JP5983608B2 - 溶解助剤を利用したリポソーム含有製剤およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主として医薬品として用いられるリポソーム含有製剤およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、リポソームの内水相に特定の物質を溶解させることを特徴とする、リポソーム含有製剤およびその製造方法に関する。
バイオ、医薬、食品、化粧品、塗料等の技術分野において、マイクロカプセルや微粒子と呼ばれる複合型微粒子が幅広く利用されている。複合型微粒子は、その作製に乳化剤として脂質を用いた場合、脂質複合型微粒子と呼ばれている。また、脂質複合型微粒子を含む複合型微粒子は、その膜厚によりダブルエマルションとベシクルとに分類されている。
このうち、ダブルエマルションは、たとえば水の中に均一に散らばっている小さい油滴の中に、さらに小さい水滴が均一に散らばっている状態、つまり水滴粒子を内部に閉じこめた油滴粒子が水中に分散している状態のものが、W/O/Wエマルション(Water−in−Oil−in−Water)である。一分子膜と一分子膜の間に油相が存在するために膜厚はその分厚いのが特徴である。ダブルエマルションの製造は、古典的な機械的乳化法あるいはSPG(Shirasu Porous Glass)膜乳化法を利用した「二段階乳化法」を用いるのが一般的であり、最近ではマイクロ流路に交互に流れる混合しない2種類の流体(WとO)を別の流体に押し出すことで、W/O/WあるいはO/W/Oを作成する方法が特許文献1に示されている。ところで、W/O/Wの作成が容易に進行するのは、O相がオリーブ油やデカンといった沸点の高い油の場合であることが知られており、先の特許文献も実施例で示されているO相はデカンやヘキサデカンである。一方、水より沸点の低い有機溶媒をO相に用いる場合はW/O/Wの作成は容易ではなく、これは有機溶媒の表面張力が低いために粒子の球形を維持する力が足りないため、と解釈されている。
リポソームはベシクルに分類される脂質複合型微粒子であり、上記製造法で得られたW/O/WからO相を除去した構造体にあたる。ベシクルは、両親媒性化合物の二分子膜がシェル(殻)状に並んで閉じられた球体物質であり、一分子膜と一分子膜の間になにも存在しないために膜厚は薄いのが特徴である。ここで、水より沸点の低い有機溶媒をO相に用いる場合はこれを除去するのは容易であり、目的のリポソームを得ることができるが、水より沸点の高い有機溶媒をO相に用いる場合はこれを除去するのは事実上困難である。「二段階乳化法」によりリポソームを作成することは、O相を除去するためには沸点の低い有機溶媒を選択する必要があるのだがその場合にはW/O/Wの作成に困難が伴い、W/O/Wの作成の容易な沸点の高い有機溶媒を選択するとリポソームへの変換が不可能になる、というジレンマに陥り達成困難な課題となっている。
リポソームは、単層または複数層の脂質二重膜からなる閉鎖小胞体であり、内水相および脂質二重膜内部にそれぞれ水溶性および疎水性の薬剤類を保持することができる。リポソームの脂質二重膜は生体膜に類似しているため生体内での安全性が高いことなどから、たとえばDDS(ドラック・デリバリー・システム)用の医薬品などの、各種用途が注目され、研究開発が進められている。
特にDDSが必要とされているのが遺伝子治療であり、2001年から革新技術として大きく注目され続けているのがRNA干渉(Ribonucleic Acid Interference)である。RNA干渉とは、遺伝子変異が起こったRNAの一部分を鋳型RNAによってブロックすることにより、有害なタンパク質を作らせない方法である。RNA干渉は遺伝子治療に応用することができ、遺伝子レベルにおいて病気を治療することができる。遺伝子治療を実現するには、まず鋳型RNA[siRNA(SmallInterferingRNA)]を細胞内に導入しなければならない。しかしながら、細胞には細胞膜が存在しているので、鋳型RNAを導入する際には細胞膜といったバリヤを乗り越えなければならない。DNA(DeoxyribonucleicAcid)やRNA(RibonucleicAcid)を利用した遺伝子治療法もRNA干渉と同様に遺伝子治療の機能を発現するために、まずDNAやRNAを細胞内に導入させなければならない。近年、レトロウイルス等のウイルスをベクターとして使用するあるいは安全性の高い脂質ベシクル(リポソーム)を使用することが有望との認識が広がっている。
リポソームの、内水相および脂質二重膜内部にそれぞれ水溶性および疎水性の薬剤類を保持する技術としては、疎水性の薬剤類を保持することは比較的容易に達成されて医薬品として上市された例があるのに対し、水溶性の薬剤類を保持することは困難であり先の遺伝子治療薬のリポソームも完成の域には達していない。
先のジレンマを解消する、リポソームを含有する製剤の製造方法の一つとして、二段階の乳化工程によりW/O/Wエマルションを調製した後、その油相(O)を揮発により除去することでリポソームを形成させて、リポソームの分散液を調製する方法(マイクロカプセル化法ないし二段階乳化法と呼ばれる。)が知られている(非特許文献1)。しかしながら、内包する薬剤としてはカルセインと言う色素を例示しているのみであり、薬剤汎用性については十分とはいえない。
さて、水溶性薬剤を内包するリポソームの分散液からなるリポソーム含有製剤をDDS用途に展開する場合、W/O/Wエマルションの微粒子の内水相、すなわちそれから形成されるリポソームの内水相に水溶性薬剤が溶解している状態でなければ、リポソーム含有製剤のDDS効果が得られない。外水相に水溶性薬剤(の大部分)が溶解した状態のリポソーム含有製剤を投与しても、単に水溶性薬剤を水に溶解して投与することとほとんど同じことになってしまうからである。このような理由から、水溶性薬剤の内包率(リポソーム分散液中に含まれる水溶性薬剤の総質量に対する、リポソームに内包された水溶性薬剤の質量の割合)ないし水溶性薬剤のリポソームへの絶対的な内包量を向上させるためのリポソーム(含有製剤)の製造方法の研究開発が進められている。
たとえば、特許文献2には、W/Oエマルションを分散相、トリス塩酸緩衝液を外水相としてマイクロチャネル乳化法によりW/O/Wエマルションを作製する際に、その外水相に「ベシクル脂質膜を破壊しないたんぱく質水溶性乳化剤(カゼインナトリウム)」を添加すること、これにより内包物質(カルセイン)のベシクル(リポソーム)への内包率を高めることができることが記載されている。しかしながら、この特許文献1では、内水相への添加剤については何ら注目されていない。特許文献2の主たる目的は、W/O/Wエマルション形成時のエマルション界面の安定性を確保して、合一や分層といったエマルションの崩壊を抑えることにある。内包物質はカルセインが例示されているのみで、薬剤汎用性を示す証拠は示されていない。
また、特許文献3には、「多胞状リポソーム」について、「リポソームへの生物学的に活性な薬剤の封入量を、該薬剤を溶解した水系溶液の容量オスモル濃度を調整することにより調節」するための「浸透圧賦形剤」として、その水系溶液に、「グリシルグリシン、グルコース、スクロース、トレハロース、コハク酸塩、シクロデキストリン、アルギニン、ガラクトース、マンノース、マルトース、マンニトール、グリシン、リシン、クエン酸塩、ソルビトール、デキストラン、塩化ナトリウム、ホスフェート、生物学的に活性な薬剤」等を配合することが記載されている。特許文献3は、「多胞状リポソーム」が薬剤を多くの膜に囲まれた環境下に置くことで外へのリリースを妨げる性格を有することに着目して、除放性製剤の開発を目的とする実施例を提示している。
特開2006−272196号公報 特開2009−280525号公報 特開2008−044962号公報
Ishii et al. J. Dispersion Sci. Technol. vol.9, No.1, 1-15, 1988.
二段階乳化法を利用するリポソームの製造方法について、水溶性薬剤等の内包率ないし内包量を向上させることやリポソームの粒径を所定の範囲に揃えることなどはこれまでにも課題とされており、そのために様々な手法が提案されてきたが、より優れたリポソーム含有製剤とするために改善の余地が残されていた。
本発明は、特に高水溶性薬剤を内包する、所定の粒径を有する単胞リポソームを含有するリポソーム含有製剤の製造方法について、その高水溶性薬剤の内包率ないし内包量を従来よりも向上させることを課題の一つとする。
本発明者らは、高水溶性薬剤を内包対象薬剤とする場合に、注射剤への添加剤として用いられている物質のうち特定のもの、より具体的には、pH7.4におけるlogDが−1以下であるものを「溶解助剤」として、高水溶性薬剤とともに、リポソームの内水相を構成する水性溶媒に溶解させることにより、そのような溶解助剤を含まない場合に比べて、高水溶性薬剤の内包率ないし内包量を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、本来、溶解助剤(溶解補助剤)として知られる化合物の中には、イソプロパノール、プロピレングリコール、エチル尿素といった、リポソーム膜を崩壊させる化合物が含まれており、二段階乳化法によるリポソームの製造工程においてあえてそれらを添加しようとする試みはなかった。本出願に関わる研究において、ある溶解助剤を含む医薬品製剤を二段階乳化工程に使用したところ、リポソーム膜を崩壊させるどころか逆に膜を強化するとでもいうべき効果が表れた。本発明は、これを精査した結果見出されたものである。
すなわち、本発明は、下記の事項を包含する。
[1]水に対する溶解度が10mg/mLより高い高水溶性薬剤(d)を内包する体積平均粒径が50〜200nmの単胞リポソームを含有する製剤であって、当該単胞リポソームの内水相(W1)に当該高水溶性薬剤(d)およびpH7.4におけるlogDが−1以下である溶解助剤(s)が溶解していることを特徴とするリポソーム含有製剤。
[2]前記リポソーム含有製剤中の高水溶性薬剤(d)の薬剤濃度が5mg/mL以上である、[1]に記載のリポソーム含有製剤。
[3]リポソームを構成する脂質成分(f)に対する前記高水溶性薬剤(d)の重量比(d/f)が0.05以上である、[1]または[2]に記載のリポソーム含有製剤。
[4]前記高水溶性薬剤(d)が前記内水相(W1)に過飽和状態で溶解している、[1]〜[3]のいずれかに記載のリポソーム含有製剤。
[5]下記工程(1)〜(4)を含むことを特徴とする、水に対する溶解度が10mg/mLより高い高水溶性薬剤(d)を内包する体積平均粒径が50〜200nmの単胞リポソームを含有する製剤の製造方法:
(1)下記工程(3)の溶媒除去条件下で揮発性の有機溶媒(o)に脂質成分(f1)が溶解している油相液(O)と、水性溶媒(w1)に前記高水溶性薬剤(d)およびpH7.4におけるlogDが−1以下である溶解助剤(s)が溶解している水相液(W1)とを乳化することによりW1/Oエマルションを調製する一次乳化工程;
(2)上記工程(1)を経て得られたW1/Oエマルションと水相液(W2)とを乳化することによりW1/O/W2エマルションを調製する二次乳化工程;
(3)上記工程(2)を経て得られたW1/O/W2エマルションから油相液(O)中の有機溶媒(o)を除去することによりリポソームを形成させる溶媒除去工程;
(4)上記工程(3)を経て得られたリポソーム分散液から水相液(W2)を除去し、当該除去した水相液(W2)よりも少量の水相液(W3)を添加する水相置換工程。
[6]前記工程(2)における二次乳化を下記式(e1)の条件を満たす撹拌乳化法により行う、[5]に記載の方法:
0.02385 <r×n/L' < 0.1431 (e1)
上記式(e1)において、rは撹拌子の半径[m],L'はW1/Oエマルションの粒径[nm],nは撹拌子の毎分回転数[rpm]を表す。
[7]前記工程(4)において、リポソーム含有製剤中の前記高水溶性薬剤(d)の薬剤濃度が5mg/mL以上となるよう濃縮する、[5]または[6]に記載の製造方法。
[8]前記工程(4)を経て得られるリポソーム含有製剤が、リポソームを構成する脂質成分(f)に対する前記高水溶性薬剤(d)の重量比(d/f)が0.05以上であるものである、[5]〜[7]のいずれか一項に記載の製造方法。
[9]前記工程(1)において、水性溶媒(w1)に前記高水溶性薬剤(d)が過飽和状態で溶解した水相液(W1)を用いる、[8]に記載の製造方法。
[10]前記工程(2)において、乳化剤(r)が溶解した水相液(W2)を用いる、[5]〜[9]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11]前記工程(1)〜(4)すべてを5〜10℃の範囲の温度で行う、[5]〜[10]のいずれか一項に記載の製造方法。
[12]前記工程(1)における一次乳化をパルス超音波を用いて行う、[5]〜[11]のいずれか一項に記載の製造方法。
本発明によるリポソーム含有製剤の製造方法の一次乳化工程において、溶解助剤(s)を高水溶性薬剤(d)と共に水性溶媒(w1)に溶解させることにより、高水溶性薬剤(d)のリポソームへの内包量が向上するため、従来は達成することのできなかった高い薬剤濃度(たとえば5mg/mL)や、リポソームを構成する脂質成分(f)に対する高水溶性薬剤(d)の重量比(d/f、たとえば0.05以上)を有するリポソーム含有製剤を製造することができるようになる。また、特定の溶解助剤(s)を用いることにより高水溶性薬剤(d)を過飽和状態で水性溶媒(w1)に溶解させることができる場合もあり、上記重量比(d/f)をより一層高めることができる。
また、二次乳化工程(2)において所定の条件下で撹拌乳化することにより、リポソームの粒度分布を正規分布にすることができ、さらに水相液(W2)に水溶性乳化剤(r)を溶解させることにより、W1/O/W2エマルションおよび形成されるリポソームを安定化して、高水溶性薬剤(d)のリポソームへの内包率(量)をさらに向上させることができる。さらに、本発明によるリポソーム含有製剤の製造方法のすべての工程を所定の低温下で行う場合には、高水溶性薬剤(d)が膜透過性の高いものであっても内包率(量)を向上させることができる。一次乳化工程(1)においてパルス超音波を用いて乳化を行うことにより、粒径が微小(たとえば体積平均粒径を50nm程度にすることが可能)で粒度分布も狭いエマルション粒子を形成できるとともに、乳化に伴う発熱を抑制して、全ての工程を上記のような低温下で行いやすくできる。
− リポソーム含有製剤 −
本発明のリポソーム含有製剤中のリポソーム、典型的には以下に説明するような本発明の製造方法により得られるリポソーム含有製剤中のリポソームは、内水相(W1)に高水溶性薬剤(d)に加えて溶解助剤(s)が溶解しているものであり、溶解助剤が溶解していない水性溶媒を内水相とするリポソームに比べて高い高水溶性薬剤(d)の内包量、すなわちリポソーム含有製剤中の高い薬剤濃度を達成することができる。リポソーム含有製剤の薬剤濃度は、高水溶性薬剤(d)の水に対する溶解度、溶媒除去工程(3)終了時点における高水溶性薬剤(d)のリポソームへの内包率、水相置換工程(4)終了時点におけるリポソーム含有製剤中のリポソームの濃度(リポソームの分散媒となる水性溶媒に対するリポソームの量)などに依存し、その上限および下限は一律に規定されるものではないが、本発明によれば、通常の高水溶性薬剤(d)について、好ましくは5mg/mL以上の薬剤濃度でリポソーム含有製剤に含ませることができる。
リポソーム含有製剤中の高水溶性薬剤(d)の薬剤濃度は、次式により算出される:薬剤濃度=リポソームに内包されている高水溶性薬剤(d)の質量/リポソーム含有製剤の体積。
本発明に係るリポソーム含有製剤の製造方法は、単胞リポソームを含有する製剤を製造するためのものである。単胞リポソームを含有する製剤の製造方法といっても、その製造方法により得られるリポソーム含有製剤中のリポソームに多胞リポソームが一切存在してはならないという趣旨ではなく、主として単胞リポソームを含有する製剤を製造することを目的として設計された製造方法であればよい。脂質成分(f)の配合組成などの条件によっては多胞リポソームが比較的できやすい場合もあるが、そのような場合であっても本発明の方法を適用することが可能であり、高水溶性薬剤の内包率ないし内包量の向上、すなわちリポソーム含有製剤の薬剤濃度の向上等の効果が得られる。
なお、本発明において、「単胞リポソーム」(ULV、単核リポソームと同義である)は、単一の内水相を有するリポソーム構造物を指し、体積平均粒径はナノメートルの範囲、通常は20〜500nm程度である。これに対して、「多胞リポソーム」(MVL: multivesicular liposomes)は、複数の非同心円状の内水相を包囲する脂質膜を含んでなるリポソーム構造物を指し、また「多重膜リポソーム」(MLV)は、複数の「タマネギの皮」のような同心円状の膜を有し、その間に殻様の同心円状の水系コンパートメントがあるリポソーム構造物を指す。多胞リポソームおよび多重膜リポソームの体積平均粒径はマイクロメートルの範囲、通常は0.5〜25μm程度である。
また、本発明のリポソーム含有製剤中のリポソームのサイズは必ずしも限定されるものではないが、体積平均粒子径が50〜200nmとなるよう調整されることが好適である。このようなサイズのリポソームは、毛細血管を閉塞するおそれがほとんどなく、またがん組織近辺の血管にできる間隙を通過することもできるため、医薬品等として人体に投与して使用する上で好都合であり、また調製もしやすい。
なお、リポソーム(およびその製造工程途中のエマルション)の体積平均粒径は、動的光散乱法により測定される値である。たとえば、リポソームの水性分散液をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で10倍に希釈し、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(UPA−EX150、日機装株式会社)を用いてリポソームの粒子径を測定することにより、粒度分布や体積平均粒径を算出することができる。
− リポソーム含有製剤の製造に用いる物質 −
・高水溶性薬剤(d)
本発明において、リポソームに内包させる「高水溶性薬剤」は、水に対する溶解度が10mg/mLより高い薬剤、換言すればその薬剤1gを溶解するのに必要な水の量が100mL未満である薬剤として定義される。このような水に対する溶解度(水溶性のレベル)は、薬局方において、「極めて溶けやすい」(溶質1g又は1mLを溶かすのに要する溶媒量が1mL未満)、「溶けやすい」(同1mL以上10mL未満)、「やや溶けやすい」(同10mL以上30mL未満)および「やや溶けにくい」(同30mL以上100mL未満)と定義されている範囲に相当する。なお、薬局方ではさらに「溶けにくい」(同100mL以上1000mL未満)、「極めて溶けにくい」(同1000mL以上10000mL未満)および「ほとんど溶けない」(同10000mL以上)も定義されており、水に対する溶解度がこれらの範囲にある薬剤は本発明における高水溶性薬剤に該当しない。
ここで、「薬剤」は「リポソーム含有製剤」の用途に応じて内包させるべき物質のことであり、医薬品・医薬部外品(有効成分、製薬助剤等)のほか、化粧品や食品などの分野で用いられることのある各種の物質も包含される。そのような薬剤のうち上記の水に対する溶解度に関する要件を満たすものを、本発明における高水溶性薬剤として用いることができる。
たとえば、医薬用途のリポソーム含有製剤に内包させることのできる薬剤のうち水溶性のものとしては、造影剤(X線造影用の非イオン性ヨード化合物、たとえばイオヘキソール、MRI造影用のガドリニウムとキレート化剤とからなる錯体等)、抗がん剤(ビラルビシン、ビンクリスチン、タキソール、マイトマイシン、5−フルオロウラシル、イリノテカン、エストラサイト、エピルビシン、カルボプラチン、イントロン、ジェムザール、メソトレキセート、シタラビン、アイソボリン、テガフール、シスプラチン、トポテシン、ビラルビシン、ネダプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド、テスパミン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバチン、エノシタビン、フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、ダウノマイシン、アクラルビシン、イビルビシン、アムルビシン、アクチノマイシン、タキソテール、トラスツブマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブ、レンチナン、シゾフィラン、インターフェロン、インターロイキン、アスパラギナーゼ、ホスフェストロール、ブスルファン、ボルテゾミブ、アリムタ、ベバシズマブ、ネララビン、セツキシマブ等)、抗菌剤(マクロライド系抗生物質、ケトライド系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、オキサセフェム系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、ベータラクタマーゼ配合剤、アミノグリコシド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、ホスホマイシン系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、ペネム系抗生物質)、MRSA・VRE・PRSP感染症治療剤、ポリエン系抗真菌剤、ピリミジン系抗真菌剤、アゾール系抗真菌剤、キャンディン系抗真菌剤、ニューキノロン系合成抗菌剤、抗酸化性剤、抗炎症剤、血行促進剤、美白剤、肌荒れ防止剤、老化防止剤、発毛促進性剤、保湿剤、ホルモン剤、ビタミン類、核酸(DNAもしくはRNAのセンス鎖もしくはアンチセンス鎖、プラスミド、ベクター、mRNA、siRNA、miRNA等)、タンパク質(酵素、抗体、ペプチド等)、ワクチン製剤(破傷風などのトキソイドを抗原とするもの;ジフテリア、日本脳炎、ポリオ、風疹、おたふくかぜ、肝炎などのウイルスを抗原とするもの;DNAまたはRNAワクチン等)などの薬理的作用を有する物質や、色素・蛍光色素、キレート化剤、安定化剤、保存剤などの製薬助剤が挙げられる。
上記のような水溶性薬剤の中から水に対する溶解度について本発明における要件を満たすものを選択して、本発明における高水溶性薬剤として用いることができる。代表的な薬剤の溶解度を下記表に示す。
Figure 0005983608
・溶解助剤(s)
溶解助剤(溶解補助剤)とは、注射剤等の製剤化の際に、有効成分が溶媒に難溶な場合に用いられる添加剤である。本発明において、そのような溶解助剤(s)は、高水溶性薬剤(d)とともに水性溶媒(w1)に溶解させることにより、高水溶性薬剤(d)の内包量すなわちリポソーム含有製剤の薬剤濃度の向上に寄与しうる機能を有する物質、より具体的には、当該物質を水性溶媒(w1)に添加した場合に、リポソーム含有製剤の薬剤濃度を、添加しなかった場合には達成することができなかった範囲、代表的な目安としては5mg/mL以上にすることのできる物質となる。
なお、溶解助剤(s)は、リポソーム膜を強化、安定化する作用を通じて上記のような本発明の作用効果に寄与しうると考えられるともに、後述するように高水溶性薬剤(d)を水性溶媒(w1)に過飽和状態で溶解させることもできるという面からも本発明の作用効果に寄与しうる物質といえる。
そのような溶解助剤(s)は、注射剤の添加剤として公知である物質の中から選択することができるが、logD(the logarithm of the distribution coefficient)が−1以下の化合物が好ましい。なかでも、logDが−3以下の化合物は、高水溶性薬剤(d)を過飽和で溶解させることを可能とする場合があるため好ましい。logDが−1以下の化合物としては、たとえば下記表に示すものが挙げられ、それぞれの化合物について、logP(the logarithm of the partition coefficient)の値を併記する。これらはMarvin Sketch(Chem Axon, Ltd.)のデフォルトの設定を用いて計算した。本明細書において特に断らない限り、logDはpH7.4における値である。
なお、注射剤の添加剤としては、イソプロパノール(logD=0.25)、プロピレングリコール(logD=−0.79)、モノエタノールアミン(logD=−0.78)なども公知であるが、これらの物質はリポソームの脂質膜を破壊する作用を有するため、本発明の溶解助剤(s)として用いるには不適切である。
Figure 0005983608
・水相液(W1)・(W2)・(W3)
一次乳化工程で用いられる第一の水相液(W1)はW1/Oエマルションの水相を構成し、二次乳化工程で用いられる第二の水相液(W2)はW1/O/W2エマルションの外水相を構成し、水相置換工程で用いられる第三の水相液(W3)は、最終的なリポソーム含有製剤(リポソーム分散液)の外水相を構成する。
水相液(W1)は、公知のリポソームの製造方法(特に二段階乳化法)と同様、水、または水にpH調整のための酸および塩を添加して得られる緩衝液に、高水溶性薬剤(d)および脂質成分(f1)を溶解することにより調製されるものであり、必要に応じて、水と相溶する他の溶媒、浸透圧調整のための塩類・糖類などをさらに溶解させてもよい。本明細書において、水相液(W1)から高水溶性薬剤(d)および溶解助剤(s)を除外した、水、緩衝液、または高水溶性薬剤(d)および溶解助剤(s)以外の成分が溶解した水溶液等を、水性溶媒(w1)と称することがある。
水相液(W2)は、公知のリポソームの製造方法(特に二段階乳化法)と同様、一般的には水または上記のような緩衝液であり、必要に応じて上記のような成分や、その他の機能性成分(本発明ではたとえば水溶性乳化剤(r))をさらに溶解させてもよい。本明細書において、水相液(W2)から水溶性乳化剤(r)を除外した、水、緩衝液、または水溶性乳化剤(r)以外の成分が溶解した水溶液等を、水性溶媒(w2)と称することがある。
また、水相液(W3)としては、リポソームの安定性などの観点から、水溶液(W1)を構成する水性溶媒(w1)と同じ浸透圧を有する水性溶媒、典型的には水性溶媒(w1)と同一の水性溶媒が用いることが好適であるが、本発明の作用効果を阻害しない範囲で、水性溶媒(w1)と異なる水性溶媒を用いることも可能である。水相置換工程(4)において水相液(W3)として用いられるの水性溶媒(w1)と同一の水性溶媒には、高水溶性薬剤(d)および溶解助剤(s)を溶解させる必要はなく、緩衝液としての組成などその他の条件において同一であればよい。
・油相液(O)
二次乳化工程で用いられる油相液(O)はW1/Oエマルションの油相を構成する。油相液(O)は、有機溶媒(o)のみからなるものでもよいし、必要に応じて有機溶媒(o)に脂質成分(f2)等を溶解することにより調製されたものでもよい。
有機溶媒(o)は、リポソームを形成する段階で揮発させて除去する必要があるため、少なくとも溶媒除去工程(3)の条件下で揮発性でなければならない。たとえば、水よりも沸点が低い、常温常圧下で(必要に応じて撹拌することにより)揮発しうる有機溶媒が好ましい。特に、本発明においては、リポソームの安定性(膜透過性の高い薬剤の内包率向上)を考慮すると、溶媒除去工程(3)も含めた、リポソーム含有製剤の製造方法におけるすべての工程を5〜10℃で行うことが好ましいので、その場合の有機溶媒(o)としては、必要に応じて減圧や撹拌を用いることにより5〜10℃で揮発するものが好ましい。ここで、膜透過性とは、薬剤類分子がリポソームの脂質2分子膜を通過しやすいかどうかという指標である。薬剤類の分子構造によってはその脂溶性構造部位の影響で脂質2分子膜内部に局在する脂溶性の脂肪鎖構造部分を通過しやすくなるため、高水溶性薬剤であってもまったく脂肪鎖構造部分を通過できないというわけではない。この指標はたとえば、リポソーム含有製剤をある温度で静置して、一度内包した薬剤類が経時的に外水相に移行しているかどうかを、内水相と外水相の薬剤濃度を測定して知ることができる。たとえば、膜透過性の高い薬剤として、抗がん剤のシタラビンをあげられる。また、脂肪鎖構造部分を通過しやすいかどうかは、化合物の構造による影響も重要なファクターであるが、一般的に温度上昇によって脂質分子の運動エネルギーが上昇し、このエネルギーが脂肪鎖構造部分同士の疎水性相互作用に拮抗して構造強度が弱まってわずかな隙間が生じることから、多くの薬剤は温度上昇によって膜透過性が増すことも周知の事実である。
有機溶媒(o)としては、公知のリポソームの製造方法(特に溶媒除去工程を含む二段階乳化法)と同様の有機溶媒を用いることができ、上記の揮発性に関する条件を満たすものを用いることが好ましい。たとえば、ヘキサン(n−ヘキサン)やクロロホルム、シクロヘキサン、1,2‐ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2‐ジメトキシエタン、1,1,2‐トリクロロエテン、t‐ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ペンタンなどの非水溶性有機溶媒を用いることができる。また、アセトニトリル、メタノール、アセトン、エタノール、2‐プロパノールなどの水溶性有機溶媒や、上記以外のエーテル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化エーテル、エステル類を用いることもできる。たとえば、クロロホルム、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ヘキサン、t‐ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ペンタン、アセトニトリル、メタノール、アセトン、エタノール、2‐プロパノールなどが好ましく、溶媒除去工程(3)を上記の範囲の低温で行う場合は、低沸点溶媒として知られているジクロロメタン(大気圧沸点40℃)、ジエチルエーテル(同30℃)、アセトン(同56.5℃)、ヘキサン(同69℃)などが特に好ましい。
これらの有機溶媒は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。たとえば、得られるナノサイズのW1/Oエマルション粒子の単分散性が良好なものとなることから、ヘキサンを主成分(50体積%以上)とする有機溶媒、好ましくはヘキサンが60体積%以上である有機溶媒を有機溶媒(o)とすることが好適である。
・脂質成分(f1)・(f2)
一次乳化工程で用いられる油相液(O)に溶解している脂質成分(f1)は主としてリポソームの脂質二重膜の内膜を構成し、余剰分は外膜も構成しうる。一方、必要に応じて二次乳化工程またはその他の一次乳化工程以外の工程で添加される脂質成分(f2)は主としてリポソームの外膜を構成する。脂質成分(f1)および(f2)は、同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。
なお、本明細書中、脂質成分(f1)および必要に応じて用いられる脂質成分(f2)を、リポソームを構成する脂質成分(f)と総称することもある。二次乳化工程で脂質成分(f2)を添加しなかった場合は、リポソームを構成する脂質成分(f)は脂質成分(f1)のみで構成され、二次乳化工程で脂質成分(f2)を添加した場合は、リポソームを構成する脂質成分(f)は脂質成分(f1)および(f2)で構成される。「リポソームを構成する脂質成分(f)」には、後述する結晶状脂質も非結晶状態の脂質も、どちらも含まれる。
脂質成分(f)の配合組成は特に限定されるものではなく、公知のリポソームの配合組成に準じたものとすることができる。脂質成分(f)は、単一の脂質からなるものであってもよいし、複数の脂質からなるもの(混合脂質成分)であってもよい。一般的には、リン脂質(動植物由来のレシチン;ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸またはそれらの脂肪酸エステルであるグリセロリン脂質;スフィンゴリン脂質;これらの誘導体等)と、脂質膜の安定化に寄与するステロール類(コレステロール、フィトステロール、エルゴステロール、これらの誘導体等)とを中心に構成され、さらに糖脂質、グリコール、脂肪族アミン、長鎖脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等)、その他各種の機能性を賦与する化合物が配合されていてもよい。また、脂質成分(f2)には、たとえばPEG化リン脂質のような、リポソーム表面(リポソームの脂質二重膜の外膜)を修飾して各種の機能性を賦与するための脂質を配合することも可能である。これらの化合物の脂質成分中の配合比も、脂質膜の安定性やリポソームの生体内での挙動などの性状を考慮しながら、用途に応じて適切に調整すればよい。
これらの脂質成分は、通常は、容易に入手できる結晶状脂質である(本明細書において、結晶状脂質を脂質成分(fc)と称する場合がある。特に、脂質成分(f1)および(f2)に該当する結晶状脂質を指す場合に、それぞれ脂質成分(f1c)、(f2c)と称する場合がある。)。これに代えて、またはこれと共に、非結晶性状態の脂質をあらかじめ調製しておいて、本発明に使用することもできる(本明細書において、非結晶状態の脂質を脂質成分(fn)と称する場合がある。特に、脂質成分(f1)および(f2)に該当する非結晶状態の脂質を指す場合に、それぞれ脂質成分(f1n)、(f2n)と称する場合がある。)。非結晶性の脂質成分(fn)は、結晶状態の脂質成分の場合ほど脂質分子が相互に強固に結合していないことから、固体状態の脂質から脂質分子が分離しやすく、特に水相中で脂質分子の再配列がより有利に行われる傾向にある。したがって、非結晶性の脂質成分(fn)を用いると、W1/O/W2エマルションの形成が円滑に行われることになり、その結果、リポソームの形で内包しようとする物質の内包率も向上することになる。これは、脂質の配列速度が向上し、目的の構造体が早く得られるため、配列途中の構造体が崩壊する速度に勝っていることが要因と考察できる。非結晶性の脂質成分(fn)が外水相に含まれていると(すなわち、非結晶性の脂質成分(f2n)を添加した水相液(W2)を用いる場合には)、二次乳化に際して水相と油相との界面に脂質分子が速やかに再配列し、リポソームを好適に生成することができる。一方、非結晶性の脂質成分(fn)が水相液(W1)あるいは油相液(O)に添加されると、結晶状態の脂質成分を添加したときと比べて小さなリポソーム粒子を得ることができ、且つその粒度分布もシャープになるので好ましい。
本発明で用いられる非結晶性の脂質成分(fn)として、例えば、ラメラ構造の脂質成分が挙げられる。ここで、「ラメラ構造」とは、液体と固体の中間にある物質を示す液晶状態の中の一つとして知られており、水・脂質・水・脂質・・・のように水相と脂質相とが交互に繰り返してなる層状構造をいう。リン脂質などの両親媒性化合物は一つの分子内に水相と脂質相とが共存するため、こうした化合物が一列に並ぶことでこのような層状構造をとることで安定状態に落ち着いている。リン脂質の層状構造は、バンガム法による古典的なリポソーム製造法のプロセスの一部で得ることができ、脂質フィルム層構造がその例である。細密充填により結晶格子を形成して安定状態に落ち着いている結晶性の脂質と比較して、層状構造は弱い相互作用で繰り返し配列しただけの状態なので、溶媒分子などの外部要因で容易にその配列を解列し、また再配列することができることが特徴である。
ここで、そのような「ラメラ構造」の脂質の一形態として、フィルム状脂質も挙げられる。フィルム状脂質は、例えば、結晶状脂質をクロロホルムに完全溶解してナスフラスコ(「ナスコル」とも呼ばれる。)に入れ、エバポレーターでゆっくりとクロロホルムを留去し、ナスフラスコ壁面に配列した脂質膜を回収することで用意できることが知られている。このような回収方法は、古典的リポソーム製造法であるバンガム法の一工程として知られている。
その他、本発明では、「非結晶性の脂質成分(fn)」が、ラメラ構造を有していない通常の多孔質構造を有していてもよい。
このような非結晶性の脂質成分(fn)の配合組成としては、非結晶性の成分を用いることを除いては、いずれも上記脂質成分(f1)および(f2)の場合と同様の配合組成を適用することができる。例えば、特公平6−74205号公報に記載されている方法により得られる混合脂質を用いることができる。したがって、本発明においては、非結晶性の脂質成分(fn)が、単一の脂質からなるものであってもよいし、複数の脂質からなるもの(混合脂質成分)であってもよい。
− リポソーム含有製剤の製造方法 −
本発明によるリポソーム含有製剤の製造方法は、少なくとも(1)一次乳化工程、(2)二次乳化工程、(3)溶媒除去工程および(4)水相置換工程を含み、必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。各工程を行うためには、公知の装置・機器類その他適切な手段を用いればよく、各工程の手段の選び方によっては一次乳化工程から溶媒除去工程までを連続的に行うことも可能である。
なお、高水溶性薬剤(d)の中には高温により分解されるおそれのあるものも存在するので、そのようなものを高水溶性薬剤(d)としてリポソームに内包させる場合には、上記工程(1)〜(4)および必要に応じて含まれるその他の工程はすべて、その分解温度よりも低い温度条件下、たとえば5〜10℃の範囲の温度条件下で行うことが好ましい。各工程における温度調節は、公知の適切な手段を用いて行うことができる。すなわち、使用する原材料を含む溶液を容器ごと低温の恒温槽に付し、生成したエマルション溶液を溶液を容器ごと低温の恒温槽に付すことで、薬剤が加温されることを避けることができる。さらに、上記工程(1)〜(4)などをオートメーション化して低温室で実施すればなお効果的である。このような態様の下では、蛋白質など熱に弱い物質を高水溶性薬剤(d)として用いたリポソームを製造することも可能となる。特に製造管理の厳しい医薬品グレードの製造では、内包する薬剤の劣化はわずかであっても問題視されるので、低温での製造は劣化防止の有効な対策になりえる。
(1)一次乳化工程
一次乳化工程は、高水溶性薬剤(d)および溶解助剤(s)が溶解している水相液(1)と、脂質成分(f1)が溶解している油相液(O)とを乳化することにより、W1/Oエマルションを調製する工程である。通常、水相液(W1)はあらかじめ水性溶媒(w1)に高水溶性薬剤(d)および溶解助剤(s)を溶解させて調製しておき、油相液(O)はあらかじめ有機溶媒(o)に脂質成分(f1)を溶解させて調製しておく。
本発明におけるW1/Oエマルションの調製方法としては、超音波乳化法、撹拌乳化法、膜乳化法、マイクロチャネル乳化法、高圧ホモジナイザーを用いた方法など、公知のリポソームの製造方法(一次乳化工程)に用いられている乳化方法を用いることができる。微小粒径の観点からは、超音波乳化機から発振される超音波を用いる超音波乳化法や、高圧ホモジナイザーを用いる乳化法が好ましい。ここで、超音波乳化機を用いる場合、パルス状に発振される超音波(以下、「パルス超音波」と呼ぶ。)を適用して一次乳化を行うことが好ましい。かかる方法によれば、一次乳化に伴って生じる発熱を抑えることができるので、本発明で用いられる工程(1)〜(4)を含む全ての工程を低温(例えば、5〜10℃)で行うことも可能となる。また、超音波のエネルギーは超音波プローブの周りに強く伝わるため、断続的なパルスであれば一か所に長時間超音波が集中することを防げるので、均一になるのが早いと考え、これは、体積平均粒径を小さくするとともに、粒度分布を狭くすることに寄与すると考えられる。また、熱などに対して不安定な薬剤を封入する際には、乳化に必要なエネルギーの小さいマイクロチャネル乳化法、SPG膜などを用いた膜乳化法が好ましい。また、あらかじめ撹拌乳化等で大きな粒径のW1/Oエマルションを調製した後に、孔径の小さな膜を通過させることでより小さな粒径のW1/Oエマルションを調製するような、プレミックス膜乳化法を用いてもよい。
本発明では、リポソームに高水溶性薬剤(d)を内包させるために、一次乳化工程で用いる水性溶媒(w1)に高水溶性薬剤(d)および溶解助剤(s)を添加して溶解させる。
水相(W1)中の溶解助剤(s)の濃度は、それぞれの溶解助剤の水に対する溶解度などに応じて、本発明の作用効果が奏される範囲で調整することができ、一律に規定されるべきものではないが、たとえば高水溶性薬剤(d)の重量に対して5〜150重量%となるような濃度とすればよい。
一方、水相(W1)中の高水溶性薬剤(d)の濃度は、薬剤濃度の高いリポソーム含有製剤を製造するという観点からは、その水に対する溶解度に応じて、なるべく高濃度とすることが好適である。
また、適切な手段により、高水溶性薬剤(d)を過飽和状態で水性溶媒(w1)に溶解させる、つまり水に対する溶解度より多い量の高水溶性薬剤(d)を水性溶媒(w1)に溶解させることもできる。このような過飽和状態は、次に述べるような質量比(d/f)の条件を満たしやすくなることから好ましい。
高水溶性薬剤(d)を過飽和状態で水性溶媒(w1)に溶解させるための手段は特に限定されるものではないが、本発明における代表的な手法としては、前述した溶解助剤(s)を用いる方法が挙げられる。溶解助剤(s)として例示される物質の中には、たとえばジェムザールと併用されるD−マンニトールのように、高水溶性薬剤(d)を通常の溶解度以上に水に溶解させる作用を有するものが含まれる。したがって、そのような物質を溶解助剤(s)として用いることにより、高水溶性薬剤(d)の内包量を著しく高めることができるようになる。また、その他の手法としては、アモルファス状態またはナノ粒子状結晶の高水溶性薬剤(d)を水性溶媒(w1)に溶解させる手法が挙げられる。再結晶操作を経て精製された結晶状態の薬剤原薬を水に溶解して凍結乾燥する、あるいは有機溶媒に溶解して溶媒を減圧留去することで、一般的にアモルファス状態の薬剤を得ることができる。また、ナノ粒子状結晶の薬剤は、たとえばElan社のナノクリスタル(NanoCrystal)テクノロジーを参考に調製することができる。ただし、過飽和状態からの薬剤結晶の析出は容易に進行するので、過飽和状態での実験作業は数時間以内に限られるのが一般的である。しかしながら、析出のメカニズムの研究が進むにつれ、過飽和技術も進歩して工業化に耐えうるようになってきたので、長時間に及ぶ実験作業も現実味を帯びてきている。すなわち、析出のメカニズムとしては、溶液中で析出が起こるbulk precipitation mechanism(BPM)と固体表面で析出が起こるsurface precipitation mechanism(SPM)の2種類が提唱されており、高水溶性薬剤(d)がどちらに属するかを判別して、適切な過飽和化を実現できるようになってきている。実際に、結晶化の刺激となる埃などの要因を排除すれば、実験作業は半日以上問題ないケースもある。
・薬剤重量比(d/f)
リポソームを構成する脂質成分(f)に対する高水溶性薬剤(d)の重量比(d/f)は大きい方が好ましい、つまり、より少量の脂質成分(f)を用いてより多量の高水溶性薬剤(d)をリポソームに内包させることが好ましい。
高水溶性薬剤(d)の薬剤重量比(d/f)は、次式により算出される:薬剤重量比=リポソームに内包されている高水溶性薬剤(d)の質量/リポソームを構成する脂質成分(f)の質量。
この薬剤重量比(d/f)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.5以上に設定することができる。なお、薬剤重量比(d/f)の上限値は、リポソームの粒径(粒径が大きいほどリポソームを構成する脂質成分(f)の量は少なくなる)と、高水溶性薬剤(d)の水に対する溶解度や内包率(これらが高いほどリポソームに内包される高水溶性薬剤(d)の量は大きくなる)によって変動し、一概に設定できるものではない。
水相置換工程(4)において上記のような薬剤重量比(d/f)の条件を満たすリポソームを調製するためには、一次乳化工程(1)において、所望する重量比(d/f)の条件を満たす量の高水溶性薬剤(d)および混合脂質成分(f)を、それぞれ水性溶媒(w1)および有機溶媒(o)に溶解すればよい。
以下、高水溶性薬剤(d)および混合脂質成分(f)の必要量の計算例(薬剤重量比を0.5〜5とする場合)を示す。
水溶性薬剤を内包させる目的は、水溶性薬剤を内水相(W1)に溶解することによって達成される。したがって水溶性の高い薬剤類は、内水相(W1)に高濃度で溶解すれば、内包される絶対量は増やすことができる。一方、内水相(W1)の量は適宜変えることができ、所定の粒径の粒子(W1/O)を作成しようとすれば、それに必要な脂質の量(個数)は計算できる。たとえば、100 nm のW1/Oエマルション(粒子体積0.0005 μm3)を形成する場合、W1相(内水相) 1.0 mLで製造すれば2.0 x1015個のW1/O粒子が生成する計算である。一方、100 nm のW1/Oナノエマルション(粒子表面積2500 nm2)はリン脂質分子(レシチン表面積0.7 nm2) 0.4 x105個で構成されている、と計算される。したがって、薬液 1.0 mL の1次乳化に必要な脂質量は、2.0 x1015個x0.4 x105個=0.8 x1020個、すなわち0.132 mmolである。レシチン以外の脂質分子も、その表面積はおおよそ0.7 nm2として差し支えないため、脂質類の総量として0.132 mmolが100 nm のW1/Oナノエマルションを作成するのに必要最少量と考えられる。リポソームを作成するには、その倍の0.264 mmolが必要であり、代表的なリン脂質のDPPCで分子量換算すると193 mgが必要である。
そこで、薬剤を1.0 mLに溶解し、100 nmのリポソームを作成する場合を考えると、薬局法記載の通りシタラビンは0.1〜1.0 g溶解するので、薬剤重量比0.1 g/0.193 g〜1.0 g/0.193 g、イオヘキソール(造影剤)は1.0 g以上溶解するので、薬剤重量比1.0 g/0.193 g以上である。これは、脂質量を低減して効率的に薬剤を内包できることを意味し、脂質の投与量を減らすことができる点、臨床上有意義であり、本手法により薬剤重量比0.5〜5が達成できる。さらに、より多くの薬剤を溶解すると、一般的に飽和状態に近づき粘度が上昇する。本手法により、内水相の粘度として10mPa・sまで内包可能である。
また、100 nmより大きい粒子を製造する場合には、脂質の必要量はそれより少なくて済むので、より効率的ということになる。
必要であれば、高水溶性薬剤(d)に加えて脂溶性薬剤をリポソームの脂質膜中に内包させることも可能である。その場合は、脂溶性薬剤を一次乳化工程の有機溶媒(o)に溶解させればよい。
水性溶媒(w1)のpHは、通常3〜10の範囲で調整され、たとえば、混合脂質成分にオレイン酸を用いる場合、pHは6〜8.5とすることが好ましい。pHを調整するためには適切な緩衝液を用いればよい。
一次乳化工程におけるその他の条件、たとえば、有機溶媒(o)に対する混合脂質成分(f1)の質量比、有機溶媒(o)と水性溶媒(w1)の体積比、W1/Oエマルションの体積平均粒径などは、公知のリポソームの製造方法(一次乳化工程)に準じて、続く二次乳化工程の条件や最終的に調製するリポソームの態様などを考慮しながら、適宜調節することができる。通常、有機溶媒(o)に対する混合脂質成分(f1)の質量比は1〜50質量%であり、有機溶媒(o)と水性溶媒(w1)の体積比は100:1〜1:2であるが、前述したようなリポソームを構成する脂質成分(f)に対する高水溶性薬剤(d)の質量比に関する条件を考慮しながら、適宜調整することができる。また、W1/Oエマルションの体積平均粒径は、好ましくは50〜1,000nm、より好ましくは50〜200nmである。
(2)二次乳化工程
二次乳化工程は、上記一次乳化工程工程(1)により得られたW1/Oエマルションと水相液(W2)とを乳化することによりW1/O/W2エマルションを調製する工程である。
一次乳化の際に添加された混合脂質成分(f1)のうちW/O界面に配向しきれなかった余剰分、あるいは必要に応じて二次乳化の際に追加される混合脂質成分(f2)がO/W界面に配向することにより、W1/O/W2エマルションが形成される。
必要に応じて用いられる混合脂質成分(f2)は、水相液(W2)およびW1/Oエマルションのどちらに添加されることもある。たとえば、混合脂質成分(f2)が主として水溶性脂質からなる場合、あらかじめそれを水性溶媒(w2)に溶解させた水相液(W2)を調製しておき、そこにW1/Oエマルションを添加して乳化処理を行うようにすることができる。あるいは、W1/O/W2エマルションを調製した後や、後述する溶媒除去工程(3)の後に、混合脂質成分(f2)を添加することも可能である。一方、混合脂質成分(f2)が主として脂溶性脂質からなる場合、あらかじめそれをW1/Oエマルションの油相液(O)に添加して溶解させておき、それと水相液(W2)との乳化処理を行うようにすることができる。
なお、上記工程(1)により得られたW1/Oエマルションと、非結晶性の混合脂質成分(f2n)を添加した水相液(W2)とを乳化することによりW1/O/W2エマルションを調製することもできる。この場合、水相液(W2)に非結晶性の混合脂質成分(f2n)を添加しているので、結晶状態の脂質成分(f2c)を添加する場合と比べて、リポソームに内包される高水溶性薬剤(d)の内包率が向上する利点がある。
ここで、非結晶性の脂質成分(fn)は、水相液(W2)に添加するとともに、W1/Oエマルションにも添加する形で用いることもできる。この場合、非結晶性の混合脂質成分(fn)は、W1/Oエマルションに溶解または分散した状態となる。
W1/O/W2エマルションを調製するための方法は特に限定されるものではなく、従来のW1/O/W2エマルションの製造方法でも用いられているような方法を採用することができる。以下に記載した事項以外の二次乳化工程における条件、たとえば、W1/Oエマルションと水性溶媒(w2)の体積比、W1/O/W2エマルションの体積平均粒径などは、公知のリポソームの製造方法(二次乳化工程)に準じて、最終的に調製するリポソームの用途などを考慮しながら適宜調節することができる。
たとえば、乳化操作時の液滴の崩壊および液滴からの内包物質の漏出を抑えるため、乳化処理に大きな機械的剪断力を必要としないマイクロチャネル乳化法を用いることが好適である。マイクロチャネル乳化法では、たとえば、シリコン製マイクロチャンネル基板およびこの基板上部を覆うガラス板から構成される、マイクロチャネル乳化装置モジュールを使用する。上記基板およびガラス板により形成される溝型マイクロチャネルの出口側、あるいは上記基板上に加工された貫通型マイクロチャネルの出口側には、外水相(W2)を満たしておき、マイクロチャネルの入口側からW1/Oエマルションを圧入することで、W1/O/W2エマルションを形成できる。上記基板としては、デッドエンド型、クロスフロー型、貫通孔型など、種々の形態のものを用いることができる。
また、W1/Oエマルションを乳化膜を通過させて外水相(W2)中に液滴として分散させることによりW1/O/W2エマルションを調製する、膜乳化法を用いることもできる。特に、直径0.1〜5.0μm程度の微細な細孔を有するSPG(Shirasu Porous Glass:シラス多孔質ガラス)で形成された乳化膜を用いる膜乳化法が好適であり、コストが安く処理量が多い、工業的に有利な方法とすることができる。
なお、W1/O/W2エマルションの平均粒径の単分散性を向上させるために、上記のような方法または他の方法による膜乳化でW1/O/W2エマルションを得た後、さらに1回ないし複数回、当該膜乳化で用いた膜と同じ膜またはそれとは異なる膜を用いてW1/O/W2エマルションの膜処理を行ってもよい。特に、膜乳化に用いた膜よりも小さな細孔径を有する膜を用いて膜処理を行うようにした場合、膜処理を行うことなく1回の膜乳化で所望の体積平均粒径および単分散性を有するW1/O/W2エマルションを調製使用とする場合に較べて、膜乳化および膜処理それぞれの膜への負荷(エマルションを膜に通過させるために必要な圧力)を小さくすることができ、それにより膜の長寿命化や二次乳化工程に要する処理時間の短縮を図ることができ、リポソームの生産性の向上および低コスト化にも有利である。
・撹拌乳化法
本発明のリポソーム含有製剤の製造方法の二次乳化工程(2)においては、機械的剪断力の生じる可能性のある撹拌乳化を用いても、粒度分布がシャープなリポソームが得られるW1/O/W2エマルションを調製することができる。
撹拌乳化については二液以上の流体を混合するために用いられる方法・装置を用いることができる。たとえば攪拌装置にはいろいろな形状の物が存在する。単に棒・板・プロペラ状の攪拌子を槽内で一定速度・一方向に回転させるものが多いが、攪拌子を間欠回転させたり逆回転させる場合もある。特殊な状況では複数の攪拌子を並べ交互に逆回転させたり、槽側に攪拌子と組合された突起あるいは板を取り付けて攪拌子が発生するせん断応力を増強させるなどの様々な工夫がなされる。攪拌子への動力伝達方法も様々であり、回転軸を介して攪拌子を回転させるものが殆どであるが、磁石を封入しテフロン(登録商標)等でコーティングした攪拌子を容器の外部から回転する磁界で動力を伝達するマグネチックスターラーも存在する。
本発明では、上記一次乳化工程(1)により得られたW1/Oエマルションと、水性溶媒(w2)とを混合乳化する際に、下記式(e1)の条件を満たす撹拌乳化により実施することが好ましい。
0.02385 <r×n/L' < 0.1431 (e1)
上記式(e1)において、rは攪拌子の半径[m],L'はW1/Oエマルションの粒径[nm],nは攪拌子の毎分回転数[rpm]を表す。
ここで、上記式(e1)は、流体の移動に伴う運動量を表したニュートン則のひとつである、
τ (せん断力) = μ (粘度) × v(速度)/ L (長さ) (e2)
および以下に示すいくつかの仮説に基づいて考案し、実験により確からしさを検証したものである。
先に示した通り二次乳化工程(2)における混合乳化は、撹拌によるせん断現象によっても進行するし、マイクロチャネルにおけるちぎれ現象によって進行する。このちぎれ現象は流体の表面張力というが働いて起こる現象ととらえられ、その力の大きさはたとえばSugiura, Langmuir 2001,5562によって測定されている。すなわち、マイクロチャネルにおけるオリーブ油液滴形成の実測表面張力が4.5 mN/mであった。ところで、流体力学の基礎方程式(オイラー方程式)のさまざまな展開が研究者によって進められ、流体に働く力の近似式がすでに提示されている。慣性力、重力、粘性力、界面張力などが流体に働く力として知られており、界面張力は次の式で近似される。
表面張力=界面張力(単位長さあたりの表面張力)× 系の代表長さ
=ρ× L
液滴が直径17.8μmで生成していることからSugiuraらの系での界面張力は、2.5×102 [Pa]と算出される。
4.5×10-3 [N/m] /17.8×10-6 [m] = 2.5×102 [Pa]
流体に働く力として界面張力が支配的なマイクロチャネルの乳化条件と、せん断力が支配的な撹拌の乳化条件を同列の扱うことには無理があり、次の仮説を数学的に検証することは困難ではあるが、最終的には実験的な検証から式(e1)の妥当性が判明した。その仮説とは、この界面張力を同等の力を、攪拌におけるせん断力として与えることにより同様のちぎれ現象が起こるとの仮定である。すなわち、せん断力をτ=2.5×102 [Pa]と仮定し、粘度μについて、水とヘキサンの中間の値としてμ=0.0005(=0.5×10-3) [PaS]と仮定し、LがW1/Oエマルション粒径の10倍であると仮定すると、上記式(e2)は、攪拌子の半径r[m],W1/Oエマルションの粒径L'[nm],攪拌子の毎分回転数n[rpm]を用いて、
2.5×102 = 0.0005×(2π×r×n/60)/(10×L'×10-9
(e2')
と表すことができる。ここで、LをW1/Oエマルションの10倍と仮定したのは、W1/Oエマルション粒径の10倍程度の粒径を有する粒子をせん断する力であれば、W1/Oエマルションはせん断されないと推定したからである。
上記(e2')をさらに変換すると、
r×n/L' =(2.5×102)×(10×10-9)/(0.0005×2π)×60
≒ 0.0478
と算出される。
ここで、界面張力と同程度という仮定を、界面張力の0.5倍から3倍程度としますと、これに対応してr×n/L'もまた、0.0478の0.5倍から3倍程度となり、
0.0478×0.5 <r×n/L' < 0.0478×3
すなわち、
0.02385 <r×n/L' < 0.1431 (e1)
と導き出される。
本発明においては、上記攪拌子の毎分回転数nが100〜10000であると、攪拌操作の取り扱いの面から好ましい。
さらに、小型観賞用水槽のエアレーション装置や工業用スプレードライ装置等、粘度の低い流体では攪拌子を使わずに、槽の流体や外気を槽外に設置したポンプで加圧して槽内にいきよい良く吹き込むことで槽内を攪拌する装置も存在する。また、ミルと呼ばれる粉砕機としてハンマーミル、ピンミル、オングミル、コボルミル、アスペックミル、ボールミル、ジェットミル、ロールミル、コロイドミル、ディスパーミルなどがあるが、これらは、圧縮力・圧搾力・膨張力・せん断力・衝撃力・キャビテーション力などの機械的な力の作用により流体を混合するものである。したがって、本発明においては、攪拌子による攪拌の代わりに、これらの装置を用いて攪拌を行ってもよい。さらに、こうした機械的な方法以外にも、電気的な撹拌方法を使用することもできる。
・水溶性乳化剤(r)
二次乳化工程で用いられる水相液(W2)には、必要に応じて、高水溶性薬剤の内包率の向上および単胞リポソームの効率的な形成にさらに寄与しうる、リポソーム脂質膜を破壊しない水溶性乳化剤(r)を適量添加してもよい。
代表的な水溶性乳化剤(r)としては、タンパク質、多糖類、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられる。多糖類は、W1/O/W2エマルションの界面、すなわち一次乳化物であるW1/Oエマルション(粒子)と外水相(W2)の界面への配向性が比較的小さいため、外水相(W2)全体に分布し、W1/O/W2エマルション中の粒子同士が接合しないようにすることでリポソームを安定化する。タンパク質および非イオン性界面活性剤は、W1/O/W2エマルションの界面への配向性が比較的高く、保護コロイドのようにW1/Oエマルション(粒子)を取り囲むことで安定化する。W1/O/W2中の粒子同士が合一して粒径が大きくなると、液中乾燥法等による溶媒除去が不均一になり内包薬剤が漏れ出しやすくなるなどリポソームが不安定化してしまうが、タンパク質はそのような合一による不安定化を抑制することができ、単胞リポソームの形成効率および薬剤の内包率の向上に寄与する。また、W1/O/W2エマルションの界面に配向した非イオン性界面活性剤は、溶媒の除去にともないリポソームが形成されてゆく際に個々のリポソームを解けやすくすることができ、やはり単胞リポソームの形成効率および薬剤の内包率の向上に寄与する。
上記タンパク質としては、ゼラチン(コラーゲンを加熱により変性させた可溶性のタンパク質)、アルブミンやトリプシンなどが挙げられる。ゼラチンは通常、数千〜数百万の分子量分布を有するが、たとえば重量平均分子量が1,000〜100,000であるものが好ましい。医療用ないし食品用として市販されているゼラチンを用いることができる。アルブミンには、卵アルブミン(分子量約45,000)、血清アルブミン(分子量約66,000…ウシ血清アルブミン)、乳アルブミン(分子量約14,000…α−ラクトアルブミン)などが含まれ、たとえば卵アルブミンである乾燥脱糖卵白が好ましい。
上記多糖類としては、デキストラン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、マルトトリオース、アミロース、プルラン、ヘパリン、デキストリンなどが挙げられ、たとえば重量平均分子量が1,000〜100,000のデキストランが好ましい。
上記イオン性界面活性剤としては、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、オクチルグルコシド等のアルキルグリコシド、ポリアルキレンオキサイド系の化合物、たとえば「Tween 80」(東京化成工業株式会社,ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート,分子量1309.68)や「プルロニック F-68」(BASF、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600)の製品や、重量平均分子量が1000〜100000のポリエチレングリコール類などが挙げられる。ポリエチレングリコール(PEG)類は、製品として「ユニルーブ」(日油株式会社)、GL4-400NP、GL4-800NP(日油株式会社)、PEG200,000(和光純薬)、マクロゴール(三洋化成工業株式会社)などが挙げられる。
水溶性乳化剤(r)の分子量は、小さすぎると脂質膜中に混入しやすくなってリポソームの形成を阻害するおそれがあり、逆に大きすぎるとW1/O/W2エマルションの外水相中への分散や界面への配向の速度が遅れてリポソームの合一や多胞リポソームの形成につながるおそれがある。そのため、水溶性乳化剤の重量平均分子量は1,000〜100,000の範囲内にあることが好ましい。また、この範囲の重量平均分子量であると、リポソームの高水溶性薬剤の内包率が良い。
上記のようにして水溶性乳化剤(r)を用いる場合、水性溶媒(w2)への添加量などの条件は特に限定されるものではなく、公知のリポソームの製造方法に準じて、適切なものとすればよい。
(3)溶媒除去工程
溶媒除去工程(溶媒除去工程)は、前記二次乳化工程(2)により得られたW1/O/W2エマルションの油相(O)に含まれる有機溶媒(o)を除去し、混合脂質成分(f1)および必要に応じて添加される混合脂質成分(f2)からなる脂質二重膜を有するリポソームを形成させる工程である。有機溶媒の除去の進行につれて、リポソームを構成する脂質の水和が進み、多胞リポソームが解けて単胞のリポソーム状態にばらけるか、またはW1/O/W2エマルションの界面に近い位置から単胞のリポソームがちぎれて形成されるものと考えられる。
溶媒除去工程には、W1/O/W2エマルションを回収して開放容器内に移し、W1/O/W2エマルションに含まれる有機溶媒(o)を蒸発させて除去する方法(液中乾燥法)を用いることが好適である。
上記の液中乾燥法では、必要に応じて、撹拌、温度調節(加熱または冷却)、減圧等の操作を加えてもよく、その場合には撹拌、温度調節、減圧等の手段を備えた装置(エバポレーター等)を用いてもよい。
溶媒除去は、W1/O/W2エマルションを開放容器内に静置したままでも行うことができるが、撹拌すればより均一に溶媒除去が進み、気液界面が広がることで溶媒除去にかかる時間も短縮される。二次乳化工程において撹拌乳化法によりW1/O/W2エマルションを調製した場合は、その後さらに撹拌を継続して溶媒を除去するといったように、二次乳化工程と溶媒除去工程を連続的に行うことも可能である。
温度条件は、有機溶媒(o)として用いる化合物の種類に応じて、突沸することなくそれを蒸発させることのできる範囲で調整すればよいが、0〜60℃の範囲が好ましく、0〜25℃がより好ましく、5〜10℃が特に好ましい。
また、減圧条件は、有機溶媒(o)の飽和蒸気圧〜大気圧の範囲内に設定されることが好ましく、溶媒の飽和蒸気圧の+1%〜10%の範囲内に設定されることがより好ましい。温度調節および減圧操作は、有機溶媒(o)が突沸しないようにするために組み合わせて用いてもよく、例えば、熱に弱い薬剤をリポソームに内包させる場合には、より低温側でかつ減圧条件で溶媒を除去することが好ましい。
上記のような製造方法(二段階乳化法)により得られるリポソームには、W/O/Wエマルション由来の多胞リポソームがある程度の割合含まれることがあるが、これを減少させるために、撹拌、減圧、またはそれらの組み合わせを行うことが効果的である。たとえば、溶媒の大半が抜ける時間より長く減圧および撹拌を行なうことにより、リポソームを構成する脂質の水和が進み、内包物の漏出を起こさないまま、多胞リポソームが解けて単胞のリポソーム状態にばらけることが可能である。
(4)水相置換工程
水相置換工程は、上記溶媒除去工程(3)を経て得られたリポソーム分散液から水相液(W2)を除去し、水相液(W3)を添加して、リポソーム製剤を調製する工程である。この水相置換工程は、水相液(W2)に含まれることがある水溶性乳化剤(r)を除去することを主な目的としている。ただ、本発明では、この水相置換工程において、除去する水相液(W2)の量よりも、添加する水相液(W3)の量を少なくする場合がある。そのような場合、この水相置換工程は、実質的に濃縮工程としての性格をも有する。
ここで、水相液(W2)の除去は、リポソームが破壊されない限り特に方法のいかんを問うものではないが、例えば、上記工程(3)を経て得られたリポソーム分散液を超遠心分離に付すあるいは限外濾過に付すことにより行うことができる。少量製造の場合には超遠心分離が、大量製造の場合には限外濾過が有効と考えられる。
また、水相液(W3)は、上記「水相液(W1)・(W2)・(W3)」の項で上述したように、水性溶媒(w1)と同一の、あるいは本発明の作用効果を阻害しない範囲で水性溶媒(w1)とは異なる水性溶媒(w3)からなる。ここで、水相液(W3)として用いられる水性溶媒(w3)は、緩衝液としての組成などその他の条件において水性溶媒(w1)と同一であればよく、水相液(W3)には高水溶性薬剤(d)を溶解させる必要はない。
水性溶媒(w3)の添加量は、目的とするリポソーム含有製剤の薬剤濃度に応じて調整することができる。薬剤濃度を高めたい場合には、水性溶媒(w3)の添加量を極力少なくすればよい。実質的には、内水相W1を含む微粒子リポソームが分散状態になるために必要最小限の水性溶媒(w3)の添加が必要となり、その添加量はW1の量と等しいかそれ以上と考えられる。したがって、本工程で得られるリポソーム含有製剤の薬剤濃度は、内水相W1に含まれる薬剤濃度の半分あるいはそれ以下になると考えられる。
この水相置換工程(4)を経て得られるリポソーム含有製剤は、高水溶性薬剤(d)を内包するリポソームが水性溶媒(w1)中に分散した形態をとる。実質的に全ての高水溶性薬剤(d)はリポソームに内包された状態にある。
(5)任意工程
必要に応じてリポソーム含有製剤の製造方法に含まれていてもよい、上記工程(1)〜(4)以外の任意工程としては、たとえば、リポソームの粒径を所定の範囲(体積平均粒径50〜200nm)に調整し、上述したような製造方法により副生するまたは残存する多胞リポソームをばらして単胞リポソームにすることができる、フィルターを用いる整粒工程が挙げられる。上記多胞リポソームは、その内部にW/O由来の粒径50〜200nm程度の水滴を多く含む構造であるので、W/Oの粒子径よりもわずかに大きな孔径のフィルターを通過させることで、粒径50〜200nm程度の単胞リポソームへ変換することができる。驚くべきことに、このような整粒工程の操作を行っても、フィルターでのリポソームの捕集や内包物の漏出はほとんど起こらない。このような操作をしても多胞リポソームが残った場合には、粒子除去用のフィルターにより捕集・除去してもよい。これらの工程は、溶媒除去工程(3)の後に設けられ、溶媒除去工程(3)から引き続き連続的に行われるようにしてもよい。
また、外水相中にある遊離した薬剤や分散剤を除く分離工程、リポソーム粒径が十分に小さいときに限るがろ過滅菌工程、リポソームを保管に適した形態にし、使用時に水性溶媒中に再分散させることによりリポソーム含有製剤を調製することができるようにするための乾燥粉末化工程など、従来のリポソームの製造にも用いられていた各種の工程も、任意工程として挙げられる。乾燥粉末化工程を含めることにより、本発明のリポソーム含有製剤の製造方法は、リポソームの乾燥粉末の製造方法に変形される。
(W1/Oエマルションおよびリポソームの粒度分布の測定方法)
W1/Oエマルションはヘキサン/ジクロロメタン混合有機溶媒(体積比:1/1)で10倍に希釈した後、一方リポソーム分散液はそのまま、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(UPA−EX150、日機装株式会社)を用いて粒度分布を測定した。
(水溶性薬剤の内包率の測定方法)
実施例で用いた高水溶性薬剤(シタラビン、siRNA、レボホリナート)および比較例で用いた水溶性薬剤(エトポシド)それぞれを含有するリポソームの分散液を、超遠心装置を用いて、リポソーム(固形分)と外水相(上澄)とに分離した。リポソームに内包されている水溶性薬剤の量(a)を、HPLC(逆相カラム:VarianPolaris C18-A(3μm, 2x40mm)など)で定量し、aおよび水溶性薬剤の仕込み量(b)の値を用いて、計算式a/b×100[%]により算出される値を、上記各水溶性薬剤の内包率とした。
なお、一次乳化後に生じたW1/OエマルションのW1に溶解している薬剤の量c、あるいは二次乳化後に生じたW1/O/W2エマルションのW1に溶解している薬剤の量dも、超遠心装置を用いてW1を分離したのち、HPLC(逆相カラム:VarianPolaris C18-A(3μm, 2x40mm)など)で定量した。そこで、計算式c/b×100[%]あるいは計算式d/b×100[%]により算出される値を、上記W1/OエマルションあるいはW1/O/W2エマルションにおける各水溶性薬剤の内包率とした。
[比較例1−1]
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC-50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol:日油株式会社)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mLを油相液(O)とし、シタラビン(MW243.22,20mg/mL,80mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした。50mLのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは体積平均粒径約190nmの単分散W/Oエマルションであることが確認された。
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化法を用いて、W1/O/W2エマルションを調製した。すなわち、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)として、直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相液(W2)である精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1/O/W2エマルションを調製した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
(有機溶媒の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間、撹拌子により撹拌し、ヘキサンを揮発させた。溶媒除去後のシタラビンの内包率は42%であった。
(外水相(W2)の置換によるリポソームの濃縮)
得られたリポソーム溶液を限外濾過に付し、外水相(W2)を除去しながら、水性溶媒(w1)と同じトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)(w3)を添加して、外水相(W2)に含まれるシタラビンを排除した。最終的に内水相液(W1)5mLの倍の体積である、10mLのリポソーム含有製剤を調製した。この製剤中には、仕込みのシタラビンの42%(20[mg/mL]×5[mL]×0.42=42[mg])を内包するリポソームが含有されており、薬剤濃度は4.2mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は、20[mg/mL]×5[mL]×0.42/(300+152+108)[mg]=42/560=0.075である。
[実施例1−1]
シタラビンに加えて、溶解助剤であるD−マンノース(LogD=−3.57、グルコースと等しい。)を10mg/mLの濃度で溶解したトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした以外は、比較例1−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は62%であった。限外濾過後の製剤中には仕込みのシタラビンの62%(20[mg/mL]×5[mL]×0.62=62[mg])を内包するリポソームが含有されており、薬剤濃度は6.2mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は62/560=0.111である。
[比較例1−2]
高水溶性薬剤としてシタラビンの代わりにランダム配列siRNA(MW約13000、100mg/mL、約7.7mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とし、また水溶性乳化剤として精製ゼラチンに代えてプルロニック(0.1wt%)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を外水相液(W2)とした以外は、比較例1−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のsiRNAの内包率は40%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのsiRNAの40%(100[mg/mL]×5[mL]×0.40=200[mg])を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は20mg/mLであり、siRNAは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は200/560=0.357である。
[実施例1−2]
高水溶性薬剤としてシタラビンの代わりにランダム配列siRNA(MW約13000、100mg/mL、約7.7mM)を含む、溶解助剤であるD−マンノースを10mg/mLの濃度で溶解したトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とし、また水溶性乳化剤として精製ゼラチンに代えてプルロニック(0.1wt%)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を外水相液(W2)とした以外は、実施例1−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のsiRNAの内包率は66%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのsiRNAの66%(100[mg/mL]×5[mL]×0.66=330[mg])を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は33mg/mLであり、siRNAは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は330/560=0.589である。
[比較例1−3]
高水溶性薬剤としてシタラビンの代わりにレボホリナート(アイソボリン)(MW511.5、15mg/mL、30mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした以外は、比較例1−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のレボホリナートの内包率は35%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのレボホリナートの35%(15[mg/mL]×5[mL]×0.35=26.25[mg])を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は2.6mg/mLであり、レボホリナートは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は26.25/560=0.047である。
[実施例1−3]
高水溶性薬剤としてシタラビンの代わりにレボホリナート(アイソボリン)(MW511.5、15mg/mL、30mM)を含む、溶解助剤であるD−マンノースを10mg/mLの濃度で溶解したトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした以外は、実施例1−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のレボホリナートの内包率は71%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのレボホリナートの71%(15[mg/mL]×5[mL]×0.71=53.25[mg])を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は5.3mg/mLであり、レボホリナートは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は53.25/560=0.095である。
Figure 0005983608
[比較例2−1]
以下に示すように、二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造をSPG乳化法から撹拌乳化法に変更し、また水溶性乳化剤として精製ゼラチンに代えてプルロニックF68(0.1wt%)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を外水相液(W2)とした以外は、比較例1−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC-50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol:日油株式会社)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mLを油相液(O)とし、シタラビン(MW243.22,20mg/mL,80mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした。50mLのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは体積平均粒径190nmの単分散W/Oエマルションであることが確認された。
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、撹拌乳化法を用いて、W1/O/W2エマルションを調製した。すなわち、半径0.016m(1.6cm)の撹拌子でマグネチックスターラーを用いて、外水相液(W2)であるプルロニックF68(0.1wt%)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を1000rpmで室温下撹拌しているところに、上記W1/Oエマルションを供給し、W1/OとW2の容積比が1:3となる比率で室温下15分間撹拌してW1/O/W2エマルションを調製した。この粒子内にはシタラビンが含まれていることが確認された。
(有機溶媒の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間、撹拌子により撹拌し、ヘキサンを揮発させた。溶媒除去後のシタラビンの内包率は42%であった。
(外水相(W2)の置換によるリポソームの濃縮)
得られたリポソーム溶液を限外濾過に付し、外水相(W2)を除去しながら、水性溶媒(w1)と同じトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)(w3)を添加して、外水相(W2)に含まれるシタラビンを排除した。最終的に内水相液(W1)5mLの倍の体積である、10mLのリポソーム含有製剤を調製した。この製剤中には、仕込みのシタラビンの42%(20[mg/mL]×5[mL]×0.42=42[mg])を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は4.2mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は、42[mg]/(300+152+108)[mg]=42/560=0.075である。
[実施例2−1]
シタラビンに加えて、溶解助剤であるマンニトールを10mg/mLの濃度で溶解したトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした以外は比較例2−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は62%であった。限外濾過後の製剤中には仕込みのシタラビンの62%(20[mg/mL]×5[mL]×0.62=62[mg])を内包するリポソームが含有されており、薬剤濃度は6.2mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は62/560=0.111である。
[比較例2−2]
高水溶性薬剤であるシタラビンの代わりに高水溶性薬剤でないエトポシド(0.2mg/mL)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした以外は、比較例2−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のエトポシドの内包率は33%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのエトポシドの33%(0.2[mg/mL]×5[mL]×0.33=0.33[mg])を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は0.033mg/mLであり、エトポシドは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は0.33/560=0.0006である。
[比較例2−3]
高水溶性薬剤であるシタラビンの代わりに高水溶性薬剤でないエトポシド(0.2mg/mL)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした以外は、実施例2−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。外水相(W2)置換後のエトポシドの内包率は32%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのエトポシドの32%(0.2[mg/mL]×5[mL]×0.32=0.32[mg])を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は0.032mg/mLであり、エトポシドは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は0.32/560=0.0006である。
[実施例2−2]
シタラビンに加えて、溶解助剤であるN−(2−ヒドロキシエチル)ラクトアミド(LogD=−1.75)を10mg/mLの濃度で溶解したトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした以外は比較例2−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は59%であった。限外濾過後の製剤中には仕込みのシタラビンの59%(20[mg/mL]×5[mL]×0.59=59[mg])を内包するリポソームが含有されており、薬剤濃度は5.9mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は59/560=0.105である。
[比較例2−4]
シタラビンに加えて、LogDが−1より大きい溶解助剤であるプロピレングリコール(LogD=−0.79)を5mg/mLの濃度で溶解したトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした以外は比較例2−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は22%であった。限外濾過後の製剤中には仕込みのシタラビンの22%(20[mg/mL]×5[mL]×0.22=22[mg])を内包するリポソームが含有されており、薬剤濃度は2.2mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は2.2/560=0.069である。
[実施例2−3]
内水相液(W1)を、高水溶性薬剤としてシタラビンの代わりにランダム配列siRNA(MW約13000)40mgを含む、溶解助剤であるD−マンノースを10mg/mLの濃度で溶解した等張リン酸緩衝液0.25mLに変更したこと、また、油相液(O)を、脂質成分を、ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC-50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mLから、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン、「MC-6060」、日油株式会社)37.5mgおよびDPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、「COATSOME MG-6060LA」、日油株式会社)7.5mgを含むジクロロメタンとヘキサンとの混合溶液(混合比1:3)1.25mLに変更したこと、外水相(W2)の置換によるリポソームの濃縮を限外濾過に代えて超遠心分離で実施したこと以外は、比較例2−1と同様にしてリポソーム含有製剤1.0mLを製造した。
外水相(W2)置換後のsiRNAの内包率は66%であった。すなわち、超遠心分離後の製剤は仕込みのsiRNAの66%(40mg×0.66=26.4[mg])を内包するリポソームが含有されており、薬剤濃度は26.4mg/mLであり、siRNAは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は26.4/45=0.587である。
[実施例2−4]
一次乳化工程、二次乳化工程、溶媒除去工程および水相置換工程の全てを低温で行うことができるかどうかを確認するため、上記実施例2−3に示した製造方法を低温で実施した。
具体的には、上記実施例2−3の一次乳化工程において、25℃にて15分間超音波を照射し乳化処理を5〜10℃に変更して実施し、二次乳化工程において室温下15分間撹拌する部分を5〜10℃に変更して実施し、溶媒除去工程において室温で約20時間攪拌する部分を5〜10℃に変更して実施し、水相液(W2)の除去において室温下超遠心分離に付している部分を5〜10℃に変更して実施した。すなわち、すべての工程を5〜10℃で実施した。
その結果、上記実施例2−3と同等以上の結果を得ることができた。すなわち、溶媒除去後のsiRNAの内包率は77%であり、限外濾過後の製剤は仕込みのsiRNAの77%(40mg×0.77=30.8[mg])を内包するリポソームが含有されているので、薬剤濃度は30.8mg/mLであり、siRNAは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は30.8/45=0.684である。
なお、本実施例において途中経過を観察したところ、一次乳化後に生じたW1/OエマルションのW1に溶解している薬剤の量から算出される内包率および、二次乳化後に生じたW1/O/W2エマルションのW1に溶解している薬剤の量から算出される内包率はそれぞれ81%、81%であった。一方、実施例2−3における上記内包率はそれぞれ81%、70%であった。
[実施例2−5]
内水相液(W1)を、シタラビン(MW243.22,250mg/mL,1000mM)を過飽和で含む、溶解助剤であるD−マンノースを10mg/mLの濃度で溶解した等張リン酸緩衝液0.25mLに変更したこと、油相液(O)を、脂質成分を、ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC-50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mLから、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン、「MC-6060」、日油株式会社)37.5mg、コレステロール(Chol, 日油株式会社)11mgおよびDSPE-PEG2000(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール、日油株式会社)11mgを含むジクロロメタンとヘキサンとの混合溶液(混合比1:3)1.25mLに変更したこと、外水相(W2)の置換によるリポソームの濃縮を限外濾過に代えて超遠心分離で実施したこと以外は、比較例2−1と同様にしてリポソーム含有製剤を1.0mL製造した。
溶媒除去後のシタラビンの内包率は51%であった。すなわち、超遠心分離後の製剤は仕込みのsiRNAの51%(250[mg/mL]×0.25[mL]×0.51=31.875[mg])を内包するリポソームが含有されており、薬剤濃度は31.875/1.0=31.875mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は31.875/59.5=0.53である。
[実施例2−6]
DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン、「MC-6060」、日油株式会社)37.5mgおよびDPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、「COATSOME MG-6060LA」、日油株式会社)7.5mgを含むジクロロメタンとヘキサンとの混合溶液(混合比1:3)1.25mLを、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン、「MC-6060」、日油株式会社)25mgおよびDPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、「COATSOME MG-6060LA」、日油株式会社)5mgを含むジクロロメタンとヘキサンとの混合溶液(混合比1:3)1.25mLに変更すること、また、あらかじめDPPCおよびコレステロールがそれぞれ12.5mgおよび2.5mg含まれるように調製しておいた多孔質脂質および0.1%のプルロニックF68を含む等張PBS溶液を水相液(W2)として用いること、以外は実施例2−3と同様に実験を実施した。
その結果、上記実施例2−3と同等以上の結果を得ることができた。すなわち、溶媒除去後のsiRNAの内包率は76%であり、超遠心分離後の製剤は仕込みのsiRNAの76%(40mg×0.76=30.8[mg])を内包するリポソームが含有されているので、薬剤濃度は30.8mg/mLであり、siRNAは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は30.8/45=0.684である。なお、本実施例において途中経過を観察したところ、一次乳化後に生じたW1/OエマルションのW1に溶解している薬剤の量から算出される内包率および、二次乳化後に生じたW1/O/W2エマルションのW1に溶解している薬剤の量から算出される内包率はそれぞれ79%、79%であった。一方、実施例2−3における上記内包率は先に述べた通りそれぞれ81%、70%であった。
Figure 0005983608
[参考例A−1]
以下に示すように、一次乳化工程における「15分間超音波照射」を「パルス超音波照射」に変更し、二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造を「SPG乳化法」から「撹拌乳化法」に変更し、また溶解助剤をD−マンノースからマンニトールに変更した以外は、実施例1−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC-50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mLを油相液(O)とし、シタラビン(MW243.22,20mg/mL,80mM)を含む、溶解助剤であるマンニトールを10mg/mLの濃度で溶解したトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相液(W1)とした。50mLのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー、出力5.5)により、25℃にて、1分間の照射と1分間の非照射とを交互に繰り返すパルス超音波を照射し、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは体積平均粒径50nmの単分散W/Oエマルションであることが確認された。
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、撹拌乳化法を用いて、W1/O/W2エマルションを調製した。すなわち、半径0.03m(3cm)の撹拌翼のついたスターラーを用いて、外水相液(W2)である精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を50rpmで撹拌しているところに、上記W1/Oエマルションを供給し、W1/OとW2の容積比が1:3となる比率でW1/O/W2エマルションを調製した。この粒子内にはシタラビンが含まれていることが確認された。
(有機溶媒の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間、撹拌子により撹拌し、ヘキサンを揮発させた。溶媒除去後のシタラビンの内包率は50%であった。
(外水相(W2)の置換によるリポソームの濃縮)
得られたリポソーム溶液を限外濾過に付し、外水相(W2)を除去しながら、水性溶媒(w1)と同じトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)(w3)を添加して、外水相(W2)に含まれるシタラビンを排除した。最終的に内水相液(W1)5mLの倍の体積である、10mLのリポソーム含有製剤を調製した。この製剤中には、仕込みのシタラビンの50%(20[mg/mL]×5[mL]×0.50=50[mg])を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は5.0mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は、50[mg]/(300+152+108)[mg]=50/460=0.109である。
[参考例B−1]
撹拌条件中、毎分回転数(n)=100[rpm]、したがってr×n/L'=0.03×100/50=0.06に変更した以外は、参考例A−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は55%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの55%(55mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は5.5mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は55/460=0.120である。
[参考例B−2]
溶解助剤をマンニトールからトロメタモールに変更し(得られたW1/Oエマルションの体積平均粒径は50nmで同じであった。)、また撹拌条件中、撹拌子の半径(r)=0.003[m]、毎分回転数(n)=1000[rpm]、したがってr×n/L'=0.003×1000/50=0.06に変更したこと以外は、参考例A−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は51%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの51%(51mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は5.1mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は51/460=0.111である。
[参考例B−3]
撹拌条件中、撹拌子の半径(r)=0.0007[m]、毎分回転数(n)=10000[rpm]、したがってr×n/L'=0.0007×10000/50=0.14に変更したこと以外は、参考例A−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は49%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの49%(49mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は4.9mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は49/460=0.107である。
[参考例A−2]
撹拌条件中、撹拌子の半径(r)=0.0007[m]、毎分回転数(n)=20000[rpm]、したがってr×n/L'=0.0007×20000/50=0.28に変更したこと以外は、参考例A−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は40%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの40%(40mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は4.0mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は40/460=0.087である。
[参考例A−3]
溶解助剤をマンニトールからメグルミンに変更し、一次乳化工程を、前記「パルス超音波照射」ではなく、実施例1−1と同様「15分間超音波照射」に戻し(得られたW1/Oエマルションの体積平均粒径は190nmであった。)、さらに、二次乳化工程における撹拌条件中、撹拌子の半径(r)=0.16[m]、毎分回転数(n)=50[rpm]、したがってr×n/L'=0.16×50/190=0.04に変更したこと以外は、参考例A−1と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は50%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの50%(50mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は5.0mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は50/460=0.107である。
[参考例B−4]
撹拌条件中、毎分回転数(n)=100[rpm]、したがってr×n/L'=0.16×100/190=0.08に変更したこと以外は、参考例A−3と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は55%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの55%(55mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は5.5mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は55/460=0.120である。
[参考例B−5]
溶解助剤をメグルミンからマンニトールに変更し(得られたW1/Oエマルションの体積平均粒径は190nmで同じであった。)、撹拌条件中、撹拌子の半径(r)=0.016[m]、毎分回転数(n)=1000[rpm]、したがってr×n/L'=0.016×1000/190=0.08に変更したこと以外は、参考例A−3と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は52%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの52%(52mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は5.2mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は52/460=0.113である。
[参考例B−6]
溶解助剤をメグルミンからトロメタモールに変更し(得られたW1/Oエマルションの体積平均粒径は190nmで同じであった。)、撹拌条件中、撹拌子の半径(r)=0.0016[m]、毎分回転数(n)=10000[rpm]、したがってr×n/L'=0.0016×10000/190=0.08に変更したこと以外は、参考例A−3と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は42%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの42%(42mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は4.2mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は42/460=0.091である。
[参考例A−4]
溶解助剤をメグルミンからトロメタモールに変更し(得られたW1/Oエマルションの体積平均粒径は190nmで同じであった。)、撹拌条件中、撹拌子の半径(r)=0.0016[m]、毎分回転数(n)=20000[rpm]、したがってr×n/L'=0.0016×20000/190=0.16に変更したこと以外は、参考例A−3と同様にしてリポソーム含有製剤を製造した。溶媒除去後のシタラビンの内包率は42%であった。すなわち、限外濾過後の製剤は仕込みのシタラビンの42%(42mg)を内包するリポソームを含有しており、薬剤濃度は4.2mg/mLであり、シタラビンは100%リポソームに内包されている。また、薬剤重量比(d/f)は42/460=0.091である。
Figure 0005983608

Claims (12)

  1. 水に対する溶解度が10mg/mLより高い高水溶性薬剤(d)を内包する体積平均粒径が50〜200nmの単胞リポソームを含有する製剤であって、
    当該単胞リポソームの内水相(W1)に当該高水溶性薬剤(d)およびpH7.4におけるlogDが−1以下である溶解助剤(s)が溶解しており、
    リポソームを構成する脂質成分(f)に対する前記高水溶性薬剤(d)の重量比(d/f)が0.5以上であることを特徴とするリポソーム含有製剤。
  2. 水に対する溶解度が10mg/mLより高い高水溶性薬剤(d)を内包する体積平均粒径が50〜200nmの単胞リポソームを含有する製剤であって、
    当該単胞リポソームの内水相(W1)に当該高水溶性薬剤(d)およびpH7.4におけるlogDが−1以下である溶解助剤(s)が溶解しており、
    前記高水溶性薬剤(d)が前記内水相(W1)に過飽和状態で溶解していることを特徴とするリポソーム含有製剤。
  3. 前記リポソーム含有製剤中の高水溶性薬剤(d)の薬剤濃度が5mg/mL以上である、請求項1または2に記載のリポソーム含有製剤。
  4. 前記高水溶性薬剤(d)が核酸である、請求項1〜のいずれか一項に記載のリポソーム含有製剤。
  5. 下記工程(1)〜(4)を含む、水に対する溶解度が10mg/mLより高い高水溶性薬剤(d)を内包する体積平均粒径が50〜200nmの単胞リポソームを含有する製剤の製造方法であって、下記工程(4)を経て得られるリポソーム含有製剤が、リポソームを構成する脂質成分(f)に対する前記高水溶性薬剤(d)の重量比(d/f)が0.5以上であるものであることを特徴とする製造方法
    (1)下記工程(3)の溶媒除去条件下で揮発性の有機溶媒(o)に脂質成分(f1)が溶解している油相液(O)と、水性溶媒(w1)に前記高水溶性薬剤(d)およびpH7.4におけるlogDが−1以下である溶解助剤(s)が溶解している水相液(W1)とを乳化することによりW1/Oエマルションを調製する一次乳化工程;
    (2)上記工程(1)を経て得られたW1/Oエマルションと水相液(W2)とを乳化することによりW1/O/W2エマルションを調製する二次乳化工程;
    (3)上記工程(2)を経て得られたW1/O/W2エマルションから油相液(O)中の有機溶媒(o)を除去することによりリポソームを形成させる溶媒除去工程;
    (4)上記工程(3)を経て得られたリポソーム分散液から水相液(W2)を除去し、水相液(W3)を添加して、リポソーム製剤を調製する水相置換工程。
  6. 下記工程(1)〜(4)を含む、水に対する溶解度が10mg/mLより高い高水溶性薬剤(d)を内包する体積平均粒径が50〜200nmの単胞リポソームを含有する製剤の製造方法であって、下記工程(1)において、水性溶媒(w1)に前記高水溶性薬剤(d)が過飽和状態で溶解した水相液(W1)を用いることを特徴とする製造方法:
    (1)下記工程(3)の溶媒除去条件下で揮発性の有機溶媒(o)に脂質成分(f1)が溶解している油相液(O)と、水性溶媒(w1)に前記高水溶性薬剤(d)およびpH7.4におけるlogDが−1以下である溶解助剤(s)が溶解している水相液(W1)とを乳化することによりW1/Oエマルションを調製する一次乳化工程;
    (2)上記工程(1)を経て得られたW1/Oエマルションと水相液(W2)とを乳化することによりW1/O/W2エマルションを調製する二次乳化工程;
    (3)上記工程(2)を経て得られたW1/O/W2エマルションから油相液(O)中の有機溶媒(o)を除去することによりリポソームを形成させる溶媒除去工程;
    (4)上記工程(3)を経て得られたリポソーム分散液から水相液(W2)を除去し、水相液(W3)を添加して、リポソーム製剤を調製する水相置換工程。
  7. 下記工程(1)〜(4)を含む、水に対する溶解度が10mg/mLより高い高水溶性薬剤(d)を内包する体積平均粒径が50〜200nmの単胞リポソームを含有する製剤の製造方法であって、下記工程(2)において、水溶性乳化剤(r)が溶解した水相液(W2)を用いることを特徴とする製造方法:
    (1)下記工程(3)の溶媒除去条件下で揮発性の有機溶媒(o)に脂質成分(f1)が溶解している油相液(O)と、水性溶媒(w1)に前記高水溶性薬剤(d)およびpH7.4におけるlogDが−1以下である溶解助剤(s)が溶解している水相液(W1)とを乳化することによりW1/Oエマルションを調製する一次乳化工程;
    (2)上記工程(1)を経て得られたW1/Oエマルションと水相液(W2)とを乳化することによりW1/O/W2エマルションを調製する二次乳化工程;
    (3)上記工程(2)を経て得られたW1/O/W2エマルションから油相液(O)中の有機溶媒(o)を除去することによりリポソームを形成させる溶媒除去工程;
    (4)上記工程(3)を経て得られたリポソーム分散液から水相液(W2)を除去し、水相液(W3)を添加して、リポソーム製剤を調製する水相置換工程。
  8. 下記工程(1)〜(4)を含む、水に対する溶解度が10mg/mLより高い高水溶性薬剤(d)を内包する体積平均粒径が50〜200nmの単胞リポソームを含有する製剤の製造方法であって、下記工程(1)〜(4)すべてを5〜10℃の範囲の温度で行うことを特徴とする製造方法:
    (1)下記工程(3)の溶媒除去条件下で揮発性の有機溶媒(o)に脂質成分(f1)が溶解している油相液(O)と、水性溶媒(w1)に前記高水溶性薬剤(d)およびpH7.4におけるlogDが−1以下である溶解助剤(s)が溶解している水相液(W1)とを乳化することによりW1/Oエマルションを調製する一次乳化工程;
    (2)上記工程(1)を経て得られたW1/Oエマルションと水相液(W2)とを乳化することによりW1/O/W2エマルションを調製する二次乳化工程;
    (3)上記工程(2)を経て得られたW1/O/W2エマルションから油相液(O)中の有機溶媒(o)を除去することによりリポソームを形成させる溶媒除去工程;
    (4)上記工程(3)を経て得られたリポソーム分散液から水相液(W2)を除去し、水相液(W3)を添加して、リポソーム製剤を調製する水相置換工程。
  9. 前記工程(2)における二次乳化を下記式(e1)の条件を満たす撹拌乳化法により行う、請求項5〜8のいずれか一項に記載の製造方法:
    0.02385 <r×n/L' < 0.1431 (e1)
    上記式(e1)において、rは攪拌子の半径[m],L'はW1/Oエマルションの粒径[nm],nは攪拌子の毎分回転数[rpm]を表す。
  10. 前記工程(4)において、リポソーム含有製剤中の前記高水溶性薬剤(d)の薬剤濃度が5mg/mL以上となるよう濃縮する、請求項5〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. 前記高水溶性薬剤(d)が核酸である、請求項10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 前記工程(1)における一次乳化をパルス超音波を用いて行う、請求項11のいずれか一項に記載の製造方法。
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