JP5982970B2 - パンチプレスの追い抜き金型および板材の長孔形成方法 - Google Patents

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Description

この発明は、板材の追い抜き加工に用いるパンチプレスの追い抜き金型および板材の長孔形成方法に関する。
パンチプレスにより板材に追い抜き加工を行う場合、平面形状が長方形状で上下に貫通した貫通孔を有するダイ金型と、このダイ金型の貫通孔に嵌り合い状態に進入する刃部を有するパンチ金型とを用いて、多数のパンチ孔を互いに部分的に重ねながら連続して加工する方法が採られる。しかし、この方法によると、連続して開けられるパンチ孔の重なり部分の一端に、見た目や触感で違和感のある継ぎ目が残るという問題がある。継ぎ目は、以下の各要素からなる(図13)。
ダレ面53の継ぎ目56は、パンチ金型の平面形状が長方形状である場合、図14のように、パンチ孔51におけるコーナー部51aの上端縁付近51aaにダレが生じないことに起因する。つまり、今回加工でパンチ孔51が形成されたとき、前回加工で形成されたパンチ孔51における前記ダレが生じていないコーナー部51aの上端縁付近51aaが突起状となって残るのである。なお、コーナー部51aの上端縁付近51aaにダレが生じない理由は、図15に示すように、コーナー部51aでは他の箇所よりもパンチ金型1とパンチ孔51の上端縁との間隔が離れている(B>C)ため、パンチ金型1のパンチ力が板材Wに伝わりにくいからであると考えられる。
切断面の突起57は、パンチ孔51のコーナー部51aでは、破断面が生じず、図14にせん断面部54aで示すように下端までせん断面になることに起因する。図16のように、破断面55はせん断面54よりも後退しているため、今回加工でパンチ孔51が形成されたとき、前回加工で形成されたパンチ孔51における下端まで延びたせん断面部54aの部分が、周囲の破断面55よりも突出した状態となる。
下面の突起58は(図13)、上記パンチ孔51のコーナー部51aに形成された板材Wの下端まで延びたせん断面部54a(図14)が、今回加工時にパンチ金型1の側面で擦られながら下方に引っ張られることにより、板材Wの下面よりも下方に突出した状態となったものである。いわゆるバリが大きく形成された部分である。
これらの継ぎ目は、後行程にてサンダー掛けややすり掛け等の手作業で処理を行っていた。手作業による処理は、作業者によって仕上げ品質のばらつきがあるうえに、作業工数が増えて加工能率が低下するという問題があった。
そこで、上記各種の継ぎ目を無くすか、または極力目立たなくするパンチ加工方法として、底面が水平に対し傾斜した切込刃部を有する追い抜きパンチ金型を用い、前記切込刃部では板材を打ち抜かずに切込みを入れるだけとして、次の切込みを前の切込みに続けて加工する方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。また、特許文献3では、所定間隔でワークを半抜きし、その後、隣接する一方の半抜き部分から他方の半抜き部分へ跨る部分を抜くことで、継ぎ目を無くす加工方法が提案されている。さらに、特許文献4では、金型の一側縁部を円弧状に形成して、最初に加工された加工孔の円弧部以上を、金型の円弧状部に送り込んで追い抜き加工を行うことで、ダレ面の継ぎ目を目立たなくしている。
特許第3401908号公報 特許第3960066号公報 特許第4518539号公報 特公昭61−9895号公報
上記提案の加工方法によると、パンチ孔のコーナー部にも他の部分と同じようにダレや破断面が生じるため、多数のパンチ孔を互いに部分的に重ねながら連続して加工する追い抜き加工を行った場合にパンチ孔の重なり部分が滑らかな連続する面となり綺麗に仕上がる。しかし、この加工に用いる金型は、形状が複雑であるため、高価である。また、1回のパンチ加工で開けることのできるパンチ孔の長さが短いため、加工能率が低下する。さらに、パンチ金型の打ち下ろし高さを微妙に調整する必要があり、複雑な制御をする必要がある。
この発明の目的は、比較的安価に製作でき、パンチ孔の重なり部分を滑らかに仕上げながら、追い抜き加工を能率良く行うことができるパンチプレスの追切り金型を提供することである。
この発明の他の目的は、パンチ孔の重なり部分をより一層滑らかに仕上げられるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、比較的安価な追い抜き金型を用いて、パンチ孔の重なり部分を滑らかに仕上げながら、追い抜き加工を能率良く行うことができる長孔の形成方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、比較的安価に製作でき、パンチ孔の重なり部分を滑らかに仕上げながら、追い抜き加工を能率良く行うことができるパンチプレスのパンチ金型を提供することである。
この発明のパンチプレスの追い抜き金型は、ダイ金型とパンチ金型との組み合わせからなり、前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに板材送り方向に重なるように板材に追い抜き加工を行って長孔を形成するための金型であって、前記ダイ金型は、平面形状が長方形状で上下に貫通した貫通孔を有し、この貫通孔の板材送り方向上流側の上面開口縁から上流側にかけて他の部分よりも上面の高さが低い凹部が形成され、前記凹部により形成される上流側の前記上面開口縁が、下流側の前記上面開口縁よりも低く設定され、前記パンチ金型は、前記ダイ金型の前記貫通孔に嵌り合い状態に進入する刃部を有し、この刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成され、前記パンチ金型の上流側のコーナー部が、前記ダイ金型の前記上流側の前記上面開口縁と協働して、前記板材の上流側部分を切断するものとしている。
この構成の追い抜き金型によると、ダイ金型の上に板材を水平状に載置し、この板材に対しパンチ金型を打ち下ろしてパンチ加工を行うことで、板材にダイ金型およびパンチ金型の平面形状と合致する長方形状のパンチ孔を形成する。ダイ金型は、貫通孔の板材送り方向上流側の上面開口縁から上流側にかけて他の部分よりも上面の高さが低い凹部が形成されているため、パンチ孔の板材送り方向上流端に隣接する板材部分は、ダイ金型の凹部の深さ分だけ下向きに変形させられた成形部となる。また、パンチ金型は、刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成されていることにより、コーナー部におけるパンチ金型とパンチ孔の上端縁との間隔が他の箇所における同間隔と同じである。それにより、パンチ孔のコーナー部にもダレ面が生じる。
前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに部分的に重なるように板材に追い抜き加工を行う場合、前回加工で形成されたパンチ孔の板材送り方向上流端に隣接する板材部分が下方に変形した成形部になっていることと、前回加工で形成されたパンチ孔の板材送り方向上流側のコーナー部にダレ面が生じていることとの相乗効果により、ダレ面での継ぎ目の発生が抑えられる。また、前回加工で形成されたパンチ孔のコーナー部に破断面が形成されているため、今回加工を行ったときに切断面の下部にせん断面の跡が残らず、切断面の突起が生じない。さらに、前回加工で形成されたパンチ孔のコーナー部に破断面が形成されていると、今回加工時にパンチ金型の側面で擦られながら下方に引っ張られたとしても、それによる板材の下面への突出量が少なく、下面の突起が抑えられる。
ダイ金型の前記凹部およびパンチ金型の刃部のコーナー部における平面視円弧状の部分は、板材送り方向上流側にのみ形成されているため、ダイ金型およびパンチ金型の板材送り方向の向きを逆にしてパンチ加工を行うことで、パンチ孔の板材送り方向上流側端を下流側と同様に平面形状で矩形状、例えば直角に打ち抜くことができる。よって、1組の追切り金型だけで長孔を形成すること可能である。
この追い抜き金型は、従来の追い抜き金型と比べて、追い抜き加工を行う場合の前回のパンチ孔と今回のパンチ孔の板材送り方向の重なり代が短くて済むため、加工能率が良い。また、この追い抜き金型は、例えば特許文献1,2のものと比べて簡単な構成であるため、安価に製作することができる。
この発明において、追い抜き加工において前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔との重なり部分となる孔部を前回加工時に打ち抜く前記パンチ金型の箇所を、板材送り方向下流側へ行くほど次第に幅が狭まる形状としてもよい。
上記構成であると、前回加工で形成されたパンチ孔のコーナー部の切断面を今回加工時にパンチ金型の側面で擦られながら下方に引っ張られることがないため、下面への突起をより一層抑えることができる。
この発明の板材の長孔形成方法は、平面形状が長方形状の上下に貫通した貫通孔を有し、この貫通孔の板材送り方向上流側の上面開口縁から上流側にかけて他の部分よりも上面の高さが低い凹部が形成されて前記凹部により形成される上流側の前記上面開口縁が、下流側の前記上面開口縁よりも低く設定されたダイ金型と、前記ダイ金型の前記貫通孔に嵌り込み状態に進入する刃部を有し、この刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成されているパンチ金型とを用い、パンチプレスにより、前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに重なるように板材に追い抜き加工を行って長孔を形成し、前記パンチ金型の上流側のコーナー部が前記ダイ金型の前記上流側の前記上面開口縁と協働して前記板材の上流側部分を切断する。
この長孔形成方法によると、前回加工で形成されたパンチ孔の板材送り方向上流端に隣接する板材部分が下方に変形していることと、前回加工で形成されたパンチ孔の板材送り方向上流側のコーナー部に平面視で円弧状に形成されていることとの相乗効果により、ダレ面での継ぎ目の発生が抑えられる。また、前回加工で形成されたパンチ孔のコーナー部に破断面が形成されているため、今回加工を行ったときに切断面の下部にせん断面の跡が残らず、切断面の突起が生じない。さらに、前回加工で形成されたパンチ孔のコーナー部に破断面が形成されていると、今回加工時にパンチ金型の側面で擦られながら下方に引っ張られたとしても、それによる板材の下面への突出量が少なく、下面の突起が抑えられる。
ダイ金型の前記凹部およびパンチ金型の刃部のコーナー部における平面視円弧状の部分は、板材送り方向上流側にのみ形成されているため、ダイ金型およびパンチ金型の板材送り方向の向きを逆にしてパンチ加工を行うことで、パンチ孔の板材送り方向上流側端を下流側と同様に平面形状で矩形状、例えば直角に打ち抜くことができる。よって、1組の追切り金型だけで長孔を形成することが可能である。
のパンチ金型は、パンチプレスにより、前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに重なるように板材に追い抜き加工を行って長孔を形成するために、ダイ金型と組み合わせて使用されるパンチ金型であって、前記ダイ金型に設けられた平面形状が長方形状の貫通孔に嵌り合い状態に進入する刃部を有し、この刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成されている。
このパンチ金型は、例えば、平面形状が長方形状で上下に貫通した貫通孔を有するダイ金型と組み合わせて用いられる。その場合、ダイ金型の上に板材を水平状に載置し、この板材に対しパンチ金型を打ち下ろしてパンチ加工を行うことで、板材にダイ金型およびパンチ金型の平面形状と合致する長方形状のパンチ孔を形成する。パンチ金型は、刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成されているため、パンチ孔のコーナー部にダレ面が生じる。
前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに部分的に重なるように板材に追い抜き加工を行うと、前回加工で形成されたパンチ孔の板材送り方向上流側のコーナー部に平面視で円弧状に形成されていることにより、ダレ面での継ぎ目の発生が抑えられる。また、前回加工で形成されたパンチ孔のコーナー部に破断面が形成されているため、今回加工を行ったときに切断面の下部にせん断面の跡が残らず、切断面の突起が生じない。さらに、前回加工で形成されたパンチ孔のコーナー部に破断面が形成されていると、今回加工時にパンチ金型の側面で擦られながら下方に引っ張られたとしても、それによる板材の下面への突出量が少なく、下面の突起が抑えられる。
パンチ金型の刃部のコーナー部における平面視円弧状の部分は、板材送り方向上流側にのみ形成されているため、パンチ金型の板材送り方向の向きを逆にしてパンチ加工を行うことで、パンチ孔の板材送り方向上流側端を下流側と同様に平面形状で矩形状、例えば直角に打ち抜くことができる。よって、1つのパンチ金型だけを用いて長孔を形成すること可能である。
この発明のパンチプレスの追い抜き金型は、ダイ金型とパンチ金型との組み合わせからなり、前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに板材送り方向に重なるように板材に追い抜き加工を行って長孔を形成するための金型であって、前記ダイ金型は、平面形状が長方形状で上下に貫通した貫通孔を有し、この貫通孔の板材送り方向上流側の上面開口縁から上流側にかけて他の部分よりも上面の高さが低い凹部が形成され、前記凹部により形成される上流側の前記上面開口縁が、下流側の前記上面開口縁よりも低く設定され、前記パンチ金型は、前記ダイ金型の前記貫通孔に嵌り合い状態に進入する刃部を有し、この刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成され、前記パンチ金型の上流側のコーナー部が、前記ダイ金型の前記上流側の前記上面開口縁と協働して、前記板材の上流側部分を切断するものとしているため、比較的安価に製作でき、パンチ孔の重なり部分を滑らかに仕上げながら、追い抜き加工を能率良く行うことができる。
追い抜き加工において前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔との重なり部分となる孔部を前回加工時に打ち抜く前記パンチ金型の箇所を、板材送り方向上流側へ行くほど次第に幅が狭まる形状とした場合は、パンチ孔の重なり部分をより一層滑らかに仕上げることができる。
この発明の板材の長孔形成方法は、平面形状が長方形状の上下に貫通した貫通孔を有し、この貫通孔の板材送り方向上流側の上面開口縁から上流側にかけて他の部分よりも上面の高さが低い凹部が形成されて前記凹部により形成される上流側の前記上面開口縁が、下流側の前記上面開口縁よりも低く設定されたダイ金型と、前記ダイ金型の前記貫通孔に嵌り込み状態に進入する刃部を有し、この刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成されているパンチ金型とを用い、パンチプレスにより、前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに重なるように板材に追い抜き加工を行って長孔を形成し、前記パンチ金型の上流側のコーナー部が前記ダイ金型の前記上流側の前記上面開口縁と協働して前記板材の上流側部分を切断するため、比較的安価な追い抜き金型を用いて、パンチ孔の重なり部分を滑らかに仕上げながら、追い抜き加工を能率良く行うことができる。
のパンチ金型は、パンチプレスにより、前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに重なるように板材に追い抜き加工を行って長孔を形成するために、ダイ金型と組み合わせて使用される金型であって、前記ダイ金型に設けられた平面形状が長方形状の貫通孔に嵌り合い状態に進入する刃部を有し、この刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成されているため、比較的安価に製作でき、パンチ孔の重なり部分を滑らかに仕上げながら、追い抜き加工を能率良く行うことができる。
この発明の一実施形態にかかる追い抜き金型が装着されたパンチプレスの金型装着部の断面図である。 (A)は同追い抜き金型のパンチ金型の正面図、(B)はその一部を拡大して表した底面図である。 (A)は同パンチ金型の刃部の底面形状を誇張して表した図、(B)は異なるパンチ金型の刃部の底面形状を誇張して表した図である。 (A)は同追い抜き金型のダイ金型の平面図、(B)はその破断正面図である。 (A)〜(D)は同追い抜き金型を用いた板材の長孔形成方法の過程を示す図である。 板材の長孔形成過程における第1回目のパンチ加工の動作を示す金型装着部の断面図である。 同追い抜き金型を用いて加工したパンチ孔のコーナー部の斜視図である。 同パンチ金型とパンチ孔の上端縁との位置関係を示す平面図である。 板材の長孔形成過程における第2回目のパンチ加工の動作を示す金型装着部の断面図である。 同追い抜き金型を用いて加工したパンチ孔の切断面の斜視図である。 追い抜き加工におけるパンチ孔とパンチ金型との平面位置関係を示す図である。 板材の長孔形成過程における最終のパンチ加工の動作を示す金型装着部の断面図である。 従来の追い抜き金型を用いて加工したパンチ孔の切断面の斜視図である。 従来の追い抜き金型を用いて加工したパンチ孔のコーナー部の斜視図である。 従来のパンチ金型とパンチ孔の上端縁との位置関係を示す平面図である。 板材の切断面の断面形状を示す図である。
この発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1はこの発明の一実施形態にかかる追い抜き金型が装着されたパンチプレスの金型装着部を示す。追い抜き金型はパンチ金型1とダイ金型11とでなり、ダイ金型11の上に板材Wを水平状に載置し、この板材Wに対しパンチ金型1を打ち下ろしてパンチ加工を行う。
図2に示すように、パンチ金型1は、柄部2の下端に刃部3が設けられている。刃部3は横断面形状が長方形状であり、その底面は、幅広方向つまり板材送り方向Aの上流側(図2の右側)へ行くほど上方に傾斜している。底面の板材送り方向Aと直交する方向(紙面と直交する方向)については、同じ高さレベルである。そして、刃部3の底面の四辺が、後述するダイ金型11のダイ側エッジ12aa,12ab,12ac,12adとの協働で板材を打ち抜くパンチ側エッジ3a,3b,3c,3dとされている。なお、図2に示すパンチ金型1の向きは、追い抜き加工を行うときの向きである。
刃部3の横断面形状は、より詳しくは、板材送り方向Aの下流側へ行くほど次第に幅が狭まる形状である。つまり、刃部3の横断面形状は、正確には、長方形状ではなく、誇張して表すと図3(A)のような台形状をしている。ただし、幅の狭まり度は極めて小さいため、長方形状と言ってもほぼ差し支えない。この例では、板材送り方向Aの全域に渡って幅が狭まっているが、図3(B)のように、少なくとも追い抜き加工において前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔との重なり部分となる孔部を前回加工時に打ち抜く箇所を含む一部の範囲Wだけが、板材送り方向Aの下流側へ行くほど次第に幅が狭まる形状としてもよい。
また、図2(B)の部分拡大図に示すように、板材送り方向Aの上流側のコーナー部4は、平面視で円弧状に形成されている。板材送り方向Aの下流側のコーナー部5は、平面視で直角に形成されている。
図4に示すように、ダイ金型11は、平面形状が略円形のものであり、パンチ金型1の刃部3が進入可能なスリット状の貫通孔12が、上下に貫通して設けられている。貫通孔12は、板材送り方向Aに長い段付き孔であり、上孔部12aは、パンチ金型1の刃部3が嵌合する横断面形状とされている。そして、上孔部12aの四辺の上端縁が、パンチ金型1の前記パンチ側エッジ3a,3b,3c,3dとそれぞれ噛み合うダイ側エッジ12aa,12ab,12ac,12adとされている。ダイ金型11の上面には、貫通孔12の板材送り方向Aの上流側の上面開口縁から上流側にかけて、他の部分よりも上面の高さが低い凹部13が形成されている。
上記追い抜き金型のパンチ金型1およびダイ金型11は、図1に示すように、パンチプレスの金型装着部に装着して使用される。
パンチ金型1は、頭部部材21にセットボルト22で取付けられ、パンチホルダ23を介して上側のタレット24の金型設置孔25に昇降自在に嵌合している。頭部部材21は、そのT形の頭部でパンチ駆動機構(図示せず)のラム26に係合し、昇降駆動される。パンチ駆動機構は、クランク式のものであっても油圧式のものであっても良い。パンチホルダ23は昇降自在として押えばね27A,27Bにより下降付勢し、下端にストリッパ板28を取付けてある。
パンチ金型1は、角度割り出し可能なインデックスツールとされている。すなわち、前記金型設置孔25はタレット本体24aに対し回転自在な回転体31に設けられている。回転体31は外周面にウォームホイール32を有し、このウォームホイール32に、タレット24の径方向に向けて配置した回転軸33に設けたウォームギア34が噛み合っている。駆動手段により回転軸33を回転させることにより、その回転がウォームギア34およびウォームホイール32を介して回転体31に伝達され、パンチ金型1が所望の角度に割り出される。
ダイ金型11も、角度割り出し可能なインデックスツールとされている。すなわち、下側のタレット36に回転自在にダイホルダ37が装着され、このダイホルダ37にダイ金型11が保持されている。ダイホルダ37は外周面にウォームホイール38を有し、このウォームホイール38に、タレット36の径方向に向けて配置した回転軸39に設けたウォームギア40が噛み合っている。駆動手段により回転軸39を回転させることにより、その回転がウォームギア40およびウォームホイール38を介してダイホルダ37に伝達され、ダイ金型11が所望の角度に割り出される。
上下のタレット24,36は、円周方向の複数個所にパンチ加工のための各種の金型を支持した金型支持部材であり、その設置金型の一つとして、追い抜き金型のパンチ金型1およびダイ金型11が設置されている。追い抜き金型以外のパンチ金型(図示せず)およびダイ金型(図示せず)も、上記同様に角度割り出し可能に設けられる。なお、これらの金型を設置するパンチプレスは、タレット式のものに限らず、パンチ金型およびダイ金型は、タレットとは別の金型支持部材(図示せず)に設置しても良い。
上記パンチ金型1およびダイ金型11の組合せからなる追い抜き金型を用いたパンチ加工の方法を、図5(D)のように板材Wに長孔50を形成する場合を例にとって説明する。概略的には、パンチプレスにより、前回加工で形成されたパンチ孔51と今回加工で形成されるパンチ孔51とが互いに部分的に重なるように板材Wに追い抜き加工を行って長孔50を形成する。
図6に、第1回目のパンチ加工の動作を示す。同図(A)のように、板材Wに形成しようとする長孔50の始端がパンチ金型1およびダイ金型11と同じ平面位置になるように、具体的には、パンチ金型1とダイ金型11とで打ち抜かれる孔が長孔50の始端に一致するように板材Wを位置させ、その状態で、同図(B)のように、パンチ金型1を打ち下ろして、板材Wを打ち抜きパンチ孔51(1)(図5(A))を形成する。打ち抜かれた打抜き片Waは、ダイ金型11の貫通孔12を通って落下する。
ダイ金型11の上面に前記凹部13が形成されているため、ダイ金型11の板材送り方向Aの上流側のダイ側エッジ(上面開口縁)12aaは、他のダイ側エッジ12ab,12ac,12ad(下流側の上面開口縁)よりも低位に位置している。そのため、パンチ金型1で板材Wを打ち抜く際に、パンチ孔51の板材送り方向Aの上流端に隣接する板材部分は、図7のようにダイ金型11の凹部13の深さ分だけ下向きに変形させられた成形部52となる。
パンチ金型1の刃部3における板材送り方向Aの上流側のコーナー部4が平面視で円弧状に形成されているため、図8のように、パンチ金型1とパンチ孔51の上端縁との間隔は、コーナー部4での間隔Bも、直線部分である他の箇所での間隔Cも同じである。それにより、図7のように、パンチ孔51のコーナー部51aにも、他の箇所と同じように、ダレ面53が生じると共に、せん断面54の下側に破断面55が生じる。
図9に、第2回目のパンチ加工の動作を示す。同図(A)のように、第1回目のパンチ孔51(1)の板材送り方向Aの上流側端がパンチ金型1およびダイ金型11と平面位置で重なるよう板材Wを位置させ、その状態で、同図(B)のように、パンチ金型1を打ち下ろして、板材Wを打ち抜きパンチ孔51(2)(図5(B))を形成する。
第1回目の加工で形成されたパンチ孔51(1)の板材送り方向Aの上流端に隣接する板材部分が下方に変形した成形部52(図7)になっていることと、第1回目の加工で形成されたパンチ孔51(1)の板材送り方向Aの上流側のコーナー部51aにダレ面53(図7)が生じていることとの相乗効果により、図10に示すように、第1回目と第2回目の各パンチ孔51(1),51(2)の重なり部分の一端での継ぎ目が目立たなくなる。すなわち、ダレ面53の継ぎ目56の発生が抑えられる。また、第1回目の加工で形成されたパンチ孔51のコーナー部51aの下部に破断面55(図7)が形成されているため、第2回目の加工を行ったときに切断面の下部に突起57がほとんど生じない。
さらに、第1回目の加工で形成されたパンチ孔51(1)のコーナー部51aに破断面55(図7)が形成されていると、第2回目の加工時にせん断面54がパンチ金型1の刃部3の側面で擦られながら下方に引っ張られたとしても、それによる板材Wの下面への突出量が少ない。特に、この追い抜き金型のパンチ金型1は、刃部3が板材送り方向Aの下流側へ行くほど次第に幅が狭まる形状であるため、追い抜き加工を行う場合、図11のように、前回加工で形成されたパンチ孔51の側壁面F1と今回加工時のパンチ金型1の刃部3の側面F2との間に隙間があり、パンチ孔51の側壁面F1を刃部3の側面F2で擦らない。そのため、下面の突起58(図13)の発生を抑制できる。
以下同様に、前回加工で形成されたパンチ孔51と今回加工で形成されるパンチ孔51とが互いに重なるように板材Wに追い抜き加工を行って、板材Wに形成しようとする長孔50の終端の直前まで加工が進行すると(図5(C))、最終のパンチ加工を行う。
図12に、最終のパンチ加工の動作を示す。同図(A)のように、パンチ金型1およびダイ金型11の板材送り方向Aの向きを逆にする。そして、板材Wに形成しようとする長孔50の終端がパンチ金型1およびダイ金型11と同じ平面位置になるよう板材Wを位置させ、その状態で、同図(B)のように、パンチ金型1を打ち下ろして、板材Wを打ち抜きパンチ孔51(L)(図5(D))を形成する。このように、パンチ金型1およびダイ金型11の板材送り方向Aの向きを逆にしてパンチ加工を行うことで、最終のパンチ孔51(L)の板材送り方向Aの上流側端を下流側端と同様に平面形状で直角に打ち抜くことができる。つまり、1組の追切り金型だけで長孔50を形成することが可能である。
パンチ加工におけるパンチ金型1の下降高さが一定であるので、制御系を簡単に構成できる。この追い抜き金型は、従来の追い抜き金型と比べて、追い抜き加工を行う場合の前回のパンチ孔と今回のパンチ孔の板材送り方向の重なり代が短くて済むため、加工能率が良い。また、この追い抜き金型は、例えば特許文献1,2のものと比べて簡単な構成であるため、安価に製作することができる。
1…パンチ金型
3…刃部
4…コーナー部
11…ダイ金型
12…貫通
12aa…ダイ側エッジ(上流側の上面開口縁)
12ad…ダイ側エッジ(下流側の上面開口縁)
3…凹部
51…パンチ孔
A…板材送り方向
W…板材

Claims (3)

  1. ダイ金型とパンチ金型との組み合わせからなり、前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに板材送り方向に重なるように板材に追い抜き加工を行って長孔を形成するためのパンチプレスの追い抜き金型であって、
    前記ダイ金型は、平面形状が長方形状で上下に貫通した貫通孔を有し、この貫通孔の板材送り方向上流側の上面開口縁から上流側にかけて他の部分よりも上面の高さが低い凹部が形成され
    前記凹部により形成される上流側の前記上面開口縁が、下流側の前記上面開口縁よりも低く設定され、
    記パンチ金型は、前記ダイ金型の前記貫通孔に嵌り合い状態に進入する刃部を有し、この刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成され、
    前記パンチ金型の上流側のコーナー部が、前記ダイ金型の前記上流側の前記上面開口縁と協働して、前記板材の上流側部分を切断するものとしているパンチプレスの追い抜き金型。
  2. 追い抜き加工において前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔との重なり部分となる孔部を前回加工時に打ち抜く前記パンチ金型の箇所を、板材送り方向下流側へ行くほど次第に幅が狭まる形状とした請求項1記載のパンチプレスの追い抜き金型。
  3. 平面形状が長方形状の上下に貫通した貫通孔を有し、この貫通孔の板材送り方向上流側の上面開口縁から上流側にかけて他の部分よりも上面の高さが低い凹部が形成されて前記凹部により形成される上流側の前記上面開口縁が、下流側の前記上面開口縁よりも低く設定されたダイ金型と、前記ダイ金型の前記貫通孔に嵌り込み状態に進入する刃部を有し、この刃部の板材送り方向上流側のコーナー部が平面視で円弧状に形成されているパンチ金型とを用い、パンチプレスにより、前回加工で形成されたパンチ孔と今回加工で形成されるパンチ孔とが互いに重なるように板材に追い抜き加工を行って長孔を形成し、前記パンチ金型の上流側のコーナー部が前記ダイ金型の前記上流側の前記上面開口縁と協働して前記板材の上流側部分を切断する板材の長孔形成方法。
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