さ方向に延在する接合部を介して接合され、前記対応部分においては前記接合部が途切れることによって前記空気抜き路が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の防水シート。
- 前記透水シート材の背面における前記対応部分に、前記空気抜き路を画成する空気抜き路画成部材が前記幅方向の一端部から他端部まで延びるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防水シート。
- 前記空気抜き路画成部材が、帯状の樹脂フィルムを含むことを特徴とする請求項4に記載の防水シート。
- 前記空気抜き路画成部材が、網状体と、前記網状体に被さる表層材とを含むことを特徴とする請求項4に記載の防水シート。
- 請求項3の防水シートの製造方法であって、前記不透水シート材と前記透水シート材を溶着熱を供給しながら前記長さ方向に順次重ね合わせるとともに、前記対応部分では前記溶着熱の供給度を低下又は停止させることを特徴とする防水シートの製造方法。
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