JP3960066B2 - パンチプレスの追切り切断金型および切断方法 - Google Patents

パンチプレスの追切り切断金型および切断方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、板材ワークに追切りを行って切断や金型幅よりも長い長孔の形成を行うためのパンチプレスの追切り切断金型および追切り切断方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
パンチプレスを用いて板材ワークを切断加工する場合や、金型幅よりも長い長孔の加工を行う場合、通常は金型として長角のパンチを用い、多数のパンチ孔を連続して加工する方法が採られる。しかし、連続して形成される各パンチ孔の間で板材ワークの切断面に継ぎ目が生じるという問題点がある。
このような継ぎ目を無くすパンチ加工方法として、先端面が斜めになったパンチを用い、板材ワークを打ち抜かずに切込みを入れるだけとして、次の切込みを前の切込みに続けて加工する方法が提案されている。このように切込みを順次入れる加工方法によると、切断面が連続して綺麗に仕上がる。しかし、この方法では、抜きカスが連続して生じるため、その排出が行い難いという問題点がある。
【0003】
これらの問題点を解消する方法として、パンチに打抜刃部と切込刃部とを並べて設け、板材ワークに2本の平行な切れ目を入れた後に、切れ目間の舌片状の切込片を打抜刃部に位置するように板材送りを行い、次のパンチ動作で切込片の切断と、前記切れ目に続く新たな切れ目の加工とを行う方法を提案した(特願平5−110912)。
しかし、上記提案方法では、切込片の先端が板材ワークから下側へ傾斜した塑性変形状態になることがあり、板材送りに伴って前記切込片の先端がダイの内面に潜り込むように引っ掛かって潰れる恐れがある。このように切込片の潰れが生じると、この切込片に続く切れ目が良好に連続せず、板材ワークの切断面が十分に綺麗に連続した切断面とならない。
【0004】
そこで、出願人は、これを改善した金型を提案した(特開平7−275964)。この提案金型は、図10(A),(B)に示すように、パンチ51に打抜刃部53および切込刃部54を並べて設け、ダイ52に打抜用貫通孔56および切込用凹部57を設けた金型において、切込刃部54の下面を、板材ワークWの切込片Waを逆へ字状に成形する整形部としたものである。また、ダイ52の切込用凹部57には弾性的に沈み込みが可能な押出手段59を設ける。
この金型によると、板材ワークWの切込刃部54で加工された切込片Waが逆ヘ字状の整形され、かつこの切込片Waが押出手段59によりダイ52の上面よりも上方に押し出された状態で板材送りを行うので、切込片Waがダイ52の内面に引っ掛かることがなく、円滑な板材送りが行われる。
押出手段59を設ける代わりに、ダイ52の打抜用貫通孔56と切込用凹部57間の仕切り壁60の先端に設けられた傾斜ガイド面60aを利用し、板材送り時に傾斜ガイド面60aで逆へ字状の切込片Waをダイ上面へ押し出すことも、同提案出願に示されている。これによっても、板材送り時に切込片Waがダイ上面よりも上方に押し出した状態となるため、円滑な板材送りが行われる。
【0005】
しかし、同図の例などのように、切込片Waをダイ52から完全に押し出すものでは、打ち抜き時に、その一旦押し出された切込片Waをダイ52へ再度押し込むことになるため、切込片Waがその幅方向に位置ずれし、その位置ずれにより髭状の残部が生じ、切断面が綺麗に仕上がらないことがあった。
【0006】
さらに、同図の例のような金型では、パンチ51の1回の昇降毎に打ち抜きと切り込みが同時行われるため、長孔を加工する場合、最終部分に切り込みが続いて生じることになる。このため、金型の回転機構(図示せず)を設け、長孔の最終部分の打ち抜きを行うときに、パンチ51およびダイ52を共に180°回転させて切込片Waを切り落とすことが提案されている。しかし、金型の回転機構が必要なため、パンチプレスの構造が複雑化し、コスト高になるという課題が生じる。さらに、最終の打抜片が押出手段59上に残る恐れも生じる。
【0007】
この発明の目的は、髭状の残部が生じず、かつ板材送り時の切込片の引っ掛かりを生じずに、継ぎ目のない綺麗な長孔の加工や切断が行えるパンチプレスの追切り切断金型および追切り切断方法を提供することである。
この発明の他の目的は、長孔の最終部に余分な切込みが生じず、かつ金型を回転させることなく、長孔を効率良く加工できるパンチプレスの追切り切断方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明のパンチプレスの追切り切断金型は板材に追切りを行って切断または金型幅よりも長い長孔の形成を行うためのものであって、パンチとダイとからなる。パンチは追切り方向に並ぶ打抜刃部および切込刃部を有し、ダイはこれらの刃部が進入する貫通状態の刃部進入孔を有するものとする。
パンチの打抜刃部は、切込刃部よりもダイ側へ段差をもって突出し、かつ切込刃部との境界側の先端縁が打抜用エッジとされる。切込刃部は、打抜刃部と反対側の縁から打抜刃部に近づくに従ってダイ側へ突出する傾斜部分、およびこの傾斜部分から打抜刃部側へ続き突出高さが略一定でかつ前記傾斜部分の下端と同じ高さとなる平坦部分を有するものとする。前記切込刃部は、この切込刃部で加工された板材の切込片を切込刃部の下面の形状に倣わせて、先端側の部分を前記平坦部分の下面に沿う平坦な水平形状とするものである。
イの刃部進入孔は、追切り方向の中間で仕切り壁により仕切られて、片方の仕切孔部分が打抜刃部の進入する打抜用貫通孔となる。この打抜用貫通孔側の仕切り壁の先端縁がパンチの打抜用エッジに噛み合う打抜用ダイ側エッジとなる。この打抜用ダイ側エッジよりも打抜用貫通孔と反対側における刃部進入孔の両側の開口縁が切込用ダイ側エッジとなる。
この構成の金型によると、パンチの切込刃部で加工された板材ワークの切込片は、切込刃部の先端面の形状に倣い、先端側の部分が平坦部分に沿う平坦な水平形状、つまり板材送り方向に平行な水平形状となる。パンチを上昇させても、この切込片の水平形状が塑性変形によって残り、この状態で次の連続パンチ動作のための板材送りが行われる。この板材送りは、切込片を強制的に持ち上げずに行われるので、切込片が幅方向に位置ずれせず、その位置ずれに起因して髭状の残部が生じることがない。また、切込片は板材送り方向に平行な水平形状であるため、板材送り時にダイ内部に潜り込んで引っ掛かることがなく、切込片の変形の生じない円滑な板材送りが行われる。また、切込みを入れて切断する動作を繰り返すことになるため、個別のパンチ孔を連続形成する場合のような継ぎ目が生じることもない。
【0009】
この追切り切断金型において、前記仕切り壁の先端は、ダイハイトより下方に位置させ
この構成の場合、パンチの切込刃部で加工された板材ワークの切込片がダイの刃部進入孔に入ったままで板材送りが行われることになる。そのため、切込片がダイハイトよりも上昇して幅方向に位置ずれすることがより確実に防止され、位置ずれによる髭状の残部の発生がより確実に防止される。
【0010】
この発明のパンチプレスの追切り切断方法は、この発明の追切り切断金型を用いる追切り切断方法であって、パンチの下降により切込刃部で板材に切込片を加工し、このとき、この切込片を切込刃部の下面の形状に倣い、先端側の部分が前記平坦部分の下面に沿う平坦な水平形状とさせて、前記切込片の前記水平形状が塑性変形によって残るようにし、パンチを上昇させた後に、前記切込片の水平形状の部分が刃部進入孔に入ったままで、次の追切りのための板材送りを行う。
この追切り切断方法において、板材ワークに形成しようとする長孔の終端部となる終端孔を前記追切り切断金型とは別の金型で打抜き加工した後、この追切り切断金型により、前記終端孔に続くように追切り切断を行うようにしても良い。なお、追切り切断は、パンチ工具のパンチ動作で板材ワークに2本の平行な切れ目を入れた後、切れ目間の舌片状の切込片を打抜刃部に位置するように板材送りを行い、次のパンチ動作で切込片の切断と、前記切れ目に続く新たな切れ目の加工とを行う動作である。
この方法によると、予め終端孔を形成しておくため、長孔の終端部の加工時にパンチの切込刃部が終端孔に進入することになり、余分な切れ目を生じさせることなく、長孔の加工が行える。また、終端孔に続くように追い切り切断を行うため、金型の回転を行うことなく、終端の切込片の切り落としが行える。このため、金型の回転機構が不要で、簡素な構成のパンチプレスで長孔を加工することができる。予め終端孔を形成しておくだけで済むため、長孔の加工の効率も良い。ダイは貫通状態の刃部進入孔を有するため、終端の切込片の打抜片がダイ上に残る問題もない。また、この発明の追切り切断金型を用いるため、この金型の持つ髭状残部の発生防止等の各効果も得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1ないし図9に基づいて説明する。このパンチプレスの追切り切断金型は、図1のパンチ1とダイ2とからなる。パンチ1は、刃部1aが柄部1bの先端に設けられている。パンチ1は、刃部1aの横断面形状が長角状のものであり、刃部1aの先端は、幅広方向つまり追切り方向に互いに並ぶ打抜刃部3と切込刃部4とに形成されている。打抜刃部3は、切込刃部4よりもダイ2側へ段差をもって突出し、先端面の4辺に沿う各先端縁のうち、少なくとも切込刃部4との境界側の先端縁が打抜用エッジ3aとされている。この実施形態では、残り3辺の先端縁も打抜用エッジ3bとされている。切込刃部4は、打抜刃部3と反対側の縁から打抜刃部3に近づくに従ってダイ2側へ突出する傾斜部分4aと、この傾斜部分4aから打抜刃部3側へ続き突出高さが略一定となる平坦部分4bとを有する。切込刃部4の幅Bは打抜刃部3の幅Aより長く設定されており(A<B)、これにより同じ寸法の金型で板材ワークWへの切込長をできるだけ長くできるようにしている。また、切込刃部4における傾斜部分4aの幅Baは、平坦部分4bの幅Bbよりも長く設定され(Ba>Bbであり)、かつこの幅Baは打抜刃部3の幅Aよりも長く設定されている。すなわち、Ba>Aとして、A<Bの関係をもっている。
このように、平坦部分4bを積極的に設けて、限られたBという長さの範囲内で傾斜部分4aの傾斜角度をより大きくしている。平坦部分4bは、切込み作用を果たさず、傾斜角度が水平に、つまり平坦に近づけば近づく程、切込み作用がなされなくなる。言い換えると、切込刃部4は、傾斜角をより大きくして、切込みを円滑に行なえるようにしつつ、上記切込長をできるだけ長くできる効果が得られるものとしている。
【0012】
ダイ2は、平面形状が例えば略円形とされている(図2参照)。ダイ2は、パンチ1の打抜刃部3および切込刃部4が進入する刃部進入孔5が上面に形成されている。この刃部進入孔5は、上下に貫通状態のスリット状の孔であり、下部が幅広孔部5dとなった段付き形状の孔とされている。刃部進入孔5の幅広孔部5dよりも上側の孔部分は、パンチ1の刃部1aが嵌合する横断面形状とされている。
刃部進入孔5は、追切り方向の中間で仕切り壁6により仕切られて、片方の仕切孔部分が打抜刃部3の進入する打抜用貫通孔5aとなり、もう片方の仕切孔部分が、最終の打抜片用の板材片落下用貫通孔5bとなる。打抜用貫通孔5a側の仕切り壁6の先端縁はパンチ1の打抜用エッジ3aに噛み合う打抜用ダイ側エッジ6aとなる。ダイ3の刃部進入孔5の開口縁は全周が打抜きまたは切込み用のエッジとされ、打抜用貫通孔5aの残り3辺の開口縁は打抜用ダイ側エッジとされている。ダイ2の刃部進入孔5の開口縁のうち、仕切り壁6の打抜用ダイ側エッジ6aよりも打抜用貫通孔5aと反対側における両側縁は、切込用ダイ側エッジ5cとなる。なお、打抜用ダイ側エッジ6aと切込用ダイ側エッジ5cとは必ず設けられるが、刃部進入孔5の開口縁における残り部分は、必ずしも打抜きや切込み用のエッジとしなくて良い。
【0013】
仕切り壁6の上端は、ダイハイトHより下方に位置させてある。ダイハイトHは、ダイ2の上面レベルを言う。また、仕切り壁6の上端の打抜用ダイ側エッジ6aから板材片落下用貫通孔5b側の縁までは、板材片落下用貫通孔5bに近づくに従ってダイ2の下面側へ下降する傾斜部分6bに形成されている。この傾斜部分6bは、最終の打抜片が板材片落下用貫通孔5b側へ落下するように案内すると共に、板材送り時に板材ワークWの切込片Wa(図7)が仕切り壁6の上端に引っ掛からないようにするものである。
【0014】
ダイ2の仕切り壁6は、ダイ2のダイ本体7とは別体の仕切り壁部材6Aで構成され、ダイ本体7に取付けられている。別体の仕切り壁部材6Aを用いたのはダイ2の製造の簡易のためであり、仕切り壁6はダイ本体7と一体に形成されたものであっても良い。
仕切り壁部材6Aの取付構造を説明する。図3は、ダイ本体7を下面側から見た状態を示す斜視図であり、図4は図3のIV−IV矢視断面図を、図5は図3のV−V矢視断面図をそれぞれ示す。ダイ本体7の下面側には、刃部進入孔5の広幅下孔部5dと直交する方向に延びる仕切り壁設置溝8が形成されている。この仕切り壁設置溝8に、仕切り壁部材6A(図6参照)の下端両側壁に突出形成された取付部6cを嵌合させ、ボルト9で締結することにより、ダイ本体7に仕切り壁部材6Aが取付けられている。
【0015】
図7は、この追切り切断金型の支持構造を示す。パンチ1は、頭部部材13にセットボルト14で取付けられ、パンチホルダ15を介して上側のタレット16の金型設置孔17に昇降自在に嵌合している。頭部部材13は、そのT形の頭部でパンチ駆動機構(図示せず)のラム20に係合し、昇降駆動される。パンチ駆動機構は、クランク式のものであっても、油圧式のものであっても良い。パンチホルダ15は昇降自在として押えばね18により下降付勢し、下端にストリッパ板19を取付けてある。ダイ2は、下側のタレット21の金型設置孔22に嵌合するダイホルダ23で保持される。上下のタレット16,21は、円周方向の複数個所にパンチ加工のための各種の金型を支持した金型支持部材であり、その設置金型の一つとして、この実施形態の追切り切断金型が設置されている。なお、この追切り切断金型を設置するパンチプレスは、タレット式のものに限らず、パンチ1およびダイ2は、タレットは別の金型支持部材(図示せず)に設置しても良い。
【0016】
つぎに、この金型を用いて板材ワークWに長孔を形成する追切り切断方法を説明する。この追切り切断では、先ず、図8(A)のように、板材ワークWに形成しようとする長孔30の始端部および終端部となる始端孔30aおよび終端部30bを、この追切り切断金型とは別のパンチおよびダイで打抜き加工する。このパンチおよびダイは、例えばこの追切り切断金型を設置したタレット16,23における別の場所に設置されたものである。この後、この追切り切断金型により、図9の手順で追切り切断を行う。
先ず、図9(A)のように板材ワークWを、その始端孔30aがパンチ1の打抜刃部3に掛かる位置として、同図(B)のようにパンチ動作を行う。すなわちパンチ1の下降および上昇の1サイクルの動作を行わせる。これにより、切込刃部4の両側面のエッジで、図8(B)のように板材ワークWに始端孔30aに続く2本の平行な切れ目aが形成される。この後、図8(A)における矢印b方向への板材ワークWの送り(図9(C)参照)とパンチ動作(図9(D)参照)とを繰り返すことにより、板材ワークWに先のパンチ過程で切れ目aの形成された舌片状の切込片Waがパンチ1の打抜刃部3のエッジ3aで切断され、かつ切れ目aに続く新たな切れ目aが切込刃部4で形成される。舌片状の切込片Waの切断片である打抜片Wbは、ダイ2における刃部進入孔5の打抜用貫通孔5aに落下して排出される。このとき、仕切り壁6の斜面部分6aで案内されて円滑に落下する。
【0017】
このようにして、順次、切込みと切断が行われ、2本の切れ目aが終端孔30bに掛かると、最後の切込片Waは打抜刃部3によらずに板材ワークWから切り離されて、ダイ2の刃部進入孔5の板材片落下用貫通孔5bから排出される。
なお、加工する長孔30の一端が板材ワークWの縁部に開口するものである場合は、その開口側が追切り切断の始端側であるか終端側であるかに応じて、始端孔30aおよび終端孔30bのいずれかを省略することができる。両端が縁部に開口する場合、つまり板材ワークWを切り離す場合は、始端孔30aおよび終端孔30bの両方とも省略できる。
【0018】
この追切り切断金型によると、このように加工が行われるが、パンチ1の切込刃部4で加工された板材ワークWの切込片Waは、図9(B)のように切込刃部4の先端面の形状に倣い、その先端側の部分が平坦部分4bに沿う平坦な水平形状、つまり板材送り方向に平行な水平形状となる。パンチ1を上昇させても、この切込片Waの水平形状が塑性変形によって残り、この状態で、図9(C)のように、次の連続パンチ動作のための板材送りが行われる。この板材送りは、切込片Waを強制的に持ち上げずに、切込片Waが刃部進入孔5に入ったまま行われるので、切込片Waが幅方向に位置ずれしない。そのため、位置ずれに起因する髭状の残部の発生の恐れがない。また、切込片Waは、板材送り方向に平行な水平形状であるため、板材送り時にダイ2の内部に潜り込んで引っ掛かることがなく、切込片Waの変形の生じない円滑な板材送りが行われる。切込片Waに若干の潜り込みが生じたとしても、仕切り壁6の傾斜部分6bにより、切込片Waが仕切り壁6を超えられて刃部進入孔5から出ない程度に案内され、円滑な板材送りが行われる。また、この追切り切断金型は、切込みaを入れて切断する動作を繰り返すことになるため、個別のパンチ孔を連続形成する場合のような継ぎ目を生じることもない。
【0019】
また、図8と共に前述したように、終端孔30bを先に加工しておく追切り切断方法とすると、長孔30の終端部の加工時にパンチ1の切込刃部4が終端孔30bに進入することになり、余分な切れ目を生じさせることなく、長孔30の加工が行える。また、終端孔30bに続くように追い切り切断を行うため、金型の回転を行うことなく、終端の切込片Waの切り落としが行える。このため、金型の回転機構が不要で、簡素な構成のパンチプレスで長孔30を加工することができる。予め終端孔30bを形成しておくだけで済むため、長孔30の加工の効率も良い。ダイ2は貫通状態の刃部進入孔5を有するため、終端の切込片Waの打抜片Wbがダイ2上に残る問題もない。
【0020】
【発明の効果】
この発明のパンチプレスの追切り切断金型は、追切り方向に並ぶ打抜刃部および切込刃部を有するパンチと、これらの刃部が進入する貫通状態の刃部進入孔を有するダイとを備え、前記パンチの打抜刃部は、切込刃部よりもダイ側へ段差をもって突出し、かつ切込刃部との境界側の先端縁が打抜用エッジとされ、前記切込刃部は、打抜刃部と反対側の端から打抜刃部に近づくに従ってダイ側へ突出する傾斜部分、およびこの傾斜部分から打抜刃部側へ続き突出高さが略一定でかつ前記傾斜部分の下端と同じ高さとなる平坦部分を有し、前記ダイの前記刃部進入孔は、追切り方向の中間で仕切り壁により仕切られて、片方の仕切孔部分が打抜刃部の進入する打抜用貫通孔となり、かつこの打抜用貫通孔側の仕切り壁の先端縁がパンチの前記打抜用エッジに噛み合う打抜用ダイ側エッジとなり、前記打抜用ダイ側エッジよりも打抜用貫通孔と反対側における前記刃部進入孔の両側の開口縁が切込用ダイ側エッジとなるものであるため、髭状の残部が生じず、かつ板材送り時の切込片の引っ掛かりを生じずに、継ぎ目のない綺麗な長孔の加工や切断を行うことができる。
上記仕切り壁の先端が、ダイハイトより下方に位置するものとするため、髭状の残部の発生がより確実となる。
この発明のパンチプレスの追切り切断方法は、この発明の追切り切断金型を用いる追切り切断方法であって、パンチの下降により切込刃部で板材に切込片を加工し、このとき、この切込片を切込刃部の下面の形状に倣い、先端側の部分が前記平坦部分の下面に沿う平坦な水平形状とさせて、前記切込片の前記水平形状が塑性変形によって残るようにし、パンチを上昇させた後に、前記切込片の水平形状の部分が刃部進入孔に入ったままで、次の追切りのための板材送りを行うため、髭状の残部が生じず、かつ板材送り時の切込片の引っ掛かりを生じずに、継ぎ目のない綺麗な長孔の加工や切断を行うことができる。
この発明の追切り切断方法において、板材ワークに形成しようとする長孔の終端部となる終端孔を前記追切り切断金型とは別の金型で打抜き加工した後、この追切り切断金型により、前記終端孔に続くように追切り切断を行う方法とする場合は、孔の最終部に余分な切込みが生じず、かつ金型を回転させることなく、長孔を効率良く加工でき、また髭状の残部が生じず、かつ板材送り時の切込片の引っ掛かりを生じずに、継ぎ目のない綺麗な長孔の加工が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態にかかる追切り切断金型の破断側面図である。
【図2】同金型におけるダイの平面図である。
【図3】同ダイを構成するダイ本体を下面側から見た斜視図である。
【図4】図3におけるIV−IV矢視断面図である。
【図5】図3におけるV−V矢視断面図である。
【図6】ダイを構成する仕切り壁の斜視図である。
【図7】前記金型の支持構造を示す断面図である。
【図8】(A)は同金型により長孔を形成する場合の前段加工を示す説明図、(B)は追切り切断加工の始端孔での加工状態を示す説明図である。
【図9】同金型による追切り切断動作の説明図である。
【図10】(A)は従来例の追切り金型の破断側面図、(B)はその作用説明図である。
【符号の説明】
1…パンチ
2…ダイ
3…打抜刃部
3a…打抜用エッジ
4…切込刃部
4a…傾斜部分
4b…平坦部分
5…刃部進入孔
5a…打抜用貫通孔、
5c…切込用ダイ側エッジ、
6…仕切り壁
6a…打抜き用ダイ側エッジ
W…板材ワーク
Wa…切込片
H…ダイハイト

Claims (3)

  1. 板材に追切りを行って切断または金型幅よりも長い長孔の形成を行うためのパンチプレスの追切り切断金型であって、追切り方向に並ぶ打抜刃部および切込刃部を有するパンチと、これらの刃部が進入する貫通状態の刃部進入孔を有するダイとを備え、前記パンチの打抜刃部は、切込刃部よりもダイ側へ段差をもって突出し、かつ切込刃部との境界側の先端縁が打抜用エッジとされ、前記切込刃部は、打抜刃部と反対側の端から打抜刃部に近づくに従ってダイ側へ突出する傾斜部分、およびこの傾斜部分から打抜刃部側へ続き突出高さが略一定でかつ前記傾斜部分の下端と同じ高さとなる平坦部分を有し、前記切込刃部は、この切込刃部で加工された板材の切込片を切込刃部の下面の形状に倣わせて、先端側の部分を前記平坦部分の下面に沿う平坦な水平形状とするものであり、前記ダイの前記刃部進入孔は、追切り方向の中間で仕切り壁により仕切られて、片方の仕切孔部分が打抜刃部の進入する打抜用貫通孔となり、かつこの打抜用貫通孔側の仕切り壁の先端縁がパンチの前記打抜用エッジに噛み合う打抜用ダイ側エッジとなり、前記打抜用ダイ側エッジよりも打抜用貫通孔と反対側における前記刃部進入孔の両側の開口縁が切込用ダイ側エッジとなり、前記仕切り壁の先端は、ダイハイトより下方に位置するパンチプレスの追切り切断金型。
  2. 請求項1に記載の追切り切断金型を用いる追切り切断方法であって、パンチの下降により切込刃部で板材に切込片を加工し、このとき、この切込片を切込刃部の下面の形状に倣い、先端側の部分が前記平坦部分の下面に沿う平坦な水平形状とさせて、前記切込片の前記水平形状が塑性変形によって残るようにし、パンチを上昇させた後に、前記切込片の水平形状の部分が刃部進入孔に入ったままで、次の追切りのための板材送りを行うパンチプレスの追切り切断方法。
  3. 材ワークに形成しようとする長孔の終端部となる終端孔を前記追切り切断金型とは別の金型で打抜き加工した後、この追切り切断金型により、前記終端孔に続くように追切り切断を行う請求項2記載のパンチプレスの追切り切断方法。
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