JP6771500B2 - 防水シート敷設装置 - Google Patents
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Description
特許文献1には、シート防水工において、移動台車の外周面に防水シートを展開し、防水シートと一次覆工面の間に凝固剤を注入して、防水シートをトンネル内壁に固着させる技術が開示されている。
また、特許文献2及び3には、シート防水工において防水シートを移動台車の外周面に展開する具体的な技術が開示されている。
特許文献2には、ロール状に巻いた防水シートを送りローラ付きの受台に載置し、これを移動台車側方の地盤に配置し、防水シートを送りローラで繰り出しながら反対側へウインチで牽引することで移動台車の外周面に沿って展開する、周方向展開型の技術が開示されている。
特許文献3には、長手方向に内外に折り畳んだのち幅方向に内外に折り畳んだ防水シートを移動台車側方の前端部に配置し、これを反対側へウインチで牽引して移動台車の外周に掛け渡し、続いて移動台車の前端部から後方へ展開して展開する、長手方向展開型の技術が開示されている。
防水シートは移動台車の外周面に面接触するため、防水シートが広がるに従って防水シートと外周面の間の摩擦抵抗が増大する。また、トンネルの坑内は湿度が高く、移動台車の外周面は水濡れしやすいため、防水シートが大気圧や表面張力によって濡れた移動台車の外周面に張り付いて拘束されてしまう。
<1>防水シートの拘束を防止するには、外周面の水滴をウエスで拭いたり、作業員の手作業によってシートを展開するなどの作業が必要であるため、施工性が非常に悪い。
<2>外周面上に拘束された防水シートを強引にウインチ等で牽引すると、防水シートが破損してしまう。よって牽引できる防水シートの面積に事実上の限界があり、一度に長スパンの防水シートを敷設することができない。
<3>昨今の山岳トンネル工事では急速施工が求められており、これに応じて掘削や二次覆工などの各工程において施工の迅速化が進んでいるにもかかわらず、シート防水工がボトルネックとなって工事全体の迅速化を妨げている。
この構成によれば、防水シート展開時における防水シートの拘束を防ぐとともに、動摩擦を低減して展開作業を容易にすることができる。
この構成によれば、支持凸部の点接触によって防水シートの動摩擦を低減することができる。
この構成によれば、送り面が防水シートを円滑に後方に送り出すため、防水シートの展開作業がより容易になる。
この構成によれば、防水シートを枠体の長手方向にガイドするため、防水シートが周方向に偏るのを防ぐことができる。
この構成によれば、枠体が高い円滑性を有するため、防水シートの展開作業をより容易にすることができる。
この構成によれば、必要なタイミングにおいて防水シートの拘束を解除することができる。
<1>支持凸部や支持レールの隙間に空隙部を確保可能な構造であるため、防水シートの展開時、大気圧による防水シートの張り付きを防ぐことができる。
<2>防水シートを、支持凸部や支持レールにより部分支持する構造であるため、防水シート展開時の動摩擦を低減でき、展開作業が容易になる。
<3>防水シートの展開を容易にするとともに拘束を防ぐことができるため、従来困難であった長スパンの防水シートを一度に敷設することができる。このため、施工効率が非常によい。
<4>全体工程のボトルネックとなっていたシート防水工の施工効率が高まることで、全体工期が短縮され急速施工を実現できる。
<1>全体の構成(図1)。
本発明の防水シート敷設装置1は、一次覆工後のトンネル内壁に防水シートSを敷設する装置である。ここで、防水シートの敷設とは、枠体20の外周面に展開した防水シートSを、充填材を介してトンネルの一次覆工面に固着することを意味する。
防水シート敷設装置1は、トンネル内を長手方向に移動可能な基台10と、基台10の上部を覆う略半筒形の枠体20と、枠体20に設けた部分支持構造30と、を少なくとも備える。
本例では、基台10と枠体20に、移動式型枠(スライドセントル)を採用し、これに部分支持構造30と牽引装置40を付設して防水シート敷設装置1を構成する。
本発明の防水シート敷設装置1は、枠体20に部分支持構造30を備えることにより、防水シートSの展開時、枠体20と防水シートSの接触面積を減少させて動摩擦抵抗を減らすと共に、部分支持構造30内に空隙部Aを確保することで、大気圧や表面張力による防水シートSの貼り付けを防止可能な点に特徴を有する。
本発明の防水シート敷設装置1にて敷設する防水シートSについて説明する。
本例では、防水シートSとして、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)製シートの一面に長繊維不織布を張り合わせたシート材を採用する。
防水シートSの幅は枠体20の外周長に対応し、長さは枠体20の長さ、つまり枠体20の前端から後端までの長さに対応する。
なお、防水シートSの構成はこれに限られず、所定の遮水性能と強度を備えれば、他の公知の各種シート材を採用してもよい。
基台10は、防水シート敷設装置1の基部である。
基台10は、概ね門形の複数の支持枠11を長手方向に連結してなる枠状体である。
支持枠11の上方には枠体20を昇降自在に支持する複数の支柱12を有する。
支持枠11の側方には枠体20を拡幅自在に支持する複数の支持腕13を有する。
支持枠11の下方にはそれぞれ車輪14を有する。車輪14によって地盤に敷いたレール上をトンネルの長手方向に沿って走行可能である。
基台10のその他の構成は、いわゆるスライドセントルの基台として公知なのでここでは詳述しない。
枠体20は、防水シート敷設装置1の外殻である。
枠体20は、概ね略半筒状の形状を呈し、トンネルの一次覆工面に対応した外周面を有する。
枠体20は、両肩部及び両下端部付近でヒンジ結合した複数の分割枠体からなり、基台10の支持腕13を伸長することによって、枠体20を拡幅することができる。
枠体20の外周面には部分支持構造30を設ける。
枠体20のその他の構成は、いわゆるスライドセントルの枠体として公知なのでここでは詳述しない。
部分支持構造30は、枠体20の外周面上に防水シートSを展開する工程において、防水シートSの内面を部分的に支持する構造である。
本例では、部分支持構造30として、枠体20の外周面全面に複数の支持凸部31を設ける。具体的には、一面に複数の支持凸部31を連続配置したシート体を枠体20の外周面に固着する。
本例では支持凸部31について説明するが、部分支持構造30はこれに限られず、例えば、線状、球状、格子枠状、ローラ状、凹凸を有する織物状などの構造であってもよい。要は防水シートSの内面を部分的に支持できる構造であればよい。
なお、枠体20の外周面に部分支持構造30を「設ける」とは、部分支持構造30を有するシートを枠体20の外周面に貼り付けることのほか、枠体20の外周面に部分支持構造30を直接付設することや、枠体20自体の表面形状を部分支持構造30に加工すること等を含む。
また、部分支持構造30は、枠体20の外周面の全面でなく、肩部より上部のみに設ける構成であってもよい。少なくとも枠体20の頂部を含む一部に設ければよい。
支持凸部31は、防水シートSを点接触にて支持する構成要素である。
本例では、支持凸部31として、略円錐状のコーンを採用する。
支持凸部31は、熱可撓性の樹脂シート上にプレス加工で一体成型され、所定間隔で千鳥状に配置される。
隣り合う支持凸部31の間には一定の空間が延在し、上部に防水シートSを支持した状態において、この空間が防水シートSの張り付きを防止する空隙部Aとなる。
支持凸部31は略円錐状であるから、その周面には鉛直軸から枠体20の後方に向かって角度α°傾斜した送り面31aが形成される。
送り面31aによって、展開時、防水シートSを円滑に送り出すことができる。
本例の防水シート敷設装置1は、防水シートSを枠体20の外周面に展開する工程において、防水シートSを、従来の面接触ではなく複数の支持凸部31による点接触で支持する。
このため、防水シートSの展開に伴う動摩擦を低減して、より少ない力で展開させることができる。
また、枠体20が水濡れしても、水滴が支持凸部31の間に流れ込み、水滴と防水シートSの間に空隙部Aが確保されるため、防水シートSが大気圧や表面張力で枠体20の外周面に張り付いて拘束されるのを防止することができる。
牽引装置40は、防水シートSを牽引して、枠体20上に展開する装置である。
本例では、牽引装置40として基台10に搭載した複数の電動ウインチとワイヤの組み合わせを採用する。
なお、牽引装置40は、基台10ではなく枠体20に搭載してもよい。あるいは、防水シート敷設装置1と独立して設けてもよい。
<1>全体の構成。
本発明の防水シート敷設方法は、防水シートSを展開する展開工程と、枠体20上の防水シートSを一次覆工面に近接させる近接工程と、防水シートSの背面に充填材を注入する充填工程と、を少なくとも備える。
本例では防水シートSを枠体20の長手方向に展開する長手方向展開型の方法を説明し、周方向展開型の方法については実施例2として後述する。
防水シート敷設装置1は、一次覆工後のシート防水工の施工区間において、基台10の支柱12及び支持腕13を短縮した状態で地盤に配置する。
防水シートSは予め幅方向Wと長手方向Lの二方向に折りたたんでおく(図4)。より詳細には、防水シートSをまず長手方向Lに内外相互に折り返して複数層に折り畳み、続いてこれを幅方向Wに内外相互に折り返して複数層に折り畳む。
折り畳んだ防水シートSを、幅方向Wと長手方向Lを防水シート敷設装置1の幅方向と長手方向に合わせて、枠体20側方の前端部付近の地盤に設置する。
折り畳んだ状態の防水シートSの上端縁を挟持部材で挟み、挟持部材に接続したワイヤを枠体20の外周面を経由して反対側へ掛け渡し、牽引装置40に接続する。
牽引装置40のウインチでワイヤを巻き取ると、防水シートSが幅方向Wに展開しながら枠体20の外周面状を周方向に牽引され、外周面上に掛け渡される(図1)。掛け渡し後、防水シートSから挟持部材を取り外す。
枠体20に掛け渡した防水シートSの一端縁を枠体20の妻部に固定し、防水シートSを枠体20の前端部から後方へと展開してゆく(図5)。防水シートSの展開には、ウインチとワイヤなどを用いる。
あるいは、枠体20に掛け渡した防水シートSの一端縁を一次覆工面に固着済みの防水シートSと溶着させ、防水シート敷設装置1をトンネル長手方向に移動させることで、枠体20上の防水シートSを自動的に展開してもよい。
なお、防水シートSの展開は牽引装置40によらず人力で行ってもよい。
本発明の防水シート敷設装置1は、防水シートSの展開時、部分支持構造30内に空隙部Aが確保されるため、防水シートSが大気圧や表面張力によって枠体20に張り付くのを防ぐことができる。
また、防水シートSと支持凸部31の接触が点接触であり、支持凸部31の送り面31aによって防水シートSが円滑に後方に送られるため、動摩擦が低減され、従来より少ない力で展開することができる。
防水シートSを枠体20の前面に展開したら、基台10の支柱12を上昇させるとともに支持腕13を伸長することで枠体20を拡径し、枠体20上の防水シートSをトンネルの一次覆工面に近接させる。
枠体20の妻部と側方の両下端部をエアチューブなどで塞いで、枠体20の外周面と一次覆工面の間に充填材が漏れ出でない程度の気密の充填空間を形成する。
充填空間内の防水シートSと一次覆工面の間に充填材を注入する。本例では、充填材としてシールドトンネルで用いられる公知の裏込め材を採用する。
充填材は、枠体20妻部のエアチューブと一次覆工面の間に注入管を差し込んで注入する。このほか、枠体20の検査窓から、防水シートSを突き抜いて注入管を充填空間内に差し入れて注入してもよい。
充填材が固化することによって、充填材を介して防水シートSが一次覆工面に固着され、防水シートの敷設作業が完了する。
防水シートを枠体の周方向に展開する実施例について説明する。
防水シートSの中に巻き芯B1を通して長尺のロール状に巻いたものを、支持台Bの上に回転自在に配置し、支持台Bを防水シート敷設装置1の側方の地盤上に設置する。
防水シートSの長さは枠体20の長さに対応させる。
ロール状の防水シートSの始端縁を、複数の位置で挟持部材に挟む。
挟持部材に接続したワイヤを枠体20の外周面を経由して反対側へ掛け渡し、牽引装置40に接続する。
牽引装置40のウインチでワイヤを巻き取ると、防水シートSが枠体20の外周面状を周方向に牽引されて展開されてゆく。
部分支持構造30の機能やその他の工程は実施例1と同様なので記載を省略する。
部分支持構造に支持線条を採用した実施例について説明する。
支持線条32は、防水シートSを線接触にて支持する構成要素である。
支持線条32は、枠体20の外周面上に長手方向に沿って配列し、複数の支持線条32を、枠体20の外周面の周方向に並列配置する。
支持線条32は枠体20の全長に亘って連続する必要はなく、不連続であってもよく、或いは部分的に配置してもよい。
支持線条32は、複数のレールを備えたシートであってもよいし、枠体20の外周面にレールを直接付設してもよいし、枠体20の外周面をレール状に形成してもよい。
本例では、実施例1の効果に加え、支持線条32が防水シートSの内面を長手方向にガイドするため、展開時に防水シートSが枠体20の周方向に偏るのを防ぐことができる。
部分支持構造に支持球部を採用した実施例について説明する。
支持球部33は、防水シートSを球体の点接触にて支持する構成要素である。
本例では、支持球部33として、球体33aと保持枠33bを備えたボールベアリングを採用する。
保持枠33bは中央に保持孔を有するプレート体である。
球体33aを、保持孔から上部を露出した状態で保持枠33b内に配置し、保持枠33bを枠体20の外周面に固定する。
これによって、球体33aが保持枠33b内に回転可能に保持される。
支持球部33の突出高を小さくするため、枠体20に球体33aの下部を収容するための凹部を設けてもよい。
また、球体33aの下方に複数の小ベアリングを配置してより円滑に回転するように構成してもよい。
本例では、実施例1の効果に加え、枠体20の外周面にボールベアリングの高い円滑性を付与することで、防水シートSの展開作業における動摩擦抵抗を大幅に低減し、施工をより容易にすることができる。
部分支持構造を突出自在に構成した実施例について説明する。
本例では、枠体20の外周面に複数の収容孔を設け、各収容孔内に支持凸部31を突出自在に収容する。
支持凸部31を突出させる手段は各種の機械的手段や気体の圧送などによる。
平常時は、支持凸部31は収容孔内に保持され、枠体20の外周面は平滑となる。
防水シートSの展開作業時、あるいは展開作業中に防水シートSが水濡れ等で拘束された時に、支持凸部31を枠体20の外周面上に突出させる。
これによって、防水シートSが押し上げられて内側に空気が流入するため、大気圧や表面張力による拘束を解除することができる。
なお、部分支持構造30は支持凸部31に限らず、支持線条32など、いずれの構造であってもよい。
10 基台
11 支持枠
12 支柱
13 支持腕
14 車輪
20 枠体
30 部分支持構造
31 支持凸部
31a 送り面
32 支持線条
33 支持球部
33a 球体
33b 保持枠
40 牽引装置
S 防水シート
A 空隙部
B 支持台
B1 巻き芯
Claims (6)
- 一次覆工後のトンネル内壁に防水シートを敷設する、防水シート敷設装置であって、
トンネルの一次覆工面に対応した略半筒状の外周面を有する枠体と、
前記枠体の内部に配置し、前記枠体をトンネルの一次覆工面に近接可能な基台と、を備え、
前記枠体の内、少なくとも頂部を含む一部に、防水シートを点状又は線状に支持可能な、部分支持構造を有し、
防水シートを前記枠体の外周面上に配置した状態において、前記部分支持構造内に空隙部を確保可能に構成したことを特徴とする、
防水シート敷設装置。 - 前記部分支持構造が、前記枠体の外周面上に配置した複数の支持凸部であることを特徴とする、請求項1に記載の防水シート敷設装置。
- 前記複数の支持凸部が、前記枠体の後方側に傾斜する送り面を有することを特徴とする、請求項2に記載の防水シート敷設装置。
- 前記部分支持構造が、前記枠体の外周面上に並列配置した複数の支持線条であり、前記複数の支持線条が、前記枠体の長手方向に沿って延在することを特徴とする、請求項1に記載の防水シート敷設装置。
- 前記部分支持構造が、前記枠体に配置した複数の支持球部であり、前記支持球部が、球体と保持枠を有し、前記保持枠が、前記球体の上部を露出した状態で前記球体を回転可能に保持することを特徴とする、請求項1に記載の防水シート敷設装置。
- 前記部分支持構造を、前記枠体内から前記枠体の外周面上に突出自在に構成したことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の防水シート敷設装置。
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