JP2916684B2 - リポソーム製剤の精製法 - Google Patents

リポソーム製剤の精製法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は薬物を封入したリポソーム製剤の精製法に関
する。
従来の技術 リン脂質と薬物液とから薬物を封入したリポソームを
形成後は、一般に薬物封入リポソームと未封入の遊離薬
物とを分離する工程が必要である。その分離技術として
は、従来、セロファン袋膜による透析法〔細胞工学、2,
1136(1983)〕、超遠心分離法〔Biochemistry17,1792
(1978)〕、ゲルろ過法〔Biochemistry8,344(196
9)〕などが知られている。
上記のように、リポソームに未封入の遊離薬物を分離
除去する方法は、従来、いくつか見られるものの、いず
れの方法も工業的スケールで実施するには不適当であ
る。例えば、セロファン袋膜を用いる方法は、処理対象
液であるリポソーム懸濁液を袋膜に小分する作業が煩雑
なこと、長時間の処理時間を要すること、品質が一定し
ないこと、無菌化製造することが容易でないことなどの
欠点がある。超遠心分離法の場合、超遠心受器にリポソ
ーム懸濁液を小分け分注し、遠心分離した後、上清を廃
液して沈降物を回収するという操作を数回くり返して遊
離薬物を除去する方法であり、やはり操作が煩雑とな
り、無菌化処理も困難なことが予想される。さらに、リ
ポソームの種類(例えば、SUV,REV)によっては、リポ
ソームが完全に沈降せず、上清の廃液時に流出し、完全
な回収が困難であることから、比較的粒径の大きいリポ
ソームに限られること、また、遠心沈降によるリポソー
ムの凝集が起こり、再分散後、凝集体を形成することが
懸念される。
一方、ゲルろ過法は、薬物を吸着するための吸着剤を
充填したカラムにリポソーム懸濁液を流通させ、未封入
薬物を吸着分離する方法であるが、カラム流通速度が比
較的遅いため、処理時間に長時間を要すること、カラム
溶離液により希釈されるので、後に濃縮工程が必要であ
ること、吸着剤にリン脂質が吸着することも起こりうる
ので、空リポソーム等での前処理が必要であること、と
きには試料注入部位への物理的なブロッキングが認めら
れること、また、再使用するには吸着剤の再生処理(吸
着した薬物の再遊離除去処理)が必要であること、無菌
化処理(処理前の吸着剤の減菌処理)が困難であること
などの欠点がある。
発明が解決しようとする課題 上記のように薬物封入リポソーム製剤の製造法におい
て、未封入の遊離薬物を効率的に分離除去する方法はま
だ完成されていない。この工業的実施のためには、大量
処理が短時間で実施できること、無菌化処理が簡単にで
きること、リポソーム製剤の製造と連結することができ
一貫した操作で、一日内に製品化できること、などの条
件をできるだけ満足する必要がある。
課題を解決するための手段 以上の点に鑑み、本発明者らは鋭意研究を重ねた結
果、リポソーム製剤の製造における未封入薬物の分離除
去にはホローファイバー型透析器が工業的有利に利用で
きることを知り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は薬物を封入してなるリポソームと
未封入薬物とを含有してなる水性液を薬物を透過しリポ
ソームを透過しないホローファイバーによる透析に付
し、該ファイバーの外液中に未封入薬物を分離除去する
ことを特徴とするリポソーム製剤の精製法である。
本発明でいう「薬物を封入してなるリポソームと未封
入薬物とを含有してなる水性液」は、水に薬物を封入し
てなるリポソームが懸濁しており、同時にその水に薬物
が含有されている系であれば特に限定されない。一般に
はリン脂質と薬物液を用いて自体公知の方法によって薬
物を封入するリポソームを調製した後に得られる液であ
って、該リポソームを懸濁し、かつ未封入の薬物を含有
している水性液が主対象となる。以下、本明細書では上
記の水性液を単に「リポソーム懸濁液」と称することも
ある。薬物を封入するリポソーム製剤の調製において、
現在まで知られているリポソームの形成法では、未封入
薬物の発生は避け難い。そして、リポソーム製剤をDDS
(Drug Delivery System)等の目的で使用する場合、未
封入薬物は予め除去しておくことが一般に望ましいこと
が多い。本発明の適用対象となりうるリポソームの種類
は、SUV(small unilamellar vesicle),MLV(multilam
ellar vesicle),LUV(large unilamellar vesicle),R
EV(reverse−phase evaporation vesicle)あるいはSP
LV(stable plurilamellar vesicle)のいずれであって
もよい。
次に、本発明に用いるホローファイバー型透析器は、
半透膜の材質からなり中空を有する繊維を一般に数千本
を束ねて形成し、かつ該繊維の外側に透析液を流通する
ように構成された装置をいう。この例としては、公知の
ホローファイバー型人工腎臓と同様に構成された透析装
置があげられる。ホローファイバーの材質は、リポソー
ム形成材料であるリン脂質と反応もしくは吸着を起こさ
ないことを基準に天然高分子膜またはその加工処理膜、
再生高分子膜あるいは合成高分子膜のなかから選択すれ
ばよい。
具体的には、天然高分子膜またはその加工処理膜とし
てはセロファン,架橋コラーゲンが、再生高分子膜とし
ては各種のセルロース系膜、たとえば、酢酸セルロース
(例、酢化50%以上),三酢酸セルロース,酢酸・酢酸
セルロース,ニトロセルロース,キュプロ・アンモニウ
ム・レーヨン膜等があげられる。
また合成高分子膜としては、ポリビニールアルコー
ル,ポリビニールピロリドン・メチレンビス・4・フェ
ニルイソシアネート(MDI),ポリエチレングリコールM
DI,ポリビスフェノール・カーボネイト−ポリエチレン
オキシド共重合体,ポリイオンコンプレックス,ポリプ
ロピレン,ポリビニルアセテート,ポリスルフォンカー
ボネイト,ポリエチレン,ポリアクリロニトリル,ポリ
メチルメタクリレート膜等が検討されており、これらの
中でもポリビニルアルコールMDI,架橋コラーゲン,ポリ
ビスフェノール・カーボネイト・ポリエチレンオキシ
ド,ポリビニルアセテート,ポリスルフォンカーボネイ
ト,ポリアクリルニトリル,ポリメチルメタアクリレー
ト膜が本発明では好ましく用いられる。
ホローファイバー膜の透過性は尿素透析速度で表わし
たときの半減期が、セロファンと同等もしくは小である
ことが一般に好ましく、たとえばセロファンの半減期を
1とした場合、約0.2〜1の透過性を有するものが有利
に使用できる。
本発明において、ホローファイバーの透過性を選択す
る基準は、使用する薬物の分子の大きさ等とも関係する
のでこの点について説明する。
まず、本リポソーム製剤の製造に用いられる薬物の種
類は、水溶性薬物であってマイクロカプセル化して使用
する可能性を有するものが対象となり得る。水溶性の程
度は、たとえば、オクタノール/水で示される分配率の
対数値が10以下であるものをいう。ホローファイバー
は、薬物を透過しリポソームを透過しないような孔径を
有するものを選択するが、薬物の透過性はファイバーの
孔径と薬物の分子の大きさに関係する。例えば、孔径60
Åではクレアチニン(分子量113),15ÅでビタミンB12
(分子量1,350),24Åでイヌリン(分子量5,200),32Å
でチトクロームC(分子量24,000),46Åでβ−イミノ
グロブリン(分子量38,000),55Åでアルブミン(分子
量60,000)等に相当し、透析性の目安になる。ホローフ
ァイバー型透析器の中空繊維膜として一般によく使用さ
れるキュプロ・アンモニウム・レーヨンの場合、孔径が
約20Åである。分子量3,000以下の薬物であれば約20Å
の孔径を有するホローファイバー膜で有効に透析され
る。
本発明においては、分子量が約100〜約6万の薬物が
好ましい適用対象である。以下に、本発明方法において
適用可能な薬物の例を分子量の範囲別に示す。
(1)分子量100以上1000以下 (例) シスプラチン(CDDP),カルボプラチン,イプ
ロプラチン,テトラプラチン等の金属錯体,マイトマイ
シン,アドリアマイシン,アンサマイトシン,アクチノ
マイシンあるいはその誘導体(例、9−チオメイタンシ
ン),ブレオマイシン,Ara−C,ダウノマイシン等の制癌
抗生物質,5−FU,メトトレキセート,TAC−788〔イソブチ
ル 5−フルオロ−6−(E)−フルフリリデンアミノオ
キシ−1,2,3,4,5,6−ヘキサヒドロ−2,4−ジオキソピリ
ミジン−5−カルボキシレート,特開昭59−13780号〕
等の代謝拮抗剤,BCNU,CCNU等のアルキル化剤;メルファ
ラン,ミトキサントロン等の抗腫瘍剤,ゲンタマイシ
ン,ストレプトマイシン,カナマイシン,ジベカシン,
パロモマイシン,カネンドマイシン,リピドマイシン,
トブラマイシン,アミカシン,フラジオマイシン,シソ
マイシン等のアミノ配糖系抗生物質,スルベニシリン,
メシリナム,カルベニシリン,ピペラシリン,チカルシ
リン等のペニシリン類;チュナマイシン類;セフォチア
ム,セフスロジン,セフメノキシム,セフメタゾール,
セファゾリン,セフォタキシム,セフォペラゾン,セフ
チゾキシム,モキソラクタム等のセファロスポリン類等
のβ−ラクタム系抗生物質,TRH類〔TRH,TRHアナログ
(例、L−N−(2−オキソピペラジン−6−カルボニ
ル)−L−ヒスチジル−L−チアゾリジン−4−カルボ
キサミド,L−2−オキソオキサゾリン−4−カルボニル
−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド,L−トランス−
5−メチル−2−オキソオキサゾリジン−4−カルボニ
ル−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド,L−2−オキ
ソチアゾリジン−4−カルボニル−L−ヒスチジル−L
−プロリンアミド,γ−ブチロラクトン−γ−カルボニ
ル−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド,2−ケトピペ
リジン−6−カルボニル−L−ヒスチジル−L−プロリ
ンアミド,3−オキソバーハイドロ−1,4−チアジン−5
−カルボニル−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド)
これらTRH,TRHアナログのアミド基における水素原子が
メチル基,エチル基,n−プロピル基,n−ブチル基,n−ヘ
キシル基,n−アミル基,β−フェネチル基で置換された
化合物,ならびにこれら化合物の酢酸塩,酒石酸塩な
ど〕,エンケファリン等のペプチド系薬物,アスピリ
ン,ジフルニサール,インドメタシン,ジクロフェナッ
ク,フェンブフェン,スハンダク,アセメタシン,イブ
プロフェン,ナプキセン,ケトプロフェン,フラパイプ
ロフェン,フェノプロフェン,チアプロフェン,プラノ
プロフェン,メフェナム酸,トルフェナム酸,フルフェ
ナム酸,フェニルブタゾン,オキシフェン,ブタゾン,
ピロキシカム,メピルビーム,エモルファゾン等抗炎症
剤,鎮痛剤,解熱剤そして各種プロスタグランジン及び
その誘導体。
(2)分子量1000以上2000以下 (例) グラミシジンD,バシトラシン等のペプチド系抗
生物質 (3)分子量2000以上5000以下 (例) ACTH,ポリミキシンB,コリスチン等ペプチド系
物質 (4)分子量5000以上10000以下 (例) ヘパリン,レンチナン,ザイモサン,PS−K等
の多糖類,インスリン,成長ホルモン等のペプチドホル
モン (5)分子量10000以上20000以下 (例) インターフェロン(α,β,γ),インターロ
イキン2,TNF等のリンホカイン類 (6)分子量20000以上60000以下 (例) SOD 次に、ホローファイバーは、通常、その中空内径が約
150〜250μm,膜厚さは約10〜20μmの形状を有するもの
が好ましく用いられる。
ホローファイバー型の透析器として用いる場合、表面
積の大きな一本のファイバーを使用してもよいが、大量
処理の目的をより容易に達成するためには、小膜面積の
ホローファイバーを複数個並列または直列に連結して用
いるのが有利である。さらに、ホローファイバーを多数
集束して用いるのが好ましく、例えば、内径200μmで
有効長23.5cmのホローファイバーを9900本集束させるこ
とによって、透析面積1.5m2の透析器が得られ、この程
度の表面積を有するものが実用的に利用しうる。集束さ
せたホローファイバーをさらに直列または並列に連結さ
せることにより、透析面積の拡大をはかってもよい。
次に、本発明の透析処理法においては、ホローファイ
バーの外側に液を流通させて、透過してきた薬物を系外
に除去させるが、この透析外液として単に水を用いても
よいが、そのリポソーム製剤の投与形態に合うような液
を用いるのが実用上、好都合である。すなわち、温血動
物が生理的に許容しうるような各種物質の水溶液、具体
的には、塩類(例、食塩),糖類(例、ぶどう糖,マン
ニット,ソルビット),アミノ酸類(例、グリシン,ア
スパラギン酸,グルタミン酸)などの水溶液あるいはこ
れらの2種またはそれ以上の混合溶液があげられる。こ
れらの中でも、生理食塩水は各種薬剤の静脈投与の際に
最も広く用いられている分散媒であり、本発明において
も有利に用いることができる。
本発明方法は、たとえば第1図(a)(b)に示す装
置を用いて、次のような順序で実施できる。
第1図(a)に示す装置において、貯留容器にリポ
ソーム懸濁液を仕込み、送液ポンプによって、送液パ
イプを介して連結されているホローファイバー型透析
器に液送される。該透析器は第1図(b)に示され
る構造を有し、ホローファイバーは接着固定部によ
って集束された状態でケース内に装着されており、該
ケースは透析外液流入口 および流出口 を有し、ホローファイバーの外側に透析外液を通過させ
うる。リポソーム懸濁液は、透析器の流入口 に液送され、ホローファイバー内に送り込まれ、流出口 から、送液パイプを通して貯留容器に戻る。一方、
第1図(a)の貯留容器に仕込まれた透析外液は送液
ポンプによって送液パイプを通して、前記のホロー
ファイバー型透析器の透析外液流入口 ,流出口 ,送液パイプを通って、透析器外に流出させる。この
透析外液は、必要に応じて活性炭,イオン交換樹脂によ
り薬物を吸着・除去したのち、循環使用し得る。かくし
て、リポソーム懸濁液中の遊離薬物はホローファイバー
の膜を通過して、透析外液中に溶解して、次第に系外に
分離されていき、精製されたリポソーム製剤を貯留容器
に回収することができる。
本発明において、ホローファイバー内液の圧力を透析
外液のそれよりも高くなるように制御しながら透析を続
けると、遊離薬物の除去効率を高めることができる。こ
の差圧は一般に300mmHgまでに制御されるが、好ましく
は約50mmHg以下さらに好ましくは10〜50mmHgとなるよう
に制御される。差圧を50mmHg以上にすると、水の透過も
大きくなり、リボシーム分散液が濃縮されてくるので、
未封入の遊離薬物の分散除去と同時に濃縮を行なうこと
も可能である。ただ、過剰の差圧下で濃縮を行なわせる
と、リポソーム内に封入されている薬物が漏出してくる
ことがあり好ましくない場合がある。この差圧の制御方
法は、たとえば第1図(a)に示される装置において、
リポソーム懸濁液送液パイプおよび透析外液送液パイ
プにそれぞれ設置された差圧調整バルブによって調
整される。特に、高分子量薬物(例、分子量1〜6万)
の場合には、拡散透析速度が遅いため、より効率を上げ
るためにホローファイバー膜内液を加圧して行なう中空
繊維膜透析が有効であり、この場合、耐圧強度をもたせ
るために膜はやや厚い方がよい。
リポソーム懸濁液と透析外液は、第1図(a)のよう
に、向流方式で流通させるのが一般的であるが、並流方
式も場合もよっては採用できる。ホローファイバー透析
器はに示すような装置を、さらに直列または並列で複
数個連結させることにより、さらに大量処理に適した装
置を用いてもよい。
一方、より実用的には第2図に示されるように、リポ
ソーム製造装置と、たとえば第1図(b)に示されるホ
ローファイバー透析装置とを直結させることによりクロ
ーズドシステムで、リポソーム懸濁液の製造と未封入薬
物の分離除去を一貫処理でき、作業性を一段と向上させ
得る。この場合、ホローファイバー透析装置は、予め高
圧蒸気滅菌などの処理を施しておくことにより、精製さ
れたリポソーム製剤を無菌的に製造することができる。
実施例 以下に実験例及び実施例を示し、本発明を更に詳しく
説明するが、これらは何ら本発明を限定するものではな
い。
実験例1 (1) REVリポソームの製法 1l丸底フラスコ中に、0.5mM 6−CF(6−カルボキシ
フルオレセイン)の生理食塩水溶液300mlとリン脂質
(ジパルミトイルフォスファチジルコリン:ジステアリ
ルフォスファチジルコリン=9:1)6gをクロロホルム:
ジイソプロピルエーテル(1:1)の混合溶媒300mlに溶解
した液を入れて混合し、次に浴槽型超音波発生機(60
W)で20分間超音波照射して乳化した。これを、55℃の
水浴加温下で真空ロータリーエバポレーターによって有
機溶媒を徐々に留去して、6−CFを封入するREVリポソ
ームの懸濁液を調製した。本懸濁液にはリポソームに未
封入の6−CFが溶解されている。
(2) 透析法 対照透析法:セロファン袋膜(内径2cm,長さ1m,0.08m
2、スペクトラポア、SPECTRUM MEDICAL INDUSTRIES,IN
C.製)にリポソーム懸濁液300mlを充填し、これを生理
食塩水溶液10l中に浸漬し、室温下で撹拌しながら透析
した。
本発明透析法:キュプラ・アンモニウム・レーヨン使
用のホローファイバー型透析器(中空の平均内径200μ
m、有効表面積0.8m2、TAF08W型,テルモ製)を用い
て、リポソーム懸濁液循環流量150ml/分、透析外液(生
理食塩水)の流量500ml/分で懸濁液と透析外液との差圧
が10mmHgの条件でリポソーム懸濁液300mlを処理した。
(3) 透析分離除去の効果の測定 未封入の遊離6−CFの分離除去の効果は、分離除去前
のリポソーム懸濁液中の遊離6−CFの含量に対する分離
除去後の同含量の百分率(残存率)で表わした。
(4) 遊離6−CFの測定法 リポソーム懸濁液の0.1mlを採取し、セントリザルト
(Centrisart 1,SM13249,西独製)に入れ、生理食塩水1
mlを加えて遠心分離(2000rpm,5分間)して、遊離6−C
Fのみを含有する上清の一定量を蒸留水で100倍に希釈し
たのち、光路長1cmの石英セルに入れ、蛍光分光器によ
って蛍光強度(励起波長494nm、蛍光波長515nm)を測定
し、検量線から遊離6−CFを定量した。検量線は、別に
6−CFの標準液の蛍光強度を測定し作成した。
(5) 結果 対照透析法と本発明透析法をそれぞれ適用したとき
の、処理時間と6−CF残存率との関係を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、セロファン袋膜透析
法が、リポソーム中へ未封入の遊離6−CFの残存率が72
時間(3日)後に漸く0.8%以下になるのに対し、本発
明方法によると遊離6−CFの残存率は40分間で0.1%以
下にすることができ、きわめて短時間で効率的に分離除
去できる。
さらに、前記の本発明の透析法において、有効表面積
を1.5m2に増大したホローファイバーを使用した場合
は、処理時間20分でも6−CF残存率を0.1%以下にする
ことができ、さらに処理時間を短縮することができた。
実験例2 実験例1と同様の方法で調製した6−CF封入リポソー
ム懸濁液を用いて、超遠心分離(12000×g,30分間)法
と本発明法とによる未封入6−CF液の分離効果について
比較した。
その結果、超遠心分離法では、粒径の小さいリポソー
ムが完全に沈降せずに上清中に浮遊し、傾斜分離操作中
にリポソームが流出し、損失量が大であった。また、分
離除去率は1回だけの超遠心分離処理では、6−CF残存
率が6.3%と大きく、洗浄と遠心分離の操作を3回繰り
返した後にはじめて1%以下となり、従って約90分もの
処理時間を要し、大量処理が困難であった。これに対
し、本発明法は全ての種類のリポソームに適用でき、リ
ポソームをほとんど損失することなく、きわめて短時間
に大量処理できた。
実験例3 (1) シスプラチン(CDDP)封入のREVの調製 実験例1のREV調製法において、6−CFの代わりにCDD
P(300mg)を用いて同様の方法によりCDDPを封入するリ
ポソームを懸濁し、未封入のCDDPを溶解する液を得た。
(2)透析法 対照透析法:実験例1と同様に、セロファン袋膜にCD
DP封入リポソーム懸濁液300mlを充填し、同様の処理を
した。
本発明透析法:実験例1と同様の条件で、CDDP封入リ
ポソーム懸濁液の300mlを処理した。
(3)透析分離除去の効果の測定 前記リポソーム懸濁液中の未封入の遊離CDDP含量を、
実験例1の第(3)項に示したと同様の操作で、分離除
去前及び分離除去後において定量し、残存率を測定し
た。
(4) 遊離CDDPの測定法 遊離CDDPの測定は実験例1の第(4)項に示したと同
様の操作で、CDDP封入リポソームと遊離CDDPをセントリ
ザルト(Centrisart 1,SM13249,西独製)で分離し、遊
離CDDPのみ含有する上清の0.1mlを採取し、内部標準液
0.1mlを加えて、その一定量を高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)法によって定量した。
HPLCの条件を以下に示す。
カラム:日立ゲル3013N 4mmφ×15cm カラム温度:50℃ 分離液:0.02M KN2PO4−HCl(pH3.0) 流速:0.9ml/分,検出:UV210nm 内部標準液:ヒポキサンチン(4μg/ml)水溶液 表2にその結果を示す。
この結果、セロファン袋膜透析法の場合、未封入の遊
離CDDPの分離除去残存率が、72時間後(3日)後によう
やく0.8%になるのに対し、本発明法によると30分後に
0.2%にすることができ、きわめて短時間に分離除去で
きる。
実施例1 シスプラチン(CDDP)の1mg/ml生理食塩水溶液500ml
とリン脂質(ジパルミトイルフォスファチジルコリン:
ジステアリルフォスファチジルコリン=9:1)10gをクロ
ロホルム:ジイソプロピルエーテル(1:1)の混合溶媒
に溶解した溶液500mlとから、CDDP封入REVリポソームを
実験例1の方法に準じて製造した。このリポソーム懸濁
液をホローファイバー型透析器(有効表面積1.5m2、キ
ュプラ・アンモニウム・レーヨン、テルモ製TAF−15W
型)を用い、リポソーム懸濁液のホローファイバー内循
環流量150ml/分、透析外液(生理食塩水)流量500ml/分
リポソーム懸濁液の循環液流出側系路と透析外液側との
差圧を10mmHgに調整した。この条件下で0.5時間処理す
ることにより、未封入の遊離CDDPを分離除去できた。そ
の結果、遊離のCDDPを含有せず、CDDPの封入率20%のリ
ポソーム製剤を得た。
実施例2 実施例1と同様の方法で製造した、CDDP封入REVリポ
ソーム懸濁液500mlを、ホローファイバー型透析器(有
効表面積1.5m2,キュプラ・アンモニウム・レーヨン、
テルモ製TAF−15W型)を用い、リポソーム懸濁液の循環
流出側系路の差圧調整バルブを絞って圧力を高めて、透
析外液側との差圧を70mmHgにした。この条件下で0.3時
間処理し、未封入の遊離CDDPの残存率が0.5%以下で、
リポソームを分散する液量が初期量の80%に濃縮されて
おり、CDDPの封入率20%のリポソーム製剤を得た。
実施例3 前記実施例1と同様の方法で製造した。CDDP封入リポ
ソーム懸濁液1000mlを調製した。この懸濁液をホローフ
ァイバー型透析器(有効表面積1.5m2、キュプラ・アン
モニウム・レーヨン、テルモ製TAF−15W型)を2本並列
に連結した透析器を用いて、リポソーム懸濁液側と透析
外液側の差圧を10mmHgに調整した条件下で、未封入CDDP
の分離除去を行い、処理時間0.5時間で遊離CDDPを実質
的に含まず、CDDP封入率20%のリポソーム製剤を得た。
実施例4 CDDP0.6gを溶解した生理食塩水溶液600mlとリン脂質
(ジパルミトイルフォスファチジルコリン:ジステアリ
ルフォスファチジルコリン=9:1)12gを溶解した有機溶
媒溶液〔クロロホルム:ジイソプロピルエーテル(1:
1)〕600mlとを真空乳化機(アジホモミキサーM型、特
殊機化工業製)に入れホモミキサー(回転数15000rpm,3
0分間)で乳化し、60℃の加温及び減圧下でパドルミキ
サーによって撹拌(80回転/分)しながら、徐々に有機
溶媒を留去してCDDPを封入するREVリポソームを製造し
た。このリポソーム懸濁液1150mlをホローファイバー型
透析器(有効表面積1.5m2、キュプラ・アンモニウム・
レーヨン、テルモ製TAF−15W型)を用い、リポソーム懸
濁液循環流出量150ml/分,透析外液に生理食塩水を用い
流量500ml/分で前者と後者の差圧を10mmHgに調整した条
件によって分離除去し、1.2時間でCDDP封入率20%のリ
ポソーム製剤(1150ml)を得た。
実施例5 実施例4と同様のホローファイバー型透析器(透析表
面積1.5m2、キュプラ・アンモニウム・レーヨン,テル
モ製TAF−15W型)を予め高圧蒸気滅菌した。この透析器
にリポソーム製造装置である真空乳化機(アジホモミキ
サーM型,特殊機化工業製)を直結し、実施例4と同様
の方法でリポソーム製造後直ちにクローズドシステム
(第2図)で、リポソーム懸濁液をホローファイバー内
に循環させて透析外液に生理食塩水を用い、流量500ml/
分で、リポソーム分散液と透析外液との差圧を10mmHgに
調整した。この条件で未封入の遊離CDDPを分離除去し、
無菌化リポソームを一貫処理で製造した。このとき、透
析時間は1時間で、CDDP封入率20%をリポソーム分散液
(1000ml)を得た。
実施例6 卵黄レシチン1gを含有するクロロホルム溶液100mlを5
00ml用ナス型コルベンに入れ、真空ロータリーエバポレ
ーターでクロロホルムを徐々に留去して、ガラス壁にリ
ン脂質の薄膜を形成させ、これに生理食塩水に溶解した
1mg/mlのCDDP60mlを加え、よく撹拌しながらCDDPを封入
し、CDDP液に分散されたMLVを製造した。この方法でMLV
を5バッチ製造し、これらを合わせ得た300mlをホロー
ファイバー型透析器(キュプラ・アンモニウム・レーヨ
ン、有効表面積0.8m2、TAF08型,テルモ製)を用い、リ
ポソーム循環流量150ml/分、透析外液流量(生理食塩
水)500ml/分で処理し、未封入の遊離CDDPを分離除去し
て、0.3時間で封入率3%のリポソーム分散液(300ml)
を得た。
実施例7 実施例1で用いられる1mg/mlCDDPの代わりに200μg/m
lの5−フルオロウラシル(5−FU)を用いて、それ以
外は実施例1と同じ方法で、5−FUを封入するリポソー
ム懸濁液を得て、同じ透析条件で未封入の遊離5−FUを
分離除去して、0.5時間処理で封入率22%のリポソーム
分散液(300ml)を得た。
実施例8 実施例1で用いられる1mg/mlCDDPの代わりに、200μg
/mlのマイトマイシンC(MMC)を用いて、それ以外は実
施例1と同じ方法で、MMCを封入するリポソーム製剤を
得て、同じ透析条件で未封入の遊離MMCを分離除去し
て、0.5時間処理で封入率24%のリポソーム分散液(300
ml)を得た。
実施例9 実施例1で用いられる1mg/mlCDDPの代わりに、500μg
/mlのアクラルビシン(Ara−C)を用いて、それ以外は
実施例1と同じ方法で、Ara−Cを封入するリポソーム
製剤を得て、同じ透析条件で未封入の遊離Ara−Cを分
離除去して、0.5時間処理で封入率20%のリポソーム分
散液(300ml)を得た。
実施例10 実施例1で用いられる1mg/mlCDDPの代わりに、200μg
/mlのビスクロルエチルニトロソウレア(BCNU)を用い
て、それ以外は実施例1と同じ方法で、BCNUを封入する
リポソーム製剤を得て、同じ透析条件で未封入の遊離BC
NUを分離除去して、0.5時間処理で封入率20%のリポソ
ーム分散液(300ml)を得た。
実施例11 18gのDPPCと2gのDSPCを2lのビーカー内でクロロホル
ムとイソプロピルエーテルの1:1の混合溶液1000mlに溶
解した。この溶液に浸透圧が生理食塩水の浸透圧の1.9
倍となるようにあらかじめ調製しておいた500μg/mlのC
DDP食塩水溶液を1000ml加え軽く混合した後、乳化機(3
l用ホモミキサー、特殊機化工業製)で60分間乳化しW/O
エマルジョンを作製した。このようにして得たエマルジ
ョンを同じホモミキサーを用いて、60℃減圧下で有機溶
媒を留去することによりLUVを得た。さらに得られたLUV
の一部500mlをホローファイバー型透析器〔AM−Neo−20
01型,旭化成製,ファイバー長約25cm,有効膜面積1.5
m2〕中に、約150ml/分の速度で注入し、透析外液として
生理食塩水をホローファイバーにかかる膜圧が0となる
ように、約500ml/分の速度で流すことにより、遊離のCD
DPの透析除去で、CDDPが上記高張溶液と共に封入された
リポソーム製剤を得た。
発明の効果 本発明によると、薬物を封入してなるリポソームと未
封入薬物を含有してなる水性液から、未封入薬物を実用
的に遊離に分離除去でき、リポソーム製剤の精製法とし
て極めて有用である。すなわち、従来、採用されてきた
透析袋膜法、遠心分離法、ゲルろ過法に比較して、短時
間に大量処理が可能であること、透析装置の殺菌処理が
可能でありかつリポソーム製造装置と直結したクローズ
ドシステムを採用しうること、などにおいて極めて実用
に適した方法である。また、本発明方法を適用しても、
リポソームに損傷を与えることがなく、封入された薬物
の漏出を起こさないので、この点でも優れた方法であ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)は、本発明に用いる装置の1例を示す。図
中、はリポソーム懸濁液貯留容器、はリポソーム懸
濁液送液ポンプ,およびはリポソーム懸濁液の送液
パイプ,はホローファイバー型透析器,は透析外液
貯留容器,透析外液送液ポンプ,およびは透析外
液送液パイプ,は差圧調整バルブをそれぞれ示す。 第1図(b)は、第1図(a)中のホローファイバー
型透析器の拡大図を示す。中空繊維膜(ホローファイ
バー),中空繊維集束接着固定部,ケース, リポソーム懸濁液流入口(透析前), リポソーム懸濁液流出口(透析後), 透析外液流入口, 透析外液流出口をそれぞれ示す。 第2図は、リポソーム製造装置にホローファイバー型透
析器を直結させ、薬物を封入するリポソームの調製と未
封入の薬物の分離を無菌的に一貫して実施できる装置の
一例を示す。図中、リポソーム製造装置(真空乳化
機),リポソーム懸濁液,ホローファイバー型透析
器,リポソーム懸濁液循環送液ポンプ,透析外液送
液ポンプ,リポソーム懸濁液送液パイプ,透析外液
送液パイプ,中空繊維内側圧調整バルブ,透析外液
側圧調整バルブ,透析外液貯留タンクをそれぞれ示
す。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】薬物を封入してなるリポソームと未封入薬
    物とを含有してなる水性液を、薬物を透過しリポソーム
    を透過しないホローファイバーによる透析に付し、該フ
    ァイバーの外液中に未封入薬物を分離除去することを特
    徴とするリポソーム製剤の精製法。
  2. 【請求項2】ホローファイバー中の水性液圧を外液圧よ
    りも高くなるように制御する請求項(1)記載の方法。
  3. 【請求項3】差圧が300mmHg以下である請求項(2)記
    載の方法。
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