JP2006194044A - 堤体裏の法尻部への排水管の敷設方法、並びに堤体裏における浸透水の排水方法及び浸透水の排水構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】堤体裏の法尻部における浸透水の排水方法及び排水構造を提供すると共に、この排水構造を短時間で効率的に構築するための排水管の敷設方法を提供する。
【解決手段】 堤体裏の法尻部の排水構造1は、堤体2の裏法面3の法尻部4に透水性材料からなる排水管6を堤体2の長手方向に沿って削孔された横孔5内に備える。この排水管6は、管状の透水性を有する繊維系集排水材7と、この繊維系集排水材7の外側に設けられ、周部に通水孔9を備える有孔管8とからなる。有孔管8として、例えば、管壁にスリット状の通水孔9を有する鋼管8を用いる。繊維系集排水材7は、立体網状のフィルター構造であり、高い集排水性を有し、目詰まりによる集排水機能の低下が小さく、かつ、異なる原料の融点差を利用して繊維の交絡部が熱接着されているために、圧縮荷重が作用しても変形追従性を有しており、地盤変形に対応することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、堤体裏の法尻部への排水管の敷設方法、並びに堤体裏における浸透水の排水方法及び浸透水の排水構造に関するものである。
降雨等により河川水位が上昇すると堤体内へ水が浸透し、堤体内の湿潤線が上昇すると土のせん断強さが低下し、また土の単位体積重量も増大するために、堤体の裏法面でのすべりに対する安全率が低下する。
そこで、特許文献1には、堤体の川裏側の基礎地盤上に排水層を形成する方法が提案されている。これは、堤体の川裏側の基礎地盤上に、堤体の浸透水を流入させるための鋼製網状の篭製ドレーン部と、この篭製ドレーン部と裏法尻部の堤脚水路との間に粗粒フィルター材からなるドレーン層とを設置し、篭製ドレーン部及びドレーン層を堤体土で覆い裏法面を形成し、篭製ドレーン部に流入した浸透水を、ドレーン層を通して堤脚水路に導くものである。
また、特許文献2には、堤体の裏法面の裏法尻部に、透水性を有する面状排水材を略水平に複数台埋設し、この面状排水材を埋設した部分及び面状排水材間の土砂部分に法面から基礎に向かって係止部材となる杭を打ち込む方法が提案されている。これは、ポリ塩化ビニル等で形成された長尺シートからなる芯材の周囲に樹脂系の不織布からなる面状排水材を埋設し、堤体内の水を効率よく排出して堤体内が水で飽和することを防止するものである。また、基礎に杭を打ち込むことにより、面状排水材及び裏法尻部の土砂を保持するものである。
特開2002−121720号公報 特開2000−257044号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている堤体の川裏側に排水層を形成する方法は、篭製ドレーン部とドレーン層とを設置する際は、堤体の裏法面の基礎地盤が露出するまで掘削し、これらを設置した後に再び掘削した部分に覆土しなければならず、排水層構築のために莫大な手間及び費用がかかるという課題があった。さらに、篭製ドレーン部及びドレーン層のいずれかが目詰まりしても前述した理由から容易に交換することができないという課題があった。
また、特許文献2に記載されている堤体の裏法尻部に面状排水材を埋設し、杭を打ち込む方法は、面状排水材を敷設する際に、裏法尻より提内側の道路上にユンボ等の重機を配置して裏法尻部を開削する必要がある。この場合においては、開削工事を行う区間はすべて道路規制を行わねばならず、交通渋滞等の社会的損失が大きいという課題があった。また、この道路が個人の私有地である場合は、使用許可の取得、重機を設置するスペース等の問題から工事の施工が困難であるという課題があった。
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、堤体裏における浸透水の排水方法及び排水構造を提供すると共に、この排水構造を短時間で効率的に構築するための排水管の敷設方法を提供することである。
前記目的を達成するため、本発明の堤体裏における浸透水の排水構造は、堤体内への浸透水が堤体裏法面に浸出することを防ぐための浸透水の排水構造であって、前記堤体裏の法尻部に透水性材料からなる排水管を堤体の長手方向に埋設したことを特徴とする(第1の発明)。
第2の発明は、第1の発明において、前記排水管を前記堤体の長手方向に削孔された横孔内に配設してなることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、前記横孔は曲線推進工法により削孔されてなることを特徴とする。
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記排水管は、管状の透水性を有する繊維系集排水材と、該繊維系集排水材の内側又は外側に設けられ、通水孔を有する金属、プラスチック、ポリエチレン等の有孔管とからなることを特徴とする。
第5の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記排水管は、管状の透水性を有する繊維系集排水材と、該繊維系集排水材の外側に設けられ、生分解性プラスチックの中空管とからなることを特徴とする。
第6の発明は、第4の発明において、前記繊維系集排水材は、前記有孔管に対して脱着可能であることを特徴とする。
第7の発明の堤体裏における浸透水の排水方法は、堤体内への浸透水が堤体裏法面に浸出することを防ぐための浸透水の排水方法であって、前記堤体裏の法尻部に透水材料からなる排水管を堤体の長手方向に埋設し、前記堤体内に浸透する水を前記排水管を介して排水することを特徴とする。
第8の発明は、第7の発明において、前記排水管を前記堤体の長手方向に削孔された横孔内に配設することを特徴とする。
第9の発明は、第8の発明において、前記横孔を曲線推進工法により地上から削孔することを特徴とする。
第10の発明は、第9の発明において、前記横孔を削孔する際に、生分解性ポリマーを含む泥水を前記横孔内に供給することを特徴とする。
本発明によれば、堤体裏の法尻部に透水性材料からなる排水管を堤体の長手方向に埋設することにより、堤体内に浸透した水を確実に排水することができる。
また、排水管を埋設する際は、非開削工法にて横孔を削孔することにより、発進点、中継点、到達点となるスペースのみを数Km間隔で確保すればよく、さらに、このスペースを堤体裏法の法尻部に設けることにより道路上を使用しなくてすむために、交通規制等を行う必要が無い。基本的には道路上を使用しないが、作業の都合にて道路上を使用する場合においても、これらのスペースの周囲の狭い範囲だけを作業領域として確保すればよいために、道路上を交通規制する範囲が狭く、交通渋滞等を回避できる。
さらに、横孔を曲線推進工法にて削孔することにより、削孔機を堤体裏の斜面に組立てた架台上又は裏法面の斜面の一部を掘削して周囲を土留めしたスペース内に設置することができ、道路上を全く使用しないために、交通規制等を行う必要が無い。
そして、排水管の外周部又は内周部に金属、プラスチック、ポリエチレン等の有孔管を用いることにより、排水管を横孔に敷設する際に、排水管に作用する引張力又は圧縮力に抵抗することができる。
また、排水管の外周部に生分解性プラスチックの中空管を用いることにより、排水管を横孔に敷設する際に、排水管に作用する摩擦抵抗を減少させることができ、かつ、引張力又は圧縮力に抵抗することができる。したがって、排水管を削孔先端部に取り付け、横孔内に引き込むと共に敷設することができる。さらに、生分解性プラスチックは、排水管を敷設した後に、生分解により消失するために集排水に影響を与えない。
そして、排水管に用いられる繊維系集排水材は有孔管と接着材等により接着されていないために、排水管のメンテナンス時に容易に交換することができる。
したがって、堤体裏の法尻部に排水管を設けることにより、堤体内に浸透する水を速やかに排水することが可能となり、堤体内に形成される湿潤線の上昇を抑制し、土のせん断抵抗力の低下を抑制することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る堤体裏の法尻部の排水構造を示す図である。また、図2は、本発明の第一実施形態に係る排水管の構造を示す図であり、図3及び図4は、本発明の第一実施形態に係る排水管の他の構造を示す図である。
図1に示すように、本発明の堤体裏における浸透水の排水構造1は、堤体2の裏法面3の法尻部4に透水性材料からなる排水管6を堤体2の長手方向に沿って削孔された横孔5内に備える。
この排水管6は、図2に示すように、管状の透水性を有する繊維系集排水材7と、この繊維系集排水材7の外側に設けられ、周部に通水孔9を備える有孔管8とからなる。本実施形態においては、有孔管8として、例えば、管壁にスリット状の通水孔9を有する鋼管8を用いる。
この繊維系集排水材7は、立体網状のフィルター構造であり、高い集排水性を有し、目詰まりによる集排水機能の低下が小さく、かつ、異なる原料の融点差を利用して繊維の交絡部が熱接着されているために、圧縮荷重が作用しても変形追従性を有しており、地盤変形に対応することができる。そして、繊維系集排水材7は、鋼管8と接着材等により接着されていないために脱着可能であり、排水管6のメンテナンス時に容易に交換することができる。
なお、本実施形態において、排水管6は、繊維系集排水材7を鋼管8にて覆う構造としたが、この構造に限定されるものではなく、図3に示すように、繊維系集排水材7と、この繊維系集排水材7の内側に設けられる鋼管8とからなる構造のものでもよい。また、本実施形態において、有孔管として鋼管8を用いたが、この材質に限定されるものではなく、例えば、プラスチック、ポリエチレン等の排水管6を横孔5に敷設する(詳細は後述する)際に、排水管6に作用する引張力又は圧縮力に抵抗することができるものであればよい。
さらに、排水管6は図4に示すように、繊維系集排水材7と、この繊維系集排水材7の外側に位置する生分解性プラスチックの中空管22とからなる構造のものでもよい。この生分解性プラスチックの中空管22は、排水管21を横孔5内に敷設した後に、自然界の微生物によって水と二酸化炭素に分解され消失し、繊維系集排水材7のみが残存する。
そして、排水管6が敷設される横孔5は曲線推進工法により削孔されてなるものであり、以下に、この横孔5の削孔方法及び排水管6の敷設方法について説明する。
図5は、本発明の第一実施形態に係る横孔の削孔方法を示す図である。図5に示すように、削孔機11を裏法面3の斜面上に組立てた架台に設置し、排水管6を敷設するための横孔5を非開削である曲線推進工法にて削孔する。まず、削孔先端部12にて裏法面3の斜面上を開口して発進点13とし、横孔5の削孔を開始する。そして、ビット及びマッドモータからなる削孔先端部12に接続されているジャイロ等の測定器(図示せず)にて測定される横孔5の方位、傾斜、位置に応じて削孔先端部12の進行方位、傾斜等を地上の制御装置にて制御しながら、堤体2の長手方向の形状に沿って横孔5を削孔する。横孔5を削孔する際は、孔壁の安定化、削孔機11の動力を削孔先端部12に伝達するロッド14及び削孔先端部12の焼き付きを防止するために、生分解性ポリマーを含む泥水を削孔先端部12に供給して横孔5内を常に泥水で満たした状態にする。削孔先端部12が掘進すると共にロッド14を延長接続して横孔5を堤体2の長手方向の形状に沿って到達点15まで削孔する。本実施形態においては、発進点13から到達点15までの距離は、例えば、約2Km程度である。
図6は、本発明の第一実施形態に係る削孔先端部に排水管を接続した状態を示す図である。図6に示すように、横孔5の削孔を終了して削孔先端部12が地上の到達点15に到達した後に、削孔先端部12に回転自在のスイベル等の接続具(図示せず)を介して排水管6を接続する。
図7は、本発明の第一実施形態に係る横孔に排水管を引き込む状態を示す図である。図7に示すように、削孔機11と削孔先端部12とを接続しているロッド14を取り外し、削孔先端部12を横孔5内に挿通させて排水管6を横孔5内に引き込む。排水管6を引き込む際は、排水管6の外周部に鋼管8を用いることにより、排水管6にかかる圧縮力や引張力に抵抗することができる。
図8は、本発明の第一実施形態に係る横孔に排水管を敷設した状態を示す図である。図8に示すように、削孔先端部12を地上の発進点13にて回収することにより、排水管6が横孔5内の全長に渡って敷設される。横孔5の孔壁は、削孔時に供給した生分解性ポリマーにて形成される被膜により覆われており、繊維系集排水材の泥水による目詰まりを防止する。
以上のようにして構築された排水構造1によれば、堤体2の裏法面3の法尻部4に排水管6を設けることにより、堤体2内に浸透する水を速やかに排水することが可能となり、堤体2内に形成される湿潤線の上昇を抑制し、土のせん断抵抗力の低下を抑制することができる。また、横孔5を曲線推進工法により削孔するために、道路上を使用せずに地上から削孔することが可能である。
次に、本発明における第一実施形態と異なる実施形態を示す。下記に示す説明において、第一実施形態と同様の技術を用いたものと対応する部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
図9は、本発明の第二実施形態に係る横孔の削孔方法を示す図であり、図10は、本発明の第二実施形態に係る横孔に排水管を敷設した状態を示す図である。図9に示すように、横孔5を削孔する際に、発進点13、到着点15にそれぞれ発進スペース23、到着スペース24を裏法面3の斜面の一部を掘削し、周囲を簡易的に土留めして作成し、これらの間は非開削である曲線推進工法にて横孔5を削孔する。本実施形態においては、発進点13から到達点15までの距離は、例えば、約2Km程度である。基本的には道路上10を使用しないが、作業の都合にて道路上10を使用する場合においても、これら発進スペース23、到着スペース24の周囲の狭い範囲だけを作業領域として確保すればよいために、道路上10を交通規制する範囲が狭く、交通渋滞等を回避できる。
削孔機11を発進スペース23内に設置して第一実施例と同様にして堤体2の長手方向の形状に沿って到達スペース24まで横孔5を削孔し、削孔先端部12に排水管6を接続する。
そして、図10に示すように、削孔先端部12を発進スペース23にて回収することにより、排水管6が横孔5内の全長に渡って敷設される。
以上のようにして構築された排水構造1によれば、堤体2の裏法面3の法尻部4に排水管6を設けることにより、堤体2内に浸透する水を速やかに排水することが可能となり、堤体2内に形成される湿潤線の上昇を抑制し、土のせん断抵抗力の低下を抑制することができる。また、横孔5を曲線推進工法により削孔するために、道路上を使用せずに地上から削孔することが可能である。
なお、上述したすべての実施形態において、横孔5を削孔した後に、到達点15にて削孔先端部12に排水管6を接続し、削孔先端部12を横孔5内を挿通させて回収すると共に排水管6を横孔5内に敷設する方法を用いたが、この方法に限定されるものではなく、削孔機11と削孔先端部12との間に排水管6を取り付け、削孔先端部12にて横孔5を削孔すると共に排水管6を横孔5内に引き込み、敷設する方法でもよい。
また、上述したすべての実施形態において、堤体2は直線状であり、横孔5も堤体2に沿って直線的に削孔しているが、これに限定されるものではなく、堤体2が湾曲している場合においては、堤体2の湾曲に沿って横孔5を削孔することが可能である。
本発明の第一実施形態に係る堤体裏の法尻部の排水構造を示す図である。 本発明の第一実施形態に係る排水管の構造を示す図である。 本発明の第一実施形態に係る排水管の他の構造を示す図である。 本発明の第一実施形態に係る排水管の他の構造を示す図である。 本発明の第一実施形態に係る横孔の削孔方法を示す図である。 本発明の第一実施形態に係る削孔先端部に排水管を接続した状態を示す図である。 本発明の第一実施形態に係る横孔に排水管を引き込む状態を示す図である。 本発明の第一実施形態に係る横孔に排水管を敷設した状態を示す図である。 本発明の第二実施形態に係る横孔の削孔方法を示す図である。 本発明の第二実施形態に係る横孔に排水管を敷設した状態を示す図である。
符号の説明
1 排水構造
2 堤体 3 裏法面
4 法尻部 5 横孔
6 排水管 7 繊維系集排水材
8 鋼管(=有孔管) 9 通水孔
10 道路上 11 削孔機
12 削孔先端部 13 発進点
14 ロッド 15 到達点
21 排水管 22 中空管
23 発進側スペース 24 到着側スペース

Claims (10)

  1. 堤体内への浸透水が堤体裏法面に浸出することを防ぐための浸透水の排水構造であって、
    前記堤体裏の法尻部に透水性材料からなる排水管を堤体の長手方向に埋設したことを特徴とする堤体裏における浸透水の排水構造。
  2. 前記排水管を前記堤体の長手方向に削孔された横孔内に配設してなることを特徴とする請求項1に記載の堤体裏における浸透水の排水構造。
  3. 前記横孔は曲線推進工法により削孔されてなることを特徴とする請求項2に記載の堤体裏における浸透水の排水構造。
  4. 前記排水管は、管状の透水性を有する繊維系集排水材と、該繊維系集排水材の内側又は外側に設けられ、通水孔を有する金属、プラスチック、ポリエチレン等の有孔管とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の堤体裏における浸透水の排水構造。
  5. 前記排水管は、管状の透水性を有する繊維系集排水材と、該繊維系集排水材の外側に設けられ、生分解性プラスチックの中空管とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の堤体裏における浸透水の排水構造。
  6. 前記繊維系集排水材は、前記有孔管に対して脱着可能であることを特徴とする請求項4に記載の堤体裏における浸透水の排水構造。
  7. 堤体内への浸透水が堤体裏法面に浸出することを防ぐための浸透水の排水方法であって、
    前記堤体裏の法尻部に透水材料からなる排水管を堤体の長手方向に埋設し、
    前記堤体内に浸透する水を前記排水管を介して排水することを特徴とする堤体裏における浸透水の排水方法。
  8. 前記排水管を前記堤体の長手方向に削孔された横孔内に配設することを特徴とする請求項7に記載の堤体裏における浸透水の排水方法。
  9. 前記横孔を曲線推進工法により地上から削孔することを特徴とする請求項8に記載の堤体裏における浸透水の排水方法。
  10. 前記横孔を削孔する際に、生分解性ポリマーを含む泥水を前記横孔内に供給することを特徴とする請求項9に記載の堤体裏における浸透水の排水方法。
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