次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
なお、以下の説明において、各図面の上下を上下というものとする。また、各図面には、全図面を通じて同一部材には同一符号が付されている。
図1〜5は、本発明の第1実施形態に係る放熱用絶縁基板、該絶縁基板を用いた半導体モジュール用ベース、及び半導体モジュールを説明する図である。
図1において、25は本第1実施形態の半導体モジュールである。この半導体モジュール25は、IGBTモジュール、MOSFETモジュール、サイリスタモジュール、ダイオードモジュール等であり、半導体モジュール用ベース20と、該ベース20上に実装された半導体素子26とを備えている。半導体素子26は、IGBTチップ、MOSFETチップ、サイリスタチップ、ダイオードチップ等である。
半導体モジュール用ベース20は、本第1実施形態の放熱用絶縁基板1Aと、放熱部材21とを備えている。
放熱部材21は、空冷式又は水冷式のヒートシンクや冷却器等であって、金属製であり、詳述すると例えばAl又はAl合金製である。
放熱用絶縁基板1Aは、平面視略方形状であって、半導体素子26と放熱部材21との間に配置されており、半導体素子26の動作に伴い半導体素子26から発生した熱を放熱部材21に伝達するためのものである。詳述すると、この絶縁基板1Aは、熱的には伝導体であるが電気的には絶縁体として機能する特性を有している。
図2に示すように、この絶縁基板1Aは、互いに積層状に配置された金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5を備えている。セラミック層2は水平状に配置されている。第1金属層3は、セラミック層2の一方の片側(上側)に配置されている。第2金属層5は、第1金属層3のセラミック層2配置側とは反対側(上側)に配置されている。超弾性合金層4は、第1金属層3と第2金属層5との間に介在されている。金属ベース層6は、セラミック層2の他方の片側(下側)に配置されていおり、すなわちセラミック層2の第1金属層3配置側とは反対側に配置されている。そして、これらの層6、2、3、4、5が積層状に接合一体化されることで、絶縁基板1Aが構成されている。各層は、板から提供されて形成された層である。
セラミック層2は、電気絶縁層として機能するものであり、AlN、Al2O3、Si3N4、Y2O3、CaO、BN、BeO等で実質的に形成されたものである。セラミック層2の厚さは例えば0.3〜0.7mmである。因みに、セラミック層2を形成するセラミックの融点又は分解点は、AlN:2200℃、Al2O3:2050℃、Si3N4:1900℃、Y2O3:2400℃、CaO:2570℃、BN:3000℃、BeO:2570℃である。これらの融点又は分解点は、第1金属層3、超弾性合金層4、第2金属層5及び金属ベース層6の融点よりも格段に大きい。
第1金属層3は、例えば配線層又は電導層として機能するものである。第1金属層3の構成材料である第1金属は、Al、Cu、Ag、Au、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金等である。すなわち、第1金属層3は、Al、Cu、Ag、Au、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金等で実質的に形成されたものである。第1金属層3の第1金属は、特に、材料コストの削減及び熱伝導性能の向上を図る点からAl、Al合金、Cu又はCu合金であることが望ましい。第1金属層3の厚さは例えば0.3〜1.0mmである。
第2金属層5は、Niを必須元素として含んでおり、具体的に例示するとNi又はNi合金で実質的に形成されたものであり、表面に半導体素子26等の被接合部材をはんだ接合可能な層である。この第2金属層5のNi含有量は、第2金属層5のはんだ接合性を確実に向上させるため、50質量%以上、特に90質量%以上であることが望ましい。第2金属層5のNi含有量の上限は100質量%である。
第2金属層5の厚さは限定されるものではないが、特に40μm以上であることが望ましく、これにより、半導体モジュール25の製造時に絶縁基板1Aに加えられる熱で第2金属層5の表面に凹凸が発生する不具合を確実に防止できるし、更に、第2金属層5の良好なはんだ接合性を確実に発現させることができる。第2金属層5の厚さの上限は限定されるものではないが、200μmであることが材料コストを削減できる点で望ましい。
ここで、もし第1金属層3と第2金属層5とが超弾性合金層4を介さないで直接的に接合されている場合、両層3、5間の接合界面に機械的強度の弱い合金層が形成されることがある。例えば、第1金属層3の第1金属がAl、Al合金、Cu又はCu合金である場合、第1金属層3の第1金属と第2金属層5のNiとが反応して機械的強度の弱い合金層(例:Ni−Al合金層)が両層3,5間の接合界面に形成される。このようになると、絶縁基板1Aの温度変化に伴う熱応力によって、両層3、5間の接合界面で割れ、剥離等の不良が生じ易い。
そこで、このような不良の発生を防止するため、第1金属層3と第2金属層5との間に超弾性合金層4が介在されている。この超弾性合金層4は、絶縁基板1Aに発生する熱応力を緩和する役割を果たすものである。この超弾性合金層4による熱応力の緩和によって、絶縁基板1Aのそり、割れ、剥離等の不良の発生が防止される。
超弾性合金層4の超弾性合金は、室温から半導体素子26の動作温度(例:300℃)までの温度範囲に亘って超弾性特性を有していることが望ましく、特に望ましくは、室温から絶縁基板1Aと放熱部材21との接合温度(例:600℃)までの温度範囲に亘って超弾性特性を有することが良い。
具体的には、超弾性合金としては、Ni−Ti系合金(例:NiTi合金、NiTiCo合金、NiTiCu合金、NiTiCr合金、NiTiCuCr合金、NiTiFe合金)、Cu−Ni−Al系合金(例:CuNiAl合金)、Cu−Zn−Al系合金(例:CuZnAl合金)、Cu−Mn−Al系合金(例:CuMnAl合金)、Fe−Mn−Si系合金(例:FeMnSi合金)等が用いられる。
超弾性合金層4の厚さは、熱応力を確実に緩和できるようにするため1μm以上であることが望ましい。超弾性合金層4の厚さの上限は限定されるものではないが、300μmであることが材料コストを削減できる点で望ましい。
金属ベース層6は、放熱部材21とろう付け等により接合されるものである。金属ベース層6の金属は、Al、Cu、Ag、Au、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金等である。すなわち、金属ベース層6は、Al、Cu、Ag、Au、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金等で実質的に形成されたものである。金属ベース層6の金属は、特に、材料コストの削減及び熱伝導性能の向上を図る点からAl、Al合金、Cu又はCu合金であることが望ましい。金属ベース層6の厚さは例えば0.3〜1.0mmである。一般に、金属ベース層6の金属と第1金属層3の第1金属とは、互いに同じである。以下では、金属ベース層6の金属と第1金属層3の第1金属とは、互いに同じであるとする。
図3A〜3Cは、上記第1実施形態の絶縁基板1Aの製造方法の一例を説明する図である。この製造例を「第1製造例」という。この第1製造例を以下に説明する。
まず、セラミック板から形成されたセラミック層2と、第1金属板から形成された第1金属層3と、超弾性合金板から形成された超弾性合金層4と、第2金属板から形成された第2金属層5と、金属板から形成された金属ベース層6と、を準備する。
ここで、超弾性合金層4の超弾性合金の高温安定相が超弾性特性を有している場合には、高温安定相の体積を増加させる時効処理を超弾性合金層4に施すことが望ましい。この工程を「時効工程」という。例えば、超弾性合金層4の超弾性合金がNi−Ti系合金である場合、超弾性特性を有する高温安定相であるオーステナイト相はTiNi相である。時効工程では、このTiNi相の体積を増加させるため、TiNi相が生成する温度である630℃以上で且つArガス等の不活性ガス雰囲気中で超弾性合金層4を加熱炉により加熱し、その後、なるべく急速に冷却する。これにより超弾性合金層4に時効処理が施される。超弾性合金層の加熱温度の上限は1310℃であり、望ましくは、液相が発生しない温度である942℃未満であることが良い。超弾性合金層4の加熱温度の保持時間は例えば30〜60minである。加熱された超弾性合金層4を冷却させる際の冷却速度は、加熱温度から300℃までの間において25℃/min以上であることが望ましい。
次いで、超弾性合金層4と第2金属層5とを、ろう付け、クラッド圧延、放電プラズマ接合法等の任意の接合方法により積層状に接合する。この工程を「第1接合工程」という。
第1接合工程で用いられる様々な接合方法のうち、放電プラズマ接合法は、隣り合う層同士をろう材等の接合金属を介さないで直接的に接合することができる。そのため、材料コストを削減することができるし、更に、各層間にろう材等の接合金属が介在されていない分、絶縁基板の熱伝導率を向上させることができる。したがって、第1接合工程で用いられる接合方法は、放電プラズマ接合法であることが望ましい。
本第1製造例の第1接合工程では、超弾性合金層4と第2金属層5は放電プラズマ接合法により接合される。
ここで、放電プラズマ接合法とは、放電プラズマ焼結法(Spark Plasma Sintering:SPS)の焼結機構を粉体の焼結ではなく板の接合に適用した公知の接合方法である。なお、この「放電プラズマ接合法」は、「SPS接合法」、「パルス通電圧接法(Pulsed Current Hot Pressing:PCHP)」等とも呼ばれている。図3Aにおいて、「SPS接合」とは放電プラズマ接合を意味している。
超弾性合金層4と第2金属層5とを放電プラズマ接合法により接合する場合には、図3Bに示すように、まず、放電プラズマ接合装置(即ち放電プラズマ焼結装置)の導電性を有する筒状の黒鉛製ダイ31内に、超弾性合金層4と第2金属層5とを積層状に配置する。次いで、これらの層4、5から構成された積層体をその厚さ方向に上下一対の黒鉛製パンチ32、32で挟む。そして、1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体をその厚さ方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス通電することで積層体を加熱し、これにより超弾性合金層4と第2金属層5とを接合する。その結果、超弾性合金層4と第2金属層5との接合体8が得られる。なお、33は各パンチ32に接続された電極である。積層体の加熱温度は、超弾性合金層4及び第2金属層5の融点のうち最も低い融点よりも50〜100℃低い温度であることが、これらの層4、5を確実に接合できる点で望ましい。加熱温度の保持時間は例えば3〜5min、通電するパルス電流は例えば1000〜2000A、加圧力は例えば10〜20MPaである。ただし、これらの接合条件は、接合される層の材料や寸法に応じて適宜変更される。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と第1接合工程で得られた接合体8とを、ろう付け、クラッド圧延、放電プラズマ接合法等の任意の接合方法により積層状に接合する。この工程を「第2接合工程」という。
本第1製造例の第2接合工程では、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体8との接合方法として、放電プラズマ接合法を採用している。これにより、上述したように、隣り合う層同士をろう材等の接合金属を介さないで直接的に接合することができる。そのため、材料コストを削減することができるし、更に、各層間にろう材等の接合金属が介在されていない分、絶縁基板の熱伝導率を向上させることができる。
さらに、セラミック層2、第1金属層3及び超弾性合金層4の融点の中で第1金属層3の融点が最も低い場合には、セラミック層2と第1金属層3と接合体8とを放電プラズマ接合法により一括接合することが望ましく、こうすることにより、絶縁基板1Aの製造工程数及び製造時間を減少することができ、もって絶縁基板1Aの製造コストを削減することができる。
これらの層を放電プラズマ接合法により一括接合する場合には、図3Cに示すように、まず、放電プラズマ接合装置30の黒鉛製ダイ31内に、下から上へ順に、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体8とを積層状に配置する。この状態では、接合体8の超弾性合金層4が第1金属層3に当接している。次いで、これらの層から構成された積層体をその厚さ方向に上下一対の黒鉛製パンチ32、32で挟む。そして、1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体をその厚さ方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することにより、積層体を加熱し、これによりこれらの層を一括接合する。その結果、所望する絶縁基板1A、すなわち、金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5が積層状に接合一体化された絶縁基板1Aが製造される。積層体の加熱温度は、第1金属層3の融点よりも50〜100℃低い温度であることが、これらの層を確実に接合できる点で望ましい。加熱温度の保持時間は例えば3〜5min、通電するパルス電流は例えば1000〜2000A、加圧力は例えば10〜20MPaである。ただし、これらの接合条件は、接合される層の材料や寸法に応じて適宜変更される。
この第2接合工程では、第1金属層3の融点がセラミック層2、第1金属層3及び超弾性合金層4の融点の中で最も低いことにより、放電プラズマ接合法によって第1金属層3にセラミック層2と接合体8とを確実に接合することができる。これにより、セラミック層2と第1金属層3と接合体8とを確実に一括接合することができる。
なお、本第1製造例では、超弾性合金層4に時効処理を施すための時効工程は、第1接合工程の前で行われているが、本発明では、その他に、第1接合工程の後で行っても良いし、第2接合工程の後で行っても良い。
次に、本第1製造例で得られた絶縁基板1Aを用いて図1に示した半導体モジュール25を製造する方法について、以下に説明する。
絶縁基板1Aの金属ベース層6に放熱部材21をろう付け等の任意の接合方法により接合する。これにより、半導体モジュール用ベース20が製造される。
ここで、絶縁基板1Aの超弾性合金層4がNiTi超弾性合金層であり、且つ、放熱部材21がAl又はAl合金製であり、更に、絶縁基板1Aと放熱部材21とをろう付けにより接合する場合には、ろう材としてAlを含んだものを用いるのが望ましい。その理由は次のとおりである。
すなわち、絶縁基板1Aの超弾性合金層4がNiTi合金層である場合、Alを含んだろう材(詳述するとAl−Si系合金のろう材)を用いたろう付け温度条件(通常590〜610℃)は、NiTi合金の超弾性特性を有する高温安定相の体積を増加させる時効処理の温度範囲に含まれる。したがって、絶縁基板1Aと放熱部材21とを、Alを含んだろう材を用いたろう付けにより接合することにより、絶縁基板1Aと放熱部材21との接合と同時に超弾性合金層(即ちNiTi合金層)4に時効処理が施される。これにより、超弾性特性を確実に発現しうる超弾性合金層4を得ることができるし、更に、超弾性合金層4への時効工程を省略することができ、もって半導体モジュール用ベース20の製造コストを削減することができる。
このろう付けの際には、絶縁基板1Aの温度が約600℃前後に上昇し絶縁基板1Aに熱歪みが発生するが、この熱歪みは絶縁基板1Aの超弾性合金層4で緩和される。これにより、絶縁基板1Aのそり、割れ、剥離等の不良の発生を防止できる。
次いで、半導体モジュール用ベース20の絶縁基板1Aの第2金属層5上に半導体素子26をはんだ付けにより接合(実装)する。これにより、図1に示した半導体モジュール25が製造される。はんだ付けに用いるはんだとしては、Pbフリーはんだ等の公知のはんだが用いられる。
このはんだ付けの際には、絶縁基板1Aの温度が約300℃前後に上昇し絶縁基板1Aに熱歪みが発生するが、この熱歪みは絶縁基板1Aの超弾性合金層4で緩和される。そのため、半導体素子26を絶縁基板1Aの第2金属層5上に良好に接合することができる。
図4A及び4Bは、上記第1実施形態の絶縁基板1Aの製造方法のもう一つの例を説明する図である。この製造例を「第2製造例」という。この第2製造例を、上記第1製造例とは異なる点を中心に以下に説明する。
この第2製造例では、セラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5の融点の中で第1金属層3の融点が最も低く、且つ、超弾性合金層4に含まれる金属と第2金属層5に含まれる金属とを組み合わせて得られる複数の合金の共晶温度のうち最も低い共晶温度が第1金属層3の融点に対して300℃以内である。この場合には、これらの層を放電プラズマ接合法により一括接合することができる。その接合方法は次のとおりである。
図4Bに示すように、まず、放電プラズマ接合装置30の黒鉛製ダイ31内に、下から上へ順に、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と超弾性合金層4と第2金属層5とを積層状に配置する。次いで、これらの層から構成された積層体をその厚さ方向に上下一対の黒鉛製パンチ32、32で挟む。そして、1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素得、アルゴン等の不活性雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体をその厚さ方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで積層体を加熱し、これによりこれらの層を一括接合する。その結果、所望する絶縁基板1Aが製造される。積層体の加熱温度は、第1金属層3の融点よりも50〜100℃低い温度であることが、これらの層を確実に接合できる点で望ましい。加熱温度の保持時間は例えば3〜5min、通電するパルス電流は例えば1000〜2000A、加圧力は例えば10〜20MPaである。ただし、これらの接合条件は、接合される層の材料や寸法に応じて適宜変更される。
本第2製造例では、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と超弾性合金層4と第2金属層5とを放電プラズマ接合法により一括接合することにより、絶縁基板1Aの製造工程数及び製造時間を大幅に減少することができ、もって製造コストを大幅に削減することができる。さらに、互いに隣り合う層同士をろう材等の接合金属を介さないで直接的に接合することができる。これにより、絶縁基板の熱伝導率を向上させることができるし、材料コストを削減することができ、更に、各層間にろう材等の接合金属が介在されていない分、絶縁基板の熱伝導率を向上させることができる。
もとより、第1金属層3の融点がセラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5の融点の中で最も低いことにより、放電プラズマ接合法によって第1金属層3にセラミック層2と超弾性合金層4とを確実に接合することができる。さらに、超弾性合金層4に含まれる金属と第2金属層5に含まれる金属とを組み合わせて得られる複数の合金の共晶温度のうち最も低い共晶温度が第1金属層3の融点に対して300℃以内であることにより、放電プラズマ接合法によって超弾性合金層4と第2金属層5とを確実に接合することができる。これにより、これらの層を確実に一括接合することができる。
図5は、上記第1実施形態の絶縁基板1Aの製造方法の更にもう一つの例を説明する図である。この製造例を「第3製造例」という。この製造例を、上記第1及び第2製造例とは異なる点を中心に以下に説明する。
この第3製造例では、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と超弾性合金層4と第2金属層5とを、ろう付けにより一括接合する。その接合方法は次のとおりである。
すなわち、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と超弾性合金層4と第2金属層5とを、互いに隣り合う2つの層間にろう材板等のろう材10を介在させて積層する。そして、ろう付け用炉内で加熱することにより、これらの層をろう材で一括接合する。これにより、所望する絶縁基板1Aが製造される。なお図5では、ろう材10は図示省略されている。
第3製造例では、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と超弾性合金層4と第2金属層5とをろう付けにより一括接合することにより、絶縁基板1Aの製造工程数及び製造時間を大幅に減少することができ、もって絶縁基板1Aの製造コストを削減することができる。
さらに、これらの層の接合方法がろう付けであるから、セラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5の融点の中で第1金属層3の融点が最も低くない場合であっても、これらの層を一括接合することができる。さらに、超弾性合金層4に含まれる金属と第2金属層5に含まれる金属とを組み合わせて得られる複数の合金の共晶温度のうち最も低い共晶温度が第1金属層3の融点に対して300℃を超える場合であっても、これらの層を一括接合することができる。
図6は、本発明の第2実施形態に係る放熱用絶縁基板1Bを説明する図である。この第2実施形態の絶縁基板1Bを、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと異なる点を中心に以下に説明する。
この絶縁基板1Bでは、第1金属層3と第2金属層5との間に第3金属層7が介在されており、更に、第3金属層7と第2金属層5との間(詳述すると、第3金属層7と第2金属層5との接合界面)に超弾性合金層4が介在されている。超弾性合金層4は、第3金属層7の第3金属と第2金属層5のNiとの合金化により生成された超弾性合金の層である。
超弾性合金層4の超弾性合金は、NiとNi以外の一種又は複数種の元素とを必須元素として含んだ合金であり、例えば、Ni−Ti系合金である。
第3金属層7の第3金属は、第2金属層5のNiと合金化されることで超弾性合金を生成可能な金属であり、例えばTi又はTi合金である。すなわち、第3金属層7は、例えばTi又はTi合金で実質的に形成されたものである。
この絶縁基板1Bは、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと同様に用いられる。すなわち、絶縁基板1Bの金属ベース層6に放熱部材21がろう付け等により接合されるとともに、絶縁基板1Bの第2金属層5上に半導体素子26がはんだ付けにより接合される。
図7A〜7Cは、上記第2実施形態の絶縁基板1Bの製造方法の一例を説明する図である。この製造例を「第4製造例」という。この第4製造例を、上記第1〜3製造例とは異なる点を中心に以下に説明する。
第4製造例では、セラミック板から形成されたセラミック層2と、第1金属板から形成された第1金属層3と、第2金属板から形成された第2金属層5と、第3金属板から形成された第3金属層7と、金属板から形成された金属ベース層6と、を準備する。超弾性合金板から形成された超弾性合金層は準備する必要はない。
次いで、第3金属層7と第2金属層5とを放電プラズマ接合法により積層状に接合し、これにより、第3金属層7と第2金属層5と両層7、5間に形成された超弾性合金層4とから構成された接合体9を得る。この工程を「第3接合工程」という。超弾性合金層4は、上述したように、第3金属層7の第3金属と第2金属層5のNiとの合金化により生成された超弾性合金の層である。第3金属層7の第3金属が例えばTiである場合、超弾性合金層4としてNiTi超弾性合金層が第3金属層7と第2金属層5との間に形成される。
第3金属層7と第2金属層5とを放電プラズマ接合法により接合する場合には、図7Bに示すように、まず、放電プラズマ接合装置30の黒鉛製ダイ31内に、第3金属層7と第2金属層5とを積層状に配置する。次いで、これらの層から構成された積層体をその厚さ方向に上下一対の黒鉛製パンチで挟む。そして、1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体をその厚さ方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで積層体を加熱し、これにより第3金属層7と第2金属層5とを接合する。その結果、前記接合体9が得られる。積層体の加熱温度は、第3金属層7及び第2金属層5の融点のうち最も低い融点よりも50〜100℃低い温度であることが、これらの層を確実に接合できる点で望ましい。加熱温度の保持時間は例えば3〜5min、通電するパルス電流は例えば1000〜2000A、加圧力は例えば10〜20MPaである。ただし、これらの接合条件は、接合される層の材料や寸法に応じて適宜変更される。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体9とを、ろう付けや放電プラズマ接合法等の任意の接合方法により積層状に接合する。この工程を「第4接合工程」という。
第4接合工程で用いられる様々な接合方法のうち、放電プラズマ接合法は、隣り合う層同士をろう材等の接合金属を介さないで直接的に接合することができる。これにより、材料コストを削減することができるし、更に、各層間にろう材等の接合金属が介在されていない分、絶縁基板1Bの熱伝導率を向上させることができる。したがって、第4接合工程で用いられる接合方法は、放電プラズマ接合法であることが望ましい。
さらに、セラミック層2、第1金属層3及び第3金属層7の融点の中で第1金属層3の融点が最も低い場合には、セラミック層2と第1金属層3と接合体9とを放電プラズマ接合法により一括接合することが望ましく、こうすることにより、絶縁基板1Bの製造工程数及び製造時間を減少することができ、もって絶縁基板1Bの製造コストを削減することができる。
これらの層を放電プラズマ接合法により一括接合する場合には、図7Cに示すように、まず、放電プラズマ接合装置30の黒鉛製ダイ31内に、下から上へ順に、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体9とを積層状に配置する。この状態では、接合体9の第3金属層7が第1金属層3に当接している。次いで、これらの層から構成された積層体をその厚さ方向に上下一対の黒鉛製パンチで挟む。そして、1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体をその厚さ方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することにより、積層体を加熱し、これによりこれらの層を一括接合する。その結果、所望する絶縁基板1Bが製造される。積層体の加熱温度は、第1金属層3の融点よりも50〜100℃低い温度であることが、これらの層を確実に接合できる点で望ましい。加熱温度の保持時間は例えば3〜5min、通電するパルス電流は例えば1000〜2000A、加圧力は例えば10〜20MPaである。ただし、これらの接合条件は、接合される層の材料や寸法に応じて適宜変更される。
この第4接合工程では、第1金属層3の融点がセラミック層2、第1金属層3及び第3金属層7の融点の中で最も低いことにより、放電プラズマ接合法によって第1金属層3にセラミック層2と接合体9とを確実に接合することができる。これにより、セラミック層2と第1金属層3と接合体9とを確実に一括接合することができる。
ここで、超弾性合金層4の超弾性合金の高温安定相が超弾性特性を有している場合には、第3接合工程の後又は第4接合工程の後で、高温安定相の体積を増加させる時効処理を超弾性合金層4に施すことが望ましい。
図8A及び8Bは、上記第2実施形態の絶縁基板1Bの製造方法のもう一つの例を説明する図である。この製造例を「第5製造例」という。この第5製造例を、上記第4製造例とは異なる点を中心に以下に説明する。
この第5製造例では、セラミック層2、第1金属層3、第3金属層7及び第2金属層5の融点の中で第1金属層3の融点が最も低く、且つ、第3金属層7に含まれる金属と第2金属層5に含まれる金属とを組み合わせて得られる複数の合金の共晶温度のうち最も低い共晶温度が第1金属層3の融点に対して300℃以内である。この場合には、これらの層を放電プラズマ接合法により一括接合することができる。その接合方法は次のとおりである。
図8Bに示すように、まず、放電プラズマ接合装置30の黒鉛製ダイ31内に、下から上へ順に、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と第3金属層7と第2金属層5とを積層状に配置する。次いで、これらの層から構成された積層体をその厚さ方向に上下一対の黒鉛製パンチ32、32で挟む。そして、1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体をその厚さ方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで積層体を加熱し、これによりこれらの層を一括接合する。その結果、所望する絶縁基板1Bが製造される。積層体の加熱温度は、第1金属層3の融点よりも50〜100℃低い温度であることが、これらの層を確実に接合できる点で望ましい。加熱温度の保持時間は例えば3〜5min、通電するパルス電流は例えば1000〜2000A、加圧力は例えば10〜20MPaである。ただし、これらの接合条件は、接合される層の材料や寸法に応じて適宜変更される。
本第5製造例では、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と第3金属層7と第2金属層5とを放電プラズマ接合法により一括接合することにより、絶縁基板1Bの製造工程数及び製造時間を大幅に減少することができ、もって製造コストを大幅に削減することができる。さらに、互いに隣り合う層同士をろう材等の接合金属を介さないで直接的に接合することができる。これにより、絶縁基板1Bの熱伝導率を向上させることができるし、材料コストを削減することができ、更に、各層間にろう材等の接合金属が介在されていない分、絶縁基板の熱伝導率を向上させることができる。
もとより、第1金属層3の融点がセラミック層2、第1金属層3、第3金属層7及び第2金属層5の融点の中で最も低いことにより、放電プラズマ接合法によって第1金属層3にセラミック層2と第3金属層7とを確実に接合することができる。さらに、第3金属層7に含まれる金属と第2金属層5に含まれる金属とを組み合わせて得られる複数の合金の共晶温度のうち最も低い共晶温度が第1金属層3の融点に対して300℃以内であることにより、放電プラズマ接合法によって第3金属層7と第2金属層5とを確実に接合することができる。これにより、これらの層を確実に一括接合することができる。
図9は、本発明の第3実施形態に係る放熱用絶縁基板1Cを説明する図である。この第3実施形態の絶縁基板を、上記第1及び第2実施形態の絶縁基板1A、1Bと異なる点を中心に以下に説明する。
この絶縁基板1Cでは、上記第2実施形態の絶縁基板1Bと同様に、第1金属層3と第2金属層5との間に第3金属層7が介在されており、更に、第3金属層7と第2金属層5との間に超弾性合金層4が介在されている。超弾性合金層4は、第3金属層7の第3金属と第2金属層5のNiとの合金化により生成された超弾性合金の層である。
超弾性合金層4の超弾性合金は、NiとNi以外の二種以上の元素とを必須元素として含んだ合金であり、例えば、Cu−Ni−Al系合金である。
第3金属層7は、図10Aに示すように、複数の薄層7a、7bが積層されて構成されたものである。本第3実施形態では、第3金属層7は2つの薄層7a、7bが積層されて構成されている。各薄層7a、7bは、第2金属層5のNiと合金化されることで超弾性合金を生成可能な金属(第3金属)を必須元素として含んでいる。
以下では、超弾性合金層4の超弾性合金がCuNiAl合金であり、第3金属層7の2つの薄層7a、7bのうち一方がCuを必須元素として含むCu薄層7aであり、他方がAlを必須元素として含むAl薄層7bであるとして、第3実施形態の絶縁基板1Cを説明をする。
この絶縁基板1Cでは、超弾性合金層4の超弾性合金は、第3金属層7のCu薄層7aのCuとAl薄層7bのAlと第2金属層5のNiとが合金化することにより生成されたCuNiAl合金である。
図10A〜10Cは、上記第3実施形態の絶縁基板1Cの製造方法の一例を説明する図である。この製造例を「第6製造例」という。この第6製造例を、上記第4及び第5製造例とは異なる点を中心に以下に説明する。
第6製造例では、セラミック板から形成されたセラミック層2と、第1金属板から形成された第1金属層3と、第2金属板から形成された第2金属層5と、Cu板から形成されたCu薄層7aと、Al板から形成されたAl薄層7bと、金属板から形成された金属ベース層6と、を準備する。超弾性合金板から形成された超弾性合金層は準備する必要はない。第3金属層7はCu薄層7aとAl薄層7bとから構成される。Al薄層7bの厚さは、Cu薄層7aの厚さよりも薄く、例えば0.03〜0.05mmであり、Cu薄層7aの厚さは例えば0.05〜0.1mmである。
次いで、第3金属層7のCu薄層7aとAl薄層7bと第2金属層5とを放電プラズマ接合法により積層状に接合し、これにより、Cu薄層7aと第2金属層5と両層7a、5間に形成された超弾性合金層4とから構成された接合体9を得る。この工程が「第3接合工程」に相当する。超弾性合金層4は、上述したように、放電プラズマ接合時に、Cu薄層7aのCuとAl薄層7bのAlと第2金属層5のNiとの合金化により生成されたCuNiAl超弾性合金の層である。
Cu薄層7aとAl薄層7bと第2金属層5とを放電プラズマ接合法により接合する場合には、図10Bに示すように、まず、放電プラズマ接合装置30の黒鉛製ダイ31内に、Cu薄層7aとAl薄層7bと第2金属層5とを、Cu薄層7aと第2金属層5との間にAl薄層7bが挟まれるように積層状に配置する。次いで、これらの層から構成された積層体をその厚さ方向に上下一対の黒鉛製パンチ32、32で挟む。そして、1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体をその厚さ方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで積層体を加熱し、これによりCu薄層7aとAl薄層7bと第2金属層5とを接合する。その結果、Cu薄層7aと第2金属層5と両層7a、5間に形成されたCuNiAl超弾性合金層4とから構成された接合体9が得られる。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体9とを、ろう付けや放電プラズマ接合法等の任意の接合方法により積層状に接合する。この工程が「第4接合工程」に相当する。
第4接合工程で用いられる様々な接合方法のうち、放電プラズマ接合法は、隣り合う層同士をろう材等の接合金属を介さないで直接的に接合することができる。これにより、材料コストを削減することができるし、更に、各層間にろう材等の接合金属が介在されていない分、絶縁基板1Cの熱伝導率を向上させることができる。したがって、第4接合工程で用いられる接合方法は、放電プラズマ接合法であることが望ましい。
さらに、セラミック層2、第1金属層3及びCu薄層7aの融点の中で第1金属層3の融点が最も低い場合には、セラミック層2と第1金属層3と接合体9とを放電プラズマ接合法により一括接合することが望ましく、こうすることにより、絶縁基板1Cの製造工程数及び製造時間を減少することができ、もって絶縁基板1Cの製造コストを削減することができる。
これらの層を放電プラズマ接合法により一括接合する場合には、図10Cに示すように、まず、放電プラズマ接合装置30の黒鉛製ダイ31内に、下から上へ順に、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体9とを積層状に配置する。この状態では、接合体9のCu薄層7aが第1金属層3に当接している。次いで、これらの層から構成された積層体をその厚さ方向に上下一対の黒鉛製パンチ32、32で挟む。そして、1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体をその厚さ方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することにより、積層体を加熱し、これによりこれらの層を一括接合する。その結果、所望する絶縁基板1Cが製造される。
この第4接合工程では、第1金属層3の融点がセラミック層2、第1金属層3及びCu薄層7aの融点の中で最も低いことにより、放電プラズマ接合法によって第1金属層3にセラミック層2と接合体9とを確実に接合することができる。これにより、セラミック層2と第1金属層3と接合体9とを確実に一括接合することができる。
ここで、超弾性合金層4の超弾性合金の高温安定相が超弾性特性を有している場合には、第3接合工程の後又は第4接合工程の後で、高温安定相の体積を増加させる時効処理を超弾性合金層に施すことが望ましい。この工程が「時効工程」に相当する。
なお本発明では、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3とCu薄層7aとAl薄層7bと第2金属層5とを放電プラズマ接合法により一括接合することにより、絶縁基板1Cを製造しても良い。
図11は、本発明の第5実施形態に係る放熱用絶縁基板1D及びその製造方法の一例を説明する図である。この第5実施形態の絶縁基板1Dを、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと異なる点を中心に以下に説明する。
本第5実施形態の絶縁基板1Dでは、上記第2実施形態に係る絶縁基板1Bと同じく、第1金属層3と第2金属層5との間に第3金属層7が介在されており、更に、第3金属層7と第2金属層5との間(詳述すると、第3金属層7と第2金属層5との接合界面)に超弾性合金層4が介在されている。超弾性合金層4は、第3金属層7の第3金属と第2金属層5のNiとの合金化により生成された超弾性合金の層である。
超弾性合金層4の超弾性合金は、NiとNi以外の一種又は複数種の元素とを必須元素として含んだ合金であり、例えば、Ni−Ti系合金である。
第3金属層7の第3金属は、第2金属層5のNiと合金化されることで超弾性合金を生成可能な金属であり、例えばTi又はTi合金である。
この絶縁基板1Dは、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと同様に用いられる。
次に、本第5実施形態の絶縁基板1Dの製造方法の一例を、上記第1〜3製造例とは異なる点を中心に以下に説明する。なお、この製造例を「第7製造例」という。
第7製造例では、セラミック板から形成されたセラミック層2と、第1金属板から形成された第1金属層3と、第2金属板から形成された第2金属層5と、第3金属板から形成された第3金属層7と、金属板から形成された金属ベース層6と、を準備する。超弾性合金板から形成された超弾性合金層は準備する必要はない。
次いで、第3金属層7と第2金属層5とをクラッド圧延により接合し、これにより、第3金属層7と第2金属層5と両層7、5間に形成された超弾性合金層4とから構成された接合体9を得る。換言すると、第3金属層7と第2金属層5とを、両層7、5間に第3金属層7の第3金属と第2金属層5のNiとの合金化により超弾性合金層4が形成されるように、クラッド圧延により接合する。第3金属層7の第3金属が例えばTiである場合、Ni−Ti系超弾性合金層4としてNiTi超弾性合金層が第3金属層7と第2金属層5との間に形成される。
第3金属層7と第2金属層5との接合は、両層7、5間に超弾性合金層4が確実に形成されるようにするため、温間ないし熱間クラッド圧延により行われるのが望ましい。第3金属層7の第3金属が例えばTiである場合には、第3金属層7と第2金属層5との接合の望ましい接合条件は、クラッド温度630〜750℃、圧下率40〜60%である。
次いで、接合体9(詳述すると接合体9の第3金属層7)と第1金属層3とをクラッド圧延により接合し、これにより、第1金属層3と第3金属層7と第2金属層5との接合体15を得る。
接合体9と第1金属層3との接合は、特に冷間ないし温間クラッド圧延により接合するのが望ましい。その理由は次のとおりである。即ち、もし第3金属層7の第3金属がTiであり、第1金属層3の第1金属がAlである場合、接合体9と第1金属層3とをろう付けより接合した場合、そのろう付け時の熱によって接合体9の第3金属層7と第1金属層3との間(即ち、第3金属層7と第1金属層3との接合界面)に強度の弱い合金層(例:Al−Ti合金層)が形成される。しかし、接合体9の第3金属層7と第1金属層3とはろう付けではなく、ろう付け温度よりも低温で接合可能なクラッド圧延、特に冷間ないし温間クラッド圧延により接合されることにより、接合体9の第3金属層7と第1金属層3との間にそのような強度の弱い合金層が形成されるのを防止することができる。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と接合体15とを炉内ろう付け等により接合する。
図12は、本発明の第6実施形態に係る放熱用絶縁基板1E及びその製造方法の一例を説明する図である。この第6実施形態の絶縁基板1Eを、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと異なる点を中心に以下に説明する。
本第6実施形態の絶縁基板1Eでは、上記第2実施形態に係る絶縁基板1Bと同じく、第1金属層3と第2金属層5との間に第3金属層7が介在されており、更に、第3金属層7と第2金属層5との間(詳述すると、第3金属層7と第2金属層5との接合界面)に超弾性合金層4が介在されている。超弾性合金層4は、第3金属層7の第3金属と第2金属層5のNiとの合金化により生成された超弾性合金の層である。
超弾性合金層4の超弾性合金は、NiとNi以外の一種又は複数種の元素とを必須元素として含んだ合金であり、例えば、Ni−Ti系合金である。
第3金属層7の第3金属は、第2金属層5のNiと合金化されることで超弾性合金を生成可能な金属であり、例えばTi又はT合金である。
さらに、第1金属層3と第3金属層7との間に第4金属層12が介在されている。そして、この第4金属層12と第3金属層7とが接合されるとともに、この第4金属層12と第1金属層3と接合されている。
第4金属層12の第4金属は、Al、Cu、Ag、Au、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金等である。すなわち、第4金属層12は、Al、Cu、Ag、Au、Al合金、Cu合金、Ag合金、Au合金等で実質的に形成されたものである。第4金属層12の第4金属は、特に、材料コストの削減及び熱伝導性能の向上を図る点からAl、Al合金、Cu又はCu合金であることが望ましい。第4金属層12の厚さは、第1金属層12よりも薄く設定されており、これにより、第4金属層12が第3金属層7とクラッド圧延により容易に接合できるものとなされている。
この絶縁基板1Eは、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと同様に用いられる。
次に、本第6実施形態の絶縁基板1Eの製造方法の一例を、上記第1〜3製造例とは異なる点を中心に以下に説明する。なお、この製造例を「第8製造例」という。
第8製造例では、セラミック板から形成されたセラミック層2と、第1金属板から形成された第1金属層3と、第2金属板から形成された第2金属層5と、第3金属板から形成された第3金属層7と、第4金属板から形成された第4金属層12と、金属板から形成された金属ベース層6と、を準備する。超弾性合金板から形成された超弾性合金層は準備する必要はない。
次いで、第3金属層7と第2金属層5とをクラッド圧延により接合し、これにより、第3金属層7と第2金属層5と両層7、5間に形成された超弾性合金層4とから構成された接合体9を得る。換言すると、第3金属層7と第2金属層5とを、両層7、5間に第3金属層7の第3金属と第2金属層5のNiとの合金化により超弾性合金層4が形成されるように、クラッド圧延により接合する。第3金属層7の第3金属が例えばTiである場合、Ni−Ti系超弾性合金層4としてNiTi超弾性合金層が第3金属層7と第2金属層5との間に形成される。
第3金属層7と第2金属層5との接合は、両層7、5間に超弾性合金層4が確実に形成されるようにするため、温間ないし熱間クラッド圧延により行われるのが望ましい。第3金属層7の第3金属が例えばTiである場合には、第3金属層7と第2金属層5との接合の望ましい接合条件は上記第7製造例と同じである。
次いで、接合体9(詳述すると接合体9の第3金属層7)と第4金属層12とをクラッド圧延により接合し、これにより、第4金属層12と第3金属層7と第2金属層5との接合体16を得る。
接合体9と第4金属層12との接合は、接合体9の第3金属層7と第4金属層12との間に強度の弱い合金層が形成されるのを防止するため、クラッド圧延、特に冷間ないし温間クラッド圧延により接合するのが望ましい。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と接合体16とを炉内ろう付け等により接合する。
本第6実施形態の絶縁基板1Eでは、セラミック層2と第3金属層7との間に第1金属層3と第4金属層12とが配置されているので、第1金属層3の材料及び厚さを配線層に適するように選択及び設定することができるし、更に、第4金属層12の材料及び厚さを、第3金属層7とクラッド圧延により容易に接合可能になるように選択及び設定することができる。
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々に変更可能である。
また本発明は、上記第1〜8製造例の技術思想のうち二つ以上を組み合わせて構成しても良い。
次に、本発明の具体的な幾つかの実施例を以下に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例1では、図5に示した第3製造例に従って絶縁基板1Aを製造した。その製造方法は以下のとおりである。
金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5として、それぞれ次の板を準備した。
金属ベース層6:縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
セラミック層2:縦25×横25×厚さ0.6mmのAlN板
第1金属層3 :縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
超弾性合金層4:縦25×横25×厚さ0.1mmのNiTi合金板
第2金属層5 :縦25×横25×厚さ0.1mmの純Ni板。
金属ベース層6及び第1金属層3をそれぞれ形成する純Al板の純度は、99.99質量%である。第2金属層5を形成する純Ni板の純度はJIS(日本工業規格)1種である。
超弾性合金層4を形成するNiTi合金板は、純Ni(JIS1種)と純Ti(JIS1種)とをNi57質量%及びTi43質量%の割合で混合しアーク溶解にて合金化することにより得られたNiTi合金に、加熱時間650℃×保持時間1時間の条件で時効処理を施したものを用いた。
これらの層(板)を、互いに隣り合う層間にろう材板10を介在させて積層した。そして図5に示すように、これらの層を印加荷重6gf/cm2及び加熱温度600℃×保持時間15minの条件で炉内ろう付けにより一括接合した。これにより、絶縁基板1Aを得た。
次いで、絶縁基板1Aに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。そして、絶縁基板1Aの各接合界面での割れ及び剥離を超音波探傷装置を用いて調べたところ、割れ及び剥離は発生していなかった。さらに、絶縁基板1Aの第2金属層5の表面のそりをレーザ式形状測定器を用いて測定したところ、そり量が15μm以下であった。したがって、絶縁基板1Aにそりが殆ど発生していなかった。
<実施例2>
本実施例2では、図4A及び4Bに示した第2製造例に従って絶縁基板1Aを製造した。その製造方法は以下のとおりである。
金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5として、それぞれ次の板を準備した。
金属ベース層6:縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
セラミック層2:縦25×横25×厚さ0.6mmのAlN板
第1金属層3 :縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
超弾性合金層4:縦25×横25×厚さ0.1mmのCuNiAl合金板
第2金属層5 :縦25×横25×厚さ0.1mmの純Ni板。
金属ベース層6及び第1金属層3をそれぞれ形成する純Al板の純度は、99.99質量%である。第2金属層5を形成する純Ni板の純度はJIS1種である。
超弾性合金層4を形成するCuNiAl合金板は、無酸素銅(JIS合金番号:C1020)と純Ni(JIS1種)と純Al(純度:99.99質量%)とをCu82質量%、Ni4質量%及びAl14質量%の割合で混合しアーク溶解にて合金化することにより得られたCuNiAl合金に、加熱時間800℃×保持時間1時間の条件で時効処理を施したものを用いた。
ここで、セラミック層(AlN板)2の融点は2200℃、第1金属層(純Al板)3の融点は660℃、超弾性合金層(CuNiAl合金板)4の融点は1070℃、第2金属層(純Ni板)5の融点は1455℃である。したがって、第1金属層3の融点が、セラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5の融点の中で最も低い。さらに、超弾性合金層4に含まれる金属(即ちCu、Ni、Al)と第2金属層5に含まれる金属(即ちNi)とを組み合わせて得られる複数の合金の共晶温度のうち最も低い共晶温度はAlとNiとの共晶温度640℃であり、これは第1金属層3の融点660℃に対して300℃以内である。
これらの層(板)を積層し、そして図4Bに示すようにこれらの層を放電プラズマ接合法により一括接合した。その結果、互いに隣り合う層同士が強固に接合された絶縁基板1Aが得られた。
放電プラズマ接合に用いた放電プラズマ接合装置の構成は次のとおりである。黒鉛製ダイ31の外側寸法は外径100×高さ50mmであり、その内側断面寸法は縦25.1×横25.1mmである。黒鉛製パンチ32の寸法は縦25.0×横25.0×高さ30mmである。接合条件は、雰囲気圧力3Pa、積層体への加圧力20MPa、加熱温度570℃、加熱温度の保持時間5min、パルス電流1800Aである。なお、加熱温度は黒鉛製ダイ31内に配置された熱電対で測定した。
次いで、絶縁基板1Aに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。そして、絶縁基板1Aの各接合界面での割れ及び剥離を超音波探傷装置を用いて調べたところ、割れ及び剥離は発生していなかった。さらに、絶縁基板1Aの第2金属層5の表面のそりをレーザ式形状測定器を用いて測定したところ、そり量が15μm以下であった。したがって、絶縁基板1Aにそりが殆ど発生していなかった。
<実施例3>
本実施例3では、図3A〜3Cに示した第1製造例に従って絶縁基板1Aを製造した。その製造方法は以下のとおりである。
金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3、超弾性合金層4及び第2金属層5として、上記実施例1と同じ板を準備した。なお、超弾性合金層4を形成するNiTi合金板は、上記実施例1と同じ条件で時効処理されている。
超弾性合金層4と第2金属層5とを積層し、そして図3Bに示すようにこれらの層を放電プラズマ接合法により接合した。これにより、超弾性合金層4と第2金属層5との接合体8を得た。接合体8の厚さは0.2mmであった。この放電プラズマ接合に用いた放電プラズマ接合装置30は、上記実施例2の放電プラズマ接合装置と同じである。接合条件は、雰囲気圧力3Pa、積層体への加圧力20MPa、加熱温度750℃、加熱温度の保持時間5min、パルス電流1800Aである。
ここで、セラミック層(AlN板)の融点は2200℃、第1金属層(純Al板)3の融点は660℃、超弾性合金層(NiTi合金板)4の融点は1310℃である。したがって、第1金属層3の融点が、セラミック層2、第1金属層3及び超弾性合金層4の融点の中で最も低い。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体8とを積層し、そして図3Cに示すようにこれらの層を放電プラズマ接合法により一括接合した。その結果、互いに隣り合う層同士が強固に接合された絶縁基板1Aが得られた。この放電プラズマ接合に用いた放電プラズマ接合装置30は、上記実施例2の放電プラズマ接合装置と同じである。接合条件は、雰囲気圧力3Pa、積層体への加圧力20MPa、加熱温度560℃、加熱温度の保持時間5min、パルス電流1800Aである。
次いで、絶縁基板1Aに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。そして、絶縁基板1Aの各接合界面での割れ及び剥離を超音波探傷装置を用いて調べたところ、割れ及び剥離は発生していなかった。さらに、絶縁基板1Aの第2金属層5の表面のそりをレーザ式形状測定器を用いて測定したところ、そり量が15μm以下であった。したがって、絶縁基板1Aにそりが殆ど発生していなかった。
<実施例4>
本実施例4では、図7A〜7Cに示した第4製造例に従って絶縁基板1Bを製造した。その製造方法は以下のとおりである。
金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3、第3金属層7及び第2金属層5として、それぞれ次の板を準備した。
金属ベース層6:縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
セラミック層2:縦25×横25×厚さ0.6mmのAlN板
第1金属層3 :縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
第3金属層7 :縦25×横25×厚さ0.1mmの純Ti板
第2金属層5 :縦25×横25×厚さ0.1mmの純Ni板。
金属ベース層6及び第1金属層3をそれぞれ形成する純Al板の純度は、99.99質量%である。第3金属層7を形成する純Ti板の純度はJIS1種である。第2金属層5を形成する純Ni板の純度はJIS1種である。
第3金属層7と第2金属層5とを積層し、そして図7Bに示すようにこれらの層を放電プラズマ接合法により接合した。これにより、接合体9を得た。接合体9の厚さは0.2mmであった。この放電プラズマ接合に用いた放電プラズマ接合装置30は、上記実施例2の放電プラズマ接合装置と同じである。接合条件は、雰囲気圧力3Pa、積層体への加圧力20MPa、加熱温度750℃、加熱温度の保持時間5min、パルス電流1800Aである。
この接合体9の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察するとともに、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により定量分析したところ、第3金属層7と第2金属層5との間に超弾性合金層4としてTiNi相のNiTi合金層(厚さ:20μm)が形成されていることを確認し得た。詳述すると、この接合体9は、Ti/Ni固溶Ti/Ti2Ni/TiNi/TiNi3/Ti固溶Ni/Niという7層構造であると推察される。この接合体9では、TiNi相のNiTi合金層が超弾性特性を有しており、TiNi相が高温安定相である。
ここで、セラミック層(AlN板)2の融点は2200℃、第1金属層(純Al板)3の融点は660℃、第3金属層(純Ti板)7の融点は1670℃である。したがって、第1金属層3の融点が、セラミック層2、第1金属層3及び第3金属層7の融点の中で最も低い。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体9とを積層し、そして図7Cに示すようにこれらの層を放電プラズマ接合法により一括接合した。その結果、互いに隣り合う層同士が強固に接合された絶縁基板1Cが得られた。この放電プラズマ接合に用いた放電プラズマ接合装置30は、上記実施例2の放電プラズマ接合装置と同じである。接合条件は、雰囲気圧力3Pa、積層体への加圧力20MPa、加熱温度560℃、加熱温度の保持時間5min、パルス電流1800Aである。
次いで、絶縁基板1Bに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。そして、絶縁基板1Bの各接合界面での割れ及び剥離を超音波探傷装置を用いて調べたところ、割れ及び剥離は発生していなかった。さらに、絶縁基板1Bの第2金属層5の表面のそりをレーザ式形状測定器を用いて測定したところ、そり量が15μm以下であった。したがって、絶縁基板1Bにそりが殆ど発生していなかった。
次いで、絶縁基板1Bの金属ベース層6と放熱部材21としてのヒートシンクとを真空ろう付けにより接合した。これにより、半導体モジュール用ベース20を製造した。ヒートシンクの材質はAl合金であり、詳述するとA3003である。ろう付けで用いたろう材は、Al−Si系合金の厚さ10μmのろう材板である。ろう付け条件は、接合温度600℃×保持時間10min、雰囲気圧力10−1Paである。このろう付けの際に加えられた熱により、超弾性合金層4としてのNiTi合金層に時効処理が施された。
この半導体モジュール用ベース20の絶縁基板1Cを観察したところ、絶縁基板1Cにそり、割れ、剥離などの不良は発生していなかった。
<実施例5>
本実施例5では、図11に示した第5実施形態に係る絶縁基板1Dを製造した。その製造方法は以下のとおりである。
金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3、第3金属層7及び第2金属層5として、それぞれ次の板を準備した。
金属ベース層6:縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
セラミック層2:縦25×横25×厚さ0.6mmのAlN板
第1金属層3 :縦25×横25×厚さ0.4mmの純Al板
第3金属層7 :縦25×横25×厚さ0.1mmの純Ti板
第2金属層5 :縦25×横25×厚さ0.1mmの純Ni板。
金属ベース層6及び第1金属層3をそれぞれ形成する純Al板の純度は、99.99質量%である。第3金属層7を形成する純Ti板の純度はJIS1種である。第2金属層5を形成する純Ni板の純度はJIS1種である。
第3金属層7と第2金属層5とを積層し、そして両層7、5を温間ないし熱間クラッド圧延により接合し、これにより、第3金属層7と第2金属層5と両層7、5間に形成された超弾性合金層4とから構成された接合体9を得た。超弾性合金層4は、第3金属層7のTiと第2金属層5のNiとの合金化により生成されたTi−Ni系超弾性合金層としてのTiNi超弾性合金層である。この超弾性合金層4の厚さは1μmであり、この超弾性合金層4のTiNi相が超弾性特性を有している。この接合に適用した接合条件は、クラッド温度680℃、圧下率50%である。
次いで、接合体9(詳述すると、接合体9の第3金属層7)と第1金属層3とを冷間ないし温間クラッド接合により接合し、これにより、第1金属層3と第3金属層7と第2金属層5との接合体15を得た。この接合に適用した接合条件は、クラッド温度300℃、圧下率50%である。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と接合体15とを、各層間にろう材板10を介在させて積層した。そして、これらの層を印加荷重6gf/cm2及び加熱温度600℃×保持時間15minの条件で炉内ろう付けにより一括接合した。これにより、絶縁基板1Dを得た。なお、ろう付けで用いたろう材は、Alを含むろう材として、Al−Si系合金の厚さ10μmのろう材板である。
次いで、絶縁基板1Dに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。そして、絶縁基板1Dの各接合界面での割れ及び剥離を超音波探傷装置を用いて調べたところ、割れ及び剥離は発生していなかった。さらに、絶縁基板1Dの第2金属層5の表面のそりをレーザ式形状測定器を用いて測定したところ、そり量が15μm以下であった。したがって、絶縁基板1Dにそりが殆ど発生していなかった。
<実施例6>
本実施例6では、図12に示した第6実施形態に係る絶縁基板1Eを製造した。その製造方法は以下のとおりである。
金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3、第4金属層12、第3金属層7及び第2金属層5として、それぞれ次の板を準備した。
金属ベース層6:縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
セラミック層2:縦25×横25×厚さ0.6mmのAlN板
第1金属層3 :縦25×横25×厚さ0.4mmの純Al板
第4金属層12:縦25×横25×厚さ0.1mmの純Al板
第3金属層7 :縦25×横25×厚さ0.05mmの純Ti板
第2金属層5 :縦25×横25×厚さ0.05mmの純Ni板。
金属ベース層6、第1金属層3及び第4金属層12をそれぞれ形成する純Al板の純度は、99.99質量%である。第3金属層7を形成する純Ti板の純度はJIS1種である。第2金属層5を形成する純Ni板の純度はJIS1種である。
第3金属層7と第2金属層5とを積層し、そして両層7、5を温間ないし熱間クラッド圧延により接合し、これにより、第3金属層7と第2金属層5と両層7、5間に形成された超弾性合金層4とから構成された接合体9を得た。超弾性合金層4は、第3金属層7のTiと第2金属層5のNiとの合金化により生成されたTi−Ni系超弾性合金層としてのTiNi超弾性合金層である。この超弾性合金層4の厚さは1μmであり、この超弾性合金層4のTiNi相が超弾性特性を有している。この接合に適用した接合条件は、クラッド温度680℃、圧下率50%である。
次いで、接合体9(詳述すると、接合体9の第3金属層7)と第4金属層12とを冷間ないし温間クラッド接合により接合し、これにより、第4金属層12と第3金属層7と第2金属層5との接合体16を得た。この接合に適用した接合条件は、クラッド温度300℃、圧下率50%である。
次いで、金属ベース層6とセラミック層2と第1金属層3と接合体16とを、各層間にろう材板10を介在させて積層した。そして、これらの層を印加荷重6gf/cm2及び加熱温度600℃×保持時間15minの条件で炉内ろう付けにより一括接合した。これにより、絶縁基板1Eを得た。なお、ろう付けで用いたろう材は、Alを含むろう材として、Al−Si系合金の厚さ10μmのろう材板である。
次いで、絶縁基板1Eに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。そして、絶縁基板1Eの各接合界面での割れ及び剥離を超音波探傷装置を用いて調べたところ、割れ及び剥離は発生していなかった。さらに、絶縁基板1Eの第2金属層5の表面のそりをレーザ式形状測定器を用いて測定したところ、そり量が15μm以下であった。したがって、絶縁基板1Eにそりが殆ど発生していなかった。
<比較例1>
金属ベース層6、セラミック層2、第1金属層3及び第2金属層5として、それぞれ次の板を準備した。
金属ベース層6:縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
セラミック層2:縦25×横25×厚さ0.6mmのAlN板
第1金属層3 :縦25×横25×厚さ0.6mmの純Al板
第2金属層5 :縦25×横25×厚さ0.1mmの純Ni板。
金属ベース層6及び第1金属層3をそれぞれ形成する純Al板の純度は、99.99質量%である。第2金属層5を形成する純Ni板の純度はJIS1種である。
そして、これらの層を積層し、そしてこれらの層を放電プラズマ接合法により一括接合した。これにより、絶縁基板を得た。この放電プラズマ接合に用いた放電プラズマ接合装置は、上記実施例2の放電プラズマ接合装置と同じである。接合条件は、雰囲気圧力3Pa、積層体への加圧力20MPa、加熱温度560℃、加熱温度の保持時間5min、パルス電流1800Aである。
次いで、絶縁基板の金属ベース層6と放熱部材21としてのヒートシンクとを真空ろう付けにより接合した。これにより、半導体モジュール用ベースを製造した。ヒートシンクの材質はAl合金であり、詳述するとA3003である。ろう付けで用いたろう材は、Al−Si系合金の厚さ10μmのろう材箔である。ろう付け条件は、接合温度600℃×保持時間10min、雰囲気圧力10−1Paである。
この半導体モジュール用ベースの絶縁基板の断面を観察したところ、第1金属層3と第2金属層5との間の接合界面に剥離が発生していた。