JP5979478B2 - 3層構造積層ダイヤモンド系基板、パワー半導体モジュール用放熱実装基板およびそれらの製造方法 - Google Patents
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これらの課題に対して、絶縁性と熱伝導率の双方で群を抜くダイヤモンド粒を、絶縁材料の中に埋め込む手法によって熱伝導を向上させ、線膨張係数の差による温度サイクルによる割れを防止する試みが行われている(特許文献1参照)。
これは、ダイヤモンドの粒を埋め込むため、ダイヤモンドの三次元的熱伝達の利点を減ずるほか、熱流が粒に到達するまでの熱抵抗、粒間の熱抵抗などが高く、製造も粒を均一に埋め込むことが難しいなどの特徴がある。
さらに、パワーモジュール以外では、半導体レーザー、マイクロ波素子などのために、ダイヤモンドの片側の面を接合する放熱基板の試みが行われている(特許文献3)。
しかし、この用途では超高電界に耐える必要がなく従って、構造も機能も全く異なる別の応用と技術であり、本目的とは別のものであり、パワーデバイスの放熱基板としては参考にならない。
特許文献2 特開2010−278171号公報
特許文献3 特開2001−284501号公報
本発明で前記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、ダイヤモンドの連続した基板を用いること、また同時に構造・材料の工夫により、線膨張係数差を原因とする温度サイクルによる外部接合金属板の劣化等を逃れ、高耐圧を保持するパワー半導体モジュール用放熱実装基板を提供する。
また、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、前記ダイヤモンド系材料層は、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、及び微結晶ダイヤモンドから選ばれる少なくとも1種の材料を含むことができる。
さらに、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板前記ダイヤモンド系材料膜は、微結晶ダイヤモンド結晶、ナノダイヤモンド結晶、ウルトラナノダイヤモンド結晶、及び傾斜組成ダイヤモンド結晶(前記傾斜組成ダイヤモンド結晶はB,P及びNから選ばれる少なくとも1種の元素を含む)から選ばれる少なくとも1種の材料を含むことができる。
また、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の上下面に緩衝層としてグラファイト又はカーボンナノチューブ(CNT)を設けることが望ましい。
さらに、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、前記通電層と前記3層構造積層ダイヤモンド系基板との間にろう材を備えることができる。
また、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、前記ろう材と前記3層構造積層ダイヤモンド系基板との間にTi層又はRu層を備えることができる。
さらに、本発明は、傷つけ処理したシリコンウェハを準備する工程と、前記シリコンウェハの傷つけエッジを成長核にして、B,P,及びNから選ばれる少なくとも1種をドープした第1のダイヤモンド系材料膜を形成する工程と、前記第1のダイヤモンド系材料膜上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜とは材質が異なるダイヤモンド系材料層を形成する工程と、前記ダイヤモンド系材料層上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜と材質が同じ第2のダイヤモンド系材料膜を形成して3層構造積層ダイヤモンド系基板を形成する工程と、前記シリコンウェハを除去する工程と、を備え、さらに、前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備える工程からなる、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、パワー半導体モジュール用放熱実装基板の製造方法である。
中心層2−2のダイヤモンド系材料層は、耐電圧のため50μm以上が好ましく、熱抵抗を抑制するために1000μm以下が好ましい。さらに好ましくは、100〜600μmである。ダイヤモンド系材料層の厚みについて、50μm以上が好ましい理由は、より具体的には、車両用の半導体素子として最低限必要な耐電圧性が得られると考えられるためである。上層2−1及び下層2−3のダイヤモンド系材料膜の厚みは、基板が外部又は内部から受ける応力を緩和するために0.1μm以上が好ましく、積層構造全体での熱抵抗を抑制するために10μm以下が好ましい。さらに、本発明の3層構造積層ダイヤモンド系基板は、図1に示すように、基板の両側に、Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を被覆して、通電層1及び通電層3を形成している。
ダイヤモンド系材料膜2−1、2−3は、微結晶ダイヤモンド結晶、ナノダイヤモンド結晶、ウルトラナノダイヤモンド結晶、及び傾斜組成ダイヤモンド結晶(前記傾斜組成ダイヤモンド結晶はB,P及びNから選ばれる少なくとも1種の元素を含む)で形成する。ダイヤモンド系材料層2−2は、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、及び微結晶ダイヤモンドにより形成することができる。 また、3層構造積層構造ダイヤモンド基板は、上下面に緩衝層としてグラファイト又はカーボンナノチューブ(CNT)で形成しても良い。通電層は、蒸着、スパッタリング、めっき、溶着、溶接など周知の方法により、通電層を設けることができる。通電層は、ろう材を介して設けることができる。ここでろう材とは、接合する部材(母材)よりも融点の低い合金(ろう)を溶かして一種の接着剤として用いる事により、母材自体を溶融させずに複数の部材を接合させることができるろう材をいう。
中心層2は、3層構造積層ダイヤモンド系材料の上下面をTi薄膜で被覆したものであり、その構造は、Ti/3層構造積層ダイヤモンド系材料/Tiである。
また、チタンに代えてルテニウムを用いたRu/3層構造積層ダイヤモンド系材料/Ru を用いることもできる。
より改良されたパワー半導体モジュール用放熱実装基板においては、さらに、Ti/3層構造積層ダイヤモンド系材料/Ti基板2を1,3で両側から挟み込み、直接加熱接合して得られたもので、Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種/ろう材/Ti/3層構造積層ダイヤモンド系材料/Ti/ろう材/Al,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種という7層の積層構造を有する。
例えば、図2において、中心層2−2(ダイヤモンド系材料層)が厚いダイヤモンド系材料の骨格部分で、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、微結晶ダイヤモンド、など熱伝導と絶縁破壊耐圧の異なる材料を搭載するパワーデバイスモジュールの仕様に応じて選択することができる。この層で、基本的に高熱伝導及び高絶縁耐圧を確保する。そのため中心層2−2(ダイヤモンド系材料層)はある程度厚い板材となるが、ダイヤモンドは絶縁破壊耐圧が高いため、従来のAlNなどに比べて1/10程度の厚さにすることも可能である。
基本的には、ダイヤモンド系材料自体を構造的に3層またはそれ以上の層状構造にし、両方の外側に緩衝層を有する。
緩衝層として、ナノダイヤ、グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)を有し、かつTiによりTiCを形成して、Niめっき、ろう材、Al板と接合したサンドイッチ構造のパワー半導体モジュール用放熱実装基板を得ることができる。
緩衝層としては、これ以外に、ダイヤモンド自体の傾斜組成(B,P,Nなどのドーピングによる傾斜)、金属、金属炭化物、圧電材料、金属複合材料、発泡性金属板なども挙げられる。
上層2−1(ダイヤモンド系材料膜)及び下層2−3(ダイヤモンド系材料膜)の外側に設ける緩衝層としては、ナノダイヤモンド結晶、ウルトラナノダイヤモンド結晶、ダイヤモンド自体の傾斜組成(B,P,Nなどのドーピング層やその傾斜材料)、グラファイト、CNT等のナノカーボンなどが考えられる。さらにこれ以外に、金属炭化物、圧電材料、金属複合材料、発泡性金属板など任意の材料も挙げられる。
次に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。
次にこの3層構造積層ダイヤモンド系材料にTiを形成し、その後通常のAlNを用いた基板と同様、Al板を両側にホットプレスでろう材を介して直接接合して、Al/ダイヤモンド3層構造/Alの構造を有する放熱実装基板を得た。これは構造を詳細に再度記載すると、Al/ろう材/Ti/ナノダイヤモンド/多結晶ダイヤモンド/ナノダイヤモンド/Ti/ろう材/Al の9層構造、放熱基板である。
この放熱基板上に、IGBTデバイスを半田で実装し、さらに水冷放熱ユニットに半田で実装した。インバータ回路動作させた。印可した電流は20Aで、最高温度はΔT=15℃であった。このモジュールを、−40 〜+125 ℃で熱サイクル試験を実施し、再度インバータ動作特性を計測したところ、変化は見られず良好に動作していることが確認できた。
実施例1の構造は、
Al/ろう材/Ti/ナノダイヤモンド/多結晶ダイヤモンド/ナノダイヤモンド/Ti/Alの9層構造放熱基板となっている。
この緩衝層を外側に有する3層構造積層ダイヤモンド系材料の熱伝導を測ると1600W/mKであった。
次にこの3層構造材料にTiを形成し、その後通常のAlNを用いた基板と同様に、Al板を両側にホットプレスで直接接合して、Al/ダイヤモンド3層構造/Alの構造を有する放熱実装基板を得た。これは構造を詳細に再度記載すると、
Al/ろう材/Ti/ Nドープダイヤモンド/多結晶ダイヤモンド/ Nドープダイヤモンド/Ti/ろう材/Alの9層構造、放熱基板である。
この放熱基板上に、IGBTデバイスを半田で実装し、さらに水冷放熱ユニットに半田で実装した。インバータ回路動作させた。印可した電流は20Aで、最高温度はΔT=15℃であった。このモジュールを、−40 〜+125 ℃で熱サイクル試験を実施し、再度インバータ動作特性を計測したところ、変化は見られず良好に動作していることが確認できた。
傷付け処理を行ったシリコンウェハ上をマイクロ波CVD装置に入れ、傷つけエッジを成長核にして、合計250μm厚の多結晶ダイヤモンド膜を形成した。合成条件は、70Torr、3kW、CH4濃度1〜3%(水素中)、温度900℃である。その後、シリコンウウェハを外し、多結晶ダイヤモンドの熱伝導を測ると1700W/mKであった。次にこの材料にTiを形成し、その後通常のAlNを用いた基板と同様に、Al板を両側にホットプレスで直接接合して、Al/多結晶ダイヤモンド/Alの構造を有する放熱実装基板を得た。これは構造を詳細に再度記載するとAl/Ti/多結晶ダイヤモンド/Ti/Al
の5層構造、放熱基板である。
この放熱基板上に、IGBTデバイスを半田で実装し、さらに水冷放熱ユニットに半田で実装した。インバータ回路動作させた。印可した電流は20Aで、最高温度はΔT=15℃であった。このモジュールを、−40 〜+125 ℃で熱サイクル試験を実施し、再度インバータ動作特性を計測したところ、基板の耐圧が劣化して、1500Vを印可した動作試験が不可能になっていることが確認できた。原因を調査したところ、Al板に亀裂が数筋走っているのが発見された。
市販の、熱伝導率220W/mKのAlN基板を用いたDBA放熱基板(Al/ろう材/AlN/ろう材/Al)上に、IGBTデバイスを半田で実装し、さらに水冷放熱ユニットに半田で実装した。インバータ回路動作させた。印可した電流は20Aで、最高温度はΔT=23℃であり、ダイヤモンド3層構造とは8℃の差であった。この差は、ダイヤモンドとAlNの熱伝導率の差から生じたものである。このモジュールを、−40 〜+125 ℃で熱サイクル試験を実施し、再度インバータ動作特性を計測したところ、変化は見られず良好に動作していることが確認できた。
2 3層構造積層ダイヤモンド系材料
2−1 上層(ダイヤモンド系材料膜)
2−2 中心層(ダイヤモンド系材料層)
2−3 下層(ダイヤモンド系材料膜)
3 通電層
Claims (8)
- 厚さが50μm〜1000μmであるダイヤモンド系材料層と、前記ダイヤモンド系材料層とは異なる材質であって、前記ダイヤモンド系材料層の厚さ方向の両面に設けた厚さが0.1μm〜10μmであるダイヤモンド系材料膜とを有し、前記ダイヤモンド系材料層、前記ダイヤモンド系材料層の厚さ方向の両面に設けた厚さが0.1μm〜10μmであるダイヤモンド系材料膜により3層構造積層ダイヤモンド系基板とし、前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備え、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
- 前記ダイヤモンド系材料層は、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、及び微結晶ダイヤモンドから選ばれる少なくとも1種の材料を含む請求項1に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
- 前記ダイヤモンド系材料膜は、微結晶ダイヤモンド結晶、ナノダイヤモンド結晶、ウルトラナノダイヤモンド結晶、及び傾斜組成ダイヤモンド結晶(前記傾斜組成ダイヤモンド結晶はB,P及びNから選ばれる少なくとも1種の元素を含む)から選ばれる少なくとも1種の材料を含む請求項1又は2に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
- 前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の上下面に緩衝層としてグラファイト又はカーボンナノチューブ(CNT)を設けた請求項1から3のいずれか一項に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
- 前記通電層と前記3層構造積層ダイヤモンド系基板との間にろう材を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
- 前記ろう材と前記3層構造積層ダイヤモンド系基板との間にTi層又はRu層を備える請求項5に記載の3層構造積層ダイヤモンド系基板を用いたパワー半導体モジュール用放熱実装基板。
- ダイヤモンドが種付けされたシリコンウェハを準備する工程と、前記ダイヤモンドを成長核にして第1のダイヤモンド系材料膜を形成する工程と、前記第1のダイヤモンド系材料膜上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜とは材質が異なるダイヤモンド系材料層を形成する工程と、前記ダイヤモンド系材料層上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜と材質が同じ第2のダイヤモンド系材料膜を形成して3層構造積層ダイヤモンド系基板を形成する工程と、前記シリコンウェハを除去する工程とを備え、さらに、前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備える工程からなる、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、パワー半導体モジュール用放熱実装基板の製造方法。
- 傷つけ処理したシリコンウェハを準備する工程と、前記シリコンウェハの傷つけエッジを成長核にして、B,P,及びNから選ばれる少なくとも1種をドープした第1のダイヤモンド系材料膜を形成する工程と、前記第1のダイヤモンド系材料膜上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜とは材質が異なるダイヤモンド系材料層を形成する工程と、前記ダイヤモンド系材料層上に、前記第1のダイヤモンド系材料膜と材質が同じ第2のダイヤモンド系材料膜を形成して3層構造積層ダイヤモンド系基板を形成する工程と、前記シリコンウェハを除去する工程と、を備え、さらに、前記3層構造積層ダイヤモンド系基板の厚さ方向の両面にAl,Cu,及びAgから選ばれる金属の少なくとも1種を含む通電層を備える工程からなる、温度サイクルによる外部接合金属板の劣化を逃れるようにした、パワー半導体モジュール用放熱実装基板の製造方法。
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