JP6028497B2 - パワーモジュール用基板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1及び特許文献2では、セラミックス基板にアルミニウムをろう付けした後に、銅にニッケルをめっきしたものを接合することによってパワーモジュール用基板を形成している。また、特許文献3では、予めアルミニウムと銅との間にニッケル等を介在させることにより3層に接合しておいたクラッド箔をセラミックス基板の両面にろう付けしている。
また、特許文献3では、予め接合しておいたアルミニウム、チタニウム及び銅のクラッド箔をセラミックス基板の両面にろう付けするため、接合加熱工程を1回とすることができる。しかし、クラッド箔のアルミニウムと銅との中間層を構成するチタニウム層の厚さが5μm〜30μmと薄いため、セラミックス基板とクラッド箔との接合工程において、アルミニウムと銅とが加熱時に一部反応し、冷熱サイクルが劣化してしまうおそれがある。
この場合、ニッケル層は、厚みを0.08mm以上0.25mm以下に設定することで良好に機能する。ニッケル層の厚みが0.08mm未満の場合は、厚みが薄いためにバリア層として機能せず、アルミニウム層と銅層が反応するおそれがある。また、ニッケル層の厚みが0.25mmを超える場合は、ニッケル層は剛性が高いため、その厚みによりろう付け時の荷重が不均一となりやすくなる。その結果、初期接合率が低下するおそれがある。このような理由により、ニッケル層の厚みは、0.08mm以上0.25mm以下に設定している。また、上記観点から、0.10mm以上0.20mm以下に設定することがより好ましい。
また、セラミックス基板と回路層用金属板及び放熱層用金属板とを、1回の加熱で接合することが可能であるので、作業性を向上させることができる。
ろう付け接合の場合、635℃未満の加熱では、セラミックス基板と回路層用金属板及び放熱層用金属板とを1回の加熱で接合することが難しく、各部材間の接合性を良好に確保することができない。また、639.9℃以上に加熱した場合は、回路層用金属板を構成するアルミニウム層とニッケル層との間に、金属間化合物が生成されるおそれがある。
各金属層の厚みが0.05mm未満では、アルミニウム層及び銅層が固相拡散してしまうことから、各金属層を保持することができずに、それぞれの機能が失われるおそれがある。
また、銅層の厚みは、電気特性の観点から、0.1mm以上0.3mm以下に設定することがより好ましく、アルミニウム層の厚みは、セラミックス基板との接合性を良好に確保する観点から0.2mm以上0.6mm以下に設定することがより好ましい。
本発明のパワーモジュール用基板によれば、初期接合率に優れ、セラミックス基板との間の熱応力を低減して、冷熱サイクル性を向上させることができる。
図1に示すパワーモジュール100は、パワーモジュール用基板10と、パワーモジュール用基板10の表面に搭載された半導体チップ等の電子部品20と、パワーモジュール用基板10の裏面に接合されたヒートシンク30とから構成されている。
なお、セラミックス基板11と回路層用金属板12及び放熱層用金属板13との接合は、ろう付けの他に、回路層用金属板12及び放熱層用金属板13の接合面に接合材として、Ag若しくはCuを付着させて積層方向に加圧しながら加熱接合するいわゆる過渡液相接合法(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)を用いることもできる。
図2に示すように、回路層用金属板12は、引張強度や耐力が小さいアルミニウム層14に、ニッケル層15を介して電気特性に優れた銅層16を接合することにより形成されている。各金属層14,15,16を接合して形成された回路層用金属板12は、総厚が0.2mm以上に設定されており、放熱性能等の観点から、好ましくは0.3mm以上2.0mm以下に設定されているとよい。
また、回路層用金属板12を構成するアルミニウム層14は、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。ここでは、純アルミニウム板(好ましくは純度99.99質量%以上の4N‐Al板)で形成されている。また、ニッケル層15は、ニッケル又はニッケル合金が用いられる。ここでは、純ニッケル板を用いた。さらに、銅層16は、銅又は銅合金が用いられる。ここでは、純銅板(好ましくは純度99.96%以上の無酸素銅)により形成されている。
アルミニウム層14及び銅層16は、厚みが0.05mm以上に設定され、ニッケル層15は、厚みが0.08mm以上0.25mm以下に設定される。
また、(銅層16の厚み)/(アルミニウム層14の厚み)の比率は、0.1〜4.0に設定され、好ましくは0.25〜1.0に設定される。
そして、これらアルミニウム層14、ニッケル層15、銅層16の接合方法は、特に限定されるものでないが、例えば熱間圧延法、表面活性化による接合方法を採用して接合することができる。
そして、パワーモジュール100においては、回路層用金属板12は、エッチング等により所定の回路パターン状に成形されており、その上に電子部品20がはんだ材等によって接合されている。また、放熱層用金属板13の表面にヒートシンク30がろう付け等によって接合されている。
まず、図2に示すように、予めニッケル層15を介してアルミニウム層14と銅層16とを接合した回路層用金属板12を用いて、その回路層用金属板12のアルミニウム層14がセラミックス基板11の一方の面と対向するように配置し、アルミニウム層14とセラミックス基板11の間にろう材箔17を介在させて積層するとともに、そのセラミックス基板11の他方の面に、放熱層用金属板13をろう材箔17を介在させて積層することにより、基板積層体40を組み立てる。この基板積層体40を、比較的剛性の高いカーボン製板材からなるカーボン板(図示略)と、クッション性を有する板状のクッションシート(図示略)との間に挟んだ状態とし、複数の基板積層体40を、図3に示すような加圧治具110によって積層方向に0.3MPa〜1.0MPaで加圧した状態とする。
このセラミックス基板11と両金属板12,13とのろう付け接合時において、回路層用金属板12を構成するニッケル層15はバリア層として良好に機能するため、アルミニウム層14と銅層16との反応を防止することができる。したがって、アルミニウム層14と銅層16とが積層された状態の回路層を有するパワーモジュール用基板10を、容易に製造することができる。
また、回路層用金属板12は、アルミニウム層14と銅層16との間にニッケル層15が形成された構成とし、ニッケル層15の厚みを0.08mm以上0.25mm以下に設定したことで、ろう付け温度まで加熱しても、ニッケル層15がバリア層として機能してアルミニウム層14と銅層16との反応を防ぐことができる。このため、セラミックス基板11との接合に、接合信頼性の高いろう付けを採用することができる。さらに、このようにして製造されたパワーモジュール用基板10にヒートシンク30を取り付ける際にも、ろう付けを採用することができるので、放熱層用金属板13とヒートシンク30との接合強度を高めることができ、放熱性能を向上させることが可能となっている。
この場合、635℃未満の加熱では、セラミックス基板11と回路層用金属板12及び放熱層用金属板13とを1回の加熱で接合することが難しく、各部材間の接合性を良好に確保することができない。また、639.9℃以上に加熱した場合は、回路層用金属板12を構成するアルミニウム層14とニッケル層15との間に、金属間化合物が生成されるおそれがあり、好ましくない。
表1に記載の厚みを有するアルミニウム層(Al層)、ニッケル層(Ni層)及び銅層(Cu層)からなり、26mm×26mm(26mm角)の回路層用金属板12、厚み1.6mmで28mm×28mm(28mm角)の放熱層用金属板13、厚み0.635mmで30mm×30mm(30mm角)のセラミックス基板11を用意し、これらをろう付けすることによりパワーモジュール用基板を製造した。
回路層用金属板12は、表1に示す条件に設定された各金属層を用いて、これら金属層を表面活性化接合により接合することにより形成した。また、放熱層用金属板13には純度99.99質量%のAl板、セラミックス基板11にはAlNを用いた。
「初期接合性」の評価は、ろう付けによる接合後、超音波深傷装置を用いてアルミニウム層14とセラミックス基板11との接合部を評価し、初期接合率=(接合面積−非接合面積)/接合面積の式から算出した。ここで、非接合面積は、接合面を撮影した超音波深傷像において非接合部は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を測定したものである。また、接合面積は、接合前における接合すべき面積、すなわちアルミニウム層14の接合面の面積とした。
「冷熱サイクル特性」の評価は、パワーモジュール用基板に対して−40℃から125℃の温度範囲で昇温と冷却とを3000サイクル繰り返す冷熱サイクル試験を実施して行った。そして、冷熱サイクル試験後に、セラミックス基板11とアルミニウム層14とのAlN/Al界面の冷熱サイクル試験後接合率を評価した。なお、冷熱サイクル試験後接合率=(接合面積−冷熱サイクル試験後剥離面積)/接合面積の式から算出した。ここで、冷熱サイクル試験後剥離面積とは、超音波深傷像において白色部の面積を測定したものである。
ヒートシンク中の冷却水温度、流量を一定とした状態で、半導体チップへの通電を、半導体チップ表面の温度が通電(ON)で140℃、非通電(OFF)で60℃となる1サイクルを10秒毎に繰り返すようにして調整し、これを15万回繰り返すパワーサイクル試験を実施した。そして、パワーサイクル試験の前後で半導体チップ表面とヒートシンク内表面(ヒートシンク底面)との間の熱抵抗を半導体チップ表面温度からそれぞれ測定し、パワーサイクル試験実施による熱抵抗の上昇率を求めた。評価結果を表1に示す。
一方、ニッケル層の厚みが0.08mm未満に設定された比較例1のパワーモジュール用基板は、初期接合率が50.0%となり、実施例1〜3のパワーモジュール用基板と比べて著しく低下する結果となった。また、冷熱サイクル試験後の接合率も低下し、パワーサイクル試験後の熱抵抗上昇率も高くなる結果となった。
また、ニッケル層の厚みが0.25mmを超えて設定された比較例2のパワーモジュール用基板は、実施例1〜3のパワーモジュール用基板と比べて初期接合率が低く、冷熱サイクル試験後の接合率も低下する結果となった。
例えば、本実施形態では、セラミックス基板と回路層用金属板及び放熱層用金属板とをろう付けによって接合したが、いわゆる過渡液相接合法(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)又はその他の接合方法を用いることができる。
11 セラミックス基板
12 回路層用金属板
13 放熱層用金属板
14 アルミニウム層
15 ニッケル層
16 銅層
17 ろう材箔
20 電子部品
30 ヒートシンク
40 基板積層体
100 パワーモジュール
110 加圧治具
111 ベース板
112 ガイドポスト
113 固定板
114 押圧板
115 付勢手段
Claims (4)
- セラミックス基板の一方の面に、純アルミニウムからなるアルミニウム層、銅層、及び前記アルミニウム層と前記銅層との間にニッケル層を有し、前記ニッケル層の厚みが0.08mm以上0.25mm以下に設定された回路層用金属板を、該回路層用金属板のアルミニウム層と前記セラミックス基板の間に接合材を介在させて積層するとともに、該セラミックス基板の他方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる放熱層用金属板を接合材を介在させて積層した基板積層体を形成し、前記基板積層体を積層方向に加圧した状態で加熱することで前記セラミックス基板と前記回路層用金属板及び前記放熱層用金属板とを接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記セラミックス基板と前記回路層用金属板及び前記放熱層用金属板との接合温度は、635℃以上639.9℃以下に設定されていることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記アルミニウム層及び前記銅層は、それぞれの厚みが0.05mm以上に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
- セラミックス基板の一方の面に、純アルミニウムからなるアルミニウム層、銅層、及び前記アルミニウム層と前記銅層との間にニッケル層を有し、前記ニッケル層の厚みが0.08mm以上0.25mm以下に設定された回路層用金属板が厚さ方向に積層された状態で接合されており、
前記セラミックス基板の他方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる放熱層用金属板が厚さ方向に積層された状態で接合されていることを特徴とするパワーモジュール用基板。
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