JP5981126B2 - 焙煎コーヒー豆 - Google Patents

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Description

本発明は、焙煎コーヒー豆に関する。
コーヒー飲料は嗜好飲料として広く愛好されており、通常焙煎コーヒー豆の抽出液を配合して製造されている。コーヒー風味には、苦味、酸味、甘味、コクなどの多くの要素があり、味に奥行きや広がりが増すことでコクとして感じられる。このように、コーヒー飲料の風味は、これら味覚のバランスの上に成り立っているため、単に高濃度にしただけでは単調な味になるばかりでコクは生まれ難い。
そこで、コーヒー飲料のコクを増強すべく、焙煎コーヒー豆の抽出液に風味改善剤を添加する方法が提案されている。例えば、粉砕された焙煎コーヒー豆を80℃以上の熱水で抽出して得られた焙煎コーヒー豆抽出液に、粉砕された焙煎コーヒー豆を水−エタノール混合溶液を用いて10〜40℃で10〜60日間抽出して得られた抽出液からなる味覚向上剤を添加する方法がある(特許文献1)。また、焙煎コーヒー豆抽出液にアラビアガムを含む水溶液を添加する方法が報告されている(特許文献2)。
更に、コク等の風味を良好とするために、焙煎コーヒー豆を真空条件下に90〜150℃の温度で加熱処理することにより、抽出液中のヒドロキシヒドロキノンを低減し、かつクロロゲン酸類のジ体含有率を高くするという技術も報告されている(特許文献3)。
特開2003−116464号公報 特開2007−289006号公報 特開2011−055716号公報
しかしながら、コーヒー風味は、その製造に使用するコーヒー豆の種類や産地よって特徴付けられる。また、例えば、焙煎度(L値)が20超25未満の中焙煎コーヒー豆は苦味と酸味のバランスが良好であるが、L値が25以上の浅焙煎コーヒー豆は酸味が強く感じられ、またL値20以下の深焙煎コーヒー豆は苦味が強く感じられるように、コーヒー風味は、焙煎方法によっても特徴付けられる。そのため、焙煎コーヒー豆抽出液に、特許文献1及び2に記載されているような風味改善剤を添加し、本来の風味を保持しなからコクを増強することは容易でない。
また、コクのあるコーヒー飲料を製造するには中焙煎コーヒー豆を原料として使用することが有利であると考えられるが、本発明者の検討により、中焙煎コーヒー豆から得られたコーヒー飲料は、コクが不十分で、後味に雑味があることが明らかとなった。そこで、本発明者は、コクの増強を意図して、酸味の強い浅焙煎コーヒー豆と苦味の強い深焙煎コーヒー豆とをブレンドし中焙煎度に調整した焙煎コーヒー豆からコーヒー飲料を製造したところ、コクは増強されるものの、後味の雑味がなお改善されないことが判明した。ここで、本明細書おいて「雑味」とは、焙煎コーヒー豆本来の風味バランスを阻害する、後に引く異味をいう。
したがって、本発明の課題は、雑味が抑制され、かつコクのあるコーヒー飲料の原料として有用な焙煎コーヒー豆及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み、焙煎コーヒー豆中の何らかの成分が雑味に関与しているのではないかとの仮説に基づき、種々の処理を行って製造した焙煎コーヒー豆を分析した結果、ハイドロキノン及びヒドロキシヒドロキノンが雑味とコクに関与するとの知見を得た。そして、中焙煎コーヒー豆中のハイドロキノン量及びヒドロキシヒドロキノン量を制御し、特定範囲内とすることで、雑味が抑制され、かつコクのあるコーヒー飲料の原料として有用な焙煎コーヒー豆が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、L値が20超25未満であり、焙煎コーヒー豆1kgあたりの(A)ハイドロキノンの含有量が10mg以上、且つ(B)ヒドロキシヒドロキノンの含有量が50mg以下である、焙煎コーヒー豆を提供するものである。
本発明はまた、L値が30未満の原料焙煎コーヒー豆を、密閉容器内に収容して100〜160℃で加熱処理する、焙煎コーヒー豆の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、雑味が抑制され、かつコクのあるコーヒー飲料の原料として有用な焙煎コーヒー豆を提供することができる。また、本発明によれば、このような焙煎コーヒー豆を簡便な操作により効率良く製造することが可能である。
本発明の焙煎コーヒー豆のL値は20超25未満であるが、より一層の雑味抑制、コク増強の観点から、その上限は好ましくは24、より好ましくは23.5、より好ましくは23であり、他方下限は好ましくは20.1、より好ましくは20.2、更に好ましくは20.3、更に好ましくは20.5である。ここで、本明細書において「L値」とは、黒をL値0とし、また白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を色差計で測定したものである。
本発明の焙煎コーヒー豆は、焙煎コーヒー豆1kgあたりの(A)ハイドロキノンの含有量が10mg以上であるが、より一層の雑味抑制、コク増強の観点から、好ましくは15mg以上、より好ましくは18mg以上、更に好ましくは20mg以上、殊更好ましくは22mg以上である。なお、上限は、風味バランスの観点から、好ましくは50mg、より好ましくは45mgである。
また、焙煎コーヒー豆1kgあたりの(B)ヒドロキシヒドロキノンの含有量は50mg以下であるが、より一層の雑味抑制、コク増強の観点から、好ましくは40mg以下、より好ましくは35mg以下、更に好ましくは30mg以下、殊更好ましくは25mg以下である。なお、下限は0であってもよいが、風味バランスの観点から0.1mg、更に0.5mg、殊更1mgが好ましい。
また、本発明の焙煎コーヒー豆は、(A)ハイドロキノンと(B)ヒドロキシヒドロキノンとの含有質量比[(B)/(A)]が2.7以下であることが好ましく、より一層の雑味抑制、コク増強の観点から、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.4以下、殊更好ましくは1以下である。なお、下限は特に限定されず、0であってもよいが、風味バランスの観点から、好ましくは0.01、より好ましくは0.05、更に好ましくは0.1である。
また、本発明の焙煎コーヒー豆は、生理効果増強の観点から、焙煎コーヒー豆100gあたり(C)クロロゲン酸類を好ましくは1.5g以上、より好ましくは1.8g以上、更に好ましくは2g以上含有する。なお、上限は、好ましくは7g、より好ましくは6.5g、更に好ましくは6gである。ここで、本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸の(C1)モノカフェオイルキナ酸と、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸の(C2)モノフェルラキナ酸と、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸の(C3)ジカフェオイルキナ酸を併せての総称であり、クロロゲン酸類量は上記9種の合計量に基づいて定義される。
更に、本発明の焙煎コーヒー豆は、(B)ヒドロキシヒドロキノンと(C)クロロゲン酸類の含有質量比[(B)/(C)]が20×10-4以下であることが好ましく、より一層の雑味抑制の観点から、より好ましくは14×10-4以下、更に好ましくは12×10-4以下、殊更好ましくは8.5×10-4以下である。なお、下限は特に限定されず、0であってもよいが、風味バランスの観点から、好ましくは0.01×10-4、より好ましくは0.05×10-4、更に好ましくは0.1×10-4である。
また、本明細書における「焙煎コーヒー豆中のハイドロキノン含有量」、「焙煎コーヒー豆中のヒドロキシヒドロキノン含有量」及び「焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類含有量」は、焙煎コーヒー豆から得られたコーヒー抽出液中のハイドロキノン含有量、ヒドロキシヒドロキノン含有量及びクロロゲン酸類含有量に基づいて下記式(1)〜(3)により求めたものである。
(1)焙煎コーヒー豆中のハイドロキノン含有量(mg/kg)=[コーヒー抽出液中のハイドロキノン含有量(mg/kg)]×[コーヒー抽出液の質量(kg)]/[焙煎コーヒー豆の質量(kg)]
(2)焙煎コーヒー豆中のヒドロキシヒドロキノン含有量(mg/kg)=[コーヒー抽出液中のヒドロキシヒドロキノン含有量(mg/kg)]×[コーヒー抽出液の質量(kg)]/[焙煎コーヒー豆の質量(kg)]
(3)焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類含有量(g/100g)={[コーヒー抽出液中のクロロゲン酸類含有量(g/g)]×[コーヒー抽出液の質量(g)]/[焙煎コーヒー豆の質量(g)]}×100
なお、コーヒー抽出液の分析条件は、次のとおりである。先ず、焙煎コーヒー豆を粉砕し、Tyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない焙煎コーヒー豆粉砕物を採取する。次に、焙煎コーヒー豆粉砕物0.5gに、抽出用水(リン酸1gと、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDPO)0.03gをイオン交換水1Lに溶解した液)を80g加え、95℃以上に保持しながら10分間浸漬抽出を行う。次に、コーヒー抽出液の上清を採取し、それを後掲の実施例の記載の方法に供して、ハイドロキノン含有量、ヒドロキシヒドロキノン含有量及びクロロゲン酸類含有量を分析する。
次に、本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法について説明する。
本発明で使用する原料焙煎コーヒー豆は、L値30未満の焙煎コーヒー豆であるが、雑味抑制、コクの増強の観点から、上限は好ましくは29、より好ましくは28.5、更に好ましくは28であり、他方下限は好ましくは21、より好ましくは22である。
原料焙煎コーヒー豆は、1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよく、本発明においては、焙煎度の異なる2種以上のコーヒー豆を混合して使用することも可能である。焙煎度の異なる2種以上のコーヒー豆を混合して使用する場合、各焙煎コーヒー豆について、L値に焙煎コーヒー豆の含有比率を乗じた値を求め、それらを合計したものを原料焙煎コーヒー豆のL値とする。また、算出された原料焙煎コーヒー豆のL値が上記範囲内となれば、上記範囲外の焙煎度の焙煎コーヒー豆を使用してもよい。
原料焙煎コーヒー豆は、生コーヒー豆を焙煎したものでも、市販品でもよい。
コーヒー豆の焙煎方法としては特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することが可能である。例えば、焙煎温度は好ましくは180〜300℃、より好ましくは190〜280℃、更に好ましくは200〜280℃であり、加熱時間は所望の焙煎度が得られるように適宜設定可能である。また、焙煎装置としては、例えば、焙煎豆静置型、焙煎豆移送型、焙煎豆攪拌型等の装置が使用でき、具体的には棚式乾燥機、コンベア式乾燥機、回転ドラム型乾燥機、回転V型乾燥機等が挙げられる。加熱方式としては、直火式、熱風式、半熱風式、遠赤外線式、赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式等が挙げられる。
また、コーヒー豆の種類は特に限定されず、例えば、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種等が挙げられる。また、コーヒー豆の産地としては、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテン、グァテマラ等が挙げられる。これらコーヒー豆は、1種でもよいし、複数種をブレンドしてもよい。
原料焙煎コーヒー豆は、未粉砕のものでも、粉砕したものであってもよい。粉砕した原料焙煎コーヒー豆の大きさは適宜選択することが可能であるが、Tyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しないものが好ましい。
本発明においては、原料焙煎コーヒー豆として、所望するL値よりもL値の高い焙煎コーヒー豆を使用する。例えば、所望のL値よりも1〜7程度L値の高い原料焙煎コーヒー豆を適宜選択すればよい。より具体的には、L値21前後の焙煎コーヒー豆を所望する場合、原料焙煎コーヒー豆としてL値22〜28のものが好ましく使用される。
また、本発明においては、原料焙煎コーヒー豆を密閉容器に収容した状態で加熱処理する。これにより、(C)クロロゲン酸類量を保持しながら、(A)ハイドロキノンを増量し、かつ(B)ヒドロキシヒドロキノン量を低減することができる。
密閉容器としては外気との接触を遮断できれば特に限定されず、例えば、レトルトパウチ、缶、ビン等を使用することができる。また、密閉容器の形状及び材質も特に限定されないが、後述するオートクレーブを用いて加熱処理する場合には、加圧に耐えうる容器を使用することが好ましい。
密閉容器の内容積は、原料焙煎コーヒー豆の嵩体積に対して、好ましくは2〜30倍、より好ましくは4〜25倍、更に好ましくは5〜20倍、殊更に好ましくは10倍超20倍以下である。すなわち、密閉容器としては、原料焙煎コーヒー豆を密閉容器に収容したときに、該容器内に一定の空間容積を有するものが好適に使用される。
加熱処理前の密閉容器内には酸素が存在することが好ましく、大気雰囲気であることが更に好ましい。
加熱温度は100〜160℃であるが、その上限は好ましくは155℃、より好ましくは150℃、更に好ましくは145℃、更に好ましくは140℃であり、他方下限は好ましくは105℃、より好ましくは110℃、更に好ましくは115℃、更に好ましくは120℃である。
加熱装置としては、例えば、オートクレーブや加熱可能な乾燥器を使用することができる。加熱時の雰囲気は、大気雰囲気でも、窒素等の不活性ガス雰囲気であってもよい。
加熱時間は、好ましくは0.5〜4時間、より好ましくは1〜3時間、更に好ましくは1〜2時間である。ここでいう加熱時間は、予め加熱装置を所望の温度に加熱しておく場合は、加熱装置に密閉容器を投入してからの経過時間であり、また加熱装置に密閉容器を投入後に昇温を行う場合は、所望の温度に到達してからの経過時間である。
オートクレーブを用いる場合の加圧条件は、絶対圧で0.127〜0.147MPa、好ましくは0.128〜0.145MPa、より好ましくは0.13〜0.144MPa、更に好ましくは0.132〜0.142MPa、更に好ましくは0.134〜0.14MPaである。
加熱処理後、加熱装置から密閉容器を取り出し、30分以内に0〜100℃、更に10〜60℃までを冷却することが好ましい。そして、冷却後、密閉容器から焙煎コーヒー豆を取り出し、本発明の焙煎コーヒー豆を得ることができる。
このようにして得られた焙煎コーヒー豆は、通常、L値、焙煎コーヒー豆1kgあたりの(A)ハイドロキノンの含有量及び(B)ヒドロキシヒドロキノン含有量が上記範囲内にあるが、上記した分析方法により、L値、焙煎コーヒー豆1kgあたりの(A)ハイドロキノンの含有量及び(B)ヒドロキシヒドロキノン含有量を分析し、これらが上記範囲内にあるものを選択することも可能である。また、得られた焙煎コーヒー豆の(A)ハイドロキノンと(B)ヒドロキシヒドロキノンとの含有質量比[(B)/(A)]、(B)ヒドロキシヒドロキノンと(C)クロロゲン酸類の含有質量比[(B)/(C)]、及び焙煎コーヒー豆100g当たりのクロロゲン酸類の含有量は、上記範囲内であることが好ましい。
1.クロロゲン酸類(CGA)の分析
分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通りである。
UV−VIS検出器:L−2420((株)日立ハイテクノロジーズ)、
カラムオーブン:L−2300((株)日立ハイテクノロジーズ)、
ポンプ:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ)、
オートサンプラー:L−2200((株)日立ハイテクノロジーズ)、
カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))。
分析条件は次の通りである。
サンプル注入量:10μL、
流量:1.0mL/min、
UV−VIS検出器設定波長:325nm、
カラムオーブン設定温度:35℃、
溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM HEDPO、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液、
溶離液B:アセトニトリル。
濃度勾配条件
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
HPLCでは、コーヒー抽出液を、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A、孔径0.45μm、ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)
(C1)モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点
(C2)モノフェルラキナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点
(C3)ジカフェオイルキナ酸:36.6、37.4、44.2の計3点。
ここで求めた9種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質とし、クロロゲン酸類含量(g/100g)を求めた。
2.HPLC−電気化学検出器によるハイドロキノン及びヒドロキシヒドロキノンの分析方法
分析機器はHPLC−電気化学検出器(クーロメトリック型)であるクーロアレイシステム(モデル5600A、米国ESA社製)を使用した。装置の構成ユニットの名称・型番は次の通りである。
アナリティカルセル:モデル5010、クーロアレイオーガナイザー、
クーロアレイエレクトロニクスモジュール・ソフトウエア:モデル5600A、
溶媒送液モジュール:モデル582、グラジエントミキサー、
オートサンプラー:モデル542、パルスダンパー、
デガッサー:Degasys Ultimate DU3003、
カラムオーブン:505、
カラム:CAPCELL PAK C18 AQ 内径4.6mm×長さ250mm 粒子径5μm((株)資生堂)。
分析条件は次の通りである。
サンプル注入量:10μL、
流量:1.0mL/min、
電気化学検出器の印加電圧:200mV、
カラムオーブン設定温度:40℃、
溶離液C:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液、
溶離液D:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、50(V/V)%メタノール溶液。
溶離液C及びDの調製には、高速液体クロマトグラフィー用蒸留水(関東化学(株))、高速液体クロマトグラフィー用メタノール(関東化学(株))、リン酸(特級、和光純薬工業(株))、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(60%水溶液、東京化成工業(株))を用いた。
濃度勾配条件
時間 溶離液C 溶離液D
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
10.1分 0% 100%
20.0分 0% 100%
20.1分 100% 0%
50.0分 100% 0%
コーヒー抽出液をボンドエルートSCX(固相充填量:500mg、リザーバ容量:3mL、ジーエルサイエンス(株))に通液し、初通過液約0.5mLを除いて通過液を得た。この通過液について、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A、孔径0.45μm、ジーエルサイエンス(株))にて濾過し、速やかに分析に供した。
HPLC−電気化学検出器の上記の条件における分析において、ヒドロキシヒドロキノンの保持時間は6.38分であり、ハイドロキノンの保持時間は9.2分であった。
得られたピークの面積値から、ハイドロキノン(和光純薬工業(株))及びヒドロキシヒドロキノン(和光純薬工業(株))を標準物質とし、ハイドロキノン含量(mg/kg)及びヒドロキシヒドロキノン含量(mg/kg)を求めた。
3.L値の測定
試料を、色差計((株)日本電色社製 スペクトロフォトメーター SE2000)を用いて測定した。
4.官能評価
各実施例及び比較例で得られたコーヒー抽出液の雑味、コクについて、専門パネル5名が下記の基準に基づいて評価し、その後協議により最終スコアを決定した。
雑味の評価基準
5:雑味を感じない
4:僅かに雑味を感じる
3:やや雑味を感じる
2:雑味を感じる
1:非常に雑味を感じる
コクの評価基準
5:非常にコクを感じる
4:コクを感じる
3:僅かにコクを感じる
2:コクを感じない
実施例1
L28.3の原料焙煎コーヒー豆を、粉砕機(ワンダーブレンダーWB−1、大阪ケミカル(株)、以下同じ)にて粉砕し、Tyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取し、それを内容積190cm3のSOT缶(stay-on-tab缶)に20g(嵩体積41cm3)入れ、開口部を密封したのち、SOT缶をオートクレーブ(ハイクレーブHVA−85、(株)平山製作所、以下同じ)に投入し、絶対圧で0.135MPaの加圧下、125℃で1時間の加熱処理を行い、L22.7の焙煎コーヒー豆を得た。
次いで、得られた焙煎コーヒー豆0.5gに、抽出用水(リン酸1gと、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDPO)0.03gをイオン交換水1Lに溶解した液)を80g加え、95℃以上に保持しながら10分間浸漬抽出を行い、上清を採取し、コーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液(1)に基づいて成分分析を行った。
更に、焙煎コーヒー豆5gに熱水(98℃以上)100gを加え、十分に攪拌し、市販コーヒー用フィルターにてろ過し、コーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液(2)について官能試験を行った。
これらの結果を表1に示す。
実施例2
L23.9の原料焙煎コーヒー豆を、粉砕機にて粉砕し、Tyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取し、それを内容積190cm3のSOT缶)に20g(嵩体積41cm3)入れ、開口部を密封したのち、SOT缶をオートクレーブに投入し、絶対圧で0.135MPaの加圧下、125℃で1時間の加熱処理を行い、L21.0の焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表1に示す。
比較例1
L28.3の原料焙煎コーヒー豆を、粉砕機にて粉砕し、Tyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表1に示す。
比較例2
L23.9の原料焙煎コーヒー豆を、粉砕機にて粉砕し、Tyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0005981126
実施例3
L30.1とL17.1の焙煎コーヒー豆を、それぞれ粉砕機にて粉砕し、それぞれTyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。得られたL30.1粉砕物とL17.1粉砕物を44対56の比率にて混合し、L22.8の原料焙煎コーヒー豆を得た。それを内容積190cm3のSOT缶に5g(嵩体積10.25cm3)入れ、開口部を密封したのち、SOT缶をオートクレーブに投入し、絶対圧で0.135MPaの加圧下、125℃で1時間の加熱処理を行い、L20.1の焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例4
L34.8とL18.2の焙煎コーヒー豆を、それぞれ粉砕機にて粉砕し、それぞれTyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。得られたL30.1粉砕物とL17.1粉砕物を50対50の比率にて混合し、L26.5の原料焙煎コーヒー豆を得た。それを内容積190cm3のSOT缶に5g(嵩体積10.25cm3)入れ、開口部を密封したのち、SOT缶をオートクレーブに投入し、絶対圧で0.135MPaの加圧下、125℃で1時間の加熱処理を行い、L21.9の焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例5
L34.8とL14.8の焙煎コーヒー豆を、それぞれ粉砕機にて粉砕し、それぞれTyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。得られたL30.1粉砕物とL17.1粉砕物を45対55の比率にて混合し、L23.8の原料焙煎コーヒー豆を得た。それを内容積190cm3のSOT缶に5g(嵩体積10.25cm3)入れ、開口部を密封したのち、SOT缶をオートクレーブに投入し、絶対圧で0.135MPaの加圧下、125℃で1時間の加熱処理を行い、L20.2の焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例6
L35.6とL18.2の焙煎コーヒー豆を、それぞれ粉砕機にて粉砕し、それぞれTyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。得られたL30.1粉砕物とL17.1粉砕物を50対50の比率にて混合し、L26.9の原料焙煎コーヒー豆を得た。それを内容積190cm3のSOT缶に5g(嵩体積10.25cm3)入れ、開口部を密封したのち、SOT缶をオートクレーブに投入し、絶対圧で0.135MPaの加圧下、125℃で1時間の加熱処理を行い、L21.3の焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例3
L30.1とL17.1の焙煎コーヒー豆を、それぞれ粉砕機にて粉砕し、それぞれTyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。得られたL30.1粉砕物とL17.1粉砕物を44対56の比率にて混合し、L22.8の原料焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例4
L34.8とL18.2の焙煎コーヒー豆を、それぞれ粉砕機にて粉砕し、それぞれTyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。得られたL30.1粉砕物とL17.1粉砕物を50対50の比率にて混合し、L26.5の原料焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例5
L34.8とL14.8の焙煎コーヒー豆を、それぞれ粉砕機にて粉砕し、それぞれTyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。得られたL30.1粉砕物とL17.1粉砕物を45対55の比率にて混合し、L23.8の原料焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例6
L35.6とL18.2の焙煎コーヒー豆を、それぞれ粉砕機にて粉砕し、それぞれTyler標準篩12メッシュを通過し、かつTyler標準篩115メッシュを通過しない粉砕物を採取した。得られたL30.1粉砕物とL17.1粉砕物を50対50の比率にて混合し、L26.9の原料焙煎コーヒー豆を得た。
得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同様の操作にて成分分析と官能試験を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0005981126
表1及び2から、L値、並びに成分(A)及び(B)の含有量を一定に制御することで、雑味が抑制され、かつコクのあるコーヒー飲料の原料として有用な焙煎コーヒー豆が得られることが確認された。

Claims (5)

  1. L値が20超25未満であり、
    焙煎コーヒー豆1kgあたりの(A)ハイドロキノンの含有量が10mg以上、且つ(B)ヒドロキシヒドロキノンの含有量が50mg以下であり、
    焙煎コーヒー豆100g当たりの(C)クロロゲン酸類の含有量が1.5g以上であ
    (A)ハイドロキノンと(B)ヒドロキシヒドロキノンとの含有質量比[(B)/(A)]が1以下であり、
    (B)ヒドロキシヒドロキノンと(C)クロロゲン酸類との含有質量比[(B)/(C)]が0.01×10 -4 以上12×10 -4 以下である、
    焙煎コーヒー豆。
  2. 焙煎コーヒー豆100g当たりの(C)クロロゲン酸類の含有量が6g以下である、請求項1記載の焙煎コーヒー豆。
  3. 料焙煎コーヒー豆を密閉容器内に収容し、絶対圧0.127〜0.147Mpaの加圧下にて100〜160℃で加熱処理する工程を含み
    原料焙煎コーヒー豆は、L値が30未満であって、製造される焙煎コーヒー豆よりもL値が3.6〜7高いものであり、
    密閉容器の内容積が原料焙煎コーヒー豆の嵩体積の5〜30倍である、
    L値が20超25未満の焙煎コーヒー豆の製造方法。
  4. 加熱処理の時間が0.5〜4時間である、請求項3記載の焙煎コーヒー豆の製造方法。
  5. 加熱処理の温度が100〜145℃である、請求項3又は4記載の焙煎コーヒー豆の製造方法。
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