JP6045739B1 - トンネル用防水シート及びトンネルの防水構造 - Google Patents
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Abstract
Description
この工法用の防水シートは、例えば、表面にPVA(ポリビニルアルコール)を化学的に結合(グラフト重合等)させた不透水層と、不織布製の裏面緩衝層との二層構造になっている。不透水層が二次覆工に向けられ、裏面緩衝層が一次覆工に向けられる。裏面緩衝層が裏込め材に固着される。
本発明は、かかる事情に鑑み、いわゆる背面平滑型トンネルライニング工法等に用いられる防水シート(すなわちトンネルの一次覆工に沿って張設され、かつ前記一次覆工との間に充填される裏込め材と二次覆工との間に挟まれる防水シート)において、裏込め材との固着性能を確保しながら排水性能を確実に発現させ、更に材料コストが嵩むのを防止することを目的とする。
本発明は、トンネルの一次覆工に沿って張設され、かつ前記一次覆工との間に充填される裏込め材と二次覆工との間に挟まれる防水シートであって、
前記二次覆工に面する不透水性シート部と、前記不透水性シート部に積層された透水性シート部とを備え、前記透水性シート部が、
前記裏込め材が浸透して固着可能な不織布からなる固着層と、
前記固着層に積層された網状体からなる導水層と、
前記導水層と前記不透水性シート部との間に積層された不織布からなる裏面緩衝層と、
を含み、前記固着層は、厚みが2mm〜5mm、目付が200g/m2〜500g/m2であることを特徴とする。
図1に示すように、地山2が掘削されてトンネル1が形成されている。トンネル1は、地山2側から一次覆工3と、ライニング層4と、防水シート5と、二次覆工6を含む。地山掘削面2aに沿って一次覆工3が構築されている。一次覆工3は、鋼製支保工(図示省略)と、吹付コンクリート3bを含む。一次覆工3に沿って防水シート5が張設され、この一次覆工3と防水シート5との間にライニング層4が形成されている。ライニング層4は、例えばモルタル4bからなる凝固性の裏込め材によって構成されている。ライニング層4に防水シート5が固着されている。更に二次覆工6が構築されることで、防水シート5がライニング層4と二次覆工6との間に挟まれている。二次覆工6は、鉄筋コンクリート又は無筋コンクリートにて構成されている。
不透水性シート部10の材質は、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の完全非極性のポリオレフィン樹脂が挙げられる。さらに、PEやPPにアクリル酸や無水マレイン酸などの極性基(カルボキシル基)をグラフト重合させて極性を持たせることで接着性を付与させた変性ポリオレフィン樹脂を用いてもよい。好ましくは、不透水性シート部10の材質は、EVAである。不透水性シート部10の厚みは、好ましくは、0.4mm〜3.0mm程度である。
なお、図2において、防水シート5の各層10,21,22,23の厚みは誇張されている。
固着層21の厚みは、2mm〜5mm程度が好ましい。固着層21の目付は、200g/m2〜500g/m2程度が好ましい。固着層21の密度は、80kg/m3〜120kg/m3程度が好ましい。
固着層21の厚みが2mm未満、目付が200g/m2未満であると、モルタルが過度に浸透する可能性が高くなる。固着層21の厚みが5mm超、目付が500g/m2超であると、材料コストが嵩む。
図3において、線状体22aの太さ(直径)は、0.5mm〜3mm程度が好ましい。網目22bの大きさ(隣接する2つの交差部22c,22cどうし間の平均距離)は0.5mm超〜20mm程度が好ましい。
導水層22と裏面緩衝層23とは、全面的に接合一体化されている。
裏面緩衝層23と不透水性シート部10、ひいては透水性シート部20と不透水性シート部10とは、側端部を除き全面的又は部分的に接合一体化されている。詳細な図示は省略するが、透水性シート部20と不透水性シート部10の側端部どうしは、先行又は後続の防水シート5との継ぎ足しのために自由(非接合)になっている。
層21,22,23,10どうしの接合方法は、特に限定はなく、公知の接合方法を適用することができ、例えばホットメルト接着法を適用してもよい。
防水シート5は、メートルオーダーでは概略平坦である。一方、図4に示すように、数ミリメートル〜数センチメートルオーダーで見ると、網状体22xが凸凹にうねっているために、防水シート5全体も凸凹にうねっている。
図1に示すように、地山2を掘削し、地山掘削面2aに吹付コンクリート3bを吹き付けることによって、一次覆工3を構築する。
次に、一次覆工3の内周壁3aに沿うように半円筒状の型枠(図示省略)を設置する。
防水シート5は、ロール状態でトンネル施工現場へ搬入する。このロール状の防水シート5の端部をクランプして、トンネル形状(半円筒状)の型枠の周方向の一端部から繰り出し、前記型枠の外周面に張り渡す。このとき、不透水性シート部10を前記型枠の外周面に当て、かつ透水性シート部20を一次覆工3へ向ける。不透水性シート部10は、コンクリートの品質に影響ない程度で凸凹にうねっているため(図4)、凸の部分だけが前記型枠の外周面と接触する。要するに、不透水性シート部10と前記型枠の外周面との接触面積が小さくなる。したがって、前記張り渡しの際、防水シート5と前記型枠との間の摩擦抵抗を小さくできる。この結果、不透水性シート部10の表面(前記型枠との接触面)に傷が付きにくくなる。また、前記クランプが防水シート5から外れるのを防止でき、防水シート5を型枠上にスムーズに張り渡すことができる。
このようにして、防水シート5が、一次覆工3に沿って張設される。防水シート5と一次覆工3との間には隙間4aが形成される。固着層21が隙間4aを介して一次覆工3と対面される。
一方、導水層22の内部がモルタル4b’で詰まるのを防止できる。裏面緩衝層23についても同様にモルタル4b’で詰まるのを防止できる。
従来この種のトンネルに一般的に用いられていた、不透水性シート部と不織布製裏面緩衝層との2層のみからなる防水シートと比べ、導水層22を有する防水シート5は、排水性能を格段と高めることができる。
さらに、湧水中に土砂や石灰等の固形成分が混じっていたときは、固着層21によって固形成分を捕捉できる。したがって、導水層22の目詰まりを長期間にわたって防止又は抑制でき、排水機能を十分に維持することができる。
加えて、裏面緩衝層23によって、ライニング層4ひいては吹付けコンクリート3b(又は地山2)と二次覆工6とを十分に縁切りできる。或いは、ライニング層4ひいては吹付けコンクリート3b(又は地山2)による二次覆工6の拘束を緩和できる。したがって、二次覆工6にクラック等が生じるのを防止又は抑制できる。
例えば、ライニング層4を構成する裏込め材は、モルタル4bに限られず、合成樹脂や接着剤等であってもよい。網状体22xの線状体22aは、金属線であってもよく、樹脂被覆の金属線であってもよい。
<試料>
図5に示すように、固着層21と導水層22と緩衝層23を積層してなる複数種(表1〜表3のno.A〜O)の透水性シート部の試料20Xを用意した。
(1)固着層21
各試料20Xの固着層21として、ポリエステル製の不織布を用いた。
試料20Xの固着層21の厚みは、1.2mm、2.2mm、3.0mm、4.0mm、5.0mmの5通り、目付は、120g/m2、220g/m2、300g/m2、400g/m2、500g/m2の5通りであった。固着層21の密度は、100kg/m3程度であった。
(2)導水層22
試料20Xの導水層22の目付は、250g/m2、350g/m2、450g/m2の3通りであった。線状体22aの材質は、ポリプロピレンであり、線状体22aの直径は、0.8〜0.9mm程度であった。
(3)裏面緩衝層23
各試料20Xの裏面緩衝層23として、ポリエステル製の不織布を用いた。
試料20Xの裏面緩衝層23の厚みは、3mmであった。この厚みは、裏面緩衝層23の緩衝性能を維持可能な下限厚みである。
(4)寸法・形状
各試料20Xは、縦300mm×横180mmの長方形であった。
この試料20Xをそれぞれ塩化ビニル製の短管31の内周面に粘着テープ(図示省略)で貼り付けた。緩衝層23を短管31の内周面に当てることで、固着層21が短管31の内部空間に面するようにした。
1つの短管31あたり2つの試料20X,20Xを180度離して設けた。
短管31の内直径は150mmであり、高さは400mmであった。
短管31を鉛直に立て、下端開口をキャップ33で塞いだ。
更に、短管31の上端部に塩化ビニル製の直管32を鉛直に継ぎ足した。直管32の内直径は短管31と等大であり、直管32の長さは1500mmであった。短管31と直管32の外周面間には継手管34を跨らせてシールした。
直管32の上端開口から短管31及び直管32の内部にモルタル4bを打設充填した。
モルタル4bのセメントと砂と水の重量比は、
セメント:砂:水=1:3:0.6であった。
なお、モルタル4bの余剰水の排出を再現するために、短管31の周壁の下端部近くには小孔31cを貫通形成しておき、この小孔31cが試料20Xの下側部で覆われるようにした。
モルタル4bの打設高さは、試料20Xの上端部からモルタル4bの上面までが1.5mとなるようにした。この打設高さのモルタル4bから試料20Xにかかる圧力は、実際のトンネル施工において防水シートにかかるモルタル打設圧の上限付近の値に相当する。
打設から4時間後、短管31を撤去して、試料20Xをモルタル4bから剥がした。なお、打設から4時間経過後のモルタル4bは、流動性が殆ど無くなり、試料20Xの内部への浸透現象が終わっていると考えられる。
(1)固着性能
各試料20Xについて、固着層21を目視観察した。
その結果、すべての試料20X(no.A〜O)の固着層21の全面が、当初の白色系から黒色系へ変わっており、モルタルが少なくとも固着層21内に浸み込んだことが確認された。このことから、これら試料20Xのモルタルに対する固着性能は良好であると考えられる。
(2)浸透性能
各試料20Xについて、裏面緩衝層23を目視観察した。
試料no.A〜C(固着層21の厚み1.2mm、目付120g/m2)については、裏面緩衝層23の表面に黒ずんだ部分が出来ていた。この部分においては、モルタルが裏面緩衝層23まで達しているものと認められるから、これら試料no.A〜Cの浸透性能は過度と判定した。
試料no.D〜F(固着層21の厚み2.2mm、目付220g/m2)については、裏面緩衝層23の表面に少し黒ずんだ部分が出来ており、浸透性能はやや過度と判定したが、試料no.A〜Cと比べると黒ずみは少なく、浸透性能としては許容範囲であった。
試料no.G〜O(固着層21の厚み3mm〜5mm、目付300g/m2〜500g/m2)については、裏面緩衝層23の表面の黒ずみがあまり見られず、浸透性能は良好であった。
よって、固着層21の厚みが2mm程度以上、ないしは固着層21の目付が200g/m2程度以上であれば、固着性能及び浸透性能(ひいては排水性能)を両立できることが確認された。
図6に示すように、例えば試料no.H(固着層21の厚み3mm、目付350g/m2)においては、モルタルが固着層21の厚み方向の途中まで浸み込み、かつ固着層21を通り抜けていないことが観察された。
各試料20Xの下側部及び上側部をそれぞれ100mm角に切り取ることで、各試料20Xから2つの試料片20x(図7)を得た。
図7(a)に示すように、各試料片20xを、一対の透明なアクリル製の立て板41,41の間に挟み付けた。
図7(b)に示すように、試料片20xの左右両側縁は、一対の止水テープ42,42によって止水しておいた。かつ、前記一対の止水テープ42,42を立て板41の上下の端縁まで延長させることで、一対の立て板41,41と一対の止水テープ42,42との間に、鉛直かつ扁平な水路43を画成し、この水路43の上下方向の中央部に試料片20xが介在されるようにした。さらに、図7(a)に示すように、各立て板41における前記水路43を画成する部分の上側部分を斜めにカットしておくことで、前記水路43の試料片20xよりも上側部分に上方へ向かって拡開する水入れ口43aを設けておいた。更に、立て板41における水入れ口43aの中間部の高さには基準線L4を設けておいた。試料片20xの上端縁から基準線L4までは、75mmであった。
一対の立て板41,41間に試料片20xを挟み付けた後、シリンダ44によって一対の立て板41,41を互いに接近する方向へ加圧した。加圧の大きさは、0.5kg/cm2であった。この値は、実際の施工済みトンネルにおいて防水シートにかかる圧力に対応する。
計量カップ45に水w 500mlを用意し、かつ別容器(図示省略)にも水を用意した。
前記加圧を維持した状態で、別容器の水を水入れ口43aに注いだ。水位は、基準線L4を上回るようにした。水路43の下方の受け容器46に水が落下するのを確認したら、別容器からの注水を止めた。
続いて、水入れ口43aの水位が基準線L4に達した時点を計測開始時とし、この計測開始時以降、前記計量カップ45の水wを水入れ口43aに注ぎ続けることで、水入れ口43aの水位が基準線L4の高さに維持されるようにした。
そして、計測開始時から計量カップ45が空になった時点までの時間を計測した。
各試料20Xの2つの試料片20x,20xの計測結果を平均し、かつダルシーの法則に従って透水係数を算出し、更に高さ8mmのトンネルに相当する条件下でのシート幅1mあたりの透水流量(cm3/min/m)に換算した。
結果を、表1〜3の排水性能の欄に示す。同欄の数値は、トンネルの幅方向の両側部からの透水流量である。
比較例として、厚さ3mmの不織布だけからなる比較試料を用い、前記実施例の試料20X(no.A〜O)と同様のモルタル打設及び排水性能試験を行った。排水性能すなわち透水流量は、226.0(cm3/min/m)であった。
以上の結果から、透水性シート部20を固着層21と導水層22と裏面緩衝層23の三層構造にすることによって、排水性能を格段と向上できることが確認された。
しかも、導水層22の目付を300g/m2以上とすることによって、排水性能を十分に高くできることが確認された。
2 地山
2a 地山掘削面
3 一次覆工
3b 吹付コンクリート
4 ライニング層
4a 隙間
4b モルタル(裏込め材)
4b’ 固着層内のモルタル(裏込め材)
5 防水シート
6 二次覆工
10 不透水性シート部
20 透水性シート部
21 固着層
22 導水層
22a 線状体
22b 網目
22c 交差部
22x 網状体
23 裏面緩衝層
Claims (3)
- トンネルの一次覆工に沿って張設され、かつ前記一次覆工との間に充填される裏込め材と二次覆工との間に挟まれる防水シートであって、
前記二次覆工に面する不透水性シート部と、前記不透水性シート部に積層された透水性シート部とを備え、前記透水性シート部が、
前記裏込め材が浸透して固着可能な不織布からなる固着層と、
前記固着層に積層された網状体からなる導水層と、
前記導水層と前記不透水性シート部との間に積層された不織布からなる裏面緩衝層と、
を含み、前記固着層は、厚みが2mm〜5mm、目付が200g/m2〜500g/m2であり、前記固着層における厚み方向の途中より前記一次覆工側の部分は、前記裏込め材が浸透されて凝固され、前記固着層における前記途中から前記導水層側の部分は、前記一次覆工側の部分よりも裏込め材の浸透度が低いか裏込め材が浸透していないことを特徴とする防水シート。 - 前記導水層の目付が、300g/m2〜500g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の防水シート。
- トンネルの一次覆工に沿って張設された防水シートと、前記一次覆工と前記防水シートとの間に充填された裏込め材とを備え、前記防水シートが前記裏込め材と二次覆工との間に挟まれており、
前記防水シートが、前記二次覆工に面する不透水性シート部と、前記不透水性シート部に積層された透水性シート部とを備え、前記透水性シート部が、
前記裏込め材が浸透して固着可能な不織布からなる固着層と、
前記固着層に積層された網状体からなる導水層と、
前記導水層と前記不透水性シート部との間に積層された不織布からなる裏面緩衝層と、
を含み、前記固着層は、厚みが2mm〜5mm、目付が200g/m 2 〜500g/m 2 であり、前記固着層における厚み方向の途中より前記一次覆工側の部分は、前記裏込め材が浸透されて凝固され、前記固着層における前記途中から前記導水層側の部分は、前記一次覆工側の部分よりも前記裏込め材の浸透度が低いか裏込め材が浸透していないことを特徴とするトンネルの防水構造。
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